(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】間仕切壁の遮音構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/86 20060101AFI20240220BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
E04B1/86 F
E04B1/82 J
E04B1/82 W
(21)【出願番号】P 2020012616
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】奥村 美紀
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-047123(JP,U)
【文献】独国実用新案第20221261(DE,U1)
【文献】特開平11-181928(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0432623(KR,Y1)
【文献】特開2004-278294(JP,A)
【文献】特開2007-107315(JP,A)
【文献】特開2002-138597(JP,A)
【文献】登録実用新案第3222355(JP,U)
【文献】特開2002-194832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 2/56、2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面が形成された床材と、
建物内の空間を挟んで前記床面と鉛直方向に対向する天井面が形成された天井材と、
前記空間を水平方向に仕切る間仕切壁であって、前記鉛直方向に延びると共に前記水平方向に中空部を挟んで配置された第1面材及び第2面材を含むとともに前記第1面材が前記中空部側を向く第1内面を有し、かつ、前記第2面材が前記中空部側を向くと共に前記中空部を挟んで前記第1内面に対向する第2内面を有する一対の面材と、前記中空部に配置され、前記一対の面材を支持し、前記鉛直方向に延びると共に前記第1内面に固定された第1間柱と、前記中空
部に配置され、前記鉛直方向に延びると共に前記第2内面に固定された第2間柱と、を含む前記間仕切壁と、
前記第1間柱及び前記第2間柱を前記水平方向に位置決めするための位置決め部材と、
前記中空部において前記床面及び前記天井面のうち少なくとも一方の面に配置された遮音面材と、を備え、
前記一対の面材は、前記少なくとも一方の面との間に前記鉛直方向の隙間を空けて配置されており、
前記遮音面材は、前記隙間よりも厚く且つ前記中空部側から前記隙間を塞ぐように配置され、前記位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含み、
前記位置決め部材は、前記少なくとも一方の面との間で前記遮音面材を前記鉛直方向に挟むように前記中空部内に設けられ、前記位置決め部材は、前記第1間柱と前記第1内面との間に設けられた第1位置決め部と、前記第2間柱と前記第2内面との間に設けられた第2位置決め部と、前記第1位置決め部と前記第2位置決め部との間に設けられた少なくとも一つの中央位置決め部と、前記第1間柱及び前記第2間柱の端部を挿入するための2つの溝を形成するために前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部と前記少なくとも一つの中央位置決め部とを接続する少なくとも一つの基部と、を有し、
前記少なくとも一つの中央位置決め部は、前記少なくとも一つの基部から前記第1間柱及び前記第2間柱を前記水平方向に位置決め可能となる位置まで前記鉛直方向に延びるとともに、前記間仕切壁の壁面方向に延びている、間仕切壁の遮音構造。
【請求項2】
前記遮音面材は、前記隙間と同じ厚さを有する第1面材部分と、前記間仕切壁の壁厚方向において前記一対の面材と重なる第2面材部分と、を含み、
前記第2面材部分の面密度が前記位置決め部材の面密度よりも大きい、請求項1に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項3】
前記第2面材部分の面密度が前記一対の面材の面密度以上である、請求項2に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項4】
前記遮音面材は、前記床面に配置されると共に、前記床材と異なるコインシデンス周波数を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項5】
前記遮音面材は、前記天井面に配置されると共に、前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項6】
床面が形成された床材と、
建物内の空間を挟んで前記床面と鉛直方向に対向する天井面が形成された天井材と、
前記空間を水平方向に仕切る間仕切壁であって、前記鉛直方向に延びると共に前記水平方向に中空部を挟んで配置された一対の面材と、前記中空部に配置されると共に前記一対の面材を支持するための間柱と、を含む前記間仕切壁と、
前記間柱を前記水平方向に位置決めするための位置決め部材と、
前記中空部において前記床面及び前記天井面のうち少なくとも一方の面に配置された遮音面材と、を備え、
前記一対の面材は、前記少なくとも一方の面との間に前記鉛直方向の隙間を空けて配置されており、
前記遮音面材は、前記隙間よりも厚く且つ前記中空部側から前記隙間を塞ぐように配置され、前記位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含み、
前記一対の面材は、第1面材と、前記第1面材との間に
前記中空部を挟んで配置された第2面材と、を含み、
前記第1面材は、前記中空部側を向く第1内面を有し、
前記第2面材は、前記中空部側を向くと共に、前記中空部を挟んで前記第1内面に対向する第2内面を有し、
前記間仕切壁は、前記鉛直方向に延びると共に前記第1内面に固定された第1間柱と、前記鉛直方向に延びると共に前記第2内面に固定された第2間柱と、を含み、
前記第1間柱と前記第2間柱は、前記間仕切壁の壁面方向に沿って千鳥状に配置されており、
前記第1面材の正面視において前記第2間柱と重なるように前記第1内面の一部に貼り付けられると共に前記第1面材と異なるコインシデンス周波数を有する第1壁側遮音面材、及び、前記第2面材の正面視において前記第1間柱と重なるように前記第2内面の一部に貼り付けられると共に前記第2面材と異なるコインシデンス周波数を有する第2壁側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材をさらに備えた、間仕切壁の遮音構造。
【請求項7】
前記間仕切壁は、前記空間を前記水平方向に隣接する第1空間と第2空間とに仕切り、
前記第1面材は、前記第1空間側を向く第1外面を有し、
前記第2面材は、前記第2空間側を向く第2外面を有し、
