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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】生成プログラム、生成方法、生成装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20240220BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240220BHJP
【FI】
A61B6/46 536Z
G06T7/00 350B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020103246
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021194261
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 信浩
(72)【発明者】
【氏名】武部 浩明
(72)【発明者】
【氏名】馬場 孝之
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 雅彦
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-110714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0160977(US,A1)
【文献】特許第6125126(JP,B1)
【文献】特開2020-054579(JP,A)
【文献】特開2005-058760(JP,A)
【文献】特開2013-175003(JP,A)
【文献】特開2019-074868(JP,A)
【文献】K. S. Kim et al.,A Compressed-Sensing Based Blind Deconvolution Method for Image Deblurring in Dental Cone-Beam Computed Tomography,Journal of Digital Imaging,米国,Society for Imaging Infomatics in Medicine,2018年09月20日,Vol. 32,pp. 478-488,DOI: 10.1007/s10278-018-0120-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
G06T 7/00 - 7/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられ、前記第1の画像に適用された第1のフィルタを決定し、
前記第1のフィルタの特性が打ち消された前記第1の画像に、前記第1の撮影条件と異なる第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用した第2の画像を生成し、
前記第1の画像に付与された機械学習用の正解ラベルを、前記第2の画像に付与する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする生成プログラム。
【請求項2】
前記決定する処理は、前記第1の画像に畳み込み演算により適用された第1のPSFを決定し、
前記生成する処理は、フーリエ変換により周波数領域に変換され、さらに乗算により前記第1のPSFの特性が打ち消された前記第1の画像に、フーリエ変換により周波数領域に変換された第2のPSFを乗算により適用して得られた結果を、フーリエ逆変換による時間領域に変換した画像を、前記第2の画像として生成することを特徴とする請求項1に記載の生成プログラム。
【請求項3】
前記決定する処理は、前記第1の画像の撮影機器及び再構成関数の組み合わせである第1の撮影条件に対応付けられた前記第1のフィルタを決定し、
前記生成する処理は、前記第1のフィルタの特性が打ち消された前記第1の画像に、前記第1の撮影条件と異なる撮影機器及び再構成関数の組み合わせである前記第2の撮影条件に対応付けられた前記第2のフィルタを適用した画像を、前記第2の画像として生成することを特徴とする請求項に記載の生成プログラム。
【請求項4】
前記付与する処理は、人体のCT(Computed Tomography)画像である前記第1の画像に付与された、症例に対応した正解ラベルを前記第2の画像に付与することを特徴とする請求項に記載の生成プログラム。
【請求項5】
第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられ、前記第1の画像に適用された第1のフィルタを決定し、
前記第1のフィルタの特性が打ち消された前記第1の画像に、前記第1の撮影条件と異なる第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用した第2の画像を生成し、
前記第1の画像に付与された機械学習用の正解ラベルを、前記第2の画像に付与する
処理をコンピュータが実行することを特徴とする生成方法。
【請求項6】
第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられ、前記第1の画像に適用された第1のフィルタを決定し、
前記第1のフィルタの特性が打ち消された前記第1の画像に、前記第1の撮影条件と異なる第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用した第2の画像を生成し、
前記第1の画像に付与された機械学習用の正解ラベルを、前記第2の画像に付与する
制御部を含むことを特徴とする生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療における画像検査は、医師不足や1検査あたりの撮影画像数の増加により、医師の負担が増大しているため、効率化が求められている。医師が、過去の似た症例の病名やカルテ情報を参考にすることで、画像検査に要する時間を短縮し、効率化することが期待される。
【0003】
過去の似た症例を参考にするためには、機械学習等により、画像から症例を特徴化し、特徴を基に過去の類似した症例を検索することが考えられる。一方で、画像内の症例を特徴化する機械学習は、学習に含まれていない画像を識別することができない。そのため、撮影条件の違いによって画質が異なるCT(Computed Tomography)画像において、想定される撮影条件で撮影された様々なバリエーションを有する画像と正解ラベルのペアを大量に生成することが求められる。
【0004】
画像と正解ラベルのペアを大量に生成する方法として、医師が知見に基づいて、CT画像内の症例の正解ラベルを手作業で作成する方法が考えられる。また、既に正解ラベル付けされた学習データに対し、回転、反転、平行移動、スケール変化、色変化、コントラスト変化等の画像処理を行うことで、様々なバリエーションを有する画像を生成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-180729号公報
【文献】特開2019-56957号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】ピクトグラムでわかる呼吸器内科(https://respiresi.exblog.jp/23965463/)
【文献】三浦 健太, 喜田 卓也, “花画像データセットの構築と畳み込みニューラルネットワーク,” DEIM Forum 2017, 2017.
