(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F04C18/02 311H
(21)【出願番号】P 2020094134
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上田 真玄
(72)【発明者】
【氏名】林 秀高
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/123015(WO,A1)
【文献】特開平11-351161(JP,A)
【文献】特開2007-132228(JP,A)
【文献】特開2010-174902(JP,A)
【文献】特開2009-243373(JP,A)
【文献】特開2008-088846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロールと、
前記固定スクロールに対向配置され、自転阻止機構によって自転が阻止された状態で前記固定スクロールに対して公転運動することにより流体を圧縮する可動スクロールと、
前記可動スクロールに対して前記固定スクロールとは反対側に配置される対向部材と、
前記可動スクロールからのスラスト荷重を前記対向部材側で受承するスラスト軸受部と、を備え、
前記スラスト軸受部は、コーティング層からなる第1対向面と、前記第1対向面に対向するとともに前記第1対向面に向けて突出して前記第1対向面に摺動する複数の受圧部が形成された第2対向面と、を有し、
前記第1対向面には、前記自転阻止機構を構成する複数のピンが突出しており、
前記第2対向面には、前記複数のピンが各々挿入される挿入部が形成され、
前記第1対向面及び前記第2対向面の一方は前記可動スクロールと共に公転運動し、前記第1対向面及び前記第2対向面の他方は前記対向部材に固定され、
前記第1対向面は、前記可動スクロールが公転運動する際に前記複数の受圧部が摺動する摺動面と、前記可動スクロールが公転運動する際に前記複数の受圧部が摺動しない非摺動面と、を有し、
前記非摺動面は、少なくとも一部が前記各挿入部に対して軸方向で重なる位置に設けられ、
前記非摺動面の表面粗さは、前記摺動面の表面粗さよりも大きく、
前記非摺動面の一部は、前記可動スクロールが公転運動する際に前記各挿入部と重ならず、且つ前記摺動面に対して径方向外周側となる位置に設けられており、
前記非摺動面は、前記第1対向面に設けられる前記摺動面のすべての径方向外周側となる位置に設けられている、スクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記第1対向面は前記可動スクロールと共に公転運動し、前記第2対向面は前記対向部材に固定されている請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記非摺動面の表面粗さは、10μm~20μmであり、
前記摺動面の表面粗さは、5μm以下である請求項1
又は請求項2に記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール型圧縮機は、固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される可動スクロールと、を備えている。可動スクロールは、自転阻止機構によって自転が阻止された状態で固定スクロールに対して公転運動することにより流体を圧縮する。可動スクロールは、可動スクロールが公転運動することにより圧縮される流体の圧力と、可動スクロールにおける固定スクロールとは反対側の面である背面に作用する圧力との圧力差によってスラスト荷重を受ける。特に、圧縮される流体である冷媒として、二酸化炭素を採用したスクロール型圧縮機においては、圧縮される冷媒の圧力が高いため、可動スクロールが受けるスラスト荷重が大きくなる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、可動スクロールからのスラスト荷重を受承するスラスト軸受部を備えたスクロール型圧縮機が、従来から知られている。このようなスラスト軸受部は、コーティング層からなる第1対向面と、第1対向面に対向するとともに第1対向面に向けて突出して第1対向面に摺動する複数の受圧部が形成された第2対向面と、を有している。
【0004】
このような構成では、第1対向面と第2対向面との間に供給されるオイルが、各受圧部の周縁部によるくさび効果によって、各受圧部の周囲から各受圧部と第1対向面との間に引き込まれ易くなる。このため、各受圧部と第1対向面との間にオイルが供給され易くなるため、各受圧部と第1対向面との間に油膜が形成され易くなり、各受圧部と第1対向面との間の摩擦が生じ難くなる。その結果、スラスト軸受部の潤滑性が良好なものとなる。
【0005】
また、特に、特許文献1では、第1対向面の表面のコーティング層として、ダイアモンドライクカーボン層を採用している。このため、例えば、第1対向面と第2対向面との間にオイルが供給され難い状況下でスクロール型圧縮機が運転されており、各受圧部と第1対向面との間に油膜が形成され難い場合であっても、各受圧部と第1対向面との間の摩擦が生じ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、第1対向面と第2対向面との間にオイルが供給され難い状況下でスクロール型圧縮機が運転されている場合であっても、各受圧部と第1対向面との間に油膜を形成することにより、スラスト軸受部の潤滑性を向上させたいという要望がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、スラスト軸受部の潤滑性を向上させることができるスクロール型圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するスクロール型圧縮機は、固定スクロールと、前記固定スクロールに対向配置され、自転阻止機構によって自転が阻止された状態で前記固定スクロールに対して公転運動することにより流体を圧縮する可動スクロールと、前記可動スクロールに対して前記固定スクロールとは反対側に配置される対向部材と、前記可動スクロールからのスラスト荷重を前記対向部材側で受承するスラスト軸受部と、を備え、前記スラスト軸受部は、コーティング層からなる第1対向面と、前記第1対向面に対向するとともに前記第1対向面に向けて突出して前記第1対向面に摺動する複数の受圧部が形成された第2対向面と、を有し、前記第1対向面には、前記自転阻止機構を構成する複数のピンが突出しており、前記第2対向面には、前記複数のピンが各々挿入される挿入部が形成され、前記第1対向面及び前記第2対向面の一方は前記可動スクロールと共に公転運動し、前記第1対向面及び前記第2対向面の他方は前記対向部材に固定され、前記第1対向面は、前記可動スクロールが公転運動する際に前記複数の受圧部が摺動する摺動面と、前記可動スクロールが公転運動する際に前記複数の受圧部が摺動しない非摺動面と、を有し、前記非摺動面は、少なくとも一部が前記各挿入部に対して軸方向で重なる位置に設けられ、前記非摺動面の表面粗さは、前記摺動面の表面粗さよりも大きい。
【0010】
これによれば、第1対向面において、例えば、非摺動面の表面粗さが、摺動面の表面粗さ以下である場合に比べると、非摺動面に保持されるオイルの量を多くすることができる。したがって、非摺動面に保持されたオイルが、可動スクロールの公転運動に伴って、各受圧部と摺動面との間に供給され易くなり、各受圧部と摺動面との間に油膜が形成され易くなる。その結果として、例えば、第1対向面と第2対向面との間にオイルが供給され難い状況下でスクロール型圧縮機が運転されている場合であっても、各受圧部と第1対向面との間に油膜を形成し易くすることができ、スラスト軸受部の潤滑性を向上させることができる。
【0011】
上記スクロール型圧縮機において、前記第1対向面は前記可動スクロールと共に公転運動し、前記第2対向面は前記対向部材に固定されているとよい。
