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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/44 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B65D35/44 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020120901
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017989
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 征記
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0046958(US,A1)
【文献】特開2019-031299(JP,A)
【文献】実開昭58-033440(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44
B65D 51/22
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトと、キャップと、チューブ状の胴部とを備えるチューブ容器であって、
前記スパウトは、
内周面に内ネジを有する筒状の外筒部と、
前記外筒部の一方端に接続され、前記外筒部の外方に延伸するフランジ部と、
前記外筒部の他方端に接続され、前記外筒部の他方端から分離可能なスペーサーと、
前記外筒部の前記一方端の開口部を封止する封止フィルムとを有し、
前記キャップは、
外周面に外ネジを有する筒状の内筒部と、
前記内筒部の一方端を開閉可能に閉鎖する蓋部と
前記内筒部の他方端に設けられるフィルム切断部とを有し、
前記胴部は、一方面にシーラントを有するシートからなり、一方端が閉塞され、他方端から所定範囲の部分が前記シーラントを介して前記フランジ部にシールされており、
前記スパウト及び前記キャップは、前記内筒部の前記他方端が前記外筒部の前記一方端側から挿入された状態で、前記外ネジ及び前記内ネジを介して螺合しており
前記キャップは、
前記スペーサーが前記外筒部に接続されている第1の状態において、前記キャップの一部が前記スペーサーに当接する第1の位置まで前記スパウトに対して締め込み可能であると共に、
前記スペーサーが前記外筒部から分離された第2の状態において、前記キャップの前記一部が前記外筒部の前記他方端に当接する第2の位置まで前記スパウトに対して締め込み可能であり、
前記キャップが前記第1の位置にあるときには前記フィルム切断部は前記封止フィルムに接触せず、前記第2の状態において、前記第1の位置から前記第2の位置まで前記キャップを締め込む過程で、前記フィルム切断部が前記封止フィルムの少なくとも一部を切断する、チューブ容器。
【請求項2】
前記胴部を構成するシートの厚みが30~200μmである、請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記スパウトの前記外筒部の軸方向の長さが10mm以上である、請求項1または2に記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記蓋部は、前記内筒部側から順に、前記スパウトの前記外筒部の外径とほぼ同じ外径を有する円筒部と、前記円筒部よりも外径が大きい円盤部とを有し、
前記第2の状態において、前記キャップが前記第2の位置まで締め込まれたときに、前記円筒部の外周面と前記外筒部の外周面とが連続する周面を構成し、
前記スパウトの前記外筒部の軸方向の長さと、前記キャップの前記円筒部の軸方向の長さとの合計が15mm以上である、請求項1または2に記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記封止フィルムがバリア性を有するバリアフィルムであり、前記フランジ部の両面のうち、前記外筒部の前記他方端とは反対側の面の全体と、前記外筒部の前記一方端の前記開口部とを覆うように設けられる、請求項1~4のいずれかに記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品、食品等の包装材として、樹脂を主体とした材料からなるチューブ容器が広く用いられている。