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特許7439671スイッチング電源装置および電力供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置および電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020121514
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018418
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広川 正彦
(72)【発明者】
【氏名】伍 暁峰
(72)【発明者】
【氏名】石橋 尚之
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06349044(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0198536(US,A1)
【文献】特開2016-046973(JP,A)
【文献】特開2009-273324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧が入力される入力端子対と、
出力電圧が出力される出力端子対と、
1次側巻線および2次側巻線を有するトランスと、
前記入力端子対と前記1次側巻線との間に配置されており、第1ないし第4のスイッチング素子と、第1ないし第3のコンデンサと、第1および第2の整流素子と、共振インダクタと、共振コンデンサと、を含んで構成されたインバータ回路と、
前記出力端子対と前記2次側巻線との間に配置されており、複数の整流素子を有する整流回路と、第4のコンデンサを有する平滑回路と、を含んで構成された整流平滑回路と、
前記インバータ回路における前記第1ないし第4のスイッチング素子の動作をそれぞれ制御するスイッチング駆動を行う駆動部と
を備え、
前記第1ないし第4のスイッチング素子は、前記入力端子対間において、この順序で互いに直列接続されており、
前記第1および第2のコンデンサは、前記入力端子対間において、互いに直列接続されており、
前記第1の整流素子は、前記第1および第2のコンデンサ同士の接続点である第1の接続点と、前記第1および第2のスイッチング素子同士の接続点である第2の接続点と、の間に配置されており、
前記第2の整流素子は、前記第1の接続点と、前記第3および第4のスイッチング素子同士の接続点である第3の接続点と、の間に配置されており、
前記第3のコンデンサは、前記第2の接続点と前記第3の接続点との間に配置されており、
前記共振コンデンサ、前記共振インダクタおよび前記1次側巻線は、前記第2および第3のスイッチング素子同士の接続点である第4の接続点と、前記第1の接続点との間において、互いに順不同で直列接続されており、
前記スイッチング駆動の際のスイッチング周期内に、
前記第1および第2のスイッチング素子が同時にオン状態となる期間である、第1のオン期間と、
前記第3および第4のスイッチング素子が同時にオン状態となる期間である、第2のオン期間と、
前記第1および第4のスイッチング素子が同時にオフ状態となる期間である、第1のデッドタイムと、
前記第2および第3のスイッチング素子が同時にオフ状態となる期間である、第2のデッドタイムとが、
それぞれ含まれており、
前記駆動部は、
前記第1のオン期間と前記第2のオン期間とが、前記スイッチング周期内において互いに重ならないようにすると共に、
前記スイッチング周期内における、前記第1のオン期間の時比率と前記第2のオン期間の時比率とを、それぞれ個別に調整することにより、
前記出力電圧の値を制御する
スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記共振インダクタが、前記トランスにおける漏れインダクタンスにより構成されている
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第1ないし第4のスイッチング素子がそれぞれ、MOS-FETにより構成されている
請求項1または請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記整流回路が、センタタップ型の整流回路である
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記整流回路が、ブリッジ型の整流回路である
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記複数の整流素子がそれぞれ、MOS-FETにより構成されており、前記整流回路が、同期整流回路となっている
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記第1ないし第4のスイッチング素子における各スイッチング周波数が、互いに同一となるように、前記スイッチング駆動を行う
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記第1ないし第4のスイッチング素子におけるオン状態の期間の開始タイミングまたは停止タイミングをそれぞれ調整することにより、前記出力電圧の値を制御する
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記第1ないし第4のスイッチング素子におけるスイッチング周波数およびオン状態の期間をそれぞれ調整することにより、前記出力電圧の値を制御する
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置と、
前記入力端子対に対して前記入力電圧を供給する電源と
を備えた電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を用いて電圧変換を行うスイッチング電源装置、および、そのようなスイッチング電源装置を備えた電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置の一例として種々のDC-DCコンバータが提案され、実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。この種のDC-DCコンバータは一般に、スイッチング素子を含むインバータ回路と、電力変換トランス(変圧器)と、整流平滑回路とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-205190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなDC-DCコンバータ等のスイッチング電源装置では一般に、電力損失を低減することが求められている。電力損失を低減することが可能なスイッチング電源装置、および、そのようなスイッチング電源装置を備えた電力供給システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスイッチング電源装置は、入力電圧が入力される入力端子対と、出力電圧が出力される出力端子対と、1次側巻線および2次側巻線を有するトランスと、入力端子対と1次側巻線との間に配置されており、第1ないし第4のスイッチング素子と、第1ないし第3のコンデンサと、第1および第2の整流素子と、共振インダクタと、共振コンデンサと、を含んで構成されたインバータ回路と、出力端子対と2次側巻線との間に配置されており、複数の整流素子を有する整流回路と、第4のコンデンサを有する平滑回路と、を含んで構成された整流平滑回路と、インバータ回路における第1ないし第4のスイッチング素子の動作をそれぞれ制御するスイッチング駆動を行う駆動部と、を備えたものである。