(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】予測装置、画像形成装置、プログラム及び予測システム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240220BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H04N1/00 002A
B41J29/38 301
B41J29/38 801
H04N1/00 350
(21)【出願番号】P 2020040088
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 裕貴
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-002663(JP,A)
【文献】特開2015-136925(JP,A)
【文献】特開平05-072859(JP,A)
【文献】特開2013-201566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部から画像形成装置に行われた操作
で動作した前記画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する操作内容取得部と、
前記操作内容と、前記画像形成装置の装置状態とを紐づけて格納し、前記装置状態には、前記装置状態に合わせて前記画像形成装置になされる対応策が含まれる装置状態テーブルと、
前記操作内容に基づいて、
前記装置状態テーブルを参照して、前記操作内容に紐づけられた前記装置状態を予測する装置状態予測部と、
予測された前記装置状態を表示部に表示可能に出力する表示出力部と、を備える
予測装置。
【請求項2】
前記操作内容が格納された履歴テーブルから前記操作内容の履歴を読み出して、前記操作部を通じてオペレーターが要求する要求印刷状態を判定する要求印刷状態判定部を備え、
前記装置状態予測部は、前記操作内容及び前記要求印刷状態に基づいて前記装置状態を予測する
請求項
1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記操作内容と、前記要求印刷状態とを紐づけて格納する要求印刷状態テーブルを備え、
前記装置状態テーブルには、前記要求印刷状態テーブルに記録される操作内容と、前記要求印刷状態と、前記装置状態とが紐づけて記録され、
前記要求印刷状態判定部は、前記要求印刷状態テーブルを参照して、前記操作内容に紐づけられた前記要求印刷状態を判定し、
前記装置状態予測部は、前記装置状態テーブルを参照して、前記操作内容及び前記要求印刷状態に紐づけられた前記装置状態を予測する
請求項
2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記装置状態予測部が前記装置状態を予測するときの感度は、前記表示部に表示された前記対応策に基づいて、前記操作部から要求される感度に変更される
請求項1~
3のいずれか一項に記載の予測装置。
【請求項5】
操作部から画像形成装置に行われた操作で動作した前記画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する操作内容取得部と、
前記操作内容を入力して前記
画像形成装置の装置状態を出力とする機械学習で作成された装置状態学習モデル
と、
前記操作内容を履歴として格納する履歴テーブルから前記操作内容の履歴を読み出して、前記操作部を通じてオペレーターが要求する要求印刷状態を判定する要求印刷状態判定部と、
前記装置状態学習モデルを使用して、
前記操作内容及び前記要求印刷状態に基づいて、前記装置状態に合わせて前記画像形成装置になされる対応策が含まれる前記装置状態を予測する装置状態予測部と、
予測された前記装置状態を表示部に表示可能に出力する表示出力部と、を備える
予測装置。
【請求項6】
前記操作内容を入力して前記要求印刷状態を出力とする機械学習で作成された要求印刷状態学習モデルを備え、
前記要求印刷状態判定部は、前記要求印刷状態学習モデルを使用して、前記操作内容に対応する前記要求印刷状態を判定する
請求項
5に記載の予測装置。
【請求項7】
前記装置状態予測部は、さらに前記画像形成装置のパラメーターを用いて前記装置状態を予測する
請求項
6に記載の予測装置。
【請求項8】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
画像形成装置に対して操作が行われる操作部と、
前記画像形成装置に関する情報が表示される表示部と、
前記画像形成装置の装置状態を予測する予測装置と、を備え、
前記予測装置は、
前記操作部から前記画像形成装置に行われた操作
で動作した前記画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する操作内容取得部と、
前記操作内容と、前記装置状態とを紐づけて格納し、前記装置状態には、前記装置状態に合わせて前記画像形成装置になされる対応策が含まれる装置状態テーブルと、
前記操作内容に基づいて、
前記装置状態テーブルを参照して、前記操作内容に紐づけられた前記装置状態を予測する装置状態予測部と、
予測された前記装置状態を前記表示部に表示可能に出力する表示出力部と、を有する
画像形成装置。
【請求項9】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
画像形成装置に対して操作が行われる操作部と、
前記画像形成装置に関する情報が表示される表示部と、
前記画像形成装置の装置状態を予測する予測装置と、を備え、
前記予測装置は、
操作部から画像形成装置に行われた操作で動作した前記画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する操作内容取得部と、
前記操作内容を入力して前記装置状態を出力とする機械学習で作成された装置状態学習モデルと、
前記操作内容を履歴として格納する履歴テーブルから前記操作内容の履歴を読み出して、前記操作部を通じてオペレーターが要求する要求印刷状態を判定する要求印刷状態判定部と、
前記装置状態学習モデルを使用して、前記操作内容及び前記要求印刷状態に基づいて、前記装置状態に合わせて前記画像形成装置になされる対応策が含まれる前記装置状態を予測する装置状態予測部と、
予測された前記装置状態を表示部に表示可能に出力する表示出力部と、を備える
画像形成装置。
【請求項10】
操作部から画像形成装置に行われた操作
で動作した前記画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する手順と、
前記操作内容と、前記画像形成装置の装置状態とを紐づけて格納し、前記装置状態には、前記装置状態に合わせて前記画像形成装置になされる対応策が含まれる装置状態テーブルを、前記操作内容に基づいて
参照して、前記操作内容に紐づけられた前
記装置状態を予測する手順と、
予測された前記装置状態を表示部に表示可能に出力する手順と、を
予測装置を構成するコンピューターに実行させるためのプログラム。
【請求項11】
操作部から画像形成装置に行われた操作で動作した前記画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する手順と、
前記操作内容を履歴として格納する履歴テーブルから前記操作内容の履歴を読み出して、前記操作部を通じてオペレーターが要求する要求印刷状態を判定する手順と、
前記操作内容を入力して前記画像形成装置の装置状態を出力とする機械学習で作成された装置状態学習モデルを使用して、前記操作内容及び前記要求印刷状態に基づいて、前記装置状態に合わせて前記画像形成装置になされる対応策が含まれる前記装置状態を予測する手順と、
予測された前記装置状態を表示部に表示可能に出力する手順と、を
予測装置を構成するコンピューターに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
画像形成装置と、前記画像形成装置がネットワークを介して接続される管理サーバと、を備え、
前記画像形成装置は、
操作部から
前記画像形成装置に行われた操作
で動作した前記画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する操作内容取得部と、
前記操作内容と、前記画像形成装置の装置状態とを紐づけて格納し、前記装置状態には、前記装置状態に合わせて前記画像形成装置になされる対応策が含まれる装置状態テーブルと、
前記操作内容に基づいて、
前記装置状態テーブルを参照して、前記操作内容に紐づけられた前記装置状態を予測する装置状態予測部と、
予測された前記装置状態を表示部に表示可能に出力する表示出力部と、を有し、
前記管理サーバは、
前記操作内容取得部が取得した前記操作内容を履歴として格納する履歴テーブルを有し、
前記装置状態予測部は、前記履歴テーブルを参照して、前記装置状態を予測する
予測システム。
【請求項13】
画像形成装置と、前記画像形成装置がネットワークを介して接続される管理サーバと、を備え、
前記画像形成装置は、
操作部から前記画像形成装置に行われた操作で動作した前記画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する操作内容取得部と、
前記操作内容を入力して前記画像形成装置の装置状態を出力とする機械学習で作成された装置状態学習モデルと、
前記操作内容を履歴として格納する履歴テーブルから前記操作内容の履歴を読み出して、前記操作部を通じてオペレーターが要求する要求印刷状態を判定する要求印刷状態判定部と、
