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特許7439633トロイダル型無段変速機およびトロイダル無段変速機の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】トロイダル型無段変速機およびトロイダル無段変速機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 15/38 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F16H15/38
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020078014
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021173344
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】吉見 光
(72)【発明者】
【氏名】喜多 昌大
(72)【発明者】
【氏名】井上 智博
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-014604(JP,U)
【文献】実開昭59-157119(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、前記軸にボールスプラインによってスプライン結合されて前記軸と一体で回転する第1ディスクと、前記第1ディスクに対向して設けられた第2ディスクと、前記第1ディスクと第2ディスクとに挟持されるパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記軸の外径面と前記第1ディスクの内径面との間または前記ボールスプラインのボールスプライン溝の端部に、前記第1ディスクの軸方向の端部開口から少なくとも一部が挿入されることで、前記ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ挿入部材と、
少なくとも前記軸の軸方向でかつ前記ボールスプライン溝から離間する方向への前記挿入部材の移動を規制する規制手段とを備え
前記規制手段は、前記第1ディスクの前記パワーローラと逆側の背面側に設けられた凹部に配され、かつ前記軸方向でかつ前記ボールスプライン溝から離間する方向および前記軸の径方向への移動が規制された内フランジを有し、
前記内フランジの内周縁部に当接部が設けられ、
前記当接部は、前記軸の軸方向と直交する方向(径方向)と平行な環状の平面である第1当接面と、前記軸の軸方向と平行な円筒面である第2当接面とを有しており、これら第1当接面と第2当接面とによって断面L字形に形成され、
前記挿入部材は、前記軸を挿通可能とする円筒状に形成されるとともに、前記軸の径方向に分解可能および組立可能であり、さらに、小径部とこの小径部より大径の大径部とを有し、
前記当接部が前記大径部に当接し、
前記小径部は、前記軸の外径面と前記第1ディスクの内径面との間または前記ボールスプラインのボールスプライン溝の端部に挿入されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記ボールスプラインのボールと前記挿入部材との間の前記軸方向の距離が長くなるように、前記第1ディスクおよび/または前記軸が前記軸方向に移動する移動長さより、前記挿入部材の前記端部開口からの挿入長さが長いことを特徴とする請求項1に記載のトロ
イダル型無段変速機。
【請求項3】
軸と、前記軸にボールスプラインによってスプライン結合されて前記軸と一体で回転する第1ディスクと、前記第1ディスクに対向して設けられた第2ディスクと、前記第1ディスクと第2ディスクとに挟持されるパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機を製造するに際し、
前記軸の外径面と前記第1ディスクの内径面との間または前記ボールスプラインのボールスプライン溝の端部に、前記第1ディスクの軸方向の端部開口から挿入部材の少なくとも一部を挿入することで、前記ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ挿入工程と、
少なくとも前記軸の軸方向でかつ前記ボールスプライン溝から離間する方向への前記挿入部材の移動を規制手段によって規制する規制工程とを有し、
前記規制手段は、前記第1ディスクの前記パワーローラと逆側の背面側に設けられた凹部に配され、かつ前記軸方向でかつ前記ボールスプライン溝から離間する方向および前記軸の径方向への移動が規制された内フランジを有し、
前記内フランジの内周縁部に当接部が設けられ、
前記当接部は、前記軸の軸方向と直交する方向(径方向)と平行な環状の平面である第1当接面と、前記軸の軸方向と平行な円筒面である第2当接面とを有しており、これら第1当接面と第2当接面とによって断面L字形に形成され、
前記挿入部材は、前記軸を挿通可能とする円筒状に形成されるとともに、前記軸の径方向に分解可能および組立可能であり、さらに、小径部とこの小径部より大径の大径部とを有し、
前記挿入工程では、前記挿入部材を前記軸の径方向に円筒状に組み立てて前記軸に外挿したうえで、前記挿入部材の前記小径部を前記軸の外径面と前記第1ディスクの内径面との間または前記ボールスプライン溝の端部に挿入し
前記規制工程では、前記当接部を前記挿入部材の前記大径部に当接することを特徴とするトロイダル型無段変速機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機の発電機または各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトロイダル型無段変速機の一例として特許文献1に記載ものが知られている。
