(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F25B43/00 E
F25B43/00 R
(21)【出願番号】P 2020112803
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 悦久
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】川島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】森本 正和
(72)【発明者】
【氏名】押谷 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正博
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-148229(JP,A)
【文献】特開平11-223407(JP,A)
【文献】特開平03-260556(JP,A)
【文献】特開2009-198060(JP,A)
【文献】特開2001-263859(JP,A)
【文献】特開2015-172469(JP,A)
【文献】実開昭54-026763(JP,U)
【文献】特開平07-218047(JP,A)
【文献】実開昭62-043280(JP,U)
【文献】特開2007-315687(JP,A)
【文献】特開2017-190943(JP,A)
【文献】特表2017-503709(JP,A)
【文献】特開2011-152827(JP,A)
【文献】特開2014-081159(JP,A)
【文献】特開2018-161948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
F25B 6/04
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を放熱させる放熱部(12)と、
前記冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換部(18)と、
前記冷媒を減圧させるレシーバ側減圧部(23a、23b)と、
前記レシーバ側減圧部から流出した前記冷媒の気液を分離してサイクル内の余剰冷媒を蓄えるレシーバ部(15)と、
前記冷媒を減圧させる蒸発部側減圧部(16b、16c)と、
前記蒸発部側減圧部にて減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発部(19、20)と、
冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部(14a~14d)と、を備え、
前記レシーバ部は、内部から前記冷媒を流出させる出口部として、分離された液相冷媒を流出させるための出口部のみを有し、
前記冷媒回路切替部は、
前記室外熱交換部から流出した前記冷媒を前記レシーバ側減圧部へ流入させ
ることによって、前記レシーバ部から流出する前記冷媒のエンタルピを前記室外熱交換部の出口側冷媒のエンタルピよりも低下させ、前記レシーバ部から流出した前記冷媒を前記蒸発部側減圧部へ流入させ、前記蒸発部側減圧部にて減圧された前記冷媒を前記蒸発部へ流入させる第1回路と、
前記放熱部から流出した前記冷媒を前記レシーバ側減圧部へ流入させ
ることによって、前記レシーバ部から流出する前記冷媒のエンタルピを前記放熱部の出口側冷媒のエンタルピよりも低下させ、前記レシーバ部から流出した前記冷媒を前記蒸発部側減圧部へ流入させ、前記蒸発部側減圧部にて減圧された前記冷媒を前記蒸発部へ流入させる第2回路と、を切替可能に構成されており、
さらに、前記レシーバ側減圧部にて減圧されて前記レシーバ部へ流入する前記冷媒の流速を低下させる減速部(33、34)を備える冷凍サイクル装置。
【請求項2】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を放熱させる放熱部(12)と、
前記冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換部(18)と、
前記冷媒を減圧させるレシーバ側減圧部(23a、23b)と、
前記レシーバ側減圧部から流出した前記冷媒の気液を分離してサイクル内の余剰冷媒を蓄えるレシーバ部(15)と、
前記冷媒を減圧させる蒸発部側減圧部(16b、16c)と、
前記蒸発部側減圧部にて減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発部(19、20)と、
冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部(14a~14d)と、を備え、
前記冷媒回路切替部は、
前記室外熱交換部から流出した前記冷媒を前記レシーバ側減圧部へ流入させ、前記レシーバ部から流出した前記冷媒を前記蒸発部側減圧部へ流入させ、前記蒸発部側減圧部にて減圧された前記冷媒を前記蒸発部へ流入させる第1回路と、
前記放熱部から流出した前記冷媒を前記レシーバ側減圧部へ流入させ、前記レシーバ部から流出した前記冷媒を前記蒸発部側減圧部へ流入させ、前記蒸発部側減圧部にて減圧された前記冷媒を前記蒸発部へ流入させる第2回路と、を切替可能に構成されており、
さらに、前記レシーバ側減圧部にて減圧されて前記レシーバ部へ流入する前記冷媒の流速を低下させる減速部(33、34)
と、
前記レシーバ側減圧部が取り付けられる減圧部用ブロック(32)と、
前記冷媒回路切替部が取り付けられる切替部用ブロック(31)と、を備え
、
前記切替部用ブロック、前記減圧部用ブロック、および前記レシーバ部は、互いに異なる部材で形成されており、
前記切替部用ブロック、前記減圧部用ブロック、前記レシーバ部、および前記減速部は、一体的に組み付けられている冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記切替部用ブロック、前記減圧部用ブロック、および前記レシーバ部は、前記切替部用ブロックと前記減圧部用ブロックが接触し、前記減圧部用ブロックと前記レシーバ部が接触し、前記切替部用ブロックと前記レシーバ部が非接触となるように、一体的に組み付けられている請求項
2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記減速部は、前記レシーバ部の内部に配置されて、前記レシーバ側減圧部にて減圧された前記冷媒を衝突させる衝突部(33a)を有する板状部材(33)で形成されている請求項1
ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記板状部材は、表裏を貫通する貫通穴(33c)が形成された連通部(33b)を有する請求項
4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記貫通穴は、複数設けられており、
前記貫通穴の個数をNと定義し、複数の前記貫通穴の総開口面積をSAと定義したときに、前記貫通穴を通過する前記冷媒の有する運動量に相関する無次元化パラメータP1が予め定めた基準値以下となるように設定されている請求項
5に記載の冷凍サイクル装置。
但し、無次元化パラメータP1は、以下の数式で定義される。
P1=(Gr/N)/(ρ×V0×R0
2)×(Gr/SA/ρ)/V0
Gr:前記レシーバ部を流通する冷媒流量(質量流量:kg/s)
ρ :液冷媒密度(kg/m
3)
V0:前記レシーバ部から流出する液相冷媒の流速(m/s)
R0:前記レシーバ部から流出する液相冷媒が流通する冷媒通路の相当直径(m)
【請求項7】
前記減速部は、前記レシーバ側減圧部にて減圧されて前記レシーバ部へ流入する前記冷媒の流れ方向を転向させる減速用冷媒通路(34)によって形成されている請求項1
ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記減速用冷媒通路は、前記レシーバ側減圧部にて減圧されて前記レシーバ部へ流入する前記冷媒の流れ方向を前記レシーバ部の側壁面に衝突させる方向へ転向させる請求項
7に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記レシーバ側減圧部が取り付けられる減圧部用ブロック(32)を備え、
前記減速用冷媒通路は、前記減圧部用ブロックに形成されている請求項
7または
8に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記放熱部(12)から流出した液相冷媒を蓄えるサブタンク部(35)を備える請求項1ないし
9のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記冷媒回路切替部が前記第2回路に切り替えた際に前記サブタンク部へ流入する前記冷媒の乾き度は、前記冷媒回路切替部が前記第1回路に切り替えた際に前記サブタンク部へ流入する前記冷媒の乾き度よりも低くなる請求項
10に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクル内の余剰冷媒を蓄えるレシーバ部を備える冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、電気自動車等に搭載される蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置が開示されている。特許文献1の冷凍サイクル装置は、運転モードに応じて冷媒回路を切替可能に構成されている。例えば、特許文献1の冷凍サイクル装置では、車室内を暖房する暖房モードの冷媒回路、車室内を冷房する冷房モードの冷媒回路、バッテリを冷却する冷却モードの冷媒回路等を切り替えることができる。
【0003】
特許文献1のように、運転モードに応じて冷媒回路を切り替える冷凍サイクル装置では、運転モードに応じてサイクルを循環させる必要のある循環冷媒流量も変化しやすい。これに対して、特許文献1の冷凍サイクル装置は、レシーバ部を備えており、運転モードに応じた適切な流量の冷媒を循環させることができるようになっている。レシーバ部は、冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒の一部を余剰冷媒として蓄える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運転モードによって循環冷媒流量が変化する冷凍サイクル装置では、循環冷媒流量が最も多くなる運転モード時に、レシーバ部に充分な気液分離性能を発揮させる必要がある。その理由は、循環冷媒流量が最も多くなる運転モードでは、レシーバ部に蓄えられる余剰冷媒量が最も少なくなるので、分離された気相冷媒が再び液相冷媒に混入し、気液混合冷媒となってレシーバ部から流出してしまう可能性が高くなるからである。
【0006】
これに対して、循環冷媒流量が多くなる運転モード時にも、レシーバ部が充分な気液分離性能を発揮できるように、サイクルへ封入する冷媒封入量を増加させる手段が考えられる。ところが、特許文献1のように、様々な運転モードに切替可能な冷凍サイクル装置では、循環冷媒流量が多くなる運転モード時の余剰冷媒量と循環冷媒流量が少なくなる運転モード時の余剰冷媒量との差が拡大しやすい。
【0007】
このため、循環冷媒流量が多くなる運転モード時にレシーバ部が充分な気液分離性能を発揮できるように冷媒封入量を増加させてしまうと、循環冷媒流量が少なくなる運転モード時に余剰冷媒を蓄えることができるようにレシーバ部を大型化させなければならない。しかしながら、レシーバ部の大型化は、冷凍サイクル装置全体としての搭載性や生産性の悪化を招く原因となる。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル装置であって、レシーバ部の大型化を抑制可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の冷凍サイクル装置は、圧縮機(11)と、放熱部(12)と、室外熱交換部(18)と、レシーバ側減圧部(23a、23b)と、レシーバ部(15)と、蒸発部側減圧部(16b、16c)と、蒸発部(19、20)と、冷媒回路切替部(14a~14d)と、を備える。
【0010】
圧縮機は、冷媒を圧縮して吐出する。放熱部は、圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる。室外熱交換部は、冷媒と外気とを熱交換させる。レシーバ側減圧部は、冷媒を減圧させる。レシーバ部は、レシーバ側減圧部から流出した冷媒の気液を分離してサイクル内の余剰冷媒を蓄える。蒸発部側減圧部は、冷媒を減圧させる。蒸発部は、蒸発部側減圧部にて減圧された冷媒を蒸発させる。
【0011】
レシーバ部は、内部から冷媒を流出させる出口部として、分離された液相冷媒を流出させるための出口部のみを有している。
冷媒回路切替部は、冷媒回路を切り替える。冷媒回路切替部は、室外熱交換部から流出した冷媒をレシーバ側減圧部へ流入させることによって、レシーバ部から流出する冷媒のエンタルピを室外熱交換部の出口側冷媒のエンタルピよりも低下させ、レシーバ部から流出した冷媒を蒸発部側減圧部へ流入させ、蒸発部側減圧部にて減圧された冷媒を蒸発部へ流入させる第1回路に切り替えることができる。冷媒回路切替部は、放熱部から流出した冷媒をレシーバ側減圧部へ流入させることによって、レシーバ部から流出する冷媒のエンタルピを放熱部の出口側冷媒のエンタルピよりも低下させ、レシーバ部から流出した冷媒を蒸発部側減圧部へ流入させ、蒸発部側減圧部にて減圧された冷媒を蒸発部へ流入させる第2回路に切り替えることができる。
【0012】
さらに、冷凍サイクル装置は、減速部(33、34)を備える。減速部は、レシーバ側減圧部にて減圧されてレシーバ部へ流入する冷媒の流速を低下させる。
【0013】
これによれば、冷媒回路切替部(14a~14d)を備えているので、冷媒回路を切り替えることができる。また、レシーバ部(15)を備えているので、冷媒回路を切り替えることによって運転モードが切り替わり、循環冷媒流量が変化しても、サイクルの余剰冷媒をレシーバ部(15)に蓄えることができる。
【0014】
さらに、減速部(33、34)を備えているので、循環冷媒流量が多くなり、レシーバ部(15)内の余剰冷媒量が減少する運転モードに切り替えられても、レシーバ部(15)の気液分離性能の低下を抑制することができる。