前記装置状態学習モデルを使用して、
前記操作内容及び前記要求印刷状態に基づいて、前記装置状態に合わせて前記画像形成装置になされる対応策が含まれる前記装置状態を予測する装置状態予測部と、
予測された前記装置状態を表示部に表示可能に出力する表示出力部と、を有し、
前記管理サーバは、
前記履歴テーブルを有する
予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測装置、画像形成装置、プログラム及び予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙に画像を形成する画像形成装置に発生した異常を判定し、異常原因の特定をするため、画像形成装置に取り付けたセンサーから取得したデータを解析して画像形成装置の状態を判定する方法が知られている。他にも、画像形成装置から時系列で収集した異常履歴から異常原因を予測する方法が知られている。
【0003】
例えば、画像形成装置に発生した異常の原因を予測するための技術として開示された特許文献1には、「サービスマンが訪問する際、所定の日時以前の一定期間に蓄積手段に蓄積された異常事象または異常前事象情報および付加情報を基に、サービスマン訪問の要否を判断する」と記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、「工作機械においてオペレーターの操作履歴から、サーボ軸の異常負荷検出アラームが発生しそうな状況を予測し、主軸衝突を警告する」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-253199号公報
【文献】特開2018-92428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、装置がエラーメッセージを発生しなくても、オペレーターが、装置から出力される成果物の品質が不十分であれば、装置が好ましくない状態であると判断することがある。しかし、特許文献1に開示された技術では、装置が使用に耐えない異常が発生していなければエラーメッセージ等が出力されないので、オペレーターが成果物を好ましくないと判断しても、装置がどのような状態であるか示されなかった。このため、装置に何らかの性能低下や劣化が発生しても、オペレーターが性能低下や劣化の原因を特定できなかった。
【0007】
また、特許文献2に開示された技術では、オペレーターの行動がどのような結果を招くかを予測するにすぎない。このため、特定の状況において、特定のアラームに該当する状況を予測することができるが、装置がどのような状態であるかを予測できなかった。特許文献1及び2に開示されたいずれの技術においても、画像形成装置では異常と認識されない状態であっても、オペレーターが好ましくない状態と判断した場合には、装置がどのような状態であるかを把握しづらかった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、オペレーターによる画像形成装置に対する操作から画像形成装置の状態を把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した予測装置は、操作部から画像形成装置に行われた操作で動作した画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する操作内容取得部と、操作内容と、画像形成装置の装置状態とを紐づけて格納し、装置状態には、装置状態に合わせて画像形成装置になされる対応策が含まれる装置状態テーブルと、操作内容に基づいて、装置状態テーブルを参照して、操作内容に紐づけられた装置状態を予測する装置状態予測部と、予測された装置状態を表示部に表示可能に出力する表示出力部と、を備える。
また、本発明の一側面を反映した予測装置は、操作部から画像形成装置に行われた操作で動作した画像形成装置の動作結果が含まれる操作内容を取得する操作内容取得部と、操作内容を入力して装置状態を出力とする機械学習で作成された装置状態学習モデルと、操作内容を履歴として格納する履歴テーブルから操作内容の履歴を読み出して、操作部を通じてオペレーターが要求する要求印刷状態を判定する要求印刷状態判定部と、装置状態学習モデルを使用して、操作内容及び要求印刷状態に基づいて、画像形成装置の装置状態に合わせて画像形成装置になされる対応策が含まれる装置状態を予測する装置状態予測部と、予測された装置状態を表示部に表示可能に出力する表示出力部と、を備える。
なお、上記の予測装置は本発明の一態様であり、本発明の一側面を反映した画像形成装置、プログラム及び予測システムについても、上記の予測装置と同様に構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オペレーターの操作内容に基づいて予測された装置状態が表示部に表示される、オペレーターは、画像形成装置の状態を把握しやすくなる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係るヘッドユニットの構成を記録材側から見た示す平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット記録装置のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット記録装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係るインクの吐出不良以外の印字不良が発生した時における履歴テーブルの内容を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係るノズル単位で位置ずれが発生した時における履歴テーブルの内容を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る要求印刷状態テーブルの例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る装置状態テーブルの例を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る装置状態テーブルの変形例を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に係る装置状態テーブルの変形例を示す図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態に係る制御部で行われる装置状態の判定処理の例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第1の実施の形態に係る制御部が操作表示部に対応策を提示する処理の例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る予測システムの構成例を示すブロック図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態に係る機械学習の例を示す図である。
【
図15】本発明の第2の実施の形態に係るインクジェット記録装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図16】本発明の第2の実施の形態に係る要求印刷状態テーブルの例を示す図である。
【
図17】本発明の第2の実施の形態に係る装置状態テーブルの例を示す図である。
【
図18】本発明の第2の実施の形態に係る装置状態テーブルの変形例を示す図である。
【
図19】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る予測システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
始めに、本実施の形態に係わる画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置の構成例を説明する。
図1は、インクジェット記録装置の全体構成を示す概略構成図である。
【0014】
インクジェット記録装置1は、後述する
図2に示すインクジェットヘッド242に設けたノズル244からインクを吐出することで記録材P(記録媒体)に画像を形成(記録)する。本実施の形態では、記録媒体として用紙を適用した例を説明するが、これに限定されるものではなく、記録媒体としては、フィルムや布地等その他各種のものが適用可能である。
【0015】
このインクジェット記録装置1は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のインクを重ね合わせるカラーインクジェット記録装置である。インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40とを有している。そして、インクジェット記録装置1は、端末装置2(
図3参照)から入力された画像データを記録材Pに形成する。
【0016】
給紙部10は、給紙トレー11と、記録材供給部12とを有している。給紙トレー11は、記録材Pを載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレー11は、載置された記録材Pの枚数に応じて上下方向に移動可能に設けられている。そして、給紙トレー11に載置された複数の記録材Pのうち上下方向の最上部の記録材Pは、記録材供給部12により搬送される位置で保持される。
【0017】
記録材供給部12は、複数(本例では、2つ)のローラー121,122と、搬送ベルト123とを有している。搬送ベルト123は、長手方向の両端が接続された無端状に形成されている。搬送ベルト123は、ローラー121,122に張架されている。そして、ローラー121,122のうち一方のローラーが回転駆動することで、搬送ベルト123は、2つのローラー121,122の間を循環移動する。これにより、搬送ベルト123に載置された記録材Pが搬送される。
