(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】映像信号処理装置および映像信号処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/21 20060101AFI20240220BHJP
G06T 5/70 20240101ALI20240220BHJP
H04N 23/10 20230101ALI20240220BHJP
【FI】
H04N5/21
G06T5/70
H04N23/10
(21)【出願番号】P 2020119754
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】尾川 英明
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147651(JP,A)
【文献】特開2010-147840(JP,A)
【文献】特開2009-278600(JP,A)
【文献】特開2009-153013(JP,A)
【文献】特開2020-136823(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101778192(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 5/94
H04N 5/14 - 5/213
H04N 9/01 - 9/11
H04N 23/10
H04N 23/12 -23/17
H04N 23/80 -23/82
H04N 25/10 -25/17
H04N 25/611
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から入力される三原色の映像信号を処理する映像信号処理装置であって、
現フレーム画像と前フレーム画像とのフレーム差分信号を生成するフレーム差分信号生成部と、
前記フレーム差分信号からノイズ成分を抽出するノイズ抽出部と、
前記ノイズ抽出部により抽出された、赤成分ノイズ抽出信号のレベルと青成分ノイズ抽出信号のレベルを補正するための補正部と、
前記ノイズ抽出部により抽出された緑成分ノイズ抽出信号、前記補正部から出力された赤成分ノイズ抽出信号、前記補正部から出力された青成分ノイズ抽出信号のそれぞれに巡回係数を乗算する係数乗算部と、
前記現フレーム画像の赤成分信号、緑成分信号、青成分信号から、前記巡回係数の乗算後の赤成分ノイズ抽出信号、緑成分ノイズ抽出信号、青成分ノイズ抽出信号をそれぞれ除去するノイズ除去部と、を備え、
前記補正部は、
赤成分ノイズ抽出信号のレベルと緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が第1閾値以上のとき、当該赤成分ノイズ抽出信号のレベルを当該緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行い、
青成分ノイズ抽出信号のレベルと緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が第2閾値以上のとき、当該青成分ノイズ抽出信号のレベルを当該緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行う、
映像信号処理装置。
【請求項2】
前記映像信号処理装置には、前記撮像素子からベイヤ配列の三原色の映像信号が入力され、
前記補正部は、
一つのベイヤ配列を構成する二つの緑成分ノイズ抽出信号を混合した参照用の緑成分ノイズ抽出信号を生成し、
前記ベイヤ配列を構成する赤成分ノイズ抽出信号のレベルと前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が前記第1閾値以上のとき、当該赤成分ノイズ抽出信号のレベルを前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行い、補正後の赤成分ノイズ抽出信号を出力し、前記差分の絶対値が前記第1閾値未満のとき、当該赤成分ノイズ抽出信号のレベルを補正せずに出力し、
前記ベイヤ配列を構成する青成分ノイズ抽出信号のレベルと前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が前記第2閾値以上のとき、当該青成分ノイズ抽出信号のレベルを前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行い、補正後の青成分ノイズ抽出信号を出力し、前記差分の絶対値が前記第2閾値未満のとき、当該青成分ノイズ抽出信号のレベルを補正せずに出力する、
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記ベイヤ配列を構成する赤成分ノイズ抽出信号のレベルと前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が前記第1閾値以上のときであって、前記差分がゼロ以上のとき前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号に前記第1閾値を加算した信号を、補正後の赤成分ノイズ抽出信号として出力し、前記差分がゼロ未満のとき前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号から前記第1閾値を減算した信号を、補正後の赤成分ノイズ抽出信号として出力し、