これによれば、非摺動面に保持されたオイルには、可動スクロールの公転運動に伴う遠心力が作用し、非摺動面に保持されているオイルが遠心力によって、非摺動面から吹き飛ばされ易くなる。その結果、非摺動面に保持されていたオイルが、各受圧部と摺動面との間に供給され易くなるため、各受圧部と摺動面との間に油膜が形成され易くなる。したがって、スラスト軸受部の潤滑性をさらに向上させることができる。
【0012】
上記スクロール型圧縮機において、前記非摺動面の少なくとも一部は、前記摺動面に対して径方向外周側となる位置に設けられているとよい。
これによれば、各受圧部と摺動面との間のオイルに、可動スクロールの公転運動に伴う遠心力が作用して、摺動面に対して径方向外周側にオイルが吹き飛ばされても、摺動面に対して径方向外周側となる位置に設けられた非摺動面によって、オイルを保持することができる。したがって、非摺動面に保持されたオイルが、可動スクロールの公転運動に伴って、各受圧部と摺動面との間に供給され易くなり、各受圧部と摺動面との間に油膜が形成され易くなる。その結果、スラスト軸受部の潤滑性をさらに向上させることができる。
【0013】
上記スクロール型圧縮機において、前記非摺動面の一部は、前記可動スクロールが公転運動する際に前記各挿入部と重ならず、且つ前記摺動面に対して径方向外周側となる位置に設けられているとよい。
【0014】
これによれば、例えば、非摺動面が、第1対向面において、可動スクロールが公転運動する際に各挿入部に対して軸方向で重なる部分にのみ形成されている場合に比べると、第1対向面における非摺動面の領域を多くすることができる。したがって、非摺動面に保持されているオイルの量が多くなるため、非摺動面に保持されているオイルが各受圧部と摺動面との間にさらに供給され易くなり、各受圧部と摺動面との間に油膜がさらに形成され易くなる。その結果、スラスト軸受部の潤滑性をさらに向上させることができる。
【0015】
上記スクロール型圧縮機において、前記非摺動面の表面粗さは、10μm~20μmであり、前記摺動面の表面粗さは、5μm以下であるとよい。
非摺動面の表面粗さが10μm~20μmである非摺動面は、オイルを保持するための非摺動面として好適である。また、摺動面の表面粗さが5μm以下である摺動面は、各受圧部と摺動面との間に油膜を形成するための摺動面として好適である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、スラスト軸受部の潤滑性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態におけるスクロール型圧縮機を示す側断面図。
【
図2】第1スラスト軸受プレートの第1対向面を示す断面図。
【
図3】第2スラスト軸受プレートの第2対向面を示す断面図。
【
図6】第1対向面に受圧部が摺動する前の状態を拡大して示す断面図。
【
図7】第1対向面に受圧部が摺動している状態を拡大して示す断面図。
【
図8】第1対向面に受圧部が摺動した後の状態を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、スクロール型圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図8にしたがって説明する。本実施形態のスクロール型圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、筒状のハウジング11と、ハウジング11内に収容される回転軸12と、回転軸12の回転によって駆動する圧縮機構13と、回転軸12を回転させる電動モータ14と、を備えている。
【0019】
ハウジング11は、モータハウジング15と、吐出ハウジング16と、インバータカバー17と、を有している。モータハウジング15、吐出ハウジング16、及びインバータカバー17は、それぞれ金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0020】
モータハウジング15は、底壁15aと、底壁15aの外周部から筒状に延びる周壁15bと、を有する有底筒状である。周壁15bの軸心が延びる方向は、回転軸12の軸線L1が延びる方向である軸方向に一致している。周壁15bの開口端面には、雌ねじ孔15cが形成されている。周壁15bには、吸入ポート15hが形成されている。吸入ポート15hは、周壁15bにおける底壁15a側に位置する部分に形成されている。吸入ポート15hは、モータハウジング15内外を連通している。
【0021】
インバータカバー17は、モータハウジング15の底壁15aに取り付けられている。そして、インバータカバー17とモータハウジング15の底壁15aとによって区画される空間には、電動モータ14を駆動させるためのインバータ装置18が収容されている。
図1では、インバータ装置18を破線で示している。
【0022】
底壁15aの内面には、円筒状のボス部15fが突設されている。回転軸12の一端部は、ボス部15f内に挿入されている。ボス部15fの内周面と回転軸12の一端部の外周面との間には、円筒状の滑り軸受19が設けられている。そして、回転軸12の一端部は、滑り軸受19を介してモータハウジング15のボス部15fに回転可能に支持されている。
【0023】
モータハウジング15内には、有底筒状の軸支部材20が設けられている。軸支部材20は、モータハウジング15の開口寄りに固定されている。軸支部材20の中央部には、回転軸12が挿通される挿通孔21が形成されている。挿通孔21の軸心は、モータハウジング15の周壁15bの軸心に一致している。
【0024】
モータハウジング15及び軸支部材20は、ハウジング11内に形成されるモータ室22を区画している。モータ室22内には、図示しない外部冷媒回路から吸入ポート15hを介して流体としての冷媒が吸入される。したがって、モータ室22は、吸入ポート15hから冷媒が吸入される吸入室である。本実施形態では、外部冷媒回路から吸入ポート15hを介してモータ室22に吸入される冷媒として、二酸化炭素が採用されている。
【0025】
挿通孔21は、大径孔21a、及び大径孔21aよりも孔径が小さい小径孔21bを有している。大径孔21aは、小径孔21bよりもモータ室22とは反対側に位置している。大径孔21aの一端は、軸支部材20におけるモータ室22とは反対側の端面に開口している。大径孔21aの他端は、小径孔21bの一端に連通している。小径孔21bの他端は、軸支部材20におけるモータ室22側の端部に開口している。
【0026】
回転軸12の他端側の端面12eは、軸支部材20の挿通孔21の内側に位置している。回転軸12の他端部の外周面と挿通孔21の小径孔21bの内周面との間には、円筒状の滑り軸受23が設けられている。そして、回転軸12は、滑り軸受23を介して軸支部材20に回転可能に支持されている。
【0027】
小径孔21bの内周面における滑り軸受23よりも大径孔21a側の部位と回転軸12の外周面との間には、第1シール部材24が設けられている。第1シール部材24は、小径孔21bの内周面における滑り軸受23よりも大径孔21a側の部位で、小径孔21bの内周面と回転軸12の外周面との間をシールしている。また、小径孔21bの内周面における滑り軸受23よりも大径孔21a側とは反対側の部位と回転軸12の外周面との間には、第2シール部材25が設けられている。第2シール部材25は、小径孔21bの内周面における滑り軸受23よりも大径孔21aとは反対側の部位で、小径孔21bの内周面と回転軸12の外周面との間をシールしている。
【0028】