前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記天井材のうち少なくとも前記第1外面に対応する位置と前記第1空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第1天井側遮音面材、及び、前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記天井材のうち少なくとも前記第2外面に対応する位置と前記第2空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第2天井側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材をさらに備えた、請求項1~5のいずれか1項に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項8】
前記間仕切壁は、前記空間を前記水平方向に隣接する第1空間と第2空間とに仕切り、
前記第1面材は、前記第1空間側を向く第1外面を有し、
前記第2面材は、前記第2空間側を向く第2外面を有し、
前記間仕切壁に交差する方向に延びる外壁と、
前記外壁と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記外壁のうち少なくとも前記第1外面に対応する位置と前記第1空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第1外壁側遮音面材、及び、前記外壁と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記外壁のうち少なくとも前記第2外面に対応する位置と前記第2空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第2外壁側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材と、をさらに備えた、請求項1~5のいずれか1項に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項9】
前記第1位置決め部の前記鉛直方向の長さ、前記第2位置決め部の前記鉛直方向の長さ、及び前記少なくとも一つの中央位置決め部の前記鉛直方向の長さが互いに実質的に同一である、請求項1に記載の間仕切壁の遮音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切壁の遮音構造及びこれに用いられる間仕切壁用遮音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、建物内において間仕切壁により互いに仕切られた隣接空間のうち、一方の空間から他方の空間への音漏れを防ぐ遮音対策について種々の検討がなされている。特許文献1には、中空間柱が壁の横断面において千鳥状に配置され、各中空間柱に異種の耐火ボードが重ねて取付けられた遮音間仕切壁が記載されている。この間仕切壁によれば、異種の耐火ボードを重ねて用いることにより、共鳴透過を抑止し、遮音値の低下を防ぐことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、間仕切壁の面材としては、施工時の作業性を考慮し、床面から天井面までの距離に比べて高さ寸法が小さいものが用いられる場合がある。そして、ボード上げ機等を用いて面材の上端面を天井面に突き当てることにより、間仕切壁の施工が行われる。このため、間仕切壁の施工後において、床面から天井面までの距離に対する面材の高さ寸法の不足分に応じた隙間が、当該面材の下端面と床面との間に発生する。この隙間が室間の音漏れの原因となり、遮音性能が低下するという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、遮音性能をより改善することが可能な間仕切壁の遮音構造及びこれに用いられる間仕切壁用遮音部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る間仕切壁の遮音構造は、床面が形成された床材と、建物内の空間を挟んで前記床面と鉛直方向に対向する天井面が形成された天井材と、前記空間を水平方向に仕切る間仕切壁であって、前記鉛直方向に延びると共に前記水平方向に中空部を挟んで配置された第1面材及び第2面材を含むとともに前記第1面材が前記中空部側を向く第1内面を有し、かつ、前記第2面材が前記中空部側を向くと共に前記中空部を挟んで前記第1内面に対向する第2内面を有する一対の面材と、前記中空部に配置され、前記一対の面材を支持し、前記鉛直方向に延びると共に前記第1内面に固定された第1間柱と、前記中空具に配置され、前記鉛直方向に延びると共に前記第2内面に固定された第2間柱と、を含む前記間仕切壁と、前記第1間柱及び前記第2間柱を前記水平方向に位置決めするための位置決め部材と、前記中空部において前記床面及び前記天井面のうち少なくとも一方の面に配置された遮音面材と、を備え、前記一対の面材は、前記少なくとも一方の面との間に前記鉛直方向の隙間を空けて配置されており、前記遮音面材は、前記隙間よりも厚く且つ前記中空部側から前記隙間を塞ぐように配置され、前記位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含み、前記位置決め部材は、前記少なくとも一方の面との間で前記遮音面材を前記鉛直方向に挟むように前記中空部内に設けられ、前記位置決め部材は、前記第1間柱と前記第1内面との間に設けられた第1位置決め部と、前記第2間柱と前記第2内面との間に設けられた第2位置決め部と、前記第1位置決め部と前記第2位置決め部との間に設けられた少なくとも一つの中央位置決め部と、前記第1間柱及び前記第2間柱の端部を挿入するための2つの溝を形成するために前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部と前記少なくとも一つの中央位置決め部とを接続する少なくとも一つの基部と、を有し、前記少なくとも一つの中央位置決め部は、前記少なくとも一つの基部から前記第1間柱及び前記第2間柱を前記水平方向に位置決め可能となる位置まで前記鉛直方向に延びるとともに、前記間仕切壁の壁面方向に延びている。
【0007】
上記間仕切壁の遮音構造では、床面及び天井面のうち少なくとも一方の面と間仕切壁の面材との間の隙間よりも厚い遮音面材が間仕切壁の中空部に配置されており、この隙間が間仕切壁の中空部側から遮音面材により塞がれている。このため、当該隙間を通じた室間の音漏れを抑制することが可能になる。しかも、この遮音面材は、間仕切壁の間柱を位置決めする位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含んでいる。このため、床面や天井面に直接配置された位置決め部材により当該隙間を塞ぐ場合に比べて、当該隙間を通じた室間の音漏れを効果的に抑制することが可能になる。したがって、上記間仕切壁の遮音構造によれば、遮音性能をより改善することが可能になる。
【0008】
上記間仕切壁の遮音構造において、前記遮音面材は、前記隙間と同じ厚さを有する第1面材部分と、前記間仕切壁の壁厚方向において前記一対の面材と重なる第2面材部分と、を含んでいてもよい。前記第2面材部分の面密度は、前記位置決め部材の面密度よりも大きくてもよい。
