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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240220BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 618E
H01L29/78 301B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020011462
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021118285
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦史
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-016087(JP,A)
【文献】特開2009-231396(JP,A)
【文献】特開2007-067240(JP,A)
【文献】特開2008-140812(JP,A)
【文献】特開2012-164886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/786
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/336
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子走行層と、
前記電子走行層の上方に設けられた電子供給層と、
前記電子供給層の上方に設けられたキャップ層と、
前記電子走行層と前記電子供給層との間に設けられたスペーサ層と、
を有し、
前記電子走行層の主面に平行な方向で、前記電子走行層の第1格子定数は前記電子供給層の第2格子定数よりも大きく、
前記第2格子定数は、前記電子供給層の組成から導き出される第3格子定数より大きく、
前記電子走行層の主面に平行な方向で、前記スペーサ層の格子定数は前記第1格子定数と同等であり、
前記スペーサ層は、前記電子走行層の主面に平行な方向に第1引張歪を含み、
前記電子供給層は、前記電子走行層の主面に平行な方向に前記第1引張歪よりも小さい第2引張歪を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記キャップ層は、前記電子走行層の主面に平行な方向に圧縮歪を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電子供給層の上方に設けられたゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記キャップ層上に選択的に形成された窒化物層と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極は前記キャップ層に直接接していることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極と前記キャップ層との間に設けられたゲート絶縁膜を有することを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記窒化物層は、前記ソース電極と前記ゲート電極との間に設けられていることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体を用いた半導体装置としては、電界効果トランジスタ、特に高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)についての報告が数多くなされている。窒化物半導体を用いたHEMTとして、GaN層をチャネル層に、AlGaN層をバリア層に用いたHEMTが知られている。このようなGaN系HEMTでは、AlGaNとGaNとの格子定数の差に起因する歪みがAlGaN層に生じ、この歪みに伴ってピエゾ分極が生じ、高濃度の二次元電子ガス(two-dimensional electron gas:2DEG)がAlGaN層下のGaN層の上面近傍に発生する。このため、高い出力が得られる。
【0003】
HEMTにおいて、ソース電極とドレイン電極との間で2DEGの濃度が変化していることが好ましいことがある。例えば、オン抵抗の低減及びドレイン耐圧の向上の両立のために、ゲート電極とソース電極との間では、ゲート電極とドレイン電極との間よりも2DEGの濃度が高いことが好ましいことがある。また、ノーマリオフ動作の実現のために、ゲート電極の直下に2DEGがほとんど存在しないことが好ましいこともある。
【0004】
従来、2DEGの濃度の変調のために、バリア層上に応力膜が設けられた半導体装置や、ゲート電極下にp型GaN層又はInGaN層が設けられた半導体装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-183551号公報
【文献】特開2019-96739号公報
【文献】特開2009-267155号公報
【文献】特開2009-76845号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】T. Mizutani, M. Ito, S. Kishimoto and F. Nakamura, IEEE Electron Device Letters, vol. 28, no. 7, pp. 549-551 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の半導体装置の構成では、他の特性に影響を及ぼさないようにしながら二次元電子ガスの濃度を変調することが困難である。
【0008】
本開示の目的は、二次元電子ガスの濃度を容易に変調することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一形態によれば、電子走行層と、前記電子走行層の上方に設けられた電子供給層と、前記電子供給層の上方に設けられたキャップ層と、前記電子走行層と前記電子供給層との間に設けられたスペーサ層と、を有し、前記電子走行層の主面に平行な方向で、前記電子走行層の第1格子定数は前記電子供給層の第2格子定数よりも大きく、前記第2格子定数は、前記電子供給層の組成から導き出される第3格子定数より大きく、前記電子走行層の主面に平行な方向で、前記スペーサ層の格子定数は前記第1格子定数と同等であり、前記スペーサ層は、前記電子走行層の主面に平行な方向に第1引張歪を含み、前記電子供給層は、前記電子走行層の主面に平行な方向に前記第1引張歪よりも小さい第2引張歪を含む半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、二次元電子ガスの濃度を容易に変調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図2】積層構造を示す断面図である。