例えば、特許文献1には、内容物を注出する注出ユニットと、注出ユニットに溶着され、内容物を収容する胴部と、ネジにより注出ユニットの注出口部に螺合するキャップ(スクリューキャップ)とを備えるチューブ容器が記載されている。特許文献1に記載のチューブ容器使用する場合、一方の手で胴部を把持し、他方の手でキャップを回転させることによりキャップを開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-199280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境負荷の軽減や資源保護の観点から、包装容器に使用する樹脂量の低減が要望されており、チューブ容器においても、胴部を薄手のシートで形成することにより樹脂使用量を低減することが検討されている。
【0005】
しかしながら、チューブ容器の胴部を薄手のシートで形成した場合、胴部が柔らかいために安定して把持できず、開栓やキャップの開閉が難しいため、改善の余地があった。
【0006】
それ故に、本発明は、胴部を薄手のシートで形成した場合でも開栓やキャップの開閉がしやすいチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチューブ容器は、スパウトと、キャップと、チューブ状の胴部とを備え、スパウトは、内周面に内ネジを有する筒状の外筒部と、外筒部の一方端に接続され、外筒部の外方に延伸するフランジ部と、外筒部の他方端に接続され、外筒部の他方端から分離可能なスペーサーと、外筒部の一方端の開口部を封止する封止フィルムとを有し、キャップは、外周面に外ネジを有する筒状の内筒部と、内筒部の一方端を開閉可能に閉鎖する蓋部と、内筒部の他方端に設けられるフィルム切断部とを有する。胴部は、一方面にシーラントを有するシートからなり、一方端が閉塞され、他方端から所定範囲の部分がシーラントを介してフランジ部にシールされており、スパウト及びキャップは、内筒部の他方端が外筒部の一方端側から挿入された状態で、外ネジ及び内ネジを介して螺合している。キャップは、スペーサーが外筒部に接続されている第1の状態において、キャップの一部がスペーサーに当接する第1の位置までスパウトに対して締め込み可能であると共に、スペーサーが外筒部から分離された第2の状態において、キャップの一部が外筒部の他方端に当接する第2の位置までスパウトに対して締め込み可能であり、キャップが第1の位置にあるときにはフィルム切断部は封止フィルムに接触せず、前記第2の状態において、第1の位置から第2の位置までキャップを締め込む過程で、フィルム切断部が封止フィルムの少なくとも一部を切断する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、胴部を薄手のフィルムで形成した場合でも開栓やキャップの開閉がしやすいチューブ容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す斜視図
図2図1に示すII-IIラインに沿う断面図
図3図1に示すスパウト及びキャップの正面図
図4図3に示すスパウト及びキャップを螺合させた状態を示す正面図
図5】実施形態に係るチューブ容器の開栓方法を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示すII-IIラインに沿う断面図であり、図3は、図1に示すスパウト及びキャップの正面図であり、図4は、図3に示すスパウト及びキャップを螺合させた状態を示す正面図である。
【0011】
チューブ容器100は、チューブ状の胴部1と、胴部1に取り付けられたスパウト2と、スパウト2に螺合するキャップ3とを備える。
【0012】
胴部1は、内容物を収容するための部材であり、一方面にシーラントを有するシート(フィルム)により形成されている。胴部1は、略平行な一対の端縁を有するシートを筒状に丸め、シートの一対の端縁のそれぞれを含む帯状の部分の内面同士を合掌状に突き合わせて溶着させることにより形成される。胴部1には、シートの内面同士が合掌状に突き合わされて溶着した背貼りシール部7が形成される。胴部1に形成された背貼りシール部7は、胴部1の外面に沿うように折り曲げられて胴部1にシールされていることが好ましい。胴部1は、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて作製することができる。
【0013】