【0015】
より詳細には、循環冷媒流量が多くなる運転モードでは、レシーバ部(15)内の余剰冷媒量が減少するだけでなく、レシーバ側減圧部(23a、23b)によってレシーバ部(15)へ流入する冷媒の流速が増加してしまう。これに対して、減速部(33、34)を備えているので、レシーバ部(15)へ流入する冷媒の流速を低下させることができる。従って、レシーバ部(15)における気液分離性能の低下を抑制することができる。
【0016】
その結果、余剰冷媒量が少なくなる運転モード時に、レシーバ部(15)が充分な気液分離性能を発揮するために必要な冷媒封入量の増加を最小限とすることができる。すなわち、請求項1に記載の冷凍サイクル装置によれば、冷媒回路を切替可能に構成されていても、レシーバ部(15)の大型化を抑制することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の冷凍サイクル装置は、圧縮機(11)と、放熱部(12)と、室外熱交換部(18)と、レシーバ側減圧部(23a、23b)と、レシーバ部(15)と、蒸発部側減圧部(16b、16c)と、蒸発部(19、20)と、冷媒回路切替部(14a~14d)と、を備える。
圧縮機は、冷媒を圧縮して吐出する。放熱部は、圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる。室外熱交換部は、冷媒と外気とを熱交換させる。レシーバ側減圧部は、冷媒を減圧させる。レシーバ部は、レシーバ側減圧部から流出した冷媒の気液を分離してサイクル内の余剰冷媒を蓄える。蒸発部側減圧部は、冷媒を減圧させる。蒸発部は、蒸発部側減圧部にて減圧された冷媒を蒸発させる。
冷媒回路切替部は、冷媒回路を切り替える。冷媒回路切替部は、室外熱交換部から流出した冷媒をレシーバ側減圧部へ流入させ、レシーバ部から流出した冷媒を蒸発部側減圧部へ流入させ、蒸発部側減圧部にて減圧された冷媒を蒸発部へ流入させる第1回路に切り替えることができる。冷媒回路切替部は、放熱部から流出した冷媒をレシーバ側減圧部へ流入させ、レシーバ部から流出した冷媒を蒸発部側減圧部へ流入させ、蒸発部側減圧部にて減圧された冷媒を蒸発部へ流入させる第2回路に切り替えることができる。
さらに、冷凍サイクル装置は、減速部(33、34)と、減圧部用ブロック(32)と、切替部用ブロック(31)と、を備える。
減速部は、レシーバ側減圧部にて減圧されてレシーバ部へ流入する冷媒の流速を低下させる。減圧部用ブロックは、レシーバ側減圧部が取り付けられる。切替部用ブロックは、冷媒回路切替部が取り付けられる。切替部用ブロック、減圧部用ブロック、およびレシーバ部は、互いに異なる部材で形成されている。切替部用ブロック、減圧部用ブロック、レシーバ部、および減速部は、一体的に組み付けられている。
これによれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【
図2】第1実施形態のレシーバモジュールの外観斜視図である。
【
図3】
図2の紙面裏側から見たレシーバモジュールの外観斜視図である。
【
図4】第1実施形態のレシーバモジュールの衝突板を示す模式的な断面図である。
【
図6】第1実施形態の室内空調ユニットの模式的な構成図である。
【
図7】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【
図8】第1実施形態のレシーバモジュールの衝突板の変形例を示す模式的な断面図である。
【
図9】第1実施形態のレシーバモジュールの衝突板の別の変形例を示す模式的な断面図である。
【
図10】第2実施形態のレシーバモジュールの減速用冷媒通路を示す模式的な断面図である。
【
図11】第3実施形態のレシーバモジュールの減速用冷媒通路を示す模式的な断面図である。
【
図12】第4実施形態のレシーバモジュールの減速用冷媒通路を示す模式的な断面図である。
【
図13】第5実施形態の冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【
図14】第6実施形態の冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【
図15】他の実施形態のレシーバモジュールを示す模式的な断面図である。
【
図16】他の実施形態の別のレシーバモジュールを示す模式的な断面図である。
【
図17】他の実施形態のさらに別のレシーバモジュールを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の実施形態を説明する。各実施形態において先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0020】
(第1実施形態)
図1~
図7を用いて、本発明に係る冷凍サイクル装置10の第1実施形態を説明する。冷凍サイクル装置10は、電気自動車に搭載された車両用空調装置に適用されている。電気自動車は、電動モータから走行用の駆動力を得る車両である。本実施形態の車両用空調装置は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行うとともに、車載機器であるバッテリ80を冷却する車載機器冷却機能付きの空調装置である。
【0021】
バッテリ80は、電動モータ等の車載機器へ供給される電力を蓄える。バッテリ80は、二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)である。バッテリ80は、複数の電池セルを積層配置し、これらの電池セルを電気的に直列あるいは並列に接続することによって形成された組電池である。
【0022】
この種のバッテリは、作動時(すなわち、充放電時)に発熱する。バッテリは、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。このため、バッテリの温度は、適切な温度範囲内(本実施形態では、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。このため、本実施形態の車両用空調装置では、冷凍サイクル装置10が生成した冷熱を利用して、バッテリ80を冷却している。
【0023】
冷凍サイクル装置10は、車両用空調装置において、車室内へ送風される送風空気の温度を調整する。さらに、冷凍サイクル装置10は、バッテリ80を冷却する冷熱を生成する。従って、冷凍サイクル装置10の温度調整対象物は、送風空気およびバッテリ80となる。また、冷凍サイクル装置10は、車室内の空調およびバッテリ80の冷却を行うための各種運転モードに応じて、冷媒回路を切替可能に構成されている。
【0024】
冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用している。冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油(具体的には、PAGオイル)が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにサイクルを循環している。
【0025】
圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は、車室の前方側の駆動装置室内に配置されている。駆動装置室は、走行用の駆動力を出力するための駆動用装置(例えば、電動モータ)の少なくとも一部が配置される空間を形成している。
【0026】
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置70から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0027】
圧縮機11の吐出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側熱媒体回路50を循環する高温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。水冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と、水通路を流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高圧冷媒の有する熱を高温側熱媒体へ放熱させる放熱部である。高温側熱媒体回路50については後述する。
【0028】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、レシーバモジュール30の第1入口31a側が接続されている。レシーバモジュール30は、
図1の破線で囲まれた各構成機器を、
図2、
図3の外観斜視図に示すように一体化させたモジュールである。
【0029】
具体的には、レシーバモジュール30は、第1開閉弁14a~第3開閉弁14c、レシーバ部15、暖房用膨張弁16a、第1逆止弁17a、第2逆止弁17b、暖房用固定絞り23a、冷房用固定絞り23b、衝突板33等を一体化させたモジュールである。
【0030】
まず、レシーバモジュール30を構成する各構成機器について説明する。レシーバモジュール30の第1入口31aには、レシーバモジュール30内に形成された第1内部三方継手13aの流入口側が接続されている。第1内部三方継手13aは、互いに連通する3つの流入出口を有している。第1内部三方継手13aは、レシーバモジュール30を形成する金属ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されている。
【0031】
さらに、レシーバモジュール30内には、後述するように、第2内部三方継手13b~第4内部三方継手13dが形成されている。第2内部三方継手13b~第4内部三方継手13dの基本的構成は、いずれも第1内部三方継手13aと同様である。
【0032】
第1内部三方継手13a~第4内部三方継手13dは、3つの流入出口のうち1つが流入口として用いられ、2つが流出口として用いられた際には、1つの流入口から流入した冷媒の流れを分岐する分岐部となる。また、3つの流入出口のうち2つが流入口として用いられ、1つが流出口として用いられた際には、2つの流入口から流入した冷媒の流れを合流させる合流部となる。
【0033】
第1内部三方継手13aの一方の流出口には、第1開閉弁14a、暖房用固定絞り23a、および第3内部三方継手13cを介して、レシーバ部15の入口側が接続されている。第1内部三方継手13aの他方の流出口には、第2開閉弁14bおよび第2内部三方継手13bを介して、暖房用膨張弁16aの入口側が接続されている。
【0034】
第1開閉弁14aは、第1内部三方継手13aの一方の流出口からレシーバ部15の入口へ至る入口側通路21aを開閉する電磁弁である。第1開閉弁14aは、制御装置70から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される。さらに、レシーバモジュール30は、後述するように、第3開閉弁14cを備えている。第2開閉弁14bおよび第3開閉弁14cの基本的構成は、第1開閉弁14aと同様である。
【0035】
暖房用固定絞り23aは、レシーバ部15へ流入する冷媒を減圧させるレシーバ側減圧部である。暖房用固定絞り23aとしては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用することができる。さらに、レシーバモジュール30は、後述するように、レシーバ側減圧部としての冷房用固定絞り23bを備えている。冷房用固定絞り23bの基本的構成は、暖房用固定絞り23aと同様である。
【0036】
第3内部三方継手13cは、入口側通路21aにおいて、一方の流入口が暖房用固定絞り23aの出口側に接続されている。第3内部三方継手13cは、入口側通路21aにおいて、流出口がレシーバ部15の入口側に接続されている。第3内部三方継手13cの他方の流入口には、冷房用固定絞り23b、および第1逆止弁17aを介して、レシーバモジュール30の第2入口32a側が接続されている。
【0037】
第1逆止弁17aは、冷媒がレシーバモジュール30の第2入口32a側から第3内部三方継手13c側へ流れることを許容し、第3内部三方継手13c側から第2入口32a側へ流れることを禁止している。
【0038】
レシーバ部15は、気液分離機能を有する有底円筒状の金属製の容器である。レシーバ部15は、冷凍サイクル装置10において冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する熱交換部から流出した冷媒の気液を分離する。さらに、レシーバ部15は、分離された液相冷媒の一部を下流側に流出させ、残余の液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として蓄える貯液部である。
【0039】
レシーバ部15の内部には、
図4に示すように、上下方向に延びる略円柱状の内部空間15aが形成されている。内部空間15a内には、入口パイプ15b、出口パイプ15c、衝突板33が配置されている。なお、
図4では、液相冷媒が蓄えられている領域を点ハッチングで示している。このことは、以下に示す
図8等においても同様である。
【0040】
入口パイプ15bは、レシーバ部15の内部空間15aに、暖房用固定絞り23aあるいは冷房用固定絞り23bにて減圧された冷媒を流入させる金属製の管である。このため、入口パイプ15bは、入口側通路21aの最下流部を形成している。入口パイプ15bの冷媒出口は、衝突板33の衝突部33aへ向けて冷媒を流出させる。
【0041】
衝突板33は、レシーバ部15の内部空間15aへ流入する冷媒の流速を低下させる減速部である。衝突板33は、
図4、
図5に示すように、内部空間15a内で水平方向に広がるように配置された金属製の板状部材である。衝突板33は、衝突部33aおよび連通部33bを有している。
【0042】
衝突部33aは、レシーバ部15へ流入する冷媒を衝突させる部位である。レシーバ部15へ流入した冷媒は、衝突部33aに衝突することによって、流速を低下させる。このため、入口パイプ15bの冷媒出口は、入口パイプ15bから流出した冷媒が必ず衝突部33aに衝突するように、衝突部33aの直上に開口している。
【0043】
