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  • 特許-空気調和装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240220BHJP
   F25B 43/02 20060101ALI20240220BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240220BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20240220BHJP
   F24F 140/10 20180101ALN20240220BHJP
【FI】
F25B1/00 387B
F25B43/02 A
F25B49/02 510C
F25B49/02 510F
F25B49/02 510H
F24F11/49
F24F140:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047548
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148348
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】青木 光哉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博俊
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将弘
(72)【発明者】
【氏名】島野 太貴
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 達郎
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020661(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157282(WO,A1)
【文献】特開平10-132406(JP,A)
【文献】特開2019-128061(JP,A)
【文献】特開2013-139902(JP,A)
【文献】特開2016-161163(JP,A)
【文献】特開平05-093553(JP,A)
【文献】特開2015-038407(JP,A)
【文献】特開2018-013307(JP,A)
【文献】特開平08-005167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と四方弁、及び、室外熱交換器を備えた室外機と、室内熱交換器を備えた複数の室内機とが冷媒配管で接続された冷媒回路と、前記室外機や複数の前記室内機を制御する制御手段と、を備えた空気調和装置において、
前記圧縮機の吐出側に接続して吐出冷媒を冷凍機油と冷媒に分離するオイルセパレータと、
前記オイルセパレータと前記圧縮機の吸入側とを接続して前記オイルセパレータで分離された冷凍機油を圧縮機の吸入側へ戻す油戻し管と、
前記オイルセパレータをバイパスして前記圧縮機の吐出側と前記四方弁とを接続するバイパス路と、
前記圧縮機からの吐出冷媒の流れを前記バイパス路側、または、前記オイルセパレータ側のいずれかに切換える切換手段と、を備え、
前記制御手段は、前記切換手段を前記バイパス路側に切換えて、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記バイパス路に流す通常運転と、前記通常運転中に所定条件が成立した場合に、前記切換手段を前記オイルセパレータ側に切換えて、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記オイルセパレータに流す油戻し運転と、の切換えを行い、前記油戻し運転を、前記オイルセパレータに前記冷媒が流れても前記圧縮機の潤滑に十分な量の前記冷凍機油が前記圧縮機に戻ることができ、前記冷媒が不足なく前記冷媒回路を流れることが可能な程度に前記通常運転と前記油戻し運転の切換えを行う制御の態様に応じて設定される短い時間行うことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定条件として、一定時間ごとに前記油戻し運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記圧縮機は前記圧縮機内の冷凍機油量を検知する油量検知センサを備えており、
前記制御手段は、前記所定条件として、前記油量検知センサの検知に基づき、前記圧縮機内の冷凍機油量が不足していると判断した場合に前記油戻し運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記冷媒回路は、吐出圧力センサ及び吐出温度センサを備えており、
前記制御手段は、前記所定条件として、前記吐出圧力センサ及び前記吐出温度センサでの各検出値を用いて吐出過熱度を算出し、算出された前記吐出過熱度が所定値未満であれば前記油戻し運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項5】
圧縮機と四方弁、及び、室外熱交換器を備えた室外機と、室内熱交換器を備えた複数の室内機とが冷媒配管で接続された冷媒回路と、前記室外機や複数の前記室内機を制御する制御手段と、を備えた空気調和装置において、
前記圧縮機の吐出側に接続して吐出冷媒を冷凍機油と冷媒に分離するオイルセパレータと、
前記オイルセパレータと前記圧縮機の吸入側とを接続して前記オイルセパレータで分離された冷凍機油を圧縮機の吸入側へ戻す油戻し管と、
前記オイルセパレータをバイパスして前記圧縮機の吐出側と前記四方弁とを接続するバイパス路と、
前記圧縮機からの吐出冷媒の流れを前記バイパス路側、または、前記オイルセパレータ側のいずれかに切換える切換手段と、を備え、
前記冷媒回路には、全ての前記各室内機で定格能力を発揮するために必要な冷媒量である最大充填量より少ない冷媒量である規制充填量が充填されており、
