(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/10 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A47K13/10
(21)【出願番号】P 2020019973
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】木稲 洋介
(72)【発明者】
【氏名】秦 寛樹
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006617(JP,A)
【文献】特開2011-055951(JP,A)
【文献】特開2003-102650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に取り付けられる支持部と、
前記支持部によって回動可能に支持される回動部材と、
前記支持部に収容され、前記回動部材を回動させる電動モータと、
フィードバック制御によって前記電動モータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記回動部材の目標回動角と、前記回動部材の実回動角との偏差に基づいた前記フィードバック制御によって前記電動モータを制御し、
前記実回動角に基づいて算出される前記電動モータの駆動トルクが、前記回動部材の回動時における上限トルクよりも大きい場合に、前記電動モータのトルクを
前記上限トルク以下に規制する、
ことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記回動部材の実回動角に基づいて前記上限トルクを変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記回動部材の開動作における前記電動モータのトルクを前記上限トルク以下に規制する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回動部材の閉動作における前記電動モータのトルクを前記上限トルク以下に規制する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記回動部材の回動時における回動状態を学習し、前記回動状態に基づいて前記上限トルクを設定する、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記制御装置は、予め設定された基準駆動トルクを前記偏差に基づいた補正値によって調整し、調整した値に基づいて前記電動モータを制御する、
ことを特徴とする請求項
1~5のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座、および便蓋をモータによって開閉する際に、例えば、便座を開く際の速度に応じてモータの出力を変動させるフィードバック制御を実行するトイレ装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記トイレ装置では、便蓋などの回動部材をフィードバック制御によって回動し、回動部材と、回動部材の周囲の部材との間に物体が挟まった場合には、モータの出力が増加され、物体に過大な力がかかるおそれがある。
【0005】
実施形態の一態様は、回動部材と、回動部材の周囲の部材との間に挟まった物体に過大な力がかかることを抑制するトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係るトイレ装置は、便器に取り付けられる支持部と、前記支持部によって回動可能に支持される回動部材と、前記支持部に収容され、前記回動部材を回動させる電動モータと、フィードバック制御によって前記電動モータを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記電動モータのトルクを前記回動部材の回動時における上限トルク以下に規制する。
【0007】
これにより、トイレ装置は、回動部材と本体部との間に物体(例えば、使用者の指)が挟まった場合に、物体に過大な力がかかることを抑制することができる。また、トイレ装置は、回動部材と本体部との間に物体が挟まった場合に、回動部材や、本体部に過大な力がかかることを抑制することができ、回動部材などの劣化を抑制することができる。
【0008】
また、トイレ装置は、回動部材の回動中に、使用者によって回動部材が支えられ、回動部材の回動が停止した場合に、使用者に伝達される力が大きくなることを抑制し、使用者に与える違和感を低減することができる。
【0009】
また、前記制御装置は、前記回動部材の実回動角に基づいて前記上限トルクを変更する、ことを特徴とする。
【0010】
