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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B62D25/08 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020074838
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021172127
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】楢原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】黒川 将
(72)【発明者】
【氏名】太田垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】出先 祐典
(72)【発明者】
【氏名】二村 泰成
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112914(JP,A)
【文献】特開2013-49376(JP,A)
【文献】特開2007-245781(JP,A)
【文献】特開2012-214070(JP,A)
【文献】国際公開第2013/012001(WO,A1)
【文献】特開平7-149262(JP,A)
【文献】特開2004-1668(JP,A)
【文献】実開平1-81176(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に配設されたサブフレームと、
フロントサイドフレームを介して、前記サブフレームに連結された左右一対のサスペンションタワーと、
車両前後方向に延びる略矩形の閉断面形状で、前記サスペンションタワーの上面が連結された左右一対のエプロンメンバとを備えた車両の前部車体構造であって、
前記エプロンメンバに固定されるとともに、前記エプロンメンバの共振周波数と略同じ共振周波数で、前記エプロンメンバの振動の位相に対して逆位相で振動する振動抑制部材を備え、
該振動抑制部材は、
前記エプロンメンバの車両前後方向略中央において、前記エプロンメンバの内面の一つに固定された
車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記振動抑制部材は、
下端が自由端となる状態で前記エプロンメンバの内面における下向きの面に接合されるとともに、車幅方向へ振動可能な略板状材で構成された
請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記振動抑制部材は、
前記エプロンメンバに固定される略平板状の取付片部と、
該取付片部の主面に直交する直交方向へ向けて、前記取付片部の縁端を折り曲げた折曲部と、
該折曲部から前記直交方向へ向けて延設された略平板状の錘片部とで一体形成された
請求項1または請求項2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記取付片部は、
前記エプロンメンバの内面に固定される取付片本体と、前記折曲部に連続する前記取付片本体の縁端に立設された一対の第1フランジとを備え、
前記折曲部は、
前記第1フランジから連続して縁端に立設された一対の第2フランジを備え、
前記錘片部は、
前記第2フランジから連続して縁端に立設された一対の第3フランジを備えた
請求項3に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記直交方向における前記折曲部側を一端側とし、前記直交方向における一端側とは逆側を他端側として、
前記第3フランジにおける前記直交方向の他端側近傍は、
前記第3フランジにおける前記直交方向の一端側近傍に対して、前記錘片部の主面からの立設長さが長い形状に形成された
請求項4に記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
前記振動抑制部材は、
前記折曲部の略中央に位置するとともに、前記取付片部と前記錘片部とに跨って突設されたビードを備えた
請求項3から請求項5のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばサブフレームからの振動によって生じるエプロンメンバの共振を抑制するような車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両では、フロントサイドフレームとエプロンメンバ(エプロンレインフォースメント)とに跨って配設されたサスペンションタワーの上面が、エプロンメンバの上面を覆うように接合された前部車体構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特許文献1のような前部車体構造では、サブフレームからフロントサイドフレームに入力された振動が、サスペンションタワーを介して、エプロンメンバに伝達されることが知られている。
【0004】
この際、特許文献1のように、サスペンションタワーの上面をエプロンメンバの上面まで延長して接合する場合、サスペンションタワーの上面に段差がなければ強固に接合できるが、段差があると強固な接合ができなくなり、サスペンションタワーの振動に対してエプロンメンバの共振を招くことが懸念される。
【0005】
