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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】水栓用発電機
(51)【国際特許分類】
   F03B 17/06 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F03B17/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020034147
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134781
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 恵仁斉
(72)【発明者】
【氏名】黒石 正宏
(72)【発明者】
【氏名】古井 直子
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024703(JP,A)
【文献】特開2012-177362(JP,A)
【文献】登録実用新案第3125983(JP,U)
【文献】特開2006-183451(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006054791(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
F03B 11/00-11/08
E03C 1/00- 1/10
H02K 21/00-21/48
H02K 1/17; 1/27- 1/2798;15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水流入口から流入する水が流れる給水流路を有する給水管と、
前記給水流路に配置される軸と、
前記軸の軸まわりに回転可能に取り付けられるロータと、
前記ロータのマグネットの回転によって起電力が発生するコイルと、
前記給水流路を流れる水を該軸に対して略垂直な平面内で前記ロータのインペラの径外方向から該インペラに向けて噴出する孔を有するノズル部と
を備え、
前記ロータは、
前記軸の軸まわりに回転可能な前記インペラを有する動翼部材と、
前記インペラの先端側を閉じるとともに該インペラと一体となって前記軸の軸まわりに回転する蓋部材と、
前記動翼部材の外周部において該動翼部材と一体となって回転可能な前記マグネットと
を備え、
前記蓋部材は、前記インペラと対向する面に、平面視において前記インペラの先端部に対応して放射状に配置され、該インペラのそれぞれの羽根の先端部が嵌まり込む複数の凹部を有し、
前記蓋部材は、前記インペラと対向する面の平面視における中央部に前記軸が挿通される軸部が設けられ、
前記インペラは、前記羽根および前記軸部の基端部の間に水が流入可能な隙間を有し、
前記ロータは、前記軸部が延伸する方向に離間した2つの軸受けを有する、水栓用発電機。
【請求項2】
給水流入口から流入する水が流れる給水流路を有する給水管と、
前記給水流路に配置される軸と、
前記軸の軸まわりに回転可能なインペラを有する動翼部材と、
前記インペラの先端側を閉じるとともに該インペラと一体となって前記軸の軸まわりに回転する蓋部材と、
前記動翼部材の外周部において該動翼部材と一体となって回転可能なマグネットと、
前記マグネットの回転によって起電力が発生するコイルと、
前記給水流路を流れる水を該軸に対して略垂直な平面内で前記インペラの径外方向から該インペラに向けて噴出する孔を有するノズル部と
を備え、
前記蓋部材は、前記インペラと対向する面に、平面視において前記インペラの先端部に対応して放射状に配置され、該インペラのそれぞれの羽根の先端部が嵌まり込む複数の凹部を有し、
前記蓋部材は、前記インペラと対向する面の平面視における中央部に前記軸が挿通される軸部が設けられ、
前記インペラは、前記羽根および前記軸部の基端部の間に水が流入可能な隙間を有し、
前記蓋部材は、前記軸部が前記動翼部材における前記インペラが配置された側とは反対側の端部において突出し、突出した部分で固定される、水栓用発電機。
【請求項3】
給水流入口から流入する水が流れる給水流路を有する給水管と、
前記給水流路に配置される軸と、
前記軸の軸まわりに回転可能なインペラを有する動翼部材と、