【0009】
この構成によれば、当該隙間を通じて間仕切壁の中空部側へ最短距離で伝搬しようとする音を、遮音面材によってより確実に遮断することが可能になる。
【0010】
上記間仕切壁の遮音構造において、前記第2面材部分の面密度は、前記一対の面材の面密度以上であってもよい。
【0011】
この構成によれば、当該隙間側において面材の中央部等と比較して同等以上の遮音性能を確保することが可能になり、間仕切壁全体として一定以上の遮音性能を実現することができる。
【0012】
上記間仕切壁の遮音構造において、前記遮音面材は、前記床面に配置されると共に、前記床材と異なるコインシデンス周波数を有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、間仕切壁により仕切られた空間のうち一方で発生した音が、コインシデンス効果により床材を介して他方へ伝搬しようとする場合に、床材のコインシデンス効果を抑えることができる。これにより、床材を介したコインシデンス効果による隣接空間への音漏れが抑制される。
【0014】
上記間仕切壁の遮音構造において、前記遮音面材は、前記天井面に配置されると共に、前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、間仕切壁により仕切られた空間のうち一方で発生した音が、コインシデンス効果により天井材を介して他方へ伝搬しようとする場合に、天井材のコインシデンス効果を抑えることができる。これにより、天井材を介したコインシデンス効果による隣接空間への音漏れが抑制される。
【0016】
本発明の他の局面に係る間仕切壁の遮音構造は、床面が形成された床材と、建物内の空間を挟んで前記床面と鉛直方向に対向する天井面が形成された天井材と、前記空間を水平方向に仕切る間仕切壁であって、前記鉛直方向に延びると共に前記水平方向に中空部を挟んで配置された一対の面材と、前記中空部に配置されると共に前記一対の面材を支持するための間柱と、を含む前記間仕切壁と、前記間柱を前記水平方向に位置決めするための位置決め部材と、前記中空部において前記床面及び前記天井面のうち少なくとも一方の面に配置された遮音面材と、を備え、前記一対の面材は、前記少なくとも一方の面との間に前記鉛直方向の隙間を空けて配置されており、前記遮音面材は、前記隙間よりも厚く且つ前記中空部側から前記隙間を塞ぐように配置され、前記位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含み、前記一対の面材は、第1面材と、前記第1面材との間に中空部を挟んで配置された第2面材と、を含んでいてもよい。前記第1面材は、前記中空部側を向く第1内面を有していてもよい。前記第2面材は、前記中空部側を向くと共に、前記中空部を挟んで前記第1内面に対向する第2内面を有していてもよい。前記間仕切壁は、前記鉛直方向に延びると共に前記第1内面に固定された第1間柱と、前記鉛直方向に延びると共に前記第2内面に固定された第2間柱と、を含んでいてもよい。前記第1間柱と前記第2間柱は、前記間仕切壁の壁面方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。上記間仕切壁の遮音構造は、前記第1面材の正面視において前記第2間柱と重なるように前記第1内面の一部に貼り付けられると共に前記第1面材と異なるコインシデンス周波数を有する第1壁側遮音面材、及び、前記第2面材の正面視において前記第1間柱と重なるように前記第2内面の一部に貼り付けられると共に前記第2面材と異なるコインシデンス周波数を有する第2壁側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材をさらに備えていてもよい。
【0017】
上記間仕切壁の遮音構造では、床面及び天井面のうち少なくとも一方の面と間仕切壁の面材との間の隙間よりも厚い遮音面材が間仕切壁の中空部に配置されており、この隙間が間仕切壁の中空部側から遮音面材により塞がれている。このため、当該隙間を通じた室間の音漏れを抑制することが可能になる。しかも、この遮音面材は、間仕切壁の間柱を位置決めする位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含んでいる。このため、床面や天井面に直接配置された位置決め部材により当該隙間を塞ぐ場合に比べて、当該隙間を通じた室間の音漏れを効果的に抑制することが可能になる。したがって、上記間仕切壁の遮音構造
によれば、遮音性能をより改善することが可能になる。
また、前記間仕切壁の遮音構造によれば、間仕切壁の面材と異なるコインシデンス周波数を有する面材を追加配置することにより、間仕切壁を介した隣接空間への音漏れをより効果的に抑制することができる。しかも、間仕切壁の中空部側に追加面材が設けられるため、間仕切壁の厚さが増大するのを抑制することもできる。
【0018】
上記間仕切壁の遮音構造において、前記間仕切壁は、前記空間を前記水平方向に隣接する第1空間と第2空間とに仕切ってもよい。前記第1面材は、前記第1空間側を向く第1外面を有していてもよい。前記第2面材は、前記第2空間側を向く第2外面を有していてもよい。上記間仕切壁の遮音構造は、前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記天井材のうち少なくとも前記第1外面に対応する位置と前記第1空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第1天井側遮音面材、及び、前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記天井材のうち少なくとも前記第2外面に対応する位置と前記第2空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第2天井側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材をさらに備えていてもよい。
【0019】
この構成によれば、間仕切壁により仕切られた第1空間及び第2空間のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により天井材を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、間仕切壁の外側において天井材のコインシデンス効果を抑えることができる。したがって、コインシデンス効果による天井材を介した隣接空間への音漏れが抑制され、遮音性能を一層改善することが可能になる。
【0020】
