(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 17/00 20060101AFI20240220BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20240220BHJP
F28F 9/00 20060101ALI20240220BHJP
F25B 39/02 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
F28F17/00 501B
F28D1/053 A
F28F9/00 331
F25B39/02 E
(21)【出願番号】P 2020012157
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】北川 新也
(72)【発明者】
【氏名】宇野 孝博
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-043985(JP,A)
【文献】特開平07-172152(JP,A)
【文献】特開2002-286394(JP,A)
【文献】特開2004-184034(JP,A)
【文献】特開2000-283690(JP,A)
【文献】特開2005-003264(JP,A)
【文献】特開2003-130578(JP,A)
【文献】特開2005-106431(JP,A)
【文献】特開2017-015352(JP,A)
【文献】特開2013-083392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 17/00
F28D 1/053
F28F 9/00
F25B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器(10)であって、
内部を熱媒体が通る管状の部材であって、上下方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ(130,230)と、
前記チューブのうち最も下方側に配置されたもの、の更に下方側となる位置に配置された板状の部材である補強プレート(400)と、を備え、
前記補強プレートには、下方側に向けて突出する屈曲部(430)が、前記チューブの長手方向に沿って伸びるように形成されており、
前記屈曲部には、上方側から到達した凝縮水を下方側に向けて排出するための排出穴(440)が形成されており、
前記屈曲部のうち、その下端部(433)よりも空気の流れ方向に沿って上流側となる領域を上流側領域(431)とし、
前記屈曲部のうち、その下端部よりも空気の流れ方向に沿って下流側となる領域を下流側領域(432)としたときに、
前記排出穴は、
前記上流側領域において前記排出穴に向かって上方側から伸びている上流側リブ(451)の高さ寸法と、
前記下流側領域において前記排出穴に向かって上方側から伸びている下流側リブ(452)の高さ寸法と、が互いに異なるように形成され
、
前記排出穴は複数形成されており、
複数の前記排出穴には、
当該排出穴に対応する前記下流側リブの高さ寸法よりも、当該排出穴に対応する前記上流側リブの高さ寸法の方が大きいものが含まれる熱交換器。
【請求項2】
複数の前記排出穴には、
当該排出穴に対応する前記下流側リブの高さ寸法よりも、当該排出穴に対応する前記上流側リブの高さ寸法の方が大きい第1排出穴(441)と、
当該排出穴に対応する前記上流側リブの高さ寸法よりも、当該排出穴に対応する前記下流側リブの高さ寸法の方が大きい第2排出穴(442)と、が含まれており、
それぞれの前記排出穴は、
前記チューブの長手方向に沿って、前記第1排出穴と前記第2排出穴とが交互に並ぶように形成されている、請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項3】
複数の前記排出穴の全てが、
当該排出穴に対応する前記下流側リブの高さ寸法よりも、当該排出穴に対応する前記上流側リブの高さ寸法の方が大きくなるように形成されている、請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記チューブには、
上下方向に沿って並ぶように配置された複数の第1チューブ(130)と、
前記第1チューブよりも空気の流れ方向に沿って下流側となる位置において、上下方向に沿って並ぶように配置された複数の第2チューブ(230)と、が含まれており、
空気の流れ方向に沿って互いに隣り合う前記第1チューブと前記第2チューブとの間には隙間(GP)が形成されており、
前記屈曲部は、前記隙間の直下となる位置に形成されている、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばヒートポンプシステムに設けられる蒸発器のように、冷媒等の熱媒体との熱交換によって空気から熱を回収する熱交換器では、チューブの内側を通る低温の熱媒体と、チューブの外側を通る空気との間で熱交換が行われる。
【0003】
熱交換器を通過する空気には水蒸気が含まれている。このため、当該空気がチューブの外側を通る際に冷却されると、空気に含まれる水蒸気が凝縮水となってチューブやフィンの表面に付着する。また、凝縮水が霜となってチューブやフィンの表面に付着することもある。
【0004】
上記のような凝縮水や、霜が融解して生じた水のことを、以下ではまとめて「凝縮水」と称する。凝縮水は、チューブやフィンの表面に沿って、重力により下方側へと移動して行く。
【0005】
熱交換器には、複数のチューブ及びフィンを間に挟んで保護するために、板状の部材である補強プレートが設けられることが多い。複数のチューブが水平方向に沿って伸びており、且つ、これらが上下方向に沿って並ぶように配置された構成の熱交換器においては、補強プレートは上下に配置される。具体的には、最も上方側に配置されたチューブの更に上方側、及び、最も下方側に配置されたチューブの更に下方側、のそれぞれに、補強プレートが配置される。
【0006】
このような構成の熱交換器においては、重力により下方側へと移動した凝縮水が、下方側に配置された補強プレートの上面に滞留してしまうことが懸念される。そこで、下記特許文献1に記載の熱交換器では、下方側の補強プレート(サイドプレート)に、冷却水を下方側に排出するための穴を形成することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、補強プレートにはある程度の高い剛性が求められる。このため、本発明者らは、補強プレートに対し、下方側に向けて突出する屈曲部を形成する構成について検討を進めている。このような屈曲部を、補強プレートの長手方向、すなわちチューブの長手方向に沿って伸びるように直線状に形成しておけば、補強プレートの剛性を高めることができる。