前記インペラの先端側を閉じるとともに該インペラと一体となって前記軸の軸まわりに回転する蓋部材と、
前記動翼部材の外周部において該動翼部材と一体となって回転可能なマグネットと、
前記マグネットの回転によって起電力が発生するコイルと、
前記給水流路を流れる水を該軸に対して略垂直な平面内で前記インペラの径外方向から該インペラに向けて噴出する孔を有するノズル部と
を備え、
前記蓋部材は、前記インペラと対向する面に、平面視において前記インペラの先端部に対応して放射状に配置され、該インペラのそれぞれの羽根の先端部が嵌まり込む複数の凹部を有し、
前記動翼部材は、前記インペラが配置された側とは反対側の端部に、該インペラおよび前記蓋部材の互いの位置を決定する位置決め部を有する、水栓用発電機。
【請求項4】
前記蓋部材は、前記インペラと対向する面の平面視における中央部に前記軸が挿通される軸部が設けられ、
前記インペラは、前記羽根および前記軸部の基端部の間に水が流入可能な隙間を有する、請求項に記載の水栓用発電機。
【請求項5】
前記凹部は、平面視において前記蓋部材の前記インペラと対向する面の外周縁から中心に至る途中まで延伸しており、前記羽根および前記基端部の間においては延伸していない、請求項1、2、4のいずれか1つに記載の水栓用発電機。
【請求項6】
前記軸部は、側面視において少なくとも前記マグネットと重なる位置まで延伸し、前記軸受けが側面視において少なくとも前記マグネットと重なる位置に設けられている、請求項に記載の水栓用発電機。
【請求項7】
前記軸部は、側面視において前記動翼部材における前記インペラが配置された側とは反対側の端部まで延伸している、請求項に記載の水栓用発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水栓用発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓装置には、たとえば、人体検知センサや、当該センサから送信される信号に基づいて給水路を開閉する電磁弁や、吐水口から吐出される水の温度に応じて水にあてる光の色を変えるためのLED(Light Emitting Diode)照明などの電気システムが組み込まれるようになってきている。
【0003】
これに伴い、水栓装置には、電気システムを動作させるために必要な電力を得るための手段のひとつとして、水力発電機が組み込まれる場合がある。
【0004】
従来、水栓装置に組み込まれる水力発電機(以下、水栓用発電機という)には、小型であり、かつ、発電効率の高い、いわゆる軸流式のものがある。
【0005】
軸流式の水栓用発電機は、たとえば、給水流路を有する給水管と、給水流路に対して略平行な回転軸と、回転軸まわりに回転可能な複数の羽根(インペラ)を有し、羽根の先端側に配置され羽根と共に回転軸まわりに回転する蓋を有するロータと、ロータと一体で回転可能なマグネットと、マグネットの回転で起電力が発生するコイルと、回転軸に対して略平行な方向から流れてくる水を、回転軸に対して略垂直な平面内で羽根の径外方向から羽根に向けて噴出する複数の孔を有するノズル部とを備える(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-167301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、水栓装置では、節水化が進み、このため、限られた水のエネルギーを有効利用しようと、水力から電気へ効率的に変換して発電効率を高めることが要求されている。
【0008】
しかしながら、上記したような従来の水栓用発電機では、羽根に向かう水流のうち羽根の先端と蓋面との間から羽根の後方へ逃げる水流が発生して水力から電気への変換効率が低下、すなわち、発電効率が低下することがある。このように、従来の水栓用発電機は、発電効率を高める点について改善の余地があった。
