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特許7439606オーディオ機器及びオーディオ信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】オーディオ機器及びオーディオ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H03G 11/00 20060101AFI20240220BHJP
   H03G 5/16 20060101ALI20240220BHJP
   G10L 21/0324 20130101ALN20240220BHJP
【FI】
H03G11/00 008
H03G5/16 165
G10L21/0324
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020053921
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021158408
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 結実
(72)【発明者】
【氏名】小菅 克真
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝紀
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-21162(JP,A)
【文献】特開2016-225913(JP,A)
【文献】特表2012-530431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0251163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
H03G1/00-11/08
H04R3/00-3/14
G10L21/0316-21/0364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音信号を入力する音信号入力部と、
前記音信号に所定の信号処理を施す信号処理部と、
前記音信号を増幅する増幅器と、
増幅された音信号を出力する音信号出力部と、
外部機器へ給電する給電部と、
前記給電部の外部機器に供給する電力を検出する給電検出部と、
前記給電検出部が前記電力を検出すると、前記音信号のレベルを制限するレベル制限処理を前記信号処理部に対して実行させる制御部と、
を備える
オーディオ機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記給電検出部で検出される電力の給電量が小さい第1状態において前記レベル制限処理の制限量を小さくする第1モードと、前記給電量が大きい第2状態において前記制限量を大きくする第2モードと、を実行する、
請求項1に記載のオーディオ機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記給電検出部で検出される電力に応じて、前記レベル制限処理の制限量を動的に変更する、
請求項1に記載のオーディオ機器。
【請求項4】
前記第1状態は、前記給電部の給電量がゼロである状態を含む、
請求項2に記載のオーディオ機器。
【請求項5】
前記第1モードは、前記レベル制限処理の制限量がゼロである状態を含む、
請求項2に記載のオーディオ機器。
【請求項6】
前記給電検出部は、前記外部機器に供給する電力量を求め、前記電力量に基づいて前記電力を検出する、
請求項1乃至5のいずれかに記載のオーディオ機器。
【請求項7】
前記レベル制限処理は、前記音信号のレベルを所定値以下に制限するリミッタ処理を含む、
請求項1に記載のオーディオ機器。
【請求項8】
前記信号処理部は、所定の帯域に分割された複数の帯域のうち低域の周波数において、前記レベル制限処理を実行する、
請求項1乃至7のいずれかに記載のオーディオ機器。
【請求項9】
前記給電部は、無線で前記外部機器へ給電する、
請求項1乃至8のいずれかに記載のオーディオ機器。
【請求項10】
前記制御部は、外部機器の電池の残量に応じて、レベル制限処理を実行する、
請求項1乃至9のいずれかに記載のオーディオ機器。
【請求項11】
音信号を入力し、
信号処理部によって前記音信号に所定の信号処理を施し、
前記音信号を増幅し、
増幅された音信号を出力し、
給電部によって外部機器へ給電し、
前記給電部の外部機器に供給する電力を検出し、