これにより、トイレ装置は、回動部材の実回動角に対応する上限トルクを設定することができる。そのため、トイレ装置は、回動部材と本体部との間に物体が挟まった場合に、回動部材の実回動角に応じて、物体などに過大な力がかかることを抑制することができる。
【0011】
また、制御装置は、前記回動部材の開動作における前記電動モータのトルクを前記上限トルク以下に規制する、ことを特徴とする。
【0012】
これにより、トイレ装置は、回動部材の回動速度が大きくなることを抑制し、回動部材が全開状態となった後に、回動部材が支持部の後方に設けられた部材(例えば、洗浄水タンクや、トイレルームの壁)に当たることを抑制することができる。そのため、トイレ装置は、例えば、回動部材や、支持部の後方に設けられた部材の劣化を抑制することができる。また、トイレ装置は、回動部材が全開状態となった後に、回動部材がバウンドすることを抑制し、回動部材の開動作における美観性を向上させることができる。
【0013】
また、前記制御装置は、前記回動部材の閉動作における前記電動モータのトルクを前記上限トルク以下に規制する、ことを特徴とする。
【0014】
これにより、トイレ装置は、回動部材の回動速度が大きくなることを抑制し、回動部材が他の部材に当接する際に生じる衝撃を緩和することができる。そのため、トイレ装置は、回動部材などの劣化を抑制することができる。
【0015】
また、前記制御装置は、前記回動部材の回動時における回動状態を学習し、前記回動状態に基づいて前記上限トルクを設定する、ことを特徴とする。
【0016】
これにより、トイレ装置は、回動部材や、電動モータなどのばらつきに対して、上限トルクをそれぞれ設定することができる。すなわち、トイレ装置は、各トイレ装置の特性に合わせた上限トルクを設定することができる。そのため、変形例に係るトイレ装置は、回動部材の回動を安定させることができる。
【0017】
また、前記制御装置は、前記回動部材の目標回動角と、前記回動部材の実回動角との偏差に基づいた前記フィードバック制御によって前記電動モータを制御する、ことを特徴とする。
【0018】
これにより、トイレ装置は、回動部材などのばらつきに対して、回動部材の回動を調整することができる。そのため、トイレ装置は、回動部材の回動を安定させることができる。また、トイレ装置は、回動部材が全開状態となった後に、回動部材が支持部の後方に設けられた部材に当たることを抑制することができる。そのため、トイレ装置は、例えば、回動部材や、支持部の後方に設けられた部材の劣化を抑制することができる。また、トイレ装置は、回動部材が全開状態となった後に、回動部材がバウンドすることを抑制し、回動部材の開動作における美観性を向上させることができる。
【0019】
また、前記制御装置は、予め設定された基準駆動トルクを前記偏差に基づいた補正値によって調整し、調整した値に基づいて前記電動モータを制御する、ことを特徴とする。
【0020】
これにより、トイレ装置は、回動部材の目標回動角に対する便蓋の実回動角の追従性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
実施形態の一態様によれば、回動部材と、回動部材の周囲の部材との間に挟まった物体に過大な力がかかることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係るトイレ装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る便座装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る便蓋回動処理を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る便座回動処理を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、通常動作時における便蓋の動作状態を示すタイムチャートである。
【
図7】
図7は、物体挟み時における便蓋の動作状態を示すタイムチャートである。
【
図8】
図8は、便蓋と本体部との間に、使用者の指が挟まった一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するトイレ装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0024】
<トイレ装置の概要>
まず、
図1を参照して実施形態に係るトイレ装置1の概要について説明する。
図1は、実施形態に係るトイレ装置1の概略斜視図である。
【0025】
トイレ装置1は、トイレルームRに配置される。トイレ装置1は、便器2と、便座装置3とを備える。トイレ装置1は、例えば、便器2付近に洗浄水を貯留する洗浄水タンクが設置されてもよいし、洗浄水タンクが設置されない、いわゆるタンクレス式でもよい。
【0026】