第1ないし第4のスイッチング素子は、入力端子対間において、この順序で互いに直列接続されており、第1および第2のコンデンサは、入力端子対間において、互いに直列接続されている。第1の整流素子は、第1および第2のコンデンサ同士の接続点である第1の接続点と、第1および第2のスイッチング素子同士の接続点である第2の接続点と、の間に配置されており、第2の整流素子は、第1の接続点と、第3および第4のスイッチング素子同士の接続点である第3の接続点と、の間に配置されており、第3のコンデンサは、第2の接続点と第3の接続点との間に配置されている。共振コンデンサ、共振インダクタおよび1次側巻線は、第2および第3のスイッチング素子同士の接続点である第4の接続点と、第1の接続点との間において、互いに順不同で直列接続されている。また、上記スイッチング駆動の際のスイッチング周期内に、第1および第2のスイッチング素子が同時にオン状態となる期間である第1のオン期間と、第3および第4のスイッチング素子が同時にオン状態となる期間である第2のオン期間と、第1および第4のスイッチング素子が同時にオフ状態となる期間である第1のデッドタイムと、第2および第3のスイッチング素子が同時にオフ状態となる期間である第2のデッドタイムとが、それぞれ含まれている。上記駆動部は、第1のオン期間と第2のオン期間とが、スイッチング周期内において互いに重ならないようにすると共に、スイッチング周期内における第1のオン期間の時比率と第2のオン期間の時比率とをそれぞれ個別に調整することにより、出力電圧の値を制御する。
【0006】
本発明の電力供給システムは、上記本発明のスイッチング電源装置と、上記入力端子対に対して上記入力電圧を供給する電源と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスイッチング電源装置および本発明の電力供給システムによれば、電力損失を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
図2図1に示したスイッチング電源装置の動作例を表すタイミング波形図である。
図3図2中に示したState Aにおける動作例を表す回路図である。
図4図2中に示したState Bにおける動作例を表す回路図である。
図5図2中に示したState Cにおける動作例を表す回路図である。
図6図2中に示したState Dにおける動作例を表す回路図である。
図7図2中に示したState Eにおける動作例を表す回路図である。
図8図2中に示したState Fにおける動作例を表す回路図である。
図9図2中に示したState Gにおける動作例を表す回路図である。
図10図2中に示したState Hにおける動作例を表す回路図である。
図11】比較例に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
図12】変形例1に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
図13】変形例2に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(センタタップ型の整流回路を用いた場合の例)
2.変形例
変形例1(ブリッジ型の整流回路を用いた場合の例)
変形例2,3(実施の形態,変形例1において同期整流回路とした場合の例)
3.その他の変形例
【0010】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1)の概略構成例を、回路図で表したものである。このスイッチング電源装置1は、直流入力電源10(例えばバッテリ)から供給される直流入力電圧Vinを直流出力電圧Voutに電圧変換し、負荷9に電力を供給するDC-DCコンバータとして機能するものである。なお、この負荷9としては、例えば電子機器やバッテリ等が挙げられる。また、このスイッチング電源装置1は、以下説明するように、いわゆる「(絶縁型ハーフブリッジ)LLC共振型」のDC-DCコンバータとなっている。なお、スイッチング電源装置1における電圧変換の態様としては、アップコンバート(昇圧)およびダウンコンバート(降圧)のいずれであってもよい。
【0011】
ここで、直流入力電圧Vinは、本発明における「入力電圧」の一具体例に対応し、直流出力電圧Voutは、本発明における「出力電圧」の一具体例に対応している。また、直流入力電源10は、本発明における「電源」の一具体例に対応し、この直流入力電源10とスイッチング電源装置1とを備えたシステムが、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
【0012】
スイッチング電源装置1は、2つの入力端子T1,T2と、2つの出力端子T3,T4と、入力平滑コンデンサCinと、インバータ回路2と、トランス3と、整流平滑回路4と、駆動回路5とを備えている。入力端子T1,T2間には直流入力電圧Vinが入力され、出力端子T3,T4の間からは直流出力電圧Voutが出力されるようになっている。
【0013】
なお、入力端子T1,T2は、本発明における「入力端子対」の一具体例に対応し、出力端子T3,T4は、本発明における「出力端子対」の一具体例に対応している。
【0014】
入力平滑コンデンサCinは、入力端子T1に接続された1次側高圧ラインL1Hと、入力端子T2に接続された1次側低圧ラインL1Lとの間に配置されている。具体的には、後述するインバータ回路2と入力端子T1,T2との間の位置において、入力平滑コンデンサCinの第1端(一端)が1次側高圧ラインL1Hに接続されると共に、入力平滑コンデンサCinの第2端(他端)が1次側低圧ラインL1Lに接続されている。この入力平滑コンデンサCinは、入力端子T1,T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化するためのコンデンサである。
【0015】
(インバータ回路2)
インバータ回路2は、入力端子T1,T2と、後述するトランス3における1次側巻線31との間に、配置されている。このインバータ回路2は、4つのスイッチング素子S1~S4と、コンデンサC1,C2およびコンデンサCf(フライングキャパシタ)と、整流ダイオードD1,D2と、共振インダクタLrと、共振コンデンサCrとを有しており、いわゆる「ハーフブリッジ型」および「NPC(Neutral-Point-Clamped)方式」のインバータ回路となっている。なお、共振インダクタLrは、後述するトランス3における漏れインダクタンスにより構成されていてもよいし、あるいは、そのような漏れインダクタンスとは別個に設けられているようにしてもよい。
【0016】