【0018】
また、記録材供給部12は、ローラー121,122を回転駆動する不図示の駆動部や、給紙トレー11に載置された最上部の記録材Pを搬送ベルト123に受け渡す供給装置(図示略)を有している。そして、記録材供給部12は、搬送ベルト123に載置された記録材Pを画像形成部20に向けて搬送し、画像形成部20に給紙する。
【0019】
画像形成部20は、画像形成ドラム21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、画像読取部26と、記録材排出部27と、記録材反転部28とを有しており、記録材Pに画像を形成する。
【0020】
画像形成ドラム21は、円筒状に形成されている。画像形成ドラム21は、不図示の駆動モータにより反時計回りに回転する。画像形成ドラム21の外周面には、給紙部10から供給された記録材Pが担持される。画像形成ドラム21は、外周面を三等分した3面の保持領域211を有している。保持領域211は、ステンレス鋼(SUS)シート等の表面に樹脂シート等が貼り付けられ、各保持領域211の表面において記録材Pを保持することが可能となっている。そして、画像形成ドラム21は、回転駆動することで記録材Pを排紙部30に向けて搬送する。また、画像形成ドラム21の外周面には、加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25及び画像読取部26が対向して配置されている。
【0021】
受け渡しユニット22は、給紙部10の記録材供給部12と画像形成ドラム21との間に設けられている。受け渡しユニット22は、爪部221と、円筒状の受け渡しドラム222等を有している。爪部221は、記録材供給部12により搬送された記録材Pの一端を担持する。受け渡しドラム222は、爪部221に担持された記録材Pを画像形成ドラム21に向けて誘導する。これにより、記録材Pは、受け渡しユニット22を介して記録材供給部12から画像形成ドラム21の外周面に受け渡される。
【0022】
受け渡しドラム222における記録材Pの搬送方向の下流側には、加熱部23が配置されている。加熱部23は、例えば電熱線等を有し、通電に応じて発熱する。加熱部23は、制御部40による制御により、画像形成ドラム21に担持されて加熱部23の近傍を通過する記録材Pが所定の温度となるように発熱を行う。
【0023】
また、加熱部23の近傍には、不図示の温度センサーが設けられている。温度センサーは、加熱部23付近の温度を検知する。そして、制御部40は、温度センサーが検知した温度情報に基づいて、加熱部23の温度を制御する。
【0024】
加熱部23における記録材Pの搬送方向の下流側には、ヘッドユニット24が設けられている。ヘッドユニット24は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)に応じて4つ設けられている。4つのヘッドユニット24は、記録材Pの搬送方向に対して上流側から、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順に配置されている。
【0025】
ヘッドユニット24は、記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)において記録材Pの全体を覆う長さ(幅)に設定されている。すなわち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。4つのヘッドユニット24は、それぞれ吐出するインクの色が異なるのみで、互いに同一の構成を有している。
【0026】
次に、ヘッドユニット24の構成例を説明する。
図2は、ヘッドユニット24を記録材側から見た状態を示す平面図である。
【0027】
ヘッドユニット24は、複数(本例では、16個)のインクジェットヘッド242を有している。そして、2つのインクジェットヘッド242が1組となって、1つのインクジェットモジュール243を構成している。そのため、本例のヘッドユニット24には、8つのインクジェットモジュール243が設けられている。
【0028】
8つのインクジェットモジュール243は、記録材Pの搬送方向に沿って2列並べられている。そして、一列のインクジェットモジュール243は、記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)に沿って4つ並べて配置されている。また、8つのインクジェットモジュール243は、2列のインクジェットモジュール243が記録材Pの搬送方向に沿って互い違いの千鳥状に配置されている。
【0029】
なお、インクジェットモジュール243の数及び配置は、上述したものに限定されるものではなく、6又は10以上のインクジェットモジュール243を配置してもよい。
【0030】
また、インクジェットヘッド242は、複数のノズル244を有している。そして、インクジェットヘッド242は、ノズル244からインクを記録材Pに向けて吐出する。これにより、画像形成ドラム21に担持された記録材Pに画像が形成される。
【0031】
4つのヘッドユニット24における搬送方向の下流側には、定着部25が配置されている。定着部25としては、例えば、低圧水銀ランプ等の紫外線を照射する蛍光管が適用される。そして、定着部25は、紫外線を画像形成ドラム21により搬送された記録材Pに向けて照射し、記録材P上に吐出されたインクを硬化させる。これにより、定着部25は、記録材Pに形成された画像を定着させる。
【0032】
紫外線を発する蛍光管としては、低圧水銀ランプの他、数百Pa~1MPa程度の動作圧力を有する水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプ、発光ダイオードなどが挙げられる。これらの中で、紫外線をより高照度で照射可能であって消費電力の少ない光源(例えば発光ダイオード等)がより望ましい。
【0033】
なお、定着部25としては紫外線を照射するものに限定されるものではなく、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線を照射するものであればよく、光源もエネルギー線の波長などに応じて置換される。また、定着部25としては、紫外線等の光を照射するものに限定されるものではない。定着部としては、例えば、記録材に熱を与えることでインクを乾燥させたり、インクに化学的な変化を起こさせる液体を付与させたりするもの等その他各種の方法を適用できるものである。
【0034】
また、定着部25における搬送方向の下流側には、画像読取部26が配置されている。画像読取部26は、光源から読取り対象に光を照射し、その反射画像を読取る。画像読取部26は、複数の検出素子が記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)に沿って並べられたインラインセンサで構成されており、ヘッドユニット24及び定着部25により記録材Pに形成された2次元の反射画像や、画像形成ドラム21の表面の反射画像を読み取る。画像読取部26が読み取った画像のデータは、制御部40に送られる。
【0035】
なお、画像読取部26を構成する検出素子の間隔は、インクジェットヘッド242のノズル244の間隔よりも広く設定されている。すなわち、画像読取部26の分解能は、ヘッドユニット24の解像度よりも粗く設定されている。また、画像読取部26は、画像形成ドラム21の幅方向よりも長く形成され、画像形成ドラム21の表面の保持領域211の幅方向の全体を読取ることができるように形成されている。
【0036】
また、画像読取部26の搬送方向の下流側には、記録材排出部27と、記録材反転部28が設けられている。記録材排出部27は、画像形成ドラム21により搬送された記録材Pを排紙部30に向けて搬送する。
【0037】
記録材排出部27は、円筒状の分離ドラム271と、排出ベルト272とを有している。分離ドラム271は、画像形成ドラム21に担持された記録材Pを画像形成ドラム21の外周面から分離させる。そして、分離ドラム271は、記録材Pを排出ベルト272又は記録材反転部28に記録材Pを誘導する。
【0038】
分離ドラム271は、片面画像形成におけるフェースアップ排紙を行う場合に、記録材Pを排出ベルト272に誘導する。また、分離ドラム271は、片面画像形成におけるフェースダウン排紙及び両面画像形成を行う場合に、記録材Pを記録材反転部28に誘導する。
【0039】
排出ベルト272は、記録材供給部12の搬送ベルト123と同様に、無端状に形成されている。排出ベルト272は、複数のローラーにより回転可能に支持されている。排出ベルト272は、分離ドラム271による受け渡された記録材Pを排紙部30に送り出す。
【0040】
記録材反転部28は、複数の反転ローラー281,282と、反転ベルト283とを有している。フェースダウン排紙を行う場合、記録材反転部28は、分離ドラム271により誘導された記録材Pの表裏を反転し、記録材排出部27に搬送する。これにより、記録材Pは、記録材排出部27による画像が形成された面が上下方向の下方を向いた状態で排紙部30に搬送される。
【0041】
また、両面画像形成を行う場合、記録材反転部28は、分離ドラム271により誘導された記録材Pの表裏を反転し、再び画像形成ドラム21の外周面に搬送する。これにより、記録材Pは、画像形成ドラム21により搬送され、再び加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25及び画像読取部26を通過する。