前記ベイヤ配列を構成する青成分ノイズ抽出信号のレベルと前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が前記第2閾値以上のときであって、前記差分がゼロ以上のとき前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号に前記第2閾値を加算した信号を、補正後の青成分ノイズ抽出信号として出力し、前記差分がゼロ未満のとき前記参照用の緑成分ノイズ抽出信号から前記第2閾値を減算した信号を、補正後の青成分ノイズ抽出信号として出力する、
請求項2に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記ノイズ除去部より後段に設置され、三原色の映像信号の階調を補正するガンマ補正部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
撮像素子から入力される三原色の映像信号を処理する映像信号処理方法であって、
現フレーム画像と前フレーム画像とのフレーム差分信号を生成し、
前記フレーム差分信号からノイズ成分を抽出し、
赤成分ノイズ抽出信号のレベルと緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が第1閾値以上のとき、当該赤成分ノイズ抽出信号のレベルを当該緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行い、
青成分ノイズ抽出信号のレベルと緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が第2閾値以上のとき、当該青成分ノイズ抽出信号のレベルを当該緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行い、
緑成分ノイズ抽出信号、赤成分ノイズ抽出信号、青成分ノイズ抽出信号のそれぞれに巡回係数を乗算し、
前記現フレーム画像の赤成分信号、緑成分信号、青成分信号から、前記巡回係数の乗算後の赤成分ノイズ抽出信号、緑成分ノイズ抽出信号、青成分ノイズ抽出信号をそれぞれ除去する、
映像信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子から入力される三原色の映像信号を処理する映像信号処理装置および映像信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像された映像を高画質化するための信号処理の一つに、3次元ノイズリダクション(3DNR:3 Dimensional Noise Reduction)がある。3次元ノイズリダクションでは、連続するフレーム画像間のフレーム差分からノイズを検出し、検出したノイズを除去するものである。
【0003】
3次元ノイズリダクションにおいて、残像や色ずれを抑制するために、現フレーム画像と前フレーム画像の色別(RGB別)の差分値を算出し、ある色の差分値に基づいて、当該色を備えない画素についても当該色の差分値を補間により求め、各色の差分値に基づき巡回係数を制御する方法が提案されている。具体的には、ある色の差分値が大きい場合、巡回係数を小さくしてノイズ除去値を減少させ、残像や色ずれを抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記の方法では、ある色の差分値が大きくなると、補間により他の色の差分値も大きくなるため、どの色の巡回係数も小さくなり、どの色のノイズ除去効果も低減されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3次元ノイズリダクションにおいて、映像に動きがある場合、各色のノイズ除去量に大きな差が発生することがある。このノイズ除去量の差は、色相のずれや偽色を発生させる要因となる。
【0007】
本実施形態はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、3次元ノイズリダクションの品質を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本実施形態のある態様の映像信号処理装置は、撮像素子から入力される三原色の映像信号を処理する映像信号処理装置であって、現フレーム画像と前フレーム画像とのフレーム差分信号を生成するフレーム差分信号生成部と、前記フレーム差分信号からノイズ成分を抽出するノイズ抽出部と、前記ノイズ抽出部により抽出された、赤成分ノイズ抽出信号のレベルと青成分ノイズ抽出信号のレベルを補正するための補正部と、前記ノイズ抽出部により抽出された緑成分ノイズ抽出信号、前記補正部から出力された赤成分ノイズ抽出信号、前記補正部から出力された青成分ノイズ抽出信号のそれぞれに巡回係数を乗算する係数乗算部と、前記現フレーム画像の赤成分信号、緑成分信号、青成分信号から、前記巡回係数の乗算後の赤成分ノイズ抽出信号、緑成分ノイズ抽出信号、青成分ノイズ抽出信号をそれぞれ除去するノイズ除去部と、を備える。前記補正部は、赤成分ノイズ抽出信号のレベルと緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が第1閾値以上のとき、当該赤成分ノイズ抽出信号のレベルを当該緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行い、青成分ノイズ抽出信号のレベルと緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が第2閾値以上のとき、当該青成分ノイズ抽出信号のレベルを当該緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行う。