【文献】A. Dosovitskiy, J. T. Springenberg, and T. Brox, “Unsupervisedfeature learning by augmenting single images,” arXiv, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法には、適切な学習用の画像と正解ラベルのペアを、効率良く生成することができない場合があるという問題がある。例えば、医師が正解ラベルを手作業で作成する方法は、手作業を要する上に、十分な量の画像をあらかじめ用意する必要があり、画像と正解ラベルのペアを効率良く生成することができない場合がある。また、画像処理により画像を生成する方法では、撮影画像として存在し得ない画像が生成されることがあり、識別精度を向上させることができない場合がある。
【0008】
1つの側面では、適切な学習用の画像と正解ラベルのペアを、効率良く生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様において、生成プログラムは、第1の画像に適用された第1のフィルタを決定する処理をコンピュータに実行させる。生成プログラムは、前記第1のフィルタの特性が打ち消された前記第1の画像に、第2のフィルタを適用した第2の画像を生成する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、適切な学習用の画像と正解ラベルのペアを、効率良く生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、類似症例の検索方法を説明する図である。
図2図2は、生成システムの構成例を示す図である。
図3図3は、学習データ情報のデータ構造の例を示す図である。
図4図4は、撮影条件情報のデータ構造の例を示す図である。
図5図5は、生成データ情報のデータ構造の例を示す図である。
図6図6は、画像と正解ラベルのペアの生成方法を説明する図である。
図7図7は、生成装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、PSF決定処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、PSF変換処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、画像生成処理の流れを示すフローチャートである。
図11図11は、正解ラベル付与処理の流れを示すフローチャートである。
図12図12は、ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る生成プログラム、生成方法、生成装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。また、各実施例は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【実施例
【0013】
まず、図1を用いて、CT画像による類似症例の検索について説明する。図1に示すように、検索キーとなるCT画像から、機械学習を用いた方法及び画像解析により異常陰影の候補が抽出される。そして、抽出された異常陰影の候補とデータベースに保存済みの過去の症例の陰影のデータとの照合が行われ、検索キーと類似する画像の一覧が検索結果として得られる。
【0014】
図2は、生成システムの構成例を示す図である。図2に示すように、生成システム1は、生成装置10、記憶装置20、画像入力装置30及び計算機40を有する。例えば、計算機40は、ユーザが操作するパーソナルコンピュータ等の端末である。また、例えば、生成装置10、記憶装置20及び画像入力装置30は、サーバである。また、生成システム1の各装置の機能の一部及び全部は、一体として構成されていてもよい。
【0015】
図1に示すように、生成装置10は、画像入力装置30から入力された画像を基に、学習用の画像と正解ラベルのペアを生成する。その際、生成装置10は、必要に応じて記憶装置20に記憶されている情報を参照する。また、生成装置10は、計算機40を介して行われた操作に応じて処理を行ってもよい。
【0016】
生成装置10は、決定部101、変換部102、生成部103及び付与部104を有する。また、記憶装置20は、学習データ情報201、撮影条件情報202及び生成データ情報203を記憶する。
【0017】
学習データ情報201は、既存の学習用の画像に関する情報を含む。例えば、既存の学習用の画像は、実際にCT機器等によって撮影され、再構成関数が適用された画像のデータである。
【0018】