モータ室22内には、電動モータ14が収容されている。電動モータ14は、筒状のステータ26と、ステータ26の内側に配置されるロータ27と、を有している。ロータ27は、回転軸12と一体的に回転する。ステータ26は、ロータ27を取り囲んでいる。ロータ27は、回転軸12に止着されたロータコア27aと、ロータコア27aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ26は、モータハウジング15の周壁15bの内周面に固定された筒状のステータコア26aと、ステータコア26aに巻回されたコイル26bと、を有している。そして、インバータ装置18によって制御された電力がコイル26bに供給されることによりロータ27が回転し、回転軸12がロータ27と一体的に回転する。
【0029】
吐出ハウジング16は、ブロック状である。吐出ハウジング16は、モータハウジング15の周壁15bの開口端面に板状のガスケット28を介して取り付けられている。具体的には、吐出ハウジング16は、吐出ハウジング16及びガスケット28を貫通するボルト29が雌ねじ孔15cに螺合されることによりモータハウジング15に取り付けられている。ガスケット28は、吐出ハウジング16とモータハウジング15との間をシールする。
【0030】
圧縮機構13は、固定スクロール31と、固定スクロール31に対向配置される可動スクロール32と、を有している。固定スクロール31及び可動スクロール32は、モータハウジング15の周壁15bの内側において、軸支部材20よりもモータ室22とは反対側に配置されている。したがって、モータハウジング15の周壁15bは、圧縮機構13を回転軸12の径方向外側で覆っている。つまり、モータハウジング15の周壁15bは、圧縮機構13を囲繞している。
【0031】
固定スクロール31は、回転軸12の軸方向において、可動スクロール32よりも吐出ハウジング16側に位置している。したがって、軸支部材20は、可動スクロール32に対して固定スクロール31とは反対側に配置される対向部材である。本実施形態では、圧縮機構13、電動モータ14及びインバータ装置18が、この順序で、回転軸12の軸方向に並設されている。
【0032】
固定スクロール31は、円板状の固定基板31aと、固定基板31aから吐出ハウジング16とは反対側に向けて立設された固定渦巻壁31bと、を有している。また、固定スクロール31は、固定基板31aの外周部から筒状に延びる固定外周壁31cを有している。固定外周壁31cは、固定渦巻壁31bを取り囲んでいる。固定外周壁31cの開口端面は、固定渦巻壁31bの先端面よりも固定基板31aとは反対側に位置している。
【0033】
可動スクロール32は、固定基板31aと対向する円板状をなす可動基板32aと、可動基板32aから固定基板31aに向けて立設される可動渦巻壁32bと、を有している。固定渦巻壁31bと可動渦巻壁32bとは互いに噛み合わされている。可動渦巻壁32bは、固定外周壁31cの内側に位置している。固定渦巻壁31bの先端面は可動基板32aに接触しているとともに、可動渦巻壁32bの先端面は固定基板31aに接触している。そして、固定基板31a、固定渦巻壁31b、固定外周壁31c、可動基板32a、及び可動渦巻壁32bによって、冷媒が圧縮される圧縮室33が複数区画されている。
【0034】
固定基板31aの中央部には、円孔状の吐出口31hが形成されている。吐出口31hは、固定基板31aを厚み方向に貫通している。固定基板31aにおける可動スクロール32とは反対側の端面には、吐出口31hを開閉する吐出弁機構34が取り付けられている。
【0035】
可動基板32aにおける固定基板31aとは反対側の端面である背面32eには、円筒状のボス部32fが突設されている。ボス部32fの軸方向は、回転軸12の軸方向に一致している。ボス部32fは、軸支部材20の大径孔21aの内側に位置している。
【0036】
固定スクロール31は、モータハウジング15の周壁15bの内側での回転軸12の軸線L1を回転中心とした回転が規制された状態で、モータハウジング15に対して位置決めされている。固定スクロール31は、モータハウジング15の開口を閉塞している。固定外周壁31cの開口端面は、プレート35を介して軸支部材20におけるモータ室22とは反対側の端面に対向している。
【0037】
回転軸12の他端側の端面12eには、回転軸12の軸線L1に対して偏心した位置から可動スクロール32に向けて突出する偏心軸36が一体形成されている。偏心軸36の軸方向は、回転軸12の軸方向に一致している。偏心軸36は、軸支部材20の大径孔21aの内側に位置している。偏心軸36は、ボス部32f内に挿入されている。
【0038】
偏心軸36の外周面には、バランスウェイト37が一体化されたブッシュ38が嵌合されている。バランスウェイト37は、ブッシュ38に一体形成されている。バランスウェイト37は、軸支部材20の大径孔21a内に収容されている。可動スクロール32は、ブッシュ38及び滑り軸受39を介して偏心軸36と相対回転可能に偏心軸36に支持されている。
【0039】
軸支部材20の外周部には、透孔40が形成されている。プレート35には、透孔40に連通する連通孔41が形成されている。固定スクロール31の固定外周壁31cの外周面には、連通孔41に連通する導入凹部42が形成されている。さらに、固定外周壁31cには、導入凹部42と圧縮室33における最外周部分とを連通する貫通孔43が形成されている。
【0040】
吐出ハウジング16におけるモータハウジング15側の端面には、室形成凹部44が形成されている。そして、室形成凹部44と固定スクロール31の固定基板31aとによって吐出室45が区画されている。また、吐出ハウジング16には、吐出ポート46が形成されている。吐出ポート46には、外部冷媒回路が接続されている。さらに、吐出ハウジング16には、油分離室47が形成されている。油分離室47は、吐出ポート46に連通している。油分離室47には、油分離筒48が設けられている。また、吐出ハウジング16には、吐出室45と油分離室47とを連通する排出孔49が形成されている。さらに、吐出ハウジング16には、貯油室50が形成されている。貯油室50は、油分離室47に連通している。
【0041】
圧縮室33内で圧縮された冷媒は、吐出口31hから吐出弁機構34を介して吐出室45へ吐出される。吐出室45に吐出された冷媒は、排出孔49を介して油分離室47へ流出し、油分離室47内において、冷媒に含まれるオイルが油分離筒48により冷媒から分離される。そして、オイルが分離された冷媒が油分離筒48内に流入し、吐出ポート46を介して外部冷媒回路へ吐出される。外部冷媒回路に吐出された冷媒は、吸入ポート15hを介してモータ室22へ還流する。一方で、油分離筒48により冷媒から分離されたオイルは、油分離室47から貯油室50に向かって流れ、貯油室50に貯留される。
【0042】
スクロール型圧縮機10は、油導入路51を備えている。油導入路51は、吐出ハウジング16、ガスケット28、固定スクロール31、プレート35、及び軸支部材20を貫通している。油導入路51の一端は、貯油室50に連通している。油導入路51の他端は、小径孔21b内における滑り軸受23と第1シール部材24との間に開口している。
【0043】
回転軸12には、軸路52及び径路53が形成されている。軸路52は、回転軸12の軸方向に延びている。軸路52の一端は、回転軸12の一端面に開口し、ボス部15f内に連通している。軸路52の他端は、回転軸12の他端部寄りの内部で閉塞している。径路53は、回転軸12の径方向に延びている。径路53の一端は、小径孔21b内における滑り軸受23と第2シール部材25との間に開口している。径路53の他端は、軸路52の他端部に連通している。
【0044】
貯油室50に貯留されたオイルは、油導入路51を介して小径孔21b内における滑り軸受23と第1シール部材24との間に流入し、滑り軸受23の内周面と回転軸12の外周面との間に供給される。これにより、滑り軸受23の内周面と回転軸12の外周面との間に油膜が形成され、滑り軸受23と回転軸12との間の潤滑性が維持される。さらに、オイルは、滑り軸受23の内周面と回転軸12の外周面との間を通過して、小径孔21b内における滑り軸受23と第2シール部材25との間に流入し、径路53及び軸路52を通過して、ボス部15f内に流入する。そして、ボス部15f内に流入したオイルは、滑り軸受19の内周面と回転軸12の外周面との間に供給される。これにより、滑り軸受19の内周面と回転軸12の外周面との間に油膜が形成され、滑り軸受19と回転軸12との間の潤滑性が維持される。そして、オイルは、滑り軸受19の内周面と回転軸12の外周面との間を通過して、モータ室22内に還流される。