図3】キャップ層の厚さとシート抵抗との関係を示す図である。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図8】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図9】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図10】第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図11】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図12】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図13】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図14】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図15】第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図16】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図17】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図18】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図19】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図20】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図21】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図22】第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図23】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図24】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図25】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図26】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図27】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図28】第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図29】第5実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
図30】第6実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
図31】第7実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
図32】第8実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含む半導体装置に関する。図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0014】
第1実施形態に係る半導体装置100では、図1に示すように、基板101の上方に窒化物半導体積層構造107が形成されている。窒化物半導体積層構造107には、核形成層102、チャネル層103、スペーサ層104、バリア層105及びキャップ層106が含まれる。核形成層102は基板101上に形成されている。チャネル層103は核形成層102上に形成されている。スペーサ層104はチャネル層103上に形成されている。バリア層105はスペーサ層104上に形成されている。キャップ層106はバリア層105上に形成されている。チャネル層103は電子走行層の一例であり、バリア層105は電子供給層の一例である。
【0015】
基板101は、例えば半絶縁性SiC基板である。核形成層102は、例えば厚さが5nm~150nmのAlN層である。チャネル層103は、例えば厚さが1μm~5μmのGaN層である。スペーサ層104は、例えば厚さが0.5nm~3nmのAlx1Ga1-x1N層(0.40≦x1≦1.00)である。つまり、スペーサ層104は、例えば厚さが0.5nm~3nmで、Al組成x1が0.40以上1.00以下のAlGaN層である。バリア層105は、例えば厚さが4nm~8nmのAlx2Ga1-x2N層(0.30≦x2≦0.70)である。つまり、バリア層105は、例えば厚さが4nm~8nmで、Al組成x2が0.30以上0.70以下のAlGaN層である。キャップ層106は、例えば厚さが8nm~12nmのGaN層である。
【0016】
チャネル層103、スペーサ層104、バリア層105及びキャップ層106は、チャネル層103の主面に平行な方向にa軸を有し、チャネル層103の主面に垂直な方向にc軸を有する。外力を受けず、歪が生じていないとき、GaNのa軸方向の格子定数aGaNは3.189Åであり、AlNのa軸方向の格子定数aAlNは3.112Åであり、Al組成がyのAlGa1-yNの格子定数aAlGaNは、次の式(1)で表される。
AlGaN=aGaN-(aGaN-aAlN)×y・・・(1)
【0017】
a軸方向で、チャネル層103の格子定数a103は格子定数aGaNである。
【0018】
スペーサ層104はチャネル層103に格子整合している。スペーサ層104はチャネル層103の影響により引張方向に歪んでいる。a軸方向で、スペーサ層104の格子定数a104はチャネル層103の格子定数a103と同等である。
【0019】
バリア層105はスペーサ層104及びチャネル層103に格子整合していない。バリア層105はチャネル層103及びスペーサ層104の影響により引張方向に歪んでいるが、バリア層105の引張歪はスペーサ層104の引張歪よりも小さい。つまり、バリア層105の引張歪は部分緩和されている。引張歪の緩和率は、例えば10%~30%程度である。a軸方向で、バリア層105の格子定数a105はスペーサ層104の格子定数a104及びチャネル層103の格子定数a103よりも小さい。また、バリア層105の格子定数a105は、式(1)のyにx2を代入して得られる格子定数aAlGaNよりも大きい。従って、バリア層105の格子定数a105は、格子定数aAlGaNよりも大きく、かつ格子定数aGaNよりも小さい。例えば、バリア層105のチャネル層103側の主面には転位等の結晶欠陥が含まれてもよい。なお、緩和率が0%のとき、バリア層105の格子定数a105は格子定数aGaNと一致し、緩和率が100%のとき、バリア層105の格子定数a105は格子定数aAlGaNと一致する。