上記間仕切壁の遮音構造において、前記間仕切壁は、前記空間を前記水平方向に隣接する第1空間と第2空間とに仕切ってもよい。前記第1面材は、前記第1空間側を向く第1外面を有していてもよい。前記第2面材は、前記第2空間側を向く第2外面を有していてもよい。上記間仕切壁の遮音構造は、前記間仕切壁に交差する方向に延びる外壁と、前記外壁と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記外壁のうち少なくとも前記第1外面に対応する位置と前記第1空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第1外壁側遮音面材、及び、前記外壁と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記外壁のうち少なくとも前記第2外面に対応する位置と前記第2空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第2外壁側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材と、をさらに備えていてもよい。
【0021】
この構成によれば、間仕切壁により仕切られた第1空間及び第2空間のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により外壁を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、間仕切壁の外側において外壁のコインシデンス効果を抑えることができる。したがって、コインシデンス効果による外壁を介した隣接空間への音漏れが抑制され、遮音性能を一層改善することができる。
【0022】
上記間仕切壁の遮音構造において、前記第1位置決め部の鉛直方向の長さ、前記第2位置決め部の鉛直方向の長さ、及び前記少なくとも一つの中央位置決め部の鉛直方向の長さが互いに実質的に同一であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、遮音性能をより改善することが可能な間仕切壁の遮音構造及びこれに用いられる間仕切壁用遮音部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態1に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す水平断面図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図5】本発明の実施形態3に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す水平断面図である。
【
図6】本発明の実施形態4に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図7】本発明の実施形態5に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す水平断面図である。
【
図8】本発明の実施形態5に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図9】本発明の実施形態5の変形例に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図10】本発明のその他実施形態に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る間仕切壁の遮音構造を詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る間仕切壁の遮音構造1(以下、単に「遮音構造1」とも称する)の構成を、
図1~
図3に基づいて説明する。
図1は、間仕切壁30の鉛直方向に沿った断面を模式的に示している。
図2は、間仕切壁30の水平方向に沿った断面を模式的に示している。
図3は、
図1中の領域IIIにおける拡大図である。
【0027】
遮音構造1は、例えば住宅等の建物内において、間仕切壁30により水平方向に仕切られた2つの隣接空間(第1空間S1及び第2空間S2)のうち、一方の空間から他方の空間への音漏れを抑制するためのものである。
図1及び
図2に示すように、遮音構造1は、床材10と、天井材20と、間仕切壁30と、遮音面材40と、位置決め部材50とを主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0028】
床材10には、建物内の空間S0(例えば住宅内の居住空間)側を向く床面13が形成されている。
図1に示すように、床材10は、水平に敷設された合板12と、当該合板12上に敷設されたフローリング11とを有しており、当該フローリング11の上面が床面13となっている。
【0029】
天井材20には、空間S0を挟んで床面13と鉛直方向に対向する天井面21が形成されている。天井面21は、床面13に平行な面である。天井材20は、例えば石膏ボードからなるものであるが、これに限定されない。
【0030】
間仕切壁30は、空間S0を水平方向に仕切る壁であり、鉛直方向に延びている。
図1及び
図2に示すように、間仕切壁30は、一対の面材(第1面材31及び第2面材32)と、第1間柱34と、第2間柱35と、吸音材33とを主に有している。
【0031】
第1面材31は、例えば天井材20と同様の石膏ボードからなり、鉛直方向に延びるように配置されている。第1面材31は、第1空間S1側を向く第1外面31Aと、天井面21側を向く第1上端面31Bと、床面13側を向く第1下端面31Cと、間仕切壁30の中空部S3側を向く第1内面31Dとを含む。
【0032】
図1に示すように、本実施形態における第1面材31は、第1上端面31Bが天井面21に当接すると共に、第1下端面31Cと床面13との間に鉛直方向の隙間(第1下側隙間G1)が空くように配置されている。すなわち、第1面材31の高さ寸法は、床面13から天井面21までの距離よりも小さくなっている。
【0033】
第2面材32は、鉛直方向に延びると共に、第1面材31に対して水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)に中空部S3を挟んで配置されている。第2面材32は、例えば第1面材31と同様の石膏ボードからなる。第2面材32は、第2空間S2側を向く第2外面32Aと、天井面21側を向く第2上端面32Bと、床面13側を向く第2下端面32Cと、中空部S3側を向くと共に当該中空部S3を挟んで第1内面31Dに対向する第2内面32Dとを含む。
【0034】
第1面材31と同様に、本実施形態における第2面材32は、第2上端面32Bが天井面21に当接すると共に、第2下端面32Cと床面13との間に鉛直方向の隙間(第2下側隙間G2)が空くように配置されている。第2面材32の高さ寸法は、第1面材31の高さ寸法と略同じであり、床面13から天井面21までの距離に比べて小さくなっている。
【0035】
第1間柱34は、第1面材31を支持するための部材であり、間仕切壁30の中空部S3(第1面材31と第2面材32との間の空間)に配置されている。第1間柱34は、鉛直方向に延びると共に矩形断面を有する柱(例えば木柱や金属柱)であり、その外面34Aが第1内面31Dに固定されている。より具体的には、第1面材31は、ビス等の固定具により第1間柱34の外面34Aに固定されている。
【0036】
第2間柱35は、第2面材32を支持するための部材であり、中空部S3に配置されている。第2間柱35は、第1間柱34と同様に鉛直方向に延びると共に矩形断面を有する柱であり、その外面35Aが第2内面32Dに固定されている。第2面材32は、ビス等の固定具により第2間柱35の外面35Aに固定されている。