【0009】
本実施形態の別の態様は、映像信号処理方法である。この方法は、撮像素子から入力される三原色の映像信号を処理する映像信号処理方法であって、現フレーム画像と前フレーム画像とのフレーム差分信号を生成し、前記フレーム差分信号からノイズ成分を抽出し、赤成分ノイズ抽出信号のレベルと緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が第1閾値以上のとき、当該赤成分ノイズ抽出信号のレベルを当該緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行い、青成分ノイズ抽出信号のレベルと緑成分ノイズ抽出信号の差分の絶対値が第2閾値以上のとき、当該青成分ノイズ抽出信号のレベルを当該緑成分ノイズ抽出信号のレベルに近づける補正を行い、緑成分ノイズ抽出信号、赤成分ノイズ抽出信号、青成分ノイズ抽出信号のそれぞれに巡回係数を乗算し、前記現フレーム画像の赤成分信号、緑成分信号、青成分信号から、前記巡回係数の乗算後の赤成分ノイズ抽出信号、緑成分ノイズ抽出信号、青成分ノイズ抽出信号をそれぞれ除去する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本実施形態の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本実施形態の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態によれば、3次元ノイズリダクションの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】比較例に係る撮像システムの構成を示す図である。
【
図2】実施例に係る撮像システムの構成を示す図である。
【
図4】実施例に係る3次元ノイズリダクション部の構成例を示す図である。
【
図5】第1振幅変換部による振幅範囲の制限処理の具体的なイメージを示す図である。
【
図6】RGB-IR型のカラーフィルタCfを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、比較例に係る撮像システム1の構成を示す図である。撮像システム1は例えば、ドライブレコーダ、ドライバモニタリングシステムなどに使用することができる。撮像システム1は、撮像素子2および映像信号処理装置3を備える。
【0014】
撮像素子2は、入射される光を電気信号に変換する。撮像素子2には、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサなどの固体撮像素子が使用される。撮像素子2は、三原色(RGB)のRAWデータで規定された映像信号を映像信号処理装置3に出力する。
【0015】
映像信号処理装置3は、HDR(High Dynamic Range)合成部10、ホワイトバランス調整部20、ガンマ補正部30、輝度・色差変換部40、3次元ノイズリダクション部50、映像出力部60を含む。これらの構成要素は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源として、CPU、ROM、RAM、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ISP(Image Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェアなどのプログラムを利用できる。
【0016】
HDR合成部10は、異なる露出で撮像された複数のフレーム画像を合成することにより、ダイナミックレンジが広いフレーム画像を生成する。例えばHDR合成部10は、暗い領域は高露出で撮像されたフレーム画像を使用し、中程度の明るさの領域は標準露出で撮像されたフレーム画像を使用し、明るい領域は低露出で撮像されたフレーム画像を使用する。これにより、白飛びや黒潰れを抑制することができる。
【0017】
ホワイトバランス調整部20は、光源の色温度に応じてホワイトバランスを調整する。例えば、寒色系の色温度が高い光源(例えば、曇り空の屋外)の場合、青成分の信号比率を増加させるようにホワイトバランスを調整する。反対に、暖色系の色温度が低い光源(例えば、白熱電球)の場合は赤成分の信号比率を増加させるようにホワイトバランスを調整する。オート設定の場合、ホワイトバランス調整部20は、撮像された画像を解析して、最適なホワイトバランスに調整する。マニュアル設定の場合、ホワイトバランス調整部20は、ユーザにより設定されたホワイトバランスに調整する。
【0018】