便器2は、例えば、陶器製である。便器2には、ボウル部4が形成される。ボウル部4は、下方に凹んだ形状であり、使用者の排泄物を受ける部位である。なお、便器2は、図示のような床置き式に限らず、どのような形式でもよく、壁掛け式等のような形式であってもよい。
【0027】
便座装置3は、便器2の上部に取り付けられ、本体部10と、便蓋11と、便座12と、洗浄ノズル13とを備える。便座装置3は、排泄物を受けるボウル部4が形成された便器2の上部に載置され、便器2に取り付けられる。便座装置3は、便器2に対して着脱可能に取り付けられてもよいし、便器2と一体化するように取り付けられてもよい。
【0028】
本体部10は、便器2の上部に取り付けられる。便蓋11、および便座12は、それぞれの一端部が本体部10に支持され、本体部10に対して回動可能である。すなわち、便蓋11、および便座12は、回動部材であり、本体部10によって回動可能に支持される。
【0029】
便蓋11、および便座12は、それぞれ電動モータ15、16(
図2参照)によって回動される。すなわち、実施形態に係るトイレ装置1は、便蓋11、および便座12の回動部材を電動モータ15、16によって回動させることができる。
【0030】
なお、便蓋11、および便座12が、上方位置である全開状態から便器2に対して近づくように回動することを「閉動作」と称する。また、便蓋11、および便座12が、下方位置である全閉状態から便器2に対して離れるように回動することを「開動作」と称する。
図1においては、便蓋11が全開状態にあり、便座12が全閉状態にある一例を示す。
【0031】
また、便蓋11、および便座12は、バネによって付勢されてもよい。便蓋11、および便座12は、バネによって閉方向に付勢されてもよく、開方向に付勢されてもよい。また、便蓋11、および便座12は、異なる方向に付勢されもよい。例えば、便蓋11は、閉方向に付勢され、便座12は、開方向に付勢されてもよい。
【0032】
洗浄ノズル13は、洗浄水を使用者の局部に向けて吐出する。洗浄ノズル13は、本体部10に対して進退する。
【0033】
<便座装置の機能構成>
次に、実施形態に係る便座装置3について
図2を参照し説明する。
図2は、実施形態に係る便座装置3の機能構成を示すブロック図である。また、
図2では、
図1に示す洗浄ノズル13を省略する。以下では、回動部材である便蓋11、および便座12を回動させる機能について詳しく説明する。
【0034】
便座装置3は、便蓋11と、便座12と、第1電動モータ15と、第2電動モータ16と、第1角度センサ17と、第2角度センサ18と、制御装置19とを備える。第1電動モータ15、第2電動モータ16、第1角度センサ17、第2角度センサ18、および制御装置19は、本体部10に収容される。
【0035】
第1電動モータ15は、便蓋11を回動させる。第2電動モータ16は、便座12を回動させる。第1角度センサ17は、便蓋11の回動角度を検出する。第2角度センサ18は、便座12の回動角度を検出する。各角度センサ17、18は、例えば、ホール素子、ホールIC、MR(Magneto Resistance effect)センサなどが用いられる。
【0036】
制御装置19は、第1角度センサ17によって検出される便蓋11の角度に基づいて第1電動モータ15を制御する。また、制御装置19は、第2角度センサ18によって検出された便座12の角度に基づいて第2電動モータ16を制御する。
【0037】
<制御装置の機能構成>
次に、実施形態に係る制御装置19について
図3を参照し説明する。
図3は、実施形態に係る制御装置19の機能構成を示すブロック図である。
【0038】
制御装置19は、制御部20と、記憶部21とを備える。記憶部21は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの記憶装置である。
【0039】
制御部20は、取得部22と、設定部23と、算出部24と、指示部25とを備える。なお、取得部22と、設定部23と、算出部24と、指示部25とは、統合されてもよく、複数に分けられてもよい。
【0040】
なお、制御部20は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0041】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、制御部20の取得部22、設定部23、算出部24、および指示部25として機能する。取得部22、設定部23、算出部24、および指示部25の少なくともいずれか一つまたは全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0042】
取得部22は、第1角度センサ17から便蓋11の現在の角度(以下、「実回動角」と称する。)を取得する。また、取得部22は、第2角度センサ18から便座12の実回動角を取得する。なお、取得部22は、便蓋11、および便座12の開動作、または閉動作が開始されると、実回動角を取得する。