前記電力を検出すると、前記音信号のレベルを制限するレベル制限処理を前記信号処理部に対して実行させる、
を備える
オーディオ信号処理方法。
【請求項12】
検出された前記電力の給電量が小さい第1状態において前記レベル制限処理の制限量を小さくする第1モードと、前記給電量が大きい第2状態において前記制限量を大きくする第2モードと、を実行する、
請求項11に記載のオーディオ信号処理方法。
【請求項13】
検出された前記電力に応じて、前記レベル制限処理の制限量を動的に変更する、
請求項11に記載のオーディオ信号処理方法。
【請求項14】
前記第1状態は、前記給電部の給電量がゼロである状態を含む、
請求項12に記載のオーディオ信号処理方法。
【請求項15】
前記第1モードは、前記レベル制限処理の制限量がゼロである状態を含む、
請求項12に記載のオーディオ信号処理方法。
【請求項16】
前記給電部は、前記外部機器に供給する電力量を求め、
前記電力量に基づいて前記電力を検出する、
請求項11乃至15のいずれかに記載のオーディオ信号処理方法。
【請求項17】
前記レベル制限処理は、前記音信号のレベルを所定値以下に制限するリミッタ処理を含む、
請求項11に記載のオーディオ信号処理方法。
【請求項18】
前記信号処理部は、所定帯域に分割された複数の帯域のうち低域の周波数において、前記レベル制限処理を実行する、
請求項11乃至17のいずれかに記載のオーディオ信号処理方法。
【請求項19】
前記給電部は、無線で前記外部機器へ給電する、
請求項11乃至18のいずれかに記載のオーディオ信号処理方法。
【請求項20】
外部機器の電池の残量に応じて、レベル制限処理を実行する、
請求項11乃至19のいずれかに記載のオーディオ信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一実施形態は、オーディオ信号の信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオ装置に接続されたバッテリーの電源ラインの電圧を監視し、オーディオ装置の消費電流を予測するオーディオ装置がある(例えば、特許文献1)。オーディオ装置は、設定された目標電流と、予測された消費電流とを比較し、消費電流が目標電流を超える場合には、消費電流が目標電流以下に収まるように電流を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-225913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オーディオ装置は、外部機器に給電する場合、自装置の増幅器に供給する電力が足りなくなり、音質の劣化を招く場合がある。
【0005】
この発明の一実施形態は、外部機器に給電中であっても、音質を劣化させることなく音量を上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るオーディオ機器は、音信号を入力する音信号入力部と、前記音信号に所定の信号処理を施す信号処理部と、前記音信号を増幅する増幅器と、増幅された音信号を出力する音信号出力部と、外部機器へ給電する給電部と、前記給電部の給電状態を検出する給電検出部と、前記給電検出部が前記給電状態を検出すると、前記音信号のレベルを制限するレベル制限処理を前記信号処理部に対して実行させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係るオーディオ機器は、外部機器に給電中であっても、音質を劣化させることなく音量を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】オーディオ機器の主要な構成を示す構成図である。
図2】従来例の音信号の一例を示す説明図である。
図3】レベル制限機能の一例を示す説明図である。
図4】レベル制限処理が施された音信号の一例を示す説明図である。
図5】オーディオ機器の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】変形例1のEQカーブの一例を示す説明図である。
図7】変形例2のAMPに配分可能な最大電力のリミッタカーブを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
オーディオ機器1について、図を参照して説明する。図1は、オーディオ機器1の主要な構成を示す構成図である。図2は、リミッタ機能の一例を示す説明図である。図3は、レベル制限処理が施された音信号の一例を示す説明図である。図4は、従来例の音信号の一例を示す説明図である。