【0037】
図2に示すように、本実施形態における第1間柱34と第2間柱35は、間仕切壁30の壁面方向(間仕切壁30の壁厚方向に直交する方向)に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、当該壁面方向から見て、第1間柱34と第2間柱35が第1内面31D及び第2内面32Dに対して交互に振り分けられるように配置されている。吸音材33は、間仕切壁30の中空部S3のうち第1間柱34及び第2間柱35が配置されていない領域に充填されている。なお、吸音材33は、本発明の間仕切壁の遮音構造における必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0038】
図1及び
図3に示すように、遮音面材40は、間仕切壁30の中空部S3において床面13に配置されている。遮音面材40は、第1下側隙間G1及び第2下側隙間G2を通じた室間の音漏れを抑制するための部材であり、第1下側隙間G1及び第2下側隙間G2よりも厚く且つ中空部S3側から第1下側隙間G1及び第2下側隙間G2を塞ぐように配置されると共に、位置決め部材50よりも面密度(kg/m
2)が大きい部分を含む。本実施形態における遮音面材40は、鉄粉をアスファルトにより固めて不織布により挟んだ構成を有する面材(アスファルト系制振材)であるが、これに限定されない。また遮音面材40は、床面13が曲面を含む場合であっても、当該曲面に対して追従可能な柔軟性を有する部材である。
【0039】
遮音面材40は、第1内面31Dから第2内面32Dまで至る幅を有すると共に、間仕切壁30の壁面方向(
図3中の紙面奥行方向)に所定の長さを有している。遮音面材40は、当該壁面方向に長い面材であり、間仕切壁30の壁面方向全体に亘って設けられている。
図3に示すように、本実施形態における遮音面材40は、第1下側隙間G1及び第2下側隙間G2と同じ厚さを有する第1面材部分47と、間仕切壁30の壁厚方向において第1面材31の下端部31E及び第2面材32の下端部32Eと重なる第2面材部分46とを含む。第2面材部分46は、遮音面材40のうち第1下端面31C及び第2下端面32Cよりも上側の部分であり、幅方向の両側面が第1内面31D及び第2内面32Dにそれぞれ接触している。第1面材部分47は、遮音面材40のうち第1下端面31C及び第2下端面32Cよりも下側の部分であり、幅方向の両側面が第1下側隙間G1及び第2下側隙間G2を中空部S3側からそれぞれ塞いでいる。
【0040】
第2面材部分46の面密度は、位置決め部材50の面密度よりも大きくなっている。第2面材部分46の面密度は、第1面材31の面密度及び第2面材32の面密度以上であることが好ましく、床材10の面密度以上であることがより好ましい。
【0041】
一方、第1面材部分47の面密度は特に限定されず、第2面材部分46の面密度よりも小さくてもよいし、第2面材部分46の面密度と同じであってもよい。つまり、遮音面材40内において面密度に差があってもよく、例えば鉄粉濃度により当該差が設けられる。また本実施形態における遮音面材40は、床材10と異なるコインシデンス周波数を有するものである。
【0042】
位置決め部材50(ランナー)は、第1間柱34及び第2間柱35を水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)に位置決めするための部材である。位置決め部材50は、例えば薄い鉄板からなり、遮音面材40(第2面材部分46)上に載置されている。この位置決め部材50と遮音面材40とによって、本実施形態における間仕切壁用遮音部材100(
図3)が構成されている。
【0043】
図3に示すように、位置決め部材50は、第2面材部分46上に載置された平板状の基部51と、基部51から垂直に立ち上がった中央立設部52、第1端側立設部53及び第2端側立設部54とを含む。基部51は、遮音面材40と略同じ幅及び長さを有する薄板である。中央立設部52は、基部51の幅方向中央部から垂直に立ち上がった薄板であり、間仕切壁30の壁面方向(
図3中の紙面奥行方向)に延びている。第1端側立設部53及び第2端側立設部54は、基部51の幅方向両端部の各々から垂直に立ち上がった薄板であり、中央立設部52と平行に延びている。
【0044】
第1間柱34(
図1,2)の下端部は、中央立設部52と第1端側立設部53との間の溝内に差し込まれており、ビス止めにより第1端側立設部53に固定されている。また第2間柱35(
図2)の下端部は、中央立設部52と第2端側立設部54との間の溝内に差し込まれており、ビス止め等により第2端側立設部54に固定されている。
【0045】
図1に示すように、位置決め部材50は、天井面21にも固定されている。具体的には、天井面21のうち第1面材31と第2面材32との間の部分に、ビス止めやテープ貼りにより位置決め部材50(基部51)が固定されている。第1間柱34及び第2間柱35の各上端部は、天井面21に固定された位置決め部材50の溝内に差し込まれており、下端部と同様に、ビス止め等により位置決め部材50に固定されている。
【0046】
なお、位置決め部材50は、2つの溝が形成された単一の板材である場合に限定されない。例えば、断面視コの字形状に形成された2つの板材が、遮音面材40の上に並んで載置されていてもよい。
【0047】
以上の通り、本実施形態に係る遮音構造1では、床面13と間仕切壁30の面材との間の隙間よりも厚い遮音面材40が間仕切壁30の中空部S3に配置されており、当該隙間が中空部S3側から遮音面材40により塞がれている。このため、当該隙間を通じた室間の音漏れを抑制することができる。しかも、遮音面材40は、位置決め部材50よりも面密度が大きい第2面材部分46を含んでいる。このため、位置決め部材50を床面13に直接配置して第1端側立設部53及び第2端側立設部54により当該隙間を塞ぐ場合に比べて、遮音性能を大幅に改善することができる。また当該遮音構造1によれば、乾式で且つ簡便な施工により当該隙間を塞ぐことが可能である。このため、当該隙間をコーキング施工により埋める場合と比較して、施工箇所以外を養生する必要もなく、遮音性能のばらつきも生じ難く、経年劣化による遮音性能の低下も抑制することができる。
【0048】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る間仕切壁の遮音構造2(以下、単に「遮音構造2」とも称する)の構成を、
図4に基づいて説明する。実施形態2に係る遮音構造2は、基本的に上記実施形態1に係る遮音構造1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、間仕切壁30の上端面と天井面21との間の隙間が遮音面材40により塞がれている点で上記実施形態1と異なっている。以下、上記実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0049】
図4は、実施形態2において、間仕切壁30の鉛直方向に沿った断面を模式的に示している。