【0043】
設定部23は、取得部22によって取得された便蓋11の実回動角に基づいて第1電動モータ15の上限トルクを設定する。設定部23は、例えば、予め設定されたマップから、便蓋11の実回動角に基づいて第1電動モータ15の上限トルクを設定する。上限トルクは、便蓋11の実回動角に対する第1電動モータ15の上限デューディ比として設定される。
【0044】
上限トルクは、便蓋11の実回動角毎に異なる値として設定されてもよく、複数の便蓋11の実回動角を含む領域毎に異なる値として設定されてもよい。すなわち、上限トルクは、便蓋11の実回動角に基づいて変更される。また、上限トルクは、便蓋11の開動作、および便蓋11の閉動作に対し、それぞれ設定される。上限トルクは、便蓋11の開動作、および便蓋11の閉動作に対し、異なる値であってもよく、同一の値であってもよい。
【0045】
設定部23は、取得部22によって取得された便座12の実回動角に基づいて第2電動モータ16の上限トルクを設定する。設定部23は、例えば、予め設定されたマップから、便座12の実回動角に基づいて第2電動モータ16の上限トルクを設定する。上限トルクは、便座12の実回動角に対する第2電動モータ16の上限デューディ比として設定される。
【0046】
上限トルクは、便座12の実回動角毎に異なる値として設定されてもよく、複数の便座12の実回動角を含む領域毎に異なる値として設定されてもよい。すなわち、上限トルクは、便座12の実回動角に基づいて変更される。また、上限トルクは、便座12の開動作、および便座12の閉動作に対し、それぞれ設定される。上限トルクは、便座12の開動作、および便座12の閉動作に対し、異なる値であってもよく、同一の値であってもよい。
【0047】
算出部24は、取得部22によって取得された便蓋11の実回動角に基づいて第1電動モータ15の駆動トルクを算出する。すなわち、算出部24は、第1電動モータ15によって便蓋11を回動させるための第1電動モータ15の操作量を算出する。第1電動モータ15の操作量は、第1電動モータ15の駆動デューティ比である。駆動トルクの算出方法については、後述する。
【0048】
算出部24は、設定部23によって設定された第1電動モータ15の上限トルクと、算出した第1電動モータ15の駆動トルクとを比較する。そして、算出部24は、算出した第1電動モータ15の駆動トルクが、上限トルクよりも大きい場合には、上限トルクを第1電動モータ15のトルクとする。すなわち、算出部24は、算出した第1電動モータ15の駆動トルクが、上限トルクよりも大きい場合には、第1電動モータ15のトルクを上限トルクに規制する。
【0049】
算出部24は、便蓋11の開動作、および便蓋11の閉動作に対し、それぞれ第1電動モータ15の駆動トルクを算出する。算出部24は、算出した駆動トルクが上限トルクよりも大きい場合には、便蓋11の開動作、および便蓋11の閉動作に対し、それぞれ第1電動モータ15のトルクを上限トルクに規制する。
【0050】
また、算出部24は、取得部22によって取得された便座12の実回動角に基づいて第2電動モータ16の駆動トルクを算出する。すなわち、算出部24は、第2電動モータ16によって便座12を回動させるための第2電動モータ16の操作量を算出する。第2電動モータ16の操作量は、第2電動モータ16の駆動デューティ比である。
【0051】
算出部24は、設定部23によって設定された第2電動モータ16の上限トルクと、算出した第2電動モータ16の駆動トルクとを比較する。そして、算出部24は、算出した第2電動モータ16の駆動トルクが、上限トルクよりも大きい場合には、上限トルクを第2電動モータ16のトルクとする。すなわち、算出部24は、算出した第2電動モータ16の駆動トルクが、上限トルクよりも大きい場合には、第2電動モータ16のトルクを上限トルクに規制する。
【0052】
算出部24は、便座12の開動作、および便座12の閉動作に対し、それぞれ第2電動モータ16の駆動トルクを算出する。算出部24は、算出した駆動トルクが上限トルクよりも大きい場合には、便座12の開動作、および便座12の閉動作に対し、それぞれ第2電動モータ16のトルクを上限トルクに規制する。
【0053】
指示部25は、算出部24によって算出された第1電動モータ15の駆動トルクが上限トルク以下である場合には、算出された駆動トルクに基づいて第1電動モータ15の制御信号を生成し、第1電動モータ15に出力する。これにより、第1電動モータ15は、制御信号に基づいて動作し、制御される。そして、便蓋11は、第1電動モータ15で発生するトルクによって回動する。
【0054】