ガンマ補正部30は、映像信号の階調を補正する。一般に、CMOSイメージセンサの入出力特性は、D=Eγ(Eは入射光量、Dは出力信号量)の関係になる。ガンマ補正部30は、下記(式1)に示すように映像信号を補正する。
D’=D(1/γ)・・・(式1)
【0019】
例えば、γには2.2が使用される。これにより、信号レベルが低い(暗い)領域の信号が持ち上げられ、視認性が向上する。
【0020】
なお、ホワイトバランス調整部20によるホワイトバランス調整と、ガンマ補正部30によるガンマ補正は順番が逆でもよい。
【0021】
輝度・色差変換部40は、三原色フォーマットの映像信号を、輝度・色差フォーマットの映像信号に変換する。例えば、RGBフォーマットの映像信号を、YUV(YCbCr)フォーマットの映像信号に変換する。
【0022】
3次元ノイズリダクション部50は、輝度・色差フォーマットに変換された映像信号に対して、3次元ノイズリダクションを実施してノイズを除去する。
【0023】
映像出力部60は、映像信号を出力フォーマットに準拠した信号に変換して出力する。例えば、HDMI(登録商標)で出力する場合、映像出力部60は映像信号を、HDMI出力フォーマットの映像信号に変換する。
【0024】
このように比較例では、HDR合成、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、輝度・色差フォーマットへの変換を行った後に、3次元ノイズリダクションを実施している。上述したようにガンマ補正で、暗い領域の信号が増幅されると、同時に暗い領域のノイズも増幅される。このように、ガンマ補正により暗い領域のノイズが増幅された後に、3次元ノイズリダクションを実施しても、暗い領域のノイズの低減効果は限定的なものとなる。
【0025】
図2は、実施例に係る撮像システム1の構成を示す図である。実施例に係る撮像システム1では、3次元ノイズリダクション部50がガンマ補正部30より前段に配置される。また実施例では、3次元ノイズリダクション部50は、輝度・色差フォーマットの映像信号ではなく、三原色フォーマットの映像信号に対して、3次元ノイズリダクションを実施する。以下、実施例に係る3次元ノイズリダクション部50の構成を詳細に説明する。以下の説明では、撮像素子2からベイヤ配列の三原色の映像信号が入力されることを前提とする。
【0026】
図3は、ベイヤ配列を示す図である。ベイヤ配列では、一単位を構成する4(2×2)画素が、R:G:B=1:2:1の比率で配列される。人間の網膜は、緑の波長域の感度が高いため、緑が赤および青より多く配置される。
図3に示す例では、ベイヤ配列がカラーフィルタCfで実現されている。撮像素子2の撮像領域2aに含まれる複数の画素上に、ベイヤ配列のカラーフィルタCfが設置される。
【0027】
赤色のフィルタは赤の波長域の光を透過し、他の波長域の光を遮断する。緑色のフィルタは緑の波長域の光を透過し、他の波長域の光を遮断する。青色のフィルタは青の波長域の光を透過し、他の波長域の光を遮断する。ベイヤ配列では、二つの緑色のフィルタが対角線上に配置され、赤色のフィルタと青色のフィルタが、もう一つの対角線上に配置される。
【0028】
各画素に配置された受光素子は、カラーフィルタCfを透過した光を電気信号に変換する。なお、カラーフィルタCfを設けずに、RGB3種類の受光素子を撮像領域2a内にベイヤ配列で配置してもよい。撮像素子2は、一単位のベイヤ配列から、赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1を出力する。
【0029】
各画素において、存在しない二つの色成分信号は、隣接する複数の画素を補間することにより生成される。例えば、緑色の画素の赤色成分信号は、隣接する複数の赤色の画素の赤色成分信号の補間により生成される。緑色の画素の青色成分信号は、隣接する複数の青色の画素の青色成分信号の補間により生成される。この補間処理は、輝度・色差変換部40において実行される。
【0030】
図4は、実施例に係る3次元ノイズリダクション部50の構成例を示す図である。3次元ノイズリダクション部50には、ベイヤ配列を構成する四つの画素の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1が同時に入力される。
【0031】
3次元ノイズリダクション部50は、第1フレーム差分信号生成部51a、第2フレーム差分信号生成部51b、第3フレーム差分信号生成部51c、第4フレーム差分信号生成部51d、第1ノイズ抽出部52a、第2ノイズ抽出部52b、第3ノイズ抽出部52c、第4ノイズ抽出部52d、混合部53、第1比較部54a、第4比較部54d、第1振幅変換部55a、第4振幅変換部55d、第1係数乗算部56a、第2係数乗算部56b、第3係数乗算部56c、第4係数乗算部56d、第1ノイズ除去部57a、第2ノイズ除去部57b、第3ノイズ除去部57c、第4ノイズ除去部57d、フレームメモリ58を含む。
【0032】
フレームメモリ58には、3次元ノイズリダクション部50による3次元ノイズリダクション後の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1が一時的に保持される。
【0033】