さらに、サブフレームの振動数によっては、例えば、エプロンメンバが車幅方向に共振するだけでなく、エプロンメンバの振動がロードノイズとして車室内に伝達されるおそれがあった。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献2のように、サスペンションタワーの上面、及び側面と、エプロンメンバの上面、及び側面とを、補強部材で連結することが考えられる。
しかしながら、このような補強部材は、比較的大型化し易く、かつサスペンションタワー、及びエプロンメンバとの接合箇所が増加することになる。このため、特許文献2のような補強部材では、車室内へのロードノイズの侵入を抑制できるものの、車両重量が増加するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-43566号公報
【文献】特開2018-138413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、車両重量の増加を抑えて、車室内へのロードノイズの侵入を抑制できる車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、車両前部に配設されたサブフレームと、フロントサイドフレームを介して、前記サブフレームに連結された左右一対のサスペンションタワーと、車両前後方向に延びる略矩形の閉断面形状で、前記サスペンションタワーの上面が連結された左右一対のエプロンメンバとを備えた車両の前部車体構造であって、前記エプロンメンバに固定されるとともに、前記エプロンメンバの共振周波数と略同じ共振周波数で、前記エプロンメンバの振動の位相に対して逆位相で振動する振動抑制部材を備え、該振動抑制部材は、前記エプロンメンバの車両前後方向略中央において、前記エプロンメンバの内面の一つに固定されたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、車両の前部車体構造は、サブフレームからの振動が作用した際、振動抑制部材が逆位相で振動することで、サブフレームからの振動によって生じるエプロンメンバの共振を抑えることができる。
【0011】
さらに、閉断面部材であるエプロンメンバの内面の1つに振動抑制部材を設けたことにより、車両の前部車体構造は、エプロンメンバとサスペンションタワーとを補強部材で連結した場合に比べて、接合箇所を低減できるとともに、重量増加を抑制することができる。
【0012】
よって、車両の前部車体構造は、車両重量の増加を抑えて、車室内へのロードノイズの侵入を抑制することができる。加えて、エプロンメンバの内部に振動抑制部材が位置するため、車両の前部車体構造は、周辺部品のレイアウトが、振動抑制部材によって阻害されることを防止できる。
【0013】
この発明の態様として、前記振動抑制部材は、下端が自由端となる状態で前記エプロンメンバの内面における下向きの面に接合されるとともに、車幅方向へ振動可能な略板状材で構成されてもよい。
この構成によれば、車両の前部車体構造は、車幅方向成分の振動を簡素な構成で効果的に抑えることができる。
【0014】
また、この発明の態様として、前記振動抑制部材は、前記エプロンメンバに固定される略平板状の取付片部と、該取付片部の主面に直交する直交方向へ向けて、前記取付片部の縁端を折り曲げた折曲部と、該折曲部から前記直交方向へ向けて延設された略平板状の錘片部とで一体形成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、折曲部がバネとして機能し、錘片部が質量体として機能するため、車両の前部車体構造は、振動抑制材を動吸振器として機能させることができる。このため、車両の前部車体構造は、比較的簡素な構成の振動抑制部材であっても、エプロンメンバの共振を安定して抑えることができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記取付片部は、前記エプロンメンバの内面に固定される取付片本体と、前記折曲部に連続する前記取付片本体の縁端に立設された一対の第1フランジとを備え、前記折曲部は、前記第1フランジから連続して縁端に立設された一対の第2フランジを備え、前記錘片部は、前記第2フランジから連続して縁端に立設された一対の第3フランジを備えてもよい。
【0017】
この構成によれば、車両の前部車体構造は、第2フランジによって、折曲部の剛性が向上するため、第2フランジを設けていない場合に比べて、振動抑制部材の振動特性を高周波側に調整することができる。
【0018】
さらに、第3フランジにより、車両の前部車体構造は、振動抑制部材の大型化を抑えて、錘片部の重量を増加することができる。このため、車両の前部車体構造は、折曲部からの延設長さが短い錘片部であっても、動吸振器の質量体として確実に機能させることができる。
よって、車両の前部車体構造は、サブフレームからの振動によって生じるエプロンメンバの共振を安定して抑えることができる。
【0019】
また、この発明の態様として、前記直交方向における前記折曲部側を一端側とし、前記直交方向における一端側とは逆側を他端側として、前記第3フランジにおける前記直交方向の他端側近傍は、前記第3フランジにおける前記直交方向の一端側近傍に対して、前記錘片部の主面からの立設長さが長い形状に形成されてもよい。
【0020】
この構成によれば、車両の前部車体構造は、錘片部の重心位置を、折曲部からより離間した位置に調整することができる。このため、車両の前部車体構造は、錘片部を動吸振器の質量体としてより確実に機能させることができる。
よって、車両の前部車体構造は、サブフレームからの振動によって生じるエプロンメンバの共振をより確実に抑えることができる。
