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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】注出口栓およびこれを備える包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/22 20060101AFI20240220BHJP
   B65D 75/60 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B65D51/22 120
B65D75/60
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020010900
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021116104
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲野 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝行
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-173631(JP,A)
【文献】特開2014-046922(JP,A)
【文献】特開2018-158761(JP,A)
【文献】特開2016-030619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/22
B65D 75/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ネジが形成された円筒形の筒部、前記筒部の内部を閉塞する隔壁、および前記筒部の一端から外方に延出するフランジを有する口栓本体と、
前記外ネジと螺合する内ネジが形成された円筒形の側壁、および前記側壁の一端を覆う天面部を有し、前記口栓本体の前記筒部に被せて前記外ネジと前記内ネジとが螺合された状態で取り付けられたキャップとを備える注出口栓であって、
前記口栓本体は、前記隔壁から前記キャップの前記天面部と反対側に延出し、中心軸が前記筒部の中心軸に重なる略円筒形の第1円筒部と、前記第1円筒部の内周面から突出する複数の第1突出部とを有する隔壁側当接部とを含み、
前記キャップは、前記天面部から前記口栓本体の前記隔壁側に延出し、中心軸が前記側壁の中心軸に重なる略円筒形の第2円筒部と、前記第2円筒部の外周面から突出する複数の第2突出部とを有するキャップ側当接部とを含み、
前記隔壁は、前記隔壁側当接部を取り囲み、中心が前記筒部の中心軸に重なる円環状の薄肉部を有し、
前記筒部の中心軸から前記第1突出部の先端までの半径方向における距離は、前記側壁の中心軸から前記第2円筒部の前記外周面までの半径方向における距離よりも大きく、かつ前記側壁の中心軸から前記第2突出部の先端までの半径方向における距離よりも小さく、
前記キャップが前記口栓本体に取り付けられた状態において、
前記キャップ側当接部は、前記側壁の中心軸と前記筒部の中心軸とが重なるように前記隔壁側当接部に挿入され、
前記キャップが前記口栓本体に取り付けられた状態から螺合を解除する方向に回転すると、
複数の前記第2突出部は、一部がそれぞれ複数の前記第1突出部のいずれかと回転方向において互いに突き当たった状態において、残りがそれぞれ複数の前記第1突出部のいずれとも前記回転方向において突き当たることなく、
前記第2突出部は、半径方向における先端が前記第1円筒部の前記内周面の接触予定領域に接触して、前記キャップと前記隔壁とが前記筒部の中心軸に沿った方向において離れるように相対移動することが規制され、
前記キャップが、前記螺合を解除する方向に所定の力でさらに回転させられると、前記所定の力が前記キャップ側当接部および前記隔壁側当接部を介して前記薄肉部に作用して前記薄肉部が破断し、前記隔壁が前記筒部から分離して開栓し、
前記キャップが前記口栓本体に取り付けられていない状態において、
前記筒部の中心軸から前記接触予定領域までの半径方向における距離が、前記側壁の中心軸から前記第2突出部の半径方向における先端までの距離以下である、
注出口栓。
【請求項2】
前記キャップが前記口栓本体に取り付けられていない状態において、
前記筒部の中心軸から前記接触予定領域までの半径方向における距離が、前記側壁の中心軸から前記第2突出部の半径方向における先端までの距離未満である、
請求項1に記載の注出口栓。
【請求項3】
請求項1または2に記載された注出口栓を備える、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器の注出位置に設けられる注出口栓に関する。