【0010】
オーディオ機器1は、例えばパーソナルコンピュータ、セットトップボックス、オーディオレシーバ、又はパワードスピーカ等である。オーディオ機器1は、音信号を、例えば外部の再生装置、ネットワーク、又は記憶媒体等から取得する。また、オーディオ機器1は、マイク等から音信号を取得してもよい。なお、本実施形態において、特に記載が無い限り、音信号は、デジタル信号を意味する。
【0011】
本実施形態のオーディオ機器1は、外部機器4に電力を供給する。オーディオ機器1は、図1に示すように、給電回路22を備えている。この例でいう、外部機器4は、二次電池を有している。給電回路22は、例えば、非接触型の給電回路である。すなわち、給電回路22は、無線で、外部機器4を充電する。ユーザは、例えば、外部機器4を非接触型の給電回路22に近づけることで、外部機器4を充電することができる。
【0012】
給電回路22が外部機器4に供給する電力は、例えば、外部機器4の二次電池の充電量(電池残量)に応じて、変化する。例えば、外部機器4の充電量が少ない場合、外部機器4に供給する電力が多くなる。このようにすれば、外部機器4の充電スピードが上がる。また、外部機器4の充電量が多い場合、外部機器4に供給する電力が小さくなる。
【0013】
オーディオ機器1は、図1に示すように、入力I/F(インタフェース)11と、信号処理部12と、増幅器(以下、AMP13と称する)と、出力I/F14と、CPU15と、RAM16と、フラッシュメモリ17と、給電検出部18と、電源回路21と、給電回路22と、を備える。
【0014】
バス10は、入力I/F11、信号処理部12、AMP13、出力I/F14、CPU15、RAM16、フラッシュメモリ17及び給電検出部18を互いに接続する。
【0015】
電源回路21は、外部電源(例えば、商用電源)3から電力が供給される。電源回路21は、例えば、AC/DCコンバータ等を有している。電源回路21は、交流電力を直流電力に変換し、オーディオ機器1に必要な電力レベルに制御する。電源回路21は、制御した電力の一部を給電回路22に使用する。また、電源回路21は、残りの電力の一部をAMP13の駆動電力として使用する。
【0016】
CPU15は、オーディオ機器1を統括的に制御する。CPU15は、記憶部であるフラッシュメモリ17に記憶された所定のプログラムをRAM16に読み出す。これにより、CPU15は、各種の動作を行なう。この例でいうCPU15は、本発明の制御部の一例である。
【0017】
また、CPU15は、信号処理部12に対して、レベル制限処理を実行させる。レベル制限処理は、音信号のレベルを制限する処理である。レベル制限処理については後述する。
【0018】
給電検出部18は、給電状態を検出する。この例でいう、給電状態は外部機器4に供給する電力(量)である。給電検出部18は、外部機器4に供給する電力量を検出する。この例では、外部機器4に供給する電圧は一定であるので、給電検出部18は、電流値を監視して、電力量を検出する。給電検出部18は、例えば、給電回路22に流れる電流及び外部機器4に印加される電圧のそれぞれを検出する。給電検出部18は、これらの電流及び電圧から外部機器4に供給する電力量を計算する。
【0019】
入力I/F11は、HDMI(登録商標)などのインタフェースを有する。入力I/F11は、音信号(入力信号)を入力し、信号処理部12に出力する。
【0020】
信号処理部12は、例えば、DSPからなる。信号処理部12は、PEQ(Parametric Equalizer)機能121及びレベル制限機能122を備える。すなわち、信号処理部12は、入力した音信号にPEQ処理及びレベル制限処理を施す。
【0021】
PEQ機能121は、所定の周波数帯域に分割された複数の帯域、例えば、低域、中音域及び高域、毎で設定されたパラメータ、例えば、ゲイン、及びQ値、に基づいてEQカーブを構成する。PEQ機能121は、構成されたEQカーブに基づいて、音信号を処理する。PEQ機能121は、例えば、ユーザから受け付けたパラメータを使用して、EQカーブを構成してもよい。また、PEQ機能121は、メモリ、例えばフラッシュメモリ17に予め記憶されていた、パラメータを読み出して、EQカーブを構成してもよい。
【0022】