このトロイダル型無段変速機は、図7に示すように、いわゆるダブルキャビティ型のハーフトロイダル型無段変速機であり、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが、入力軸1の外周に取り付けられて構成されている。
また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン係合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図7中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介して図示しないハウジング内に支持されており、これにより、軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、入力側ディスク2,2は、入力軸1と共に回転するように、その入力軸1の両端部にボールスプライン6,6を介して支持されている。また、入力側ディスク2,2の内面(凹面)2a,2aと出力ディスク3,3の内面(凹面)3a,3aとの間には、パワーローラ11が回転自在に挟持されている。
【0005】
図7中、左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間には第1の皿板ばね8が設けられ、図7中右側に位置する入力側ディスク2とローディングナット9との間には第2の皿ばね10が設けられている。これらの皿板ばね8,10は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面との当接部に押圧力を付与する。
【0006】
したがって、上記構成のトロイダル型無段変速機では、駆動軸22から入力軸1に回転力が入力されると、入力軸1と一体で入力側ディスク2,2が回転し、その回転がパワーローラ11,11によって出力側ディスク3,3に一定の変速比で伝達される。また、出力側ディスク3,3の回転は、出力歯車4から伝達歯車15などを介して、図示しない出力軸に伝達される。
【0007】
また、入力側ディスク2の中心孔の内側(入力側ディスク2の小径側の内周面)には座繰り50が設けられ、この座繰り50に、当該座繰り50を塞ぐように筒状の閉塞部材52が圧入されている。これによって、ボールスプライン6のボールをその転動面にとどめておく、つまりボールスプライン溝からのボールの脱落を防止する止め輪としても機能している。
【0008】
また、一般的なトロイダル型無段変速機のレイアウトでは、上述した座繰りの有る無しにかかわらず、ボールスプラインのボールの脱落を防止するために、ボールスプライン溝において、入力側ディスクまたは入力軸に止め輪が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-4114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ボールスプライン溝に止め輪を設置するのは困難であるため、トロイダル型無段変速機の組立性が悪くなる。すなわち、トロイダル型無段変速機の組立の際に止め輪を設置する場合、入力軸に入力側ディスクを組付けた後、ボールスプライン溝にボールを配したうえで、ボールスプライン溝の端部においてボールを挟むようにして、入力軸に止め輪を設置する必要がある。したがって、止め輪を設置する入力軸の部位を入力側ディスクから露出させるために、つまりボールスプライン溝の端部を露出させるために、入力側ディスクをパワーローラ側に移動させる必要がある。しかし、入力側ディスクがパワーローラに当たらないように調整しながら、止め輪を設置する入力軸の部位を入力側ディスクから露出させるのは困難であり、この結果、組立性が悪くなる。
【0011】
一方、特許文献1に記載のトロイダル型無段変速機では、前記筒状の閉塞部材を入力側ディスクに設けられている座繰りに圧入するため、入力側ディスクを移動させる必要はないが、閉塞部材は圧入によって固定されているため、取外し性が悪く、また、パワーローラの押圧力により入力側ディスクが変形した際に閉塞部材が座繰りから脱落する可能性がある。
また、前記閉塞部材を座繰りにすきまばめによって挿入すると、閉塞部材が入力軸の軸方向に移動する虞があるため、ボールスプラインのボールをボールスプライン溝に位置決めすることができず、ボールスプライン溝の端部から脱落する虞がある。
さらに、入力軸の一部、特に入力軸の端部に筒状の閉塞部材の内径より大径の大径部がある場合、閉塞部材を入力軸に外挿できず、この結果、止め輪を用いないと、ボールスプライン溝からのボールの脱落を防止することは困難である。
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、軸と第1ディスクとを結合するボールスプラインにおけるボールの脱落を防止できるともに組立性もよいトロイダル型無段変速機およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明のトロイダル型無段変速機は、軸と、前記軸にボールスプラインによってスプライン結合されて前記軸と一体で回転する第1ディスクと、前記第1ディスクに対向して設けられた第2ディスクと、前記第1ディスクと第2ディスクとに挟持されるパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記軸の外径面と前記第1ディスクの内径面との間または前記ボールスプラインのスプライン溝の端部に、前記第1ディスクの軸方向の端部開口から少なくとも一部が挿入されることで、前記ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ挿入部材と、
少なくとも前記軸の軸方向でかつ前記ボールスプライン溝から離間する方向への前記挿入部材の移動を規制する規制手段とを備え、