図3は、学習データ情報のデータ構造の例を示す図である。図3に示すように、学習データ情報201は、ファイル名、リンク、IDを含む。ファイル名は、画像ファイルの名称である。リンクは画像ファイルの格納場所のパスである。IDは、画像と生成された画像とを紐付けるためのインデックスである。画像の生成については後述する。例えば、図3の例では、「Image1」という名称の画像ファイルのIDは「IMG1」である。
【0019】
撮影条件情報202は、撮影条件に関する情報を含む。例えば、撮影条件は、画像を撮影するCT機器の種類及び再構成関数である。また、撮影条件は、管電圧等を含んでいてもよい。
【0020】
図4は、撮影条件情報のデータ構造の例を示す図である。図4に示すように、撮影条件情報202は、撮影機器、再構成関数、時間データ、リンク(時間データ)、周波数データ、リンク(周波数データ)、生成を含む。撮影機器及び再構成関数は、撮影条件に相当する。時間データは、時間領域のPSFの有無を管理するためのフラグである。リンク(時間データ)は、時間領域のPSFデータの格納場所である。周波数データは、周波数領域のPSFの有無を管理するためのフラグである。リンク(周波数データ)は、周波数領域のPSFデータの格納場所である。なお、格納場所は、実際にデータが格納されている場所であってもよいし、対応するデータが生成された場合に格納される予定の場所であってもよい。生成は、学習データの生成への利用を管理するためのフラグである。例えば、図4の例では、撮影機器が「D1」、再構成関数が「F1」である場合の時間データ及び周波数データは無く、データ生成に利用する撮影条件である。
【0021】
図5は、生成データ情報のデータ構造の例を示す図である。図5に示すように、生成データ情報203は、ファイル名、リンク、IDを含む。ファイル名は、画像ファイルの名称である。リンクは画像ファイルの格納場所のパスである。IDは、画像と生成された画像とを紐付けるためのインデックスである。例えば、図5の例では、「Image1_PSF1」という名称の画像ファイルのIDは「IMG1」である。
【0022】
図6は、画像と正解ラベルのペアの生成方法を説明する図である。図5に示すように、生成装置10は、既存の学習用の画像201aを基に画像生成を行い、画像203aを生成する。このとき、生成装置10は、画像201aに付されていた正解ラベルと同じ正解ラベルを画像203aに付与する。以下、画像と正解ラベルのペアを生成するための、生成装置10の各処理部の詳細を説明する。
【0023】
決定部101は、第1の画像に適用された第1のフィルタを決定する。ここで、第1の画像は既存の学習用の画像であり、決定部101は、第1の画像の情報を学習データ情報201から取得する。
【0024】
ここで、本実施例におけるフィルタは、PSFである。PSFは、畳み込み演算により画像に適用される。そのため、例えば、決定部101は、第1の画像に畳み込み演算により適用された第1のPSFを決定する。
【0025】
また、PSFは撮影条件と対応付けられている。また、撮影条件には、撮影機器の種類と再構成関数が含まれる。そのため、例えば、決定部101は、第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを決定する。また、決定部101は、第1の画像の撮影機器及び再構成関数の組み合わせである第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを決定する。
【0026】
例えば、決定部101は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像に付随するタグから撮影機器名(種類)及び再構成関数を抽出することができる。DICOMタグ(0008, 1090)のManufacturer’s Model Nameは撮影機器名に対応する。また、DICOMタグ(0018, 1210)のConvolution Kernelは再構成関数に対応する。
【0027】
また、撮影機器ごとの再構成関数の一覧が、計算機40を通じてユーザにより生成装置10に入力されていてもよい。例えば、ユーザは、撮影機器D1で再構成関数F1及びF3が使用されることを入力する。また、例えば、ユーザは、撮影機器D2で再構成関数F2及びF4が使用されることを入力する。
【0028】
決定部101は、金属ワイヤ(ファントム)の撮影によるPSF決定を行うことができる(参考文献:市川勝弘, 原孝則, 丹羽伸次, 大橋一也, “CTにおける金属ワイヤによるMTFの測定法,” 日本放射線学会雑誌, 2008.)。また、決定部101は、CT画像中の血管を利用したPSF決定を行うことができる(参考文献:河田佳樹, 中屋良宏, 仁木登, 大松広伸, 江口研二, 金子昌弘, 森山 紀之, “CT像からのPSF測定法,” 電子情報通信学会論文誌, 2008.)。