レベル制限機能122は、音信号のレベルを制限するレベル制限処理を行う。この例でいう、レベル制限機能122は、リミッタ機能を含む。リミッタ機能は、リミッタ処理を行う。リミッタ処理は、音信号のレベルが所定の閾値(リミット値)を超さないように、音信号のレベルを制御する。より詳細には、レベル制限機能122は、例えば、CPU15が設定した音信号の圧縮率又は圧縮がかかり始める入力値に応じて、音信号のレベルを制限する。
【0023】
ところで、従来のオーディオ機器では、レベル制限処理のリミット値によっては、音質劣化を生じさせる場合があった。仮に、信号処理部から出力された音信号のレベルが高い場合、図2に示すように、AMPに配分可能な最大電力を超える音信号を再生しようとしても、信号so1に示すように、部分a1がカットされて、音信号がクリッピングしてしまう。したがって、このような従来のオーディオ機器では、レベル制限処理のリミット値が高い場合、AMPに供給される電力量が足りず、音割れなどの音質劣化が生じることがあった。
【0024】
そこで、本実施形態のCPU15は、給電検出部18が検出した電力量の大きさに応じて、2つの異なるリミット値を設定する。CPU15は、給電検出部18が検出した電力量が、所定の閾値(例えば5W)よりも小さい第1状態と、電力量が所定の閾値よりも大きい第2状態とに分ける。CPU15は、第1状態において、レベル制限処理の制限量を小さくする第1モードを実行する。また、第2状態において、レベル制限処理の制限量を大きくする第2モードを実行する。
【0025】
CPU15は、図3に示すように、入力に対する出力のリミット値th1、th2を設定する。CPU15は、給電の電力量の少ない第1状態において、例えば、リミット値th1を20dBに設定する。この場合、レベル制限機能122は、出力値n1がリミット値th1を超えないように音信号を制御する。また、CPU15は、給電の電力量の多い第2状態において、リミット値th2を10dBに設定する。この場合、レベル制限機能122は、出力値n2がリミット値th2を超えないように、音信号を制御する。
【0026】
なお、図3で示される出力値n0は、レベル制限処理が行われない場合の音信号を表している。
【0027】
信号処理部12は、図4に示すように、CPU15が第1モードを実行した場合、音信号s1を出力する。また、信号処理部12は、CPU15が第2モードを実行した場合、音信号s2を出力する。レベル制限処理のリミット値th1がリミット値th2よりも大きいので、CPU15が第1モードを実行した場合の音信号s1の振幅は、第2モードを実行した場合の音信号s2よりも大きくなる。
【0028】
なお、音信号s0は、レベル制限処理が行われない場合の音信号を表している。
【0029】
AMP13は、スピーカ5を駆動するために信号処理部12から出力された音信号を増幅する。AMP13は、増幅した音信号を出力I/F14に出力する。
【0030】
ここで、AMPに配分可能な最大電力は、給電回路が外部機器に供給する電力量によって変化する。従来のオーディオ機器では、外部機器に電力を供給していない場合でも、出力する音信号の音量が小さくなってしまう問題があった。図4で示される電力量p1は、外部機器に電力を供給しない場合における、AMPに配分可能な最大電力である。また、電力量p2は、外部機器に電力を供給した場合におけるAMPに配分可能な最大電力である。このように、オーディオ機器1は、外部機器に供給する電力量が大きいほど、AMPに配分可能な最大電力が低下する。
【0031】
そこで、本実施形態のオーディオ機器1は、給電検出部18が検出する電力量に応じて、信号処理部12から出力される音信号のレベルを変える。例えば、レベル制限機能122が音信号のレベルを制限する。これにより、AMP13は、給電検出部18が検出する電力量に応じて、配分可能な最大電力内で、音信号を増幅することができる。言い換えると、AMP13は、外部機器4へ供給する電力量に応じて音信号を増幅することができる。
【0032】
出力I/F14は、例えば、HDMI(登録商標)などのインタフェースを有する。出力I/F14は、例えば、インタフェースに接続されたスピーカ5に、AMP13で増幅された音信号を出力する。
【0033】
オーディオ機器1の主要な動作を、図5を参照して説明する。図5は、オーディオ機器1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0034】