【0009】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、発電効率を高めることができる水栓用発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の一態様に係る水栓用発電機は、給水流入口から流入する水が流れる給水流路を有する給水管と、前記給水流路に配置される回転軸と、前記回転軸まわりに回転可能なインペラを有する動翼部材と、前記インペラの先端側を閉じるとともに該インペラと一体となって回転軸まわりに回転する蓋部材と、前記動翼部材の外周部において該動翼部材と一体となって回転可能なマグネットと、前記マグネットの回転によって起電力が発生するコイルと、前記給水流路を流れる水を該回転軸に対して略垂直な平面内で前記インペラの径外方向から該インペラに向けて噴出する孔を有するノズル部とを備え、前記蓋部材は、前記インペラと対向する面に、平面視において前記インペラの先端部に対応して放射状に配置され、該インペラのそれぞれの羽根の先端部が嵌まり込む複数の凹部を有する。
【0011】
このような構成によれば、インペラの羽根の先端部と蓋部材のインペラと対向する面(蓋面)との間が入り組んだ、いわゆるラビリンス構造となるため、インペラに向かう水流がインペラの羽根の先端部と蓋面との間から羽根の後方へ逃げにくい。このため、水流がインペラに対して効率的にあたることとなり、水力から電気への変換効率すなわち、発電効率を高めることができる。
【0012】
また、水栓用発電機では、記蓋部材は、前記インペラと対向する面の平面視における中央部に前記回転軸が挿通される軸部が設けられ、前記インペラは、前記羽根および前記軸部の基端部の間に水が流入可能な隙間を有する。
【0013】
このような構成によれば、インペラのそれぞれの羽根と軸部との間の隙間からノズル部へ流入してきた水が羽根を押した後に滞留することなく軸部の周りへ流れ込むため、効率的にインペラを回すことができる。その上、軸部の周りへ流れ込んだ水は適宜ノズル部へ流出される孔につながった複数の羽根の間の隙間から流出される際に羽根を再び押すことになるため、さらに効率的にインペラを回すことができる。
【0014】
また、水栓用発電機では、前記凹部は、平面視において前記蓋部材の前記インペラと対向する面の外周縁から中心に至る途中まで延伸しており、前記羽根および前記基端部の間においては延伸していない。
【0015】
凹部がインペラと対向する面の外周縁から中心にまで延伸していると、軸部の周りへ流れ込んだ水において凹部により渦流が発生してしまう可能性がある。そこで、このような構成によれば、軸部の周りへ流れ込んだ水において、渦流が発生してしまうことを抑制でき、ノズル部内において効率的に水を流すことができるため、より効率的にインペラを回すことができる。
【0016】
また、水栓用発電機では、前記軸部は、前記回転軸に沿って延伸しているとともに、延伸方向の両端部に前記回転軸の軸受けを有する。
【0017】
このような構成によれば、たとえば、軸受けを離して設けることができ、遠い距離の離れた2点で回転軸を支持できるようになるため、回転軸の傾きを抑制するとともに蓋部材を回転軸まわりに安定して回転させることができる。
【0018】
また、水栓用発電機では、前記軸部は、側面視において少なくとも前記マグネットと重なる位置まで延伸している。
【0019】
このような構成によれば、軸受けを離して設けることができ、遠い距離の離れた2点で回転軸を支持できるようになるため、回転軸の傾きをより確実に抑制することができる。
【0020】
また、水栓用発電機では、前記軸部は、側面視において前記動翼部材における前記インペラが配置された側とは反対側の端部まで延伸している。
【0021】
このような構成によれば、軸受け位置を離すことができるため、回転軸の傾きをより確実に抑制することができる。
【0022】
また、水栓用発電機では、前記蓋部材は、前記軸部が前記動翼部材における前記インペラが配置された側とは反対側の端部において突出し、突出した部分で固定される。
【0023】
このような構成によれば、蓋部材の軸部が動翼部材における反対側の端部から突出するため、突出した部分を溶着させるなど、蓋部材の固定に供することができる。また、蓋部材の軸部を動翼部材における反対側の端部で固定することで、たとえば、蓋部材を動翼部材におけるインペラが配置された側の端部で接着や溶着によって固定するような場合よりもインペラの回転などに対する影響を抑制することができる。
【0024】
また、水栓用発電機では、前記動翼部材は、前記インペラが配置された側とは反対側の端部に、該インペラおよび前記蓋部材の互いの位置を決定する位置決め部を有する。
【0025】
このような構成によれば、動翼部材における反対側の端部でインペラと蓋部材との位置合わせが可能となるため、両者の位置合わせが容易となり、組み立て性を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