前記制御手段は、前記切換手段を前記バイパス路側に切換えて、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記バイパス路に流す通常運転と、前記通常運転中に所定条件が成立した場合に、前記切換手段を前記オイルセパレータ側に切換えて、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記オイルセパレータに流す油戻し運転と、の切換えを行い、
前記所定条件として、前記最大充填量と前記規制充填量との差分に応じて前記室内機の運転の停止と、当該停止する停止室内機を所定のタイミングで変更するローテーション制御を実行し、
前記停止する停止室内機を所定のタイミングで変更する際に、前記油戻し運転を行う、ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項6】
前記切換手段は、前記バイパス路に配置される第1開閉弁と、前記オイルセパレータと前記圧縮機の間に配置される第2開閉弁とを有し、
前記制御手段は、前記通常運転の場合は前記第1開閉弁を開くと共に前記第2開閉弁を閉じ、前記油戻し運転の場合は、前記第1開閉弁を閉じると共に前記第2開閉弁を開くことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機と室外熱交換器とオイルセパレータを備えた室外機と、室内熱交換器を備えた複数台の室内機と、を有する空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置として、例えば、特許文献1では、圧縮機と室外熱交換器とを備えた室外機と、室内熱交換器を備えた複数の室内機とが冷媒配管で接続された冷媒回路と、各室内機が設置される空調空間の冷房運転あるいは暖房運転の制御を行う制御手段と、を備えた空気調和装置であって、圧縮機の吐出側に接続して吐出冷媒を冷凍機油と冷媒に分離するオイルセパレータと、オイルセパレータと圧縮機の吸入側とに接続してオイルセパレータで分離された冷凍機油を圧縮機の吸入側へ戻す油戻し管を設けた空気調和装置が知られている。オイルセパレータを設けることによって、圧縮機から冷媒と共に吐出される冷凍機油が冷媒回路側に流れて室内熱交換器に流入し滞留してしまうことによる圧縮機の冷凍機油不足を防止することができる。
【0003】
また、特許文献2では、室外機と複数台の室内機が冷媒配管で接続された冷媒回路を有し、冷媒回路を冷媒が循環して前記各室内機が設置される空調空間の冷房運転あるいは暖房運転を行う空気調和装置であって、冷媒回路の冷媒充填量が、ISO等の規制によって、全ての室内機で同各室内機の定格能力を発揮できる冷媒充填量である最大充填量より少ない規制充填量となっている場合に、規制充填量で賄える台数の室内機のみ運転させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-230233号公報
【文献】特開2018-13307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、特許文献1に示された空気調和装置は、圧縮機から吐出する吐出冷媒と共に冷凍機油が冷媒回路側に流れて、冷凍機油が室内熱交換器に滞留してしまうことによる圧縮機の冷凍機油不足を防止することはできるが、一方で、圧縮機から吐出された冷媒は常にオイルセパレータを通過するため、冷媒の一部が冷凍機油と共に圧縮機へ戻されてしまい、冷媒回路で必要な冷媒循環量が不足する場合があった。
【0006】
また、特許文献2に示された空気調和装置では、冷媒の最大充填量時に冷媒回路に充填される冷凍機油量と比べて、冷媒の規制充填量時に冷媒回路に充填される冷凍機油量が少なくされる。これは、以下の理由による。
まず、冷媒回路に充填される冷凍機油量は、圧縮機の潤滑を損なわない範囲でできる限り少ないことが望ましい。冷媒回路に充填される冷凍機油量が多いと圧縮機から冷媒とともに冷媒回路に吐出される冷凍機油の量も多くなり、熱交換器において冷媒流路の内壁に存在する冷凍機油が多くなれば、冷媒と空気の間の熱交換を阻害するからである。
【0007】
次に、圧縮機から吐出された冷凍機油が冷媒回路を循環して再び圧縮機に吸入されるまでの時間は、圧縮機の回転数や排除容積などで決まる冷媒回路における単位時間当たりの冷媒循環量が同じであれば、冷媒回路に充填される冷媒量を単位時間当たりの冷媒循環量で除して求めることができる。そして、冷媒回路に充填される冷媒量が少ないほど、圧縮機から吐出された冷凍機油が再び圧縮機に吸入されるまでの時間が短くなる。圧縮機から吐出された冷凍機油が再び圧縮機に吸入されるまでの時間が短くなるほど、冷媒回路に流出した冷凍機油が早く圧縮機に戻されるため、圧縮機での冷凍機油不足による潤滑不良が起こりにくくなる。
【0008】
以上に記載した理由から、特許文献2に示された空気調和装置では、規制充填量時に冷媒回路に充填される冷凍機油量が少なくされる。ただし、冷媒回路に充填される冷凍機油量が少なくされると、停止している室内機が存在し当該室内機に滞留する冷凍機油が冷媒回路に流出しない場合に、圧縮機で冷凍機油が不足する場合がある。