前記挿入部材は、前記軸を挿通可能とする円筒状に形成されるとともに、前記軸の径方向に分解可能および組立可能であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のトロイダル型無段変速機の製造方法は、軸と、前記軸にボールスプラインによってスプライン結合されて前記軸と一体で回転する第1ディスクと、前記第1ディスクに対向して設けられた第2ディスクと、前記第1ディスクと第2ディスクとに挟持されるパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機を製造するに際し、
前記軸の外径面と前記第1ディスクの内径面との間または前記ボールスプラインのボールスプライン溝の端部に、前記第1ディスクの軸方向の端部開口から挿入部材の少なくとも一部を挿入することで、前記ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ挿入工程と、
少なくとも前記軸の軸方向でかつ前記ボールスプライン溝から離間する方向への前記挿入部材の移動を規制手段によって規制する規制工程とを有し、
前記挿入部材は、前記軸を挿通可能とする円筒状に形成されるとともに、前記軸の径方向に分解可能および組立可能であり、
前記挿入工程では、前記挿入部材を前記軸の径方向に円筒状に組み立てて前記軸に外挿したうえで、前記挿入部材の少なくとも一部を前記軸の外径面と前記第1ディスクの内径面との間または前記ボールスプライン溝の端部に挿入することを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明のトロイダル型無段変速機において、前記第1ディスクが入力側ディスク、第2ディスクが出力側ディスクであってもよいし、逆に前記第1ディスクが出力側ディスク、第2ディスクが入力側ディスクであってもよい。第1ディスクが入力側ディスクである場合、軸は入力軸となり、第1ディスクが出力側ディスクである場合、軸は出力軸となる。
また、第1ディスクの軸方向の端部開口は軸の軸方向に離間して2つあるが、少なくとも一方の端部開口(パワーローラ側と逆側にある端部開口)から挿入部材を挿入すればよく、他方の端部開口には止め輪を設置してもよい。
さらに、「前記ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ」とは、挿入部材の少なくとも一部が、ボールスプライン溝の端部に挿入されることによって、ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ場合、ボールスプライン溝の端部に当接することによって、ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ場合、ボールスプライン溝の端部に近接することによって、ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ場合を含む意味である。
【0016】
本発明においては、軸の外径面と第1ディスクの内径面との間または前記ボールスプライン溝の端部に、第1ディスクの軸方向の端部開口から挿入部材の少なくとも一部が挿入されることで、ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐ。この挿入部材は規制手段によって少なくとも軸の軸方向でかつボールスプライン溝から離間する方向への移動が規制されるので、この移動が規制された挿入部材によって、ボールスプライン溝からのボールの脱落を防止できる。
また、挿入部材は従来と異なり圧入によって固定されていないため、取外し性も良く、パワーローラの押圧力により第1ディスクが変形した際に挿入部材が第1ディスクの端部開口から脱落する虞も殆どない。
【0017】
さらに、挿入部材は、軸を挿通可能とする円筒状に形成されるとともに、軸の径方向に分解可能および組立可能であるので、軸の一部、特に軸の端部に大径部があっても軸の所定位置、つまりボールスプライン溝に近い位置において、挿入部材を軸を囲むようにして径方向に組み立てることによって、挿入部材を軸に容易に外挿して、当該挿入部材の少なくとも一部を軸の外径面と第1ディスクの内径面との間に、第1ディスクの軸方向の端部開口から挿入できる。
【0018】
このように、本発明によれば、挿入部材と、軸の軸方向でかつボールスプライン溝から離間する方向への挿入部材の移動を規制する規制手段とを備え、さらに、挿入部材は、軸を挿通可能とする円筒状に形成されるとともに、軸の径方向に分解可能および組立可能であるため、ボールスプラインにおけるボールの脱落を防止できるともに組立性もよくなる。
【0019】
また、本発明の前記構成において、前記ボールスプラインのボールと前記挿入部材との間の前記軸方向の距離が長くなるように、前記第1ディスクおよび/または前記軸が前記軸方向に移動する移動長さより、前記挿入部材の前記端部開口からの挿入長さが長くてもよい。
【0020】
このような構成によれば、第1ディスクおよび/または軸が、ボールスプラインのボールと挿入部材との間の軸方向の距離が長くなるように移動しても、挿入部材の少なくとも一部は軸の外径面と第1ディスクの内径面との間に存在し続けて、ボールスプライン溝の端部の少なくとも一部を塞ぐので、当該ボールスプライン溝の端部開口が開放されることがない。したがって、ボールスプライン溝からボールが脱落することがない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、軸と第1ディスクとを結合するボールスプラインにおけるボールの脱落を防止できるともに組立性もよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、半平断面図である。