実施形態の一態様によれば、発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態に係る水栓用発電機を備える水栓装置の説明図である。
図2図2は、実施形態に係る水栓用発電機の分解斜視図である。
図3図3は、ロータの分解斜視図である。
図4図4は、ロータの側断面図である。
図5図5は、動翼部材の斜視図である。
図6図6は、(a)動翼部材の平面図、(b)動翼部材の側面図、(c)動翼部材の底面図である。
図7図7は、一方の蓋部材の斜視図である。
図8図8は、(a)一方の蓋部材の平面図、(b)一方の蓋部材の側面図、(c)一方の蓋部材の底面図である。
図9図9は、他方の蓋部材の斜視図である。
図10図10は、他方の蓋部材の平面図である。
図11図11は、本例における水流の態様の説明図である。
図12図12は、比較例における水流の態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水栓用発電機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
<水栓装置>
まず、図1を参照して実施形態に係る水栓用発電機10を備える水栓装置(自動水栓装置)1の一例について説明する。図1は、実施形態に係る水栓用発電機10を備える水栓装置1の説明図である。図1に示すように、水栓装置1は、使用者の手などを検知すると自動で吐水する自動水栓装置であり、たとえば、洗面台7などに設置される。水栓装置1は、配管8を介して、水道水などの流入口(図示せず)に接続される。
【0030】
水栓装置1は、本体2と、吐水口3とを備える。本体2は、たとえば、円筒状であり、水(水道水など)Wが供給される。本体2は、所定の固定位置に固定される。吐水口3は、本体2に供給される水Wを水栓装置1の外部に吐出する。
【0031】
また、水栓装置1は、検知部4を備える。検知部4は、人体検知センサであり、たとえば、赤外線センサや電波センサである。検知部4は、使用者の手などを検知する。検知部4は、たとえば、吐水口3付近に配置される。
【0032】
また、水栓装置1は、給水流路5と、電磁弁6とを備える。給水流路5は、水栓装置1の内部に形成される。給水流路5は、流入口から流入して配管8内を流れてくる水Wを、吐水口3に導く流路である。電磁弁6は、本体2内に配置され、給水流路5を開閉する。
【0033】
なお、水栓装置1は、定流量弁や減圧弁(または調圧弁)をさらに備えてもよい。定流量弁は、電磁弁6の下流側に配置され、吐水量を一定に制限するための弁である。減圧弁(調圧弁)は、電磁弁6の上流側に配置され、水道の元圧(一次圧)が使用圧よりも大幅に高い場合などに減圧するための弁である。
【0034】
また、水栓装置1は、水栓用発電機10を備える。水栓装置1は、充電部(図示せず)と、制御部(図示せず)とをさらに備える。充電部は、水栓用発電機10で発電される電力を充電する。制御部は、検知部4や、電磁弁6の開閉などを制御する。水栓用発電機10は、電磁弁6や定流量弁よりも下流側に配置される。
【0035】
水栓用発電機10が電磁弁6や定流量弁よりも下流側に配置されることで、水道の元圧(一次圧)が水栓用発電機10に直接作用することがないため、高い耐圧性を要求されず、信頼性やコストの点で有利となる。
【0036】
また、充電部および制御部は、配線を介して接続され、本体2の上部であって給水流路5の上部よりもさらに上方となる位置に配置されることが好ましい。これにより、たとえば、給水流路5を形成する流路管の外面に結露した水滴が落下または流路管を伝って流れ落ちても、充電部や制御部が浸水するのを防ぐことができ、充電部や制御部の故障を防止することができる。
【0037】
また、制御部は、水栓用発電機10の後述するコイルと配線を介して接続される。これにより、制御部を介して、コイルの出力(電力)が充電部に送られる。
【0038】
水栓装置1は、生活空間において好適に使用することができる。水栓装置1の使用目的としては、たとえば、キッチン用水栓装置、リビングダイニング用水栓装置、シャワー用水栓装置、トイレ用水栓装置、洗面所用水栓装置などがある。
【0039】