連通部33bは、衝突板33の表裏を貫通する複数の貫通穴33cが形成された部位である。衝突部33aに衝突して流速を低下させた冷媒のうち比重の大きい液相冷媒は、貫通穴33cを介して、レシーバ部15の内部空間15aの下方側へ落下する。このような連通部33bは、いわゆるパンチングメタルのように板状部材にプレス加工を施すこと等によって形成することができる。
【0044】
複数の貫通穴33cは、
図5に示すように、衝突板33のうち連通部33bを形成する領域に、レシーバ部15の中心軸回りに略等角度間隔で円環状に並べて形成されている。もちろん、貫通穴33cは、衝突板33のうち衝突部33aを形成する領域には形成されていない。複数の貫通穴33cは、いずれも同一の径(本実施形態では、直径1mm)の円形状に形成されている。
【0045】
前述の如く、貫通穴33cは、衝突部33aに衝突して流速を低下させた液相冷媒を内部空間15aの下方側へ落下させるための穴である。このため、貫通穴33cの総開口面積SA(m2)が大きくなるに伴って、貫通穴33cを通過する冷媒の流速が低下する。総開口面積SAは、個々の貫通穴33cの開口面積と、貫通穴33cの個数Nを積算することによって求めることができる。
【0046】
さらに、貫通穴33cを通過する冷媒の流速を低下させることによって、レシーバ部15の内部空間15aの下方側に貯留された液相冷媒の泡立ち(いわゆる、フォーミング)を抑制することができる。このようなフォーミングは、レシーバ部15から気液混合冷媒を流出させてしまう原因となる。従って、フォーミングを抑制できることは、冷凍サイクル装置10の成績係数(COP)の低下を抑制できる点で有効である。
【0047】
そこで、本実施形態では、以下数式F1にて定義される無次元化パラメータP1が、以下数式F2を満足するように、貫通穴33cの個数Nおよび総開口面積SAが決定されている。
P1=(Gr/N)/(ρ×V0×R02)×(Gr/SA/ρ)/V0 …(F1)
P1≦0.435 …(F2)
なお、Grは、レシーバ部15を流通する冷媒流量(質量流量:kg/s)である。ρは、液冷媒密度(kg/m3)である。V0は、出口パイプ15cを流通する冷媒の流速(m/s)である。R0は、出口パイプ15cの相当直径(m)である。
【0048】
つまり、数式F1で示される無次元化パラメータP1は、1個の貫通穴33cを通過する冷媒がレシーバ部15に蓄えられた液相冷媒の液面に与える運動量を、出口パイプ15cから流出する冷媒流量を考慮して無次元化したパラメータである。
【0049】
このため、無次元化パラメータP1が小さくなるに伴って、液面に与える運動量が小さくなる。換言すると、無次元化パラメータP1が小さくなるに伴って、レシーバ部15の内部空間15a内に貯留された液相冷媒のフォーミングを抑制しやすくなる。さらに、数式F2は、実際に衝突板33に形成可能な貫通穴33cの径や間隔を考慮して、レシーバ部15の大型化を抑制可能な範囲を示している。
【0050】
衝突板33は、レシーバ部15の内部空間15a内に固定されている。衝突板33は、レシーバ部15の内部空間15aの上下方向中央部よりも上方側に配置されている。
【0051】
出口パイプ15cは、分離された液相冷媒をレシーバの内部空間15aから流出させる金属製の円管である。出口パイプ15cは、後述する出口側通路21bの最上流部を形成している。出口パイプ15cは、衝突板33を貫通して上下方向に延びている。出口パイプ15cの冷媒入口は、レシーバ部15の下方側であって、レシーバ部に蓄えられる余剰冷媒量が最も少なく運転モード時の液相冷媒の液面よりも下方側で開口している。
【0052】
次に、第2開閉弁14bは、
図1に示すように、第1内部三方継手13aの他方の流出口からレシーバモジュール30の第1出口31bへ至る室外器側通路21cを開閉する電磁弁である。
【0053】
第2内部三方継手13bの他方の流入口には、レシーバ部15の出口側が接続されている。レシーバ部15の出口から第2内部三方継手13bの他方の流入口へ至る出口側通路21bには、レシーバ部15の出口側から順に、第4内部三方継手13d、第3開閉弁14c、および第2逆止弁17bが配置されている。
【0054】
第4内部三方継手13dは、出口側通路21bにおいて、流入口がレシーバ部15の冷媒出口側に接続されている。第4内部三方継手13dは、出口側通路21bにおいて、一方の流出口が第3開閉弁14cの入口側に接続されている。さらに、第4内部三方継手13dの他方の流出口には、レシーバモジュール30の第2出口32b側に接続されている。
【0055】
第3開閉弁14cは、出口側通路21bを開閉する電磁弁である。第2逆止弁17bは、冷媒が第3開閉弁14c側から第2内部三方継手13b側へ流れることを許容し、第2内部三方継手13b側から第3開閉弁14c側へ流れることを禁止している。
【0056】
暖房用膨張弁16aは、後述する外気暖房モードの冷媒回路等に切り替えられた際に、レシーバ部15から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する室外器側減圧部である。
【0057】
暖房用膨張弁16aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体、および弁体を変位させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)を有する電動式の可変絞り機構である。暖房用膨張弁16aは、制御装置70から出力される制御信号(具体的には、制御パルス)によって、その作動が制御される。
【0058】
暖房用膨張弁16aは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
【0059】
さらに、冷凍サイクル装置10は、後述するように、冷房用膨張弁16bおよび冷却用膨張弁16cを備えている。冷房用膨張弁16bおよび冷却用膨張弁16cの基本的構成は、暖房用膨張弁16aと同様である。なお、本実施形態の冷房用膨張弁16bおよび冷却用膨張弁16cは、レシーバモジュール30として一体化されていないが、もちろん、レシーバモジュール30として一体化されていてもよい。
【0060】
次に、レシーバモジュール30を構成する各構成機器の一体化について説明する。レシーバモジュール30は、
図1~
図3に示すように、切替部用ブロック31、減圧部用ブロック32、およびレシーバ部15に大別される。切替部用ブロック31、減圧部用ブロック32、およびレシーバ部15は、互いに異なる部材で形成されており、シール部材を介して、ボルト締め等によって一体的に組み付けられている。
【0061】
切替部用ブロック31は、金属製のブロック材で形成されている。切替部用ブロック31は、レシーバモジュール30のうち、
図1の一点鎖線で囲まれた部位を形成する。切替部用ブロック31には、第1入口31aおよび第1出口31bが形成されている。切替部用ブロック31の内部には、複数の冷媒通路、第1内部三方継手13a、第2内部三方継手13bが形成されている。
【0062】
切替部用ブロック31には、第1開閉弁14a~第3開閉弁14c、暖房用膨張弁16aが取り付けられている。切替部用ブロック31に形成された冷媒通路には、第2逆止弁17bが配置されている。
【0063】
減圧部用ブロック32は、金属製のブロック材で形成されている。減圧部用ブロック32は、レシーバモジュール30のうち、
図1の二点鎖線で囲まれた部位を形成する。減圧部用ブロック32には、第2入口32aおよび第2出口32bが形成されている。減圧部用ブロック32の内部には、複数の冷媒通路、第3内部三方継手13c、第4内部三方継手13dが形成されている。
【0064】
減圧部用ブロック32に形成された冷媒通路には、第1逆止弁17a、暖房用固定絞り23a、冷房用固定絞り23bが配置されている。
【0065】
レシーバモジュール30では、切替部用ブロック31と減圧部用ブロック32が、シール部材等を介して接触するように一体化されている。また、減圧部用ブロック32とレシーバ部15が、シール部材等を介して接触するように一体化されている。さらに、レシーバモジュール30では、切替部用ブロック31とレシーバ部15が、接触せず非接触となるように一体化されている。
【0066】
レシーバモジュール30の第1出口31bには、
図1に示すように、室外熱交換器18の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器18は、暖房用膨張弁16aから流出した冷媒と、図示しない外気ファンから送風された外気とを熱交換させる室外熱交換部である。室外熱交換器18は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、室外熱交換器18に走行風を当てることができる。
【0067】
室外熱交換器18の冷媒出口には、第1外部三方継手13eの流入口側が接続されている。第1外部三方継手13eは、互いに連通する3つの流入出口を有する配管用の継手部材によって形成されている。
【0068】
さらに、冷凍サイクル装置10では、後述するように、第2外部三方継手13fを備えている。第2外部三方継手13fの基本的構成は、第1外部三方継手13eと同様である。第1外部三方継手13eおよび第2外部三方継手13fの基本的機能は、レシーバモジュール30の第1内部三方継手13a~第4内部三方継手13dと同様である。
【0069】
第1外部三方継手13eの一方の流出口には、レシーバモジュール30の第2入口32a側が接続されている。第1外部三方継手13eの他方の流出口には、第4開閉弁14d、第3逆止弁17cを介して、四方継手13gの1つの流入口側が接続されている。
【0070】
第4開閉弁14dは、第1外部三方継手13eの他方の流出口から四方継手13gの1つの流入口へ至る吸入側通路21dを開閉する電磁弁である。第3逆止弁17cは、冷媒が第3開閉弁14c側から四方継手13g側へ流れることを許容し、四方継手13g側から第3開閉弁14c側へ流れることを禁止している。四方継手13gは、互いに連通する4つの流入出口を有する配管用の継手部材によって形成されている。もちろん、四方継手13gとして、2つの三方継手を組み合わせて形成されたものを採用してもよい。
【0071】
レシーバモジュール30の第2出口32bには、第2外部三方継手13fの流入口側が接続されている。第2外部三方継手13fの一方の流出口には、冷房用膨張弁16bの入口側が接続されている。第2外部三方継手13fの他方の流出口には、冷却用膨張弁16cの入口側が接続されている。
【0072】
冷房用膨張弁16bは、後述する冷房モードの冷媒回路等に切り替えられた際に、レシーバ部15から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する。従って、冷房用膨張弁16bは、蒸発部側減圧部に含まれる。
【0073】
冷房用膨張弁16bの出口には、室内蒸発器19の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器19は、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。室内蒸発器19は、冷房用膨張弁16bにて減圧された低圧冷媒を、室内送風機42から送風された送風空気と熱交換させて蒸発させる。従って、室内蒸発器19は、蒸発部に含まれる。
【0074】
換言すると、室内蒸発器19は、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する送風空気用冷却部である。室内蒸発器19の冷媒出口には、第4逆止弁17dを介して、四方継手13gの別の1つの流入口側が接続されている。第4逆止弁17dは、冷媒が室内蒸発器19側から四方継手13g側へ流れることを許容し、四方継手13g側から室内蒸発器19側へ流れることを禁止している。
【0075】
冷却用膨張弁16cは、後述する冷却モードの冷媒回路等に切り替えられた際に、レシーバ部15から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する。従って、冷却用膨張弁16cは、蒸発部側減圧部に含まれる。
【0076】
冷却用膨張弁16cの出口には、チラー20の冷媒入口側が接続されている。チラー20は、冷却用膨張弁16cにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側熱媒体回路60を循環する低温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。チラー20は、冷媒通路を流通する低圧冷媒と水通路を流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させる。従って、チラー20は、蒸発部に含まれる。
【0077】
換言すると、チラー20は、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって低温側熱媒体を冷却する熱媒体用冷却部である。チラー20の冷媒出口には、四方継手13gのさらに別の1つの流入口側が接続されている。四方継手13gの流出口には、圧縮機の吸入口側が接続されている。
【0078】
以上の説明から明らかなように、冷凍サイクル装置10では、レシーバモジュール30の第1開閉弁14a~第3開閉弁14c、および第4開閉弁14dが冷媒通路を開閉することによって、冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1開閉弁14a~第4開閉弁14dは、冷媒回路切替部に含まれる。
【0079】
また、暖房用膨張弁16a、冷房用膨張弁16b、および冷却用膨張弁16cは、上述した全閉機能を発揮することによって冷媒回路を切り替えることができる。つまり、暖房用膨張弁16a、冷房用膨張弁16b、および冷却用膨張弁16cは、冷媒回路切替部としての機能を兼ね備えている。
【0080】
もちろん、暖房用膨張弁16a、冷房用膨張弁16b、および冷却用膨張弁16cを、全閉機能を有していない可変絞り機構と開閉弁とを組み合わせて形成してもよい。この場合は、開閉弁が冷媒回路切替部となる。
【0081】
次に、高温側熱媒体回路50について説明する。