【0042】
排紙部30は、記録材排出部27により画像形成部20から送り出された記録材Pを格納する。排紙部30は、平板状の排紙トレー31を有している。そして、排紙部30は、排紙トレー31上に画像が形成された記録材Pを載置する。
【0043】
[インクジェット記録装置の構成]
次に、インクジェット記録装置1のハードウエア構成例について説明する。
図3は、インクジェット記録装置1のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【0044】
インクジェット記録装置1は、制御部40を備えている。制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)41と、CPU41の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)42と、CPU41が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)43とを有する。さらに、制御部40は、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)等からなる記憶部44を有している。記憶部44には、制御プログラム(例えば、画像処理プログラム)や各種データ等(例えば、機械学習等によって学習処理された学習モデル等)のインクジェット記録装置1を制御するための情報が格納される。このため、ROM43及び記憶部44は、CPU41が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録しており、インクジェット記録装置1を動作させるコンピューターによって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記憶媒体の一例として用いられる。
【0045】
また、インクジェット記録装置1は、画像形成ドラム21、記録材排出部27や記録材反転部28等からなる、記録材Pを搬送する搬送部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53とを有している。
【0046】
制御部40のCPU41は、加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25、画像読取部26、RAM42、ROM43、記憶部44にそれぞれシステムバス54を介して接続され、装置全体を制御する。また、CPU41は、搬送部51、操作表示部52、入出力インターフェース53にそれぞれシステムバス54を介して接続されている。
【0047】
操作表示部52は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部52は、オペレーターに対する指示メニュー、ノズル244の吐出検出動作に関する情報や取得した画像データに関する情報等のインクジェット記録装置1に関する情報を表示する。さらに、操作表示部52は、複数のキーを備え、オペレーターのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付ける入力部としての役割を持っている。これにより、オペレーターが操作表示部52を通じてインクジェット記録装置1に対する操作が行える。なお、操作表示部52を、操作部と表示部に分けて構成してもよい。この場合、オペレーターは、操作部を通じてインクジェット記録装置1を操作し、表示部は、インクジェット記録装置1に関する情報を表示する。
【0048】
入出力インターフェース53は、PC(パーソナルコンピュータ)や、ファクシミリ装置等の端末装置2に接続されている。そして、入出力インターフェース53は、端末装置2から画像データを受信する。入出力インターフェース53は、受信した画像データを制御部40に出力する。そして、制御部40は、入出力インターフェース53から受信した画像データに対し、必要に応じて、シェーディング補正、画像濃度調整、画像圧縮等の画像処理を行う。
【0049】
また、ヘッドユニット24は、制御部40によって画像処理された画像データを受け取り、画像データに基づいて記録材P上に所定の画像を形成する。具体的には、ヘッドユニット24は、ヘッド駆動部241を駆動することで、インクジェットヘッド242からインクを所定の位置に吐出させる。
【0050】
ヘッドユニット24により記録材Pに形成された画像は、画像読取部26によって読み取られ、その画像データが制御部40に送られる。また、ノズル244の吐出不良の判定動作を行う際、制御部40は、画像読取部26から送られた画像データに基づいて吐出不良が生じているノズル244を判別する。そして、制御部40は、例えば、吐出不良が発生したノズル244に隣接するノズル244からのインクの吐出量を増やすことで、ヘッドユニット24の補正処理を行う。
【0051】
[インクジェット記録装置の構成]
次に、インクジェット記録装置1の機能構成例について説明する。
図4は、インクジェット記録装置1の機能構成例を示すブロック図である。
【0052】
インクジェット記録装置1は、オペレーターの要求印刷状態を判定し、インクジェット記録装置1の装置状態を予測する予測装置60を内蔵する。予測装置60は、制御部40及び記憶部44を備える。
図3では、制御部40の内部に記憶部44が含まれる構成で記載したが、
図4では、説明の便宜上、制御部40と記憶部44とを分けて記載する。また、予測装置60は、インクジェット記録装置1に対して着脱可能な構成としてもよい。
【0053】
制御部40は、操作内容取得部61、要求印刷状態判定部62、装置状態予測部63及び表示出力部64を備える。
また、記憶部44は、履歴テーブル71及び装置状態テーブル73を備える。ただし、装置状態テーブル73には、要求印刷状態テーブル72が含まれる。このため、装置状態テーブル73は、操作内容と、装置状態とを紐づけて格納している。
【0054】
操作内容取得部61は、オペレーターが操作表示部52を通じてインクジェット記録装置1に対する操作を行うと、操作表示部52からインクジェット記録装置1に行われた操作の操作内容を取得し、操作内容を履歴テーブル71に書き込む。操作内容には、オペレーターにより行われたインクジェット記録装置1に対する操作及び操作度合いを含む履歴の他、インクジェット記録装置1の印刷状態等の、オペレーターによる操作で動作したインクジェット記録装置1の動作結果も含まれる。
【0055】
操作履歴は、操作内容を時系列で管理した情報である。操作履歴として、例えば、テストチャート印刷、メンテナンス操作、プルーフ印刷、印刷設定の変更等がある。テストチャート印刷には、例えば、不良ノズル検出、ムラ補正、位置調整、ヘッドつなぎ補正、ヘッド電圧調整等が含まれる。また、メンテナンス操作には、例えば、ヘッド(印字部)クリーニング、搬送部クリーニング等が含まれる。また、印刷設定の変更には、例えば、トーンカーブ補正、印字位置調整、表裏位置調整等が含まれる。
【0056】
操作度合いとして、例えば、位置調整した場合の補正量、不良ノズル検出時の不良ノズル数、印刷設定で印字位置を変更した時の変更量等が含まれる。
また、印刷状態として、例えば、印刷物に白スジ/黒スジの有無、濃度ムラの有無、印字の位置ずれの有無、汚れの有無等が含まれる。
【0057】
要求印刷状態判定部62は、操作内容が格納された履歴テーブル71から操作内容の履歴を読み出して、操作表示部52を通じてオペレーターが要求する要求印刷状態を判定する。例えば、同じ操作が所定期間に複数回行われたことが操作履歴により判明した場合に、要求印刷状態判定部62は、要求印刷状態を判定する処理を行う。そこで、要求印刷状態判定部62は、要求印刷状態テーブル72を参照し、履歴テーブル71から取得した操作内容に紐づけられた、オペレーターが要求する印刷状態(「オペレーター要求印刷状態」と呼ぶ)を判定する。要求印刷状態テーブル72は、後述する
図7に示すように、オペレーターの操作内容と、オペレーター要求印刷状態とを紐づけて格納する。
【0058】
装置状態予測部63は、履歴テーブル71に格納された操作内容に基づいて、インクジェット記録装置1の装置状態を予測する。例えば、装置状態予測部63は、所定期間に複数回の同じ操作が行われたことが操作履歴により判明した場合に、インクジェット記録装置1の装置状態を予測する処理を行う。装置状態は、例えば、インクジェット記録装置1のインクジェットヘッド242又はノズル244のゆがみ、吐出不良によるスジ、濃度ムラ等が発生している状態であること等を表す。また、装置状態には、装置状態に合わせてインクジェット記録装置1になされることが推奨される対応策が含まれる。
【0059】
そこで、装置状態予測部63は、装置状態テーブル73を参照して、履歴テーブル71から取得した操作内容に紐づけられた装置状態を予測する。また、装置状態予測部63は、装置状態テーブル73を参照して、履歴テーブル71から取得した操作内容、及び要求印刷状態テーブル72から取得した要求印刷状態に紐づけられた装置状態を予測することもできる。装置状態テーブル73は、後述する
図8に示すように、要求印刷状態テーブル72に記録されるオペレーターの操作内容と、オペレーター要求印刷状態と、装置状態とを紐づけて格納する。
【0060】
なお、画像読取部26は、記録材Pに画像が印字された領域や、記録材Pに印刷されたテストチャートをインラインセンサで読み取って、読取画像を解析する。このため、要求印刷状態判定部62及び装置状態予測部63は、それぞれの処理に際して、画像読取部26が読み取った画像の画素値(センシング値)を用いてもよい。そして、履歴テーブル71には、画像読取部26以外の検出装置が検出したセンシング値が格納されてもよい。例えば、温度計が検出した装置内温度、搬送タイミング、画像形成部20に供給される記録材Pのサイズ及び量等についてもセンシング値として履歴テーブル71に格納されてもよい。