【0020】
キャップ層106はバリア層105に格子整合している。キャップ層106は圧縮方向に歪んでいる。a軸方向で、キャップ層106の格子定数a106はバリア層105の格子定数a105と同等である。
【0021】
このように、a軸方向(チャネル層103の主面に平行な方向)で、チャネル層103の格子定数a103は、バリア層105の格子定数a105よりも大きい。
【0022】
窒化物半導体積層構造107に、素子領域を画定する素子分離領域が形成されており、素子領域内において、キャップ層106にソース用の開口部106s及びドレイン用の開口部106dが形成されている。そして、開口部106s内にソース電極108が形成され、開口部106d内にドレイン電極109が形成されている。キャップ層106上に、ソース電極108及びドレイン電極109を覆う絶縁膜110が形成されている。絶縁膜110には、平面視でソース電極108及びドレイン電極109の間に位置する開口部110gが形成されており、開口部110gを通じてキャップ層106と接するゲート電極111が絶縁膜110上に形成されている。
【0023】
ソース電極108及びドレイン電極109は、例えば厚さが10nm~50nmのTa膜及びその上の厚さが100nm~500nmのAl膜を含み、窒化物半導体積層構造107とオーミック接触している。ゲート電極111は、例えば厚さが10nm~50nmのNi膜及びその上の厚さが300nm~500nmのAu膜を含み、窒化物半導体積層構造107とショットキー接触している。絶縁膜110は、例えばSi、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの窒化物の層を含み、好ましくはSi窒化物(SiN)層である。絶縁膜110の厚さは、例えば2nm~500nmであり、好ましくは100nm程度である。
【0024】
次に、図2に示す3種類の積層構造を参照しながら、バリア層105、キャップ層106及び絶縁膜110の作用効果について説明する。図2は、積層構造を示す断面図である。
【0025】
図2(a)に示す第1積層構造は、第1実施形態と同様のチャネル層103、スペーサ層104、バリア層105及びキャップ層106を備える。図2(b)に示す第2積層構造では、バリア層105に代えて、チャネル層103及びスペーサ層104に格子整合するバリア層905が設けられ、キャップ層106がチャネル層103、スペーサ層104及びバリア層905に格子整合している。図2(c)に示す第3積層構造は、第1実施形態と同様のチャネル層103、スペーサ層104、バリア層105、キャップ層106及び絶縁膜110を備える。
【0026】
図3は、図2に示す積層構造におけるキャップ層106の厚さとシート抵抗との関係を示す図である。図3(a)には、第1積層構造及び第2積層構造における関係を示し、図3(b)には、第1積層構造及び第3積層構造における関係を示す。
【0027】
第1積層構造(図2(a))では、バリア層105はスペーサ層104及びチャネル層103に格子整合しておらず、バリア層105の引張歪は部分緩和されている。また、キャップ層106はバリア層105に格子整合しており、キャップ層106は圧縮方向に歪んでいる。このため、キャップ層106に圧縮歪が生じ、ピエゾ分極が発生する。従って、図3(a)に示すように、キャップ層106が厚くなるほどチャネル層103の表層部における2DEG150の濃度が低くなり、シート抵抗が高くなる。一方、第2積層構造(図2(b))では、バリア層905がチャネル層103及びスペーサ層104に格子整合し、キャップ層106がチャネル層103、スペーサ層104及びバリア層905に格子整合している。このため、第2積層構造では、キャップ層106に第1積層構造のようなピエゾ分極が発生しない。従って、キャップ層106が厚くなっても、2DEG150の濃度は第1積層構造ほど低くならず、シート抵抗は第1積層構造ほど高くならない。
【0028】
第3積層構造(図2(c))は、第1積層構造とキャップ層106上の絶縁膜110とを含む。このため、キャップ層106と絶縁膜110との界面に+の電荷が発生し、バンドが押し下げられ、2DEG150の濃度は第1積層構造よりも高く、第2積層構造と同程度である。従って、第3積層構造におけるシート抵抗は第2積層構造におけるシート抵抗と同程度である。
【0029】
このように、第1積層構造に対する絶縁膜110の追加の有無のみで、2DEG150の濃度を調整し、シート抵抗を調整することができる。
【0030】
第1実施形態に係る半導体装置100では、キャップ層106上に絶縁膜110が形成され、絶縁膜110に開口部110gが形成され、ゲート電極111は開口部110gを通じてキャップ層106と接している。このため、開口部110gの下方を除き、チャネル層103の上面近傍に2DEG150が高濃度で存在する。開口部110gの下方では、2DEG150の濃度が極めて低い。このように、半導体装置100によれば、2DEG150の濃度を容易に変調することができる。また、2DEG150の濃度の変調により、オン抵抗を低く抑えながらノーマリオフ動作を実現することができる。
【0031】
なお、図2及び図3に示すように、キャップ層106が厚いほど、絶縁膜110の有無により2DEG150の濃度を調整しやすい。従って、キャップ層106が厚いことが好ましく、キャップ層106の厚さは4nm以上であることが好ましい。また、バリア層105が薄いほど、絶縁膜110の有無により2DEG150の濃度を調整しやすい。従って、バリア層105が薄いことが好ましく、バリア層105の厚さは10nm以下であることが好ましい。
【0032】
次に、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法について説明する。図4図9は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す断面図である。
【0033】