【0045】
ハウジング11内には、背圧室54が形成されている。背圧室54は、軸支部材20と可動スクロール32との間に位置している。背圧室54は、ハウジング11内における可動基板32aに対して固定基板31aとは反対側の位置に形成されている。大径孔21aの内側は、背圧室54になっている。軸支部材20は、背圧室54とモータ室22とを区画している。
【0046】
可動スクロール32には、可動基板32a及び可動渦巻壁32bを貫通する背圧導入通路55が形成されている。背圧導入通路55は、圧縮室33内の冷媒を背圧室54に導入する。背圧室54は、圧縮室33内の冷媒が背圧導入通路55を介して導入されるため、モータ室22よりも高圧となっている。背圧室54の圧力は、可動基板32aの背面32eに作用する。そして、背圧室54の圧力が高くなることによって、可動渦巻壁32bの先端面が固定基板31aに押し付けられるように可動スクロール32が固定スクロール31に向けて付勢される。
【0047】
スクロール型圧縮機10は、可動スクロール32からのスラスト荷重を軸支部材20側で受承するスラスト軸受部60を備えている。スラスト軸受部60は、円板状の第1スラスト軸受プレート61と、円板状の第2スラスト軸受プレート71と、を備えている。
【0048】
第1スラスト軸受プレート61は、可動スクロール32の可動基板32aの背面32eに固定されている。第1スラスト軸受プレート61の厚み方向は、可動基板32aの厚み方向に一致している。第2スラスト軸受プレート71は、軸支部材20におけるモータ室22とは反対側の端面に固定されている。第2スラスト軸受プレート71の厚み方向は、軸支部材20の挿通孔21の軸心が延びる方向に一致している。第2スラスト軸受プレート71は、例えば、鋼製である。
【0049】
第1スラスト軸受プレート61及び第2スラスト軸受プレート71は、可動スクロール32と軸支部材20との間に配置されている。したがって、スラスト軸受部60は、可動スクロール32と軸支部材20との間に配置されている。スラスト軸受部60は、背圧室54内の冷媒雰囲気に存在している。第1スラスト軸受プレート61及び第2スラスト軸受プレート71は、回転軸12の軸方向で対向している。第1スラスト軸受プレート61の厚み方向と第2スラスト軸受プレート71の厚み方向とは互いに一致している。第1スラスト軸受プレート61における可動基板32aとは反対側の端面は、第2スラスト軸受プレート71と対向する第1対向面62になっている。第2スラスト軸受プレート71における軸支部材20とは反対側の端面は、第1スラスト軸受プレート61の第1対向面62に対向する第2対向面72になっている。したがって、スラスト軸受部60は、第1対向面62と、第2対向面72と、を有している。
【0050】
図1及び
図2に示すように、第1スラスト軸受プレート61には、第1貫通孔63が形成されている。第1貫通孔63は、第1スラスト軸受プレート61を厚み方向に貫通している。第1貫通孔63の孔径は、ボス部32fの外径よりも大きい。ボス部32fは、第1貫通孔63の内側を通過している。第1対向面62には、複数のピン64が突出している。本実施形態では、第1対向面62には、ピン64が6つ突出している。各ピン64は、円柱状である。6つのピン64は、第1スラスト軸受プレート61の周方向に等間隔置きに配置されている。
【0051】
図1及び
図3に示すように、第2スラスト軸受プレート71には、第2貫通孔73が形成されている。第2貫通孔73は、第2スラスト軸受プレート71を厚み方向に貫通している。第2貫通孔73の孔径は、軸支部材20の大径孔21aの孔径と同じである。第2貫通孔73の軸心と大径孔21aの軸心とは互いに一致している。第2対向面72には、複数のピン64が各々挿入される挿入部としての挿入孔74が形成されている。したがって、本実施形態では、第2対向面72には、挿入孔74が6つ形成されている。各挿入孔74は、第2スラスト軸受プレート71を厚み方向に貫通している。各挿入孔74は、円孔状である。各挿入孔74の孔径はそれぞれ同じである。6つの挿入孔74は、第2スラスト軸受プレート71の周方向に等間隔置きに配置されている。
【0052】
なお、
図1に示すように、軸支部材20におけるモータ室22とは反対側の端面には、各挿入孔74に連通する挿入凹部20aがそれぞれ形成されている。各挿入凹部20aは、各挿入孔74と同一形状である円孔状である。各挿入凹部20aの内周面と各挿入孔74の内周面とは第2スラスト軸受プレート71の厚み方向で重なり合っている。そして、各ピン64は、各挿入孔74及び各挿入凹部20aそれぞれに対して遊嵌されている。
【0053】
回転軸12の回転は、偏心軸36、ブッシュ38、及び滑り軸受39を介して可動スクロール32に伝達され、可動スクロール32は自転する。そして、各ピン64が、各挿入孔74の内周面及び各挿入凹部20aの内周面に接触することにより、可動スクロール32の自転が阻止されて、可動スクロール32の公転運動のみが許容される。これにより、可動スクロール32は、可動渦巻壁32bが固定渦巻壁31bに接触しながら公転運動し、圧縮室33の容積が減少する。したがって、各ピン64及び各挿入孔74は、可動スクロール32の自転を阻止する自転阻止機構80を構成している。バランスウェイト37は、可動スクロール32が公転運動する際に可動スクロール32に作用する遠心力を相殺して、可動スクロール32のアンバランス量を低減する。
【0054】
そして、モータ室22に吸入された冷媒が、透孔40、連通孔41、導入凹部42、及び貫通孔43を介して圧縮室33における最外周部分に吸入される。圧縮室33における最外周部分に吸入された冷媒は、可動スクロール32の公転運動により圧縮室33内で圧縮される。したがって、可動スクロール32は、自転阻止機構80によって自転が阻止された状態で固定スクロール31に対して公転運動することにより冷媒を圧縮する。
【0055】
第1スラスト軸受プレート61は、可動スクロール32と共に公転運動する。したがって、第1対向面62は可動スクロール32と共に公転運動する。一方で、第2スラスト軸受プレート71は、軸支部材20に固定されている。したがって、第2対向面72は軸支部材20に固定されている。
【0056】
図3及び
図4に示すように、第2スラスト軸受プレート71の第2対向面72には、第1対向面62に向けて突出する受圧部75が複数形成されている。したがって、スラスト軸受部60は、複数の受圧部75を有している。
図3に示すように、複数の受圧部75は、第2スラスト軸受プレート71の周方向に並んで複数配置されるとともに、千鳥配置されている。
【0057】
図4に示すように、各受圧部75は、第2対向面72から突出する円柱状である。各受圧部75の軸線L10が延びる方向は、第2対向面72に対して直交する方向である。各受圧部75の外周面75aは、第2対向面72に連続している。各受圧部75の先端面は、平坦面75fになっている。各受圧部75の外周面75aと平坦面75fとの間の角部である全周縁部は、円弧状に面取りされた面取り部75eになっている。したがって、各受圧部75の面取り部75eは、円環状である。そして、各受圧部75の平坦面75fは、平面視すると、円形状である。各受圧部75の平坦面75fは、第1スラスト軸受プレート61の第1対向面62に摺動する。
【0058】
図2に示すように、第1スラスト軸受プレート61の第1対向面62は、可動スクロール32が公転運動する際に複数の受圧部75が摺動する摺動面65と、可動スクロール32が公転運動する際に複数の受圧部75が摺動しない非摺動面66と、を有している。なお、