図1及び図2に示すように、胴部1の一方の端部5aはシールされて閉塞されている。一方、胴部1の他方の端部5bから所定範囲の部分は、折り畳まれて後述するスパウト2のフランジ部12の外面にシールされている。フランジ部12上には、図1に示すように、胴部1を構成するシートが折り畳まれてなるプリーツが複数形成される。フランジ部12に対する胴部1の溶着は、例えば、フランジ部12の周方向に間欠的に配置された複数の爪部を備えた加工装置を用い、複数の爪部で胴部1の端部5bから所定範囲の部分を折り畳んでフランジ部12に押し当てた状態で、溶着装置を用いて、胴部1の端部5bから所定範囲の部分を加熱及び加圧することによって行うことができる。チューブ容器100の製造時に胴部1をスパウト2に溶着する方法としては、超音波溶着、高周波溶着、ヒートシール溶着、ホットエア溶着等を利用することができる。
【0014】
胴部1を構成するシートとしては、複数の樹脂フィルムを積層したシートや、樹脂フィルムと紙を積層したシート等を用いることができる。胴部1を構成するシートの厚みは、30~200μmであることが好ましい。胴部1を構成するシートの厚みを30~200μmとすることにより、胴部1に用いる樹脂や紙等の材料の使用量を低減することができる。
【0015】
胴部1を構成するシートの基材として使用可能な樹脂フィルムは特に限定されないが、耐熱性及び物理的強度の観点から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムを用いることが好ましい。
【0016】
また、胴部1にバリア性を付与するために、胴部1を構成するシートにはバリア層を設けることが好ましい。バリア層は、例えば、シリカやアルミナ等の無機化合物の蒸着膜、アルミニウム等の金属蒸着膜、アルミニウム等の金属箔、板状鉱物及び/またはバリア性樹脂を含むバリアコート剤の塗膜の1種以上により構成することができる。バリアコート剤に用いるバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を使用することができ、バリアコート剤にはバリア性樹脂以外のバインダー樹脂が適宜配合される。バリア層は、予め樹脂フィルム上に積層されてバリアフィルムを構成していても良いし、単層膜として設けられても良い。
【0017】
シーラントの材質も特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂であることが好ましい。シーラントには、軟化温度が基材となる樹脂フィルムの軟化温度より20℃以上低い樹脂を用いることが好ましい。シーラントの軟化温度が、基材となる樹脂フィルム層の軟化温度より20℃以上低くない場合、シール時に基材となる樹脂フィルムが軟化してピンホールが発生する可能性があるため好ましくない。シーラントの軟化温度は、基材となる樹脂フィルムの軟化温度より40℃以上低いことが好ましい。
【0018】
シーラントに用いる熱可塑性樹脂は、後述するスパウト2の材料を構成する熱可塑性樹脂に対して接着性を有するものであれば良いが、スパウト2に用いる熱可塑性樹脂と同じ材質であることが好ましい。シーラントに用いる熱可塑性樹脂とスパウト2に用いる熱可塑性樹脂層とを同じにすることにより、胴部1とスパウト2とのシール強度を向上させることができる。
【0019】
胴部1に用いる紙の種類は特に限定されないが、強度、屈曲耐性、印刷適性を備える点で、片艶クラフト紙または両艶クラフト紙を用いることが好ましい。また、胴部1を構成する紙として、必要に応じて、耐水紙または耐油紙を使用しても良い。また、胴部1を構成する紙は、パルプ繊維の他に樹脂繊維を含む混抄紙であっても良い。
【0020】
胴部1を構成するシートに紙を用いる場合、紙の坪量は、30~200g/mであることが好ましく、50~120g/mであることがより好ましい。胴部1を構成するシートに用いる紙の坪量が30~200g/mであれば、胴部1にコシを付与することができ、製造時や使用時におけるチューブ容器の取り扱いが容易となる。ただし、使用する紙の坪量が200g/mを超えると、紙のコシや断熱性により、製筒性(製袋性)、成型性及び溶着性が悪化する上、製造コストも増加するため好ましくない。
【0021】