ここで、スイッチング素子S1は、本発明における「第1のスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子S2は、本発明における「第2のスイッチング素子」の一具体例に対応している。同様に、スイッチング素子S3は、本発明における「第3のスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子S4は、本発明における「第4のスイッチング素子」の一具体例に対応している。また、コンデンサC1は、本発明における「第1のコンデンサ」の一具体例に対応し、コンデンサC2は、本発明における「第2のコンデンサ」の一具体例に対応し、コンデンサCfは、本発明における「第3のコンデンサ」の一具体例に対応している。また、整流ダイオードD1は、本発明における「第1の整流素子」の一具体例に対応し、整流ダイオードD2は、本発明における「第2の整流素子」の一具体例に対応している。
【0017】
なお、スイッチング素子S1~S4としては、例えば電界効果型トランジスタ(MOS-FET;Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの、スイッチ素子が用いられる。図1に示した例では、スイッチング素子S1~S4がそれぞれ、MOS―FETにより構成されている。このようにして、スイッチング素子S1~S4としてMOS―FETを用いた場合には、各スイッチング素子S1~S4に並列接続されるコンデンサおよびダイオード(図1中に図示せず)をそれぞれ、このMOS―FETの寄生容量または寄生ダイオードから構成することが可能である。
【0018】
このインバータ回路2では、入力端子T1,T2の間(1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間)において、コンデンサC1,C2が互いに直列接続されている。具体的には、1次側高圧ラインL1Hと接続点P1との間に、コンデンサC1が配置され、接続点P1と1次側低圧ラインL1Lとの間に、コンデンサC2が配置されている。また、このような入力端子T1,T2の間には、4つのスイッチング素子S1~S4が、この順序で互いに直列接続されている。具体的には、1次側高圧ラインL1Hと接続点P2との間に、スイッチング素子S1が配置され、接続点P2と接続点P4との間にスイッチング素子S2が配置され、接続点P4と接続点P3との間にスイッチング素子S3が配置され、接続点P3と1次側低圧ラインL1Lとの間に、スイッチング素子S4が配置されている。
【0019】
このインバータ回路2ではまた、コンデンサC1,C2同士の接続点(接続点P1)と、スイッチング素子S1,S2同士の接続点(接続点P2)との間に、整流ダイオードD1が配置されている。具体的には、この整流ダイオードD1では、アノードが接続点P1に接続され、カソードが接続点P2に接続されている。同様に、接続点P1と、スイッチング素子S3,S4同士の接続点(接続点P3)との間には、整流ダイオードD2が配置されている。具体的には、この整流ダイオードD2では、上記した整流ダイオードD1とは逆に、アノードが接続点P3に接続され、カソードが接続点P1に接続されている。また、接続点P2(整流ダイオードD1のカソード)と接続点P3(整流ダイオードD2のアノード)との間に、コンデンサCfが配置されている。具体的には、コンデンサCfの第1端が接続点P2に接続され、コンデンサCfの第2端が接続点P3に接続されている。
【0020】
更に、共振コンデンサCrと、共振インダクタLrと、後述するトランス3における1次側巻線31とが、スイッチング素子S2,S3同士の接続点(接続点P4)と、上記した接続点P1との間において、互いに直列接続されている。具体的には、図1の例では、共振コンデンサCrの第1端が接続点P4に接続され、共振コンデンサCrの第2端が、共振インダクタLrの第1端(一端)に接続され、共振インダクタLrの第2端(他端)が、上記した1次側巻線31の一端に接続され、この1次側巻線31の他端が、接続点P1に接続されている。
【0021】
なお、上記した接続点P1は、本発明における「第1の接続点」の一具体例に対応し、上記した接続点P2は、本発明における「第2の接続点」の一具体例に対応している。同様に、上記した接続点P3は、本発明における「第3の接続点」の一具体例に対応し、上記した接続点P4は、本発明における「第4の接続点」の一具体例に対応している。
【0022】
このような構成によりインバータ回路2では、後述する駆動回路5から供給される駆動信号SG1~SG4に従って、各スイッチング素子S1~S4がスイッチング動作(オン・オフ動作)を行うことで、以下のようになる。すなわち、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを交流電圧(電圧Vp)に変換して、トランス3(1次側巻線31)へと出力するようになっている。
【0023】
(トランス3)
トランス3は、1つの1次側巻線31と、2つの2次側巻線321,322とを有している。
【0024】
1次側巻線31では、第1端(一端)が、前述した共振インダクタLrにおける第2端(他端)に接続され、第2端(他端)が、前述した接続点P1に接続されている。
【0025】
2次側巻線321では、第1端が、後述する接続ラインL21を介して、後述する整流ダイオード41のカソードに接続され、第2端が、後述する整流平滑回路4内のセンタタップP6に接続されている。2次側巻線322では、第1端が、後述する接続ラインL22を介して、後述する整流ダイオード42のカソードに接続され、第2端が、上記したセンタタップP6に接続されている。つまり、2次側巻線321,322における第2端同士は、このセンタタップP6に対して互いに共通接続されている。
【0026】
このトランス3は、インバータ回路2によって生成された電圧(トランス3の1次側巻線31に入力される、矩形パルス波化した電圧Vp:図1参照)を電圧変換し、2次側巻線321,322の各端部から交流電圧(電圧Vs)を出力するようになっている。具体的には、2次側巻線321からは電圧Vs1が出力され、2次側巻線322からは電圧Vs2が出力されるようになっている(図1参照)。なお、この場合における、直流入力電圧Vinに対する直流出力電圧Voutの電圧変換の度合いは、1次側巻線31と2次側巻線321,322との巻数比、および、後述するスイッチング周期Tswに対するオン期間Ton1,Ton2の時比率(図2参照)によって、定まる。
【0027】
(整流平滑回路4)
整流平滑回路4は、2個の整流ダイオード41,42と、1個の出力平滑コンデンサCoutとを有している。具体的には、この整流平滑回路4は、整流ダイオード41,42を有する整流回路と、出力平滑コンデンサCoutを有する平滑回路と、を含んでいる。
【0028】
なお、このような2個の整流ダイオード41,42は、本発明における「複数の整流素子」の一具体例に対応している。また、出力平滑コンデンサCoutは、本発明における「第4のコンデンサ」の一具体例に対応している。
【0029】
上記した整流回路は、いわゆる「センタタップ型」の整流回路となっている。すなわち、整流ダイオード41,42のアノードがそれぞれ、接地ラインLGに接続され、整流ダイオード41のカソードが、接続ラインL21を介して、2次側巻線321における前述した第1端に接続され、整流ダイオード42のカソードが、接続ラインL22を介して、2次側巻線322における前述した第1端に接続されている。また、前述したように、2次側巻線321,322における第2端同士は、センタタップP6に対して互いに共通接続されており、このセンタタップP6は、出力ラインLOを介して、前述した出力端子T3に接続されている。なお、上記した接地ラインLGは、前述した出力端子T4に接続されている。