第1フレーム差分信号生成部51a、第2フレーム差分信号生成部51b、第3フレーム差分信号生成部51c、第4フレーム差分信号生成部51dは、現フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1と、フレームメモリ58により1フレーム分遅延された前フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1との差分をそれぞれ生成する。
【0034】
図4に示す構成例では、第1フレーム差分信号生成部51a、第2フレーム差分信号生成部51b、第3フレーム差分信号生成部51c、第4フレーム差分信号生成部51dは、前フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1から現フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1をそれぞれ減算して、赤成分フレーム差分信号r0d、緑成分フレーム差分信号g0d、緑成分フレーム差分信号g1d、青成分フレーム差分信号b1dを生成する。
【0035】
赤成分フレーム差分信号r0d、緑成分フレーム差分信号g0d、緑成分フレーム差分信号g1d、青成分フレーム差分信号b1dにはそれぞれ、ノイズ成分と動き成分が含まれている。なお、被写体が静止している場合には動き成分は含まれない。
【0036】
第1ノイズ抽出部52a、第2ノイズ抽出部52b、第3ノイズ抽出部52c、第4ノイズ抽出部52dは、赤成分フレーム差分信号r0d、緑成分フレーム差分信号g0d、緑成分フレーム差分信号g1d、青成分フレーム差分信号b1dからそれぞれ、動き成分を除去し、ノイズ成分を抽出した赤成分ノイズ抽出信号r0n、緑成分ノイズ抽出信号g0n、緑成分ノイズ抽出信号g1n、青成分ノイズ抽出信号b1nを生成する。
【0037】
例えば、第1ノイズ抽出部52a、第2ノイズ抽出部52b、第3ノイズ抽出部52c、第4ノイズ抽出部52dはそれぞれリミッタにより、赤成分フレーム差分信号r0d、緑成分フレーム差分信号g0d、緑成分フレーム差分信号g1d、青成分フレーム差分信号b1dの振幅レベルを所定の範囲に制限する。通常、ノイズ成分の振幅は小さく、動き成分の振幅は大きいため、振幅を制限することにより、ノイズ成分を効果的に抽出することができる。
【0038】
また、第1ノイズ抽出部52a、第2ノイズ抽出部52b、第3ノイズ抽出部52c、第4ノイズ抽出部52dはそれぞれ帯域制限により、赤成分フレーム差分信号r0d、緑成分フレーム差分信号g0d、緑成分フレーム差分信号g1d、青成分フレーム差分信号b1dの周波数帯域を所定値以下に制限してもよい。通常、ノイズ成分の周波数は高く、動き成分の周波数は低いため、周波数帯域を制限することにより、ノイズ成分を効果的に抽出することができる。
【0039】
本明細書では、混合部53、第1比較部54a、第4比較部54d、第1振幅変換部55a、第4振幅変換部55dを総称して補正部という。補正部は、赤成分ノイズ抽出信号r0nの振幅レベルと青成分ノイズ抽出信号b1nの振幅レベルを補正することができる。
【0040】
混合部53は、緑成分ノイズ抽出信号g0nと緑成分ノイズ抽出信号g1nを混合した参照用の緑成分ノイズ抽出信号を生成する。
図4に示す構成例では、混合部53は、緑成分ノイズ抽出信号g0nと緑成分ノイズ抽出信号g1nを単純平均して参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)を生成している。なお、混合部53は、緑成分ノイズ抽出信号g0nと緑成分ノイズ抽出信号g1nを重み付け加算して参照用の緑成分ノイズ抽出信号を生成してもよい。
【0041】
第1比較部54aは、赤成分ノイズ抽出信号r0nと参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)とを比較する。具体的には、第1比較部54aは、赤成分ノイズ抽出信号r0nと参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)との差分dif_rgの絶対値abs(dif_rg)を算出する。第1比較部54aは、差分dif_rgの絶対値abs(dif_rg)と、第1閾値r0n_thとを比較し、比較結果を第1振幅変換部55aに供給する。
【0042】
差分dif_rgの絶対値abs(dif_rg)が第1閾値r0n_th未満の場合、第1振幅変換部55aは、赤成分ノイズ抽出信号r0nを補正せずにそのまま、振幅範囲制限後の赤成分ノイズ抽出信号r0n_limとして出力する。
【0043】
差分dif_rgの絶対値abs(dif_rg)が第1閾値r0n_th以上の場合、第1振幅変換部55aは、赤成分ノイズ抽出信号r0nのレベルを、参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)のレベルに近づける補正を行う。
【0044】
具体的には、差分dif_rgの絶対値abs(dif_rg)が第1閾値r0n_th以上であって差分dif_rgがゼロ以上の場合、第1振幅変換部55aは、参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)に第1閾値r0n_thを加算した信号を、振幅範囲制限後の赤成分ノイズ抽出信号r0n_limとして出力する。
【0045】