まず、図4に示すように、基板101上に窒化物半導体積層構造107を形成する。窒化物半導体積層構造107の形成では、核形成層102、チャネル層103、スペーサ層104、バリア層105及びキャップ層106を、例えば有機金属気相成長(metal organic vapor phase epitaxy:MOVPE)法により形成する。窒化物半導体積層構造107の形成に際して、GaN層の成長の際には、原料ガスとしてGa源であるトリメチルガリウム(TMGa)ガス及びN源であるアンモニア(NH)ガスの混合ガスを用いる。AlN層の成長の際には、原料ガスとしてAl源であるトリメチルアルミニウム(TMAl)ガス及びNHガスの混合ガスを用いる。AlGaN層の成長の際には、原料ガスとしてTMAlガス、TMGaガス及びNHガスの混合ガスを用いる。成長させる窒化物半導体層の組成に応じて、TMAlガス及びTMGaガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。キャリアガスとして水素(H)ガス又は窒素(N)ガスを用いる。例えば、成長圧力は1kPa~100kPa程度、成長温度は700℃~1200℃程度とする。
【0034】
ここで、バリア層105の成長条件について詳細に説明する。バリア層105の成長の際には、キャリアガスとしてNガスを用い、成長温度を700℃~800℃程度の低温とする。このような条件を採用することで、スペーサ層104及びチャネル層103に格子整合しないバリア層105を成長させることができる。例えば、バリア層105の引張歪の緩和率は10%~30%程度となる。これは、低温下で、還元性の低いNガスをキャリアガスとして用いることにより、転位が発生し、転位により歪が緩和されるためであると考えられる。第1積層構造(図2(a)参照)のように、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度は極めて低い。
【0035】
窒化物半導体積層構造107の形成後、窒化物半導体積層構造107に、素子領域を画定する素子分離領域を形成する。素子分離領域の形成では、例えば、素子分離領域を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを窒化物半導体積層構造107上に形成し、このパターンをマスクとしてAr等のイオン注入を行う。このパターンをエッチングマスクとして塩素系ガスを用いたドライエッチングを行ってもよい。
【0036】
その後、図5に示すように、キャップ層106に開口部106s及び開口部106dを形成する。開口部106s及び開口部106dの形成では、例えば、フォトリソグラフィにより開口部106s及び開口部106dを形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを窒化物半導体積層構造107上に形成し、このパターンをエッチングマスクとして塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。フォトレジストパターンの形成前に表面保護膜を形成してもよい。表面保護膜は、例えばSi、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの酸化物、窒化物又は酸窒化物の層を含み、好ましくはSi酸化物(SiO)層である。開口部106s及び開口部106dの下方では、2DEG150の濃度が高くなる。
【0037】
続いて、図6に示すように、開口部106s内にソース電極108を形成し、開口部106d内にドレイン電極109を形成する。ソース電極108及びドレイン電極109は、例えばリフトオフ法により形成することができる。すなわち、ソース電極108及びドレイン電極109を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、Ta膜を形成し、その上にAl膜を形成する。次いで、例えば、窒素雰囲気中にて400℃~1000℃(例えば550℃)で熱処理を行い、オーミック特性を確立する。
【0038】
その後、図7に示すように、キャップ層106上にソース電極108及びドレイン電極109を覆う絶縁膜110を形成する。絶縁膜110は、例えばプラズマCVD法により形成する。絶縁膜110は、ALD法又はスパッタ法により形成してもよい。絶縁膜110の形成により、第3積層構造(図2(c)参照)のように、ソース電極108とドレイン電極109との間の領域の下方で、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が高くなる。
【0039】
続いて、図8に示すように、絶縁膜110に開口部110gを形成する。開口部110gの形成では、例えば、フォトリソグラフィにより開口部110gを形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを絶縁膜110上に形成し、このパターンをエッチングマスクとして弗素系ガス又は塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。ドライエッチングに代えて、弗酸又はバッファード弗酸等を用いたウェットエッチングを行ってもよい。開口部110gの形成により、開口部110gの下方で、第1積層構造(図2(a)参照)のように、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が極めて低くなる。
【0040】
次いで、図9に示すように、開口部110gを通じてキャップ層106と接するゲート電極111を絶縁膜110上に形成する。ゲート電極111は、例えばリフトオフ法により形成することができる。すなわち、ゲート電極111を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、Ni膜を形成し、その上にAu膜を形成する。
【0041】
このようにして、第1実施形態に係る半導体装置100を製造することができる。
【0042】
スペーサ層104が形成されておらず、バリア層105がチャネル層103に直接接していてもよい。以降の実施形態でも同様である。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、HEMTを含む半導体装置に関する。図10は、第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0044】
第2実施形態に係る半導体装置200では、図10に示すように、ゲート電極111と、キャップ層106及び絶縁膜110との間にゲート絶縁膜212が設けられている。ゲート絶縁膜212は、例えばSi、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの酸化物又は酸窒化物の層を含み、好ましくはAl酸化物(Al)層である。ゲート絶縁膜212の厚さは、例えば5nm~20nmである。ゲート絶縁膜212は局所的に形成されており、例えば、平面視でゲート電極111と重なる範囲内のみに形成されている。
【0045】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0046】