【背景技術】
【0002】
液体、粉体あるいは粒体等の流動性のある内容物の包装容器として、樹脂製の注出口栓を設けたものが広く使用されている。例えば、特許文献1の注出口栓は、円筒形の筒状部およびその内部を閉塞する隔壁を含む口栓本体と、口栓本体に被せて取り付けられたキャップとを備える。隔壁には環状の薄肉部とプルリングが設けられている。このような注出口栓では、隔壁に設けたプルリングを引っ張ることで、薄肉部に沿って破断され、隔壁を口栓本体から取り外して開栓をすることができる。また、開栓後も、再度キャップを口栓本体に取り付けることにより再栓することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-296865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような注出口栓は、隔壁の薄肉部を破断するために要するプルリングを引っ張る力が比較的大きいため、力の弱いユーザーには負荷が高く、また、開栓後にプルリングを廃棄する手間がかかり、利便性には改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、開栓容易な注出口栓およびこれを用いた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、外ネジが形成された円筒形の筒部、筒部の内部を閉塞する隔壁、および筒部の一端から外方に延出するフランジを有する口栓本体と、外ネジと螺合する内ネジが形成された円筒形の側壁、および側壁の一端を覆う天面部を有し、口栓本体の筒部に被せて外ネジと内ネジとが螺合された状態で取り付けられたキャップとを備える注出口栓であって、口栓本体は、隔壁からキャップの天面部と反対側に延出し、中心軸が筒部の中心軸に重なる略円筒形の第1円筒部と、第1円筒部の内周面から突出する複数の第1突出部とを有する隔壁側当接部とを含み、キャップは、天面部から口栓本体の隔壁側に延出し、中心軸が側壁の中心軸に重なる略円筒形の第2円筒部と、第2円筒部の外周面から突出する複数の第2突出部とを有するキャップ側当接部とを含み、隔壁は、隔壁側当接部を取り囲み、中心が筒部の中心軸に重なる円環状の薄肉部を有し、筒部の中心軸から第1突出部の先端までの半径方向における距離は、側壁の中心軸から第2円筒部の外周面までの半径方向における距離よりも大きく、かつ側壁の中心軸から第2突出部の先端までの半径方向における距離よりも小さく、キャップが口栓本体に取り付けられた状態において、キャップ側当接部は、側壁の中心軸と筒部の中心軸とが重なるように隔壁側当接部に挿入され、キャップが口栓本体に取り付けられた状態から螺合を解除する方向に回転すると、複数の第2突出部は、一部がそれぞれ複数の第1突出部のいずれかと回転方向において互いに突き当たった状態において、残りがそれぞれ複数の第1突出部のいずれとも回転方向において突き当たることなく、第2突出部は、半径方向における先端が第1円筒部の内周面の接触予定領域に接触して、キャップと隔壁とが筒部の中心軸に沿った方向において離れるように相対移動することが規制され、キャップが、螺合を解除する方向に所定の力でさらに回転させられると、所定の力がキャップ側当接部および隔壁側当接部を介して薄肉部に作用して薄肉部が破断し、隔壁が筒部から分離して開栓し、キャップが口栓本体に取り付けられていない状態において、筒部の中心軸から接触予定領域までの半径方向における距離が、側壁の中心軸から第2突出部の半径方向における先端までの距離以下である、注出口栓である。
【0007】
また、本発明の他の局面は、上述の注出口栓を備えた包装容器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開栓容易な注出口栓およびこれを用いた包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る注出口栓の縦断面図
図2】本発明の一実施形態に係る注出口栓の縦断面図
図3】本発明の一実施形態に係る注出口栓の拡大断面図
図4】本発明の一実施形態に係る注出口栓の開栓時における位置関係を示す部分断面図
図5】本発明の変形例1~3に係る注出口栓の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
本発明の一実施形態に係る注出口栓100を、図を参照して説明する。図1図3は、後述するキャップが口栓本体に取り付けられた状態にある本実施形態に係る注出口栓100の断面図である。図1は、注出口栓100を図2のB-B’線で切断した縦断面図であり、図2は、注出口栓100を図1のA-A’線で切断した横断面図であり、図3は、図2の点線で囲ったC部の拡大断面図である。