【0029】
さらに、決定部101は、データの生成に利用するPSFを決定する。ここで、学習データとして利用するデータは、様々なバリエーションを有する画像が適しており、バリエーション(例えば、画質の違い)は、PSFの形状によって変化する。そのため、既存の学習用の画像の撮影条件のPSFと異なる(類似していない)PSFを有する画像を生成することで、データの網羅性を向上させることが可能である。そこで、決定部101は、既存の学習用の画像の撮影条件のPSFと生成する画像の撮影条件のPSFとの分布の類似度がある閾値以下のPSFを決定する。
【0030】
また、決定部101は、識別を行う対象ごとにPSFを決定する。例えば、画像データの収集が困難な医用画像は、症例ごとに撮影条件に偏りが存在する可能性があるため、識別を行う対象すべてに同一のPSFを用いた学習データの生成が適しているとは限らない。
【0031】
ここで、互いに分布の異なるPSF1、PSF2、PSF3があり、症例Aの学習データにはPSF1、PSF2、症例Bの学習データにはPSF1、PSF3がそれぞれ含まれているとする。この場合、症例AにはPSF3による学習データの生成、症例BにはPSF2による学習データの生成が適している。なお、PSFの分布の類似は、例えば、(1)式に示す正規化相互相関関数Rによって算出されてもよい。
【0032】
【数1】
【0033】
ただし、I(x,y)は、既存の学習データとして利用されているPSFである。また、T(x,y)は、生成する学習データのPSFである。また、hはPSFの高さである。また、wはPSFの幅である。
【0034】
変換部102は、時間領域のPSF又は画像を、フーリエ変換により周波数領域へ変換する。また、変換部102は、周波数領域のPSF又は画像を、フーリエ変換により時間領域へ変換する。
【0035】
変換部102は、時間領域の画像であるI(x,y)を、(2)式のように周波数領域に変換する。F{ }はフーリエ変換である。
【0036】
【数2】
【0037】
変換部102は、時間領域のPSFであるP(x,y)を、(3)式のように周波数領域に変換する。
【0038】
【数3】
【0039】
生成部103は、第1のフィルタの特性が打ち消された第1の画像に、第2のフィルタを適用した第2の画像を生成する。例えば、生成部103は、フーリエ変換により周波数領域に変換され、さらに乗算により第1のPSFの特性が打ち消された第1の画像に、フーリエ変換により周波数領域に変換された第2のPSFを乗算により適用して得られた結果を、フーリエ逆変換による時間領域に変換した画像を、第2の画像として生成する。
【0040】
ここで、I(x,y)をCT画像とする。CT機器で取得した投影データ(生データ)をO(x,y)とする。また、PSFをP(x,y)とする。このとき、I(x,y)は、(4)式のように表される。ただし、*は畳み込み演算子(フィルタリング処理)である。
【0041】
【数4】
【0042】
生成部103は、(5)式によりF(I´(x,y))を生成する。F(I´(x,y))は、フーリエ変換により周波数領域に変換され、さらに乗算により第1のPSFの特性が打ち消された第1の画像に、フーリエ変換により周波数領域に変換された第2のPSFを乗算により適用して得られた結果である。
【0043】
【数5】
【0044】
F{P(x,y)}/F{P(x,y)}は、撮影条件(PSF)の打ち消しを意味する。また、F{P(x,y)}やF{P´(x,y)}を掛けることは、PSFの適用を意味する。このように、時間領域における畳み込み演算は、周波数領域における乗算で表現できる。
【0045】
さらに、生成部103は、(6)式により第2の画像I´(x,y)を生成する。I´(x,y)は、F(I´(x,y))をフーリエ逆変換による時間領域に変換した画像である。
【0046】
【数6】
【0047】
PSFはフィルタの一例である。また、PSFは撮影条件に対応する。このため、生成部103は、第1のフィルタの特性が打ち消された第1の画像に、第1の撮影条件と異なる第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用した画像を、第2の画像として生成する。
【0048】
撮影条件は、例えば撮影機器及び再構成関数の組み合わせということができる。このため、生成部103は、第1のフィルタの特性が打ち消された第1の画像に、第1の撮影条件と異なる撮影機器及び再構成関数の組み合わせである第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用した画像を、第2の画像として生成する。
【0049】