【0061】
表示出力部64は、装置状態予測部63により予測された装置状態を操作表示部52に表示可能に出力する。操作表示部52は、予測された装置状態を表示する。上述したように装置状態には、対応策も含まれるので、操作表示部52は、対応策も表示することができる。
【0062】
オペレーター要求印刷状態が1つであっても、操作履歴により装置状態は異なる場合がある。例えば、印刷物の読取結果からはスジが見えなくても、オペレーターが印刷物を視認したときに全体的にスジが見えることがある。この場合、オペレーターの要求状態は「スジが見えないこと」であるが、スジが見えるような印刷物を作成したインクジェット記録装置1の装置状態は様々である。そこで、操作履歴及びオペレーター要求印刷状態に基づいて予測された装置状態に応じた対応策が操作表示部52に表示される。例えば、対応策としてヘッドクリーニングの実施が提示されると、オペレーターはヘッドクリーニングを実施する。また、ヘッドのつなぎ目にスジが見えていれば、対応策としてヘッドのつなぎ位置調整が提示される。他にも印字速度や解像度を変えたり、単位面積当たりのインクの付着量を変えたり、ディザマスクによる処理を行ったりする方法が対応策として提示される。これらの提示された対応策が実施されることで、インクジェット記録装置1は、オペレーター要求印刷状態に合った印刷物を作成し、オペレーターの満足度を高めることができる。
【0063】
ここで印字不良が発生した時における画像形成装置1の動作及び結果について説明する。
図5は、インクの吐出不良以外の印字不良が発生した時における履歴テーブル71の内容を示す図である。履歴テーブル71には、オペレーターの操作又はインクジェット記録装置1の動作と、その結果をまとめた表が構成される。履歴テーブル71には、一例として、6回分の操作内容の履歴が格納される。
【0064】
例えば、1回目の動作では、インクジェット記録装置1が記録材Pにテストチャートを印字した結果、不良ノズルを検出し、不良ノズルを補完したとする。
図2に示したノズル244の一部にインクが詰まっていたり、気泡が入っていたりする不良ノズルでは、インクの吐出が悪くなる。そこで、不良ノズルが本来インクを吐出するはずの位置に、不良ノズルの周辺にある他のノズル244がインクを吐出することで、印字の欠けを防ぐ処理が行われる。この処理を以下の説明では「不良ノズルの補完」と呼ぶ。なお、
図5に示す1回目の動作では、不良ノズルの数は少ないので、テストチャートを印字するジョブも正常終了したことが示される。
【0065】
2回目の動作では、インクジェット記録装置1が数ページのジョブAを実行して、ジョブAに指定される画像を印字した結果、ジョブAは正常終了したことが示される。しかし、オペレーターが記録材Pに印字された画像の品質に満足していないので、再びテストチャートの印字が実行される。
【0066】
このため、3回目の動作で再びインクジェット記録装置1がテストチャートを印字し、4回目の動作で再びインクジェット記録装置1が数ページのジョブAを実行する操作が行われる。4回目の動作を経ても、オペレーターが記録材Pに印字された画像の品質に満足していないので、3,4回目と同様の5,6回目の動作が繰り返される。このように何度も同じ動作が繰り返されているので、オペレーターは記録材Pに印字された画像の品質を良好と判断していないと想定される。例えば、企業のコーポレートカラーの印刷においては、インクジェット記録装置1自体の処理が正常終了しても、オペレーターが印刷物にわずかな色ムラ、スジの発生を認識すると、オペレーターは、印刷物を品質不良と判断することが多い。この場合、オペレーター要求印刷状態は、印刷物に白スジ/黒スジが発生しない状態である。
【0067】
そこで、要求印刷状態判定部62は、履歴テーブル71及び要求印刷状態テーブル72を参照して、オペレーター要求印刷状態を判定する。そして、装置状態予測部63が装置状態テーブル73を参照して装置状態を予測することで、吐出不良以外の印字不良がある旨の装置状態(例えば、白スジ/黒スジの発生)が得られる。本実施の形態に係る判定は、ルールベース(不良ノズル検出と、あるジョブの組み合わせがN回以上)によるアルゴリズムを用いた判定の処理が用いられる。そして、装置状態予測部63が予測した装置状態は、表示出力部64により操作表示部52に出力され、オペレーターが装置状態を確認することができる。
【0068】
次に、ノズル単位で位置ずれが発生した時の検出結果について説明する。
図6は、ノズル単位で位置ずれが発生した時における履歴テーブル71Aの内容を示す図である。履歴テーブル71Aは、
図5に示した履歴テーブル71とは異なる内容が記録されたテーブルである。履歴テーブル71Aには、一例として、7回分の操作内容の履歴が格納される。
【0069】
例えば、制御部40が1回目の動作で不良ノズルを検出し、不良ノズルの補完を行ったとする。このとき、不良ノズルの数は少なかったので、印字結果も悪くなく、ジョブも正常終了した。履歴テーブル71Aに示すように、2回目~6回目の動作を行った結果、いずれもジョブは正常終了している。しかし、3回目と4回目の動作ではヘッドメンテナンスが行われてからジョブAの印字が行われ、5回目と6回目の動作ではヘッド単位の位置調整が行われてからジョブAの印字が行われている。そして、7回目の動作では、再び不良ノズルが検出され、不良ノズルの補完が行われている。
【0070】
履歴テーブル71Aに示したように、5回目でヘッド単位の位置調整が行われているので、操作履歴から、ノズルの状態が悪いのでなく、インクの着弾に問題があると想定される。この対応策としては、ノズル単位の位置調整、又はヘッド電圧の調整が必要とされる。そこで、オペレーターに対して、調整方法が提示されれば、オペレーターは余計な操作を行わなくても、自身が要求する品質で印字できるように適切な調整を行えるようになる。
【0071】
なお、
図5に示した履歴テーブル71と、
図6に示した履歴テーブル71Aは、不良の内容が異なるため分けて説明したが、履歴テーブル71,71Aの内容は、1つの履歴テーブル71に連続して記録されてもよい。
【0072】
図7は、要求印刷状態テーブル72の例を示す図である。要求印刷状態判定部62は、履歴テーブル71から取得した、直近のN回の操作履歴に基づいて、オペレーター要求印刷状態が何であるかを判定する。ここで、履歴テーブル71に示す不良ノズル検出の項目は、インクジェット記録装置1にて自動的に実行される処理を表す。濃度補正(インライセンサや白板の清掃等)からプルーフ印刷までの項目は、オペレーターが操作表示部52を通じた操作指示をして実行される処理を表す。
【0073】
要求印刷状態テーブル72には、インクジェット記録装置1の動作、及び、オペレーターの操作に応じて、オペレーター要求印刷状態が設定されている。例えば、No.1のレコードに示すように、不良ノズルの検出が2回以上行われ、ヘッドつなぎ補正が1回以上行われた場合、オペレーター要求印刷状態は「スジを減らしたい」である。ヘッドつなぎ補正とは、インクジェットヘッド242同士のつなぎ目に起因する画質劣化を防止するための補正処理である。
【0074】
また、No.3のレコードに示すように、濃度補正が2回以上行われ、プルーフ印刷が2回以上行われた場合、オペレーター要求印刷状態は「濃度ムラを減らしたい」である。また、No.4のレコードに示すように、位置調整が2回以上行われ、ヘッドつなぎ補正が2回以上行われた場合、オペレーター要求印刷状態は「色ずれを減らしたい」である。
【0075】
図8は、装置状態テーブル73の例を示す図である。装置状態予測部63は、履歴テーブル71から取得した、直近のN回の操作履歴に基づいて、インクジェット記録装置1の装置状態を予測する。
【0076】
装置状態テーブル73には、インクジェット記録装置1の動作、オペレーターの操作、オペレーター要求印刷状態に応じた、インクジェット記録装置1の装置状態が設定されている。例えば、No.1のレコードに示すように、不良ノズルの検出が2回以上行われ、ヘッドつなぎ補正が1回以上行われた場合、オペレーター要求印刷状態は「スジを減らしたい」であり、装置状態は「ヘッドつなぎ位置での白スジ/黒スジ発生」である。そこで、表示出力部64は、装置状態予測部63が予測した装置状態を、操作表示部52に表示する。オペレーターは、操作表示部52に装置状態が「ヘッドつなぎ位置での白スジ/黒スジ発生」であることを確認すると、この装置状態に合わせて対応することができる。
【0077】
<装置状態テーブルの変形例>
なお、装置状態テーブル73には様々な形態が想定される。ここで、変形例に係る装置状態テーブル73A~73Bの構成例について説明する。なお、装置状態予測部63は、装置状態テーブル73A~73Bのいずれにおいても、履歴テーブル71から取得した、直近のN回の操作履歴に基づいて、インクジェット記録装置1の装置状態を予測可能である。
【0078】
図9は、装置状態テーブル73Aの構成例を示す図である。装置状態テーブル73Aは、
図5に示した吐出不良以外の印字不良が発生した時における履歴テーブル71に対応して設定される。
【0079】
装置状態テーブル73Aは、
図8に示した装置状態テーブル73に対応策フィールドを備えた構成としている。本実施の形態では、装置状態に対応策も含まれるものとする。
対応策フィールドには、装置状態に合わせた対応策が格納される。
【0080】