【0011】
注出口栓100は、口栓本体10と、口栓本体10に螺合された状態で取り付けられたキャップ20とを含む。注出口栓100は、取り付けられたキャップ20を螺合解除方向に回転することにより後述する隔壁12を口栓本体10から分離させて開栓することができ、開栓後はキャップ20を口栓本体10に螺合することにより再栓することができる。以下では、図1に示すように、口栓本体10のキャップ20を被せて取り付ける側を上方と定義するとともにこれとは反対側を下方と定義し、この定義に従って説明する。なお、螺合解除方向は、一例として図2に矢印(白抜き)で示すように、上方から見て左回りの方向とする。
【0012】
(口栓本体)
口栓本体10は、外ネジ13が形成された円筒形の筒部11と、筒部11の内部を閉塞する隔壁12と、筒部11の一端縁から外方に延出するフランジ17と、隔壁12の内周側に形成された隔壁側当接部14とを含む。フランジ17を設けることで、注出口栓100を、図示しない容器本体に溶着等により取り付けて用いることができる。筒部11の内周面の形状は限定されないが、一例として、図1に示すように、他端側に向かうにつれて内径が広がるようにテーパー形状11aが形成されてもよい。
【0013】
隔壁12には、図1図2に示すように、筒部11と隔壁側当接部14との間に、開栓時に分離(破断)のきっかけとなる薄肉部12aが設けられている。薄肉部12aは、隔壁側当接部14を取り囲み、中心が筒部11の中心軸CL1に重なる円環状に形成されている。
【0014】
隔壁側当接部14は、開栓時に、後述するキャップ側当接部24の第2突出部26の一部が突き当たることでキャップ20が回転する力を隔壁12に伝達するために設けられる。隔壁側当接部14は、隔壁12から延出し、中心軸が筒部11の中心軸CL1に重なる略円筒形の第1円筒部15と、第1円筒部15の内周面から突出する複数の第1突出部16とを含む。
【0015】
第1円筒部15は、内周面に、少なくともキャップ側当接部24の第2突出部26の一部が隔壁側当接部14に突き当たる際に、キャップ側当接部24の第2突出部26の半径方向における先端が接触する接触予定領域15aを含む。接触予定領域15aの具体的な寸法については後述する。
【0016】
第1突出部16は、一例として、図1図2に示すように、第1円筒部15の内周面に、周方向に90°の間隔で4個設けられる。各第1突出部16は、一例として、筒部11の中心軸CL1の延伸方向に延伸するように形成された凸形状であって、キャップ側当接部24が当接する部分に、螺合解除方向に向かって窪んだ当接面16fを備える。
【0017】
なお、第1突出部16の数は、キャップ20が回転する力を隔壁12に伝達することができれば限定されない。図1に示すように、第1円筒部15は、隔壁12から下端側(フランジ17側)に向かって延伸するように形成してもよいし、第1突出部16が、キャップ20が回転する力を隔壁12に伝達することができれば、上端側(キャップ20の天面部22側)に向かって延伸するように形成してもよい。
【0018】
(キャップ)
キャップ20は、口栓本体10の筒部11に形成された外ネジ13と螺合する内ネジ23が形成された円筒形の側壁21と、側壁21の一端を覆う天面部22と、天面部22に設けられたキャップ側当接部24とを有する。キャップ20は、図1に示すように、側壁21の内周側に、天面部22により一端が覆われた円筒形のインナーリング27をさらに備えてもよい。インナーリング27は、キャップ20が口栓本体10に取り付けられた状態において、外周面が、口栓本体10の筒部11の内周面と密着するように形成されている。これにより、隔壁12を分離させた後の再栓時にも密封性を確保することができる。インナーリング27の外周面の形状は限定されないが、一例として、図1に示すように、筒部11の内周面との密着性を高めるために周方向にわたって突出する突出部27aが形成されてもよい。
【0019】
キャップ側当接部24は、開栓時に、隔壁側当接部14に突き当たることによりキャップ20が回転する力を隔壁12に伝達するために設けられる。キャップ側当接部24は、天面部22から口栓本体10の隔壁12側に延出し、中心軸が側壁21の中心軸CL2に重なる略円筒形の第2円筒部25と、第2円筒部25の外周面から突出する複数の第2突出部26とを含む。
【0020】