【0021】
また、この発明の態様として、前記振動抑制部材は、前記折曲部の略中央に位置するとともに、前記取付片部と前記錘片部とに跨って突設されたビードを備えてもよい。
この構成によれば、車両の前部車体構造は、振動抑制部材の折曲部における剛性が向上するため、ビードを設けていない場合に比べて、振動抑制部材の振動特性をより高周波側に調整することができる。
よって、車両の前部車体構造は、サブフレームからの振動によって生じるエプロンメンバの共振をさらに確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、車両重量の増加を抑えて、車室内へのロードノイズの侵入を抑制できる車両の前部車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両前方上方から見た車両前部の外観を示す外観斜視図。
図2】車両前方下方から見た車両前部の外観を示す外観斜視図。
図3】エプロンメンバの左側面を示す左側面図。
図4図3中のA-A矢視断面図。
図5】車両前方上方から見た振動抑制部材の外観を示す外観斜視図。
図6】車両前方視における振動抑制部材の外観を示す正面図。
図7】車幅方向成分の振動特性を説明する説明図。
図8】実施例2における振動抑制部材の外観を示す外観斜視図。
図9】実施例2における車幅方向成分の振動特性を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0025】
実施例1の車両は、サブフレームからの振動によって生じるエプロンメンバの共振を抑制する振動抑制部材を備えた車両である。このような車両の車両前部構造について、図1から図7を用いて説明する。
【0026】
なお、図1は車両前方上方から見た車両前部の外観斜視図を示し、図2は車両前方下方から見た車両前部の外観斜視図を示し、図3はエプロンメンバ6の左側面図を示し、図4図3中のA-A矢視断面図を示している。
【0027】
さらに、図5は車両前方上方から見た振動抑制部材100の外観斜視図を示し、図6は振動抑制部材100の正面図を示し、図7は車幅方向成分の振動特性を示している。
加えて、図7(a)は振動抑制部材100の共振周波数を説明する説明図を示している。なお、図7(a)中の縦軸は、各周波数でのイナータンス、ここでは、各周波数でエプロンメンバ6に逆位相で与える振動エネルギーを示している。
また、図7(b)はサスペンションタワー8からの振動が入力される部分におけるエプロンメンバ6の変位量を説明する説明図を示している。
【0028】
また、図示を明確にするため、図2中において、車両左側のフロントサイドフレーム5、及びエプロンメンバ6近傍のみを図示するとともに、フロントサイドフレーム5よりも車幅方向内側のカウルパネル3、及びダッシュパネル4の図示を省略している。
【0029】
また、図中において、矢印Fr及び矢印Rrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。さらに、矢印Rh及び矢印Lhは車幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。加えて、図中の上側は車両上方を示し、図中の下側は車両下方を示している。
【0030】
車両1の車両前部は、図1及び図2に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てて車両上下方向に延びる車体骨格部材である左右一対のヒンジピラー2と、左右のヒンジピラー2の間に配設されたカウルパネル3、及びダッシュパネル4とを備えている。
【0031】
さらに、車両前部は、車幅方向に所定間隔を隔てて、ダッシュパネル4の下部から車両前方へ延びる車体骨格部材である左右一対のフロントサイドフレーム5と、ヒンジピラー2の上部から車両前方へ延びる車体骨格部材である左右一対のエプロンメンバ6とを備えている。
加えて、車両前部は、図1に示すように、フロントサイドフレーム5に連結されたサブフレーム7、及び左右一対のサスペンションタワー8を備えている。
【0032】
より詳しくは、左右一対のヒンジピラー2は、図1に示すように、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が閉断面をなす閉断面部材であって、車幅方向内側に位置するインナパネルと、車幅方向外側に位置するアウタパネルとで構成されている。
【0033】
また、カウルパネル3は、図1に示すように、車室内外を車両前後方向に隔てるパネル部材であって、車幅方向の両端がヒンジピラー2の上部に接合されている。このカウルパネル3の前端には、図1に示すように、後述するサスペンションタワー8との隙間を覆うように、左右のエプロンメンバ6を連結するカウルフロントパネル9が接合されている。
【0034】
また、ダッシュパネル4は、図1及び図2に示すように、カウルパネル3よりも車両下方において、車室内外を車両前後方向に隔てるパネル部材である。このダッシュパネル4は、上端がカウルパネル3に接合されるとともに、車幅方向の両端がヒンジピラー2に接合されている。
【0035】
また、左右のフロントサイドフレーム5は、図1及び図2に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなす閉断面部材であって、車幅方向外側に位置するアウタパネルと、アウタパネルに対して車幅方向内側に位置するインナパネルとで構成されている。
【0036】