No.1のレコードに示すように、不良ノズルの検出が2回以上行われ、ヘッドつなぎ補正が1回以上行われ、プルーフ印刷が2回以上行われた場合に、オペレーター要求印刷状態は「スジを減らしたい」である。そして、装置状態は、「ヘッドつなぎ位置での白スジ/黒スジ発生」であるため、対応策としては、「(1)不良ノズル検出の閾値を高めた検出を促す、(2)ヘッドクリーニングを促す、(3)ヘッド交換を促す」の3つがある。そこで、表示出力部64は、対応策フィールドに格納された3つの対応策のいずれか、又は全てを、オペレーターがインクジェット記録装置1の不良を解消できる対応策として、操作表示部52の画面に表示させる。このように吐出不良以外の印字不良が発生した際の対応策が示されるので、オペレーターは、対応策に基づき適切な対応をとることができる。
【0081】
なお、対応策フィールドに格納される対応策から、例えば、既にオペレーターが実施済みの調整方法やメンテナンスは外してもよい。また、表示出力部64が操作表示部52に同じ対応策を提示する場合には、閾値を高めたり、クリーニングを強くしたりするように、内容を変更して提示してもよい。
【0082】
オペレーターは、操作表示部52を通じて、異常と判定する項目の感度(閾値を含む)を設定変更可能である。つまり、装置状態予測部63が装置状態を予測するときの感度は、操作表示部52に表示された対応策に基づいて、操作表示部52から要求される感度に変更される。例えば、オペレーターは、色ムラやスジの発生が品質異常となりやすいポスター等については感度を下げ、色ムラ等が起きにくい文字だけの印刷物については感度を上げるように設定変更してもよい。また、例えば、
図5に示す履歴テーブル71に格納された操作履歴では、ヘッドのつなぎ位置がずれたり、オペレーターが高い画質を要求していたりする可能性があるので、オペレーターは、検出閾値を高める対応をとってもよい。
【0083】
図10は、装置状態テーブル73Bの構成例を示す図である。装置状態テーブル73Bは、
図6に示したノズル単位で位置ずれが発生した時における履歴テーブル71Aに対応して設定されるテーブルである。装置状態テーブル73Bについても、
図8に示した装置状態テーブル73に対応策フィールドを備えた構成としている。
【0084】
No.1のレコードに示すように、不良ノズルの検出が2回以上行われ、ヘッド単位位置調整が1回以上行われ、ヘッドクリーニングが1回以上行われ、プルーフ印刷が2回以上行われた場合に、オペレーター要求印刷状態は「搬送側の位置ズレを減らしたい」である。そして、装置状態は、「特定のノズル(群)で着弾位置ズレが発生」である。このため、対応策は、「(1)ヘッド電圧調整を促す、(2)ヘッドノズル単位の位置調整を促す、(3)画像読取部の清掃を促す、(4)ヘッド交換を促す」の4つがある。そこで、表示出力部64は、対応策フィールドに格納された4つの対応策のいずれか、又は全てを、オペレーターがインクジェット記録装置1の不良を解消できる対応策をとして、操作表示部52の画面に表示させる。このようにノズル単位で位置ずれが発生した際の対応策が示されるので、オペレーターは、対応策に基づき適切な対応をとることができる。
【0085】
次に、制御部40で行われる装置状態の判定処理について説明する。
図11は、制御部40で行われる装置状態の判定処理の例を示すフローチャートである。
【0086】
始めに、制御部40の操作内容取得部61は、オペレーターによる操作を待つ(S1)。オペレーターが操作表示部52を通じて操作を実施すると(S2)、操作内容取得部61は、操作表示部52から操作内容を取得し、履歴テーブル71に操作内容と、インクジェット記録装置1の動作結果を格納する(S3)。
【0087】
次に、要求印刷状態判定部62は、履歴テーブル71及び要求印刷状態テーブル72を参照して、操作内容及び動作結果がオペレーター要求印刷状態を満たしているか否かを判断する(S4)。要求印刷状態判定部62は、例えば、不良ノズルの検出回数、ヘッドつなぎ補正の回数といった操作内容及び動作結果が、要求印刷状態テーブル72に規定されたオペレーター要求印刷状態に紐づけられる操作内容及び動作結果を満たすか否かを判断する。操作内容及び動作結果がオペレーター要求印刷状態を満たしていなければ(S4のNO)、ステップS1に戻って処理を繰り返す。
【0088】
操作内容及び動作結果がオペレーター要求印刷状態を満たしていれば(S4のYES)、要求印刷状態判定部62は、装置状態予測部63にオペレーター要求印刷状態を出力する。装置状態予測部63は、装置状態テーブル73を参照して、オペレーター要求印刷状態に対応する装置状態を予測し、予測した装置状態をRAM42に格納し(S5)、本処理を終了する。
【0089】
次に、操作表示部52に対応策を提示する処理について説明する。
図12は、制御部40が操作表示部52に対応策を提示する処理の例を示すフローチャートである。
【0090】
始めに、装置状態予測部63は、操作内容及び動作結果と、オペレーター要求印刷状態とに対応して予測した装置状態をRAM42に格納する(S11)。ただし、
図11のステップS5にて既にRAM42に装置状態が格納されていれば、ステップS11の処理はスキップされる。
【0091】
次に、装置状態予測部63は、装置状態テーブル73を参照して、出力結果の好ましくなさをオペレーターが解決可能か否かを判断する(S12)。例えば、装置状態予測部63は、装置状態テーブル73の装置状態フィールドに対応する対応策フィールドを参照して、オペレーターが解決可能な対応策が対応策フィールドに格納され、オペレーターが解決可能か確認する。
【0092】
オペレーターが解決可能であれば(S12のYES)、表示出力部64は、操作表示部52に表示する内容を決定する。そして、表示出力部64は、操作表示部52の画面に決定した内容を表示して(S13)、本処理を終了する。
【0093】
一方、オペレーターが解決不能であれば(S12のNO)、装置状態予測部63は、例えば、サービスセンターにインクジェット記録装置1の不良を直接連絡する。又は、表示出力部64は、操作表示部52に表示する内容を決定する。そして、表示出力部64は、操作表示部52の画面にサービスセンターへの連絡を促すメッセージを表示して(S14)、本処理を終了する。
【0094】
以上説明した第1の実施の形態に係る予測装置60は、インクジェット記録装置1自体が異常と判定しなくても、オペレーターが取った複数回の行動の組み合わせに基づいて、オペレーターにとってインクジェット記録装置1に何らかの性能低下や劣化等の好ましくない状態が発生したことを判定する。この際、制御部40の要求印刷状態判定部62は、オペレーター要求印刷状態を判定し、装置状態予測部63は、装置状態を予測する。ただし、装置状態予測部63は、操作内容から直接、装置状態を予測することもできる。そして、表示出力部64は、装置状態予測部63が予測した装置状態、又は対応策を操作表示部52に表示する。このため、オペレーターは、表示された装置状態に応じてインクジェット記録装置1の現在の状態を知ることができる。また、オペレーターは、表示された対応策に従ってインクジェット記録装置1を操作することで、インクジェット記録装置1を好ましい状態に変更することができる。
【0095】
従来はインクジェット記録装置が異常と判定しなくても、オペレーターが見れば、性能低下や出力の劣化等によりインクジェット記録装置1が好ましくない状態であると判断した場合には、インクジェット記録装置が原因を特定できず、対応策を示すこともできなかった。しかし、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1では、オペレーターが取った行動(メンテナンス、各種調整)を操作履歴として履歴テーブル71に格納する。装置状態予測部63は、履歴テーブル71に格納された異常な事象に対する操作履歴だけでなく、正常な事象に愛する操作履歴からも装置状態を予測することができる。このため、表示出力部64は、装置状態予測部63が予測した装置状態に基づいて、オペレーターに対応策を提示することが可能となる。
【0096】
なお、表示出力部64は、装置状態予測部63が予測した装置状態だけを操作表示部52に表示してもよい。このような表示が行われると、オペレーターが認識している装置状態と、予測装置60で予測された装置状態とが異なっていれば、オペレーターは、自身の判断の誤りに気付きやすくなり、効果的な対応をとることも可能である。
【0097】
また、従来のインクジェット記録装置では、実際の異常が発生してからでなければ部品の点検、交換等を行うことができない。異常が発生した後では、部品の点検、交換等の時間を用紙、装置を使用できない時間が長くなりがちであった。しかし、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1では、実際の異常が発生する前に、オペレーターに装置状態を通知できる。このため、メンテナンスが必要な異常がインクジェット記録装置1に発生する前に、オペレーターは、インクジェット記録装置1の状態を把握しやすくなる。このため、異常が大きくなる前に、オペレーターは、インクジェット記録装置1に対して適切な対応策をとれるので、実際に発生する異常が小さく抑えられ、部品の点検、交換等の時間を削減できる。
【0098】
また、オペレーターが、例えばインクジェット記録装置1に実行させたジョブAの実行結果に満足していない場合に、一旦別のジョブBを実行させ、その後、再びジョブAを実行させることがある。このように異なる複数のジョブが連続して実行された場合であっても、全ての操作履歴が履歴テーブル71に格納されているので、要求印刷状態判定部62及び装置状態予測部63は、実行させたジョブごとに履歴テーブル71から履歴を抽出して、要求印刷状態の判定と、装置状態の予測を行うことができる。