複数の第2突出部26は、キャップ20が口栓本体10に取り付けられた状態から螺合解除方向に回転すると、回転方向において第1突出部16に突き当たる第2突出部26aと、第1突出部16に突き当たらない第2突出部26bとにより構成される。詳細は後述するが、これにより、複数の第2突出部26の一部(第2突出部26a)がそれぞれ複数の第1突出部16の一部のいずれかと回転方向において互いに突き当たった状態において、残りの第2突出部26(第2突出部26b)がそれぞれ複数の第1突出部16のいずれとも回転方向において突き当たらない状態となる。第2突出部26aが、隔壁側当接部14の第1突出部16に、キャップ20の回転方向において突き当たることによりキャップ20が回転する力が隔壁12に伝達される。注出口栓100では、一例として、第2突出部26は、3個の第2突出部26aと1個の第2突出部26bとにより構成され、第2突出部26aと第2突出部26bとの周方向における間隔が、第2突出部26aが第1突出部16に突き当たった状態において、第2突出部26bが第1突出部16に突き当たらない状態となるように設定される。以下では、第2突出部26aと第2突出部26bとをまとめて第2突出部26と呼ぶ。
【0021】
第2突出部26は、一例として、側壁21の中心軸CL2の延伸方向に延伸するように形成された凸形状であって、隔壁側当接部14の当接面16fに嵌ることができるように、螺合解除方向に向かって突き出た当接面26fを備える。隔壁側当接部14の第1突出部16およびキャップ側当接部24の第2突出部26のそれぞれに、互いに嵌合可能な当接面16f、当接面26fを設けることで、隔壁側当接部14とキャップ側当接部24とを広い面積で当接させることができるため、キャップ20が回転する力を安定的に隔壁12に伝達することができる。なお、第2突出部26bは第1突出部16に突き当たらないため、当接面26fを備えなくてもよい。
【0022】
図1図2に示すように、キャップ20が口栓本体10に取り付けられた状態において、キャップ側当接部24は、側壁21の中心軸CL2と筒部11の中心軸CL1とが重なるようにして隔壁側当接部14に挿入される。また、図2に示すように、隔壁側当接部14は、筒部11の中心軸CL1から第1突出部16の先端までの半径方向における距離が、側壁21の中心軸CL2から第2円筒部25の外周面までの半径方向における距離よりも大きく、かつ側壁21の中心軸CL2から第2突出部26の先端までの半径方向における距離よりも小さくなるように形成されている。これにより、後述するように、キャップ20を回転させることによって、第1突出部16と第2突出部26とが回転方向において突き当たることができる。
【0023】
注出口栓100は、キャップ20が口栓本体10に取り付けられた状態において、図2に示すように、隔壁側当接部14の当接面16fと、隔壁側当接部14の螺合解除方向に隣接するキャップ側当接部24の当接面26fとの間に、周方向において所定の間隔(以下、空走区間Sという)を有する。空走区間Sを有することにより、キャップ20が回転を始めてから、第1突出部16と第2突出部26aとが当接するまでの所定の第1角度θ1の間は、キャップ20が回転する力は隔壁12に伝達されない。第1角度θ1は、例えば60°程度とすることができる。
【0024】
キャップ20の口栓本体10への最初の取り付けは、例えば、位置決め後、筒部11の中心軸CL1の延伸方向に一定の勢いで打ちこむ打栓式等により、内ネジ23に外ネジ13を乗り越えさせることで行うことができる。
【0025】
(開栓について)
次に、注出口栓100の開栓について、図4を参照して説明する。図4は、注出口栓100の、キャップ20が口栓本体10に取り付けられた状態(図4の(a))から隔壁側当接部14の第1突出部16とキャップ側当接部24の第2突出部26aとが回転方向において突き当たった後、破断が薄肉部12aに沿って全周に進行する状態(図4の(d))までの、隔壁側当接部14およびキャップ側当接部24の位置関係を示す部分断面図である。図4の(b)、(c)は、図4の(a)と図4の(d)との間の状態を示している。
【0026】
図4の(a)に示すように、キャップ20が口栓本体10に取り付けられた状態において、注出口栓100は、当接面16fおよび当接面26fの間に周方向にわたって空走区間Sを有している。このとき、インナーリング27の外周面と、筒部11の内周面とは全周にわたって密着していることが好ましい。この場合、密着とは、例えば、インナーリング27に設けられた突出部27aが筒部11の内周面と全周にわたって接触する状態を意味する。
【0027】
キャップ20に、螺合解除方向に回転する力を加えることにより、図4の(b)に矢印で示すように、キャップ20は螺合解除方向に向かって回転を始める。これにより、第2突出部26は空走区間S内を移動するが、第1突出部16と第2突出部26aとは当接していないためキャップ20に加えられた力は、この段階では隔壁側当接部14には伝わらない。
【0028】