【0030】
上記した平滑回路では、上記した出力ラインLOと接地ラインLGとの間(出力端子T3,T4の間)に、出力平滑コンデンサCoutが接続されている。すなわち、この出力平滑コンデンサCoutの第1端は、出力ラインLOに接続され、出力平滑コンデンサCoutの第2端は、接地ラインLGに接続されている。
【0031】
このような構成の整流平滑回路4では、整流ダイオード41,42を含んで構成される整流回路において、トランス3から出力される交流電圧(電圧Vs)を整流して出力するようになっている。また、出力平滑コンデンサCoutを含んで構成される平滑回路において、上記整流回路によって整流された電圧を平滑化することで、直流出力電圧Voutを生成するようになっている。なお、このようにして生成された直流出力電圧Voutにより、出力端子T3,T4から前述した負荷9に対して、電力が供給されるようになっている。
【0032】
(駆動回路5)
駆動回路5は、インバータ回路2におけるスイッチング素子S1~S4の動作をそれぞれ制御する、スイッチング駆動を行う回路である。具体的には、駆動回路5は、スイッチング素子S1~S4に対してそれぞれ、駆動信号SG1~SG4を個別に供給することで、各スイッチング素子S1~S4におけるスイッチング動作(オン・オフ動作)を制御するようになっている。
【0033】
ここで、この駆動回路5は、詳細は後述するが、各スイッチング素子S1~S4のスイッチング動作を制御する(スイッチング駆動を行う)際に、パルス幅制御を行うようになっている。すなわち、駆動信号SG1~SG4において、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御を行うようになっている。
【0034】
また、駆動回路5は、詳細は後述するが、スイッチング素子S1~S4における各スイッチング周波数fswが、互いに同一(略同一)かつ一定(略一定)となるようにして、上記したスイッチング駆動を行うようになっている。
【0035】
なお、このような駆動回路5は、本発明における「駆動部」の一具体例に対応している。
【0036】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
このスイッチング電源装置1では、インバータ回路2において、直流入力電源10から入力端子T1,T2を介して供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされることで、矩形パルス波化した電圧(電圧Vp)が生成される。この矩形パルス波化した電圧は、トランス3における1次側巻線31へと供給され、このトランス3において変圧されることで、2次側巻線321,322から、変圧された交流電圧(電圧Vs)が出力される。
【0037】
整流平滑回路4では、トランス3から出力された交流電圧(上記した変圧された交流電圧)が、整流回路内の整流ダイオード41,42によって整流された後、平滑回路内の出力平滑コンデンサCoutによって、平滑化される。これにより、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutが出力される。そして、この直流出力電圧Voutにより、負荷9に電力が供給される。
【0038】
(B.詳細動作)
続いて、図1に加えて図2図10を参照して、スイッチング電源装置1の詳細動作(前述したパルス幅制御の詳細)について、説明する。
【0039】
ここで、図2は、スイッチング電源装置1の動作例を、タイミング波形図で表したものである。具体的には、この図2において、(A)~(D)はそれぞれ、前述した駆動信号SG1~SG4における電圧波形を示し、(E),(F)はそれぞれ、前述した電圧Vp,Vsにおける電圧波形を示している。なお、この図2における横軸は、時間tを示している。
【0040】
ちなみに、各駆動信号SG1~SG4において「H(ハイ)」状態となる期間が、対応する各スイッチング素子S1~S4がオン状態となる期間に相当する。一方、各駆動信号SG1~SG4において「L(ロー)」状態となる期間が、対応する各スイッチング素子S1~S4がオフ状態となる期間に相当する。
【0041】
また、この図2の例では、詳細は後述するが、位相シフト方式によるパルス幅制御の際における位相差φ(駆動信号SG1,SG2の間での位相差φ1、および、駆動信号SG3,SG4の間での位相差φ2)を、示している(但し、φ1≒φ2)。更に、この図2の例では、駆動信号SG1,SG4が同時に「L」状態となる期間(スイッチング素子S1,S4が同時にオフ状態となる期間:第1のデッドタイム)を、デッドタイムTd14として示している。同様に、この図2の例では、駆動信号SG2,SG3が同時に「L」状態となる期間(スイッチング素子S2,S3が同時にオフ状態となる期間:第2のデッドタイム)を、デッドタイムTd23として示している。加えて、この図2の例では、駆動信号SG1,SG2が同時に「H」状態となる期間(スイッチング素子S1,S2が同時にオン状態となる期間:第1のオン期間)を、オン期間Ton1として示している。同様に、この図2の例では、駆動信号SG3,SG4が同時に「H」状態となる期間(スイッチング素子S3,S4が同時にオン状態となる期間:第2のオン期間)も、オン期間Ton2として示している。
【0042】
また、この図2においては、時間tに沿って、8個の状態(図2中に示した「State A」~「State H」の各状態)が設定されている。そして、これら8個の状態が順番に(「State A」~「State H」の順に)繰り返されることで、スイッチング周期Tsw(=1/fsw)およびスイッチング周波数fswがそれぞれ、規定されるようになっている(図2参照)。具体的には、例えば図2中に示したタイミングt1~t2の期間が、そのようなスイッチング周期Tswに対応している。また、このスイッチング周期Tsw内には、上記したオン期間Ton1,Ton2(第1のオン期間および第2のオン期間)と、上記したデッドタイムTd14,Td23(第1のデッドタイムおよび第2のデッドタイム)とが、それぞれ含まれるようになっている(図2参照)。
【0043】
ここで、図3図10はそれぞれ、図2中に示した上記8個の状態(上記した「State A」~「State H」の各状態)における動作例を、回路図で表したものである。以下では、これらの各状態における動作例を、図2を参照しつつ、詳細に説明する。なお、これらの図3図10においては、前述したようにしてMOS-FETにより構成されたスイッチング素子S1~S4について、スイッチング素子S2,S3の寄生ダイオードDp2,Dp3と、スイッチング素子S1,S4の寄生容量Cp1,Cp4とをそれぞれ、適宜図示している。
【0044】
(State A)
まず、図3に示した「State A」では、スイッチング素子S1,S2がそれぞれオン状態に設定されると共に、スイッチング素子S3,S4がそれぞれオフ状態に設定されている(図2(A)~図2(D)参照)。すると、トランス3の1次側には、直流入力電源10から1次側高圧ラインL1H、スイッチング素子S1、スイッチング素子S2、共振コンデンサCr、共振インダクタLr、1次側巻線31、コンデンサC2および1次側低圧ラインL1Lをそれぞれ、この順序で経由して直流入力電源10へと戻る、1次回路電流(電流Ip)が流れる。また、この際の電圧Vpの値は、Vp=(Vin/2)となる(図2(E)参照)。そして、トランス3の2次側には、2次側巻線322から出力ラインLO、出力平滑コンデンサCoutおよび負荷9、接地ラインLGおよび整流ダイオード42をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線322へと戻る、2次回路電流(電流Is)が流れる。