また、左右一対のエプロンメンバ6は、図1及び図2に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなす閉断面部材である。このエプロンメンバ6は、フロントサイドフレーム5に対して車両上方かつ車幅方向外側の位置において、後端に対して前端が車幅方向内側に位置するように配設されている。
なお、エプロンメンバ6の前端は、図示を省略したシュラウドアッパによって、車幅方向に連結されている。
【0037】
具体的には、エプロンメンバ6は、図3及び図4に示すように、車幅方向内側に位置するインナパネル61と、インナパネル61に対して車幅方向外側に位置するアウタパネル62とを、互いに接合して車両前後方向に延びる断面略矩形の閉断面を形成している。
【0038】
インナパネル61は、図4に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、エプロンメンバ6の上面となる上面部61aと、上面部61aにおける車幅方向内側の縁端から車両下方へ延設した内壁部61bとで一体形成されている。
【0039】
アウタパネル62は、図4に示すように、インナパネル61の上面部61aに対して所定間隔を隔てて車両下方に位置する下面部62aと、下面部62aにおける車幅方向外側の縁端から車両上方へ延設した外壁部62bとで一体形成されている。
【0040】
さらに、アウタパネル62には、図4に示すように、下面部62aの車幅方向内側から車両下方へ延設され、インナパネル61の内壁部61bに接合される下側フランジ部62cが一体形成されている。
加えて、アウタパネル62には、図4に示すように、外壁部62bの上端から車幅方向外側へ延設され、インナパネル61の上面部61aに接合される上側フランジ部62dが一体形成されている。
【0041】
また、サブフレーム7は、図1及び図2に示すように、フロントサイドフレーム5の車両下方に配設されるとともに、フロントサイドフレーム5の前部、及び後部にそれぞれ連結されている。このサブフレーム7は、図1及び図2に示すように、ナックル10の下端が連結されたロアアーム11を揺動自在に支持している。
【0042】
具体的には、サブフレーム7は、図1及び図2に示すように、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ7aと、左右のサイドメンバ7aを車幅方向に連結する前側サスクロスメンバ7b、及び後側サスクロスメンバ7cとで、平面視略井桁状に形成されている。
【0043】
左右のサイドメンバ7aは、図1及び図2に示すように、フロントサイドフレーム5の車両下方に配設されている。このサイドメンバ7aの後部には、図2に示すように、ロアアーム11の前端が揺動自在に連結されている。
【0044】
なお、サイドメンバ7aの前端には、図1及び図2に示すように、車両前方へ延びる左右一対のロアクラッシュカン12と、ロアクラッシュカン12の前端を車幅方向に連結するロアバンパレインフォースメント13とが連結されている。
【0045】
前側サスクロスメンバ7bは、図1及び図2に示すように、サイドメンバ7aの前端近傍を車幅方向に連結している。
後側サスクロスメンバ7cは、図1及び図2に示すように、サイドメンバ7aの後端を車幅方向に連結している。この後側サスクロスメンバ7cの後部には、図2に示すように、ロアアーム11の後端が揺動自在に連結されている。
【0046】
このような構成のサブフレーム7は、図1及び図2に示すように、サイドメンバ7aに立設された左右一対の前側連結部14、及び左右一対の後側連結部15を介して、フロントサイドフレーム5の下面に連結されている。
【0047】
前側連結部14は、図1及び図2に示すように、サイドメンバ7aの前端とフロントサイドフレーム5の前端とを車両上下方向に連結している。
【0048】
一方、後側連結部15は、図1及び図2に示すように、後述するサスペンションタワー8とサスダンパ16との連結箇所よりも僅かに車両後方の位置において、サイドメンバ7aの後端とフロントサイドフレーム5の後部とを車両上下方向に連結している。
【0049】
また、サスペンションタワー8は、図1に示すように、エプロンメンバ6における車両前後方向略中央よりも僅かに車両後方の部分と、その車両下方に位置するフロントサイドフレーム5とを連結している。
【0050】
このサスペンションタワー8の上面には、図1及び図2に示すように、サスダンパ16の上端が連結されている。なお、サスダンパ16の下端は、図1及び図2に示すように、ナックル10の上端に連結されている。
【0051】
より詳しくは、サスペンションタワー8は、図1図2、及び図4に示すように、車幅方向内側へ膨出した略半円筒状のタワー側面部8aと、タワー側面部8aの上方開口を覆うタワー上面部8bとで構成されている。
【0052】
タワー上面部8bは、図3及び図4に示すように、その上端が、エプロンメンバ6の上面部61aよりも僅かに車両上方に位置する形状に形成されている。
このタワー上面部8bは、図1及び図4に示すように、タワー側面部8aにおける内周面の上部と、タワー側面部8aの上方開口とを一体的に覆う形状に形成されている。
【0053】
さらに、タワー上面部8bは、図1及び図4に示すように、タワー側面部8aの内周面に重なり合う部分がエプロンメンバ6の内壁部61bに接合され、タワー側面部8aの上方開口を覆う部分が、エプロンメンバ6を覆うように上面部61aに接合されている。
なお、タワー上面部8bには、サスペンションタワー8とエプロンメンバ6とに跨るように、車幅方向に延びるビードが形成されている。