図1に示す高温側熱媒体回路50は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコール水溶液が採用されている。高温側熱媒体回路50には、水冷媒熱交換器12の水通路、高温側熱媒体ポンプ51、ヒータコア52等が配置されている。
【0082】
高温側熱媒体ポンプ51は、高温側熱媒体を水冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する液体ポンプである。高温側熱媒体ポンプ51は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0083】
水冷媒熱交換器12の水通路の出口には、ヒータコア52の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア52は、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器19を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア52は、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。ヒータコア52の熱媒体出口には、高温側熱媒体ポンプ51の吸入口側が接続されている。
【0084】
従って、高温側熱媒体回路50では、高温側熱媒体ポンプ51が、ヒータコア52へ流入する高温側熱媒体の流量を調整することによって、ヒータコア52における高温側熱媒体の送風空気への放熱量を調整することができる。すなわち、ヒータコア52における送風空気の加熱量を調整することができる。
【0085】
本実施形態では、水冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路50の各構成機器によって、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として、送風空気を加熱する加熱部が構成されている。
【0086】
次に、低温側熱媒体回路60について説明する。
図1に示す低温側熱媒体回路60は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体が採用されている。低温側熱媒体回路60には、チラー20の水通路、低温側熱媒体ポンプ61、バッテリ80の冷却水通路80a等が配置されている。
【0087】
低温側熱媒体ポンプ61は、低温側熱媒体をチラー20の水通路の入口側へ圧送する液体ポンプである。低温側熱媒体ポンプ61の基本的構成は、高温側熱媒体ポンプ51と同様である。チラー20の水通路の出口には、バッテリ80の冷却水通路80aの入口側が接続されている。
【0088】
冷却水通路80aは、バッテリ80の電池セルを収容する電池用ケースの内部に形成されている。冷却水通路80aは、電池用ケースの内部で複数の通路を並列的に接続した通路構成となっている。これにより、冷却水通路80aは、全ての電池セルを均等に冷却できるようになっている。冷却水通路80aの出口には、低温側熱媒体ポンプ61の吸入口側が接続されている。
【0089】
本実施形態では、チラー20および低温側熱媒体回路60の各構成機器によって、冷却対象物を冷却するバッテリ80を冷却する冷却部が構成されている。
【0090】
次に、
図6を用いて、室内空調ユニット40について説明する。室内空調ユニット40は、車両用空調装置において、適切に温度調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット40は、車室内最前部の計器盤(すなわち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0091】
室内空調ユニット40は、送風空気の空気通路を形成するケーシング41を有している。ケーシング41内に形成された空気通路には、室内送風機42、室内蒸発器19、ヒータコア52等が配置されている。ケーシング41は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて形成されている。
【0092】
ケーシング41の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置43が配置されている。内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入するものである。内外気切替装置43の駆動用の電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0093】
内外気切替装置43の送風空気流れ下流側には、室内送風機42が配置されている。室内送風機42は、内外気切替装置43を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。室内送風機42は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。室内送風機42は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
【0094】
室内送風機42の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器19とヒータコア52が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器19は、ヒータコア52よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。ケーシング41内には、室内蒸発器19を通過した送風空気を、ヒータコア52を迂回させて下流側へ流す冷風バイパス通路45が形成されている。
【0095】
室内蒸発器19の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア52の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア44が配置されている。エアミックスドア44は、室内蒸発器19を通過後の送風空気のうち、ヒータコア52を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整する。エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0096】
ヒータコア52の送風空気流れ下流側には、ヒータコア52にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路45を通過してヒータコア52にて加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間46が設けられている。さらに、ケーシング41の送風空気流れ最下流部には、混合空間46にて混合された送風空気(空調風)を、車室内へ吹き出す図示しない開口穴が配置されている。
【0097】
従って、エアミックスドア44がヒータコア52を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間46にて混合される空調風の温度を調整することができる。そして、各開口穴から車室内へ吹き出される送風空気の温度を調整することができる。
【0098】
開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0099】
これらの開口穴の上流側には、図示しない吹出モード切替ドアが配置されている。吹出モード切替ドアは、各開口穴を開閉することによって、空調風を吹き出す開口穴を切り替える。吹出モード切替ドア駆動用の電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0100】
次に、
図7を用いて、車両用空調装置の電気制御部の概要について説明する。制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置70は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器11、14a~14d、16a~16c、42、43、44、51、61等の作動を制御する。
【0101】
制御装置70の入力側には、
図7に示すように、各種の制御用センサが接続されている。制御用センサには、内気温センサ71a、外気温センサ71b、日射量センサ71cが含まれる。また、制御用センサには、高圧圧力センサ71d、空調風温度センサ71e、蒸発器温度センサ71f、蒸発器圧力センサ71g、室外器温度センサ71h、室外器圧力センサ71i、バッテリ温度センサ71jが含まれる。また、制御用センサには、高温側熱媒体温度センサ71k、低温側熱媒体温度センサ71mが含まれる。
【0102】
内気温センサ71aは、車室内の温度である内気温Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ71bは、車室外の温度である外気温Tamを検出する外気温検出部である。日射量センサ71cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。
【0103】
高圧圧力センサ71dは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の圧力である高圧圧力Pdを検出する高圧圧力検出部である。空調風温度センサ71eは、混合空間46から車室内へ吹き出される吹出空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
【0104】
蒸発器温度センサ71fは、室内蒸発器19における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度検出部である。本実施形態の蒸発器温度センサ71fは、具体的に、室内蒸発器19の出口側冷媒の温度を検出している。
【0105】
蒸発器圧力センサ71gは、室内蒸発器19における冷媒蒸発圧力Peを検出する蒸発器圧力検出部である。本実施形態の蒸発器圧力センサ71gは、具体的に、室内蒸発器19の出口側冷媒の圧力を検出している。
【0106】
室外器温度センサ71hは、室外熱交換器18を流通する冷媒の温度である室外器冷媒温度T1を検出する室外器温度検出部である。本実施形態の室外器温度センサ71hは、具体的に、室外熱交換器18の出口側冷媒の温度を検出している。
【0107】
室外器圧力センサ71iは、室外熱交換器18を流通する冷媒の圧力である室外器冷媒圧力Poutを検出する室外器温度検出部である。本実施形態の室外器圧力センサ71iは、具体的に、室外熱交換器18の出口側冷媒の圧力を検出している。
【0108】
バッテリ温度センサ71jは、バッテリ80の温度であるバッテリ温度TBを検出するバッテリ温度検出部である。バッテリ温度センサ71jは、複数の温度検出部を有し、バッテリ80の複数の箇所の温度を検出している。このため、制御装置70では、バッテリ80の各部の温度差を検出することもできる。さらに、バッテリ温度TBとしては、複数の温度センサの検出値の平均値を採用している。
【0109】
高温側熱媒体温度センサ71kは、ヒータコア52へ流入する高温側熱媒体の高温側熱媒体温度TWHを検出する高温側熱媒体温度検出部である。低温側熱媒体温度センサ71mは、バッテリ80の冷却水通路80aへ流入する低温側熱媒体の低温側熱媒体温度TWLを検出する低温側熱媒体温度検出部である。
【0110】
さらに、制御装置70の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル72が接続され、この操作パネル72に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル72に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。
【0111】
オートスイッチは、冷凍サイクル装置10の自動制御運転を設定あるいは解除する操作スイッチである。エアコンスイッチは、室内蒸発器19で送風空気の冷却を行うことを要求する操作スイッチである。風量設定スイッチは、室内送風機42の風量をマニュアル設定する操作スイッチである。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する操作スイッチである。
【0112】
また、本実施形態の制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。従って、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(すなわち、ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0113】
例えば、制御装置70のうち、冷媒回路切替部である第1開閉弁14a~第4開閉弁14d等の作動を制御する構成は、冷媒回路制御部70aを構成している。
【0114】
次に、上記構成の本実施形態の車両用空調装置の作動について説明する。冷凍サイクル装置10は、車室内の空調およびバッテリ80の冷却を行うための各種運転モードに応じて、冷媒回路を切替可能に構成されている。
【0115】
車両用空調装置1の運転モードとしては、(a)冷房モード、(b)単独冷却モード、(c)冷房冷却モード、(d)外気暖房モード、(e)廃熱暖房モード、(f)外気廃熱暖房モード、(g)外気並列除湿暖房モード、(h)廃熱並列除湿暖房モードの8つの運転モードがある。
【0116】
これらの運転モードの切り替えは、制御プログラムが実行されることによって行われる。制御プログラムは、操作パネル72のオートスイッチが投入(ON)されて、冷凍サイクル装置10の自動制御が設定された際に実行される。制御プログラムでは、所定の周期毎に、上述したセンサ群の検出信号、および操作パネル72の操作信号を読み込んで、適宜運転モードを切り替える。
【0117】
より具体的には、制御プログラムでは、外気温Tam、目標吹出温度TAO、操作パネル72のエアコンスイッチの操作信号に基づいて、運転モードを切り替える。目標吹出温度TAOは、車室内へ送風される送風空気の目標温度である。
【0118】