図2】同、要部の半平断面図である。
図3】同、要部の斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、要部の半平断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、要部の半平断面図である。
図6】同、要部の斜視図である。
図7】従来のトロイダル型無段変速機の一例を示すもので、平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示す半平断面図である。なお、本実施形態において図7に示す従来のトロイダル型無段変速機と共通構成には同一符号を付してその説明を省略する場合もある。
本実施形態のトロイダル型無段変速機は、いわゆるダブルキャビティ型のハーフトロイダル型無段変速機であり、2つの入力側ディスク(第1ディスク)2,2と2つの出力側ディスク(第2ディスク)3,3とが、入力軸(軸)1の外周に取り付けられて構成されている。
また、出力側ディスク3,3の背面には、円筒状の出力歯車4A,4Aが出力側ディスク3,3と同軸かつ一体的に設けられている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。
【0024】
また、一方(図1において右方)の入力側ディスク2は、入力軸1と共に回転するように、その入力軸1の一端部にボールスプライン6を介して支持されている。したがって、一方の入力側ディスク2は入力軸1の軸方向外方(図1において左方)に移動可能となっている。ボールスプライン6は、図1図3に示すように、入力側ディスク2の内径面に、軸方向に延在しかつ周方向に所定間隔で形成された複数のボールスプライン溝6aと、入力軸1の外径面に、軸方向に延在しかつ周方向に所定間隔で形成された複数のボールスプライン溝6bと、これらボールスプライン溝6a,6b間に転動自在に設けられた複数のボール6cとを備えている。
ボールスプライン溝6a,6bの一端部(図2において右端部)は、入力側ディスク2の内径の端部開口2bから所定距離だけ軸方向内方(図2において左方)に入り込んだ位置で止められており、入力側ディスク2の内径の軸方向全体に亙って設けられていない。
【0025】
また、他方(図1において左方)の入力側ディスク2は入力軸1の他端部に外嵌され、入力軸1と共に回転するようになっている。また、他方の入力側ディスク2は、入力軸1の他端部に形成された大径部1bに当接され、これによって、入力軸1の軸方向外方(図1において左方)への移動が規制されている。
また、入力側ディスク2,2の内面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内面(凹面)3a,3aとの間には、パワーローラ11が回転自在に挟持されている。
【0026】
また、入力軸1は、図1中右側に位置する入力側ディスク2の背面側(図1において右側)に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、図示しない駆動軸により回転駆動されるようになっている。
図2に示すように、押圧装置12は、図示しない駆動軸とともに回転するカム板20と、保持器21により転動可能に保持された複数個のカムローラ(ころ)22とを備えている。カム板20の片側面(図2の左側面)には、円周方向に亙る凹凸(波状部)であるカム面20aが形成され、入力側ディスク2の外側面(図2の右側面)にも、同様の形状を有するカム面2dが形成されている。
【0027】
このような押圧装置12では、入力側ディスク2およびカム板20の回転トルクが増加すると、カム作用によって入力側ディスク2がカム板20から離れる向きに押圧される。
そして、入力軸1に回転力が入力されると、入力軸1と一体で入力側ディスク2,2が回転し、その回転がパワーローラ11,11によって出力側ディスク3,3に一定の変速比で伝達される。また、出力側ディスク3,3の回転は、出力歯車4から図示しない伝達歯車などを介して、図示しない出力軸に伝達される。
【0028】
また、入力軸1の一端部(図2において右端部)には、スラスト軸受31が外嵌されている。スラスト軸受31は内輪32と、外輪33と、内輪32と外輪33との間に介在する転動体34とを有している。内輪32は、入力軸1に対して軸方向外方(図2において右方)への移動が規制されるように入力軸1に嵌合されている。例えば、内輪32は、入力軸1の端部に固定されたナット35によって、軸方向外方への移動が規制されるように入力軸1に位置決め固定されている。
【0029】
また、外輪33とカム板20との間には、略円筒状のカムフランジサポート25が設けられている。カムフランジサポート25は軸方向の一方(図2において右方)の端部に、径方向外側に延出する外フランジ25aを有し、他方(図2において左方)の端部に、径方向内側に延出する内フランジ25bを有している。
【0030】
カムフランジサポート25の一端部は外輪33の一端部に設けられたフランジ部33aに当接し、外フランジ25aはカム板20の背面に当接している。また、カムフランジサポート25の他端部内径側には、入力側ディスク2に押圧装置12を介して予圧を付与する皿ばね28が設けられ、この皿ばね28の外周部はカムフランジサポート25の端部内径側に設けられた当接部25cと、外輪33の他方(図2において左方)の端面に圧接している。
スラスト軸受31はナット35によって入力軸1の端部に軸方向外方(図2において右方)への移動が規制された状態で固定されているので、皿ばね28の付勢力によってカムフランジサポート25が軸方向内方(図1において左方)に押圧され、これによって、押圧装置12を介して入力側ディスク2がパワーローラ11に押し付けられている。
【0031】
また、本実施の形態のトロイダル型無段変速機は、図1および図2に示すように、挿入部材40と規制手段50とを備えている。