【0054】
ここで、上述した構成の車両前部を有する車両1において、サブフレーム7からフロントサイドフレーム5に入力された振動が、サスペンションタワー8を介して、エプロンメンバ6に伝達された際、エプロンメンバ6に生じる振動について簡単に説明する。
【0055】
まず、車両1が路面の凹凸などを通過した際、前輪(図示省略)に入力された荷重は、ロアアーム11を介して、サブフレーム7に振動として伝達される。このサブフレーム7の振動は、前側連結部14、及び後側連結部15を介して、フロントサイドフレーム5に伝達されたのち、サスペンションタワー8を介して、エプロンメンバ6に伝達される。
【0056】
この際、エプロンメンバ6に伝達される振動によって、エプロンメンバ6は、例えば、340Hzの共振周波数で車幅方向に振動する。つまり、エプロンメンバ6は、サブフレーム7の振動による共振が生じることになる。この場合、エプロンメンバ6は、後端及び前端を固定端として、車両前後方向略中央が最も大きく変位するように共振する。
【0057】
そして、エプロンメンバ6の共振による振動は、ヒンジピラー2やダッシュパネル4を介して、ロードノイズとして車室内に伝達されることになる。この際、車室内に伝達されるロードノイズの周波数域は、例えば、300Hzから400Hzである。
【0058】
このようなロードノイズとして車室内に伝達されるエプロンメンバ6の振動、特に、エプロンメンバ6の車幅方向成分の振動を抑えるために、車両1の車両前部は、図1から図4に示すように、左右のエプロンメンバ6の内部にそれぞれ振動抑制部材100を配設している。
【0059】
この振動抑制部材100は、サブフレーム7の振動がエプロンメンバ6に作用した際、エプロンメンバ6の共振周波数と略同じ周波数で共振するとともに、エプロンメンバ6の共振とは、逆位相かつ略同じ振幅で振動する振動特性を有するように構成されている。つまり、振動抑制部材100は、車幅方向の振動に対する動吸振器として機能するように構成されている。
【0060】
引き続き、上述した振動抑制部材100について、さらに詳述する。
振動抑制部材100は、図1図3、及び図4に示すように、サスダンパ16の上端よりも僅かに車両前方、すなわちエプロンメンバ6における車両前後方向略中央において、エプロンメンバ6の上面部61aに吊設されている。
【0061】
この振動抑制部材100は、図4及び図5に示すように、所定の厚みを有する金属製板材を三次元的に折曲した形状に形成され、上面部61aに吊設された状態において、下端が自由端となるように構成されている。
【0062】
具体的には、振動抑制部材100は、図4及び図5に示すように、エプロンメンバ6の上面部61aに対して車両下方側から接合される取付片部110と、取付片部110の一端を車両下方へ向けて折曲した折曲部120と、折曲部120をさらに車両下方へ延設した錘片部130とで一体形成されている。
【0063】
取付片部110は、図4に示すように、エプロンメンバ6の上面部61aを介して、サスペンションタワー8のタワー上面部8bに接合されている。この取付片部110は、図4及び図5に示すように、エプロンメンバ6の上面部61aに対して車両下方から接合される取付片本体111と、取付片本体111の前端縁、及び後端縁に立設された前後一対の第1フランジ112とで構成されている。
【0064】
詳述すると、取付片本体111は、図5に示すように、車両上下方向に厚みを有するとともに、車両前後方向に長い平面略矩形の平板状に形成されている。
第1フランジ112は、図5及び図6に示すように、取付片本体111の前端縁、及び後端縁に沿って車両下方へ向けて立設されている。なお、取付片本体111の主面である下面111aから第1フランジ112の下端までの車両上下方向の長さを、図6に示すように、立設長さH1とする。
【0065】
また、折曲部120は、図4から図6に示すように、取付片部110の取付片本体111に連続する折曲本体121と、折曲本体121の前端縁、及び後端縁に立設された前後一対の第2フランジ122とで構成されている。
なお、折曲部120は、動吸振器におけるバネとして機能するように形成されている。
【0066】
詳述すると、折曲本体121は、図4から図6に示すように、取付片本体111における車幅方向外側の縁端を、所定の曲げ半径で車両下方へ向けて湾曲させた形状に形成されている。なお、折曲本体121は、取付片本体111に略同じ板厚で湾曲されている。
【0067】
この折曲本体121は、図5及び図6に示すように、所定の曲げ半径が、車両前後方向の略中央近傍に対して、車両前方側、及び車両後方側へ向かうほど、漸次、大径になるように湾曲されている。
【0068】
第2フランジ122は、図5及び図6に示すように、第1フランジ112の車幅方向外側の端部から連続するとともに、折曲本体121の前端縁、及び後端縁に沿うように立設されている。
この第2フランジ122は、図6に示すように、正面視において、第1フランジ112の立設長さH1に比べて短い立設長さH2で、折曲本体121の内周面121aから車両下方、かつ車幅方向内側へ向けて立設されている。
【0069】
また、錘片部130は、図4から図6に示すように、折曲部120の折曲本体121に連続する略平板状の錘片本体131と、錘片本体131の前端縁、及び後端縁に立設された前後一対の第3フランジ132とで構成されている。
なお、錘片部130は、動吸振器における質量体として機能するように形成されている。
【0070】