このような場合に、圧縮機から吐出された冷凍機油をオイルセパレータで回収して圧縮機に戻すことが有効であったが、当該空気調和装置にオイルセパレータを設けると、圧縮機から吐出された冷媒の一部が冷凍機油と共にオイルセパレータを介して圧縮機に戻されるため、冷媒充填量が最大充填量である場合と比べて、冷媒回路で必要な冷媒循環量が不足する可能性が大きくなる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、圧縮機と四方弁、及び、室外熱交換器とを備えた室外機と、室内熱交換器を備えた複数の室内機とが冷媒配管で接続された冷媒回路と、前記室外機や複数の前記室内機を制御する制御手段と、を備えた空気調和装置において、冷媒回路で必要な冷媒循環量の不足と圧縮機で必要な冷凍機油の不足をともに解消できる空気調和装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、圧縮機と四方弁、及び、室外熱交換器を備えた室外機と、室内熱交換器を備えた複数の室内機とが冷媒配管で接続された冷媒回路と、前記室外機や複数の前記室内機を制御する制御手段と、を備えた空気調和装置において、前記圧縮機の吐出側に接続して吐出冷媒を冷凍機油と冷媒に分離するオイルセパレータと、前記オイルセパレータと前記圧縮機の吸入側とを接続して前記オイルセパレータで分離された冷凍機油を圧縮機の吸入側へ戻す油戻し管と、前記オイルセパレータをバイパスして前記圧縮機の吐出側と前記四方弁とを接続するバイパス路と、前記圧縮機からの吐出冷媒の流れを前記バイパス路側、または、前記オイルセパレータ側のいずれかに切換える切換手段と、を備え、前記制御手段は、前記切換手段を前記バイパス路側に切換えて、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記バイパス路に流す通常運転と、前記通常運転中に所定条件が成立した場合に、前記切換手段を前記オイルセパレータ側に切換えて、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記オイルセパレータに流す油戻し運転と、の切換えを行い、前記油戻し運転を、前記オイルセパレータに前記冷媒が流れても前記圧縮機の潤滑に十分な量の前記冷凍機油が前記圧縮機に戻ることができ、前記冷媒が不足なく前記冷媒回路を流れることが可能な程度に前記通常運転と前記油戻し運転の切換えを行う制御の態様に応じて設定される短い時間行うことを特徴とする空気調和装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷媒回路で必要な冷媒循環量の不足と圧縮機で必要な冷凍機油の不足をともに解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】室内調和装置の冷凍回路図である。
図2】室内調和装置の切換手段を制御する制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、10台の室内機が室外機に並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例
【0014】
図1に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2と、室外機2に液管8およびガス管9で並列に接続された10台の室内機5-1~5-10(図1では、これらのうちの2台の室内機5-1と5-10のみを描画している)とを備えている。より詳細には、室外機2の閉鎖弁25と各室内機5の液管接続部53とが液管8で接続されている。また、室外機2の閉鎖弁26と各室内機5のガス管接続部54とがガス管9で接続されている。このように、室外機2と10台の室内機5とが液管8およびガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が形成されている。また、空気調和装置1は、室内機5-1~5-10が設置される空調空間の冷房運転あるいは暖房運転の制御を行う制御手段としての制御装置80を備えている。
【0015】
<室外機の構成>
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機20と、オイルセパレータ21と、逆止弁49、流路切換弁である四方弁22と、室外熱交換器23と、室外機膨張弁24と、液管8が接続された閉鎖弁25と、ガス管9が接続された閉鎖弁26と、アキュムレータ27と、室外機ファン28とを備えている。そして、室外機ファン28を除くこれら各装置が、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を形成している。
【0016】
圧縮機20は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機であり、圧縮機20の内部には圧縮機内部に貯留する冷凍機油の量を検知する油量検知センサとしての油面センサ30が設けられている。油面センサ30は、圧縮機20内部に貯留する冷凍機油に浸されるように配置されており、貯留する冷凍機油面の位置に対応する信号を出力する。圧縮機20の冷媒吐出側は、後述するオイルセパレータ21と吐出管40で接続されており、吐出管40における圧縮機20とオイルセパレータ21の間には、吐出管40における冷媒の流れを遮断可能な第一開閉弁38が設けられている。また、圧縮機20の冷媒吸入側は、アキュムレータ27の冷媒流出側と吸入管42で接続されている。
【0017】
オイルセパレータ21は、円筒形状の密閉容器を有する遠心分離式のオイルセパレータである。オイルセパレータ21の密閉容器の上面部と後述する四方弁22のポートaとが、流出管41で接続されている。また、オイルセパレータ21の密閉容器の下面部には、後述する油戻し管47の一端が接続されている。なお、油戻し管47の他端は吸入管42に接続されており、油戻し管47にはキャピラリーチューブ29が設けられている。
【0018】
圧縮機20の冷媒吐出側と四方弁22のポートaと間には、第1開閉弁38とオイルセパレータ21をバイパスして圧縮機20から吐出する冷媒を四方弁22に導くバイパス路48が設けられている。バイパス路48は、一端が吐出管40に接続され他端が流出管41に接続されている。バイパス路48にはバイパス路48における冷媒の流れを遮断可能な第2開閉弁39が設けられている。ここで、第1開閉弁38と第2開閉弁39とが本発明における切換手段37であって、これら第1開閉弁38と第2開閉弁39とが適宜開閉されることで、圧縮機20から吐出する冷媒をバイパス路48側、または、オイルセパレータ21側に切換える切換手段として機能する。尚、切換手段37として第1開閉弁38と第2開閉弁39を用いる代わりに、吐出管40とバイパス路48の接続部に三方弁を設け、この三方弁の操作により圧縮機20から吐出する冷媒をバイパス路48側、または、オイルセパレータ21側に切り換えるようにしてもよい。