【0009】
このような構成の補強プレートにおいては、凝縮水は屈曲部の内側へと流入しやすい。従って、冷却水を排出するための排出穴を、屈曲部に形成しておくことが考えられる。しかしながら、屈曲部の内側に存在する凝縮水には、これを屈曲部に保持するような表面張力が比較的強く働いてしまう。このため、例えば、単に屈曲部の底面を貫くような排出穴を形成しただけでは、凝縮水を十分に排出することが難しい。一方、凝縮水の排出を促すために、上記特許文献1に記載されているような排水ガイドを別途設けることは、コストの観点から好ましくない。
【0010】
本開示は、凝縮水の排水を十分に行うことのできる熱交換器、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る熱交換器は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器(10)である。この熱交換器は、内部を熱媒体が通る管状の部材であって、上下方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ(130,230)と、チューブのうち最も下方側に配置されたもの、の更に下方側となる位置に配置された板状の部材である補強プレート(400)と、を備える。補強プレートには、下方側に向けて突出する屈曲部(430)が、チューブの長手方向に沿って伸びるように形成されており、屈曲部には、上方側から到達した凝縮水を下方側に向けて排出するための排出穴(440)が形成されている。屈曲部のうち、その下端部(433)よりも空気の流れ方向に沿って上流側となる領域を上流側領域(431)とし、屈曲部のうち、その下端部よりも空気の流れ方向に沿って下流側となる領域を下流側領域(432)としたときに、排出穴は、上流側領域において排出穴に向かって上方側から伸びている上流側リブの高さ寸法と、下流側領域において排出穴に向かって上方側から伸びている下流側リブの高さ寸法と、が互いに異なるように形成されている。
【0012】
このような構成の熱交換器では、チューブの下方側に配置された補強プレートに、下方側に向けて突出する屈曲部が形成されている。また、凝縮水を下方側に向けて排出するための排出穴が、上記の屈曲部に形成されている。これにより、凝縮水は、上方側から屈曲部の内側に入り込んだ後、排出穴から外部へと排出されることとなる。
【0013】
排出穴は、上流側リブの高さ寸法と、下流側リブの高さ寸法と、が互いに異なるように形成されている。換言すれば、上流側リブ及び下流側リブのうちの一方は、他方に比べて更に下方側に突出しており、この突出部分が、排出穴に対向した状態となっている。このような構成においては、排出穴の近傍で凝縮水に働く表面張力を比較的小さくすることができる。このため、凝縮水は上記の突出部分に沿って下方側に移動しながら、突出部分に対向する排出穴から外部へとスムーズに排出される。
【0014】
このように、上記構成の熱交換器では、空気の流れ方向に沿った屈曲部の中央に排出穴を形成するのではなく、同方向に沿って屈曲部の中央からずれた位置に排出穴を形成することで、凝縮水の排水を十分に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、凝縮水の排水を十分に行うことのできる熱交換器、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る熱交換器の全体構成を示す図である。
【
図3】
図3は、熱交換器が備えるフィン、及びその上下に配置されたチューブを示す図である。
【
図4】
図4は、熱交換器が備える補強プレートの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、熱交換器にワイヤーが取り付けられた状態を示す図である。
【
図8】
図8は、
図4のVIII-VIII断面を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る熱交換器が備える、補強プレートの構成を示す図である。
【
図10】
図10は、他の変形例に係る熱交換器が備える、補強プレートの構成を示す図である。
【
図11】
図11は、他の変形例に係る熱交換器が備える、補強プレートの構成を示す図である。
【
図12】
図12は、凝縮水に働く力について説明するための図である。
【
図13】
図13は、凝縮水に働く力について説明するための図である。
【
図14】
図14は、凝縮水に働く力について説明するための図である。
【
図15】
図15は、凝縮水に働く力について説明するための図である。
【
図16】
図16は、凝縮水の移動する経路について説明するための図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る熱交換器の構成を示す図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係る熱交換器が備える補強プレート、の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
第1実施形態に係る熱交換器10の構成について説明する。熱交換器10は、不図示の車両に搭載される熱交換器である。
図1に示されるように、熱交換器10は、ラジエータ100と蒸発器200とを組み合わせて一体化した複合型の熱交換器として構成されている。
【0019】
ラジエータ100は、不図示の発熱体を通り高温となった冷却水を、空気との熱交換によって冷却するための熱交換器である。ここでいう「発熱体」とは、上記車両に搭載され冷却を必要とする機器のことであって、例えば内燃機関、インタークーラ、モーター、インバーター、バッテリ等のことである。蒸発器200は、車両に搭載される不図示の空調装置の一部であって、空気との熱交換によって液相の冷媒を蒸発させるための熱交換器である。このように、熱交換器10は、熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器として構成されている。ラジエータ100においては冷却水が上記の「熱媒体」に該当し、蒸発器200においては冷媒が上記の「熱媒体」に該当する。
【0020】
先ず、ラジエータ100の構成について説明する。ラジエータ100は、一対のタンク110、120と、チューブ130と、フィン140と、を備えている。尚、
図1においてはフィン140の図示が省略されている。
【0021】