また、水栓用発電機10は、水栓装置1のような自動水栓装置に限らず、手動スイッチのオンオフによるワンタッチ式の水栓装置、水の流量をカウントして止水する定量吐水式の水栓装置、予め設定された設定時間を経過すると止水するタイマー式の水栓装置などに適用してもよい。また、水栓用発電機10によって発電された電力を、たとえば、ライトアップ、アルカリイオン水や銀イオン含有水などの電解機能水の生成、流量表示(計量)、温度表示、音声ガイドなどに用いてもよい。
【0040】
なお、水栓装置1では、吐水流量が、たとえば、毎分100リットル以下、好ましくは毎分30リットル以下に設定されている。洗面所用水栓装置では、毎分5リットル以下に設定されていることが望ましい。
【0041】
また、トイレ用水栓装置のような吐水流量が比較的大きい場合には、給水管20から水栓用発電機10に流れる水を分岐させ、水栓用発電機10を流れる水の流量を毎分30リットル以下となるように調整することが望ましい。
【0042】
このような流量調整を行うことで、流量が大きい場合に給水管20からすべての水Wを水栓用発電機10に流すことで後述するインペラ413の回転数が大きくなりすぎて騒音や回転軸の摩耗が増大する、という不具合の発生を抑えることができる。また、インペラ413の回転数が増大しても適正回転数でなければ過電流やコイル熱によるエネルギー損失が生じるため発電量が増大しない、などの不具合の発生も抑えることができる。
【0043】
<水栓用発電機>
次に、図2を参照して実施形態に係る水栓用発電機10の概略について説明する。図2は、実施形態に係る水栓用発電機10の分解斜視図である。
【0044】
なお、図2には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を右方、X軸の負方向を左方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0045】
図2に示すように、水栓用発電機10は、給水管20と、実体のある回転しない軸30と、ロータ40と、ステータ(図示せず)と、ノズル部50と、封止部60とを備える。
【0046】
給水管20は、大径部21と、中径部22と、小径部23とを備える。給水管20は、それぞれ円筒状の大径部21、中径部22および小径部23が軸方向(Z軸方向、すなわち、上下方向)に対して略平行に並ぶことで、段付き形状に形成される。給水管20は、給水流入口と、給水流出口とを有する。給水管20の内部には、配管8(図1参照)内の水が流れる給水流路が形成されている。なお、図2には、給水管20の内部における概略的な水の流れを矢線で示している。
【0047】
また、給水管20の内部には、軸30が配置されるとともに、軸30の軸まわりに、ロータ40、ステータおよびノズル部50が配置される。給水管20は、大径部21に封止部60が取り付けられることで、大径部21の開口21aが封止される。
【0048】
30は、給水流路に対して、たとえば、略平行となるように配置される。軸30は、後述するノズル部50に取り付けられる。軸30は、ノズル部50において、図示しない支持部によって支持される。
【0049】
ロータ40は、軸30に対して、軸30の軸まわりに回転可能に取り付けられる。ロータ40は、動翼部材41と、蓋部材(以下、一方の蓋部材という)42と、マグネット43と、他方の蓋部材44とを備える。このうち、マグネット43は、円筒状であり、後述する動翼部材41の外周部に配置される。言い換えると、マグネット43は、動翼部材41を内周部の空間に嵌入させるように配置される。
【0050】
また、マグネット43は、動翼部材41と一体となって、軸30の軸まわりに回転可能である。マグネット43の外周面には、その周方向に沿ってN極およびS極が交互に着磁されている。なお、ロータ40の残りの構成部材である動翼部材41、一方の蓋部材42および他方の蓋部材44については、図3図10を用いてそれぞれ後述する。
【0051】
ステータは、マグネット43の外周側となる位置に配置される。ステータは、たとえば、給水管20の外周側に配置される。ステータは、たとえば、マグネット43の軸方向の端面(上端面または下端面)と対向するように配置されてもよいし、マグネット43の側周面と対向するように配置されてもよい。
【0052】
ステータは、たとえば、ヨークと、コイルとを備える。ヨークは、たとえば、軟磁性体(たとえば、圧延鋼)を材料として形成される。コイルは、たとえば、導線が円環状に巻回されて形成される。コイルでは、マグネット43の回転によって起電力が発生する。