オーディオ機器1は、音信号を入力すると(S1:Yes)、オーディオ機器1は、給電回路22から外部機器4に供給する電力量を検出する(S2)。オーディオ機器1は、検出した電力量が閾値よりも小さい場合(第1状態)(S3:Yes)、第1モードを実行する。この場合、オーディオ機器1は、リミット値th1を設定する(S11)。オーディオ機器1は、リミット値th1を越さないように、音信号にレベル制限処理を施す(S12)。オーディオ機器1は、音信号を増幅する(S13)。オーディオ機器1は、増幅された音信号を、スピーカ5に出力する(S4)。
【0035】
また、オーディオ機器1は、外部機器4に供給する電力量が閾値よりも大きい場合(第2状態)(S3:No)、第2モードを実行する。この場合、オーディオ機器1は、リミット値th2を設定する(S21)。オーディオ機器1は、リミット値th2を越さないように、音信号にレベル制限処理を施す(S22)。オーディオ機器1は、音信号を増幅する(S23)。オーディオ機器1は、増幅された音信号を、スピーカ5に出力する(S4)。
【0036】
なお、オーディオ機器1の動作は上述に限定されない。例えば、オーディオ機器1の動作において、処理S2と処理S3の順番が入れ替わってもよい。
【0037】
このように、オーディオ機器1は、信号処理部12から出力された音信号のレベルが高い場合であっても、音信号の波形を維持しつつ、AMP13で音信号を増幅することができる。これにより、ユーザは、音割れのない良い音を聞くことができる。
【0038】
レベル制限機能122は、給電の電力が大きくなった場合には、音信号レベルをより制限することで、AMP13に配分可能な最大電力が低くなっても、音信号の波形を維持しつつ、音信号を増幅する。したがって、オーディオ機器1は、外部機器4に給電中であっても、音質を劣化させることなく音量を上げることができる。言い換えると、オーディオ機器1は、AMP13に配分可能な最大電力が高い場合には、レベルの高い音信号も強く圧縮せずに再生する。したがって、ユーザは、よりダイナミックレンジの広い音を聞くことができる。
【0039】
なお、給電検出部18は、給電状態として、給電のオン又はオフ状態を検出してもよい。すなわち、第1状態は、給電回路22が外部機器4に電力を供給しない状態を含む。言い換えると、第1状態は、給電回路22の給電量がゼロである状態も含む。CPU15は、給電検出部18が給電のオンを検出した場合、第2モードを実行する。また、CPU15は、給電検出部18が給電を検出しなければ(給電のオフ状態)、第1モードを実行する。
【0040】
また、給電検出部18は、自装置(給電回路22を除く)の消費電力を検出してもよい。給電検出部18、例えば、AMP13で消費される電力を検出してもよい。この場合、給電検出部18は、電源回路21が変換(生成)した総電力から、例えば、AMP13で消費される電力を差し引いた電力を計算してもよい。給電検出部18は、計算した電力を、給電回路22が外部機器4に供給する電力量とみなす。この場合、CPU15は、計算された電力が小さい場合、第1モードを実行する。また、CPU15は、計算された電力が大きい場合、第2モードを実行する。
【0041】
また、第1モードは、レベル制限処理の制限量がゼロの状態も含む。すなわち、AMP13に配分可能な最大電力が高く、信号処理部12で音信号のレベルを制限する必要がない場合、CPU15は、レベル制限機能122を停止してもよい。
【0042】
また、信号処理部12は、所定の帯域に分割された複数の帯域のうち低域の周波数において、レベル制限処理を実行してもよい。信号処理部12は、例えば、音信号を、低域(100Hz以下の帯域)、中音域、(100Hzから1kHzまでの帯域)、及び高域(1kHz以上の帯域)に分割する。信号処理部12は、低域の音信号により強いリミッタ処理を施す。これにより、オーディオ機器1は、外部機器4に給電中であっても、音質への影響を抑えることができる。また、低域の音信号は、波長が長いため、消費電力への影響が大きい。オーディオ機器1は、消費電力への影響が大きい帯域にレベル制限処理を施すことで、レベル制限処理を一部の帯域に限定しても、音割れなどの音質劣化を抑制し、音量を上げることができる。
【0043】
また、給電回路22は、無線型の給電回路に限定されない。給電回路22は、例えば、USB等の有線接続の充電機能を有していてもよい。この場合、オーディオ機器1は、有線で、外部機器4に電力を供給する。
【0044】
また、オーディオ機器1は、電池(一次電池又は二次電池)を有している構成であってもよい。給電検出部18は、外部機器4に供給する電力及び電池の残量を検出する。CPU15は、外部機器4に供給する電力量及び電池の残量に応じて、リミット値を設定してもよい。例えば、CPU15は、電池の残量が少ない場合に、リミット値をさらに低く設定してもよい。