タンク110、120はいずれも、熱媒体である冷却水を一時的に貯えるための容器である。これらは略円柱形状の細長い容器として形成されており、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で配置されている。タンク110、120は、水平方向に沿って互いに離間した位置に配置されており、両者の間には後述のチューブ130及びフィン140が配置されている。
【0022】
尚、タンク110は、蒸発器200が有するタンク210と一体化されている。同様に、タンク120は、蒸発器200が有するタンク220と一体化されている。
図1においては、タンク110及びタンク210の内部の構成を示すため、タンク110及びタンク210を熱交換器10から取り外した状態が示されている。
【0023】
タンク110には、受入部111、112が形成されている。これらはいずれも、上記の発熱体を通った後の冷却水を受け入れるための部分として設けられている。受入部111は、タンク110のうち上方側となる位置に設けられている。受入部112は、タンク110のうち下方側となる位置に設けられている。
【0024】
図1に示されるように、タンク110の内部空間は、セパレータS3によって上下2つに分けられている。受入部111から共有された冷却水は、タンク110の内部空間のうちセパレータS3よりも上方側の部分に流入する。受入部112から共有された冷却水は、タンク110の内部空間のうちセパレータS3よりも下方側の部分に流入する。
【0025】
タンク120には、排出部121、122が形成されている。これらはいずれも、熱交換に供された後の冷却水を外部へと排出するための部分として設けられている。排出部121は、タンク120のうち上方側となる位置に設けられている。排出部122は、タンク120のうち下方側となる位置に設けられている。
【0026】
タンク120の内部には、セパレータS3と同じ高さとなる位置に、セパレータS3と同様のセパレータが配置されている。タンク120の内部空間は、当該セパレータによって上下2つに分けられている。タンク120のうち当該セパレータよりも上方側の内部空間に流入した冷却水は、排出部121から外部へと排出される。タンク120のうち当該セパレータよりも下方側の内部空間に流入した冷却水は、排出部122から外部へと排出される。
【0027】
チューブ130は、内部を冷却水が通る管状の部材であって、ラジエータ100に複数本備えられている。それぞれのチューブ130は細長い直線状の管となっており、水平方向に沿って伸びるように配置されている。チューブ130は、その一端がタンク110に接続されており、その他端がタンク120に接続されている。これにより、タンク110の内部空間は、それぞれのチューブ130を介して、タンク120の内部空間と連通されている。
【0028】
それぞれのチューブ130は、上下方向、つまりタンク110等の長手方向に沿って並ぶように配置されている。尚、上下方向に沿って互いに隣り合うチューブ130の間にはフィン140が配置されているのであるが、先に述べたように、
図1においてはフィン140の図示が省略されている。
【0029】
外部からタンク110に供給された冷却水は、それぞれのチューブ130の内側を通ってタンク120へと流入する。冷却水は、チューブ130の内側を通る際において、チューブ130の外側を通過する空気によって冷却されその温度を低下させる。尚、当該空気が通過する方向は、タンク110の長手方向及びチューブ130の長手方向のいずれに対しても垂直な方向であって、ラジエータ100から蒸発器200へと向かう方向となっている。熱交換器10の近傍には、上記の方向に空気を送り出すための不図示のファンが設けられている。
【0030】
フィン140は、金属板を波状に折り曲げることによって形成されたコルゲートフィンである。上記のように、フィン140は、上下方向において互いに隣り合うチューブ130の間となる位置に配置されている。つまり、ラジエータ100では、フィン140とチューブ130とが、上下方向に沿って交互に並ぶように積層されている。
図2は、
図1のA部の構成を拡大して示す図である。
図2に示されるように、波状に形成されたフィン140のそれぞれの頂部は、上下方向において隣り合うチューブ130の表面に当接しており、且つろう接されている。
【0031】
チューブ130の内側を冷却水が通っているときにおいては、冷却水の熱がチューブ130を介して空気に伝達されるほか、チューブ130及びフィン140を介しても空気に伝達される。つまり、空気との接触面積がフィン140によって大きくなっており、これにより空気と冷却水との熱交換が効率的に行われる。
【0032】
再び
図1を参照しながら、蒸発器200の構成について説明する。蒸発器200は、一対のタンク210、220と、チューブ230と、フィン140と、を備えている。
【0033】
タンク210、220はいずれも、熱媒体である冷媒を一時的に貯えるための容器である。これらは略円柱形状の細長い容器として形成されており、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で配置されている。タンク210、220は、水平方向に沿って互いに離間した位置に配置されており、両者の間にはチューブ230及びフィン140が配置されている。
【0034】
先に述べたように、タンク210は、ラジエータ100が有するタンク110と一体化されている。同様に、タンク220は、ラジエータ100が有するタンク120と一体化されている。
【0035】
タンク210には、受入部211と排出部212とが形成されている。受入部211は、空調装置を循環する冷媒を受け入れるための部分である。受入部211には、空調装置が備える不図示の膨張弁を通過した後の、低温の液相冷媒が供給される。受入部211は、タンク210のうち上方側の端部近傍となる位置に設けられている。排出部212は、熱交換に供された後の冷媒を外部へと排出するための部分である。蒸発器200における熱交換によって蒸発した気相の冷媒は、排出部212から外部へと排出された後、空調装置が備える不図示の圧縮機へと供給される。
【0036】
図1に示されるように、タンク210の内部空間は、セパレータS1、S2によって上下3つに分けられている。受入部211は、上方側のセパレータS1よりも更に上方側となる位置に設けられている。排出部212は、下方側のセパレータS2よりも更に下方側となる位置に設けられている。
【0037】
タンク220の内部空間は、不図示のセパレータによって上下2つに分けられている。当該セパレータが設けられている位置は、セパレータS1よりも低く、且つセパレータS2よりも高い位置となっている。
【0038】