第1実施形態に係る半導体装置100では、ショットキー型ゲート構造が採用されているのに対し、第2実施形態に係る半導体装置200では、MIS(metal-insulator-semiconductor)型ゲート構造が採用されている。また、半導体装置200でも、半導体装置100と同様に、開口部110gの下方を除き、チャネル層103の上面近傍に2DEG150が高濃度で存在し、開口部110gの下方では、2DEG150の濃度が極めて低い。このように、半導体装置200によれば、2DEG150の濃度を容易に変調することができる。また、2DEG150の濃度の変調により、オン抵抗を低く抑えながらノーマリオフ動作を実現することができる。
【0047】
次に、第2実施形態に係る半導体装置200の製造方法について説明する。図11図14は、第2実施形態に係る半導体装置200の製造方法を示す断面図である。
【0048】
まず、図11に示すように、第1実施形態と同様にして、開口部110gの形成までの処理を行う。次いで、図12に示すように、絶縁膜110上にゲート絶縁膜212を形成する。ゲート絶縁膜212は、開口部110g内にも、キャップ層106の表面を覆うように形成する。ゲート絶縁膜212は、例えばプラズマCVD法により形成する。ゲート絶縁膜212をALD法又はスパッタ法により形成してもよい。
【0049】
その後、図13に示すように、ゲート絶縁膜212を加工して、ゲート電極111を形成する予定の領域にゲート絶縁膜212を残存させる。ゲート絶縁膜212の加工では、例えば、フォトリソグラフィによりゲート絶縁膜212の除去する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンをゲート絶縁膜212上に形成し、このパターンをエッチングマスクとして弗素系ガス又は塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。ドライエッチングに代えて、弗酸又はバッファード弗酸等を用いたウェットエッチングを行ってもよい。
【0050】
続いて、図14に示すように、ゲート電極111をゲート絶縁膜212上に形成する。ゲート電極111は、第1実施形態と同様に、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0051】
このようにして、第2実施形態に係る半導体装置200を製造することができる。
【0052】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、HEMTを含む半導体装置に関する。図15は、第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0053】
第3実施形態に係る半導体装置300では、図15に示すように、第1実施形態におけるバリア層105に代えてバリア層305が設けられている。バリア層305は、バリア層105と同様に、スペーサ層104及びチャネル層103に格子整合していない。バリア層305はチャネル層103及びスペーサ層104の影響により引張方向に歪んでいるが、バリア層305の引張歪はスペーサ層104の引張歪よりも小さい。つまり、バリア層105と同様に、バリア層305の引張歪は部分緩和されている。ただし、バリア層305の引張歪の緩和率は、バリア層105の引張歪の緩和率よりも低い。
【0054】
また、第1実施形態における絶縁膜110に代えて絶縁膜310が設けられている。絶縁膜310は、絶縁膜331と絶縁膜332とを含む。絶縁膜331は、ソース電極108の一部を覆い、ドレイン電極109に向けて広がっている。絶縁膜331のドレイン電極109側の端部はドレイン電極109から離間している。絶縁膜332は、ドレイン電極109の一部を覆い、ソース電極108に向けて広がっている。絶縁膜332のソース電極108側の端部はソース電極108から離間している。絶縁膜331のドレイン電極109側の端部と、絶縁膜332のソース電極108側の端部とは互いから離間しており、これら端部の間に絶縁膜310の開口部310gが設けられている。ゲート電極111は、ソース電極108とドレイン電極109との間で絶縁膜310上に設けられており、開口部310gを通じてキャップ層106と接する。
【0055】
絶縁膜331は、絶縁膜332よりも、キャップ層106との界面に+の電荷を生じやすい膜である。絶縁膜331は、例えばSi、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの窒化物の層を含み、好ましくはSi窒化物(SiN)層である。絶縁膜331の厚さは、例えば2nm~500nmであり、好ましくは100nm程度である。絶縁膜332は、例えばSi、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの酸化物又は酸窒化物の層を含み、好ましくはAl酸化物(Al)層である。絶縁膜332の厚さは、例えば5nm~20nmである。
【0056】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0057】
第3実施形態に係る半導体装置300では、キャップ層106上に選択的に絶縁膜331及び332が形成されており、絶縁膜331は、絶縁膜332よりも、キャップ層106との界面に+の電荷を生じやすい膜である。従って、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度は、絶縁膜331の下方で絶縁膜332の下方よりも高い。このように、半導体装置300によれば、2DEG150の濃度を容易に変調することができる。また、2DEG150の濃度の変調により、オン抵抗を低く抑えながらドレイン耐圧を向上することができる。
【0058】
次に、第3実施形態に係る半導体装置300の製造方法について説明する。図16図21は、第3実施形態に係る半導体装置300の製造方法を示す断面図である。
【0059】
まず、図16に示すように、第1実施形態と同様にして、ソース電極108及びドレイン電極109の形成までの処理を行う。但し、バリア層105に代えてバリア層305を形成する。次いで、図17に示すように、キャップ層106上にソース電極108及びドレイン電極109を覆う絶縁膜331を形成する。絶縁膜331は、例えばプラズマCVD法により形成する。絶縁膜331を、ALD法又はスパッタ法により形成してもよい。絶縁膜331の形成により、ソース電極108とドレイン電極109との間の領域の下方で、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が高くなる。
【0060】