目標吹出温度TAOは、以下数式F3によって算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C…(F3)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度である。Trは内気センサによって検出された車室内温度である。Tamは外気センサによって検出された車室外温度である。Tsは日射センサによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0119】
また、制御プログラムでは、バッテリ温度センサ71jによって検出されたバッテリ温度TBに基づいて、バッテリ80の冷却を行うか否かを判定する。以下に、各運転モードの詳細作動について説明する。
【0120】
(a)冷房モード
冷房モードは、バッテリ80の冷却を行うことなく、冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。
【0121】
冷房モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを閉じ、第2開閉弁14bを開き、第3開閉弁14cを閉じ、第4開閉弁14dを閉じる。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを全開状態とし、冷房用膨張弁16bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とし、冷却用膨張弁16cを全閉状態とする。
【0122】
これにより、冷房モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁16a、室外熱交換器18、冷房用固定絞り23b、レシーバ部15、冷房用膨張弁16b、室内蒸発器19、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。
【0123】
冷房モードの冷媒回路では、室外熱交換部である室外熱交換器18から流出した冷媒をレシーバ側減圧部である冷房用固定絞り23bへ流入させる。レシーバ部15から流出した冷媒を蒸発部側減圧部である冷房用膨張弁16bへ流入させる。冷房用膨張弁16bにて減圧された冷媒を蒸発部である室内蒸発器19へ流入させる。従って、冷房モードの冷媒回路は、第1回路に含まれる。
【0124】
上記の回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、圧縮機11については、制御装置70は、蒸発器温度センサ71fによって検出された蒸発器温度Teが目標蒸発器温度TEOに近づくように吐出能力を制御する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置70に記憶されている冷房モード用の制御マップを参照して決定される。
【0125】
また、冷房用膨張弁16bについては、制御装置70は、室内蒸発器19の出口側冷媒の過熱度SH1が、目標過熱度KSHに近づくように絞り開度を制御する。
【0126】
また、室内送風機42については、制御装置70は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置70に記憶されている制御マップを参照して送風能力を制御する。また、エアミックスドア44については、制御装置70は、空調風温度センサ71eによって検出された吹出空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくようにエアミックスドア44の開度を制御する。
【0127】
また、高温側熱媒体ポンプ51については、制御装置70は、予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。また、低温側熱媒体ポンプ61については、制御装置70は、予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。
【0128】
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12および室外熱交換器18を凝縮器として機能させ、室内蒸発器19を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0129】
また、冷房モードの高温側熱媒体回路50では、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体がヒータコア52へ圧送される。
【0130】
また、冷房モードの室内空調ユニット40では、室内蒸発器19にて冷却された送風空気の一部がヒータコア52にて再加熱されて、温度調整された送風空気が車室内へ吹き出される。これにより、車室内の冷房が実現される。
【0131】
(b)単独冷却モード
単独冷却モードは、車室内の空調を行うことなく、バッテリ80の冷却を行う運転モードである。
【0132】
単独冷却モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを閉じ、第2開閉弁14bを開き、第3開閉弁14cを閉じ、第4開閉弁14dを閉じる。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを全開状態とし、冷房用膨張弁16bを全閉状態とし、冷却用膨張弁16cを絞り状態とする。
【0133】
これにより、単独冷却モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁16a、室外熱交換器18、冷房用固定絞り23b、レシーバ部15、冷却用膨張弁16c、チラー20、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。
【0134】
また、単独冷却モードの冷媒回路では、室外熱交換部である室外熱交換器18から流出した冷媒をレシーバ側減圧部である冷房用固定絞り23bへ流入させる。レシーバ部15から流出した冷媒を蒸発部側減圧部である冷却用膨張弁16cへ流入させる。冷却用膨張弁16cにて減圧された冷媒を蒸発部であるチラー20へ流入させる。従って、単独冷却モードの冷媒回路は、第1回路に含まれる。
【0135】
上記の回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、圧縮機11については、制御装置70は、予め定めた単独冷却モード用の吐出能力を発揮するように吐出能力を制御する。また、冷却用膨張弁16cについては、制御装置70は、チラー20の冷媒通路の出口側冷媒の過熱度SH2が、目標過熱度KSHに近づくように絞り開度を制御する。
【0136】
また、制御装置70は、室内送風機42を停止させる。また、高温側熱媒体ポンプ51については、制御装置70は、圧送能力を発揮するように作動させる。また、低温側熱媒体ポンプ61については、制御装置70は、予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。
【0137】
従って、単独冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器18を凝縮器として機能させ、チラー20を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0138】
また、単独冷却モードの低温側熱媒体回路60では、チラー20にて冷却された低温側熱媒体がバッテリ80の冷却水通路80aへ流入する。これにより、バッテリ80が冷却される。
【0139】
(c)冷房冷却モード
冷房冷却モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。
【0140】
冷房冷却モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを閉じ、第2開閉弁14bを開き、第3開閉弁14cを閉じ、第4開閉弁14dを閉じる。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを全開状態とし、冷房用膨張弁16bを絞り状態とし、冷却用膨張弁16cを絞り状態とする。
【0141】
これにより、冷房冷却モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁16a、室外熱交換器18、冷房用固定絞り23b、レシーバ部15の順に流れる。さらに、レシーバ部15から流出した冷媒が、冷房用膨張弁16b、室内蒸発器19、圧縮機11の吸入口の順に循環するとともに、冷却用膨張弁16c、チラー20、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。
【0142】
つまり、冷房冷却モードでは、室内蒸発器19およびチラー20が、冷媒流れに対して並列的に接続される冷媒回路に切り替えられる。
【0143】
また、冷房冷却モードの冷媒回路では、室外熱交換部である室外熱交換器18から流出した冷媒をレシーバ側減圧部である冷房用固定絞り23bへ流入させる。レシーバ部15から流出した冷媒を蒸発部側減圧部である冷房用膨張弁16bおよび冷却用膨張弁16cへ流入させる。冷房用膨張弁16bにて減圧された冷媒を蒸発部である室内蒸発器19へ流入させ、冷却用膨張弁16cにて減圧された冷媒を蒸発部であるチラー20へ流入させる。従って、冷房冷却モードの冷媒回路は、第1回路に含まれる。
【0144】
上記の回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、圧縮機11および冷房用膨張弁16bについては、制御装置70は、冷房モードと同様に制御する。また、冷却用膨張弁16cについては、制御装置70は、予め定めた冷房冷却モード用の絞り開度となるように絞り開度を制御する。その他の制御対象機器については、制御装置70は、冷房モードと同様に制御する。
【0145】
従って、冷房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12および室外熱交換器18を凝縮器として機能させ、冷媒流れに対して互いに並列的に接続された室内蒸発器19およびチラー20を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0146】
また、冷房冷却モードの高温側熱媒体回路50では、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体がヒータコア52へ圧送される。また、冷房冷却モードの低温側熱媒体回路60では、チラー20にて冷却された低温側熱媒体がバッテリ80の冷却水通路80aへ流入する。これにより、バッテリ80が冷却される。
【0147】
また、冷房冷却モードの室内空調ユニット40では、室内蒸発器19にて冷却された送風空気の一部がヒータコア52にて再加熱されて、温度調整された送風空気が車室内へ吹き出される。これにより、車室内の冷房が実現される。
【0148】
(d)外気暖房モード
外気暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うことなく、加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0149】
外気暖房モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを開き、第4開閉弁14dを開く。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを絞り状態とし、冷房用膨張弁16bを全閉状態とし、冷却用膨張弁16cを全閉状態とする。
【0150】
これにより、外気暖房モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用固定絞り23a、レシーバ部15、暖房用膨張弁16a、室外熱交換器18、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。
【0151】
上記の回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、圧縮機11については、制御装置70は、高温側熱媒体温度センサ71kによって検出された高温側熱媒体温度TWHが予め定めた目標高温側熱媒体温度TWHOに近づくように吐出能力を制御する。
【0152】
また、暖房用膨張弁16aについては、制御装置70は、室外熱交換器18の出口側冷媒の過熱度SH3が、目標過熱度KSHに近づくように絞り開度を制御する。その他の制御対象機器については、制御装置70は、冷房モードと同様に制御する。
【0153】
従って、外気暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、室外熱交換器18を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0154】
また、外気暖房モードの高温側熱媒体回路50では、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体がヒータコア52へ圧送される。
【0155】
また、外気暖房モードの室内空調ユニット40では、ヒータコア52にて加熱された送風空気が車室内へ吹き出される。これにより、車室内の暖房が実現される。つまり、外気暖房モードは、冷媒が室外熱交換器18にて外気から吸熱した熱を熱源として送風空気を加熱する運転モードである。
【0156】
(e)廃熱暖房モード
廃熱暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0157】
廃熱暖房モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを閉じ、第4開閉弁14dを閉じる。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを全閉状態とし、冷房用膨張弁16bを全閉状態とし、冷却用膨張弁16cを絞り状態とする。
【0158】
これにより、廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用固定絞り23a、レシーバ部15、冷却用膨張弁16c、チラー20、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。
【0159】