チューブ230は、内部を冷媒が通る管状の部材であって、蒸発器200に複数本備えられている。それぞれのチューブ230は細長い直線状の管となっており、水平方向に沿って伸びるように配置されている。チューブ230は、その一端がタンク210に接続されており、その他端がタンク220に接続されている。これにより、タンク210の内部空間は、それぞれのチューブ230を介して、タンク220の内部空間と連通されている。
【0039】
それぞれのチューブ230は、上下方向、つまりタンク210等の長手方向に沿って並ぶように配置されている。本実施形態では、それぞれのチューブ230が、空気の流れる方向に沿ってチューブ130と隣り合う位置に配置されている。つまり、チューブ230は、チューブ130と同じ数だけ設けられており、それぞれのチューブ130と同じ高さとなる位置に配置されている。
【0040】
外部から受入部211へと共有された冷媒は、タンク210の内部空間のうちセパレータS1よりも上方側の部分に流入する。当該冷媒は、セパレータS1よりも上方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク220の内部空間のうち不図示のセパレータよりも上方側の部分に流入する。その後、冷媒は、当該セパレータよりも上方側であり且つセパレータS1よりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク210の内部空間のうちセパレータS1とセパレータS2との間の部分に流入する。
【0041】
更にその後、冷媒は、セパレータS2よりも上方側であり且つタンク220内のセパレータよりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク220の内部空間のうちセパレータよりも下方側の部分に流入する。当該冷媒は、セパレータS2よりも下方側に配置されたチューブ230の内側を通り、タンク220の内部空間のうちセパレータS2よりも下方側の部分に流入した後、排出部212から外部へと排出される。
【0042】
冷媒は、上記のように各チューブ230の内側を通る際において、チューブ230の外側を通過する空気によって加熱されて蒸発し、液相から気相へと変化する。当該空気は、ラジエータ100を通過して温度が上昇した後の空気である。空気は、チューブ230の外側を通過する際において熱を奪われるため、その温度を低下させる。
【0043】
上下方向に沿って互いに隣り合うチューブ230の間には、
図1においては不図示のフィン140が配置されている。このフィン140は、先に述べたラジエータ100が備えるフィン140である。
図3に示されるように、それぞれのフィン140は、ラジエータ100が備えるチューブ130の間から、蒸発器200が備えるチューブ230の間まで伸びるように配置されている。つまり、ラジエータ100と蒸発器200との間では、それぞれのフィン140が共有されている。
【0044】
このため、蒸発器200では、
図2を参照しながら説明したラジエータ100と同様に、フィン140とチューブ230とが、上下方向に沿って交互に並ぶように積層されている。波状に形成されたフィン140のそれぞれの頂部は、上下方向において隣り合うチューブ230の表面に当接しており、且つろう接されている。
【0045】
チューブ230の内側を冷媒が通っているときにおいては、空気の熱がチューブ230を介して冷媒に伝達されるほか、チューブ230及びフィン140を介しても冷媒に伝達される。つまり、空気との接触面積がフィン140によって大きくなっており、これにより空気と冷媒との熱交換が効率的に行われる。
【0046】
本実施形態では更に、チューブ130の内側を通る冷却水の熱が、フィン140を介した熱伝導によっても、チューブ230の内側を通る冷媒へと伝えられる。蒸発器200では、空気からの熱に加えて冷却水からの熱も回収されるので、空調装置の動作効率が更に高くなっている。
【0047】
図1に示されるように、最も上方側に配置されたチューブ130、230の更に上方側となる位置には、板状の部材である補強プレート300が配置されている。また、最も下方側に配置されたチューブ130、230の更に下方側となる位置には、板状の部材である補強プレート400が配置されている。補強プレート300、400は、チューブ130等を補強してその変形を防止するために設けられた金属板である。
図2に示されるように、最も下方側に配置されたチューブ130、230と、補強プレート400との間にも、フィン140が配置されている。
【0048】
図1においては、ラジエータ100から蒸発器200へと向かう方向、すなわち、これらを通るように空気が流れる方向がx方向となっており、同方向に沿ってx軸が設定されている。また、x方向に対して垂直な方向であって、タンク120からタンク110に向かう方向、すなわちチューブ130等の長手方向がy方向となっており、同方向に沿ってy軸が設定されている。更に、x方向及びy方向のいずれに対しても垂直な方向であって、下方側から上方側に向かう方向、すなわちタンク110等の長手方向がz方向となっており、同方向に沿ってz軸が設定されている。以降においては、上記のように定義されたx方向、y方向、及びz方向を用いて説明を行う。
【0049】
図3には、一つのフィン140と、その上下両側に配置されたチューブ130、230の断面とが示されている。同図に示されるように、チューブ130、230は、いずれもx方向に沿って伸びるような扁平形状の断面を有している。チューブ130の内部には冷却水の通る流路FP1が形成されている。流路FP1にはインナーフィンIF1が配置されている。同様に、チューブ230の内部には冷媒の通る流路FP2が形成されている。流路FP2にはインナーフィンIF2が配置されている。同じ高さとなる位置に配置されたチューブ130とチューブ230との間には、隙間GPが形成されている。
【0050】
図3に示されるように、フィン140には複数のルーバー141が形成されている。ルーバー141は、フィン140の一部を切り起こすことによって形成されたものである。具体的には、フィン140のうち平板状の部分に対し、z方向に沿って伸びる直線状の切り込みを、x方向に沿って並ぶように複数形成した上で、互いに隣り合う切り込みの間の部分を捩じることによってルーバー141が形成されている。ルーバー141の近傍に形成された隙間を空気が通過することで、空気との間における熱交換が更に効率的に行われる。尚、このようなルーバー141の形状としては、従来のフィンに形成されるルーバーと同様の形状を採用することができる。
【0051】
補強プレート400の具体的な構成について説明する。先に述べたように、補強プレート400は、最も下方側に配置されたチューブ130、230の更に下方側となる位置に配置される板状の部材である。補強プレート400は、細長い板状の部材として形成されており、その長手方向を、チューブ130、230の長手方向に沿わせた状態で配置されている。