挿入部材40は、図2に示すように、入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから少なくとも一部が挿入されることで、ボールスプライン6のボールスプライン溝6a,6bの端部(図2において右端部)の少なくとも一部を塞ぐものである。つまり、上述したように、ボールスプライン溝6a,6bの一端部(図2において右端部)は、入力側ディスク2の内径の端部開口2bから所定距離だけ軸方向内方(図2において左方)に入り込んだ位置で止められており、入力側ディスク2の内径の軸方向全体に亙って設けられていないため、入力側ディスク2の端部開口2bと、ボールスプライン溝6a,6bの一端部との間に、挿入部材40の少なくとも一部が挿入されることで、ボールスプライン6のボールスプライン溝6a,6bの端部(図2において右端部)の少なくとも一部を塞ぐようになっている。
【0032】
なお、本実施の形態では、挿入部材40の少なくとも一部を入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に挿入したが、ボールスプライン溝6a,6bが入力側ディスク2の内径の軸方向全体に亙って設けられている場合、挿入部材40の少なくとも一部を入力側ディスク2の端部開口2bからボールスプライン溝6a,6bの一端部に挿入すればよい。この場合、挿入部材は、周方向に所定間隔で複数設けられているボールスプライン溝6a,6bの一端部に挿入可能な挿入片を複数有することになる。
【0033】
挿入部材40は、略円筒状に形成され、小径部40aとこの小径部40aより大径の大径部40bとを有している。小径部40aと大径部40bとは同軸に形成され、内径は互いに等しくなっているが、外径は大径部40bの方が大きくなっている。また、大径部40bの外径は、入力側ディスク2の内径より大きくなっており、これによって、大径部40bは入力側ディスク2の内径面と入力軸1の外径面との間に挿入不可となっている。小径部40aの外径は入力側ディスク2の内径より小さくなっており、これによって、小径部40aは入力側ディスク2の内径面と入力軸1の外径面との間に挿入可能となっている。つまり、入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入部材40の一部である小径部40aが挿入可能となっている。
また、挿入部材40の内径は、入力軸1の外径とほぼ等しいか若干大きくなっており、入力軸1に対して軸方向にスライド可能となっている。
【0034】
また、挿入部材40の小径部40aの内径面と外径面との間の厚さは、ボールスプライン溝6a,6bの高さ(ボールスプライン溝6a,6bの底面間の距離)の半分、すなわちボール6cの半径より長くなっており、これによって、入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入部材40の小径部40aが挿入されることで、ボールスプライン溝6a,6bの一方(図2において右方)の端部の少なくとも一部(本実施の形態では、ボールスプライン溝6a,6bの高さの略半分か、またはそれ以上)を塞ぐようになっている。
また、ボールスプライン溝6a,6bの他方(図2において左方)の端部側において、入力軸1の外径面には止め輪43が外嵌されており、これによってボールスプライン溝6a,6bの他方の端部からのボール6cの脱落を防止している。なお、止め輪43は、ボールスプライン溝6a,6bの他方(図2において左方)の端部側において、入力側ディスク2の内径面に周方向に沿う周溝を設け、この周溝に止め輪43を嵌め込んでもよい。
【0035】
規制手段50は、入力軸1の軸方向でかつボールスプライン溝6a,6bから離間する方向(軸方向外方)および径方向に離間する方向(径方向外方)への挿入部材40の移動を規制するものであり、本実施形態では、上述したカムフランジサポート25の内フランジ25bによって構成されている。
すなわち、内フランジ25bは、入力側ディスク2の背面側に設けられた略円孔状の凹部2cに配され、挿入部材40に向けて延在している。この内フランジ25bの内周縁部に断面L字形の当接部51が設けられている。当接部51は、入力軸1の軸方向と直交する方向(径方向)と平行な環状の平面である第1当接面51aと、入力軸1の軸方向と平行な円筒面である第2当接面51bとを有しており、これら第1当接面51aと第2当接面51bとによって断面L字形に形成されている。
【0036】
挿入部材40の小径部40aを入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入した状態において、当接部51の第1当接面51aは挿入部材40の大径部40bの端面に当接し、第2当接面51bは大径部40bの外周面に当接している。
カムフランジサポート25は、スラスト軸受31を介してナット35によって、入力軸1の軸方向外方(図2において右方)への移動が規制されるとともに、カム板20および保持器21によって径方向外方への移動が規制されている。したがって、カムフランジサポート25の内フランジ25bの内周縁部の当接部51によって、挿入部材40は入力軸1の軸方向右方、つまり軸方向でかつボールスプライン溝6a,6bから離間する方向への移動が規制されるとともに、径方向外方への移動が規制されている。
【0037】
また、挿入部材40は、入力軸1を挿通可能とする円筒状に形成されるとともに、入力軸1の径方向に分解可能および組立可能となっている。
すなわち、図3に示すように、挿入部材40は入力軸1の径方向に2つに分割された略半円筒状の分割部材41,41によって構成されている。分割部材41,41は、図示しない結合手段によって、円筒状に組立および分解可能としてもよい。結合手段としては、例えば、半円筒状の分割部材41の周方向の両端部にそれぞれ結合板を取り付け、分割部材41,41の対向する端部に取り付けられた結合板どうしをねじ等によって結合するような構成としてもよいし、分割部材41,41の対向する周方向の端部どうしを実矧ぎ等によって結合するような構成としてもよい。