また、廃熱暖房モードの冷媒回路では、放熱部である水冷媒熱交換器12から流出した冷媒をレシーバ側減圧部である暖房用固定絞り23aへ流入させる。レシーバ部15から流出した冷媒を蒸発部側減圧部である冷却用膨張弁16cへ流入させる。冷却用膨張弁16cにて減圧された冷媒を蒸発部であるチラー20へ流入させる。従って、廃熱暖房モードの冷媒回路は、第2回路に含まれる。
【0160】
上記の回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、圧縮機11については、制御装置70は、外気暖房モードと同様に制御する。また、冷却用膨張弁16cについては、制御装置70は、チラー20の冷媒通路の出口側冷媒の過熱度SH2が、目標過熱度KSHに近づくように絞り開度を制御する。その他の制御対象機器については、制御装置70は、冷房モードと同様に制御する。
【0161】
従って、廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、チラー20を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0162】
また、廃熱暖房モードの高温側熱媒体回路50では、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体がヒータコア52へ圧送される。また、廃熱暖房モードの低温側熱媒体回路60では、チラー20にて冷却された低温側熱媒体がバッテリ80の冷却水通路80aへ流入する。これにより、バッテリ80が冷却される。
【0163】
また、廃熱暖房モードの室内空調ユニット40では、ヒータコア52にて加熱された送風空気が車室内へ吹き出される。これにより、車室内の暖房が実現される。つまり、廃熱暖房モードは、冷媒がチラー20にて低温側熱媒体から吸熱したバッテリ80の廃熱を熱源として送風空気を加熱する運転モードである。
【0164】
(f)外気廃熱暖房モード
外気廃熱暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、外気暖房モードあるいは廃熱暖房モードよりも高い加熱能力で加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
【0165】
外気廃熱暖房モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを開き、第4開閉弁14dを開く。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを絞り状態とし、冷房用膨張弁16bを全閉状態とし、冷却用膨張弁16cを絞り状態とする。
【0166】
これにより、外気廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用固定絞り23a、レシーバ部15の順に流れる。さらに、レシーバ部15から流出した冷媒が、暖房用膨張弁16a、室外熱交換器18、圧縮機11の吸入口の順に循環するとともに、冷却用膨張弁16c、チラー20、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。
【0167】
つまり、外気廃熱暖房モードでは、室外熱交換器18およびチラー20が、冷媒流れに対して並列的に接続される冷媒回路に切り替えられる。
【0168】
また、外気廃熱暖房モードの冷媒回路では、放熱部である水冷媒熱交換器12から流出した冷媒をレシーバ側減圧部である暖房用固定絞り23aへ流入させる。レシーバ部15から流出した冷媒を蒸発部側減圧部である冷却用膨張弁16cへ流入させる。冷却用膨張弁16cにて減圧された冷媒を蒸発部であるチラー20へ流入させる。従って、外気廃熱暖房モードの冷媒回路は、第2回路に含まれる。
【0169】
上記の回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、圧縮機11および暖房用膨張弁16aについては、制御装置70は、外気暖房モードと同様に制御する。また、冷却用膨張弁16cについては、制御装置70は、予め定めた外気廃熱暖房モード用の絞り開度となるように絞り開度を制御する。その他の制御対象機器については、制御装置70は、冷房モードと同様に制御する。
【0170】
従って、外気廃熱暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、冷媒流れに対して互いに並列的に接続された室外熱交換器18およびチラー20を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0171】
また、外気廃熱暖房モードの高温側熱媒体回路50では、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体がヒータコア52へ圧送される。また、外気廃熱暖房モードの低温側熱媒体回路60では、チラー20にて冷却された低温側熱媒体がバッテリ80の冷却水通路80aへ流入する。これにより、バッテリ80が冷却される。
【0172】
また、外気廃熱暖房モードの室内空調ユニット40では、ヒータコア52にて加熱された送風空気が車室内へ吹き出される。これにより、車室内の暖房が実現される。
【0173】
つまり、外気廃熱暖房モードは、冷媒が室外熱交換器18にて外気から吸熱した熱および冷媒がチラー20にて低温側熱媒体から吸熱したバッテリ80の廃熱を熱源として送風空気を加熱する運転モードである。従って、廃熱暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を加熱することができる。
【0174】
(g)外気並列除湿暖房モード
外気並列除湿暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うことなく、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0175】
外気並列除湿暖房モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを開き、第4開閉弁14dを開く。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを絞り状態とし、冷房用膨張弁16bを絞り状態とし、冷却用膨張弁16cを全閉状態とする。
【0176】
これにより、外気並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用固定絞り23a、レシーバ部15の順に流れる。さらに、レシーバ部15から流出した冷媒が、暖房用膨張弁16a、室外熱交換器18、圧縮機11の吸入口の順に循環するとともに、冷房用膨張弁16b、室内蒸発器19、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。
【0177】
つまり、外気並列除湿暖房モードでは、室外熱交換器18および室内蒸発器19が、冷媒流れに対して並列的に接続される冷媒回路に切り替えられる。
【0178】
また、外気並列除湿暖房モードの冷媒回路では、放熱部である水冷媒熱交換器12から流出した冷媒をレシーバ側減圧部である暖房用固定絞り23aへ流入させる。レシーバ部15から流出した冷媒を蒸発部側減圧部である冷房用膨張弁16bへ流入させる。冷房用膨張弁16bにて減圧された冷媒を蒸発部である室内蒸発器19へ流入させる。従って、外気並列除湿暖房モードの冷媒回路は、第2回路に含まれる。
【0179】
上記の回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、圧縮機11および暖房用膨張弁16aについては、制御装置70は、外気暖房モードと同様に制御する。また、冷房用膨張弁16bについては、制御装置70は、予め定めた外気並列除湿暖房モード用の絞り開度となるように絞り開度を制御する。その他の制御対象機器については、制御装置70は、冷房モードと同様に制御する。
【0180】
従って、外気並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、冷媒流れに対して互いに並列的に接続された室外熱交換器18および室内蒸発器19を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0181】
また、外気並列除湿暖房モードの高温側熱媒体回路50では、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体がヒータコア52へ圧送される。
【0182】
また、外気並列除湿暖房モードの室内空調ユニット40では、室内蒸発器19にて冷却されて除湿された送風空気がヒータコア52にて再加熱されて車室内へ吹き出される。これにより、車室内の除湿暖房が実現される。
【0183】
(h)廃熱並列除湿暖房モード
廃熱並列除湿暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0184】
廃熱並列除湿暖房モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを開き、第4開閉弁14dを開く。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを絞り状態とし、冷房用膨張弁16bを絞り状態とし、冷却用膨張弁16cを絞り状態とする。
【0185】
これにより、廃熱並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用固定絞り23a、レシーバ部15の順に流れる。そして、レシーバ部15から流出した冷媒が、暖房用膨張弁16a、室外熱交換器18、圧縮機11の吸入口の順に循環し、冷房用膨張弁16b、室内蒸発器19、圧縮機11の吸入口の順に循環し、さらに、冷却用膨張弁16c、チラー20、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。
【0186】
つまり、廃熱並列除湿暖房モードでは、室外熱交換器18、室内蒸発器19およびチラー20が、冷媒流れに対して並列的に接続される冷媒回路に切り替えられる。
【0187】
また、廃熱並列除湿暖房モード冷媒回路では、放熱部である水冷媒熱交換器12から流出した冷媒をレシーバ側減圧部である暖房用固定絞り23aへ流入させる。レシーバ部15から流出した冷媒を蒸発部側減圧部である冷房用膨張弁16bおよび冷却用膨張弁16cへ流入させる。冷房用膨張弁16bにて減圧された冷媒を蒸発部である室内蒸発器19へ流入させ、冷却用膨張弁16cにて減圧された冷媒を蒸発部であるチラー20へ流入させる。従って、廃熱並列除湿暖房モードの冷媒回路は、第2回路に含まれる。
【0188】
上記の回路構成で、制御装置70は、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、圧縮機11および暖房用膨張弁16aについては、制御装置70は、外気暖房モードと同様に制御する。また、冷房用膨張弁16bおよび冷却用膨張弁16cについては、制御装置70は、予め定めた廃熱並列除湿暖房モード用の絞り開度となるように絞り開度を制御する。その他の制御対象機器については、制御装置70は、冷房モードと同様に制御する。
【0189】
従って、廃熱並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、冷媒流れに対して互いに並列的に接続された室外熱交換器18、室内蒸発器19およびチラー20を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0190】
また、廃熱並列除湿暖房モードの高温側熱媒体回路50では、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体がヒータコア52へ圧送される。また、廃熱並列除湿暖房モードの低温側熱媒体回路60では、チラー20にて冷却された低温側熱媒体がバッテリ80の冷却水通路80aへ流入する。これにより、バッテリ80が冷却される。
【0191】
また、廃熱並列除湿暖房モードの室内空調ユニット40では、室内蒸発器19にて冷却されて除湿された送風空気がヒータコア52にて再加熱されて車室内へ吹き出される。これにより、車室内の除湿暖房が実現される。
【0192】
以上の如く、冷凍サイクル装置10は、冷媒回路を切り替えることによって、各種運転モードでの運転を実行することができる。これにより、車両用空調装置では、バッテリ80の温度を適切に調整しつつ、車室内の快適な空調を実現することができる。
【0193】
さらに、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、いずれの運転モードにおいても、凝縮器として機能する熱交換部から流出した高圧液相冷媒を、レシーバ側減圧部である暖房用固定絞り23aあるいは冷房用固定絞り23bへ流入させている。従って、凝縮器として機能する熱交換部の出口側冷媒よりも、レシーバ部15内の冷媒の飽和圧力を低下させることができる。
【0194】
これによれば、レシーバ部15内の冷媒のエンタルピを、モリエル線図の飽和液線の傾きに沿って、凝縮器として機能する熱交換部の出口側冷媒のエンタルピよりも低下させることができる。従って、凝縮器として機能する熱交換部の出口側の冷媒に過冷却度を持たせることができる。そして、レシーバ部15から蒸発器として機能する熱交換部へ流入させる冷媒のエンタルピを低下させることができる。
【0195】
これに加えて、冷凍サイクル装置10では、いずれの運転モードにおいても、レシーバ側減圧部から流出した冷媒の気液を分離し、分離された液相冷媒をサイクルの余剰冷媒としてレシーバ部15に蓄えている。従って、蒸発器として機能する熱交換部の出口側の冷媒に過熱度を持たせることができる。そして、蒸発器として機能する熱交換部の出口側の冷媒のエンタルピを上昇させることができる。
【0196】
その結果、本実施形態の冷凍サイクル装置10によれば、いずれの運転モードにおいても、蒸発器として機能する熱交換部の出口側冷媒のエンタルピから入口側冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差を拡大させることができる。すなわち、蒸発器として機能する熱交換部における冷媒の吸熱量を拡大させて、冷凍サイクル装置10のCOPを向上させることができる。