その後、図18に示すように、絶縁膜331を加工して、開口部310gを設ける予定の領域とソース電極108との間に絶縁膜331を残存させる。絶縁膜331の加工では、例えば、フォトリソグラフィにより絶縁膜331の除去する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを絶縁膜331上に形成し、このパターンをエッチングマスクとして弗素系ガス又は塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。ドライエッチングに代えて、弗酸又はバッファード弗酸等を用いたウェットエッチングを行ってもよい。絶縁膜331の加工により、開口部310gを設ける予定の領域の下方と、開口部310gを設ける予定の領域とドレイン電極109との間の領域の下方とで、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が低くなる。
【0061】
続いて、図19に示すように、キャップ層106上に絶縁膜331、ソース電極108及びドレイン電極109を覆う絶縁膜332を形成する。絶縁膜332は、例えばプラズマCVD法により形成する。絶縁膜332を、ALD法又はスパッタ法により形成してもよい。絶縁膜332の形成により、開口部310gを設ける予定の領域の下方と、開口部310gを設ける予定の領域とドレイン電極109との間の領域の下方とで、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が更に低くなる。
【0062】
次いで、図20に示すように、絶縁膜332を加工して、開口部310gを設ける予定の領域とドレイン電極109との間に絶縁膜332を残存させる。絶縁膜332の加工では、例えば、フォトリソグラフィにより絶縁膜332の除去する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを絶縁膜332上に形成し、このパターンをエッチングマスクとして弗素系ガス又は塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。ドライエッチングに代えて、弗酸又はバッファード弗酸等を用いたウェットエッチングを行ってもよい。
【0063】
このようにして、絶縁膜331及び332を含み、絶縁膜331と絶縁膜332との間に開口部310gを備えた絶縁膜310が形成される。絶縁膜332の加工により、開口部110gの下方で、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が高くなる。
【0064】
その後、図21に示すように、開口部310gを通じてキャップ層106と接するゲート電極111を絶縁膜310上に形成する。ゲート電極111は、第1実施形態と同様に、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0065】
このようにして、第3実施形態に係る半導体装置300を製造することができる。
【0066】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、HEMTを含む半導体装置に関する。図22は、第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0067】
第4実施形態に係る半導体装置400では、図22に示すように、第3実施形態における絶縁膜310に代えて絶縁膜410が設けられている。絶縁膜410は、絶縁膜431と絶縁膜332とを含む。絶縁膜431は、ソース電極108の一部を覆い、ドレイン電極109に向けて広がっている。絶縁膜431のドレイン電極109側の端部はドレイン電極109から離間している。絶縁膜332は、ドレイン電極109の一部を覆い、ソース電極108に向けて広がっている。絶縁膜332のソース電極108側の端部はソース電極108から離間している。絶縁膜431のドレイン電極109側の端部が、絶縁膜332のソース電極108側の端部の上に重なっている。ゲート電極111は、ソース電極108とドレイン電極109との間で絶縁膜410上に設けられている。絶縁膜332のソース電極108側の端部がゲート電極111の下方にある。つまり、平面視で、ゲート電極111は絶縁膜332の一部と重なり合っている。
【0068】
絶縁膜431は、絶縁膜332よりも、キャップ層106との界面に+の電荷を生じやすい膜である。絶縁膜431は、例えばSi、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの窒化物の層を含み、好ましくはSi窒化物(SiN)層である。絶縁膜431の厚さは、例えば2nm~500nmであり、好ましくは100nm程度である。
【0069】
他の構成は第3実施形態と同様である。
【0070】
第3実施形態に係る半導体装置300では、ショットキー型ゲート構造が採用されているのに対し、第4実施形態に係る半導体装置400では、MIS型ゲート構造が採用されている。また、半導体装置400では、キャップ層106上に選択的に絶縁膜431及び332が形成されており、絶縁膜431は、絶縁膜332よりも、キャップ層106との界面に+の電荷を生じやすい膜である。従って、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度は、絶縁膜431の下方で絶縁膜332の下方よりも高い。このように、半導体装置400によれば、2DEG150の濃度を容易に変調することができる。また、2DEG150の濃度の変調により、オン抵抗を低く抑えながらドレイン耐圧を向上することができる。更に、平面視で、ゲート電極111の下方で絶縁膜332がキャップ層106上に設けられているため、ゲート電極111の下方で、2DEG150の濃度を低く抑えることができる。
【0071】
次に、第4実施形態に係る半導体装置400の製造方法について説明する。図23図28は、第4実施形態に係る半導体装置400の製造方法を示す断面図である。
【0072】
まず、図23に示すように、第3実施形態と同様にして、ソース電極108及びドレイン電極109の形成までの処理を行う。次いで、図24に示すように、キャップ層106上にソース電極108及びドレイン電極109を覆う絶縁膜332を形成する。絶縁膜332は、例えばプラズマCVD法により形成する。絶縁膜332を、ALD法又はスパッタ法により形成してもよい。絶縁膜332の形成により、ソース電極108とドレイン電極109との間の領域の下方で、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が低くなる。
【0073】
その後、図25に示すように、絶縁膜332を加工して、ドレイン電極109の一部を覆い、ソース電極108に向けて広がるように絶縁膜332を残存させる。絶縁膜332の加工により、ソース電極108と絶縁膜332のソース電極108側の端部との間の領域の下方で、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が高くなる。
【0074】