胴部1を構成するシートに紙を用いる場合、紙への内容物や汚れの付着から保護するための紙保護層を設けても良い。紙保護層37の材料や形成方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の押出コートや、耐水剤あるいは耐油剤等のコート剤のコートにより紙保護層を積層することができる。紙保護層の厚みは、0.2~50μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましい。紙保護層の厚みが0.2μm未満である場合、紙保護層にピンホールが発生する可能性があり、紙の保護が不十分となる場合がある。また、紙保護層の厚みが50μmを超える場合、樹脂使用量や製造コストの面で好ましくない。
【0022】
また、胴部1を構成するシートには、各種表示を行うために印刷により施されるインキ層や、耐摩性等を付与するためオーバーコートニス層を積層しても良い。また、オーバーコートニス層が紙保護層を兼ねていても良い。
【0023】
図2及び図3に示すように、スパウト2は、外筒部11と、フランジ部12と、スペーサー13と、封止フィルム14とを備える。
【0024】
外筒部11は、筒形状を有する部材であり、内周面に内ネジを有する。本実施形態において、外筒部11の横断面の外形は円形であるが、多角形であっても良い。
【0025】
フランジ部12は、外筒部11の一方の端部16a(図2及び図3における下端)に接続され、外筒部11の外方に延伸する平板状の部分である。本実施形態では、フランジ部12は、外筒部11の軸方向と直交する方向(図2及び図3における左右方向)に延伸するように形成されている。本実施形態では、フランジ部12は、円環状に形成されているが、胴部1を接合することができる限り、フランジ部12の外形は限定されず、楕円形、長円形、トラック形、多角形等であっても良い。
【0026】
スペーサー13は、外筒部11の他方の端部16bに薄肉部15を介して接続される。スペーサー13は、未開栓の状態において後述するキャップ3の締め込み位置を規制する。開栓時には、スペーサー13の一部に設けられた切欠等を切掛けとしてスペーサー13の一部を指で把持し、薄肉部15を破断させることによってスペーサー13を外筒部11の端部16bから手で分離させることができる。本実施形態では、スペーサー13は、相対的に厚みが薄い薄肉部15を介して、外筒部の11の端部16bの略全周に接続されているが、未開栓の状態において後述するキャップ3の位置を規制できる限り、スペーサー13の形状や外筒部11との接続態様は特に限定されない。
【0027】
封止フィルム14は、外筒部11の端部16aの開口部を封止し、未開栓の状態でチューブ容器100の内部を密封状態に維持する。封止フィルム14には、バリア性を有するバリアフィルムを用いることが好ましい。封止フィルム14としてバリアフィルムを用いる場合、本実施形態のように、フランジ部12の全体と外筒部11の端部16aの開口部とを覆うように、フランジ部12の裏面(外筒部11の端部16bとは反対側の面)にシールされることが好ましい。本実施形態のように、フランジ部12の裏面にバリアフィルムをシールすると、フランジ部12の裏面全体でバリア性を担保することができる。封止フィルム14は、フランジ部12の裏面にシーラントや接着剤を介してシールされていても良いし、インサート成型によりフランジ部12と一体化されていても良い。
【0028】
スパウト2の外筒部11、フランジ部12、スペーサー13及び薄肉部15は、熱可塑性樹脂により一体的に成型される。材料となる熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド及びシクロポリオレフィンのいずれか1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。スパウト2は、熱可塑性樹脂と樹脂以外のフィラーを含む材料により成型しても良い、フィラーとしては、タルク、カオリン、紙粉及びセルロース繊維のいずれか1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。スパウト2の材料として、熱可塑性樹脂と、樹脂以外のフィラーの混合物を用いることにより、成型性や胴部1のシートとの熱溶着性を維持しつつ、樹脂の使用量を低減することが可能となる。スパウト2の成型方法は特に限定されないが、射出成形、真空成形・熱板圧空成型等のサーモフォーミング、コンプレッション成型等の既存の成型方法を利用可能である。
【0029】
キャップ3は、内筒部21と、蓋部22と、フィルム切断部23とを備える。
【0030】
内筒部21は、筒形状を有する部材であり、外周面に外ネジを有する。
【0031】