図2では、第1対向面62においてドットハッチングが施されていない白抜きの部分が摺動面65である。また、
図2では、第1対向面62においてドットハッチングが施されている部分が非摺動面66である。
【0059】
図5では、可動スクロール32が公転運動する際の、各受圧部75の軸線L10における第1スラスト軸受プレート61の第1対向面62に対する位置の軌跡を仮想円C1でそれぞれ示している。したがって、各仮想円C1は、可動スクロール32が公転運動する際の、各受圧部75における第1スラスト軸受プレート61の第1対向面62に対する位置の軌跡をそれぞれ示している。
図5に示す第1対向面62においてドットハッチングが施されていない白抜きの部分は、可動スクロール32が公転運動する際に、各受圧部75が通過する領域である。したがって、
図5に示す第1対向面62においてドットハッチングが施されていない白抜きの部分は、可動スクロール32が公転運動する際に複数の受圧部75が摺動する摺動面65である。第1対向面62は、摺動面65を複数有している。複数の摺動面65は、第1スラスト軸受プレート61の周方向に間隔を置いて配置されている。
【0060】
非摺動面66は、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74に対して回転軸12の軸方向で重なる位置に設けられる第1非摺動面661を複数有している。第1非摺動面661は、第1スラスト軸受プレート61の周方向に等間隔置きに複数配置されている。各第1非摺動面661は、第1スラスト軸受プレート61の周方向で隣り合う摺動面65同士の間にそれぞれ配置されている。
【0061】
図5では、第1対向面62においてドットハッチングが施されている部分のうち、網掛けが施されていない部分が第1非摺動面661である。ここで、
図5では、可動スクロール32が公転運動する際の、各挿入孔74における第1スラスト軸受プレート61の第1対向面62に対する位置の軌跡を仮想円で示している。そして、
図5では、可動スクロール32が公転運動する際の、各挿入孔74における各ピン64から最も離間した部位の第1スラスト軸受プレート61の第1対向面62に対する位置の軌跡を仮想円C2でそれぞれ示している。
図5に示すように、各第1非摺動面661は、各仮想円C2の内側に位置する領域である。よって、各第1非摺動面661は、非摺動面66のうち、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74それぞれに対して回転軸12の軸方向で重なるとともに複数の受圧部75が摺動しない部分である。したがって、非摺動面66は、可動スクロール32が公転運動する際に一部が各挿入孔74と重なっている。
【0062】
各第1非摺動面661の一部は、各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられている。したがって、可動スクロール32が公転運動する際に、第1対向面62において、各第1非摺動面661の一部が、各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられるように、第2対向面72に対する複数の受圧部75の突出位置や、各挿入孔74の孔径の大きさが予め設定されている。
【0063】
また、非摺動面66は、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74と重ならず、且つ各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられている第2非摺動面662を複数有している。したがって、非摺動面66の一部は、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74と重ならず、且つ摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられている。
図5では、第1対向面62においてドットハッチングが施されている部分のうち、網掛けが施されている部分であって、且つ各摺動面65に対して径方向外周側となる部分が第2非摺動面662である。各第2非摺動面662は、第1スラスト軸受プレート61の周方向で隣り合う第1非摺動面661同士の間で第1対向面62の外周縁部に沿って弧状に延びている。各第2非摺動面662は、第1スラスト軸受プレート61の周方向で隣り合う第1非摺動面661同士を接続している。
【0064】
さらに、非摺動面66は、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74と重ならず、且つ仮想円C2よりも内周側に位置する第3非摺動面663を複数有している。
図5では、第1対向面62においてドットハッチングが施されている部分のうち、網掛けが施されている部分であって、且つ仮想円C2よりも内周側に位置する部分が第3非摺動面663である。各第3非摺動面663は、第1スラスト軸受プレート61の周方向で隣り合う摺動面65同士の間で第1対向面62の内周縁部に沿って延びている。
【0065】
図4に示すように、第1スラスト軸受プレート61は、平板状のプレート本体部67と、プレート本体部67の一面にコーティングされたコーティング層68と、を有している。プレート本体部67は、例えば、鋼製である。第1スラスト軸受プレート61は、プレート本体部67におけるコーティング層68とは反対側の面が、可動基板32aの背面32eに接合されることにより可動スクロール32に固定されている。したがって、第1スラスト軸受プレート61の第1対向面62は、コーティング層68からなる。
【0066】
コーティング層68は、プレート本体部67の一面に樹脂コートが施されることで、プレート本体部67の一面を被覆した状態でプレート本体部67の一面に設けられている。コーティング層68は、バインダー樹脂に固体潤滑剤が添加されてなる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、又はこれらの樹脂のジイソシアネート変性樹脂、BPDA変性樹脂、スルホン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、エストラマー、アクリレート化合物(メタアクリレート化合物)等が挙げられる。固体潤滑剤としては、グラファイト、カーボン、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、フッ素系樹脂、SnやBi等の軟質金属等が挙げられる。コーティング層68は、第2スラスト軸受プレート71の各受圧部75のビッカース硬度に対して、100以上下回るビッカース硬度である軟らかい材質により形成されている。
【0067】
摺動面65は、平滑面65aと、平滑面65aよりも凹む複数の摺動面溝65bと、を有している。平滑面65aは、各受圧部75の平坦面75fに沿って延びる平坦面状である。摺動面溝65bは、筋状である。また、非摺動面66は、複数の非摺動面溝66bを有している。非摺動面溝66bは、筋状である。非摺動面66の表面粗さは、10μm~20μmである。摺動面65の表面粗さは、5μm以下である。したがって、非摺動面66の表面粗さは、摺動面65の表面粗さよりも大きい。
【0068】
図6に示すように、プレート本体部67の一面に樹脂コートが施されることで形成されるコーティング層68の表面粗さは、10μm~20μmである。そして、このコーティング層68の表面粗さを、第1対向面62の初期粗さとして残したまま、第1スラスト軸受プレート61を可動基板32aの背面32eに固定する。
【0069】