【0197】
ところで、本実施形態の冷凍サイクル装置10のように、運転モードに応じて冷媒回路を切り替える冷凍サイクル装置では、運転モードに応じてサイクルを循環させる必要のある循環冷媒流量も変化しやすい。例えば、他の運転モードに対して、サイクルの熱負荷が高くなる運転モードや、サイクルの内容積が多くなる運転モードでは、循環冷媒流量が増加しやすい。
【0198】
本発明者らの検討によれば、冷凍サイクル装置10では、第1回路に切り替えられる運転モードでは、第2回路に切り替えられる運転モードよりも冷媒循環流量が多くなることが判っている。
【0199】
具体的には、冷凍サイクル装置10では、外気温と送風空気との温度差が比較的小さくなる(g)外気並列除湿暖房モードや、(h)廃熱並列除湿暖房モード等では、熱負荷が低くなりやすい。さらに、比較的低い加熱能力で送風空気を加熱する(e)廃熱暖房モードでは、サイクルの内容積も少なくなるので、他の運転モードと比較して、循環冷媒流量が最も少なくなることが判っている。
【0200】
また、外気温と送風空気との温度差が比較的大きくなる(a)冷房モードや、(c)冷房冷却モードでは熱負荷が高くなりやすい。さらに、(c)冷房冷却モードでは、サイクルの内容積も多くなるので、他の運転モードと比較して、循環冷媒流量が最も多くなることが判っている。
【0201】
このため、(e)廃熱暖房モードでは、レシーバ部15に蓄えられる余剰冷媒の量が最も多くなる。また、(c)冷房冷却モードでは、レシーバ部15に蓄えられる余剰冷媒の量が最も少なくなる。従って、冷凍サイクル装置10では、(c)冷房冷却モードで、レシーバ部15に充分な気液分離性能を発揮させることができるように、冷媒封入量を決定する必要がある。
【0202】
その理由は、レシーバ部15に蓄えられる余剰冷媒の量が少なくなっていると、分離された気相冷媒が再び液相冷媒に混入し、気液混合冷媒となってレシーバ部15から流出してしまう可能性が高くなるからである。さらに、気液混合冷媒がレシーバ部15から流出してしまうと、蒸発器として機能する熱交換部へ流入する冷媒のエンタルピが上昇してしまうので、上述したCOP向上効果も得られなくなってしまう。
【0203】
これに対して、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、減速部としての衝突板33を備えている。従って、循環冷媒流量が多くなり、レシーバ部15に蓄えられる余剰冷媒の量が少なくなる運転モードに切り替えられても、レシーバ部15の気液分離性能の低下を抑制することができる。
【0204】
冷凍サイクル装置10では、冷媒がレシーバ側減圧部である暖房用固定絞り23aあるいは冷房用固定絞り23bにて減圧される際に、冷媒の流速が増加してしまう。このため、冷凍サイクル装置10においては、減速部によってレシーバ部15へ流入する冷媒の流速を低下させることは、レシーバ部15の気液分離性能の低下を抑制するために有効である。
【0205】
従って、冷凍サイクル装置10では、(c)冷房冷却モードに、レシーバ部15が充分な気液分離性能を発揮するために必要な冷媒封入量の増加を最小限とすることができる。その結果、冷凍サイクル装置10では、冷媒回路を切替可能に構成されていても、レシーバ部15の大型化を抑制することができる。そして、冷凍サイクル装置10全体としての搭載性や生産性の悪化を抑制することができる。
【0206】
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、減速部として衝突部33aおよび連通部33bを有する衝突板33を採用している。これによれば、レシーバ部15へ流入する冷媒を衝突部33aに衝突させることで、確実に冷媒の流速を低下させることができる。さらに、流速が低下した冷媒のうち比重の大きい液相冷媒を、連通部33bの貫通穴33cを介してレシーバ部15の内部空間15aの下方側へ落下させることができる。
【0207】
さらに、本実施形態では、数式F1で定義される無次元化パラメータP1が、数式F2を満足するように、貫通穴33cの個数Nおよび総開口面積SAが決定されている。これによれば、実用上、衝突板33に貫通穴33cを形成可能な範囲で、レシーバ部15の内部空間15aに貯留された液相冷媒のフォーミングを抑制することができる。従って、冷凍サイクル装置10のCOPの低下を抑制することができる。
【0208】
さらに、衝突板33は、レシーバ部15の内部空間15aの中央部よりも上方側に配置されているので、冷媒を衝突部33aに衝突させても、レシーバ部15の内部空間15a内に蓄えられた液相冷媒の液面に影響を与えにくい。従って、本実施形態の衝突板33によれば、簡素な構成でありながら、レシーバ部15の気液分離性能を向上させることができる。
【0209】
また、本実施形態では、レシーバモジュール30として、少なくともレシーバ側減圧部、減速部、およびレシーバ部15とを一体化させることを開示している。換言すると、本実施形態では、レシーバ側減圧部とレシーバ部とを備えるレシーバモジュール30において、レシーバ部の大型化を招くことなく気液分離性能を向上させるために、減速部を備えることを開示している。
【0210】
これによれば、冷凍サイクル装置10の各構成機器を配置するために必要なスペースを縮小化させて、冷凍サイクル装置10の生産性の向上および小型化を図ることができる。
【0211】
また、本実施形態のレシーバモジュール30では、切替部用ブロック31、および減圧部用ブロック32を備えている。
【0212】
これによれば、切替部用ブロック31に、第1開閉弁14a~第3開閉弁14c、暖房用膨張弁16a、第2逆止弁17b等を取り付けることによって、容易にレシーバモジュール30を形成することができる。さらに、減圧部用ブロック32に、第1逆止弁17a、暖房用固定絞り23a、冷房用固定絞り23b等を取り付けることによって、容易にレシーバモジュール30を形成することができる。
【0213】
また、本実施形態のレシーバモジュール30では、切替部用ブロック31、減圧部用ブロック32、およびレシーバ部15が、異なる部材で形成されている。そして、切替部用ブロック31と減圧部用ブロック32とを接触させ、減圧部用ブロック32とレシーバ部15とを接触させ、切替部用ブロック31とレシーバ部15とを接触させないように、切替部用ブロック31と減圧部用ブロック32とレシーバ部15とを一体化させている。
【0214】
ここで、(a)冷房モード等では、圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒が、切替部用ブロック31の第1入口31aへ流入する。このため、切替部用ブロック31は、高温高圧冷媒と同程度に温度上昇する可能性がある。一方、レシーバ部15へ流入する冷媒は、運転モードによらず、レシーバ側減圧部である暖房用固定絞り23aあるいは冷房用固定絞り23bにて減圧されるので、高温高圧冷媒よりも低温化する。
【0215】
これに対して、レシーバモジュール30では、切替部用ブロック31とレシーバ部15とを接触させないように一体化させている。これによれば、レシーバ部15内の冷媒が、切替部用ブロック31によって加熱されてしまう、いわゆる熱害の問題が発生することを抑制することができる。
【0216】
なお、本実施形態のレシーバモジュール30では、減速部として、水平方向に広がるように配置された平板状の板状部材で形成された衝突板33を採用した例を説明したが、減速部はこれに限定されない。
【0217】
例えば、
図8に示すように、衝突板33を水平方向に対して傾斜させてもよい。そして、衝突板33の入口パイプ15bから離れた側の部位を、レシーバ部に蓄えられる余剰冷媒量が最も少なくなる運転モード時の液相冷媒の液面よりも低い位置に配置すればよい。これによれば、衝突部33aに衝突して流速が低下した冷媒のうち比重の大きい液相冷媒を、衝突板33に沿って内部空間15aの下方側へ移動させることができる。従って、レシーバ部15の気液分離性能を向上させることができる。
【0218】
また、
図9に示すように、衝突板33を曲面上に形成してもよい。そして、
図8の例と同様に、衝突板33の入口パイプ15bから離れた側の部位を、レシーバ部に蓄えられる余剰冷媒量が最も少なくなる運転モード時の液相冷媒の液面よりも低い位置に配置すればよい。これによれば、
図8と同様に、液相冷媒を衝突板33に沿って内部空間15aの下方側へ移動させることができる。従って、レシーバ部15の気液分離性能を向上させることができる。
【0219】
なお、
図8、
図9で説明した衝突板33が連通部33bを有していてもよい。連通部33bを設ける場合は、入口パイプ15bから流出した冷媒が衝突しない部位に貫通穴33cを設ければよい。
【0220】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、レシーバモジュール30の減速部の構成を変更した例を説明する。本実施形態の減速部は、
図10に示すように、レシーバ側減圧部である暖房用固定絞り23aあるいは冷房用固定絞り23bにて減圧されてレシーバ部15の内部空間15aへ流入する冷媒の流れ方向を転向させる減速用冷媒通路34によって形成されている。
【0221】
より具体的には、本実施形態の減速用冷媒通路34は、レシーバ部15の内部空間15a内に配置された入口パイプ15bによって形成されている。本実施形態の入口パイプ15bは、レシーバ部15の内部空間15aへ流入する冷媒の流れ方向を、レシーバ部15の側面に衝突させる方向に転向させるように湾曲している。さらに、本実施形態の入口パイプ15bは、内部空間15aへ流入した冷媒が、レシーバ部15の側面のうち、上下方向中央部よりも上方側に衝突するように湾曲している。
【0222】
このため、レシーバ部15の内部空間15aへ流入した冷媒は、レシーバ部15の側壁面に衝突して流速を低下させる。さらに、流速が低下した冷媒のうち比重の大きい液相冷媒は、レシーバ部15の内部空間15aの下方側へ落下する。従って、減速用冷媒通路34によれば、レシーバ部15の気液分離性能を向上させることができる。
【0223】
その他の冷凍サイクル装置10およびレシーバモジュール30の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0224】
従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10およびレシーバモジュール30においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル装置10であっても、レシーバ部15の大型化を抑制することができる。さらに、レシーバ部15の大型化を招くことなく気液分離性能を向上させたレシーバモジュール30を提供することができる。
【0225】
(第3実施形態)
本実施形態では、第2実施形態に対して、
図11に示すように、減速部としての減速用冷媒通路34の構成を変更した例を説明する。本実施形態の減速用冷媒通路34は、減圧部用ブロック32に直接形成されている。
【0226】
その他の冷凍サイクル装置10およびレシーバモジュール30の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10およびレシーバモジュール30においても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0227】
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態に対して、
図12に示すように、減速部としての減速用冷媒通路34の形状を変更した例を説明する。本実施形態の減速用冷媒通路34は、減圧部用ブロック32に形成された複数の減圧部側通路34aとレシーバ部側通路34bとを有している。なお、
図12は、減圧部用ブロック32の近傍の模式的な拡大断面図である。さらに、
図12では、図示の明確化のために出口パイプ15cの図示を省略している。
【0228】
複数の減圧部側通路34aは、それぞれレシーバ側減圧部の出口側に接続されている。本実施形態のレシーバモジュール30は、暖房用固定絞り23aおよび冷房用固定絞り23bの2つのレシーバ側減圧部を備えている。従って、本実施形態では、減圧部側通路34aも2つ設けられている。
【0229】
2つの減圧部側通路34aは同一平面上(本実施形態では、水平面上)に配置されている。2つの減圧部側通路34aは、レシーバ部15の中心軸方向から見たときに、等角度間隔(本実施形態では、180°間隔)に配置されている。2つの減圧部側通路34aは、いずれもレシーバ部15の外周側から中心軸側へ向かって延びている。
【0230】
レシーバ部側通路34bは、複数の減圧部側通路34aの最下流部に接続されている。レシーバ部側通路34bは、レシーバ部15の中心軸の近傍に配置されている。レシーバ部側通路34bは、レシーバ部15の中心軸方向の上方側から下方側へ延びている。
【0231】
本実施形態の減速用冷媒通路34では、レシーバ側減圧部から流出して水平方向に流れた冷媒の流れを鉛直方向へ転向させて、冷媒の流速を低下させている。例えば、暖房用固定絞り23aから流出した気液二相冷媒は、冷房用固定絞り23b側の減圧部側通路34a内に存在する気液二相冷媒と衝突して流速を緩和させる。これにより、レシーバ部側通路34bを介して、レシーバ部15へ流入する冷媒の流速を低下させることができる。
【0232】
その他の冷凍サイクル装置10およびレシーバモジュール30の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0233】
従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10およびレシーバモジュール30においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル装置10であっても、レシーバ部15の大型化を抑制することができる。さらに、レシーバ部15の大型化を招くことなく気液分離性能を向上させたレシーバモジュール30を提供することができる。
【0234】
(第5実施形態)
本実施形態では、