【0045】
また、レベル制限機能122(レベル制限処理)は、リミッタ機能(リミッタ処理)に限定されない。レベル制限機能122は、コンプレッサ機能であってもよい。
【0046】
[変形例1]
変形例1のオーディオ機器1について、図6を参照して説明する。図6は、変形例1のEQカーブc1、c2の一例を示す説明図である。CPU15は、PEQ機能121に対して、レベル制限処理を実行させる。なお、上述の実施形態1と同じ構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0047】
EQカーブc1、c2は、イコライザの周波数特性を示す曲線である。CPU15は、EQカーブc1を構成するパラメータ、例えば、ゲインを設定する。この例では、PEQ機能121は、所定帯域に分割された複数の帯域のうち低域の周波数において、レベル制限処理を実行する。なお、この例では、低域は、100Hz以下の帯域である。中音域は、100Hzから1kHzまでの帯域である、また、高域は、1kHz以上の帯域である。
【0048】
変形例1のPEQ機能121は、外部機器4に供給する電力量が小さい場合、PEQ機能121のゲインを大きくする(カット量を小さくする)(図6のEQカーブc1を参照)。また、PEQ機能121は、外部機器4に供給する電力量が大きい場合、PEQ機能121のゲインを小さくする(カット量を大きくする)(図6のEQカーブc2を参照)。PEQ機能121がゲインを小さくすることで、AMP13に配分可能な最大電力が低くても、オーディオ機器1は、音信号の波形を維持しつつ、音信号を増幅することができる。これにより、オーディオ機器1は、外部機器4に給電中であっても、音質劣化を抑制し、音量を上げることができる。
【0049】
[変形例2]
変形例2のオーディオ機器1について、図7を参照して説明する。図7は、変形例2のAMP13に配分可能な最大電力のリミッタカーブy1を示す説明図である。なお、上述の実施形態1と同じ構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。また、図7で示されるth1及びth2は所望のリミット値の値である。
【0050】
変形例2のオーディオ機器1のレベル制限機能122は、外部機器4に供給される電力量に応じて、AMP13に配分可能な最大電力を変更する。レベル制限機能122は、例えば、図7に示すように、CPU15によって設定されたリミッタカーブy1=f(P)に基づいて、音信号のレベルを制限する。この例でいう、Pは、外部機器4に供給する電力量(給電量)を表す。
【0051】
CPU15は、外部機器4に供給する電力量が大きくなるにつれて、リミット値thを低く設定する。この場合、CPU15は、例えば、フラッシュメモリ17で記憶されているテーブル又は図7で示されるリミッタカーブy1(関数)に基づいて、外部機器4に供給する電力量に応じた最大電力を設定する。レベル制限機能122は、CPU15で設定されたリミット値を超さないように、音信号に信号処理を施す。
【0052】
このように、レベル制限機能122は、外部機器4に供給される電力量が大きくなるにつれて、より音信号のレベルを制限する。これにより、変形例2のオーディオ機器1は、AMP13に配分可能な最大電力が低くなっても、音質を劣化させることなく音量を上げることができる。
【0053】
本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の範囲を含む。
【0054】
例えば、本実施形態は、レベル制限処理の例として、レベル制限機能122(リミッタ機能)およびPEQ機能121を示した。しかし、レベル制限処理は、これらの処理に限らない。レベル制限処理は、例えば、ハイパスフィルタ処理でもよい。また、オーディオ機器1がディレイまたはリバーブ等の信号処理を行なう場合に、ディレイまたはリバーブの長さを短くすることも、レベル制限処理に含まれる。レベル制限処理は、これらの信号処理の少なくともいずれか1つを実行すればよい。
【符号の説明】
【0055】
1…オーディオ機器
11…入力I/F(音信号入力部)
12…信号処理部
13…AMP(増幅器)
14…出力I/F(音信号出力部)
15…CPU(制御部)
18…給電検出部
122…レベル制限機能
22…給電回路(給電部)
4…外部機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7