【0045】
(State B)
次いで、図4に示した「State B」では、スイッチング素子S1がオフ状態となる(図2(A)参照)。すると、トランス3の1次側には、共振インダクタLrから1次側巻線31、整流ダイオードD1、スイッチング素子S2および共振コンデンサCrをそれぞれ、この順序で経由して共振インダクタLrへと戻る、1次回路電流(電流Ip)が流れる。なお、この際に、スイッチング素子S4の寄生容量Cp4からは、電荷が放電される。また、この際の電圧Vpの値は、Vp=0となる(図2(E)参照)。そして、トランス3の2次側には、2次側巻線322から出力ラインLO、出力平滑コンデンサCoutおよび負荷9、接地ラインLGおよび整流ダイオード42をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線322へと戻る、2次回路電流(電流Is)が流れる。
【0046】
(State C)
続いて、図5に示した「State C」では、スイッチング素子S4がオン状態となり(図2(D)参照)、ZVS(Zero Volt Switching)がなされる。すると、トランス3の1次側には、共振インダクタLrから1次側巻線31、整流ダイオードD1、スイッチング素子S2および共振コンデンサCrをそれぞれ、この順序で経由して共振インダクタLrへと戻る、1次回路電流(電流Ip)が流れる。また、この際の電圧Vpの値は、Vp=0となる(図2(E)参照)。そして、トランス3の2次側には、2次側巻線322から出力ラインLO、出力平滑コンデンサCoutおよび負荷9、接地ラインLGおよび整流ダイオード42をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線322へと戻る、2次回路電流(電流Is)が流れる。
【0047】
(State D)
そして、図6に示した「State D」では、スイッチング素子S2がオフ状態となる(図2(B)参照)。すると、トランス3の1次側には、共振インダクタLrから共振コンデンサCr、スイッチング素子S2の寄生ダイオードDp2、コンデンサCf、スイッチング素子S4、1次側低圧ラインL1L、コンデンサC2および1次側巻線31をそれぞれ、この順序で経由して共振インダクタLrへと戻る、1次回路電流(電流Ip)が流れる。つまり、これまでの「State A」~「State C」の期間とは、電流Ipの流れる向きが反転することになる。なお、この際に、上記した寄生ダイオードDp2では、電圧がクランプされた状態となる。また、この際の電圧Vpの値は、Vp=0となる(図2(E)参照)。そして、トランス3の2次側には、2次側巻線321から出力ラインLO、出力平滑コンデンサCoutおよび負荷9、接地ラインLGおよび整流ダイオード41をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線321へと戻る、2次回路電流(電流Is)が流れる。つまり、これまでの「State A」~「State C」の期間とは、電流Isの流れる経路が異なるものとなる。
【0048】
(State E)
次に、図7に示した「State E」では、スイッチング素子S3がオン状態となる(図2(C)参照)。すると、トランス3の1次側には、直流入力電源10から1次側高圧ラインL1H、コンデンサC1、1次側巻線31、共振インダクタLr、共振コンデンサCr、スイッチング素子S3、スイッチング素子S4および1次側低圧ラインL1Lをそれぞれ、この順序で経由して直流入力電源10へと戻る、1次回路電流(電流Ip)が流れる。また、この際の電圧Vpの値は、Vp=-(Vin/2)となる(図2(E)参照)。そして、トランス3の2次側には、2次側巻線321から出力ラインLO、出力平滑コンデンサCoutおよび負荷9、接地ラインLGおよび整流ダイオード41をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線321へと戻る、2次回路電流(電流Is)が流れる。
【0049】
(State F)
次いで、図8に示した「State F」では、スイッチング素子S4がオフ状態となる(図2(D)参照)。すると、トランス3の1次側には、共振インダクタLrから共振コンデンサCr、スイッチング素子S3、整流ダイオードD2および1次側巻線31をそれぞれ、この順序で経由して共振インダクタLrへと戻る、1次回路電流(電流Ip)が流れる。なお、この際に、スイッチング素子S1の寄生容量Cp1からは、電荷が放電される。また、この際の電圧Vpの値は、Vp=0となる(図2(E)参照)。そして、トランス3の2次側には、2次側巻線321から出力ラインLO、出力平滑コンデンサCoutおよび負荷9、接地ラインLGおよび整流ダイオード41をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線321へと戻る、2次回路電流(電流Is)が流れる。
【0050】
(State G)
続いて、図9に示した「State G」では、スイッチング素子S1がオン状態となり(図2(A)参照)、ZVSがなされる。すると、トランス3の1次側には、共振インダクタLrから共振コンデンサCr、スイッチング素子S3、整流ダイオードD2および1次側巻線31をそれぞれ、この順序で経由して共振インダクタLrへと戻る、1次回路電流(電流Ip)が流れる。また、この際の電圧Vpの値は、Vp=0となる(図2(E)参照)。そして、トランス3の2次側には、2次側巻線321から出力ラインLO、出力平滑コンデンサCoutおよび負荷9、接地ラインLGおよび整流ダイオード41をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線321へと戻る、2次回路電流(電流Is)が流れる。
【0051】
(State H)
そして、図10に示した「State H」では、スイッチング素子S3がオフ状態となる(図2(C)参照)。すると、トランス3の1次側には、共振インダクタLrから1次側巻線31、コンデンサC1、1次側高圧ラインL1H、スイッチング素子S1、コンデンサCf、スイッチング素子S3の寄生ダイオードDp3および共振コンデンサCrをそれぞれ、この順序で経由して共振インダクタLrへと戻る、1次回路電流(電流Ip)が流れる。つまり、これまでの「State E」~「State G」の期間とは、電流Ipの流れる向きが反転することになる。なお、この際に、上記した寄生ダイオードDp3では、電圧がクランプされた状態となる。また、この際の電圧Vpの値は、Vp=0となる(図2(E)参照)。そして、トランス3の2次側には、2次側巻線322から出力ラインLO、出力平滑コンデンサCoutおよび負荷9、接地ラインLGおよび整流ダイオード42をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線322へと戻る、2次回路電流(電流Is)が流れる。つまり、これまでの「State E」~「State G」の期間とは、電流Isの流れる経路が異なるものとなる。
【0052】