【0053】
ノズル部50は、複数の孔(図示せず)を備える。複数の孔(以下、噴射孔という)は、動翼部材41の外周側において、たとえば、動翼部材41を囲むように配置される。噴射孔は、軸30に対して略平行な方向(Z軸方向、すなわち、上下方向)から流れてくる水を、軸30に対して略垂直な平面(X-Y平面)内で後述するインペラ413の径外方向からこのインペラ413に向けて噴出する。
【0054】
封止部60は、給水管20の大径部21の開口21aを液密に封止するように、給水管20に取り付けられる。封止部60は、ビスなどの締結具61によって、給水管20に対して固定される。封止部60が給水管20に取り付けられると、ノズル部50の軸方向(上下方向)の位置が規制される。
【0055】
<ロータ>
次に、図3図10を参照してロータ40について説明する。図3は、ロータ40の分解斜視図である。図4は、ロータ40の側断面図である。なお、図4には、ロータ40の模式断面を示している。また、図3および図4においても、図2と同様、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。
【0056】
図3および図4に示し、かつ、上記したように、ロータ40は、動翼部材41と、一方の蓋部材42と、マグネット43と、他方の蓋部材44とを備える。ロータ40では、動翼部材41、一方の蓋部材42、マグネット43および他方の蓋部材44が軸30(図2参照)上において組み合わされる。
【0057】
図5は、動翼部材41の斜視図である。図6は、(a)動翼部材41の平面図、(b)動翼部材41の側面図、(c)動翼部材41の底面図である。動翼部材41は、軸30(図2参照)の軸まわりに回転可能な部材である。
【0058】
図5および図6に示すように、動翼部材41は、本体411と、インペラ413と、位置決め部416とを備える。本体411は、円筒状である。本体411の外周面411aには、マグネット43(図3参照)が取り付けられる場合にマグネット43の係合凹部431(図3参照)と係合させるための係合凸部412が設けられる。
【0059】
インペラ413は、本体411の一端部に本体411に対して同軸で設けられる。インペラ413は、基板414と、複数の羽根415を備える。基板414は、円板状である。複数の羽根415は、基板414上に設けられ、図6(c)に示すように、底面視において基板414の外周縁から中心に至る途中まで延伸している。
【0060】
また、複数の羽根415は、底面視において曲線で構成されることが好ましい。この場合、複数の羽根415は、基板414の中心に向かうにつれて同様に湾曲している。
【0061】
なお、たとえば、羽根415の枚数を11枚とし、ノズル部50(図2参照)の噴射孔(図示せず)の数を3つとするなど、羽根415は、噴射孔の数の整数倍とは異なる枚数であることが好ましい。これにより、噴射孔から噴出された水が各羽根415の外周縁付近に衝突するタイミングをずらすことができ、インペラ413の振動や騒音の発生を抑えることができる。
【0062】
インペラ413は、軸30(図2参照)の軸まわりに回転可能である。すなわち、上記したように、動翼部材41は、軸30の軸まわりに回転可能である。そして、動翼部材41の回転によって、マグネット43は、動翼部材41と一体となって回転する。
【0063】
位置決め部416は、本体411のインペラ413が配置された側とは反対側の他端部(他端面)に設けられる。位置決め部416は、図6(a)に示すように、軸30が挿通される軸孔417を中心とする同一円上に配置された複数(たとえば、4つ)の孔416aである。位置決め部416は、後述する一方の蓋部材42の複数(4つ)の突部424aが軸30の軸方向に沿って孔416aに挿通されることで、インペラ415および一方の蓋部材42の位置を合わせる。なお、この際に、後述する軸部423の係合部424の突部424a(図8参照)と、位置決め部416の孔416aの大きさをそれぞれ複数用意して、大きさの一致する突部424aと孔と416aのみが挿通できるようにすることで、回転方向の位置を一義的に決めることができる。
【0064】
このような構成によれば、動翼部材41における反対側の端部でインペラ413の先端部415aと一方の蓋部材42の後述する凹部422との位置合わせが可能となるため、両者の位置合わせが容易となり、組み立て性を高めることができる。
【0065】
