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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】包装箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/05 20060101AFI20240220BHJP
   B65D 5/50 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B65D81/05 500Z
B65D5/50 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020123177
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019378
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】浅山 良行
(72)【発明者】
【氏名】佐々島 伸之
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0314936(US,A1)
【文献】特開2017-210291(JP,A)
【文献】特開2005-126106(JP,A)
【文献】特開平07-242268(JP,A)
【文献】特開2018-079980(JP,A)
【文献】特表平07-502718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/03-81/07
B65D 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の出し入れされる開口部と底面部との間に複数の側面部が立設された箱体と、
少なくとも二つの前記側面部から延出して前記箱体に内装され、所定方向に沿って延在する複数の切れ込み部が千鳥状に設けられ、前記所定方向と交差する方向に伸張することでマット状に変形するシート状の内装体と、
前記内装体の先端部に突設された差込片と、
前記箱体において前記差込片の突設された前記内装体が延出する前記側面部と対向する位置に形成され、前記差込片が差し込まれるスリットと、を備え
前記箱体は、前記側面部において互いに対面する二つの側対面部を有し、
前記内装体は、互いに対面する二つの前記側対面部の各々から延出し、シート状をなす未伸張状態において、前記側対面部から延出する方向の寸法が前記箱体の二つの前記側対面部が対面する長さ方向の寸法よりも小さく設定されている
ことを特徴とする包装箱
【請求項2】
前記内装体は、前記側面部から延出する方向に対して前記所定方向が交差する
ことを特徴とする請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記内装体は、前記側面部のうち前記開口部を囲む縁部から延出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記箱体及び前記内装体は、単一のシート材で形成された
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の包装箱。
【請求項5】
前記箱体は、一つの前記側面部と連設され、前記開口部を覆う天面部を有する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の包装箱。
【請求項6】
前記内装体は、紙で形成され、前記所定方向が前記紙の流れ方向と一致する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の包装箱。
【請求項7】
前記切れ込み部の前記所定方向に沿う長さ寸法は、10mm以上かつ30mm以下であり、
前記所定方向において隣接する前記切れ込み部どうしの間に設けられた非切れ込み部の前記所定方向に沿う長さ寸法は、3mm以上かつ15mm以下であり、
前記所定方向に並ぶ複数の前記切れ込み部で構成される列のうち、前記所定方向と直交する方向において隣接する前記列どうしの間隔は、2mm以上かつ20mm以下である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、物品を包装する包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝材の一つとして、直線状に延びる複数の切れ込み部が千鳥状に設けられたシートが知られている。このシートは、その延在平面において切れ込み部の延びる方向に対して交差する方向に伸張させると、切れ込み部に対応する目が蜂の巣状に開く(このことから「ハニーペーパー」とも称される)。これにより、このシートは、厚み方向の寸法が増大して緩衝代の形成されたマット状に変化する(機能に着目して「クッションペーパー」とも称される)。このようなシートを内装した包装具も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-34852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなシートで形成された内装体を内装する包装箱において、物品の保護性を向上させることが求められている。
本件は、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、包装箱において物品の保護性を高めることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用及び効果であって、従来の技術では得られない作用及び効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件の包装箱は、物品の出し入れされる開口部と底面部との間に複数の側面部が立設された箱体と、少なくとも二つの前記側面部から延出して前記箱体に内装され、所定方向に沿って延在する複数の切れ込み部が千鳥状に設けられ、前記所定方向と交差する方向に伸張することでマット状に変形するシート状の内装体と、を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本件によれば、包装箱において物品の保護性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】内装体が箱体の外側に展開された状態の包装箱の斜視図である。
図2】伸張した状態の内装体の要部を拡大して示す斜視図である。
図3】(a)~(c)は、物品が配置される前の包装箱の使用手順を順に示す斜視図である。
図4】(a)~(c)は、物品が配置された後の包装箱の使用手順を順に示す斜視図である。
図5】未伸張状態の内装体の要部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、本件の実施形態を説明する。この実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0009】
[1.構成]
図1に示すように、本実施形態に係る包装箱3は、物品(図示略)を包装する立体的な箱である。包装箱3は、物品が出し入れされる開口部4を有する箱体1と、箱体1に内装される少なくとも二つの内装体2とを備えている。図1には、内装体2が箱体1の外側に展開(配置)された状態の包装箱3を示す。