【0019】
オイルセパレータ21の密閉容器の側面部の上部には、吐出管40が接続されている。このように、オイルセパレータ21の密閉容器に吐出管40、流出管41、および、油戻し管47がそれぞれ接続されることで、圧縮機20から吐出され吐出管40を介して密閉容器の内部に流入した冷凍機油を含む冷媒は、密閉容器の内部で冷媒と冷凍機油とに分離され、分離された冷凍機油は油戻し管47を介して圧縮機20に戻り、分離された冷媒は流出管41へと流出する。なお、油戻し管47へは、冷凍機油とともに冷媒も流入するが、油戻し管47に設けられたキャピラリーチューブ29により圧縮機20に流れる冷媒量が規制される。また、流出管41とバイパス路48の接続部と、オイルセパレータ21との間の流出管41には逆止弁49が設けられており、オイルセパレータ21から流出管41への冷媒の流れは許容されるが、流出管41からオイルセパレータ21への冷媒の流れは阻止される。
【0020】
四方弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したようにオイルセパレータ21の密閉容器と吐出管40で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ27の冷媒流入側と冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26と室外機ス管45で接続されている。
【0021】
室外熱交換器23は、冷媒と、後述する室外機ファン28の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。上述したように、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と四方弁22のポートbが冷媒配管43で接続されている。また、室外熱交換器23の他方の冷媒出入口と閉鎖弁25が室外機液管44で接続されている。室外熱交換器23は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は凝縮器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は蒸発器として機能する。
【0022】
室外機膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外機膨張弁24は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整されることで、室外熱交換器23に流入する冷媒量、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒量が調整される。室外機膨張弁24の開度は、空気調和装置1が暖房運転を行っている場合は、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度が、室内機5-1~5-5の各々で要求される暖房能力に基づいて決定される目標温度となるように、その開度が調整される。また、室外機膨張弁24の開度は、冷房運転を行っている場合は全開とされる。
【0023】
アキュムレータ27は、前述したように、冷媒流入側が四方弁22のポートcと冷媒配管46で接続されるとともに、冷媒流出側が圧縮機20の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。アキュムレータ27は、冷媒配管46からアキュムレータ28の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離してガス冷媒のみを圧縮機20に吸入させる。
室外機ファン28は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外機ファン28は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0024】
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1に示すように、吐出管40には、圧縮機20から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、圧縮機20から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口近傍には、圧縮機20に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ32と、圧縮機20に吸入される冷媒の温度を検出する吸込温度センサ34とが設けられている。
【0025】
室外機液管44における室外熱交換器23と室外機膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が備えられている。
【0026】
図2は、室内調和装置1の切換手段37を制御する制御装置80の制御ブロック図である。前述したように、制御装置80は、室内機5-1~5-10が設置される空調空間の冷房運転あるいは暖房運転の制御を行う制御手段であり、吐出圧力センサ31、吐出温度センサ33、油面センサ30、切換手段37としての第1開閉弁38及び第2開閉弁39、タイマ81、記憶部82が接続されている。
【0027】
<各室内機の構成>
次に、10台の室内機5-1~5-10について説明する。10台の室内機5-1~5-10は全て同じ構成を有しており、室内熱交換器51と、冷媒流量調整手段としての室内機膨張弁52と、液管接続部53と、ガス管接続部54と、室内機ファン55とを備えている。そして、室内機ファン55を除くこれら各構成装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
【0028】