図7に示すように、可動スクロール32が公転運動する際に、複数の受圧部75が第1対向面62を摺動することにより、第1対向面62に摺動面65が形成される。このとき、各受圧部75の平坦面75fが第1対向面62を摺動し、第1対向面62が各受圧部75の平坦面75fに削られて平滑化されることにより、摺動面65に平滑面65aが形成される。このように、摺動面65は、各受圧部75の平坦面75fによって平滑化されることにより、第1対向面62の初期粗さよりも小さい表面粗さとなる。
【0070】
図8に示すように、摺動面65には、可動スクロール32が公転運動する際に、各受圧部75の平坦面75fに削られずに第1対向面62の初期粗さとして残っている部分が平滑面65aよりも凹む摺動面溝65bとして存在している。したがって、第1対向面62の初期粗さは、可動スクロール32が公転運動する際に第1対向面62が各受圧部75の平坦面75fに削られても、摺動面溝65bが摺動面65に存在するような表面粗さに設定されている。
【0071】
さらに、可動スクロール32が公転運動する際に、第1対向面62における複数の受圧部75が摺動しない部位が非摺動面66として形成される。したがって、非摺動面66の表面粗さは、第1対向面62の初期粗さと同じ表面粗さである。各第1非摺動面661、各第2非摺動面662、及び各第3非摺動面663それぞれの表面粗さは同じであり、第1非摺動面661、第2非摺動面662、及び第3非摺動面663それぞれに非摺動面溝66bが形成されている。
【0072】
図5に示すように、各第1非摺動面661は、第1対向面62において、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74に対して回転軸12の軸方向で重なるとともに複数の受圧部75が摺動しない部位に形成されている。したがって、各第1非摺動面661は、可動スクロール32が公転運動する際に、各挿入孔74の存在により、第1対向面62に必然的に形成されることになる。
【0073】
また、各第2非摺動面662は、第1対向面62において、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74と重ならず、且つ各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられている。したがって、可動スクロール32が公転運動する際に、第1対向面62において、各挿入孔74と重ならず、且つ各摺動面65に対して径方向外周側となる部位に複数の受圧部75が摺動しないように、第2対向面72に対する複数の受圧部75の突出位置や、各挿入孔74の孔径の大きさ、さらには、第1スラスト軸受プレート61の外径の大きさが予め設定されている。
【0074】
さらに、各第3非摺動面663は、第1対向面62において、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74と重ならず、且つ仮想円C2よりも内周側に位置する部位に形成されている。したがって、可動スクロール32が公転運動する際に、第1対向面62において、各挿入孔74と重ならず、且つ仮想円C2よりも内周側に位置する部位に複数の受圧部75が摺動しないように、第2対向面72に対する複数の受圧部75の突出位置や、各挿入孔74の孔径の大きさ、さらには、第1スラスト軸受プレート61の第1貫通孔63の孔径の大きさが予め設定されている。
【0075】
図4に示すように、非摺動面66の表面粗さが、摺動面65の表面粗さよりも大きいため、非摺動面66に対して形成されている単位面積当たりの非摺動面溝66bの量は、摺動面65に対して形成されている単位面積当たりの摺動面溝65bの量よりも多い。
【0076】
次に、本実施形態の作用について説明する。
可動スクロール32は、可動スクロール32が公転運動することにより圧縮される冷媒の圧力と、可動スクロール32の可動基板32aの背面32eに作用する背圧室54の圧力との圧力差によってスラスト荷重を受ける。特に、圧縮される流体である冷媒として、二酸化炭素を採用したスクロール型圧縮機10においては、圧縮される冷媒の圧力が高いため、可動スクロール32が受けるスラスト荷重が大きくなる。
【0077】
ここで、背圧室54の冷媒に含まれるオイルは、第1対向面62と第2対向面72との間に供給される。そして、第1対向面62と第2対向面72との間に供給されるオイルが、各受圧部75の面取り部75eによるくさび効果によって、各受圧部75の周囲から各受圧部75の平坦面75fと第1対向面62の各摺動面65との間に引き込まれ、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に油膜が形成される。スラスト軸受部60は、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に形成される油膜の反力によって、可動スクロール32からのスラスト荷重を軸支部材20側で受承する。また、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に形成される油膜によって、各受圧部75と第1対向面62との間の摩擦が生じ難くなる。その結果、スラスト軸受部60の潤滑性が維持され、第1対向面62の各摺動面65と各受圧部75の平坦面75fとの間での焼き付きが抑制される。
【0078】
また、第1対向面62と第2対向面72との間に供給されたオイルは、非摺動面66の非摺動面溝66bに保持される。また、各受圧部75の周囲から各受圧部75の平坦面と各摺動面65との間に引き込まれたオイルは、各摺動面65の摺動面溝65bに保持される。
【0079】
ここで、非摺動面66の非摺動面溝66bに保持されているオイルには、可動スクロール32の公転運動に伴う遠心力が作用し、非摺動面溝66bに保持されているオイルが遠心力によって、非摺動面溝66bから吹き飛ばされる。その結果、非摺動面溝66bに保持されていたオイルが、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65との間に供給され、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に油膜が形成され易くなる。したがって、スラスト軸受部60の潤滑性がさらに向上する。
【0080】
また、各摺動面65の摺動面溝65bに保持されているオイルにも、可動スクロール32の公転運動に伴う遠心力が作用し、各摺動面溝65bに保持されているオイルが遠心力によって、各摺動面溝65bから吹き飛ばされる。その結果、各摺動面溝65bに保持されていたオイルも、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65との間に供給され、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に油膜が形成され易くなる。したがって、スラスト軸受部60の潤滑性がさらに向上する。
【0081】
さらに、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65との間のオイルに、可動スクロール32の公転運動に伴う遠心力が作用して、各摺動面65に対して径方向外周側にオイルが吹き飛ばされても、各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられた各第1非摺動面661の一部や各第2非摺動面662によって、オイルが保持される。したがって、各第1非摺動面661の一部や各第2非摺動面662に保持されたオイルが、可動スクロール32の公転運動に伴って、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65との間に供給され易くなる。その結果、スラスト軸受部60の潤滑性がさらに向上する。