図4及び
図5に示されるように、補強プレート400には、平板部410と、折り返し部420と、屈曲部430と、が形成されている。
【0052】
平板部410は平板状に形成された部分であって、補強プレート400の大部分を占めている。平板部410の法線方向は、z軸に沿う方向となっている。
【0053】
折り返し部420は、平板部410のうち-x方向側の端部、及び、平板部410のうちx方向側の端部のそれぞれから、-z方向側に向かって伸びるように形成された概ね平板状の部分である。
【0054】
屈曲部430は、平板部410のうちx方向における中央となる部分を、下方側、すなわち-z方向側に向けて突出するよう屈曲させることにより形成された部分である。屈曲部430は、補強プレート400やチューブ130等の長手方向、すなわちy方向に沿って直線状に伸びるように形成されている。
【0055】
補強プレート300にも、屈曲部430と同様の屈曲部(不図示)が形成されている。このような屈曲部が形成されていることにより、補強プレート300、400の剛性が高められている。
【0056】
熱交換器10の製造時においては、各部のろう付けが行われる直前において、
図6に示されるように、熱交換器10に複数のワイヤーWRが巻き付けられた状態とされる。ワイヤーWRにより、ろう付け前における熱交換器10の形状が維持される。熱交換器10は、ワイヤーWRによって形状が維持された状態のまま炉に投入され、ろう材を含む全体が加熱される。これにより、熱交換器10の各部のろう付けが行われる。
【0057】
図6の状態において、熱交換器10はワイヤーWRにより比較的強く締め付けられる。このため、補強プレート300、400の剛性が充分でない場合には、ワイヤーWRからの締め付け力によって補強プレート300、400が変形し、これに応じてチューブ130やフィン140等も変形してしまうこととなる。このような変形を防止するために、本実施形態では、補強プレート300、400に屈曲部430を形成し、その剛性を高めることとしている。
【0058】
尚、ろう付けが完了した後においても、屈曲部430により、補強プレート300、400の剛性は高く維持される。これにより、熱交換器10の耐振性等が向上する。
【0059】
ところで、熱交換器10をx方向に通過する空気には水蒸気が含まれている。このため、当該空気がチューブ230の外側を通る際に冷却されると、空気に含まれる水蒸気が凝縮水となってチューブ230やフィン140の表面に付着する。また、凝縮水が霜となってチューブ230やフィン140の表面に付着することもある。
【0060】
上記のような凝縮水や、霜が融解して生じた水のことを、以下ではまとめて「凝縮水」と称する。凝縮水は、チューブ230やフィン140の表面に沿って、重力により下方側へと移動して行く。最終的には、下方側にある補強プレート400の上面に到達し、屈曲部430の内側へと流入することとなる。
【0061】
図4、
図7、及び
図8に示されるように、屈曲部430には複数の排出穴440が形成されている。排出穴440は、補強プレート400を貫くように形成された貫通穴である。屈曲部430に上方側から流入した凝縮水は、いずれかの排出穴440を通って外部へと排出される。つまり、排出穴440は、上方側から到達した凝縮水を下方側に向けて排出するための穴である。
【0062】
排出穴440の具体的な形状について説明する。説明の便宜のために、屈曲部430のうち、その下端部433よりも空気の流れ方向に沿って上流側(つまり-x方向側)となる領域のことを、以下では「上流側領域431」とも表記する。また、屈曲部430のうち、その下端部433よりも空気の流れ方向に沿って下流側(つまりx方向側)となる領域のことを、以下では「下流側領域432」とも表記する。
【0063】
図7には、
図4のVII-VII断面が示されている。
図4及び
図7に示されるように、この位置に形成された排出穴440は、下端部433からx方向側の部分、すなわち、屈曲部430のうち下流側領域432を貫くように形成されている。このように、x方向側寄りとなる位置に形成された排出穴440のことを、以下では「第1排出穴441」とも表記する。本実施形態では、第1排出穴441の上端は平板部410に位置している。また、第1排出穴441の下端は、屈曲部430の下端部433に一致している。
【0064】
図8には、
図4のVIII-VIII断面が示されている。
図4及び
図8に示されるように、この位置に形成された排出穴440は、下端部433から-x方向側の部分、すなわち、屈曲部430のうち上流側領域431を貫くように形成されている。このように、-x方向側寄りとなる位置に形成された排出穴440のことを、以下では「第2排出穴442」とも表記する。本実施形態では、第2排出穴442の上端は平板部410に位置している。また、第2排出穴442の下端は、屈曲部430の下端部433に一致している。
【0065】
図4に示されるように、本実施形態に係る補強プレート400では、屈曲部430が伸びるy方向に沿って、第1排出穴441と第2排出穴442とが交互に並ぶように配置されている。
【0066】
尚、-x方向側寄りもしくはx方向側寄りとなる位置に形成される第1排出穴441等の形状としては、種々の形状を採用することができる。
図9には、第1排出穴441の変形例が示されている。
【0067】
図9の例では、第1排出穴441の下端は、
図7の例と同様に、屈曲部430の下端部433に一致している。一方、第1排出穴441の上端位置は、平板部410よりも下方側の位置となっている。
【0068】
図9の断面において、屈曲部430のうち排出穴440を除く部分は、排出穴440に向かって上方側から伸びている板状の「リブ」と表現することができる。上流側領域431において排出穴440に向かって上方側から伸びている上記リブのことを、以下では「上流側リブ451」とも表記する。同様に、下流側領域432において排出穴440に向かって上方側から伸びている上記リブのことを、以下では「下流側リブ452」とも表記する。
【0069】
図9の例では、上流側リブ451の高さ寸法、すなわちz軸に沿った寸法は、L1となっている。また、下流側リブ452の高さ寸法、すなわちz軸に沿った寸法は、L2となっている。
図9の例でも、第1排出穴441は、屈曲部430においてx方向寄りとなる部分を貫くように形成されている。その結果、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法と、が互いに異なっており、L1がL2よりも大きくなっている。
【0070】
上流側リブ451及び下流側リブ452のそれぞれを上記のように定義すると、