図13に示すように、第1実施形態の冷凍サイクル装置10に、サブタンク部35を追加した例を説明する。サブタンク部35は、放熱部である水冷媒熱交換器12から流出した液相冷媒の一部を蓄える容器である。サブタンク部35は、水冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口からレシーバモジュール30の第1入口31aへ至る冷媒流路に配置されている。
【0235】
その他の冷凍サイクル装置10およびレシーバモジュール30の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0236】
従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10およびレシーバモジュール30においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル装置10であっても、レシーバ部15の大型化を抑制することができる。さらに、レシーバ部15の大型化を招くことなく気液分離性能を向上させたレシーバモジュール30を提供することができる。
【0237】
これに加えて、本実施形態の冷凍サイクル装置10によれば、サブタンク部35を備えているので、サイクルの余剰冷媒量が多くなる運転モード時に、サブタンク部35内に余剰冷媒の一部を蓄えることができる。従って、より一層、レシーバ部15の大型化を抑制することができる。
【0238】
このことをより詳細に説明すると、第1実施形態で説明したように、冷凍サイクル装置10では、第1回路に切り替えられる運転モードの方が、第2回路に切り替えられる運転モードよりも冷媒循環流量が多くなる。つまり、第2回路に切り替えられる運転モードの方が、第1回路に切り替えられる運転モードよりも余剰冷媒量も多くなる。
【0239】
また、第1回路に切り替えられる運転モードでは、室外熱交換器18にて外気へ放熱した冷媒が、レシーバモジュール30の第2入口32aへ流入する。一方、冷凍サイクル装置10が第2回路に切り替えられる運転モードでは、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体へ放熱した冷媒が、レシーバモジュール30の第1入口31aへ流入する。
【0240】
さらに、第1回路に切り替えられる運転モードでは、第2回路へ切り替えられる運転モードよりも送風空気の加熱量が少なくなるので、水冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量も少なくなる。このため、第2回路に切り替えられる運転モード時に水冷媒熱交換器12から流出する冷媒の乾き度は、第1回路に切り替えられる運転モード時に水冷媒熱交換器12から流出する冷媒の乾き度よりも低くなる。
【0241】
換言すると、冷媒回路切替部が、第2回路に切り替えた際にサブタンク部35へ流入する冷媒の乾き度は、第1回路に切り替えた際にサブタンク部35へ流入する冷媒の乾き度よりも低くなる。従って、第2回路に切り替えられる運転モードでは、第1回路に切り替えられる運転モードよりも、サブタンク部35へ液相冷媒を流入させやすくなる。その結果、サイクルの余剰冷媒量が多くなる運転モード時に、余剰冷媒を蓄えることができる。
【0242】
(第6実施形態)
本実施形態では、第5実施形態に対して、
図14に示すように、サブタンク部35をレシーバモジュール30に一体化している。より具体的には、本実施形態のサブタンク部35は、切替部用ブロック31の第1入口31aから第1内部三方継手13aへ至る冷媒流路に形成されている。これによれば、より一層、レシーバ部15の大型化を抑制可能なレシーバモジュール30を提供することができる。
【0243】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0244】
(1)上述の実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を電気自動車に搭載された車両用空調装置に適用した例を説明したが、冷凍サイクル装置10の適用は、これに限定されない。例えば、内燃機関および電動モータの双方から車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両搭載された車両用空調装置に適用してもよい。
【0245】
また、上述の実施形態では、温度調整対象物としてバッテリ80を冷却する例を説明したが、これに限定されない。例えば、モータジェネレータ、インバータ、PCU、トランスアクスル、ADAS用の制御装置等のように、作動時に発熱する車載機器を温度調整対象物としてもよい。
【0246】
モータジェネレータは、走行用の駆動力を出力するモータとしての機能および発電機としての機能を有する。インバータは、モータジェネレータ等に電力を供給する。PCUは、変電や電力分配を行う電力制御ユニットである。トランスアクスルは、トランスミッションやディファレンシャルギア等を一体化させた動力伝達機構である。ADAS用の制御装置は、先進運転支援システム用の制御装置である。
【0247】
また、冷凍サイクル装置10の適用は、車両用に限定されない。例えば、上述の実施形態では、コンピュータサーバルームの空調を行う定置型の空調装置に適用してもよい。この場合は、コンピュータサーバを冷却対象物とすればよい。
【0248】
(2)冷凍サイクル装置10の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0249】
上述の実施形態では、水冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路50の各構成機器によって、送風空気を加熱する加熱部を構成した例を説明したが、加熱部は、これに限定されない。
【0250】
例えば、水冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路50を廃止して、室内凝縮器を加熱部としてもよい。室内凝縮器は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、室内蒸発器19通過後の送風空気とを熱交換させて、高圧冷媒の有する熱を送風空気へ放熱させる放熱部である。室内凝縮器は、ヒータコア52と同様に、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置すればよい。
【0251】
また、上述の実施形態では、レシーバ側減圧部として固定絞りを採用した例を説明したが、レシーバ側減圧部として可変絞り機構を採用してもよい。この場合は、レシーバ側減圧部として暖房用膨張弁16a等と同様の構成の可変絞り機構を採用してもよい。
【0252】
また、上述の実施形態では、チラー20および低温側熱媒体回路60の各構成機器によって、バッテリ80を冷却する冷却部を構成した例を説明したが、冷却部は、これに限定されない。例えば、チラー20および低温側熱媒体回路60を廃止して、バッテリ80の冷却水通路80aを冷却部として、冷却用膨張弁16cにて減圧された低圧冷媒を直接流通させるようにしてもよい。この場合は、冷却水通路80aが蒸発部となる。
【0253】
また、上述の実施形態では、室内蒸発器19の冷媒出口側に第4逆止弁17dを配置した例を説明したが、第4逆止弁17dに代えて、蒸発圧力調整弁を配置してもよい。蒸発圧力調整弁は、室内蒸発器19の冷媒出口側の冷媒の圧力上昇に伴って、弁開度を増加させる機械的機構で構成された可変絞りである。蒸発圧力調整弁によれば、室内蒸発器19における冷媒蒸発圧力を予め定めた基準値以上に維持することができる。
【0254】
また、上述の実施形態では、冷凍サイクル装置10の冷媒として、R1234yfを採用した例を説明したが、これに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C等を採用してもよい。または、これらのうち複数の冷媒を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
【0255】
また、上述の実施形態では、複数の運転モードに切替可能な冷凍サイクル装置10について説明したが、運転モードの切り替えは限定されない。少なくとも第1回路に切り替えられる運転モードのいずれか1つと第2回路に切り替えられる運転モードのいずれか1つとを切替可能に構成されていれば、上述したレシーバ部15の小型化効果を得ることができる。
【0256】
さらに、冷凍サイクル装置10は、他の運転モードを実行可能に構成されていてもよい。例えば、単独除湿暖房モードを実行可能に構成されていてもよい。単独除湿暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うことなく、冷却されて除湿された送風空気を外気並列除湿暖房モードよりも低い加熱能力で再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0257】
単独除湿暖房モードでは、制御装置70が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを閉じ、第4開閉弁14dを閉じる。また、制御装置70は、暖房用膨張弁16aを全閉状態とし、冷房用膨張弁16bを絞り状態とし、冷却用膨張弁16cを全閉状態とする。
【0258】
これにより、単独除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、水冷媒熱交換器12、暖房用固定絞り23a、レシーバ部15、冷房用膨張弁16b、室内蒸発器19、圧縮機11の吸入口の順に循環する冷媒回路に切り替えられる。単独除湿暖房モードの冷媒回路は、第2回路に含まれる。
【0259】
(3)レシーバモジュール30の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。レシーバモジュール30は、少なくともレシーバ側減圧部、レシーバ部15、および減速部が一体化されていれば、レシーバ部の大型化を招くことなく気液分離性能を向上させることができる。
【0260】
従って、熱害を抑制することが優先される場合には、切替部用ブロック31を一体化させなくてもよい。つまり、第1開閉弁14a~第3開閉弁14c、および暖房用膨張弁16aを、レシーバモジュール30に一体化させなくてもよい。
【0261】
また、上述の第1実施形態では、減速部として金属製の板状部材で形成された衝突板33を採用したが、減速部はこれに限定されない。例えば、フィルタや乾燥剤によって衝突部を形成した減速部を採用してもよい。
【0262】
また、上述の第1実施形態では、衝突板33の貫通穴33cが、レシーバ部15の中心軸回りに円環状に並べて配置された例を説明したが、これに限定されない。例えば、多重の円環状に並べて配置されていてもよい。さらに、衝突板33のうち連通部33bを形成する領域内であれば、互いに所定の間隔を開けて配置されていてもよい。
【0263】
また、上述の各実施形態では、レシーバ部15の上方側から内部空間15aへ冷媒を流入させ、分離された液相冷媒をレシーバ部15の上方側から流出させているが、これに限定されない。
【0264】
例えば、
図15に示すように、レシーバ部15の下方側から内部空間15aへ冷媒を流入させるようにしてもよい。この場合は、レシーバ部15を減圧部用ブロック32よりも上方側に配置すればよい。そして、入口パイプ15bによって、レシーバ部15の内部空間15aへ流入する冷媒の流れ方向を、レシーバ部15の側面に衝突させる方向に転向させる減速用冷媒通路34を形成すればよい。また、出口パイプ15cを廃止して、減圧部用ブロック32に液相冷媒を流出させる冷媒通路を形成すればよい。
【0265】
さらに、
図16に示すように、レシーバ部15の下方側から内部空間15aへ流入させた冷媒をレシーバ部15の天井部15dに衝突させるようにしてもよい。この場合は、レシーバ部15の天井部15dが、減速部となる。
【0266】
また、
図17に示すように、レシーバ部15の側方側から内部空間15aへ流入させた冷媒をレシーバ部15の側面に衝突させるようにしてもよい。この場合は、レシーバ部15の側面が、減速部となる。さらに、
図17では、分離された液相冷媒をレシーバ部15の上方側から流出させているが、もちろん、
図15、
図16で説明したレシーバモジュール30と同様に、下方側から流出させてもよい。
【0267】
(4)高温側熱媒体回路50および低温側熱媒体回路60の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0268】
上述の実施形態では、高温側熱媒体および低温側熱媒体として、エチレングリコール水溶液を採用した例を説明したが、これに限定されない。例えば、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液、アルコール等を含む水系の液媒体、オイル等を含む液媒体を採用してもよい。
【0269】
(5)上述の実施形態では、レシーバモジュール30の車両への搭載について言及していないが、レシーバ部15および切替部用ブロック31のいずれか一方に、取付対象物である車両に固定するための固定部を設ければよい。例えば、レシーバ部15および減圧部用ブロック32には固定部を設けず、切替部用ブロック31に固定部(具体的には、ボルト穴)等を設ければよい。これによれば、より一層、熱害を抑制することができる。
【0270】
(6)上述の各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。例えば、第4実施形態で説明した減速用冷媒通路34を有するレシーバモジュール30に、第1実施形態で説明した衝突板33を併用すると、レシーバ部15における気液分離性能をより一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0271】
11 圧縮機
12 水冷媒熱交換器(放熱部)
14a~14d 第1開閉弁~第4開閉弁(冷媒回路切替部)
15 レシーバ部
16b、16c 冷房用膨張弁、冷却用膨張弁(蒸発部側減圧部)
18 室外熱交換器(室外熱交換部)
19 室内蒸発器(蒸発部)
20 チラー(蒸発部)
23a、23b 暖房用固定絞り、冷房用固定絞り(レシーバ側減圧部)
33 衝突板(減速部)
34 減速用冷媒通路(減速部)