付与部104は、第1の画像に付与された機械学習用の正解ラベルを、第2の画像に付与する。付与部104は、人体のCT画像である第1の画像に付与された、症例に対応した正解ラベルを第2の画像に付与する。例えば、図6に示すように、既存の学習用の画像201aに付与されていた正解ラベルが「症例A」であれば、付与部104は、生成部103によって生成された画像203aにも正解ラベル「症例A」を付与する。
【0050】
図7は、生成装置の処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、生成装置10は、まず画像を取得する(ステップS1)。ここでは、生成装置10は、既存の学習用の画像であって、正解ラベルが付与された画像を取得する。
【0051】
次に、生成装置10は、PSF決定処理を行う(ステップS2)。そして、生成装置10は、PSF変換処理を行う(ステップS3)。ここで、生成装置10は、画像生成処理を行う(ステップS4)。さらに、生成装置10は、正解ラベル付与処理を行う(ステップS5)。そして、生成装置10は、処理結果を出力する(ステップS6)。
【0052】
処理を続行するための条件が満たされている場合(ステップS7、Yes)、生成装置10はステップS1に戻り処理を繰り返す。処理を続行するための条件が満たされていない場合(ステップS7、No)、生成装置10は、処理を終了する。例えば、処理を続行するための条件は、規定の数の画像が生成されていないこと等である。
【0053】
図8は、PSF決定処理の流れを示すフローチャートである。図8の処理は、図7のPSF決定処理(ステップS2)に相当する。まず、決定部101は、記憶装置20から学習に利用する画像を取得する(ステップS101)。次に、決定部101は、画像のタグから撮影条件を特定する(ステップS102)。例えば、記憶装置20に保存されている学習に利用する画像は、CT機器によって撮影され再構成関数が適用された既存の学習用の画像である。
【0054】
他に学習に利用する画像が存在する場合(ステップS103、Yes)、決定部101はステップS102に戻り処理を繰り返す。一方、他に学習に利用する画像が存在しない場合(ステップS103、No)、決定部101はステップS105に進む。また、ステップS101~S103と並行して、決定部101は、撮影装置で取得可能な撮影条件を取得しておく(ステップS104)。
【0055】
記憶装置20に撮影条件に対応するPSFの"時間データ"フラグが0である場合(ステップS105、Yes)、決定部101は、PSFを決定し、"時間データ"フラグを1に設定する(ステップS106)。一方、記憶装置20に撮影条件に対応するPSFの"時間データ"フラグが0でない場合(ステップS105、No)、決定部101はステップS107に進む。
【0056】
処理を行っていない撮影条件が存在する場合(ステップS107、Yes)、決定部101は、ステップS105に戻り処理を繰り返す。一方、処理を行っていない撮影条件が存在しない場合(ステップS107、No)、決定部101は、学習データの生成に利用するPSFを決定する(ステップS108)。そして、決定部101は、利用するPSFの"生成"フラグを1に設定する(ステップS109)。
【0057】
図9は、PSF変換処理の流れを示すフローチャートである。図9の処理は、図7のPSF変換処理(ステップS3)に相当する。まず、変換部102は、記憶装置20から学習に利用する画像を取得する(ステップS201)。そして、変換部102は、学習に利用する画像を周波数変換し、記憶装置20に格納する(ステップS202)。
【0058】
処理を行っていない画像が存在する場合(ステップS203、Yes)、変換部102はステップS202に戻り処理を繰り返す。一方、処理を行っていない画像が存在しない場合(ステップS203、No)、変換部102は、処理を終了する。
【0059】
変換部102は、ステップS201~S203と並行して以下の処理を行う。まず、変換部102は、記憶装置20から撮影条件を取得する(ステップS204)。ここで、撮影条件に対応するPSFの"生成"フラグが1かつ"周波数データ"フラグが0である場合(ステップS205、Yes)、変換部102はステップS206に進む。一方、撮影条件に対応するPSFの"生成"フラグが1でないか、又は、"周波数データ"フラグが0でない場合(ステップS205、No)、変換部102はステップS207に進む。
【0060】
変換部102は、撮影条件に対応するPSFを周波数変換し、記憶装置20に格納し、"周波数"フラグを1に設定する(ステップS206)。以降、このとき格納した周波数領域に変換済みのPSFを、周波数データと呼ぶ。ここで、処理を行っていない撮影条件が存在する場合(ステップS207、Yes)、変換部102は、ステップS205に戻り処理を繰り返す。一方、処理を行っていない撮影条件が存在しない場合(ステップS207、No)、変換部102は処理を終了する。