図7に示される本実施形態の構成は、下流側リブ452の高さ寸法であるL2が0となっている構成、ということもできる。また、
図8に示される構成は、上流側リブ451の高さ寸法であるL1が0となっている構成、ということもできる。いずれにしても、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法と、が互いに異なっている。このように、「上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法と、が互いに異なっている」構成には、上流側リブ451が存在せずL1が0となっている構成や、下流側リブ452が存在せずL2が0となっている構成も含まれる。
【0071】
図10には、第1排出穴441について、
図9とは別の変形例が示されている。この変形例では、第1排出穴441のうち一方側の端部が、下端部433よりも-x方向側となる位置、すなわち上流側領域431の途中となる位置に配置されている。また、第1排出穴441のうち他方側の端部が、下端部433よりもx方向側となる位置、すなわち下流側領域432の途中となる位置であって、且つ、上記の一方側の端部よりも高い位置に配置されている。
【0072】
従って、
図10の変形例においても、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法であるL2と、が互いに異なっており、L1がL2よりも大きくなっている。その結果として、第1排出穴441は、屈曲部430においてx方向寄りとなる部分を貫くように形成されている。
【0073】
図11には、第1排出穴441について、
図9や
図10とは更に別の変形例が示されている。この変形例では、第1排出穴441の下端が、下端部433よりもx方向側となる位置、すなわち下流側領域432の途中となる位置に配置されている。また、第1排出穴441の上端が、第1排出穴441の下端よりも上方側であって、且つ、下流側領域432の途中となる位置に配置されている。
【0074】
従って、
図11の変形例においても、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法であるL2と、が互いに異なっており、L1がL2よりも大きくなっている。その結果として、第1排出穴441は、屈曲部430においてx方向寄りとなる部分を貫くように形成されている。
【0075】
尚、この変形例のような構成においては、「上流側リブ451の高さ寸法」であるL1は、
図11に示されるように、-z方向に向けた屈曲部430の突出量に一致する。
【0076】
図9乃至
図11では、L1がL2よりも大きくなっている態様の例を示している。このような態様に替えて、それぞれの変形例の構成を、y-z平面を挟んで対称となるように反転させることにより、L2がL1よりも大きくなっている態様としてもよい。つまり、
図8に示される第2排出穴442と同様に、屈曲部430において-x方向寄りとなる部分を貫くよう、排出穴440が形成されている態様としてもよい。いずれにしても、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法と、は互いに異なることとなる。
【0077】
先に述べた「第1排出穴441」は、複数の排出穴440のうち、当該排出穴440に対応する下流側リブ452の高さ寸法よりも、当該排出穴440に対応する上流側リブ451の高さ寸法の方が大きいもの、と改めて定義することができる。
図9、
図10、
図11のそれぞれに示されるのは、いずれも第1排出穴441に該当する。
【0078】
同様に、先に述べた「第2排出穴442」は、複数の排出穴440のうち、当該排出穴440に対応する上流側リブ451の高さ寸法よりも、当該排出穴440に対応する下流側リブ452の高さ寸法の方が大きいもの、と改めて定義することができる。
図9、
図10、
図11に示される構成を、y-z平面を挟んで対称となるように反転させた構成は、いずれも第2排出穴442に該当する。本実施形態に係る第2排出穴442の形状を、このような変形例に係る構成としてもよい。
【0079】
本実施形態に係る補強プレート400では、以上に説明したような各変形例と同様に、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法と、が互いに異なるよう、それぞれの排出穴440が形成されている。このような構成としたことの利点について、
図12を参照しながら説明する。
【0080】
図12(A)に示されるのは、比較例に係る補強プレート400の上面に凝縮水WTが滞留した状態である。この比較例では、補強プレート400の全体が概ね平板状となっており、本実施形態のような屈曲部430が形成されていない。つまり、本実施形態の補強プレート400において、その全体を平板部410としたような形状となっている。この変形例では、補強プレート400を上下に貫くよう、貫通穴HLが形成されている。
【0081】
図12(A)において符号「LN」が付されているのは、凝縮水WTと、その紙面奥側に存在するフィン140と、空気との境界、すなわち、凝縮水WTの濡れ縁となっている線を示すものである。以下では、周囲の構造物に対する凝縮水WTの濡れ縁の長さのことを、「濡れ縁長さLN」とも表記する。また、濡れ縁の部分における凝縮水WTの接触角のことを、以下では「接触角θ」とも表記する。更に、凝縮水WTの表面における表面張力のことを、以下では「表面張力Y」とも表記する。
【0082】
フィン140等の構造物を濡らしている凝縮水WTには、表面張力によって構造物の表面に保持するような力が加えられている。このような力を「保持力」と定義すると、保持力は、以下の式(1)により算出することができる。
(保持力)=(表面張力Y)×(濡れ縁長さLN)×cosθ・・・(1)
【0083】
上記のように算出される保持力のz方向の成分が、重力に抗する力として凝縮水WTに働くこととなる。
図12(A)の例においては、凝縮水WTの大部分が補強プレート400の上面上に存在しており、その近傍にあるフィン140を広く濡らしている。この場合、濡れ縁長さLNが大きくなることに伴い、凝縮水WTには比較的大きな保持力が働く。矢印F3は、凝縮水WTに働く重力を示している。しかしながら、凝縮水WTには、上記のように大きな保持力が働いているので、凝縮水WTは、貫通穴HLを通じて下方側に排出されにくくなってしまっている。
【0084】
図12(B)に示されるのは、もう一つの比較例に係る補強プレート400の上面に凝縮水WTが滞留した状態である。この比較例では、本実施形態と同様に、補強プレート400に屈曲部430が形成されている。ただし、この比較例では、補強プレート400の中央を貫くように排出穴440が形成されているので、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法であるL2と、が互いに等しくなっている。