続いて、図26に示すように、キャップ層106上に絶縁膜332、ソース電極108及びドレイン電極109を覆う絶縁膜431を形成する。絶縁膜431は、例えばプラズマCVD法により形成する。絶縁膜431を、ALD法又はスパッタ法により形成してもよい。絶縁膜431の形成により、ソース電極108と絶縁膜332のソース電極108側の端部との間の領域の下方で、チャネル層103の上面近傍における2DEG150の濃度が高くなる。
【0075】
次いで、図27に示すように、絶縁膜431を加工して、ソース電極108の一部を覆い、ドレイン電極109に向けて広がり、絶縁膜332の端部に重なるように絶縁膜431を残存させる。絶縁膜431の加工では、例えば、フォトリソグラフィにより絶縁膜431の除去する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを絶縁膜431上に形成し、このパターンをエッチングマスクとして弗素系ガス又は塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。ドライエッチングに代えて、弗酸又はバッファード弗酸等を用いたウェットエッチングを行ってもよい。
【0076】
このようにして、絶縁膜431及び332を含む絶縁膜410が形成される。
【0077】
その後、図28に示すように、ゲート電極111を絶縁膜431上に形成する。ゲート電極111は、第1実施形態と同様に、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0078】
このようにして、第4実施形態に係る半導体装置400を製造することができる。
【0079】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は、HEMTのディスクリートパッケージに関する。図29は、第5実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【0080】
第5実施形態では、図29に示すように、第1~第4実施形態のいずれかと同様の構造を備えた半導体装置1210の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてランド(ダイパッド)1233に固定されている。また、ドレイン電極109が接続されたドレインパッド1226dに、Alワイヤ等のワイヤ1235dが接続され、ワイヤ1235dの他端が、ランド1233と一体化しているドレインリード1232dに接続されている。ソース電極108に接続されたソースパッド1226sにAlワイヤ等のワイヤ1235sが接続され、ワイヤ1235sの他端がランド1233から独立したソースリード1232sに接続されている。ゲート電極111に接続されたゲートパッド1226gにAlワイヤ等のワイヤ1235gが接続され、ワイヤ1235gの他端がランド1233から独立したゲートリード1232gに接続されている。そして、ゲートリード1232gの一部、ドレインリード1232dの一部及びソースリード1232sの一部が突出するようにして、ランド1233及び半導体装置1210等がモールド樹脂1231によりパッケージングされている。
【0081】
このようなディスクリートパッケージは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、半導体装置1210をはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてリードフレームのランド1233に固定する。次いで、ワイヤ1235g、1235d及び1235sを用いたボンディングにより、ゲートパッド1226gをリードフレームのゲートリード1232gに接続し、ドレインパッド1226dをリードフレームのドレインリード1232dに接続し、ソースパッド1226sをリードフレームのソースリード1232sに接続する。その後、トランスファーモールド法にてモールド樹脂1231を用いた封止を行う。続いて、リードフレームを切り離す。
【0082】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。第6実施形態は、HEMTを備えたPFC(Power Factor Correction)回路に関する。図30は、第6実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【0083】
PFC回路1250には、スイッチ素子(トランジスタ)1251、ダイオード1252、チョークコイル1253、コンデンサ1254及び1255、ダイオードブリッジ1256、並びに交流電源(AC)1257が設けられている。そして、スイッチ素子1251のドレイン電極と、ダイオード1252のアノード端子及びチョークコイル1253の一端子とが接続されている。スイッチ素子1251のソース電極と、コンデンサ1254の一端子及びコンデンサ1255の一端子とが接続されている。コンデンサ1254の他端子とチョークコイル1253の他端子とが接続されている。コンデンサ1255の他端子とダイオード1252のカソード端子とが接続されている。また、スイッチ素子1251のゲート電極にはゲートドライバが接続されている。コンデンサ1254の両端子間には、ダイオードブリッジ1256を介してAC1257が接続される。コンデンサ1255の両端子間には、直流電源(DC)が接続される。そして、本実施形態では、スイッチ素子1251に、第1~第4実施形態のいずれかと同様の構造を備えた半導体装置が用いられている。
【0084】
PFC回路1250の製造に際しては、例えば、はんだ等を用いて、スイッチ素子1251をダイオード1252及びチョークコイル1253等に接続する。
【0085】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。第7実施形態は、サーバ電源に好適な、HEMTを備えた電源装置に関する。図31は、第7実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【0086】
電源装置には、高圧の一次側回路1261及び低圧の二次側回路1262、並びに一次側回路1261と二次側回路1262との間に配設されるトランス1263が設けられている。
【0087】
一次側回路1261には、第6実施形態に係るPFC回路1250、及びPFC回路1250のコンデンサ1255の両端子間に接続されたインバータ回路、例えばフルブリッジインバータ回路1260が設けられている。フルブリッジインバータ回路1260には、複数(ここでは4つ)のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dが設けられている。
【0088】
二次側回路1262には、複数(ここでは3つ)のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cが設けられている。