蓋部22は、内筒部21の一方の端部30aに設けられ、内筒部21の端部30aを開閉可能に閉鎖する。より詳細には、蓋部22は、注出口25を有し、かつ、内筒部21の端部30aを覆う隔壁24と、隔壁24の外周縁から外方に延びるストッパー26と、ストッパー26にヒンジ27を介して接続される上蓋28とを有する。上蓋28は、ヒンジ27を回転軸として開閉可能であり、図3において2点鎖線で示す閉鎖位置にあるときには、上蓋28の内側に設けられた凸部29が注出口25の貫通孔に嵌合して、注出口25を閉鎖する。尚、注出口25の形状や大きさは、チューブ容器100に収容する内容物に応じて適宜変更可能である。
【0032】
フィルム切断部23は、開栓時にスパウト2に設けられた封止フィルム14を切断するために設けられており、本実施形態では、内筒部21の他方の端部30bに設けられる鋸状構造体からなる。フィルム切断部23となる鋸状構造体は、内筒部21の端部30bの全周に設けられていても良いし、内筒部21の端部30bの一部に設けられていても良い。また、鋸状構造体を構成する凸部の形状や数は特に限定されない。
【0033】
ここで、キャップ3のストッパー26の下端からフィルム切断部23の先端までの距離d1は、スパウト2のスペーサー13の上端から封止フィルム14までの距離d2よりも短く、かつ、スパウト2の外筒部11の上端(端部16b)から封止フィルムまでの距離d3よりも長く設定されている。尚、ここでの距離d1~d3は、キャップ3またはスパウト2の軸方向と平行な方向における最短距離である。
【0034】
キャップ3は、熱可塑性樹脂により一体的に成型される。材料となる熱可塑性樹脂は特に限定されないが、スパウト2で説明した樹脂材料を用いて成型することができる。キャップ3の成型方法も特に限定されず、スパウト2で説明した既存の成型方法を利用可能である。
【0035】
図4に示すように、スパウト2及びキャップ3は、螺合によりキャップ構造体を構成する。より詳細には、キャップ3の内筒部21の端部30b側の部分(すなわち、フィルム切断部23)を、スパウト2の外筒部11の端部16b側から外筒部11の内部に挿入し、スパウト2及びキャップ3を相対回転させて、内筒部21の外ネジと外筒部11の内ネジとを螺合させる。キャップ3に設けられたストッパー26の下端が、スパウト2のスペーサー13の上端に当接する位置までキャップ3を締め込むと、図4に示すように、キャップ3の締め込み方向への移動が規制された状態となる。尚、「締め込み」とは、キャップ3に設けられたフィルム切断部23がスパウト2の封止フィルム14に近づく方向に螺合を進行させることをいう。上述したように、キャップ3のストッパー26の下端からフィルム切断部23の先端までの距離d1は、スパウト2のスペーサー13の上端から封止フィルム14までの距離d2よりも短く設定されているため、図4の状態で、キャップ3に設けられたフィルム切断部23は、スパウト2の封止フィルム14に接触せず、スパウト2の外筒部11が封止フィルム14によって封止された状態が維持されている。
【0036】
図5は、実施形態に係るチューブ容器の開栓方法を示す断面図である。
【0037】
図5(a)は、スパウト2のスペーサー13が外筒部11から分離されていない状態(以下、「第1の状態」という)を示している。第1の状態においては、キャップ3は、ストッパー26の下端がスペーサー13に当接する位置(第1の位置)までスパウト2に対して締め込み可能である。キャップ3が第1の位置まで締め込まれ、ストッパー26の下端がスペーサー13に当接した状態では、フィルム切断部23が封止フィルム14に接触せず、封止フィルム14によりチューブ容器100の密閉状態が維持されている。すなわち、スペーサー13は、チューブ容器100が未開封であることを保証するタンパーリングとして機能する。
【0038】
図5(b)は、スパウト2の外筒部11からスペーサー13を分離した状態(以下、「第2の状態」という)を示している。スペーサー13が取り除かれることにより、スパウト2に対するキャップ3の螺合位置の規制が解除されるため、スパウト2に対してキャップ3を更に回転させてキャップ3を締め込むことが可能となる。
【0039】