詳述すると、錘片本体131は、図4から図6に示すように、折曲部120の折曲本体121の下端から車両下方、かつ僅かに車幅方向外側へ向けて延設されている。この錘片本体131は、図5に示すように、取付片部110の取付片本体111と略同じ肉厚で、車両上下方向に長い側面視略矩形の平板状に形成されている。
【0071】
さらに、錘片本体131には、図5に示すように、エプロンメンバ6の上面部61aと、振動抑制部材100との相対位置を位置決めするために用いられる位置決め孔130aが、車両上下方向に沿って2つ開口形成されている。
【0072】
第3フランジ132は、図5及び図6に示すように、第2フランジ122の下端から連続するとともに、錘片本体131の前端縁、及び後端縁に沿うように車幅方向内側へ向けて立設されている。
この第3フランジ132は、図5及び図6に示すように、第2フランジ122に連続する上部132aと、上部132aに連続する下部132bとで構成されている。
【0073】
さらに、第3フランジ132は、折曲部120の内周面121aに連続する錘片本体131の主面131aからの立設高さが、上部132aと下部132bとで異なる正面視略段付き形状に形成されている。
【0074】
より詳しくは、第3フランジ132の上部132aは、図6に示すように、正面視において、錘片本体131の主面131aからの立設長さH3が、第1フランジ112の立設長さH1と略同じになるように形成されている。
一方、第3フランジ132の下部132bは、図6に示すように、正面視において、上部132aから車両下方へ向かうほど、車幅方向内側へ向けて立設されている。
【0075】
そして、第3フランジ132の下部132bは、図6に示すように、正面視において、錘片本体131の主面131aからの立設長さH4が、錘片本体131における車両上下方向略中央よりも車両下方の範囲で最大となるように形成されている。
なお、下部132bの立設長さH4は、図6に示すように、上部132aの立設長さH3に対して倍近い高さに設定されている。
【0076】
上述したような構成の振動抑制部材100は、エプロンメンバ6の共振周波数と略同じ周波数で共振するとともに、エプロンメンバ6の共振とは、逆位相かつ略同じ振幅で振動する振動特性が得られるように、折曲部120の形状、及び錘片部130の形状が調整されている。
【0077】
具体的には、振動抑制部材100は、取付片部110、折曲部120、及び錘片部130の協働によって、所望される振動特性が得られるように、第2フランジ122の立設長さH2が調整されている。
さらに、振動抑制部材100は、取付片部110、折曲部120、及び錘片部130の協働によって、所望される振動特性が得られるように、錘片本体131の車両上下方向長さが調整されている。
加えて、振動抑制部材100は、取付片部110、折曲部120、及び錘片部130の協働によって、所望される振動特性が得られるように、第3フランジ132の立設長さH4が調整されている。
【0078】
ここで、例えば、振動抑制部材100を設けていない状態において、エプロンメンバ6が、サブフレーム7の振動によって、共振周波数340Hzで車幅方向に共振するものとする。このようなエプロンメンバ6の上面部61aに吊設された振動抑制部材100が、サブフレーム7の振動によって車幅方向に共振した際の振動特性について説明する。
【0079】
なお、比較例として、上述した振動抑制部材100比べて、車両上下方向の長さが7.5mm長い錘片部を有する振動抑制部材の振動特性についても説明する。
さらに、振動抑制部材100を設けていないエプロンメンバ6が、サブフレーム7の振動によって共振した際の共振周波数340Hzを、振動抑制部材100に所望される周波数を示す目標周波数T1とする。
【0080】
まず、サブフレーム7の振動が作用した場合、比較例の振動抑制部材は、図7(a)の細い実線で示したように、目標周波数T1よりも大幅に低い共振周波数(振動抑制部材のイナータンスがピークとなる周波数)276Hzで振動しており、このピーク値に対して目標周波数T1でのイナータンスが大幅に低い値になっている。
【0081】
したがって、比較例の振動抑制部材が目標周波数T1でエプロンメンバ6に与える逆位相の振動エネルギーは低く、サスペンションタワー8からの振動が入力される部分におけるエプロンメンバ6の変位量は、図7(b)の細い実線で示したように、目標周波数T1近傍において目標変位量T2よりも高い値となっている。
【0082】
なお、目標変位量T2は、エプロンメンバ6の変位量の上限値を示すものであり、これを上回る場合、サブフレーム7の振動が不快なロードノイズとして車室内に伝達されるものとする。
このように、比較例では、サブフレーム7の振動によって生じるエプロンメンバ6の目標周波数T1近傍の振動を抑制できず、サブフレーム7の振動がロードノイズとして車室内に伝達されやすい状態であるといえる。
【0083】
これに対して、上述した振動抑制部材100は、図7(a)の太い実線で示したように、錘片部130の重量、及び重心位置が最適化されている(軽量になり、かつ重心位置も上がっている)ため、共振周波数が比較例に対して高い側に移動し、目標周波数T1に略同じといえる共振周波数338Hzで振動している。
【0084】
したがって、振動抑制部材100が目標周波数T1でエプロンメンバ6に与える逆位相の振動エネルギーは比較例の振動抑制部材に対して高くなり、サスペンションタワー8からの振動が入力される部分におけるエプロンメンバ6の目標周波数T1での変位量は、図7(b)の太い実線で示したように、図7(b)中の細い実線で示した値より小さく、かつ目標変位量T2と略同じ値まで低減できている。