室内熱交換器51は、冷媒と、後述する室内機ファン55の回転により図示しない吸込口から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管接続部53とが室内機液管71で接続され、他方の冷媒出入口とガス管接続部54とが室内機ガス管72で接続されている。室内熱交換器51は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部53やガス管接続部54は、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0029】
室内機膨張弁52は、室内機液管71に設けられている。室内機膨張弁52は電子膨張弁であり、室内熱交換器51が蒸発器として機能する場合すなわち室内機5が冷房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(ガス管接続部54側)での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように調整される。また、室内機膨張弁52は、室内熱交換器51が凝縮器として機能する場合すなわち室内機5が暖房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(液管接続部53側)での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように調整される。ここで、目標冷媒過熱度や目標冷媒過冷却度とは、室内機5-1~5-10の各々で十分な冷房能力あるいは暖房能力を発揮するのに必要な冷媒過熱度および冷媒過冷却度である。
【0030】
室内機ファン55は樹脂材で形成されており、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内機ファン55は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ放出する。
【0031】
以上説明した構成の他に、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内機液管71における室内熱交換器51と室内機膨張弁52との間には、室内熱交換器51に流入あるいは室内熱交換器51から流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ61が設けられている。室内機ガス管72には、室内熱交換器51から流出あるいは室内熱交換器51に流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62が設けられている。室内機5の図示しない吸込口付近には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度を検出する室内温度センサ63が備えられている。
【0032】
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1を用いて説明する。尚、以下の説明ではまず、空気調和装置1が暖房運転を行う場合について説明し、次に、空気調和装置1が冷房運転を行う場合について説明する。尚、図1における実線矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。また、図1における破線矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示している。
【0033】
<暖房運転>
図1に示すように、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は、四方弁22が実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するように、また、ポートbとポートcとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が凝縮器として機能するとともに、室外熱交換器23が蒸発器として機能する暖房サイクルとなる。
【0034】
冷媒回路10が暖房サイクルとして機能する状態で圧縮機20が駆動すると、圧縮機20から吐出された冷媒は、吐出管40を流れてオイルセパレータ21へと流入し、オイルセパレータ21から流出管41へと流れて四方弁22に流入する。そして、四方弁22から流出した冷媒は、室外機ガス管45を流れて、閉鎖弁26を介してガス管9へと流入する。なお、オイルセパレータ21では、冷媒とともに圧縮機20から吐出された冷凍機油が冷媒から分離され、分離された冷凍機油は、図1に一点鎖線矢印で示すようにオイルセパレータ21から流出して油戻し管47を流れ、吸入管42を介して圧縮機20へと戻される。
【0035】
ガス管9を流れる冷媒は、各ガス管接続部54を介して室内機5-1~5-5に分流する。室内機5-1~5-5に流入した冷媒は、各室内機ガス管72を流れて各室内熱交換器51に流入する。各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により各室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。
このように、各室内熱交換器51が凝縮器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-10が設置された室内の暖房が行われる。
【0036】
各室内熱交換器51から各室内機液管71に流入した冷媒は、各室内熱交換器51の冷媒出口側での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過冷却度は、室内機5-1~5-10の各々で要求される暖房能力に基づいて定められるものである。また、暖房能力は、各室内機5-1~5-10において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。
【0037】