ここで、例えば図2(A)~図2(D)中に矢印で示したように、駆動回路5は、スイッチング素子S1~S4におけるオン状態の期間(「H」状態の期間)の開始タイミングまたは停止タイミングをそれぞれ、調整するようにしてもよい。具体的には、駆動回路5は、スイッチング素子S2,S3におけるオン状態の期間の開始タイミング(駆動信号SG2,SG3の立ち上がりのタイミング)をそれぞれ、調整するようにしてもよい。また、駆動回路5は、スイッチング素子S1,S4におけるオン状態の期間の停止タイミング(駆動信号SG1,SG4の立ち下がりのタイミング)をそれぞれ、調整するようにしてもよい。ただし、駆動信号SG2,SG3の立ち上がりのタイミングを調整した場合、前述したスイッチング周期Tswは、駆動信号SG1,SG4の立ち上りのタイミングから、次のサイクルにおける駆動信号SG1,SG4の立ち上りのタイミングまでの期間により、規定されることになる。そして、駆動回路5は、このようなオン状態の期間の開始タイミングまたは停止タイミングをそれぞれ調整することで、例えば図2(F)中に矢印で示したように、直流出力電圧Voutの値を制御するようにしてもよい。なお、この図2中に示した直流出力電圧Voutは、整流ダイオード41,42における電圧降下を無視した場合となっている。
【0053】
また、例えば図2に示したように、駆動回路5は、スイッチング素子S1,S2が同時にオン状態となるオン期間Ton1と、スイッチング素子S3,S4が同時にオン状態となるオン期間Ton2とが、スイッチング周期Tsw内で互いに重ならないように調整してもよい。そして、駆動回路5は、スイッチング周期Tsw内における、これらのオン期間Ton1,Ton2の時比率をそれぞれ調整することで、例えば図2(F)中に矢印で示したように、直流出力電圧Voutの値を制御するようにしてもよい。つまり、図2(E)の例では、Vp=(Vin/2)となるオン期間Ton1の時比率D1(=Ton1/Tsw)と、Vp=-(Vin/2)となるオン期間Ton2の時比率D2(=Ton2/Tsw)とが、それぞれ調整されることで、直流出力電圧Voutの値が制御されることになる。
【0054】
更に、駆動回路5は、例えば、スイッチング素子S1~S4におけるスイッチング周波数fsw(スイッチング周期Tsw)と、上記したオン期間Ton1,Ton2とを、それぞれ調整することで、例えば図2(F)中に矢印で示したように、直流出力電圧Voutの値を制御するようにしてもよい。すなわち、駆動回路5は、前述した、各スイッチング周波数fswが一定のPWM制御と、各スイッチング周波数fswの値を調整するPFM(Pulse Frequency Modulation)制御との、ハイブリッド制御を行うようにしてもよい。
【0055】
以上で、図2および図3図10に示した、一連の動作(スイッチング周期Tsw内でのパルス幅制御)についての説明が、終了となる。
【0056】
(C.作用・効果)
続いて、本実施の形態のスイッチング電源装置1における作用および効果について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0057】
(C-1.比較例)
図11は、比較例に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置101)の概略構成例を、回路図で表したものである。この比較例のスイッチング電源装置101は、従来の一般的な「LLC共振型」のDC-DCコンバータとなっている。具体的には、この比較例のスイッチング電源装置101は、図1に示した本実施の形態のスイッチング電源装置1において、インバータ回路2、トランス3および駆動回路5の代わりに、インバータ回路102、トランス103および駆動回路105をそれぞれ設けたものに対応している。
【0058】
このインバータ回路102は、本実施の形態のインバータ回路2において、以下のようにしたものとなっている。すなわち、まず、コンデンサC1,C2,Cfおよび整流ダイオードD1,D2をそれぞれ、設けないようにすると共に、互いに直列接続された4つのスイッチング素子S1~S4の代わりに、互いに直列接続された2つのスイッチング素子S1,S2を設けるようにしたものとなっている。具体的には、1次側高圧ラインL1Hと接続点P4との間に、スイッチング素子S1が配置され、接続点P4と1次側低圧ラインL1Lとの間に、スイッチング素子S2が配置されている。また、共振コンデンサCr、共振インダクタLrおよびトランス103の1次側巻線31はそれぞれ、前述したインバータ回路2およびトランス3の場合とは異なり、上記した接続点P4と1次側低圧ラインL1Lとの間において、互いに直列接続されている。
【0059】
駆動回路105は、インバータ回路102におけるスイッチング素子S1,S2の動作をそれぞれ制御する、スイッチング駆動を行う回路である。具体的には、駆動回路105は、スイッチング素子S1,S2に対してそれぞれ、駆動信号SG1,SG2を個別に供給することで、各スイッチング素子S1,S2におけるスイッチング動作(オン・オフ動作)を制御するようになっている。
【0060】
このような構成の比較例のスイッチング電源装置101(一般的な「LLC共振型」のDC-DCコンバータ)では、直流出力電圧Voutを安定化させるために、スイッチング周波数fswを制御する必要がある。このため、各スイッチング素子S1,S2において、ソフトスイッチングが可能な動作範囲が狭くなってしまう。したがって、直流入力電圧Vinや直流出力電圧Voutの変動が大きいと、スイッチング周波数fswの変動範囲が広くなる。このようにして、例えば、この比較例のように、直流入力電圧Vinと直流出力電圧Voutとの比率(入出力電圧比)が大きくなり、動作電圧範囲が広いような場合には、以下のような問題点が生じるおそれがある。
【0061】
すなわち、まず、この比較例のスイッチング電源装置101では、トランス103における変成比(巻数比)が大きい(例えば、16:1程度)ことから、このトランス103における1次側巻線31の巻線数が多くなり、この1次側巻線31における損失が増大してしまうおそれがある。このようにして、この比較例のスイッチング電源装置101では、トランス103における1次側巻線31での損失が増大して、電力損失が増大するおそれがある。
【0062】
ちなみに、この比較例のスイッチング電源装置101では、スイッチング周波数fswの変動範囲が広い(例えば、約800kHz~約2MHz程度)ことから、各スイッチング素子S1,S2において、ソフトスイッチングが困難となり、スイッチング損失が増大する結果、放熱部品等の部材が大型化してしまうおそれもある。つまり、この比較例のスイッチング電源装置101では、放熱部品等の部材が大型化して、スイッチング電源装置101全体も大型化してしまうおそれもある。加えて、この比較例のスイッチング電源装置101では、例えば、負荷9についての軽負荷時や無負荷時に、バースト制御が必要となる。
【0063】
(C-2.本実施の形態)
これに対して、本実施の形態のスイッチング電源装置1では、例えば上記比較例のスイッチング電源装置101と比較して、例えば以下のような作用および効果が得られる。
【0064】