【0082】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)非摺動面66の表面粗さが、摺動面65の表面粗さよりも大きいため、第1対向面62において、例えば、非摺動面66の表面粗さが、摺動面65の表面粗さ以下である場合に比べると、非摺動面66に保持されるオイルの量を多くすることができる。具体的には、非摺動面66の表面粗さが、摺動面65の表面粗さよりも大きいため、非摺動面66に対して形成されている単位面積当たりの非摺動面溝66bの量は、摺動面65に対して形成されている単位面積当たりの摺動面溝65bの量よりも多い。したがって、非摺動面66の非摺動面溝66bに保持されている単位面積当たりのオイルの量は、摺動面65の摺動面溝65bに保持されている単位面積当たりのオイルの量よりも多くなっている。したがって、非摺動面66に保持されたオイルが、可動スクロール32の公転運動に伴って、各受圧部75と摺動面65との間に供給され易くなり、各受圧部75と摺動面65との間に油膜が形成され易くなる。その結果として、例えば、第1対向面62と第2対向面72との間にオイルが供給され難い状況下でスクロール型圧縮機10が運転されている場合であっても、各受圧部75と第1対向面62との間に油膜を形成し易くすることができ、スラスト軸受部60の潤滑性を向上させることができる。
【0083】
(2)第1対向面62は可動スクロール32と共に公転運動し、第2対向面72は軸支部材20に固定されている。これによれば、非摺動面66に保持されたオイルには、可動スクロール32の公転運動に伴う遠心力が作用し、非摺動面66に保持されているオイルが遠心力によって、非摺動面66から吹き飛ばされ易くなる。その結果、非摺動面66に保持されていたオイルが、各受圧部75と摺動面65との間に供給され易くなるため、各受圧部75と摺動面65との間に油膜が形成され易くなる。したがって、スラスト軸受部60の潤滑性をさらに向上させることができる。
【0084】
(3)非摺動面66の一部は、摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられている。これによれば、各受圧部75と摺動面65との間のオイルに、可動スクロール32の公転運動に伴う遠心力が作用して、摺動面65に対して径方向外周側にオイルが吹き飛ばされても、摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられた非摺動面66によって、オイルを保持することができる。したがって、非摺動面66に保持されたオイルが、可動スクロール32の公転運動に伴って、各受圧部75と摺動面65との間に供給され易くなり、各受圧部75と摺動面65との間に油膜が形成され易くなる。その結果、スラスト軸受部60の潤滑性をさらに向上させることができる。
【0085】
(4)非摺動面66の一部である各第2非摺動面662は、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74と重ならず、且つ摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられている。これによれば、例えば、非摺動面66が、第1対向面62において、可動スクロール32が公転運動する際に各挿入孔74に対して回転軸12の軸方向で重なる部分にのみ形成されている場合に比べると、第1対向面62における非摺動面66の領域を多くすることができる。したがって、非摺動面66に保持されているオイルの量が多くなるため、非摺動面66に保持されているオイルが各受圧部75と摺動面65との間にさらに供給され易くなり、各受圧部75と摺動面65との間に油膜がさらに形成され易くなる。その結果、スラスト軸受部60の潤滑性をさらに向上させることができる。
【0086】
(5)非摺動面66の表面粗さが10μm~20μmである非摺動面66は、オイルを保持するための非摺動面66として好適である。また、摺動面65の表面粗さが5μm以下である摺動面65は、各受圧部75と摺動面65との間に油膜を形成するための摺動面65として好適である。
【0087】
(6)各第1非摺動面661は、可動スクロール32が公転運動する際に、各挿入孔74の存在により、第1対向面62に必然的に形成される。したがって、可動スクロール32の自転を阻止する自転阻止機構80を構成する各挿入孔74を利用して、第1対向面62に各第1非摺動面661が自動的に形成されるため、第1対向面62に各第1非摺動面661を容易に形成することができる。
【0088】
(7)摺動面65には、可動スクロール32が公転運動する際に、各受圧部75の平坦面75fに削られずに第1対向面62の初期粗さとして残っている部分が平滑面65aよりも凹む摺動面溝65bとして存在している。したがって、摺動面65に摺動面溝65bを自動的に形成することができる。そして、各摺動面65の摺動面溝65bに保持されているオイルに、可動スクロール32の公転運動に伴う遠心力が作用し、各摺動面溝65bに保持されているオイルが遠心力によって、各摺動面溝65bから吹き飛ばされる。その結果、各摺動面溝65bに保持されていたオイルが、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65との間に供給され、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に油膜が形成され易くなる。したがって、スラスト軸受部60の潤滑性をさらに向上させることができる。
【0089】
(8)コーティング層68として、例えば、ダイアモンドライクカーボン層を採用することが考えられる。これによれば、例えば、第1対向面62と第2対向面72との間にオイルが供給され難い状況下でスクロール型圧縮機10が運転されており、各受圧部75と第1対向面62との間に油膜が形成され難い場合であっても、各受圧部75と第1対向面62との間の摩擦が生じ難くなる。しかしながら、ダイアモンドライクカーボン層は、コーティングされる対象の基材の表面の下地処理を精度良く行わないと、ダイアモンドライクカーボン層が基材の表面から剥離する虞があるため、コーティング処理にコストが嵩む。本実施形態では、第1対向面62と第2対向面72との間にオイルが供給され難い状況下でスクロール型圧縮機10が運転されている場合であっても、各受圧部75と第1対向面62との間に油膜が形成され易いため、第1対向面62の表面のコーティング層68として、ダイアモンドライクカーボン層を採用する必要が無い。したがって、コストを低減することができる。
【0090】
(9)第1スラスト軸受プレート61は、第2スラスト軸受プレート71に対して公転運動するため、例えば、回転軸12の回転数が一定の場合、第2スラスト軸受プレート71に対する第1スラスト軸受プレート61の回転速度(公転速度)は、各滑り軸受19,23に対する回転軸12の回転速度に比べて遅い。第2スラスト軸受プレート71に対する第1スラスト軸受プレート61の回転速度が遅くなるほど、各受圧部75の周囲から各受圧部75の平坦面75fと第1対向面62の各摺動面65との間にオイルが引き込まれ難くなり、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に油膜が形成され難くなる。したがって、スクロール型圧縮機10では、第1対向面62と第2対向面72との間に供給されるオイルの量は、各滑り軸受19,23と回転軸12との間へ供給されるオイルの量よりも少なくなりがちである。そこで、本実施形態では、非摺動面溝66bに保持されていたオイルを、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65との間に供給し、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に油膜を形成し易くしたため、スクロール型圧縮機10のスラスト軸受部60において潤滑性を維持し易くすることができる。
【0091】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0092】