【0099】
[予測システムの構成例]
次に、第1の実施の形態の変形例に係る予測システムについて説明する。上述した第1の実施の形態に係る履歴テーブル71、要求印刷状態テーブル72及び装置状態テーブル73のデータ量は膨大になる。このため、これらのテーブルをインクジェット記録装置1に対して通信ネットワークNを介して接続可能な管理サーバを設けた予測システムとして構成としてもよい。
図13は、予測システム100の構成例を示すブロック図である。
【0100】
予測システム100は、インクジェット記録装置1と、インクジェット記録装置1に対して、LAN(Local Area Network)、インターネット等の通信ネットワークNを介して通信可能に接続される管理サーバ101とを備える。管理サーバ101には、複数のインクジェット記録装置1が接続されるものとする。
【0101】
管理サーバ101は、大量のデータを記録可能なHDD等に構成された記憶部110を備える。記憶部110は、履歴テーブル111及び装置状態テーブル113を備える。ただし、装置状態テーブル113には、要求印刷状態テーブル112が含まれる。履歴テーブル111、要求印刷状態テーブル112及び装置状態テーブル113に記録される各データは、それぞれ
図4に示した履歴テーブル71、要求印刷状態テーブル72及び装置状態テーブル73に記録される各データと同じである。
【0102】
また、変形例に係るインクジェット記録装置1の制御部40の操作内容取得部61、要求印刷状態判定部62、装置状態予測部63及び表示出力部64が、それぞれ履歴テーブル111、要求印刷状態テーブル112及び装置状態テーブル113にアクセスして、必要なデータを書き込み、又は読み出す処理は、
図4~
図12を通じて説明した処理と同様である。
【0103】
このような予測システム100を構成したことで、インクジェット記録装置1は、膨大なデータを自装置内に保存しておく必要がなくなる。また、管理サーバ101は、他のインクジェット記録装置1の制御部40が記憶部110にアクセスした際に、要求印刷状態テーブル112及び装置状態テーブル113を参照可能とする。これにより、他のインクジェット記録装置1の制御部40であっても、管理サーバ101にアクセスすることで、既に設定されたオペレーター要求印刷状態を判定し、装置状態を予測し、対応策を提示することが可能となる。
【0104】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るインクジェット記録装置について説明する。上述した第1の実施の形態に係るインクジェット記録装置の制御部は、予め値が設定されたテーブルを参照して、各種状態を判定したが、第2の実施の形態に係るインクジェット記録装置の制御部は、機械学習により各種状態を判定する。
【0105】
始めに、機械学習の概要について説明する。
図14は、機械学習の例を示す図である。
【0106】
機械学習では、入力層、中間層及び出力層が用いられる。入力層に入力した時系列のデータXtは、中間層に出力される。中間層では、例えば、RNN(Recurrent Neural Network)、GRU(Gated Recurrent Unit)、LSTM(Long Short Term Memory)を用いた学習モデルが作成される。この際、中間層の内部では、データYt-1が繰り返し演算される。そして、中間層から出力されたデータYt-1が出力層に出力される。このデータYt-1が結果として用いられる。
【0107】
図15は、第2の実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aの機能構成例を示すブロック図である。
【0108】
インクジェット記録装置1Aは、オペレーターの要求印刷状態を判定し、装置状態を予測する予測装置60Aを内蔵する。予測装置60Aは、制御部40及び記憶部44を備える。予測装置60Aは、インクジェット記録装置1Aに対して着脱可能な構成としてもよい。
【0109】
制御部40Aは、操作内容取得部61、要求印刷状態判定部62A、装置状態予測部63A及び表示出力部64を備える。
記憶部44Aは、履歴テーブル81、装置状態テーブル83、要求印刷状態学習モデル84及び装置状態学習モデル85を備える。装置状態テーブル83には、要求印刷状態テーブル82が含まれる。
【0110】
第1の実施の形態と同様に、操作内容取得部61は、操作表示部52からオペレーターの操作内容を取得し、操作内容を履歴テーブル81に書き込む。履歴テーブル81に記録される操作内容の履歴は、第1の実施の形態に係る履歴テーブル71(
図4を参照)と同様である。
【0111】
要求印刷状態判定部62Aは、操作内容が格納された履歴テーブル81から操作内容の履歴を読み出して、操作表示部52を通じてオペレーターが要求する要求印刷状態を判定する。例えば、要求印刷状態判定部62Aは、所定期間に複数回の同じ操作が行われたことが操作履歴により判明した場合に、要求印刷状態を判定する処理を行う。要求印刷状態判定部62Aは、操作内容を入力して要求印刷状態を出力とする機械学習で作成した要求印刷状態学習モデル84を、記憶部44Aに書き込む。そして、要求印刷状態判定部62Aは、記憶部44Aから読み出した要求印刷状態学習モデル84を使用して、履歴テーブル81から取得した操作内容に対応する要求印刷状態を判定する。
【0112】
要求印刷状態テーブル82は、要求印刷状態学習モデル84の入力とされる操作内容と、出力とされる要求印刷状態を説明するために構成したテーブルである。要求印刷状態テーブル82は、後述する
図16に示すように、オペレーターの操作履歴と、オペレーター要求印刷状態とを紐づけて表される。
【0113】
装置状態予測部63Aは、履歴テーブル81から取得した操作内容、及び要求印刷状態テーブル82に格納された要求印刷状態に基づいて装置状態を予測する。例えば、装置状態予測部63Aは、同じ操作が所定期間に複数回行われたことが操作履歴により判明した場合に、装置状態を予測する処理を行う。装置状態予測部63Aは、操作内容を入力して装置状態を出力とする機械学習で作成した装置状態学習モデル85を記憶部44Aに書き込む。そして、装置状態予測部63Aは、記憶部44Aから読み出した装置状態学習モデル85を使用して、履歴テーブル81から取得した操作内容に対応する装置状態を予測する。
【0114】
装置状態テーブル83は、装置状態学習モデル85の入力とされる操作内容及び要求印刷状態と、出力とされる装置状態とを説明するために構成したテーブルである。装置状態テーブル83は、後述する
図17に示すように、オペレーターの操作履歴と、オペレーター要求印刷状態と、インクジェット記録装置1の装置状態とを紐づけて表される。
【0115】
表示出力部64は、装置状態の判定結果に基づいて、操作表示部52に表示する表示内容を決定する。決定された表示内容は、操作表示部52に表示される。
【0116】
図16は、要求印刷状態テーブル82の例を示す図である。
【0117】
要求印刷状態判定部62Aは、要求印刷状態学習モデル84を作成するための時系列データとして、オペレーターの操作履歴とオペレーター要求印刷状態とを紐づけた要求印刷状態テーブル82を作成する。オペレーター要求印刷状態は、予め教師データとして設定される。このため、機械学習の際には、オペレーターが何度かインクジェット記録装置1の操作を行った後、例えば、オペレーター要求印刷状態が「スジを減らしたい」であることをオペレーターが設定する必要がある。これらの操作が行われる度に、要求印刷状態判定部62Aは、操作内容を入力層に入力して、機械学習を行い、要求印刷状態学習モデル84を作成する。
【0118】
機械学習が終わると、要求印刷状態判定部62Aは、要求印刷状態学習モデル84を使用し、履歴テーブル81から取得した、直近のN回の操作履歴に基づいて、オペレーター要求印刷状態が何であるかを判定可能である。このとき、要求印刷状態判定部62Aにより、要求印刷状態テーブル82が参照される。
【0119】
要求印刷状態テーブル82には、最大5回分の操作が行われた時刻と、操作履歴と、オペレーター要求印刷状態とが格納されたとして説明する。
No.1のレコードに示すように、1回目の操作が行われた瞬間の時刻を表す時刻0分後に不良ノズル検出が行われ、4分後に2回目の操作として不良ノズル検出が行われる。さらに7分後に3回目の操作としてヘッドつなぎ位置補正が行われ、10分後に4回目の操作としてプルーフ印刷が行われ、12分後に5回目の操作としてプルーフ印刷が行われる。そして、要求印刷状態判定部62Aは、No.1のレコードのオペレーター要求印刷状態が「スジを減らしたい」であることが分かる。
【0120】
また、No.2のレコードに示す操作履歴は、No.1のレコードに示した操作履歴とは異なっている。しかし、要求印刷状態判定部62Aは、要求印刷状態学習モデル84を作成することで、No.1のレコードと同様に、No.2のレコードのオペレーター要求印刷状態が「スジを減らしたい」であることが分かる。
【0121】
その後、同様の操作履歴が履歴テーブル81に記録されると、要求印刷状態判定部62Aは、オペレーターの操作履歴と、オペレーター要求印刷状態とを組み合わせたデータを用いて、機械学習で作成した要求印刷状態学習モデル84を使って、オペレーター要求印刷状態を判定することが可能となる。
【0122】
図17は、装置状態テーブル83の例を示す図である。
【0123】