【0061】
図10は、画像生成処理の流れを示すフローチャートである。図10の処理は、図7の画像生成処理(ステップS4)に相当する。まず、生成部103は、記憶装置20から学習に利用する画像の周波数変換結果を取得する(ステップS301)。また、生成部103は、記憶装置20から学習に利用する画像の撮影条件に対応したPSFの周波数変換結果を取得する(ステップS302)。
【0062】
ここで、生成部103は、画像の撮影条件の特性を打ち消す(ステップS303)。なお、PSF及び画像が周波数領域に変換済みの場合、生成部103は、乗算により撮影条件の特性の打ち消し及び周波数データの適用を行うことができる。また、生成部103は、記憶装置20から撮影条件を取得する(ステップS304)。
【0063】
ここで、"生成"フラグが1でない場合(ステップS305、No)、生成部103はステップS309に進む。一方、"生成"フラグが1である場合(ステップS305、Yes)、生成部103は、周波数データを取得する(ステップS306)。そして、生成部103は、撮影条件の特性を打ち消した結果に対して周波数データを適用し、記憶装置20に格納する(ステップS307)。さらに、生成部103は、学習に利用する画像と生成した画像を紐づける固有のIDを付与する(ステップS308)。
【0064】
ここで、処理していない撮影条件が存在する場合(ステップS309、Yes)、生成部103はステップS305に戻り処理を繰り返す。一方、処理していない撮影条件が存在しない場合(ステップS309、No)、生成部103はステップS310に進む。
【0065】
ここで、処理していない画像が存在する場合(ステップS310、Yes)、生成部103はステップ301に戻り処理を繰り返す。一方、処理していない画像が存在しない場合(ステップS310、No)、生成部103は処理を終了する。
【0066】
図11は、正解ラベル付与処理の流れを示すフローチャートである。図11の処理は、図7の正解ラベル付与処理(ステップS5)に相当する。まず、付与部104は、記憶装置20から画像生成処理で得られた画像を取得する(ステップS401)。次に、付与部104は、IDを基に画像生成処理で得られた画像に紐づく元画像を取得する(ステップS402)。さらに、付与部104は、元画像に付与されている正解ラベルを取得する(ステップS403)。
【0067】
ここで、付与部104は、画像生成処理で得られた画像に元画像から取得した正解ラベルを付与する(ステップS404)。ここで、処理していない画像が存在する場合(ステップS405、Yes)、付与部104はステップS401に戻り処理を繰り返す。一方、処理していない画像が存在しない場合(ステップS405、No)、付与部104は処理を終了する。
【0068】
上述したように、決定部101は、第1の画像に適用された第1のフィルタを決定する。生成部103は、第1のフィルタの特性が打ち消された第1の画像に、第2のフィルタを適用した第2の画像を生成する。このように、生成装置10は、既存の画像を基に、異なるフィルタが適用された画像を自動的に生成する。その結果、本実施例によれば、適切な学習用の画像と正解ラベルのペアを、効率良く生成することができる。
【0069】
例えば、本実施例をCT画像に適用する場合、医師の手作業によるデータ作成コストを低減することができる。また、特に学習データとして利用したい撮影条件で撮影された画像が少ない場合や存在しない場合であっても、学習データを生成することができ、また、異なる撮影条件で撮影された画像に対しても高い識別精度を得ることができる。
【0070】
決定部101は、第1の画像に畳み込み演算により適用された第1のPSFを決定する。生成部103は、フーリエ変換により周波数領域に変換され、さらに乗算により第1のPSFの特性が打ち消された第1の画像に、フーリエ変換により周波数領域に変換された第2のPSFを乗算により適用して得られた結果を、フーリエ逆変換による時間領域に変換した画像を、第2の画像として生成する。このように、周波数変換を行うことで、畳み込み演算によって適用されたフィルタの打ち消しや、再適用を乗算により容易に行うことができる。
【0071】
決定部101は、第1の画像の撮影条件である第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを決定する。生成部103は、第1のフィルタの特性が打ち消された第1の画像に、第1の撮影条件と異なる第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用した画像を、第2の画像として生成する。これにより、同じ対象物を撮影した画像であって、撮影条件が異なる画像を容易に生成することができる。