【0089】
本実施形態では、一次側回路1261を構成するPFC回路1250のスイッチ素子1251、並びにフルブリッジインバータ回路1260のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dに、第1~第4実施形態のいずれかと同様の構造を備えた半導体装置が用いられている。一方、二次側回路1262のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cには、シリコンを用いた通常のMIS型FET(電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0090】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について説明する。第8実施形態は、HEMTを備えた増幅器に関する。図32は、第8実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【0091】
増幅器には、ディジタル・プレディストーション回路1271、ミキサー1272a及び1272b、並びにパワーアンプ1273が設けられている。
【0092】
ディジタル・プレディストーション回路1271は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー1272aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。パワーアンプ1273は、第1~第4実施形態のいずれかと同様の構造を備えた半導体装置を備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー1272bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路1271に送出できる。この増幅器は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。高周波増幅器は、例えば、携帯電話基地局用送受信装置、レーダー装置及びマイクロ波発生装置に用いることができる。
【0093】
基板として、炭化シリコン(SiC)基板、サファイヤ基板、シリコン基板、AlN基板、GaN基板又はダイヤモンド基板を用いてもよい。基板が、導電性、半絶縁性又は絶縁性のいずれであってもよい。
【0094】
ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の構造は上述の実施形態のものに限定されない。例えば、これらが単層から構成されていてもよい。また、これらの形成方法はリフトオフ法に限定されない。更に、オーミック特性が得られるのであれば、ソース電極及びドレイン電極の形成後の熱処理を省略してもよい。ゲート電極の形成後に熱処理を行ってもよい。
【0095】
本開示において、半導体層の組成は、上記の実施形態に記載されたものに限定されない。例えば、InAlN、InGaAlN等の他の窒化物半導体が用いられてもよい。Inを含む半導体層の成長の際には、トリメチルインジウム(TMIn)ガス及びNHガスを含む混合ガスを原料ガスとして用いる。この原料ガスが、TMAlガスを更に含んでいてもよく、TMGaガスを更に含んでいてもよく、TMAlガス及びTMGaガスを更に含んでいてもよい。
【0096】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0097】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0098】
(付記1)
電子走行層と、
前記電子走行層の上方に設けられた電子供給層と、
前記電子供給層の上方に設けられたキャップ層と、
を有し、
前記電子走行層の主面に平行な方向で、前記電子走行層の第1格子定数は前記電子供給層の第2格子定数よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記第2格子定数は、前記電子供給層の組成から導き出される第3格子定数より大きいことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記電子走行層と前記電子供給層との間に設けられ、前記電子走行層に格子整合したスペーサ層を有することを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記電子供給層の上方に設けられたゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記キャップ層上に選択的に形成された窒化物層と、
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
前記ゲート電極は前記キャップ層に直接接していることを特徴とする付記4に記載の半導体装置。
(付記6)
前記ゲート電極と前記キャップ層との間に設けられたゲート絶縁膜を有することを特徴とする付記4に記載の半導体装置。
(付記7)
前記ゲート絶縁膜は、Si、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの酸化物又は酸窒化物の層を含むことを特徴とする付記6に記載の半導体装置。
(付記8)
前記窒化物層は、前記ソース電極と前記ゲート電極との間に設けられていることを特徴とする付記4乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記9)
前記ソース電極と前記ゲート電極との間に設けられたSi、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの酸化物又は酸窒化物の層を有することを特徴とする付記4乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記10)
前記電子供給層の前記電子走行層側の主面に結晶欠陥が含まれることを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記11)
付記1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする増幅器。
(付記12)
付記1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【符号の説明】
【0099】
100、200、300、400:半導体装置
103:チャネル層
104:スペーサ層
105、305:バリア層
106:キャップ層
108:ソース電極
109:ドレイン電極
110、310、331、332、431:絶縁膜
111:ゲート電極
212:ゲート絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32