キャップ20が、さらに回転を続けて、口栓本体10に取り付けられた状態から螺合解除方向に第1角度θ1回転することにより、図4の(c)に示すように、第1突出部16と第2突出部26aとが回転方向において互いに突き当たる。上述したように、第1突出部16と第2突出部26aとが回転方向において突き当たった状態において、第2突出部26bは第1突出部16とは回転方向において突き当たらない。また、このとき、第2突出部26の半径方向における先端が第1円筒部15の内周面に形成された接触予定領域15aに接触し、キャップ20と隔壁12とが、中心軸CL1、CL2に沿った方向において離れるように相対移動することが規制される。
【0029】
接触予定領域15aは、キャップ20が口栓本体10に取り付けられる前の状態において第1円筒部15の内周面の中心軸CL1からの距離L1が、第2突出部26の半径方向における先端の中心軸CL2からの距離L2以下に形成された領域である。キャップ20と隔壁12との相対移動を確実に規制するためには、距離L1は距離L2未満であることが好ましく、距離L1と距離L2との差が-0.2mm以下であることがより好ましい。便宜上、図4の(c)に距離L1および距離L2を示したが、上述したように、距離L1および距離L2はそれぞれ、キャップ20が口栓本体10に取り付けられる前の状態における第1円筒部15の内周面の中心軸CL1からの距離および第2突出部26の半径方向における先端の中心軸CL2からの距離である。接触予定領域15aは、第1突出部16と第2突出部26aとが回転方向において突き当たった状態において第2突出部26の先端に接触する領域のみに形成される。これにより、第2突出部26が空走区間S内を移動する間において、第1突出部16と第2突出部26とが接触することにより生じる摩擦力に起因する抵抗力の発生を防ぐことができるため、キャップ20に加える力が増加することを抑制できる。なお、接触予定領域15aは、第1円筒部15の内周面に全周にわたって形成されてもよい。
【0030】
第1突出部16と第2突出部26aとが突き当たった状態で、キャップ20を所定の力でさらに螺合解除方向へ回転させると、所定の力がキャップ側当接部24および隔壁側当接部14を介して隔壁12に作用する。この結果、隔壁12が螺合解除方向に捩られ、捩り力が薄肉部12aの周方向に作用して破断30が発生する。具体的には、キャップ20に加えられた力は、第2突出部26bを介することなく第2突出部26aのみを介して隔壁12に伝わるため、隔壁12の薄肉部12aには、周方向(回転方向)にわたって応力分布の不均衡が生じる。この結果、薄肉部12aに応力集中が生じ、応力集中部分をきっかけにして破断30が発生する。このように、注出口栓100では、薄肉部12aに応力分布の不均衡に起因する応力集中を発生させたうえで破断30を生じさせることができるため、4つ全ての第2突出部26を第1突出部16へ突き当てて隔壁12へ均等に力を作用させる場合と比べて、破断30を生じさせるためにキャップ20に加える力(トルク)を小さくすることができる。なお、図示した破断30の位置は一例であり、他の位置で発生する場合もあり得る。
【0031】
図4の(d)に示すように、キャップ20の回転がさらに進行することにより、薄肉部12aの破断箇所の端部に応力が集中し破断30が薄肉部12aに沿って全周に進行する。上述のように、キャップ20と隔壁12とは、中心軸CL1、CL2に沿った方向において離れるように相対移動することが規制されているため、破断が薄肉部12aの全周に進行すると、隔壁12は、キャップ20に随伴して口栓本体10から分離する。この結果、注出口栓100の開栓が完了する。
【0032】
このように、注出口栓100では、キャップ20を回転させて取り外した時点で開栓が完了するため、プルリングで開栓する方式のように別途隔壁12を除去する必要がない。また、キャップ20はつまみやすく、トルクを与えやすいので、プルリングを引っ張って隔壁12を破断するのに比べてユーザーの負担が小さく開栓容易である。とくに、第2突出部26が、第1突出部16に突き当たる第2突出部26aと、第1突出部16に突き当たらない第2突出部26bとにより構成されるため、キャップ20を回転させることで、薄肉部12aに応力集中を発生させてこの応力集中部分をきっかけにして破断30を発生させることができ、開栓に要するユーザーの負担をより小さいものとすることができる。
【0033】
また、第1突出部16と第2突出部26aとが回転方向において突き当たった状態において、第1円筒部15の内周面の少なくとも一部である接触予定領域15aを、第2突出部26の半径方向における先端と接触させることで、分離した隔壁12をキャップ20内に残留させることができるため、開栓後に外れた注出口栓100の一部を廃棄する必要が生じない。また、これにより、開栓時に第1円筒部15の中心軸と第2円筒部25の中心軸とを一致させることができるため、中心軸がずれることにより第1突出部16が第2突出部26aに突き当たることが妨げられて、開栓が困難となることを防止できる。