差分dif_rgの絶対値abs(dif_rg)が第1閾値r0n_th以上であって差分dif_rgがゼロ未満の場合、第1振幅変換部55aは、参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)から第1閾値r0n_thを減算した信号を、振幅範囲制限後の赤成分ノイズ抽出信号r0n_limとして出力する。
【0046】
図5は、第1振幅変換部55aによる振幅範囲の制限処理の具体的なイメージを示す図である。参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)を中心に、参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)に第1閾値r0n_thを加算した値が振幅範囲の上限値r0n_lim_upperに設定され、参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)から第1閾値r0n_thを減算した値が振幅範囲の下限値r0n_lim_underに設定される。
【0047】
第1振幅変換部55aは、当該振幅範囲から逸脱している赤成分ノイズ抽出信号r0nを、当該振幅範囲の信号に制限する。第1振幅変換部55aは、振幅範囲の上限値r0n_lim_upperを超えている赤成分ノイズ抽出信号r0nを、上限値r0n_lim_upperに補正する。なお、第1振幅変換部55aは、赤成分ノイズ抽出信号r0nを、上限値r0n_lim_upperより参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)に近い値に補正してもよい。
【0048】
また、第1振幅変換部55aは、振幅範囲の下限値r0n_lim_underを下回る赤成分ノイズ抽出信号r0nを、下限値r0n_lim_underに補正する。なお、第1振幅変換部55aは、赤成分ノイズ抽出信号r0nを、下限値r0n_lim_underより参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)に近い値に補正してもよい。
【0049】
図4に戻る。第4比較部54dは、青成分ノイズ抽出信号b1nと参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)とを比較する。具体的には、第4比較部54dは、青成分ノイズ抽出信号b1nと参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)との差分dif_bgの絶対値abs(dif_bg)を算出する。第4比較部54dは、差分dif_bgの絶対値abs(dif_bg)と、第2閾値b1n_thとを比較し、比較結果を第4振幅変換部55dに供給する。
【0050】
差分dif_bgの絶対値abs(dif_bg)が第2閾値b1n_th未満の場合、第4振幅変換部55dは、青成分ノイズ抽出信号b1nを補正せずにそのまま、振幅範囲制限後の青成分ノイズ抽出信号b1n_limとして出力する。
【0051】
差分dif_bgの絶対値abs(dif_bg)が第2閾値b1n_th以上の場合、第4振幅変換部55dは、青成分ノイズ抽出信号b1nのレベルを、参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)のレベルに近づける補正を行う。
【0052】
具体的には、差分dif_bgの絶対値abs(dif_bg)が第2閾値b1n_th以上であって差分dif_bgがゼロ以上の場合、第4振幅変換部55dは、参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)に第2閾値b1n_thを加算した信号を、振幅範囲制限後の青成分ノイズ抽出信号b1n_limとして出力する。
【0053】
差分dif_bgの絶対値abs(dif_bg)が第2閾値b1n_th以上であって差分dif_bgがゼロ未満の場合、第4振幅変換部55dは、参照用の緑成分ノイズ抽出信号ave(g0n,g1n)から第2閾値b1n_thを減算した信号を、振幅範囲制限後の青成分ノイズ抽出信号b1n_limとして出力する。
【0054】
上記の第1閾値r0n_thおよび第2閾値b1n_thはそれぞれ、設計者の知見、実験結果、およびシミュレーション結果の少なくとも一つをもとに、設計者により設定される。第1閾値r0n_thおよび第2閾値b1n_thの値を小さく設定するほど、赤成分と緑成分と青成分のノイズ抽出信号のレベルを近づけることができる。
【0055】
第1係数乗算部56aは、第1振幅変換部55aから出力された振幅範囲制限後の赤成分ノイズ抽出信号r0n_limに第1巡回係数kr0(0<kr0<1)を乗算する。第2係数乗算部56bは、第2ノイズ抽出部52bにより抽出された緑成分ノイズ抽出信号g0nに第2巡回係数kg0(0<kg0<1)を乗算する。第3係数乗算部56cは、第3ノイズ抽出部52cにより抽出された緑成分ノイズ抽出信号g1nに第3巡回係数kg1(0<kg1<1)を乗算する。第4係数乗算部56dは、第4振幅変換部55dから出力された振幅範囲制限後の青成分ノイズ抽出信号b1n_limに第4巡回係数kb1(0<kb1<1)を乗算する。
【0056】