【0085】
このため、上述した振動抑制部材100では、比較例に比べて、エプロンメンバ6の共振が生じ難く、かつサブフレーム7の振動がロードノイズとして車室内に伝達され難いといえる。つまり、実施例1の振動抑制部材100は、車幅方向におけるエプロンメンバ6の共振を効果的に抑制していることがわかる。
【0086】
以上のように、車両1の前部車体構造は、車両前部に配設されたサブフレーム7と、フロントサイドフレーム5を介して、サブフレーム7に連結された左右一対のサスペンションタワー8とを備えている。さらに、車両1の前部車体構造は、車両前後方向に延びる略矩形の閉断面形状で、サスペンションタワー8の上面が連結された左右一対のエプロンメンバ6を備えている。
【0087】
この車両1の前部車体構造は、エプロンメンバ6に固定されるとともに、エプロンメンバ6の共振周波数と略同じ共振周波数で、エプロンメンバ6の振動の位相に対して逆位相で振動する振動抑制部材100を備えたものである。
そして、振動抑制部材100は、エプロンメンバ6の車両前後方向略中央において、エプロンメンバ6の上面部61aに固定されたものである。
【0088】
この発明によれば、車両1の前部車体構造は、サブフレーム7からの振動が作用した際、振動抑制部材100が逆位相で振動することで、サブフレーム7からの振動によって生じるエプロンメンバ6の共振を抑えることができる。
【0089】
さらに、閉断面部材であるエプロンメンバ6の上面部61aに振動抑制部材100を設けたことにより、車両1の前部車体構造は、エプロンメンバ6とサスペンションタワー8とを補強部材で連結した場合に比べて、接合箇所を低減できるとともに、重量増加を抑制することができる。
【0090】
よって、車両1の前部車体構造は、車両重量の増加を抑えて、車室内へのロードノイズの侵入を抑制することができる。加えて、エプロンメンバ6の内部に振動抑制部材100が位置するため、車両1の前部車体構造は、周辺部品のレイアウトが、振動抑制部材100によって阻害されることを防止できる。
【0091】
また、振動抑制部材100は、エプロンメンバ6の上面部61aに吊設されるとともに、車幅方向へ振動可能な略板状材で構成されたものである。
この構成によれば、車両1の前部車体構造は、車幅方向成分の振動を簡素な構成で効果的に抑えることができる。
【0092】
また、振動抑制部材100は、エプロンメンバ6に固定される略平板状の取付片部110と、取付片部110の主面に直交する車両上下方向へ向けて、取付片部110の縁端を折り曲げた折曲部120と、折曲部120から車両上下方向へ向けて延設された略平板状の錘片部130とで一体形成されたものである。
【0093】
この構成によれば、折曲部120がバネとして機能し、錘片部130が質量体として機能するため、車両1の前部車体構造は、振動抑制材を動吸振器として機能させることができる。このため、車両1の前部車体構造は、比較的簡素な構成の振動抑制部材100であっても、エプロンメンバ6の共振を安定して抑えることができる。
【0094】
また、取付片部110は、エプロンメンバ6の内面に固定される取付片本体111と、折曲部120に連続する取付片本体111の縁端に立設された一対の第1フランジ112とを備えたものである。
さらに、折曲部120は、第1フランジ112から連続して縁端に立設された一対の第2フランジ122を備えたものである。
加えて、錘片部130は、第2フランジ122から連続して縁端に立設された一対の第3フランジ132を備えたものである。
【0095】
この構成によれば、車両1の前部車体構造は、第2フランジ122によって、折曲部120の剛性が向上するため、第2フランジを設けていない場合に比べて、振動抑制部材100の振動特性を高周波側に調整することができる。
【0096】
さらに、第3フランジ132により、車両1の前部車体構造は、振動抑制部材100の大型化を抑えて、錘片部130の重量を増加することができる。このため、車両1の前部車体構造は、折曲部120からの延設長さが短い錘片部130であっても、動吸振器の質量体として確実に機能させることができる。
よって、車両1の前部車体構造は、サブフレーム7からの振動によって生じるエプロンメンバ6の共振を安定して抑えることができる。
【0097】
また、第3フランジ132の下部132bは、第3フランジ132の上部132aに対して、錘片部130の主面131aからの立設長さH4が長い形状に形成されたものである。
この構成によれば、車両1の前部車体構造は、錘片部130の重心位置を、折曲部120からより離間した位置に調整することができる。
【0098】
このため、車両1の前部車体構造は、錘片部130を動吸振器の質量体としてより確実に機能させることができる。
よって、車両1の前部車体構造は、サブフレーム7からの振動によって生じるエプロンメンバ6の共振をより確実に抑えることができる。
【実施例2】
【0099】
次に、上述した実施例1の振動抑制部材100に対して、折曲部の形状が異なる振動抑制部材100について、図8及び図9を用いて説明する。
なお、図8は実施例2における振動抑制部材100の外観斜視図を示し、図9は実施例2における車幅方向成分の振動特性を説明する説明図を示している。
【0100】
さらに、図9(a)は振動抑制部材100の共振周波数を説明する説明図を示している。なお、図9(a)中の縦軸は、各周波数でのイナータンス、ここでは、各周波数でエプロンメンバ6に逆位相で与える振動エネルギーを示している。
また、図9(b)はサスペンションタワー8からの振動が入力される部分におけるエプロンメンバ6の変位量を説明する説明図を示している。