各室内機膨張弁52で減圧された冷媒は、各室内機液管71から各液管接続部53を介して液管8に流出する。液管8で合流し閉鎖弁25を介して室外機2に流入した冷媒は室外機液管44を流れ、圧縮機20の吐出温度が目標温度となるように開度が調整された室外機膨張弁24を通過する際にさらに減圧される。
室外機膨張弁24で減圧された冷媒は、室外機液管44を流れて室外熱交換器23に流入し、最大回転数とされている室外機ファン28の回転によって室外機5の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管43へと流入した冷媒は、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ27、吸入管42の順に流れ、圧縮機20に吸入されて再び圧縮される。
【0038】
<冷房運転>
空気調和装置1が冷房運転を行う場合は、図1に示すように、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するように、また、ポートcとポートdとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が蒸発器として機能するとともに、室外熱交換器23が凝縮器として機能する冷房サイクルとなる。
【0039】
冷媒回路10が冷房サイクルとして機能する状態で圧縮機20が駆動すると、圧縮機20から吐出された冷媒は、吐出管40を流れてオイルセパレータ21へと流入し、オイルセパレータ21から流出管41へと流れて四方弁22に流入する。そして、四方弁22から流出した冷媒は、冷媒配管43を流れて室外熱交換器23へと流入する。室外熱交換器23へと流入した冷媒は、室外機ファン28の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23から室外機液管44へと流出した冷媒は、開度が全開とされている室外機膨張弁24を通過し、閉鎖弁25を介して液管8に流出する。なお、オイルセパレータ21では、冷媒とともに圧縮機20から吐出された冷凍機油が冷媒から分離され、分離された冷凍機油は、図1に一点鎖線矢印で示すようにオイルセパレータ21から流出して油戻し管47を流れ、吸入管42を介して圧縮機20へと戻される。
【0040】
液管8を流れる冷媒は、各液管接続部53を介して室内機5-1~5-10に流入する。室内機5-1~5-10に流入した冷媒は各室内機液管71を流れ、各室内熱交換器51の各々の冷媒出口での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過熱度は、室内機5-1~5-5の各々で要求される冷房能力に基づいて定められるものである。また、冷房能力は、各室内機5-1~5-10において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。
【0041】
各室内機液管71から各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により室内機5-1~5-10の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、各室内熱交換器51が蒸発器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-10が設置された室内の冷房が行われる。
各室内熱交換器51から各室内機ガス管72に流出した冷媒は、各ガス管接続部54を介してガス管9に流出する。ガス管9で合流し閉鎖弁26を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機ガス管45、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ27、吸入管42の順に流れ、圧縮機20に吸入されて再び圧縮される。
【0042】
次に、本実施形態の切換手段37としての第1開閉弁38と第2開閉弁39とを制御して、圧縮機20からの吐出された冷媒をバイパス路48側に流す通常運転と、圧縮機20からの吐出された冷媒をオイルセパレータ21側に流す油戻し運転の動作を説明する。
<通常運転>
通常運転は、制御装置80が、第1開閉弁38と第2開閉弁39とを制御して、圧縮機20から吐出された冷媒をバイパス路48側に流す運転である。空気調和装置1の運転が開始されると、制御装置80は、第1開閉弁38を閉鎖して、第2開閉弁39を開放する。これにより、圧縮機20からの吐出冷媒はオイルセパレータ21に流れ込むことなくバイパス路48を流れ、四方弁22を介して暖房運転時は室内機5-1~5-10側へと流れていき、冷房運転時は室外熱交換器23へと流れていく。通常運転では、冷媒と共に圧縮機20から吐出された冷凍機油が室内機側5-1~5-10あるいは室外熱交換器23へ流れていくが、吐出された冷媒の一部がオイルセパレータ27を介して圧縮機20へ戻されてしまうことが抑制できる。
【0043】
<油戻し運転>
油戻し運転は、制御装置80が、第1開閉弁38と第2開閉弁39とを制御して、圧縮機20から吐出された冷媒をオイルセパレータ21側に流す運転である。制御装置80は、通常運転中に所定条件になると、第1開閉弁38を開放して、第2開閉弁39を閉鎖する。第1開閉弁38が開放して、第2開閉弁39が閉鎖することにより、圧縮機20から吐出された冷媒はバイパス路48には流れずにオイルセパレータ21に流入する。オイルセパレータ21に冷媒と共に流入した冷凍機油が冷媒から分離され、油戻し管47を介して圧縮機20の吸入側へと流れる。一方で、オイルセパレータ21で冷凍機油と分離した冷媒は、流出管41および四方弁22を介して暖房運転時は室内機5-1~5-10側へと流れていき、冷房運転時は室外熱交換器23へと流れていく。このように、油戻し運転では、オイルセパレータ27で分離された冷凍機油と冷媒の一部が油戻し管47を介して圧縮機20に戻されるため、圧縮機20から吐出された冷凍機油が、冷媒回路、特に室外熱交換器や室内熱交換器に滞留することない。そのため、圧縮機20で冷凍機油が不足してしまうことを抑制できる。