図4に示すように、実施形態2における第1面材31は、第1下端面31Cが床面13に当接すると共に、第1上端面31Bと天井面21との間に鉛直方向の隙間(第1上側隙間G11)が空くように配置されている。同様に、実施形態2における第2面材32は、第2下端面32Cが床面13に当接すると共に、第2上端面32Bと天井面21との間に鉛直方向の隙間(第2上側隙間G22)が空くように配置されている。
【0050】
遮音面材40は、間仕切壁30の中空部S3において天井面21に配置されている。遮音面材40は、第1上側隙間G11及び第2上側隙間G22よりも厚く且つ中空部S3側から第1上側隙間G11及び第2上側隙間G22を塞ぐように配置されると共に、位置決め部材50よりも面密度が大きい部分を含んでいる。遮音面材40は、天井面21が曲面を含む場合であっても、当該曲面に対して追従可能な柔軟性を有する部材である。
【0051】
具体的には、実施形態2における遮音面材40は、第1上側隙間G11及び第2上側隙間G22と同じ厚さを有する第1面材部分47と、間仕切壁30の壁厚方向において第1面材31の上端部31F及び第2面材32の上端部32Fと重なる第2面材部分46とを含む。第2面材部分46は、遮音面材40のうち第1上端面31B及び第2上端面32Bよりも下側の部分であり、面密度が位置決め部材50よりも大きくなっている。第1面材部分47は、遮音面材40のうち第1上端面31B及び第2上端面32Bよりも上側の部分であり、幅方向の両側面が第1上側隙間G11及び第2上側隙間G22を中空部S3側から塞いでいる。実施形態2における遮音面材40は、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有している。また
図4に示すように、遮音面材40(第2面材部分46)の下面には、位置決め部材50が配置されている。
【0052】
実施形態2に係る遮音構造2によれば、間仕切壁30の面材と天井面21との間の隙間を塞ぐ遮音面材40を配置することにより、上記実施形態1の場合と同様に、室間の音漏れを効果的に抑制することが可能になる。なお、遮音面材40は、床面13及び天井面21のうちいずれか一方のみに配置される場合に限定されず、床面13及び天井面21の両方に配置されていてもよい。
【0053】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る間仕切壁の遮音構造3(以下、単に「遮音構造3」とも称する)について、
図5に基づいて説明する。実施形態3に係る遮音構造3は、基本的に上記実施形態1,2に係る遮音構造1,2と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、間仕切壁30の中空部S3内に配置された第1壁側遮音面材61及び第2壁側遮音面材62をさらに備える点で異なっている。以下、上記実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0054】
図5は、実施形態3における間仕切壁30の水平断面図である。
図5に示すように、第1壁側遮音面材61は、第1面材31の正面視(
図5中の矢印P1)において第2間柱35と重なると共に壁面方向において第1間柱34から離間するように、第1内面31Dの一部に複数枚貼り付けられている。より具体的には、第1壁側遮音面材61は、鉛直方向に延びており、第1間柱34に対して壁面方向に隙間を空け且つ第2間柱35に対して壁厚方向に隙間を空けた状態で第1内面31Dに貼り付けられている。
図5に示すように、第1壁側遮音面材61と第2間柱35との間の隙間には、吸音材33が敷設されている。第1壁側遮音面材61は、例えば接着剤等により第1内面31Dに貼り付けられており、その接着面全体に接着剤が塗布されていてもよいし、接着面の一部に接着剤が塗布されていてもよい。
【0055】
なお、
図5には現れていないが、第1壁側遮音面材61は、壁面方向に隣接する2つの第1間柱34の間に位置している。また第1壁側遮音面材61の壁面方向の中心は、第2間柱35の壁面方向の中心に一致しているが、これに限定されない。
【0056】
第1壁側遮音面材61は、第1面材31と異なるコインシデンス周波数を有している。具体的には、第1壁側遮音面材61は、ガラス繊維不織布を含む厚さが一定の石膏ボードからなり、コインシデンス周波数が第1面材31に対して1/12オクターブ異なっている。また本実施形態における第1壁側遮音面材61は、第1面材31よりも薄い石膏ボードからなるが、これに限定されない。
【0057】
第2壁側遮音面材62は、第2面材32の正面視(
図5中の矢印P2)において第1間柱34と重なると共に壁面方向において第2間柱35から離間するように、第2内面32Dの一部に複数枚貼り付けられている。具体的に、第2壁側遮音面材62は、鉛直方向に延びており、第2間柱35に対して壁面方向に隙間を空け且つ第1間柱34に対して壁厚方向に隙間を空けた状態で、第2内面32Dに貼り付けられている。第2壁側遮音面材62と第1間柱34との間の隙間には、吸音材33が敷設されている。第2壁側遮音面材62は、例えば接着剤等により第2内面32Dに貼り付けられており、その接着面全体に接着剤が塗布されていてもよいし、接着面の一部に接着剤が塗布されていてもよい。
【0058】
図5に示すように、第2壁側遮音面材62は、壁面方向に隣接する2つの第2間柱35の間に位置している。また第2壁側遮音面材62の壁面方向の中心は、第1間柱34の壁面方向の中心に一致しているが、これに限定されない。
【0059】
本実施形態における第1壁側遮音面材61と第2壁側遮音面材62は、間仕切壁30の壁面方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、壁面方向から見て順に並ぶ第1壁側遮音面材61及び第2壁側遮音面材62の位置が第1内面31D及び第2内面32Dに対して交互に振り分けられている。
【0060】
第2壁側遮音面材62は、第2面材32と異なるコインシデンス周波数を有している。具体的に、第2壁側遮音面材62は、第1壁側遮音面材61と同様にガラス繊維不織布を含む厚さが一定の石膏ボードからなり、コインシデンス周波数が第2面材32に対して1/12オクターブ異なっている。第2壁側遮音面材62は、第2面材32よりも薄い石膏ボードからなっているが、これに限定されない。
【0061】
実施形態3に係る遮音構造3によれば、間仕切壁30の面材と異なるコインシデンス周波数を有する面材を追加配置することにより、間仕切壁30を介した隣接空間への音漏れをより効果的に抑制することができる。しかも、間仕切壁30の中空部S3側に追加面材が設けられるため、間仕切壁30の厚さが増大するのを抑制することもできる。なお、第1壁側遮音面材61及び第2壁側遮音面材62の両方が設けられる場合に限定されず、これらのうちいずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0062】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る間仕切壁の遮音構造4(以下、単に「遮音構造4」とも称する)について、