図5(c)は、キャップ3のストッパー26の下端が外筒部11の端部16bに当接する位置(第2の位置)までキャップ3の螺合を進行させた状態を示している。上述したように、キャップ3のストッパー26の下端からフィルム切断部23の先端までの距離d1は、スパウト2の外筒部11の上端(端部16b)から封止フィルム14までの距離d3よりも長く設定されている。したがって、キャップ3を図5(b)に示す第1の位置から図5(c)に示す第2の位置まで締め込む過程において、キャップ3に設けられたフィルム切断部23が封止フィルム14に接触し、フィルム切断部23を構成する鋸状構造体により、封止フィルム14の少なくとも一部が切断される。この結果、キャップ3を第2の位置まで締め込むと、図5(c)に示すように、スパウト2の外筒部11を封止していた封止フィルム14に開口部が形成され、チューブ容器100が開封される。チューブ容器100の開封後は、ヒンジ27を介して上蓋28を開いた状態で注出口25から内容物を注出することができ、ヒンジ27を介して上蓋28を閉じることにより容器の内部を密封することができる。
【0040】
胴部1が樹脂フィルムを含む薄手のシートにより形成されている場合、胴部1が一般的なラミネートチューブと比べて柔らかいために、胴部1の把持によりスパウト2を安定して保持することが難しい。例えば、薄手のシートで形成した胴部1に、50N/cm以上の開栓トルクが必要なキャップ構造を適用した場合、胴部1が柔らかすぎて安定して保持できないため、必要な開栓トルクを加えることができず、開栓が困難である。また、未開栓の状態で容器内部を密閉可能なスパウトの構成として、スパウトの筒部の内部にプルリングとプルリングにより除去可能な隔壁を設けたものがあるが、胴部1が柔らかい場合には、プルリングの引き抜きが困難であるため、薄手のシートで構成した胴部1との組み合わせは難しい。また、一般的なスパウトの筒部は、外周面に外ネジを有するため、把持する部分として利用するのには適していない。
【0041】
これに対して、本実施形態に係るチューブ容器100のスパウト2は、内周面に内ネジを有する外筒部11を備える。開栓時には、図5(b)に矢印で示すように、スパウト2の外筒部11の外周面を一方の手で安定して保持することができるため、他方の手でキャップ3を持って締め込むことにより、チューブ容器100の開栓を容易に行うことができる。また、上蓋28の開閉操作も、一方の手でスパウト2の外筒部11を把持した状態で行うことができるので、柔らかいシートにより胴部1が構成されている場合でも上蓋28の開閉がしやすい。
【0042】
図4を参照して、スパウト2の外筒部11の軸方向における長さd4は10mm以上であることが好ましい。スパウト2の外筒部11の長さd4が10mm以上あれば、開栓時及び上蓋28の開閉時に外筒部11の外周面を指で摘まむことができるため、上述した開栓及び上蓋28の開閉しやすさが十分に得られる。
【0043】
また、上蓋28を閉じた状態の蓋部22は、図4に示すように、内筒部21側から順に、スパウト2の外筒部11とほぼ同じ外径を有する円筒部31と、円筒部31よりも外径が大きい円盤部32とを有することが好ましい。この場合、スペーサー13が分離された第2の状態で、キャップ3を図5(c)に示す第2の位置まで締め込むと、キャップ3の円筒部31の外周面と、スパウト2の外筒部11の外周面とが連続する周面を形成する。この場合、図4に示すキャップ3の円筒部31の軸方向の長さd5と、スパウト2の外筒部11の軸方向の長さd4との合計が15mm以上であれば、開栓後に図5(c)の状態となったときに、一方の手の指でスパウト2の外筒部11を把持しつつ、他方の手の指を円盤部32の下面に引っかけて上蓋28を開くことができるため、上蓋28の開閉操作がしやすい。また、スパウト2の外筒部11よりも外径が大きい円盤部32をキャップ3に設けることによって、開栓時にキャップ3を回転させる際のトルクを大きくすることができるので、小さな力で開栓が可能なチューブ容器100とすることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るチューブ容器100は、スパウト2に内ネジを有する外筒部11を設け、キャップ3に外ネジを有する内筒部21を設け、スパウト2に外筒部11の内部にキャップ3の内筒部21を螺合させる構成を有し、外筒部11に設けられたスペーサー13を取り除いた状態でキャップ3の締め込みを行うことによって、スパウト2の外筒部11を封止する封止フィルム14を切断することができる。開栓のためにキャップ3を締め込む際には、スパウト2の外筒部11の外周面を指で摘まんで安定して保持することができるので、胴部1が薄手のシートにより形成された柔らかいチューブである場合でも、キャップ3の締め込みによる開栓操作がしやすい。また、キャップ3の上蓋28を開閉する際にも、スパウト2の外筒部11を摘まんで安定して保持できるので、胴部1が柔らかい場合でも、上蓋28の開閉がしやすい。