装置状態予測部63Aは、装置状態学習モデル85を作成するための時系列データとして、オペレーターの操作履歴と、オペレーター要求印刷状態と、装置状態とを紐づけた装置状態テーブル83を作成する。装置状態予測部63Aが機械学習する際には、オペレーターが何度かインクジェット記録装置1の操作を行って、オペレーター要求印刷状態が「スジを減らしたい」であった時に、例えば、装置状態が「ヘッドつなぎ位置での白スジ/黒スジ発生」であることをオペレーターが設定する必要がある。これらの操作が行われる度に、装置状態予測部63Aは、操作内容及びオペレーター要求印刷状態を入力層に入力して、機械学習を行い、装置状態学習モデル85を作成する。
【0124】
機械学習が終わると、装置状態予測部63Aは、装置状態学習モデル85を使用し、履歴テーブル81から取得した、直近のN回の操作履歴に基づいて、インクジェット記録装置1Aの装置状態が何であるかを予測する。このとき、装置状態予測部63Aにより、要求印刷状態テーブル82及び装置状態テーブル83が参照される。
【0125】
装置状態テーブル83には、最大4回分の操作が行われた時刻と、操作履歴と、オペレーター要求印刷状態と、装置状態とが格納されたとして説明する。
No.1のレコードに示す1~4回目の時刻及び操作履歴と、オペレーター要求印刷状態とは、
図16の要求印刷状態テーブル82に示した1~4回目の時刻及び操作履歴と、オペレーター要求印刷状態と同様である。そして、装置状態予測部63Aは、No.1のレコードの装置状態が「ヘッドつなぎ位置での白スジ/黒スジ発生」であることが分かる。
【0126】
また、No.2のレコードに示す操作履歴は、No.1のレコードに示した操作履歴とは異なる。しかし、装置状態予測部63Aは、装置状態学習モデル85を作成することで、No.1のレコードと同様に、No.2のレコードの装置状態が「ヘッドつなぎ位置での白スジ/黒スジ発生」であることが分かる。
【0127】
その後、同様の操作履歴が履歴テーブル81に記録されると、装置状態予測部63Aは、オペレーターの操作履歴と、オペレーター要求印刷状態と、装置状態とを組み合わせたデータを用い、機械学習で作成した装置状態学習モデル85を使って、装置状態を予測することが可能となる。
【0128】
そこで、表示出力部64は、装置状態予測部63Aが予測した装置状態を、操作表示部52に表示する。オペレーターは、操作表示部52に装置状態が「ヘッドつなぎ位置での白スジ/黒スジ発生」であることを確認すると、この装置状態に合わせて対応することができる。
【0129】
<装置状態テーブルの変形例>
なお、装置状態テーブル83には様々な形態が想定される。ここで、変形例に係る装置状態テーブル83Aの構成例について説明する。なお、制御部40が装置状態を予測する際には、オペレーターの操作履歴と、オペレーター要求印刷状態に加えて、インクジェット記録装置1のパラメーターを用いて装置状態を予測することもできる。
図18は、装置状態テーブル83Aの構成例を示す図である。
【0130】
装置状態テーブル83Aは、
図8に示した装置状態テーブル73にヘッド温度フィールドを備えた構成としている。
ヘッド温度フィールドには、例えば、標準、標準+5℃以上、標準-5℃以下の3つのヘッド温度が格納される。ヘッド温度は、インクジェット記録装置1Aが備える各部の状態量を表す装置パラメーターの一例である。装置パラメーターとしては、他にも、前回不良ノズル検出時の欠数、ヘッドの温度・圧力、脱気モジュールの圧力等がある。脱気モジュールとは、
図2に示したインクジェットヘッド242のノズル244に入る空気を脱気する装置である。
【0131】
No.1のレコードに示すように、不良ノズルの検出が2回以上行われ、ヘッドクリーニングが2回以上行われた場合に、オペレーター要求印刷状態は「スジを減らしたい」である。ここで、ヘッド温度が標準であれば、装置状態は、「ノズル曲がりによるスジ発生」である。No.2及びNo.3のレコードでは、いずれも不良ノズルの検出回数、ヘッドクリーニングの回数、及びオペレーター要求印刷状態がNo.1のレコードと同じである。しかし、No.2のレコードでは、ヘッド温度が標準+5℃以上であり、装置状態は、「ノズル曲がりによるスジ発生」である。一方、No.3のレコードでは、ヘッド温度が標準-5℃以下である場合、装置状態は、「吐出温度低下によるスジ発生」である。このようにヘッド温度により装置状態が変わるため、対応策についても異なることがある。このため、表示出力部64が、操作表示部52に装置状態を表示することで、オペレーターに装置状態を把握させ、適切な対応をとらせることができる。
【0132】
以上説明した第2の実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aでは、要求印刷状態判定部62Aが要求印刷状態学習モデル84を使用して操作履歴から要求印刷状態を判定する。また、装置状態予測部63Aが装置状態学習モデル85を使用して、操作履歴、要求印刷状態から装置状態を予測する。要求印刷状態学習モデル84及び装置状態学習モデル85は、機械学習により作成される。このため、オペレーターが、予め、要求印刷状態テーブル82及び装置状態テーブル83の内容を定義しなくても、ほぼ自動的に各テーブルの内容が記録される。そして、オペレーターがインクジェット記録装置1Aを好ましくない状態であると認識していた場合に、制御部40Aがオペレーター要求印刷状態及び装置状態を予測することができる。
【0133】
なお、第1の実施の形態と同様に、装置状態テーブル83には、操作履歴及び要求印刷状態により判定される装置状態に応じた対応策が格納されてもよい。このため、表示出力部64は、操作表示部52に対応策を表示することができ、オペレーターは対応策を確認し、適切な対応をとることができる。
【0134】
[予測システムの構成例]
次に、第2の実施の形態の変形例に係る予測システムについて説明する。上述した第2の実施の形態に係る履歴テーブル81、要求印刷状態テーブル82及び装置状態テーブル83のデータ量は膨大になる。このため、これらのテーブルをインクジェット記録装置1Aに対して通信ネットワークNを介して接続可能な管理サーバに設ける構成としてもよい。
図19は、予測システム100Aの構成例を示すブロック図である。
【0135】
予測システム100Aは、インクジェット記録装置1Aと、インクジェット記録装置1Aに対して、LAN、インターネット等の通信ネットワークNを介して通信可能に接続される管理サーバ101Aとを備える。管理サーバ101Aには、複数のインクジェット記録装置1Aが接続されるものとする。
【0136】
管理サーバ101Aは、大量のデータを記録可能なHDD等に構成された記憶部130を備える。記憶部130は、履歴テーブル131、装置状態テーブル133、要求印刷状態学習モデル134及び装置状態学習モデル135を備える。装置状態テーブル133には、要求印刷状態テーブル132が含まれる構成としている。履歴テーブル131、要求印刷状態テーブル132及び装置状態テーブル133に記録される各データは、それぞれ
図15に示した履歴テーブル81、要求印刷状態テーブル82及び装置状態テーブル83に記録される各データと同じである。
【0137】
また、変形例に係るインクジェット記録装置1Aの制御部40Aの操作内容取得部61、要求印刷状態判定部62A、装置状態予測部63A及び表示出力部64が、それぞれ履歴テーブル131、要求印刷状態テーブル132及び装置状態テーブル133にアクセスして、必要なデータを書き込み、又は読み出す処理は、
図15~
図18を通じて説明した処理と同様である。また、要求印刷状態判定部62Aが要求印刷状態学習モデル134を使用して機械学習する処理、装置状態予測部63Aが装置状態学習モデル135を使用して機械学習する処理は、いずれも
図15の要求印刷状態判定部62A及び装置状態予測部63Aの処理と同様である。
【0138】
このような予測システム100Aを構成したことで、インクジェット記録装置1Aは、膨大なデータを自装置内に保存しておく必要がなくなる。また、管理サーバ101Aは、他のインクジェット記録装置1Aの制御部40Aが記憶部130にアクセスした際に、要求印刷状態テーブル132及び装置状態テーブル133を参照可能とする。このため、他のインクジェット記録装置1Aの制御部40Aであっても、管理サーバ101Aにアクセスすることで、既に設定されたオペレーター要求印刷状態を判定し、装置状態を予測し、対応策を提示することが可能となる。
【0139】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態では、画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置1,1Aを挙げたが、記録材にトナーを付着して画像を形成する電子写真方式の画像形成装置やオフセット印刷機等に本発明を適用してもよい。
【0140】
また、予測装置60,60Aは、装置状態予測部63,63Aが予測した装置状態を、外部のサポートセンター等に送信してもよい。そして、サポートセンターのメンテナンス員は、インクジェット記録装置1,1Aの装置状態を把握し、実際にインクジェット記録装置1,1Aに異常が発生する前に、メンテナンス、部品交換等を行うことができる。
【0141】
また、本発明は上述した各実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した各実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1…インクジェット記録装置、20…画像形成部、26…画像読取部、40…制御部、44…記憶部、52…操作表示部、60…予測装置、61…操作内容取得部、62…要求印刷状態判定部、63…装置状態予測部、64…表示出力部、70…記憶部、71…履歴テーブル、72…要求印刷状態テーブル、73…装置状態テーブル、84…要求印刷状態学習モデル、85…装置状態学習モデル