すなわち、まず、本実施の形態では、インバータ回路2における回路構成が、コンデンサC1,C2,Cfや整流ダイオードD1,D2等を含む前述した構成となっていることで、共振インダクタLrおよび共振コンデンサCrを含む共振回路に対して印加される電圧(電圧Vp)が、矩形パルス波となる(図2(E)参照)。これにより、この電圧Vpにおける基本波の振幅(-(4/π)×(Vin/2)×sin(D2×π)~+(4/π)×(Vin/2)×sin(D1×π))が、時比率により小さくなることから、トランス3の変成比を小さく設定することができる(例えば、上記比較例の場合には16:1であったのが、本実施の形態では8:1と、半分の変成比にすることができる)。その結果、本実施の形態のトランス3では、上記比較例のトランス103の場合と比べ、1次側巻線31における巻線数を少なくすることができ(例えば1/2となり)、1次側巻線31での損失を低減することができる。
【0065】
以上のことから、本実施の形態では上記比較例等と比べ、スイッチング電源装置1における電力損失を低減することが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、前述したようにして、スイッチング素子S1~S4における各スイッチング周波数fswが互いに同一となるようにして、各スイッチング素子S1~S4に対するスイッチング駆動が行われることから、以下のようになる。すなわち、上記した比較例の場合と比べ、各スイッチング素子S1~S4でのソフトスイッチングが容易となることから、上記比較例の場合と比べてスイッチング損失が低減され、その結果、放熱部品等の部材の小型化を図ることができる。よって、本実施の形態では上記比較例等と比べ、スイッチング電源装置1の小型化を図ることも可能となる。
【0067】
また、本実施の形態では、前述したようにして、直流出力電圧Voutの値を制御することができる。更に、整流ダイオード41,42を不連続モードで動作することができ、低ノイズ化を図ることができる。加えて、スイッチング電源装置1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態では、各スイッチング素子S1~S4の時比率を固定しつつ、スイッチング素子S1~S4同士(駆動信号SG1~SG4同士)の位相をシフトさせることで、直流出力電圧Voutの値を制御するようにしたので、直流出力電圧Voutの値を、容易に制御することが可能となる。更に、スイッチング素子S1~S4に対する制御(スイッチング駆動)が簡素化し、スイッチング電源装置1の信頼性を向上させることが可能となる。ちなみに、各スイッチング素子Sn(n=1~4)のオン時間を、Ton(n)として表した場合(Ton(1)≒Ton(2)≒Ton(3)≒Ton(4))、上記した各スイッチング素子Snの時比率は、スイッチング周期Tswを用いて、(Ton(n)/Tsw)として表される。
【0069】
更に、本実施の形態では、インバータ回路2における共振インダクタLrが、トランス3における漏れインダクタンスによって構成されるようにした場合には、共振インダクタLrを別個に設ける必要がなくなることから、部品点数を低減することができる。その結果、スイッチング電源装置1における更なる小型化や、低コスト化を図ることが可能となる。
【0070】
加えて、本実施の形態では、インバータ回路2におけるスイッチング素子S1~S4がそれぞれ、MOS-FETによって構成されるようにしたので、スイッチング周波数fswを高くすることができ、部品の小型化を図ることが可能となる。
【0071】
また、本実施の形態では、整流平滑回路4における整流回路を、センタタップ型の整流回路としたので、例えば後述する変形例1の場合と比べ、整流素子の個数が2つ(整流ダイオード41,42)となって、少なくなる。その結果、整流回路の小型化や低損失化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0072】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~3)について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0073】
[変形例1]
(構成)
図12は、変形例1に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1A)の概略構成例を、回路図で表したものである。
【0074】
なお、実施の形態と同様に、直流入力電源10とこのスイッチング電源装置1Aとを備えたシステムは、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
【0075】
この変形例1のスイッチング電源装置1Aは、実施の形態のスイッチング電源装置1において、トランス3および整流平滑回路4の代わりに、トランス3Aおよび整流平滑回路4Aをそれぞれ設けたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0076】
トランス3Aは、1つの1次側巻線31と、1つの2次側巻線32とを有している。すなわち、トランス3では、2つの2次側巻線321,322が設けられていたのに対し、トランス3Aでは、1つの2次側巻線32のみが設けられている。この2次側巻線32では、第1端が、後述する整流平滑回路4A内の接続点P7に接続され、第2端が、この整流平滑回路4A内の接続点P8に接続されている。
【0077】
このトランス3Aもトランス3と同様に、インバータ回路2によって生成された電圧(矩形パルス波化した電圧Vp)を電圧変換し、2次側巻線32の端部から交流電圧(電圧Vs)を出力するようになっている。なお、この場合における、入力電圧に対する出力電圧の電圧変換の度合いは、1次側巻線31と2次側巻線32との巻数比、および、前述したスイッチング周期Tswに対するオン期間Ton1,Ton2の時比率によって、定まる。
【0078】
整流平滑回路4Aは、4個の整流ダイオード41~44と、1個の出力平滑コンデンサCoutとを有している。具体的には、この整流平滑回路4Aは、整流ダイオード41~44を有する整流回路と、出力平滑コンデンサCoutを有する平滑回路と、を含んでいる。すなわち、この整流平滑回路4Aは、整流平滑回路4において、整流回路の構成を変更したものとなっている。
【0079】
なお、このような4個の整流ダイオード41~44は、本発明における「複数の整流素子」の一具体例に対応している。
【0080】
この変形例1の整流回路は、実施の形態の整流回路(いわゆる「センタタップ型」の整流回路)とは異なり、いわゆる「ブリッジ型」の整流回路となっている。すなわち、整流ダイオード41,43のカソードがそれぞれ、出力ラインLOに接続され、整流ダイオード41のアノードが、接続点P7において、整流ダイオード42のカソードおよび2次側巻線32における前述した第1端に接続されている。また、整流ダイオード42,44のアノードがそれぞれ、接地ラインLGに接続され、整流ダイオード44のカソードが、接続点P8において、整流ダイオード43のアノードおよび2次側巻線32における前述した第2端に接続されている。
【0081】
このような構成の整流平滑回路4Aでは、整流平滑回路4と同様に、整流ダイオード41~44を含んで構成される整流回路において、トランス3Aから出力される交流電圧(電圧Vs)を整流して出力するようになっている。
【0082】
(作用・効果)
このような構成からなる変形例1のスイッチング電源装置1Aにおいても、基本的には、実施の形態のスイッチング電源装置1と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0083】