【0045】
筒部の内部にプルリングとプルリングにより除去可能な隔壁を設けたスパウトでは、プルリングは、指を掛けることができる程度の大きさを有していることが必要であるため、筒部の内径を小さくするには限界がある。これに対して、本実施形態に係るチューブ容器100が備えるキャップ構造体は、プルリングを用いず、スパウト2に対するキャップ3の締め込みによって開栓が可能であるので、スパウト2の外筒部11の内径にかかわらず、適用が可能である。したがって、本実施形態に係るキャップ構造体を用いれば、内容物に適した内径を有するスパウト2を備え、かつ、開封性に優れたチューブ容器を構成できる。
【0046】
また、スパウトの筒部を封止する手法としては、筒部の外方端にフィルムをシールする方法もある。しかしながら、筒部の外方端にフィルムをシールする構成では、シールするフィルムとしてバリアフィルムを用いたとしても、スパウトの他の部分(筒部及びフランジ部)にバリア性がないため、バリア性を要するチューブ容器に適用することはできない。また、バリア性を有する材料を用いてスパウト全体を形成することも考えられるが、スパウトはネジ等の細部を有するため、製造上の難易度が高い。これに対して、これに対して、本実施形態のように、フランジ部12の裏面全体に封止フィルム14を設けた構成であれば、封止フィルム14にバリア性フィルムを用いることにより、チューブ容器100の肩部全体のバリア性を確保することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るチューブ容器100においては、フランジ部12が外筒部11の中心軸に対して直交する平板形状を有しており、胴部1がフランジ部12の外面に溶着されているため、チューブ容器100の内容物が少なくなった場合に、胴部1をフランジ部12の外周縁に沿って折り畳むことにより、内容物を容易に絞り出すことができる。また、フランジ部12が平板形状であり、フランジ部12によって内容物が残存する空間が形成されないため、胴部1をフランジ部12の外周縁に沿って折り曲げ、フランジ部4と胴部1とをほぼフラットな状態とすることにより、内容物を残らず絞り出すことができる。
【0048】
尚、上記の実施形態においては、キャップ3に設けられた蓋部22が、注出口25を有する隔壁24と、ヒンジ27を介して開閉可能な上蓋28とを備えた構成を説明したが、キャップ3に、内筒部21と、フィルム切断部23とスパウト2に当接する部分(ストッパー26に相当する部分)とが設けられていれば、キャップ3の構成は上記の実施形態で示したものに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、ヒンジ27を介して開閉する上蓋28に代えて、嵌合や螺合により係合可能な別体の蓋を設けても良い。また、ヒンジ27を介して開閉する上蓋28を省略し、注出口25のない隔壁で内筒部21の外方端部を閉鎖しても良い。この場合、キャップ3を回転させてスパウト2から取り外した状態でスパウト2を通じて内容物を注出し、再度スパウト2に螺合させることによりチューブ容器100を再封することができる。また、隔壁24及び注出口25の代わりに、内筒部21と連通したリング状の注ぎ口を設けても良い。
【0049】
また、上記の実施形態において、封止フィルム14には、フィルム切断部23による切断を容易とするために、ハーフカットや微細な傷により形成された強度弱化線を設けても良い。
【0050】
また、上記の実施形態において、スパウト2の外筒部11の横断面の外形を多角形にしても良い。スパウト2の外筒部11の横断面の外形が多角形の場合、外筒部11の外面に角部が形成されるため、開栓時や上蓋28の開閉時に指がかりが良くなり、使い勝手を更に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るチューブ容器は、医薬品化粧品、食品等の包装材として利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 胴部
2 スパウト
3 キャップ
11 外筒部
12 フランジ部
13 スペーサー
14 封止フィルム
16 端部
21 内筒部
22 蓋部
23 フィルム切断部
26 ストッパー26
30 端部
31 円筒部
32 円盤部
図1
図2
図3
図4
図5