【0034】
また、開栓した注出口栓100では、キャップ20を口栓本体10の筒部11に被せて螺合方向に回転させることで、再栓をすることができる。再栓をすることで、インナーリング27の外周面と筒部11の内周面とが、再び全周にわたって密着するため、再栓時における密封性を確保することができる。
【0035】
また、注出口栓100では隔壁12にプルリングを設けないため、筒部11の内部において隔壁12を形成する位置の設計自由度が高い。隔壁12を形成する位置は特に限定されないが、一例として、中心軸CL1の延伸する方向において、フランジ17と5mm以上の間隔D(図1参照)を有するように形成することができる。間隔Dを5mm以上に設定することにより、フランジ17を容器本体に超音波を用いて溶着する超音波溶着の際に、隔壁12に伝わった超音波振動により薄肉部12aが破損してしまうことを抑制することができる。すなわち、注出口栓100によれば、隔壁12は、従来のプルリングを有する注出口栓における隔壁の位置よりも少なくとも5mm以上高くすることができる。
【0036】
また、間隔Dを5mm以上設けることで、隔壁側当接部14を隔壁12から下端側に向かって長く延伸するように形成することができるため、隔壁側当接部14とキャップ側当接部24との中心軸CL1、CL2の延伸方向における当接長さを確保することができる。これにより、キャップ20の回転によりキャップ側当接部24が捻じれる量を減らして、隔壁12に効率的にトルクを伝えることができる。
【0037】
口栓本体10の材料としては、例えば、ポリエチレンが挙げられ、キャップ20の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
(変形例)
第2突出部26を構成する第2突出部26aおよび第2突出部26bの数、ならびにこれらが第2円筒部25に形成される位置は、キャップ20の回転により薄肉部12aを破断することが可能であれば、注出口栓100の例に限定されない。図5の(a)~(c)に、注出口栓100との相違が、第2突出部26aおよび第2突出部26bの数、ならびにこれらが形成される位置である変形例1~3に係る注出口栓の隔壁側当接部14およびキャップ側当接部24の部分断面図を示す。以下では、変形例1~3に係る注出口栓と注出口栓100との相違点を中心に説明する。
【0039】
図5の(a)に示すように、変形例1に係る注出口栓では、第2突出部26aおよび第2突出部26bがそれぞれ2つずつ、周方向に交互に設けられている。2つの第2突出部26aは、第1突出部16と突き当たる位置が互いに180°の間隔を有するように設けられている。
【0040】
図5の(b)に示すように、変形例2に係る注出口栓では、第2突出部26aおよび第2突出部26bがそれぞれ2つずつ、周方向に隣接して設けられている。2つの第2突出部26aは、第1突出部16と突き当たる位置が互いに90°の間隔を有するように設けられている。
【0041】
図5の(c)に示すように、変形例3に係る注出口栓では、第2突出部26aが1つ形成され、第2突出部26bが3つ設けられている。
【0042】
変形例1~3に係る注出口栓も実施形態に係る注出口栓100と同様に、第1突出部16と第2突出部26aとが互いに突き当たった状態で、キャップ20を所定の力で螺合解除方向へ回転させると、薄肉部12aに、周方向(回転方向)にわたる応力分布の不均衡およびこれに起因する応力集中が生じるため、これをきっかけにした破断30(不図示)を発生させることができる。とくに変形例2では隣接する2つの第2突出部26aを介して力が作用し、変形例3では1つの第2突出部26aを介して力が作用する。これらの注出口栓の場合、3つの第2突出部26aを介して力が作用する実施形態や、2つの離れた位置に設けられた第2突出部26aを介して力が作用する変形例1に係る注出口栓と比べて、周方向にわたる応力分布の不均衡が大きいため、集中する応力を大きくすることができ、より小さなトルクでの開栓が可能になる。
【0043】
以上で説明した注出口栓が備える複数の第1突出部16のうち、第2突出部26aに突き当たらない第1突出部16は必須の形状ではない。しかしながら、第2突出部26aに突き当たらない第1突出部16を設けることで、キャップ20に衝撃的な力が加わる等して第2突出部26aが第1突出部16を乗り越えた場合に、この第1突出部16によりキャップ20の回転を速やかに停止させることが可能となるため、設けることが好ましい。
【0044】