また、上述した実施例1と同じ構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0101】
実施例2の振動抑制部材100は、実施例1と同様に、エプロンメンバ6の上面部61aにおける車両前後方向略中央に吊設されている。この振動抑制部材100は、図8に示すように、取付片部110と、折曲部120と、錘片部130とで一体形成されている。
【0102】
さらに、実施例2の折曲部120には、図8に示すように、折曲本体121の車両前後方向略中央において、取付片部110の取付片本体111と錘片部130の錘片本体131とに跨るように車幅方向に延びるビード121bが、車幅方向内側、かつ車両下方へ向けて突設されている。
このビード121bは、振動抑制部材100の剛性を向上させて、共振周波数を高周波側へ調節するために設けられている。
【0103】
そして、振動抑制部材100は、実施例1と同様に、エプロンメンバ6の共振周波数と略同じ周波数で共振するとともに、エプロンメンバ6の共振とは、逆位相かつ略同じ振幅で振動する振動特性が得られるように、折曲部120の形状、及び錘片部130の形状が調整されている。
【0104】
次に、実施例2の振動抑制部材100が、サブフレーム7の振動によって車幅方向に共振した際の振動特性について、実施例1の振動抑制部材100の振動特性と比較しながら説明する。
【0105】
サブフレーム7の振動が作用した場合、実施例2の振動抑制部材100は、図9(a)の太い実線で示したように、実施例1の共振周波数338Hzよりも僅かに高く、かつ実施例1に比べて目標周波数T1に近い共振周波数339Hzで共振している。
【0106】
この際、サスペンションタワー8からの振動が入力される部分におけるエプロンメンバ6の変位量は、図9(b)の太い実線で示したように、周波数339Hz及び目標周波数T1において、実施例1(図7(b)参照)と略同等か僅かに下回る値になっている。
つまり、実施例2の振動抑制部材100は、ビード121bを設けたことにより、車幅方向におけるエプロンメンバ6の共振をより効果的に抑制しているといえる。
【0107】
以上のように、車両1の前部車体構造は、実施例1と同様に、車両重量の増加を抑えて、車室内へのロードノイズの侵入を抑制することができる。
また、振動抑制部材100は、折曲部120の車両前後方向略中央に位置するとともに、取付片部110と錘片部130とに跨って突設されたビード121bを備えたものである。
【0108】
この構成によれば、車両1の前部車体構造は、振動抑制部材100の折曲部120における剛性が向上するため、ビードを設けていない場合に比べて、振動抑制部材100の振動特性をより高周波側に調整することができる。
よって、車両1の前部車体構造は、サブフレーム7からの振動によって生じるエプロンメンバ6の共振をさらに確実に抑えることができる。
【0109】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の内面の一つは、実施形態の上面部61aの下面に対応し、
以下同様に、
直交方向は、車両上下方向に対応し、
第3フランジにおける直交方向の他端側近傍は、第3フランジ132の下部132bに対応し、
第3フランジにおける直交方向の一端側近傍は、第3フランジ132の上部132aに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0110】
例えば、上述した実施形態において、取付片部110の車幅方向外側に折曲部120、及び錘片部130を有する振動抑制部材100としたが、これに限定せず、取付片部の車幅方向内側に折曲部、及び錘片部を有する振動抑制部材であってもよい。
【0111】
また、エプロンメンバ6の上面部61aに振動抑制部材100を吊設したが、これに限定せず、取付片部110に対して折曲部120、及び錘片部130を車両上方側に設けた振動抑制部材100を、エプロンメンバ6の下面部62aに固定してもよい。
【0112】
また、エプロンメンバ6における車幅方向の共振を抑制するために、車幅方向に共振する振動抑制部材100をエプロンメンバ6に設けたが、これに限定せず、エプロンメンバ6における車両上下方向の共振を抑制するために、車両上下方向に共振する振動抑制部材をエプロンメンバ6に設けてもよい。
この場合、エプロンメンバ6の内壁部61bまたは外壁部62bに振動抑制部材を固定するとともに、振動抑制部材の取付片部における上端または下端に折曲部及び錘片部を形成する。
【0113】
また、振動抑制部材100の錘片部130に2つの位置決め孔130aを設けたが、これに限定せず、1つの位置決め孔が設けられた錘片部、あるいは位置決め孔が設けられていない錘片部としてもよい。これにより、車両1の前部車体構造は、錘片部の重量を重くできるため、錘片部における車両上下方向の長さを抑えて、小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0114】
1…車両
5…フロントサイドフレーム
6…エプロンメンバ
7…サブフレーム
8…サスペンションタワー
61a…上面部
100…振動抑制部材
110…取付片部
111…取付片本体
112…第1フランジ
120…折曲部
121b…ビード
122…第2フランジ
130…錘片部
132…第3フランジ
132a…上部
132b…下部
H4…立設長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9