【0085】
このような構成においては、凝縮水WTは重力によって下方側に移動し、屈曲部430の内側に入り込む。その後、凝縮水WTは、互いに対向する上流側リブ451と下流側リブ452との間に挟み込まれた状態となる。尚、
図12(B)において示される点Pは、紙面奥行き方向に沿って伸びる凝縮水WTの濡れ縁を示す点である。
図12(B)の「F1」は、補強プレート400の表面に沿って、表面張力により凝縮水WTに加わっている力、すなわち上記の「保持力」である。
図12(B)の「F2」は、保持力であるF1のz方向の成分である。
【0086】
図12(B)の状態においても、凝縮水WTには、矢印F3で示される重力が働いている。この場合、凝縮水WTに働く保持力は、
図12(A)の場合に比べると小さい。しかしながら、凝縮水WTには、上流側リブ451と下流側リブ452との両方に接しており、それぞれから「F2」で示されるz方向の保持力を受けている。このため、凝縮水WTにはやはり大きな保持力が働いているので、凝縮水WTは、排出穴440を通じて下方側に排出されにくくなってしまっている。
【0087】
図12(C)に示されるのは、本実施形態に係る補強プレート400の上面に凝縮水WTが滞留した状態である。
図12(C)では、
図8に示される第2排出穴442の近傍部分の断面が模式的に示されている。
【0088】
この場合も
図12(B)の場合と同様に、凝縮水WTは重力によって下方側に移動し、屈曲部430の内側に入り込む。ただし、本実施形態においては、上流側リブ451の高さ寸法が0となっており、下流側リブ452の高さ寸法よりも小さくなっているので、凝縮水WTは、その大部分が下流側リブ452に接した状態となっている。
図12(B)の場合のように、上流側リブ451と下流側リブ452との両方によって均等に挟み込まれた場合に比べると、
図12(C)の状態においては、凝縮水WTの保持のバランスが崩れやすくなっている。このため、比較的短時間のうちに凝縮水WTのブリッジが切れてしまい、
図12(D)の状態に移行する。
【0089】
図12(D)の状態では、凝縮水WTは、下流側リブ452のみに接している。このため、保持力のz成分であるF2の力は、
図12(B)の場合に比べると半分にまで低下している。凝縮水WTに加えられる保持力が小さくなるので、凝縮水WTは、矢印F3で示される重力によって下方側へ移動し、第2排出穴442から外部へとスムーズに排出される。尚、第1排出穴441においても、上記と同様に保持力が半分に低下するので、凝縮水WTはスムーズに排出される。
【0090】
このように、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法であるL2と、が互いに異なるよう、それぞれの排出穴440が形成されている構成によれば、凝縮水の排水を十分に行うことが可能となる。このような効果は、本実施形態と同一の構成のみならず、
図9乃至
図11を参照しながら説明した各変形例のような構成においても奏することができる。
【0091】
先に述べたように、本実施形態に係る補強プレート400には、排出穴440として、第1排出穴441及び第2排出穴442からなる2種類の穴が形成されている。これらのうち、第1排出穴441は、第2排出穴442に比べて、凝縮水の排出を更にスムーズに行うことが可能となっている。
【0092】
その理由について説明する。
図13に示される矢印AR1は、熱交換器10を通過する空気の流れを示している。また、同図に示される矢印AR2は、空気の流れによって押し出される凝縮水の流れを示している。矢印AR2で示されるように、補強プレート400の上面に滞留していた凝縮水は、空気の流れによる力、所謂「ラム圧」を受けることにより、x方向に向かって移動し、屈曲部430の内側に流入する。第1排出穴441は、x方向側に向けて広く開口しているので、x方向に向かって移動し屈曲部430に到達した凝縮水は、そのx方向への運動量を一部保ったまま、第1排出穴441を通じてx方向側へと排出されることとなる。このため、第2排出穴442に比べると、第1排出穴441からの凝縮水の排出はよりスムーズに行われることとなる。
【0093】
図14に示される矢印AR11は、熱交換器10の下方側、すなわち、補強プレート400の更に下方側を通過する空気の流れを示している。このような空気の流れは、例えば、熱交換器10の-x方向側に配置されたシャッターが閉じられており、当該シャッターの外周部から、車速風もしくはファンにより送り出された空気が下流側へと流入することにより生じるものである。矢印AR11で示される空気は、補強プレート400の上方側を通らず、下方側のみを通る。
【0094】
尚、補強プレート400の下方側のみを通るような空気の流れは、熱交換器10の-x方向側にシャッターが配置されていない場合であっても生じることがある。例えば、補強プレート400のチューブ130との間の隙間が、不図示の周辺構造物によって-x方向側から覆われているような場合には、矢印AR11で示されるような空気の流れが生じ得る。
【0095】
矢印AR11で示されるような空気の流れが生じると、屈曲部430の近傍においては、空気の流れに起因した負圧が生じる。屈曲部430の内側に滞留していた凝縮水は、当該負圧によって第1排出穴441からx方向側へと引き出され、外部へと排出される。
図13においては、このように凝縮水の流れる経路が矢印AR12で示されている。本実施形態では、このような第1排出穴441を含ませておくことで、凝縮水の排出をよりスムーズに行うことができる。
【0096】
図15において点線DL1で示されるのは、
図12(B)に示されるような構成、すなわち、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法であるL2と、が互いに等しくなっているような構成において、凝縮水に対しz方向に加えられる保持力の大きさを示している。また、
図15に示される棒G1の高さは、凝縮水に加えられる重力の大きさを示している。棒G1の高さは、点線DL1よりも低い。これは、
図12(B)に示されるような比較例では、保持力の方が重力よりも大きいので、凝縮水が外部に排出されにくいことを示している。
【0097】
図15において点線DL2で示されるのは、本実施形態に係る構成、すなわち、上流側リブ451の高さ寸法であるL1と、下流側リブ452の高さ寸法であるL2と、が互いに異なっているような構成において、凝縮水に対しz方向に加えられる保持力の大きさを示している。