【0044】
次に、制御装置80は、切換手段37を操作して圧縮機20から吐出された冷媒および冷凍機油をバイパス路48に導く通常運転と、切換手段37を操作して圧縮機20から吐出された冷媒および冷凍機油をオイルセパレータ21に導く油戻し運転について、通常運転から油戻し運転への切換えを行う制御の態様と、油戻し運転から通常運転への切換えを行う制御の態様について説明する。
【0045】
通常運転と油戻し運転の切換えを行う制御の第1の態様は、時間の経過に基づき通常運転と油戻し運転の切換えを行う態様である。通常運転が開始されると、タイマ81が起動し、タイマ81の計時結果が第1所定時間(本発明の所定条件の一例)、例えば、4時間経過すると、制御装置80は、通常運転から油戻し運転に切換える。そして、油戻し運転に切り換わってから第2所定時間、例えば、10分を経過すると、制御装置80は、油戻し運転から通常運転に切換える(以降において、第2所定時間とは、油戻し運転から通常運転に切換えるまでの時間を言う。)。これにより、通常運転を行っているときに圧縮機20から冷媒回路側に冷媒といっしょに流出する冷凍機油を、オイルセパレータ27を介して圧縮機20に戻すことができるため、圧縮機20で潤滑に必要な冷凍機油量を確保できる。また、油戻し運転時は、圧縮機20から吐出された冷媒の一部が冷媒回路10側へ流れずに冷凍機油と共に圧縮機20に戻ってしまうが、油戻し運転の時間を短時間(本実施形態では10分間)とすることで、冷媒回路10側での冷媒不足を抑制できる。
【0046】
前記に例示した第1所定時間の4時間は、予め試験などを行って決定された時間であり、これ以上通常運転を続けると冷媒回路10に滞留する冷凍機油量が多くなって圧縮機20で必要な冷凍機油量を確保できなくなる可能性がある時間として決定した時間である。また、同様に例示した油戻し運転の第2所定時間10分も、予め試験などを行って決定された時間であり、油戻し運転をこの時間継続して行えば圧縮機20の潤滑に十分な量の冷凍機油が圧縮機に戻っていることができる時間として決定した時間である。これらの通常運転を行う所定時間と油戻し運転を行う時間は、実験等で適宜決めればよい。
【0047】
通常運転と油戻し運転の切換えを行う制御の第2の態様は、圧縮機20の内部の油量に基づき通常運転と油戻し運転の切換えを行う態様である。通常運転が開始され、圧縮機20に設けた油面センサ30で検出した値が所定値未満(本発明の所定条件の一例)になると、制御装置80は、通常運転から油戻し運転に切換える。そして、油戻し運転を行っているときに、圧縮機20に設けた油面センサ30で検出した値が所定値以上になると、制御装置80は、油戻し運転から通常運転に切換える。これにより、通常運転を行っているときに圧縮機20から冷媒回路側に冷媒といっしょに流出する冷凍機油を、オイルセパレータ27を介して圧縮機20に戻すことができるため、圧縮機20で潤滑に必要な冷凍機油量を確保できる。また、油戻し運転時は、圧縮機20から吐出された冷媒の一部が冷媒回路10側へ流れずに冷凍機油と共に圧縮機20に戻ってしまうが、油戻し運転の時間を短時間(本実施形態では10分間)とすることで、冷媒回路10側での冷媒不足を抑制できる。
【0048】
通常運転と油戻し運転の切換えを行う制御の第3の態様は、吐出過熱度に基づき通常運転と油戻し運転の切換えを行う態様である。空調調和装置1の冷媒回路10では、圧縮機10の吸入冷媒の吸入過熱度が下がると圧縮機10の吐出冷媒の吐出過熱度も下がってくる。また、吸入冷媒の吸入過熱度が下がってくると、吸入冷媒は湿り状態の割合が高くなり、圧縮機10に湿り状態の冷媒が吸入されると、湿り状態の冷媒に冷凍機油が溶けるため、吐出冷媒に冷凍機油が混ざる割合が多くなる。従って、吐出冷媒の吐出過熱度を計測することによって、圧縮機10から吐出する冷媒と共に吐出される冷凍機油の量が多いか少ないかを推測することができる(本発明の所定条件の一例)。そのため、通常運転と油戻し運転の切換えを行う制御の第3の態様は、吐出過熱度に基づき通常運転と油戻し運転の切換えを行う。
【0049】
通常運転が開始されると、制御装置80は、吐出圧力センサ31、吐出温度センサ33の情報から吐出過熱度を算出し、算出された吐出過熱度が所定値未満になっている状態が継続すれば、制御装置80は、圧縮機20において冷凍機油が不足していると判断して通常運転から油戻し運転に切換える。そして、油戻し運転を行っているときに算出された吐出過熱度が所定値以上になると、制御装置80は、油戻し運転から通常運転に切換える。なお、吐出過熱度が所定値未満になるということは、圧縮機に吸入される冷媒に冷凍機油が混ざって冷媒が湿り状態となっているということを示す。これにより、通常運転を行っているときに圧縮機20から冷媒回路側に冷媒といっしょに流出する冷凍機油を、オイルセパレータ27を介して圧縮機20に戻すことができるため、圧縮機20で潤滑に必要な冷凍機油量を確保できる。また、油戻し運転時は、圧縮機20から吐出された冷媒の一部が冷媒回路10側へ流れずに冷凍機油と共に圧縮機20に戻ってしまうが、油戻し運転の時間を短時間(本実施形態では10分間)とすることで、冷媒回路10側での冷媒不足を抑制できる。
尚、吐出過熱度は、吐出圧力センサ3で検出した吐出圧から凝縮温度を計算して求め、吐出温度センサ33で検出した吐出温度から計算して求めた凝縮温度を減じることによって、求めることができる。
【0050】
次に、通常運転と油戻し運転の切換えを行う制御の第4の態様として、後述するローテーション運転を行う場合の態様について説明する。空気調和装置において、冷媒回路10の冷媒充填量が、ISO等の規制によって、全ての室内機5-1~5-10で同各室内機の定格能力を発揮できる冷媒充填量である最大充填量より少ない規制充填量となっている空気調和装置100における、通常運転と油戻し運転の切換えを行う制御について説明する。尚、空気調和装置100は、冷媒回路に充填される冷媒充填量が空気調和装置1と異なるだけで、その他の構成は空気調和装置1と同じである。