指示部25は、算出された第1電動モータ15の駆動トルクが上限トルクよりも大きい場合には、上限トルクに基づいて第1電動モータ15の制御信号を生成し、第1電動モータ15に出力する。これにより、第1電動モータ15は、制御信号に基づいて動作し、制御される。そして、便蓋11は、第1電動モータ15で発生するトルクによって回動する。
【0055】
指示部25は、算出部24によって算出した第2電動モータ16の駆動トルクが上限トルク以下である場合には、算出された駆動トルクに基づいて第2電動モータ16の制御信号を生成し、第2電動モータ16に出力する。これにより、第2電動モータ16は、制御信号に基づいて動作し、制御される。そして、便座12は、第2電動モータ16で発生するトルクによって回動する。
【0056】
指示部25は、算出された第2電動モータ16の駆動トルクが上限トルクよりも大きい場合には、上限トルクに基づいて第2電動モータ16の制御信号を生成し、第2電動モータ16に出力する。これにより、第2電動モータ16は、制御信号に基づいて動作し、制御される。そして、便座12は、第2電動モータ16で発生するトルクによって回動する。
【0057】
<駆動トルクの算出方法>
次に、算出部24による駆動トルクの算出方法を説明する。ここでは、便蓋11の開動作における算出方法を一例として説明するが、便蓋11の閉動作、便座12の開動作、および便座12の閉動作においても、同様の算出方法が用いられる。
【0058】
算出部24は、便蓋11の開動作が開始されてからの時間に基づいて便蓋11の目標回動角を算出する。算出部24は、例えば、予め設定されたマップから、便蓋11の開動作が開始されてからの時間に基づいて便蓋11の目標回動角を算出する。
【0059】
算出部24は、便蓋11の目標回動角に基づいて基準駆動トルクを算出する。すなわち、算出部24は、便蓋11の目標回動角に基づいて第1電動モータ15の基準デューディ比を算出する。算出部24は、例えば、予め設定されたマップから、便蓋11の目標回動角に基づいて第1電動モータ15の基準デューティ比を算出する。算出部24は、フィードフォワード制御によって第1電動モータ15の基準デューティ比を算出する。
【0060】
算出部24は、目標回動角と実回動角との偏差を算出する。算出部24は、偏差に基づいて補正値を算出する。算出部24は、例えば、PID制御によって演算を行い、補正値を算出する。補正値は、第1電動モータ15に対する補正デューティ比として算出される。
【0061】
算出部24は、基準デューティ比と補正デューティ比とを加算し、第1電動モータ15の操作量である駆動デューティ比を算出する。算出部24は、フィードバック制御によって、第1電動モータ15の駆動デューティ比を算出する。すなわち、算出部24は、フィードバック制御によって第1電動モータ15の駆動トルクを算出する。
【0062】
このように、算出部24は、基準駆動トルクを目標回動角と実回動角との偏差に基づいた補正値によって調整し、駆動トルクを算出する。
【0063】
<便蓋回動処理>
次に、実施形態に係る便蓋回動処理について
図4のフローチャートを参照し説明する。
図4は、実施形態に係る便蓋回動処理を説明するフローチャートである。
【0064】
制御装置19は、便蓋11の実回動角を取得する(S100)。制御装置19は、便蓋11の実回動角に基づいて第1電動モータ15の駆動トルクを算出する(S101)。
【0065】
制御装置19は、実回動角に基づいて第1電動モータ15の上限トルクを設定する(S102)。なお、制御装置19は、上限トルクを設定した後に、駆動トルクを算出してもよい。
【0066】
制御装置19は、駆動トルクが上限トルクよりも大きいか否かを判定する(S103)。制御装置19は、駆動トルクが上限トルクよりも大きい場合には(S103:Yes)、第1電動モータ15のトルクを上限トルクに規制して上限トルクに基づいて第1電動モータ15を制御する(S104)。
【0067】
制御装置19は、駆動トルクが上限トルク以下である場合には(S103:No)、第1電動モータ15のトルクを上限トルクに規制せずに、駆動トルクに基づいて第1電動モータ15を制御する(S105)。
【0068】
<便座回動処理>
次に、実施形態に係る便座回動処理について
図5を参照し説明する。
図5は、実施形態に係る便座回動処理を説明するフローチャートである。
【0069】
制御装置19は、便座12の実回動角を取得する(S200)。制御装置19は、便座12の実回動角に基づいて第2電動モータ16の駆動トルクを算出する(S201)。
【0070】
制御装置19は、実回動角に基づいて第2電動モータ16の上限トルクを設定する(S202)。なお、制御装置19は、上限トルクを設定した後に、駆動トルクを算出してもよい。
【0071】
制御装置19は、駆動トルクが上限トルクよりも大きいか否かを判定する(S203)。制御装置19は、駆動トルクが上限トルクよりも大きい場合には(S203:Yes)、第2電動モータ16のトルクを上限トルクに規制して上限トルクに基づいて第2電動モータ16を制御する(S204)。