【0038】
本実施の形態では、分割部材41,41は、結合手段を用いなくても、単に分割部材41,41の周方向において対向する端面どうしを突き当てることで、挿入部材40を組立および分解可能となっている。すなわち、分割部材41、41を互いに突き当てて構成された挿入部材40は、その大径部40bの外周部がカムフランジサポート25の内フランジ25bの内周縁部の当接部51によって拘束されるので、円筒状に組み立てられた状態で保持され、大径部40bの外周部を当接部51から外すことによって分割部材41,41に分解できる。
なお、挿入部材40は2つの分割部材41,41に分割、組立可能としたが、3つ以上の分割部材に分割、組立可能としてもよい。
【0039】
また、本実施の形態の本実施の形態のトロイダル型無段変速機では、ボールスプライン6のボール6cと挿入部材40との間の軸方向の距離B1が長くなるように、入力側ディスク2および/または入力軸1が軸方向に移動する移動長さより、挿入部材40の小径部40aの端部開口2bからの挿入長さB2が長くなるように、小径部40aの軸方向の長さが設定されている。したがって、入力側ディスク2および/または入力軸1が上記のように移動しても、挿入部材40の小径部40aは入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に存在し続けて、ボールスプライン溝6a,6bの端部の少なくとも一部を塞ぐので、当該ボールスプライン溝6a,6bの端部開口が開放されることがない。したがって、ボールスプライン溝6a,6bからボール6cが脱落することがない。
【0040】
本実施形態のトロイダル型無段変速機を組み立てる(製造する)場合、入力軸1にその一端部側(図1において右端部側)から、図1における左側の入力側ディスク2をその内径に入力軸1が挿通されるように外挿して、当該入力側ディスク2を入力軸1の他端部に形成されている大径部1bに当接させ、次に入力軸1にその一端部側から2つの出力側ディスク3,3を順次外挿するとともに、左側の入力側ディスク2と左側の出力側ディスク3との間にパワーローラ11を配し、当該パワーローラ11に入力側ディスク2と出力側ディスク3とを当てる。
【0041】
次に、入力軸1にその一端部側から右側の入力側ディスク2を外挿するとともに、当該入力側ディスク2と右側の出力側ディスク3との間にパワーローラ11を配し、当該パワーローラ11に入力側ディスク2と出力側ディスク3とを当てる。入力軸1に入力側ディスク2を外挿する場合、入力側ディスク2の内径に入力軸1が挿通されるように外挿する。この入力側ディスク2の内径面にはボールスプライン溝6aが形成され、この内径面に対向する入力軸1の外径面にはボールスプライン軸6bが形成されているので、入力軸1に入力側ディスク2を外挿することによって、ボールスプライン溝6a,6bが形成される。
【0042】
次に、このボールスプライン溝6a,6bに入力側ディスク2の端部開口2bから複数のボール6cを装填する。入力軸1の外径面にはボールスプライン溝6bの他端部(図2において左端部)において止め輪43が外嵌されているので、装填されたボール6cは止め輪43によって移動が規制され、ボールスプライン溝6a,6bの他端部から脱落することはない。
【0043】
次に、入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入部材40の小径部40aを挿入する(挿入工程)。この場合、挿入部材40は径方向に分割された2つの分割部材41,41によって構成されているので、当該分割部材41,41を端部開口2bに近い入力軸1の所定位置において、入力軸1を囲むようにして径方向に組み立て円筒状の挿入部材40とする。
この際、分割部材41,41を接着材や接着テープ等を使用して、仮接着して挿入部材40を仮組み立てしてもよい。そして、この挿入部材40の小径部40aを入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入することによって、ボールスプライン溝6a,6bの一方(図2において右方)の端部の少なくとも一部を塞ぐ。
【0044】
次に、入力軸1にその一端部側から押圧装置12および規制手段50を構成するカムフランジサポート25を外挿し、このカムフランジサポート25の内フランジ25bの内周縁部に設けられた当接部51を挿入部材40の大径部40bに当接することによって、大径部40bの外周部を拘束することによって、分割部材41,41によって組み立てられた挿入部材40の軸方向外方(右方)への移動を規制するとともに、分割部材41,41の径方向外方への移動を規制して、分割部材41,41(挿入部材40)の分解を防止する(規制工程)。したがって、ボールスプライン溝6a,6bに装填されたボール6cは挿入部材40によって移動が規制され、ボールスプライン溝6a,6bの一端部から脱落することはない。
最後に、入力軸1に皿ばね28、スラスト軸受31を順次外挿したうえで、入力軸1の端部にナット35を螺合して締め付けることによって、組み立てを終了する。
【0045】
以上のように、本実施の形態によれば以下の効果を奏する。
入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入部材40の少なくとも一部である小径部40aが挿入されることで、ボールスプライン溝6a,6bの一端部の少なくとも一部を塞ぐ。この挿入部材40は規制手段50によって入力軸1の軸方向外方および径方向外方への移動が規制されるので、この移動が規制された挿入部材40によって、ボールスプライン溝6a,6bからのボール6cの脱落を防止できる。