図6に基づいて説明する。実施形態4に係る遮音構造4は、基本的に上記実施形態1~3に係る遮音構造1~3と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、第1天井側遮音面材71及び第2天井側遮音面材72をさらに備える点で異なっている。以下、上記実施形態1~3と異なる点についてのみ説明する。
【0063】
図6は、実施形態4における間仕切壁30の鉛直断面図である。
図6に示すように、天井材20は、天井面21と反対側(天井裏の空間側)を向く天井上面22を有しており、当該天井上面22には、複数の野縁70が配置されている。本実施形態では、各野縁70は、長さ方向が間仕切壁30の壁面方向(
図6中の紙面奥行方向)を向くように配置されている。
【0064】
複数の野縁70は、天井上面22において水平方向(野縁70の長さ方向に直交する方向)に間隔を空けて(等間隔で)配置されている。
図6に示すように、天井上面22のうち第1面材31及び第2面材32の上側に位置する部位には、野縁70が配置されている。換言すると、野縁70は、天井上面22のうち第1面材31及び第2面材32に対して鉛直方向に重なる位置に配置されている。
【0065】
第1天井側遮音面材71は、天井材20のうち少なくとも第1外面31Aに対応する位置22Aと第1空間S1の水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)の中心に対応する位置22Bとの間の部位に貼り付けられている。より具体的には、
図6に示すように、第1天井側遮音面材71は、第1面材31と鉛直方向に重なる一の野縁70と当該一の野縁70に対して第1空間S1側に隣接する他の野縁70との間のスペースにおいて、天井上面22に貼り付けられている。「第1外面31Aに対応する位置」は、天井材20のうち第1外面31Aと鉛直方向に重なる位置を意味する。
【0066】
図6に示すように、本実施形態における第1天井側遮音面材71は、上記一の野縁70と上記他の野縁70との間のスペースの一部において天井上面22に貼り付けられている。換言すれば、第1天井側遮音面材71の幅W1は、上記一の野縁70と上記他の野縁70との間の距離よりも小さくなっている。
【0067】
また第1天井側遮音面材71は、間仕切壁30側の端部が上記一の野縁70の側面(上記他の野縁70に対向する側面)に接触している。つまり、第1天井側遮音面材71の幅方向の中心は、上記一の野縁70と上記他の野縁70との間の中心よりも間仕切壁30(第1外面31A)側に位置している。
【0068】
第1天井側遮音面材71は、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有している。具体的には、第1天井側遮音面材71は、ガラス繊維不織布を含む石膏ボードからなり、コインシデンス周波数が天井材20に対して1/12オクターブ異なっている。
【0069】
第2天井側遮音面材72は、天井材20のうち少なくとも第2外面32Aに対応する位置22Cと第2空間S2の水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)の中心に対応する位置22Dとの間の部位に貼り付けられている。具体的には、
図6に示すように、第2天井側遮音面材72は、第2面材32と鉛直方向に重なる一の野縁70と当該一の野縁70に対して第2空間S2側に隣接する他の野縁70との間のスペースにおいて、天井上面22に貼り付けられている。「第2外面32Aに対応する位置」は、天井材20のうち第2外面32Aと鉛直方向に重なる位置を意味する。
【0070】
第2天井側遮音面材72は、上記一の野縁70と上記他の野縁70との間のスペースの一部において天井上面22に貼り付けられている。すなわち、第2天井側遮音面材72の幅W2は、野縁間の距離よりも小さくなっている。また第2天井側遮音面材72は、間仕切壁30側の端部が上記一の野縁70の側面(上記他の野縁70に対向する側面)に接触している。すなわち、第2天井側遮音面材72の幅方向の中心は、上記一の野縁70と上記他の野縁70との間の中心よりも間仕切壁30(第2外面32A)側に位置している。
【0071】
第2天井側遮音面材72は、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有している。具体的に、第2天井側遮音面材72は、第1天井側遮音面材71と同様にガラス繊維不織布を含む石膏ボードからなり、コインシデンス周波数が天井材20に対して1/12オクターブ異なっている。
【0072】
以上の通り、実施形態4に係る遮音構造4では、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有する面材が、天井材20のうち間仕切壁30の外面に対応する位置と空間の水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられている。このため、間仕切壁30により仕切られた第1空間S1及び第2空間S2のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により天井材20を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、天井材20のコインシデンス効果を抑えることができる。したがって、天井材20を介した音漏れが抑制され、遮音性能を改善することができる。なお、第1天井側遮音面材71及び第2天井側遮音面材72の両方が設けられる場合に限定されず、これらのうちいずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0073】
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態5に係る間仕切壁の遮音構造5(以下、単に「遮音構造5」とも称する)について、
図7~
図9に基づいて説明する。実施形態5に係る遮音構造5は、基本的に上記実施形態1~4に係る遮音構造1~4と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、第1外壁側遮音面材83及び第2外壁側遮音面材84をさらに備える点で異なっている。以下、上記実施形態1~4と異なる点についてのみ説明する。
【0074】
図7は、間仕切壁30と外壁80との突当部(接合部)における水平断面図である。遮音構造5は、間仕切壁30に交差(直交)する方向に延びる外壁80を備えている。
図7に示すように、間仕切壁30における壁面方向の一端部が、外壁80の内面に突き当たっている。
【0075】
外壁80は、外壁パネル81と、外壁パネル81との間に中空部を介して配置された外壁面材82と、当該中空部において鉛直方向に延びる縦桟85とを含む。外壁面材82は、例えば石膏ボード等からなり、建物内の空間S0側を向く内面82Aと、内面82Aと反対側(中空部側)を向く裏面82Bとを含む。遮音構造5は、外壁面材82の裏面82Bに貼り付けられた第1外壁側遮音面材83及び第2外壁側遮音面材84を含む。
【0076】