【0072】
制御装置19は、駆動トルクが上限トルク以下である場合には(S203:No)、第2電動モータ16のトルクを上限トルクに規制せずに、駆動トルクに基づいて第2電動モータ16を制御する(S205)。
【0073】
<動作状態>
次に、実施形態に係る便蓋11の動作状態について
図6、および
図7のタイムチャートを参照し説明する。
図6は、通常動作時における便蓋11の動作状態を示すタイムチャートである。
図7は、物体挟み時における便蓋11の動作状態を示すタイムチャートである。ここでは、便蓋11の開動作を一例として説明する。また、便蓋11の回動角度は、便蓋11の全閉状態を基準として、便蓋11が開くにつれて大きくなるものとする。物体挟みとは、便蓋11と本体部10との間に物体、例えば、
図8に示すように、使用者の指が挟まった状態である。
図8は、便蓋11と本体部10との間に、使用者の指が挟まった一例を示す図である。
【0074】
まず、
図6を参照し、通常動作時、すなわち、便蓋11と本体部10との間に物体が挟まらない場合における便蓋11の動作状態について説明する。
【0075】
時間t0において、第1電動モータ15による便蓋11の開動作が開始されると、便蓋11の目標回動角が大きくなる。また、目標回動角と実回動角との偏差に基づいて第1電動モータ15の駆動トルクが算出される。算出された第1電動モータ15の駆動トルクは、上限トルクよりも小さいため、算出された第1電動モータ15の駆動トルクに基づいた制御信号が生成され、第1電動モータ15が制御される。
【0076】
そのため、便蓋11の実回動角は、目標回動角に追従して大きくなり、時間t10において、便蓋11が全開状態となる。
【0077】
次に、
図7を参照し、物体挟み時における便蓋11の動作状態について説明する。
【0078】
時間t0において、第1電動モータ15による開動作が開始されると、通常動作時と同様に、便蓋11の実回動角は、目標回動角に追従して大きくなる。
【0079】
時間t1において、例えば、使用者の指が便蓋11と本体部10との間に挟まると、便蓋11が回動しないため、実回動角が例えば一定となる。そのため、目標回動角と実回動角との偏差が大きくなり、算出される第1電動モータ15の駆動トルクが大きくなる。
【0080】
時間t2において、算出される第1電動モータ15の駆動トルクが上限トルクよりも大きくなる。そのため、第1電動モータ15のトルク(
図7中、実線)は、時間t0~時間t2までは駆動トルクとなり、時間t2以降は上限トルクとなる。なお、
図7においては、説明のため実線で示す第1電動モータ15のトルクを、駆動トルク、および上限トルクとずらして示している。
【0081】
これにより、トイレ装置1では、便蓋11と本体部10との間に挟まった物体(例えば、使用者の指)に過大な力がかかることが抑制される。なお、便座12の動作状態についても同様であり、トイレ装置1では、便座12と本体部10との間に挟まった物体に過大な力がかかることが抑制される。
【0082】
<効果>
トイレ装置1は、本体部10と、便蓋11、および便蓋11と、各電動モータ15、16と、制御装置19とを備える。本体部10は、便器2に取り付けられる。便蓋11、および便座12は、本体部10によって回動可能に支持される。各電動モータ15、16は、本体部10に収容され、便蓋11、または便座12を回動させる。制御装置19は、フィードバック制御によって各電動モータ15、16を制御する。制御装置19は、各電動モータ15、16のトルクを、便蓋11、および便座12の回動時における上限トルク以下に規制する。
【0083】
これにより、トイレ装置1は、例えば、便蓋11と本体部10との間に物体(例えば、使用者の指)が挟まった場合に、物体に過大な力がかかることを抑制することができる。また、トイレ装置1は、例えば、便蓋11と本体部10との間に物体が挟まった場合に、便蓋11や、本体部10に過大な力がかかることを抑制することができ、便蓋11などの劣化を抑制することができる。
【0084】
また、トイレ装置1は、例えば、便蓋11の回動中に、使用者によって便蓋11が支えられ、便蓋11の回動が停止した場合に、使用者に伝達される力が大きくなることを抑制し、使用者に与える違和感を低減することができる。
【0085】
また、制御装置19は、便蓋11、および便座12の実回動角に基づいて上限トルクを変更する。
【0086】
これにより、トイレ装置1は、便蓋11、および便座12の実回動角に対応する上限トルクを設定することができる。そのため、トイレ装置1は、例えば、便蓋11と本体部10との間に物体が挟まった場合に、便蓋11の実回動角に応じて、物体などに過大な力がかかることを抑制することができる。
【0087】
また、制御装置19は、便蓋11、および便座12の開動作における各電動モータ15、16のトルクを上限トルク以下に規制する。