【0046】
また、挿入部材40は従来と異なり圧入によって固定されていないため、取外し性も良く、パワーローラ11の押圧力により入力側ディスク2が変形した際に挿入部材40が入力側ディスク2の端部開口2bから脱落する虞も殆どない。
さらに、挿入部材40は、入力軸1を挿通可能とする円筒状に形成されるとともに、入力軸1の径方向に分解可能および組立可能であるので、入力軸1の一部、特に入力軸1の端部に大径部1cがあっても入力軸1の所定位置、つまりボールスプライン溝6a,6bに近い位置において、挿入部材40の分割部材41,41を入力軸1を囲むようにして径方向に組み立てることによって、挿入部材40を入力軸1に容易に外挿して、当該挿入部材40の小径部40aを入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入できる。
しがって、ボールスプラインにおけるボール6cの脱落を防止できるともに組立性もよくなる。
【0047】
また、ボールスプライン6のボール6cと挿入部材40との間の軸方向の距離B1が長くなるように、入力側ディスク2および/または入力軸1が軸方向に移動する移動長さより、挿入部材40の小径部40aの端部開口2bからの挿入長さB2が長いので、入力側ディスク2が上記のように移動しても、挿入部材40の小径部40aは入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に存在し続けて、ボールスプライン溝6a,6bの端部の少なくとも一部を塞ぐので、当該ボールスプライン溝6b,6aの端部開口が開放されることがない。したがって、ボールスプライン溝6a,6bからボールが脱落することがない。
【0048】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部を示す半平断面図である。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、軸方向外方および径方向外方へ挿入部材40の移動を規制する規制手段の構成であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略することもある。
【0049】
第1の実施形態では、規制手段50はカムフランジサポート25の内フランジ25bによって構成したが、本実施形態では、規制手段60は内フランジ25bによって構成するのではなく、円筒状の円筒部材61と、この円筒部材61の軸方向外方の移動を規制する止め輪62とを備えた構成となっている。したがって、本実施形態では、内フランジ25bは挿入部材40に向けて延出していない。
【0050】
円筒部材61は入力軸1に外挿されるとともに、その一端部(図4において右端部)は皿ばね28の内径側に挿通されたうえで、円筒部材61の一端部の内径面の一部は、入力軸1に形成された大径部1cの外周面に当接されている。また、大径部1cには凹溝が周方向に沿って設けられ、この凹溝に止め輪62が挿入固定されている。この止め輪62に円筒部材61の一端面(図4において右端面)の内周部が当接されている。
【0051】
また、円筒部材61の他端部(図2において左端部)の内周縁部に断面L字形の当接部65が設けられている。当接部65は、入力軸1の軸方向と直交する方向(径方向)と平行な環状の平面である第1当接面65aと、入力軸1の軸方向と平行な円筒面である第2当接面65bとを有しており、これら第1当接面65aと第2当接面65bとによって断面L字形に形成されている。
【0052】
挿入部材40の小径部40aを入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入した状態において、当接部65の第1当接面65aは挿入部材40の大径部40bの端面に当接し、第2当接面65bは大径部40bの外周面に当接している。
円筒部材61は、止め輪62によって、入力軸1の軸方向外方(図4において右方)への移動が規制されるとともに、皿ばね28の内径面によって径方向外方への移動が規制されている。したがって、円筒部材61の当接部65によって、挿入部材40は入力軸1の軸方向外方(軸方向でかつボールスプライン溝6a,6bから離間する方向)および径方向外方への移動が規制されている。
【0053】
本実施の形態のトロイダル型無段変速機を組み立てる場合、基本的に第1の実施形態と同様にして組み立てるが、挿入部材40の小径部40aを入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に端部開口2bから挿入(挿入工程)した後、円筒部材61を入力軸1にその一端部側から外挿し、当接部65を挿入部材40の大径部40bに当接して大径部40bを拘束したうえで、円筒部材61の一端部を止め輪62によって固定することによって、入力軸1の軸方向外方および径方向外方への挿入部材(分割部材41,41)40の移動を規制し(規制工程)、その後、入力軸1にその一端部側から押圧装置12およびカムフランジサポート25を外挿し、最後に、入力軸1に皿ばね28、スラスト軸受31を順次外挿したうえで、入力軸1の端部にナット35を螺合して締め付けることによって、組み立てを終了する。
【0054】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入部材40の少なくとも一部である小径部40aが挿入されることで、ボールスプライン溝6a,6bの一端部の少なくとも一部を塞ぐ。この挿入部材40は規制手段60によって入力軸1の軸方向外方および径方向外方への移動が規制されるので、この移動が規制された挿入部材40によって、ボールスプライン溝6a,6bからのボール6cの脱落を防止できる。
したがって、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