【0072】
決定部101は、第1の画像の撮影機器及び再構成関数の組み合わせである第1の撮影条件に対応付けられた第1のフィルタを決定する。生成部103は、第1のフィルタの特性が打ち消された第1の画像に、第1の撮影条件と異なる撮影機器及び再構成関数の組み合わせである第2の撮影条件に対応付けられた第2のフィルタを適用した画像を、第2の画像として生成する。これにより、医療のように学習データの入手が難しい分野においても、学習用の画像を容易に得ることができる。
【0073】
付与部104は、第1の画像に付与された機械学習用の正解ラベルを、第2の画像に付与する。これにより、正解ラベルが共通で画像が異なる学習データを生成することができる。
【0074】
付与部104は、人体のCT画像である第1の画像に付与された、症例に対応した正解ラベルを第2の画像に付与する。これにより、実際に撮影をすることなく、既存の画像と同じ症例の画像を生成することができる。
【0075】
ここで、(7)式のように、時間領域における畳み込み演算が、周波数領域では乗算で表現可能であることを証明する。
【0076】
【数7】
【0077】
まず、畳み込み演算は(8)式のように定義される。
【0078】
【数8】
【0079】
また、離散時間フーリエ変換は(9)式のように定義される。
【0080】
【数9】
【0081】
このとき、(10)式により、離散時間フーリエ変換により変換された畳み込み演算は、乗算で表現されることが証明される。
【0082】
【数10】
【0083】
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。また、実施例で説明した具体例、分布、数値等は、あくまで一例であり、任意に変更することができる。
【0084】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0085】
図12は、ハードウェア構成例を説明する図である。図12に示すように、生成装置10は、通信インタフェース10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図12に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0086】
通信インタフェース10aは、ネットワークインタフェースカード等であり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、図2に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0087】
プロセッサ10dは、図2に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、図2等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させるハードウェア回路である。すなわち、このプロセスは、生成装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、決定部101、変換部102、生成部103及び付与部104と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、決定部101、変換部102、生成部103及び付与部104等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0088】
このように生成装置10は、プログラムを読み出して実行することで学習類方法を実行する情報処理装置として動作する。また、生成装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施例でいうプログラムは、生成装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータ又はサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0089】
このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 生成システム
10 生成装置
20 記憶装置
30 画像入力装置
40 計算機
101 決定部
102 変換部
103 生成部
104 付与部
201 学習データ情報
202 撮影条件情報
203 生成データ情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12