【0088】
これにより、トイレ装置1は、例えば、便蓋11の回動速度が大きくなることを抑制し、便蓋11が全開状態となった後に、ストッパーや、便座装置3の後方に設けられた部材(例えば、洗浄水タンクや、トイレルームRの壁)に当たることを抑制することができる。そのため、トイレ装置1は、例えば、便蓋11、ストッパーや、便座装置3の後方に設けられた部材の劣化を抑制することができる。また、トイレ装置1は、例えば、便蓋11が全開状態となった後に、便蓋11がバウンドすることを抑制し、便蓋11の開動作における美観性を向上させることができる。
【0089】
また、制御装置19は、便蓋11、および便座12の閉動作における各電動モータ15、16のトルクを上限トルク以下に規制する。
【0090】
これにより、トイレ装置1は、例えば、便蓋11の回動速度が大きくなることを抑制し、便蓋11が便座12に当接する際に生じる衝撃を緩和することができる。そのため、トイレ装置1は、便蓋11、および便座12の劣化を抑制することができる。
【0091】
また、制御装置19は、例えば、便蓋11の目標回動角と、便蓋11の実回動角との偏差に基づいたフィードバック制御によって各電動モータ15、16を制御する。
【0092】
これにより、トイレ装置1は、例えば、便蓋11などのばらつきに対して、便蓋11の回動を調整することができる。そのため、トイレ装置1は、例えば、便蓋11の回動を安定させることができる。また、トイレ装置1は、例えば、便蓋11が全開状態となった後に、便蓋11がストッパーや、便座装置3の後方に設けられた部材に当たることを抑制することができる。そのため、トイレ装置1は、例えば、便蓋11、ストッパーや、便座装置3の後方に設けられた部材の劣化を抑制することができる。また、トイレ装置1は、例えば、便蓋11が全開状態となった後に、便蓋11がバウンドすることを抑制し、便蓋11の開動作における美観性を向上させることができる。
【0093】
また、制御装置19は、予め設定された基準駆動トルクを偏差に基づいた補正値によって調整し、調整した値に基づいて各電動モータ15、16を制御する。
【0094】
これにより、トイレ装置1は、例えば、便蓋11の目標回動角に対する便蓋11の実回動角の追従性を向上させることができる。
【0095】
<変形例>
上記実施形態では、各電動モータ15、16について上限トルクを設定したが、これに限られることはない。変形例に係るトイレ装置1は、第1電動モータ15、および第2電動モータ16のいずれか一方について上限トルクを設定してもよい。
【0096】
また、変形例に係るトイレ装置1は、開動作、および閉動作の一方の動作について上限トルクを設定してもよい。
【0097】
また、変形例に係るトイレ装置1は、開動作、および閉動作における所定領域、例えば、開動作において全閉状態から所定角度回動するまでの領域の動作について上限トルクを設定してもよい。所定領域は、全閉状態から全開状態までの間に任意に設定することができる。例えば、所定領域は、便蓋11や、便座12の回動時に使用者の指が挟まるおそれがある領域である。
【0098】
また、変形例に係るトイレ装置1は、回動部材(便蓋11や、便座12)の回動時における回動状態を学習し、学習した回動状態に基づいて上限トルクを設定してもよい。例えば、変形例に係るトイレ装置1は、予め設定されたトルクによって便蓋11を回動させた場合の便蓋11の回動速度(単位時間当たりの実回動角度の変化量)を算出する。そして、変形例に係るトイレ装置1は、便蓋11の回動速度に応じて第1電動モータ15の上限トルクを設定する。
【0099】
これにより、変形例に係るトイレ装置1は、例えば、便蓋11や、第1電動モータ15のばらつきに対して、上限トルクをそれぞれ設定することができる。すなわち、変形例に係るトイレ装置1は、各トイレ装置1の特性に合わせた上限トルクを設定することができる。そのため、変形例に係るトイレ装置1は、例えば、便蓋11の回動を安定させることができる。このような、上限トルクの設定は、トイレ装置1の出荷時や、施工時などに実行される。
【0100】
また、変形例に係るトイレ装置1は、上限トルクを設定する設定モードを有し、設定モードが選択された場合に、上限トルクの設定を行ってもよい。これにより、変形例に係るトイレ装置1は、例えば、便蓋11や、第1電動モータ15の経年劣化に応じて上限トルクを設定することができる。
【0101】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 トイレ装置
2 便器
3 便座装置
10 本体部(支持部)
11 便蓋(回動部材)
12 便座(回動部材)
15 第1電動モータ
16 第2電動モータ
17 第1角度センサ
18 第2角度センサ
19 制御装置
20 制御部
22 取得部
23 設定部
24 算出部
25 指示部