また、特にこの変形例1では、整流平滑回路4Aにおける整流回路を、ブリッジ型の整流回路としたので、例えば上記実施の形態の場合と比べ、トランス3Aにおける巻線数(2次側巻線の個数)が1つ(2次側巻線32)となって、少なくなる。その結果、トランス3Aの小型化や低損失化を図ることが可能となる。
【0084】
[変形例2,3]
変形例2,3に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1B,1C)はそれぞれ、上記した実施の形態および変形例1において、インバータ回路2内の整流ダイオードD1,D2や、整流平滑回路4,4A内の整流回路をそれぞれ、以下説明するように、いわゆる同期整流回路としたものとなっている。
【0085】
具体的には、図13は、変形例2に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1B)の概略構成例を、回路図で表したものである。
【0086】
この変形例2のスイッチング電源装置1Bは、実施の形態のスイッチング電源装置1において、インバータ回路2および整流平滑回路4の代わりに、インバータ回路2Bおよび整流平滑回路4Bをそれぞれ設けたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0087】
この変形例2における同期整流回路では、図13に示したように、実施の形態で説明した整流ダイオードD1,D2および整流ダイオード41,42がそれぞれ、MOS-FET(MOSトランジスタM1~M4)により構成されている。そして、この同期整流回路では、各MOSトランジスタM1~M4の寄生ダイオードが導通する期間と同期して、これらのMOSトランジスタM1~M4自身もオン状態となる(同期整流を行う)ように、制御される。具体的には、この変形例2の駆動回路5は、駆動信号SG5~SG8を用いて、各MOSトランジスタM1~M4のオン・オフ動作を制御するようになっている(図13参照)。
【0088】
また、変形例3に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1C)は、変形例1のスイッチング電源装置1Aにおいて、インバータ回路2および整流平滑回路4A内の整流ダイオードD1,D2および整流ダイオード41~44をそれぞれ、MOS-FETにより構成したものとなっている。そして、この変形例3の同期整流回路においても、上記した変形例2の同期整流回路と同様に、各MOS-FETの寄生ダイオードが導通する期間と同期して、MOS-FET自身もオン状態となるように、駆動回路5によって制御されるようになっている。
【0089】
なお、実施の形態および変形例1と同様に、直流入力電源10と、これらのスイッチング電源装置1Bまたはスイッチング電源装置1Cとを備えたシステムは、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
【0090】
このような構成からなる変形例2,3のスイッチング電源装置1B,1Cにおいても、基本的には、実施の形態や変形例1のスイッチング電源装置1,1Aと同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0091】
また、特にこれらの変形例2,3では、整流回路における複数の整流素子(整流ダイオード)がそれぞれ、MOS-FETによって構成されており、この整流回路が同期整流回路になっているようにしたので、以下のようになる。すなわち、このような同期整流回路によって、整流時の導通損失が低減されることから、整流回路の小型化や低損失化を図ることが可能となる。
【0092】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0093】
例えば、上記実施の形態等では、インバータ回路の構成を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、例えば、インバータ回路として他の構成のものを用いるようにしてもよい。具体的には、例えば、互いに直列接続されている、共振コンデンサCrと共振インダクタLrと1次側巻線31との配置関係については、実施の形態等で説明した配置関係には限られず、互いに順不同となっていてもよい。
【0094】
また、上記実施の形態等では、トランス(1次側巻線および2次側巻線)の構成を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、例えば、トランス(1次側巻線および2次側巻線)として他の構成のものを用いるようにしてもよい。
【0095】
更に、上記実施の形態等では、整流平滑回路(整流回路および平滑回路)の構成を、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、例えば、整流平滑回路(整流回路および平滑回路)として他の構成のものを用いるようにしてもよい。
【0096】
加えて、上記実施の形態等では、駆動回路による各スイッチング素子の動作制御(スイッチング駆動)の手法を、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、スイッチング駆動の手法として、他の手法を用いるようにしてもよい。具体的には、例えば、前述したパルス幅制御の手法や、電圧Vpの矩形パルス波化の手法等については、上記実施の形態等の手法には限られず、他の手法を用いるようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態等では、本発明に係るスイッチング電源装置の一例として、DC-DCコンバータを挙げて説明したが、本発明は、例えばAC-DCコンバータなどの、他の種類のスイッチング電源装置にも適用することが可能である。
【0098】
更に、これまでに説明した各構成例等を、任意の組み合わせで適用してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B…スイッチング電源装置、10…直流入力電源、2,2B…インバータ回路、3,3A…トランス、31…1次側巻線、32,321,322…2次側巻線、4,4A,4B…整流平滑回路、41,42,43,44…整流ダイオード、5…駆動回路、9…負荷、T1,T2…入力端子、T3,T4…出力端子、L1H…1次側高圧ライン、L1L…1次側低圧ライン、L21,L22…接続ライン、LO…出力ライン、LG…接地ライン、Vin…直流入力電圧、Vout…直流出力電圧、Vp,Vs(Vs1,Vs2)…電圧、Ip,Is…電流、Cin…入力平滑コンデンサ、Cout…出力平滑コンデンサ、S1~S4…スイッチング素子、M1~M4…MOSトランジスタ(MOS-FET)、SG1~SG8…駆動信号、C1,C2,Cf…コンデンサ、D1,D2…整流ダイオード、Cp1,Cp4…寄生容量、Dp2,Dp3…寄生ダイオード、Lr…共振インダクタ(漏れインダクタンス)、Cr…共振コンデンサ、P1~P4,P7,P8…接続点、P6…センタタップ、t…時間、t1,t2…タイミング、Tsw…スイッチング周期、fsw…スイッチング周波数、φ,φ1,φ2…位相差、Td14,Td23…デッドタイム、Ton1,Ton2…オン期間。
図1
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