第1外壁側遮音面材83は、外壁面材82の裏面82Bのうち少なくとも第1外面31Aに対応する位置82Cと第1空間S1の水平方向の中心に対応する位置82Eとの間の部位に貼り付けられている。ここで、「第1外面31Aに対応する位置」は、外壁面材82の裏面82Bのうち第1外面31Aの延長線が通過する位置を意味する。第1外壁側遮音面材83は、外壁面材82と異なるコインシデンス周波数を有する石膏ボードからなり、具体的には、コインシデンス周波数が外壁面材82に対して1/12オクターブ異なっている。
【0077】
第2外壁側遮音面材84は、外壁面材82の裏面82Bのうち少なくとも第2外面32Aに対応する位置82Dと第2空間S2の水平方向の中心に対応する位置82Fとの間の部位に貼り付けられている。ここで、「第2外面32Aに対応する位置」は、外壁面材82の裏面82Bのうち第2外面32Aの延長線が通過する位置を意味する。第2外壁側遮音面材84は、外壁面材82と異なるコインシデンス周波数を有しており、具体的には、コインシデンス周波数が外壁面材82に対して1/12オクターブ異なっている。
【0078】
図8は、外壁面材82の内面82Aを正面視したときの遮音構造5の一部断面図である。
図8に示すように、第1外壁側遮音面材83は、鉛直方向に長い矩形状を有しており、水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)に間隔を空けて複数配置されている。同様に、第2外壁側遮音面材84も、鉛直方向に長い矩形状を有しており、水平方向に間隔を空けて配置されている。
【0079】
実施形態5に係る遮音構造5では、外壁面材82と異なるコインシデンス周波数を有する追加面材が、外壁面材82のうち間仕切壁30の外面に対応する位置と空間S0の水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられている。このため、第1空間S1及び第2空間S2のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により外壁80を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、外壁面材82のコインシデンス効果を抑えることができる。したがって、外壁80を介した隣接空間への音漏れが抑制され、遮音性能を改善することができる。
【0080】
なお、第1外壁側遮音面材83及び第2外壁側遮音面材84の間仕切壁30側の端部は、壁面方向において間仕切壁30と重なる位置までさらに延びていてもよい。また
図9の変形例に係る間仕切壁の遮音構造5Aのように、第1外壁側遮音面材83及び第2外壁側遮音面材84は、水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)に長い矩形状を有すると共に、鉛直方向に間隔を空けて複数配置されていてもよい。また第1外壁側遮音面材83及び第2外壁側遮音面材84の両方が設けられる場合に限定されず、これらのうちいずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0081】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0082】
上記実施形態1,2における遮音面材40は、第1内面31Dから第2内面32Dまで略同じ厚さに形成されているがこれに限定されず、例えば遮音面材40における幅方向中央部に凹部が形成されていてもよい。また遮音面材40は、第1内面31Dから第2内面32Dまでの範囲において床面13又は天井面21の全体に貼り付けられる場合に限定されず、当該範囲において床面13又は天井面21の一部のみに貼り付けられていてもよい。
【0083】
上記実施形態1では、遮音面材40がアスファルト系制振材からなる場合を説明したがこれに限定されず、例えば、面密度が天井材20や間仕切壁30の面材(第1面材31及び第2面材32)と同等以上である石膏ボードからなっていてもよい。さらに、天井材20や床材10に対してコインシデンス周波数が1/12オクターブ異なる石膏ボードが、遮音面材40として用いられてもよい。
【0084】
上記実施形態1では、第1間柱34と第2間柱35が千鳥状に配置される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、
図10の変形例に係る間仕切壁の遮音構造1Aのように、各間柱36の両側面に対して第1面材31及び第2面材32がそれぞれ固定されていてもよい。なお、
図10では、隣接する間柱36の間に第1壁側遮音面材61及び第2壁側遮音面材62が配置されているが、これらのうち一方又は両方が省略されてもよい。
【0085】
上記実施形態4において、第1天井側遮音面材71及び第2天井側遮音面材72のうちいずれか一方又は両方が複数枚重ねられてもよい。この場合、面材のコインシデンス周波数が変動するのを防ぐため、各面材同士を接着せずに積層することが好ましい。
【0086】
上記実施形態4において、第1天井側遮音面材71及び第2天井側遮音面材72のうちいずれか一方又は両方が、隣接する野縁70間のスペース全体において天井上面22に貼り付けられていてもよく、天井上面22との接着方法については、接着剤の他、天井上面22に対して貼り付け可能であれば、特に限定されない。また第1天井側遮音面材71及び第2天井側遮音面材72のうちいずれか一方又は両方は、1つの野縁間スペースだけでなく、他の野縁間スペースにおいても天井上面22に貼り付けられていてもよい。
【0087】
上記実施形態4において、第1天井側遮音面材71及び第2天井側遮音面材72のうちいずれか一方又は両方が、天井面21に貼り付けられていてもよい。
【0088】
上記実施形態4において、野縁70は、長さ方向が間仕切壁30の壁厚方向を向くように配置されていてもよい。この場合、天井上面22のうち間仕切壁30の中空部S3と鉛直方向に重なる部位にも第1天井側遮音面材71及び第2天井側遮音面材72が貼り付けられてもよい。しかし、天井裏の配線用スペースを確保するために、当該部位には面材を配置しなくてもよい。
【0089】
上記実施形態4では、第1天井側遮音面材71及び第2天井側遮音面材72の端部について、上記一の野縁70及び上記一の野縁70に隣接する野縁70との接触の有無は、特に限定されない。
【0090】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1,1A,2,3,4,5,5A 間仕切壁の遮音構造
10 床材
13 床面
20 天井材
21 天井面
30 間仕切壁
31 第1面材
31A 第1外面
31D 第1内面
32 第2面材
32A 第2外面
32D 第2内面
34 第1間柱
35 第2間柱
40 遮音面材
46 第2面材部分
47 第1面材部分
50 位置決め部材
61 第1壁側遮音面材
62 第2壁側遮音面材
71 第1天井側遮音面材
72 第2天井側遮音面材
80 外壁
83 第1外壁側遮音面材
84 第2外壁側遮音面材
100 間仕切壁用遮音部材
G1 第1下側隙間
G11 第1上側隙間
G2 第2下側隙間
G22 第2上側隙間
S0 空間
S1 第1空間
S2 第2空間
S3 中空部