また、以上で説明した注出口栓では、複数の第2突出部26の一部がそれぞれ複数の第1突出部16の一部のいずれかと回転方向において互いに突き当たった状態において、残りの第2突出部26がそれぞれ複数の第1突出部16のいずれとも回転方向において突き当たらない状態を実現するために、複数の第1突出部16を周方向に均等の間隔で配置し、複数の第2突出部26を第1突出部16の位置に合わせて配置した。しかしながら、第1突出部16と第2突出部26とが互いに突き当たった状態において上記の位置関係を実現することができれば、複数の第2突出部26を周方向に均等の間隔で配置したうえで、複数の第1突出部16を第2突出部26の位置に合わせて配置してもよい。
【実施例
【0045】
実施例1~4および比較例に係る注出口栓を製造して、注出口栓の開栓に要した(キャップに加えた)トルクおよび分離した隔壁をキャップから離脱させる際に必要な荷重を測定した。
【0046】
(実施例1)
実施例1に係る注出口栓として、図1、2に示した一実施形態に係る注出口栓100を製造した。実施例1に係る注出口栓では、第1円筒部15の内周面の直径は、9.46mmとした。また、第2突出部26は、周方向の幅Wを4mmとし、第2円筒部からの突出高さHを2mmとし接触予定領域15aにおける、距離L1と距離L2との差は-0.4mmとした。
【0047】
(実施例2)
実施例2に係る注出口栓として、図5の(a)に示した変形例1に係る注出口栓を製造した。
【0048】
(実施例3)
実施例3に係る注出口栓として、図5の(b)に示した変形例2に係る注出口栓を製造した。
【0049】
(実施例4)
実施例4に係る注出口栓として、図5の(c)に示した変形例3に係る注出口栓を製造した。
【0050】
(比較例)
比較例に係る注出口栓として、4対の第1突出部16および第2突出部26を備え、4つの第2突出部26のそれぞれが、4つの第1突出部16のいずれかに突き当たる点以外は実施例1と同一である注出口栓を製造した。
【0051】
実施例1~4および比較例に係る注出口栓を、それぞれ10個ずつ作製して、初めに開栓に要したトルクを測定した。その後、口栓本体10から分離した隔壁12をキャップ20から中心軸CL1、CL2に沿った方向において離れるように相対移動させて離脱させるのに要する荷重を、プッシュプルゲージを用いて測定した。測定したトルク、荷重、およびこれらを総合的に評価した結果を表1に示す。
【0052】
開栓に要したトルクが45N・cmより大きく50N・cm以下であり、かつ荷重が、隔壁をキャップ内に確実に残留させることが可能である10N以上である場合を、使用可能な注出口栓と評価して「+」で示した。また、開栓に要したトルクが40N・cmより大きく45N・cm以下であり、かつ分離荷重が10N以上である場合を、トルクが高くなく容易に開栓が可能な注出口栓と評価して「++」で示した。さらに、開栓に要したトルクが40N・cm以下であり、かつ、分離荷重が10N以上である場合を、トルクが低くより容易に開栓が可能な注出口栓と評価して「+++」で示した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、実施例1~4に係る注出口栓では、上述のように薄肉部12aに応力分布の不均衡が好適に発生して、これをきっかけにして破断30を発生させることができるため、小さなトルクで開栓できることが確認できた。とくに、2つの第2突出部26aを隣接して配置した実施例3、および第2突出部26aが1つである実施例4に係る注出口栓においてトルクの低減効果がより大きくなることが確認された。
【0055】
これに対して、比較例に係る注出口栓は、第2突出部26aが円周方向に4つ設けられているため、薄肉部12aに応力分布の不均衡が好適に発生せず、実施例1~4に係る注出口栓と比較して開栓に高いトルクが必要となった。
【0056】
また、実施例1~4および比較例に係る注出口栓では、第1円筒部15の内周面の接触予定領域15aに、第2突出部26の半径方向における先端を接触させるため、分離した隔壁12をキャップ20内に確実に残留させることが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、包装容器等に有用である。
【符号の説明】
【0058】
10 口栓本体
11 筒部
12 隔壁
12a 薄肉部
13 外ネジ
14 隔壁側当接部
15 第1円筒部
16 第1突出部
16f 当接面
17 フランジ
20 キャップ
21 側壁
22 天面部
23 内ネジ
24 キャップ側当接部
25 第2円筒部
26 第2突出部
26a 第2突出部
26b 第2突出部
26f 当接面
27 インナーリング
28 振動抑制部
30 破断
100 注出口栓
CL1、CL2 中心軸
S 空走区間
図1
図2
図3
図4
図5