本実施例では、第1巡回係数kr0、第2巡回係数kg0、第3巡回係数kg1、第4巡回係数kb1にそれぞれ固定値が設定される。色ごとに異なる値を設定して、色ごとにノイズ除去の感度を調整することもできる。なお、第1巡回係数kr0、第2巡回係数kg0、第3巡回係数kg1、第4巡回係数kb1にそれぞれ、映像解析結果に応じて適応的に変化する変動値が設定されてもよい。
【0057】
第1ノイズ除去部57a、第2ノイズ除去部57b、第3ノイズ除去部57c、第4ノイズ除去部57dは、現フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1から、巡回係数の乗算後の赤成分ノイズ抽出信号r0n_lim、緑成分ノイズ抽出信号g0n、緑成分ノイズ抽出信号g1n、青成分ノイズ抽出信号b1n_limをそれぞれ除去する。
【0058】
図4に示す構成例では、第1フレーム差分信号生成部51a、第2フレーム差分信号生成部51b、第3フレーム差分信号生成部51c、第4フレーム差分信号生成部51dが、前フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1から現フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1をそれぞれ減算している。この場合、第1ノイズ除去部57a、第2ノイズ除去部57b、第3ノイズ除去部57c、第4ノイズ除去部57dは、現フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1に、巡回係数の乗算後の赤成分ノイズ抽出信号r0n_lim、緑成分ノイズ抽出信号g0n、緑成分ノイズ抽出信号g1n、青成分ノイズ抽出信号b1n_limをそれぞれ加算する。
【0059】
反対に、第1フレーム差分信号生成部51a、第2フレーム差分信号生成部51b、第3フレーム差分信号生成部51c、第4フレーム差分信号生成部51dが、現フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1から前フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1をそれぞれ減算した場合、第1ノイズ除去部57a、第2ノイズ除去部57b、第3ノイズ除去部57c、第4ノイズ除去部57dは、現フレーム画像の赤成分信号R0、緑成分信号G0、緑成分信号G1、青成分信号B1から、巡回係数の乗算後の赤成分ノイズ抽出信号r0n_lim、緑成分ノイズ抽出信号g0n、緑成分ノイズ抽出信号g1n、青成分ノイズ抽出信号b1n_limをそれぞれ減算する。
【0060】
以上説明したように本実施例によれば、緑成分ノイズ抽出信号と、赤成分ノイズ抽出信号または青成分ノイズ抽出信号との差分が大きい場合、赤成分ノイズ抽出信号または青成分ノイズ抽出信号を、緑成分ノイズ抽出信号に近づける補正を行う。これにより、映像に動きが発生している領域において、色相のずれや偽色の発生を抑制することができる。
【0061】
また本実施例では、緑成分ノイズ抽出信号は振幅変換の対象から除外している。これにより、輝度への寄与が大きい緑成分信号が必要以上に振幅変換することがなく、輝度信号に対するノイズ除去効果への影響を少なくすることができる。
【0062】
また本実施例では、ガンマ補正部30より前段に3次元ノイズリダクション部50を配置している。これにより、ガンマ補正により暗い領域のノイズが増幅される前に、3次元ノイズリダクションを実施することができる。ノイズ除去の後段でガンマ補正することにより、暗い領域のノイズも効果的に低減することができる。
【0063】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。また本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で置き換えたものもまた本発明の態様として有効である。
【0064】
上述した実施例では、参照用の緑成分ノイズ抽出信号として、ベイヤ配列を構成する二つの画素の緑成分ノイズ抽出信号の平均値を使用する例を説明した。この点、参照用の緑成分ノイズ抽出信号は、一つの画素の緑成分ノイズ抽出信号から生成されてもよい。
【0065】
図6は、RGB-IR型のカラーフィルタCfを示す図である。このカラーフィルタCfが使用される撮像素子2では、赤外線も受光することができる。この例では、参照用の緑成分ノイズ抽出信号として、緑成分ノイズ抽出信号g0nがそのまま使用される。このように、赤色の画素の赤色ノイズ抽出信号または青色の画素の青色ノイズ抽出信号は、隣接する一つ以上の緑色の画素のノイズ抽出信号をもとに生成される参照用の緑成分ノイズ抽出信号と比較されればよい。
【符号の説明】
【0066】
1 撮像システム、 2 撮像素子、 3 映像信号処理装置、 10 HDR合成部、 20 ホワイトバランス調整部、 30 ガンマ補正部、 40 輝度・色差変換部、 50 3次元ノイズリダクション部、 51a,51b,51c,51d フレーム差分信号生成部、 52a,52b,52c,52d ノイズ抽出部、 53 混合部、 54a,54d 比較部、 55a,55d 振幅変換部、 56a,56b,56c,56d 係数乗算部、 57a,57b,57c,57d ノイズ除去部、 58 フレームメモリ、 60 映像出力部。