【0051】
最初に、空気調和装置100における、空調運転の制御について説明する。空気調和装置100では、冷媒回路10の冷媒充填量が、ISO等の規制によって、全ての室内機5-1~5-10で同各室内機5-1~5-10の最大能力を発揮できる冷媒充填量である最大充填量より少ない規制充填量となっているため、各室内機5-1~5-10から要求される空調能力が、冷媒回路10に充填される規制充填量に応じた空調能力しか発揮できない場合、例えば、全ての室内機で定格能力が要求されても、全ての室内機5-1~5-10で定格能力が発揮できない。
【0052】
そのため、空気調和装置100では、室内機5-1~5-10の何台かの室内機を停止させることで、運転している室内機で定格能力を発揮させる。このとき、停止する室内機が固定されると、停止する室内機が受け持つ室内空間の空調環境が悪化して、当該室内空間に存在する使用者に不快感を与える恐れがある。そこで、最大充填量と規制充填量との差分に応じて室内機5-1~5-10のうち何台かを停止させ、当該停止する室内機を所定のタイミング、例えば、1時間毎で変更するローテーション制御を行う。尚、本実施形態では、最大充填量に対する規制充填量の不足分に対応するのが室内機1台分の空調能力であるため、ローテーション運転は、室内機5-1~5-10のうち1台の室内機を停止させる。
【0053】
本実施形態の空気調和装置100では、各室内機が要求する空調能力の合計値が、規制充填量に応じて予め定められて記憶部82に記憶されている閾要求能力を超えた場合は、室内機のうち閾要求能力に対応する9台の室内機を運転し残り1台の室内機を停止する。そして、停止する室内機を定期的に変更するローテーション制御を行う。
【0054】
本実施形態では、閾要求能力に対応する台数の室内機が9台であり停止させる室内機が1台であるので、制御装置80は、各室内機5-1~5-10から取り込んだ要求能力の合計が記憶部82に記憶されている閾要求能力を超えた場合、まず、室内機5-1を所定時間(例えば、1時間)停止させる。1時間が経過すれば、制御装置80は、室内機5-1を起動させるとともに室内機5-2を1時間停止させる。以降、室内機5-3、室内機5-4、室内機5-5の順で室内機5-10まで順に1時間ずつ停止させ、室内機5-10を1時間停止させた後は再び室内機5-1を1時間停止させる。尚、上記所定時間の1時間は、予め試験等を行って定められたものであり、この時間室内機が停止しても当該室内機が受け持つ空調空間の空調環境が極端に悪化(例えば、設定温度と室内温度の温度差が6 ℃ 以上となる)しないことが確認できている時間である。
【0055】
上記のようにローテーション制御を行うときの通常運転と油戻し運転の切換えを行う制御の態様は次のようになる。制御装置80は、ローテーション制御によって、既に停止させた室内機5-1から次に停止させる室内機5-2を停止させるタイミングで、通常運転から油戻し運転に切換える。
ローテーション制御における通常運転から油戻し運転への切り換えは、室内機5-1の次に停止させる室内機5-2を停止させるタイミング(本発明の所定条件の一例)であるが、具体的には、例えば、停止させる室内機5を室内機5-1から室内機5-2に切り換える時点の第2所定時間(例えば、10分)前から油戻し運転を開始し、停止させる室内機を室内機5-1から室内機5-2に切り換える時点で、油戻し運転から通常運転に切り換える。
【0056】
ローテーション制御を行う場合においては、冷房運転時に停止している室内機5では、当該室内機5の室内膨張弁52が閉じられるために冷媒が流れない。また、暖房運転時に停止している室内機5では、当該室内機5の室内膨張弁52が微開とされるために微量の冷媒しか流れない。このため、停止している室内機では、冷凍機油が室内熱交換器51に滞留しやすく、停止時間が経過すると共に冷凍機油が室内熱交換器51に滞留する量が増えてくる。例えば、停止させる室内機を室内機5-1から室内機5-2に切り換える時点では、室内機5-1に多くの冷凍機油が滞留していると共に、室内機5-2に冷凍機油が滞留し始めるため、この時点で圧縮機20を除く冷媒回路10に最も冷凍機油が滞留している。以上に記載したことを考慮し、停止させる室内機5を切り換える時点の第2所定時間前から油戻し運転を開始し、停止させる室内機5を切り換える時点で油戻し運転から通常運転に切換える制御を行うことにより、冷媒回路10における冷凍機油の滞留を効果的に抑制することができる。
【0057】
尚、ローテーション制御における通常運転から油戻し運転への切り換えは、停止させる室内機5を切り換える時点の第2所定時間前ではなく、停止させる室内機5を切り換える時点で通常運転から油戻し運転に切り換え、停止させる室内機5を切り換える時点から第2所定時間経過後に、油戻し運転から通常運転に切換えてもよく、または、停止させる室内機5を切り換える時点からある一定の時間が経過した後に通常運転から油戻し運転に切換え、通常運転から油戻し運転に切換えた時点から第2所定時間経過後に、油戻し運転から通常運転に切換えてもよい。つまり、ローテーション制御における通常運転から油戻し運転への切換えは、停止させる室内機5を切り換えるタイミングの際に行えば良い。
【0058】
また、ローテーション制御における油戻し運転から通常運転への切換えについては、前述した第1の態様から第3の態様のいずれかで説明した、油戻し運転から通常運転への切換えを行う条件を採用しても構わない。
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0059】
1…空気調和装置、2…室外機、5-1~5-10…室内機、10…冷媒回路、20…圧縮機、21…オイルセパレータ、23…室外熱交換器、30…油面センサ、37…切換手段、38…第1開閉弁、39…第2開閉弁、51…室内熱交換器、47…油戻し管、48…バイパス路、80…制御装置、81…タイマ、82…記憶部
図1
図2