図5および図6は第3の実施形態を示すもので、図5はトロイダル型無段変速機の要部を示す半平断面図、図6は挿入部材40の組立方向を説明するための斜視図である。
第3の実施形態が第1および第2の実施形態と異なる点は、挿入部材と、入力軸1の軸方向外方および径方向外方向への挿入部材の移動を規制する規制手段の構成であるので、以下ではこの点について説明し、第1および第2の実施形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略することもある。
【0056】
本実施形態では、挿入部材40は第1の実施形態同様に、小径部40aと大径部40bとを備えているが、大径部40bの端面に円形孔状の座繰り45が設けられ、この座繰り45の外周側の底面に周方向に延在する凹溝46aが設けられ、座繰り45の外周側の内側面に周方向に延在する凹溝46bが設けられている。また、大径部40bの内径面には周方向に延在する凸条47が設けられている。
このような構成の挿入部材40は第1および第2の実施形態の挿入部材40と同様に、円筒状に形成されるとともに、入力軸1の径方向に分解可能および組立可能となっている。
すなわち、図6に示すように、挿入部材40は入力軸1の径方向に2つに分割された略半円筒状の分割部材41,41によって構成されている。
【0057】
分割部材41,41を径方向に組み立てて挿入部材40を構成する場合、分割部材41,41の対向する端面どうしを突き当てて筒状とし、この筒状になった挿入部材40の大径部40bに設けられた前記凹溝46aにリング状の連結部材48を嵌め込むことによって、分割部材41,41が径方向外方に分解されないようにし、さらに、前記凹溝46bに止め輪49を嵌め込むことによって、連結部材48が凹溝46aから外れないようにする。
また、入力軸1の外径面には、入力側ディスク2の端部開口2bの近傍において、周方向に延在する凹溝47aが設けられている。
【0058】
そして、このような挿入部材40を入力軸1に外挿する場合、入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入部材40の小径部40aを挿入する(挿入工程)。この場合、挿入部材40は径方向に分割された2つの分割部材41,41によって構成されているので、当該分割部材41,41を端部開口2bに近い入力軸1の所定の位置において、入力軸1を囲むようにして径方向に組み立て円筒状の挿入部材40とするとともに、挿入部材40の内径面、つまり分割部材41,41の内面に設けられた凸条47を入力軸1の凹溝47aに嵌め込む。
【0059】
また、分割部材41,41を円筒状に組み立てて挿入部材40とした後、前記凹溝46aにリング状の連結部材48を嵌め込むとともに、前記凹溝46bに止め輪49を嵌め込むことで、分割部材41,41が径方向外方に分解されないようにする。なお、連結部材48および止め輪49は、入力軸1のその一端部側から外挿しておき、この連結部材48および止め輪49を凹溝46aおよび凹溝46bに嵌め込む。
【0060】
挿入部材40は、挿入部材40の凸条47を入力軸1の凹溝47aに嵌め込むことによって、入力軸1の軸方向外方および内方への移動が規制され、挿入部材40の凹溝46aのリング状の連結部材48を嵌め込むことによって、入力軸1の径方向外方への移動が規制(規制工程)される。したがって、入力軸1の軸方向外方および径方向外方への挿入部材40の移動を規制する規制手段70は凸条47、凹溝47a、連結部材48、凹溝46aによって構成される。
【0061】
本実施形態によれば、第1および第2の実施形態と同様に、入力軸1の外径面と入力側ディスク2の内径面との間に、入力側ディスク2の軸方向の端部開口2bから挿入部材40の少なくとも一部である小径部40aが挿入されることで、ボールスプライン溝6a,6bの一端部の少なくとも一部を塞ぐ。この挿入部材40は規制手段70によって入力軸1の軸方向外方および径方向外方への移動が規制されるので、この移動が規制された挿入部材40によって、ボールスプライン溝6a,6bからのボール6cの脱落を防止できる。
したがって、第1および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、第1~第3の実施形態では、入力側ディスク2を押圧装置12によって押圧する場合を例にとって説明したが、トロイダル型無段変速機では、入力側ディスクと出力側ディスクの入出力関係を逆にする場合もある。したがって、本発明は出力側ディスクを押圧装置12によって押圧する場合にも適用できる。つまり、出力軸と、この出力軸にボールスプラインによってスプライン結合されて前記出力軸と一体で回転する出力側ディスクと、前記出力側ディスクに対向して設けられた入力側ディスクと、出力側ディスクと入力側ディスクに挟持されるパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機にも適用できる。
【0063】
さらに、本実施の形態では本発明を、ダブルキャビティ型のハーフトロイダル型無段変速機に適用する場合を例にとって説明したが、これに限ることなく、本発明はダブルキャビティ型のフルトロイダル型無段変速機にも適用でき、さらに、シングルキャビティ型のハーフトロイダル型無段変速機や、シングルキャビティ型のフルトロイダル型無段変速機にも適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1入力軸(軸)
2 入力側ディスク(第1ディスク)
3 出力側ディスク(第2ディスク)
6 ボールスプライン
6a,6b ボールスプライン溝
6c ボール
40 挿入部材
40a 小径部(挿入部材の一部)
40b 大径部
50,60,70 規制手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7