図7は、一方の蓋部材42の斜視図である。図8は、(a)一方の蓋部材42の平面図、(b)一方の蓋部材42の側面図、(c)一方の蓋部材42の底面図である。一方の蓋部材42は、動翼部材41(インペラ413)の先端側を閉じるとともに、動翼部材41(インペラ413)と一体となって軸30(図2参照)の軸まわりに回転する部材である。
【0066】
図7および図8に示すように、一方の蓋部材42は、蓋部421と、軸部423とを備える。蓋部421は、円板状である。蓋部421におけるインペラ413の先端側と対向する面(以下、蓋面という)421aには、外周縁が開放された複数の凹部422が形成される。
【0067】
複数の凹部422は、図8(a)に示すように、蓋面421aに、平面視においてインペラ413の先端部、すなわち、複数の羽根415の先端部415a(図6(c)参照)に対応して放射状に配置される。複数の凹部422は、複数の羽根415と同数である。複数の凹部422には、複数の羽根415の先端部415aが嵌まり込む。
【0068】
また、複数の凹部422は、図8(a)に示すように、平面視において蓋面421aの外周縁から中心に至る途中まで延伸している。複数の凹部422は、複数の羽根415および軸部423の基端部423aの間においては延伸していない。なお、延伸していない凹部422とは、凹部422の深さが0.5ミリ以下のものであり、最も好ましくは全く凹んでいないものである。また、複数の凹部422は、複数の羽根415に対応するように、底面視において曲線で構成されることが好ましい。このため、複数の凹部422は、複数の羽根415と同様、蓋面421aの中心に向かうにつれて同様に湾曲している。
【0069】
軸部423は、円筒状であり、平面視における蓋面421aの中心に基端部423a側が固定され、蓋面421a上に立設される。軸部423には、蓋部421の軸孔425から軸30が挿通される。このため、軸部423は、軸30に対して同軸で延伸している。また、図4に戻り、図示のように、軸部423は、延伸方向の両端部に軸受け423cを備える。すなわち、軸部423は、基端部423aに一方の軸受け423c、先端部に他方の軸受け423cを備える。
【0070】
このような構成によれば、動翼部材41に取り付けた軸部423と、そこから最も遠い、後述する他方の蓋部材44との2点で軸30を支持できるようになるため、軸30の傾きを抑制するとともに一方の蓋部材42を軸30の軸まわりに安定して回転させることができる。また、軸受け423cを離して設けることができ、遠い距離の離れた2点で軸を支持できるようになるため、軸30の傾きをより確実に抑制することができる。
【0071】
また、軸部423は、ロータ40(図2参照)の側面視において、少なくともマグネット43(図2参照)と重なる位置まで延伸している。好ましくは、軸部423は、動翼部材41の本体411におけるインペラ413が配置された一端部側とは反対側の他端部まで延伸している。このような構成によれば、軸受け423cを離して設けることができ、遠い距離の離れた2点で軸を支持できるようになるため、軸30の傾きをより確実に抑制することができる。
【0072】
また、軸部423は、先端部423bに、動翼部材41に対する位置決めのための係合部424を備える。係合部424は、軸部423の先端部423bにおいて軸方向に沿って突出している複数(4つ)の突部424aである。係合部424は、位置決め部415の孔416aに突部424aが挿通されることで、インペラ413に対して一方の蓋部材42の位置を決めることができ、両者の位置を合わせることができる。
【0073】
突部424aは、位置決め部416の孔416aから突出し、突出した部分を固定部として、動翼部材41および一方の蓋部材42が一体化される。なお、実際には、突部424aは、後述する他方の蓋部材44の孔441からも突出し、突出した部分を固定部として、動翼部材41、一方の蓋部材42、マグネット43および他方の蓋部材44が一体化される。
【0074】
このような構成によれば、軸部423が動翼部材41(本体411)における一端部側とは反対側の他端部から突出するため、突出した部分を溶着させるなど、動翼部材41に対する一方の蓋部材42の固定に供することができる。また、軸部423を動翼部材41(本体411)における反対側の他端部で固定することで、たとえば、一方の蓋部材42を動翼部材41(本体411)におけるインペラ413が配置された側の一端部で接着や溶着によって固定するような場合よりもインペラ413の回転などに対する影響を抑制することができる。