図12を参照しながら説明したように、本実施形態の構成において凝縮水に加えられる保持力は、
図12(B)の場合、すなわち点線DL1に比べると半分にまで低下する。その結果、本実施形態の構成では、点線DL2で示される保持力が、棒G1で示される重力よりも小さくなるので、凝縮水がスムーズに排出されるのである。
【0098】
図15に示される棒G2は、棒G1に対して棒OFを加算したものである。棒OFは、
図13を参照しながら説明した空気の流れによる力、もしくは、
図14を参照しながら説明した負圧による力を、凝縮水を排出する力に換算して模式的に表すものである。このため、棒G1に棒OFを加算した全体の高さが、本実施形態の構成において、凝縮水を外部に排出する力に該当する。
図15に示されるように、当該力は、保持力である点線DL2を大きく上回っている。このため、本実施形態では、凝縮水が更にスムーズに排出されるのである。
【0099】
ところで、凝縮水の排出効率に鑑みれば、全ての排出穴440を、第1排出穴441とした方がよいようにも思われる。しかしながら、本実施形態ではそのような構成とはせず、排出穴440に、第1排出穴441と第2排出穴442とが含まれた構成としている。その上で、
図4に示されるように、これらがチューブ130等の長手方向に沿って交互に並ぶような構成となっている。
【0100】
このような構成においては、熱交換器10の組立時において、仮に、補強プレート400が前後逆に組付けられた場合、具体的には、補強プレート400が、
図4の状態からz軸の周りに180度回転させた状態で誤って組付けられた場合であっても、一部の排出穴440を第1排出穴441として機能させることができる。上記の「一部の排出穴440」とは、補強プレート400が正常に組付けられた場合には、第2排出穴442となる予定だった排出穴440のことである。
【0101】
尚、補強プレート400が上記のように誤って組付けられた場合でも、完全に同一の排出性能を実現するためには、z軸の周りに180度回転させた場合でも補強プレート400の形が同一となるように、補強プレート400の形状を対称な形状とした方が好ましい。
【0102】
本実施形態に係る熱交換器10が備える複数のチューブには、チューブ130とチューブ230とが含まれる。チューブ130は、上下方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブであって、本実施形態における「第1チューブ」に該当する。チューブ230は、チューブ130よりも空気の流れ方向に沿って下流側となる位置において、上下方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブであって、本実施形態における「第2チューブ」に該当する。先に述べたように、空気の流れ方向に沿って互いに隣り合うチューブ130とチューブ230との間には隙間GPが形成されている。
図16に示されるように、本実施形態における屈曲部430は、チューブ130とチューブ230との間に形成された隙間GPの直下となる位置に形成されている。
【0103】
このような構成においては、チューブ130、チューブ230、及びフィン140のそれぞれの表面で生じた凝縮水の大部分が、重力により、隙間GPを通って下方側に移動し、隙間GPの直下にある屈曲部430の内側へと流入する。その後は、先に述べたように、排出穴440から外部へと排出される。
図16においては、上記のように隙間GPを通って下方側に移動する凝縮水の流れが、矢印AR3で示されている。
【0104】
このように、本実施形態では、隙間GPの直下に屈曲部430が位置するような構成とすることで、凝縮水の排出を更にスムーズに行うことが可能となっている。
【0105】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0106】
本実施形態に係る熱交換器10は、第1実施形態のようなラジエータ100を備えておらず、蒸発器200のみによって構成されている。つまり、複合型の熱交換器ではなく単一の熱交換器として構成されている。このため、
図17に示されるように、x方向に沿った補強プレート400幅寸法は、同方向に沿ったチューブ230の幅寸法と概ね同一となっている。本実施形態においては、当然ながら、第1実施形態のような隙間GPは存在しない。
【0107】
本実施形態に係る補強プレート400も、第1実施形態の場合と同様に、平板部410のうちx方向における中央となる部分に形成されている。このような構成においても、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。このように、排水性を向上させるための補強プレート400の形状は、第1実施形態のような複合型の熱交換器のみならず、上下方向に沿って並ぶチューブ230が一列しか存在しない単一の熱交換器においても適用することができる。
【0108】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0109】
本実施形態は、補強プレート400に形成された排出穴440の配置においてのみ第1実施形態と異なっている。
図18に示されるように、本実施形態では、全ての排出穴440が、x方向側寄りとなる位置に形成された第1排出穴441として形成されており、第2排出穴442は形成されていない。それぞれの排出穴440の形状は、
図7を参照しながら説明した第1実施形態の第1排出穴441の形状と同じである。ただし、それぞれの排出穴440の形状を、
図9、
図10、
図11の何れかに示される変形例のような形状としてもよい。
【0110】
このように、本実施形態では、複数の排出穴440の全てが、当該排出穴440に対応する下流側リブ452の高さ寸法よりも、当該排出穴440に対応する上流側リブ451の高さ寸法の方が大きくなるように形成されている。このような構成とすることで、全ての排出穴440からの水の排出を、
図13及び
図14を参照しながら説明したように、空気の流れによって促進することが可能となる。このような構成の補強プレート400は、先に述べた第2実施形態に採用してもよい。
【0111】
例えば、補強プレート400の組付け方向の誤りを、何らかの機構によって防止することが可能な場合には、本実施形態のように、全ての排出穴440を第1排出穴として構成することで、凝縮水の排出を更に促進し得る構成とすることが望ましい。
【0112】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0113】
10:熱交換器
130,230:チューブ
400:補強プレート
430:屈曲部
431:上流側領域
432:下流側領域
440:排出穴
451:上流側リブ
452:下流側リブ