○ 実施形態において、スラスト軸受部60は、第1スラスト軸受プレート61が軸支部材20におけるモータ室22とは反対側の端面に固定されており、第2スラスト軸受プレート71が可動スクロール32の可動基板32aの背面32eに固定されている構成であってもよい。この場合、第1対向面62において、非摺動面66の非摺動面溝66bに保持されているオイルは、可動スクロール32の公転運動に伴って流れ出す各受圧部75の周囲の冷媒に追従して、非摺動面溝66bから引き出されて、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65との間に供給される。これにより、各受圧部75の平坦面75fと各摺動面65の平滑面65aとの間に油膜が形成され易くなる。したがって、スラスト軸受部60の潤滑性がさらに向上する。要は、第1対向面62及び第2対向面72の一方は可動スクロール32と共に公転運動し、第1対向面62及び第2対向面72の他方は軸支部材20に固定されていればよい。
【0093】
○ 実施形態において、スラスト軸受部60は、第1スラスト軸受プレート61及び第2スラスト軸受プレート71を備えていない構成であってもよい。この場合、スラスト軸受部60は、例えば、可動スクロール32の可動基板32aの背面32eを第1対向面62とし、軸支部材20におけるモータ室22とは反対側の端面を第2対向面72とする構成であってもよい。
【0094】
○ 実施形態において、非摺動面66は、第2非摺動面662及び第3非摺動面663を有していない構成であってもよい。すなわち、第1対向面62には、非摺動面66として、第1非摺動面661のみが形成されていてもよい。要は、第1対向面62は、可動スクロール32が公転運動する際に少なくとも一部が各挿入孔74に対して回転軸12の軸方向で重なる位置に設けられるとともに複数の受圧部75が摺動しない非摺動面66を有していればよい。
【0095】
○ 実施形態において、非摺動面66は、第3非摺動面663を有していない構成であってもよい。
○ 実施形態において、非摺動面66は、第2非摺動面662を有していない構成であってもよい。この場合、各第1非摺動面661の一部のみが、第1対向面62において、各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられている。
【0096】
○ 実施形態において、各第1非摺動面661の全ての部位が、第1対向面62において、各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられていてもよい。要は、非摺動面66の少なくとも一部が、第1対向面62において、各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられていればよい。
【0097】
○ 実施形態において、非摺動面66は、第2非摺動面662を有していない構成であってもよい。さらに、各第1非摺動面661の一部が、第1対向面62において、各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に設けられていなくてもよい。要は、第1対向面62において、各摺動面65に対して径方向外周側となる位置に非摺動面66が設けられていなくてもよい。
【0098】
○ 実施形態において、コーティング層68は、プレート本体部67の一面に、例えば、軟質金属コートが施されることで、プレート本体部67の一面を被覆した状態でプレート本体部67の一面に設けられていてもよい。軟質金属コートとしては、例えば、Snめっき、Cuめっき、Znめっき、及びBiめっき等が挙げられる。要は、コーティング層68は、第2スラスト軸受プレート71の各受圧部75のビッカース硬度に対して、軟らかい材質により形成されていればよい。
【0099】
○ 実施形態において、非摺動面66の表面粗さは、3μm~20μmの範囲であればよい。例えば、非摺動面66の表面粗さが3μmである場合、摺動面65の表面粗さが3μm未満であればよい。要は、非摺動面66の表面粗さが、摺動面65の表面粗さよりも大きければよい。
【0100】
○ 実施形態において、各受圧部75は、円柱状でなくてもよく、例えば、三角柱状や四角柱状であってもよい。この場合であっても、各受圧部75の先端面は、平坦面状になっており、各受圧部75の外周面75aと平坦面75fとの間の角部である全周縁部が面取りされている必要がある。
【0101】
○ 実施形態において、各受圧部75の面取り部75eが、円弧状に面取りされていなくてもよく、例えば、円錐形状に面取りされた円錐テーパ形状であってもよい。要は、各受圧部75の周縁部において、くさび効果が得られるように、各受圧部75の外周面75aと平坦面75fとの間の角部である全周縁部が面取りされていればよい。
【0102】
○ 実施形態において、第1対向面62から突出するピン64の数は、2つ以上であればよい。要は、第1対向面62から突出するピン64の数は複数であればよく、第2対向面72に形成される挿入孔74にそれぞれ挿入されて、可動スクロール32の自転を阻止する自転阻止機構80を構成するものであればよい。なお、第1対向面62から突出するピン64の数に合わせて、第2対向面72に形成される挿入孔74の数も適宜変更する必要がある。
【0103】
○ 実施形態において、第2対向面72には、複数のピン64が各々挿入される挿入部としての挿入凹部が形成されていてもよい。要は、ピン64が挿入される挿入部は、第2スラスト軸受プレート71を厚み方向に貫通する挿入孔74に限定されるものではない。
【0104】
○ 実施形態において、可動スクロール32に対して固定スクロール31とは反対側に配置される対向部材としては、軸支部材20に限定されるものではない。例えば、可動スクロール32と軸支部材20との間に対向部材として機能する部材を別途配置してもよい。
【0105】
○ 実施形態において、各滑り軸受19,23に代えて、例えば、転がり軸受をそれぞれ採用してもよい。
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、モータハウジング15の周壁15bが、圧縮機構13を回転軸12の径方向外側で覆っていない構成であってもよい。例えば、固定スクロール31の固定外周壁31cがハウジング11の一部を構成していてもよい。
【0106】
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、例えば、インバータ装置18が、ハウジング11に対して回転軸12の径方向外側に配置されている構成であってもよい。要は、圧縮機構13、電動モータ14、及びインバータ装置18が、この順序で、回転軸12の軸方向に並設されていなくてもよい。
【0107】
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、電動モータ14によって駆動されるタイプでなくてもよく、例えば、車両のエンジンによって駆動されるタイプであってもよい。
【0108】
○ 実施形態において、冷媒として二酸化炭素を採用したが、冷媒として、例えば、フロンを採用してもよい。
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、車両空調装置に用いられていたが、これに限らず、例えば、スクロール型圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮機構13により圧縮するために用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0109】
10…スクロール型圧縮機、20…対向部材である軸支部材、31…固定スクロール、32…可動スクロール、60…スラスト軸受部、62…第1対向面、64…ピン、65…摺動面、66…非摺動面、68…コーティング層、72…第2対向面、74…挿入部としての挿入孔、75…受圧部、80…自転阻止機構。