【0075】
図9は、他方の蓋部材44の斜視図である。図10は、他方の蓋部材44の平面図である。他方の蓋部材44は、動翼部材41(図3参照)の他端部(他端面)に取り付けられる。図9および図10に示すように、他方の蓋部材44は、円板状であり、軸30が挿通される軸孔441を中心とする同一円上に配置された複数(たとえば、4つ)の孔442aが形成される。
【0076】
複数(4つ)の孔442aは、動翼部材41の位置決め部416(図5参照)と同様、一方の蓋部材42(図7参照)の複数(4つ)の突部424a(図7参照)が軸30の軸方向に沿って挿通されることで、インペラ415に対する一方の蓋部材42の位置を決める位置決め部442となる。
【0077】
次に、図11および図12を参照して実施形態に係る水栓用発電機10における水流の態様について説明する。図11は、本例(水栓用発電機10)における水流の態様の説明図である。図12は、比較例における水流の態様の説明図である。
【0078】
図11に示すように、水栓用発電機10では、インペラ413の羽根415が一方の蓋部材42の蓋面421aの凹部422に嵌まり込んでいるため、羽根415の先端部415aおよび凹部422が近接している部分は、水Wの流れる方向に対して入り組んだ構造、いわゆるラビリンス構造となる。これにより、インペラ413に向けて流れる水Wのほとんどすべてが羽根415に衝突する。
【0079】
図12に示すように、比較例に係る水栓用発電機100では、インペラ413の羽根415の先端部415aおよび凹部422が近接している部分は、互いに面で対向している。このため、インペラ413に向けて流れる水Wは、羽根415に衝突する水W1だけでなく、羽根415の先端部415aと蓋面421aとの間(隙間)から羽根415の後方へ逃げる水W2が発生する。
【0080】
このように、上記した実施形態によれば、インペラ413の羽根415の先端部415aと一方の蓋部材42の蓋面421aとの間が入り組んだ、いわゆるラビリンス構造となるため、インペラ413に向かう水流が羽根415の先端部415aと蓋面421aとの間から羽根415の後方へ逃げにくい。このため、水流がインペラ413の羽根415に対して効率的にあたることとなり、水力から電気への変換効率が高まる。これにより、発電効率を高めることができる。
【0081】
また、インペラ413の羽根415と軸部423の基端部423aとの間に水が流入可能な隙間を有するため、それぞれの羽根415と軸部423との間の隙間からノズル部50へ流入してきた水が羽根415を押した後に滞留することなく軸部423の基端部423aの周りへ流れ込むため、効率的にインペラ413を回すことができる。その上、軸部423の基端部423aの周りへ流れ込んだ水は適宜ノズル部50へ流出される孔につながった複数の羽根415の間の隙間から流出される際に羽根415を再び押すことになるため、さらに効率的にインペラ413を回すことができる。
【0082】
また、インペラ413の羽根415の先端部415a、これに対応する一方の蓋部材42の凹部422が互いに平面視において基板414または蓋面421aの途中まで延伸しているため、凹部422の面積が小さい。このため、羽根415の先端部415aを、凹部422に対して容易に嵌め込むことができる。
【0083】
なお、上記した実施形態では、図面上、凹部422の底面と羽根415の先端部415aとの相対する面は平面であるが、たとえば、凹部422の底面と羽根415の先端部415aとの相対する面が斜面として形成されてもよい。これにより、羽根415の先端部415aの側方端部が凹部422の側方端部に対してより確実に接触するようになる。
【0084】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 水栓用発電機
20 給水管
30
41 動翼部材
413 インペラ
415 羽根
415a 先端部
416 位置決め部
42 蓋部材(一方の蓋部材)
421a インペラと対向する面(蓋面)
422 凹部
423 軸部
423a 基端部
423c 軸受け
43 マグネット
50 ノズル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12