本実施形態では、箱体1及び内装体2が単一のシート材で形成されている。すなわち、本実施形態の包装箱3は、一枚のシート材から組み立てられている。ただし、箱体1及び内装体2は、別々に形成されたうえで、互いに結合されてもよい。例えば、既存の箱体1に内装体2が後付けされることで、包装箱3が形成されてもよい。
【0010】
箱体1及び内装体2は、クラフト紙、上質紙、中質紙、インクジェット記録紙、クルパック紙、ライナー、白板紙、黄板紙、色板紙、チップボールなどの紙や板紙、段ボール、これらの紙類の少なくとも片面に印刷適性を付与するための顔料塗工層、記録適性を付与するための記録層、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、スパンボンドやスパンレースなどの不織布、合成紙やフィルムなどのプラスチックシートなどのシート材から形成できる。特に白板紙、色板紙、チップボールは、内装体としての強度とクッション性とを両立できるため好ましい。
【0011】
なお、箱体1及び内装体2に用いられる紙や板紙等は、耐水性を高めるために、その表面や内部に耐水化剤や紙力増強剤などが配合されていてもよいし、表面に撥水剤やサイズ剤などが配合されていてもよい。また、箱体1及び内装体2は、紙あるいは樹脂といった同一の材料から形成されることが好ましいが、互いに異なる材料から形成されてもよい。
図1には、開口部4が鉛直上方を向く縦置き状態の包装箱3を例示する。ただし、包装箱3は、いずれの向き(姿勢)で配置されてもよく、例えば、開口部4が水平方向に向く横置き状態とされてもよい。
【0012】
〈箱体〉
箱体1は、物品を収容可能なトレー状に形成される。箱体1は、開口部4の反対側に配置された底面部11と、開口部4と底面部11との間に立設された複数の側面部12~14とを有する。本実施形態では、いずれも矩形状である底面部11及び側面部12~14が有底四角筒状をなす例を示す。箱体1において、四つの側面部12~14は、周方向に連続する。
【0013】
以下、四つの側面部12~14のうち、包装箱3の長さ方向LD(一方)において互いに対面する二つを「側対面部12」ともいい、包装箱3の幅方向WD(他方)において互いに対面する二つをそれぞれ「前面部13」及び「後面部14」ともいう。また、開口部4と底面部11とを繋ぐ方向HDを「高さ方向HD」(深さ方向)ともいう。長さ方向LDと幅方向WDと高さ方向HDとは、互いに直交する。縦置き状態の包装箱3では、高さ方向HDが鉛直方向に沿い、長さ方向LD及び幅方向WDがいずれも水平方向に沿う。
【0014】
底面部11は、例えば、各側面部12~14から開口部4と反対側に延出したフラップが組み合わされることで形成される。このような底面部11を有する箱体1としては、側面部12~14が四角筒状に組み立てられるときに底面部11が自動的に組み上がる、いわゆるワンタッチタイプものを適用できる。
【0015】
二つの側対面部12は、互いに等しく形成され、互いに平行に配置される。同様に、前面部13及び後面部14は、互いに等しく形成され、互いに平行に配置される。これらの側面部12~14はいずれも、底面部11から開口部4側(図1では上側)へ折り曲げられている。また、側面部12~14における底面部11と反対側の縁部(図1では上縁部)は、開口部4を画成する。本実施形態の開口部4は、矩形状である。
【0016】
本実施形態の箱体1は、いわゆるB式の箱であって、後面部14(一つの側面部)と連設された天面部15と、天面部15から突設された凸片16とを更に有する。天面部15は、物品が収容された包装箱3を封緘するときに開口部4を覆う蓋となる。以下、天面部15が開口部4を覆う状態を「封緘状態」ともいう。本実施形態の箱体1は、封緘状態で直方体となる。
【0017】
天面部15は、開口部4と同じ形状とされる。天面部15は、後面部14から前面部13側へと折り曲げられ、封緘状態で底面部11と平行に配置される。
凸片16は、包装箱3を封緘状態とするときに、側面部12~14で囲まれる空間に差し込まれる。凸片16は、封緘状態では、前面部13の内側に重なる。ここでは、台形状に形成された凸片16を例示する。
【0018】
〈内装体〉
内装体2は、所定方向に沿って延在する複数の切れ込み部21が千鳥状に設けられたシート(クッションペーパーやハニーペーパーなどとも称される)で形成される。内装体2のうち、所定方向において隣接する切れ込み部21どうしの間には、切り込まれていない非切れ込み部24が設けられている。
内装体2は、切れ込み部21の延びる所定方向と交差する方向(以下、単に「交差方向」ともいう)に伸張することで、厚み方向(所定方向及び交差方向の双方に交差する方向)の寸法が増大してマット状に変形する。
【0019】
詳細には図2に示すように、内装体2は、交差方向に引っ張られた場合に、切れ込み部21に対応する目が開くことで交差方向に伸張する。このとき、交差方向に伸張した内装体2では、切れ込み部21の周辺の片部22が厚み方向に立ち上がることで、ハニカム状の立体的なセル構造23が出現する。内装体2は、このような交差方向への伸張に伴うセル構造23の出現により、厚み方向に緩衝代が形成されたマット状に変形する。なお、図2には、所定方向と直交する交差方向に伸張した内装体2の一部を拡大して例示する。
【0020】
図1に示すように、内装体2は、複数の側面部12~14の少なくとも二つから延出し、箱体1に内装される。本実施形態では、二つの側対面部12の各々から延出する矩形状の内装体2を例示する。各内装体2は、側対面部12のうち、開口部4を囲む縁部17(以下、「上縁部17」ともいう)から延出している。本実施形態の内装体2は、B式の箱体1において内フラップに対応する部位をなす。
【0021】
内装体2は、側対面部12から延出する方向(以下、単に「延出方向」ともいう)に対して、切れ込み部21の延びる所定方向が交差している。すなわち、内装体2は、延出方向に引っ張られることでマット状に変形可能となっている。ここでは、上記の延出方向と所定方向とが直交する内装体2を例示する。図1に示すように、高さ方向HD及び幅方向WDに沿って立設された側対面部12から平面状に延出する内装体2では、切れ込み部21が包装箱3の幅方向WDに沿って延在する。
【0022】
本実施形態の内装体2は、シート状をなす未伸張状態(交差方向に引っ張られていない状態)における延出方向の寸法doが、箱体1の長さ方向LDの寸法daよりも小さく設定されている(do<da)。一方、内装体2は、延出方向に引っ張られることで、延出方向の寸法doが箱体1の長さ方向LDの寸法da以上に拡大可能なように切れ込み部21の寸法や配設数などのレイアウトが設定されている。
【0023】
〈差込片及びスリット〉
本実施形態の包装箱3は、内装体2の姿勢を安定化するための構成として、内装体2の先端部に突設された差込片6と、差込片6が差し込まれるスリット5とを備えている。ここでいう「内装体2の先端部」とは、内装体2のうち、延出方向の最も下流側の部位であり、側対面部12に連設された基端部とは反対側の端部である。
【0024】
本実施形態の差込片6は、内装体2の先端部における幅方向WDの中央部に突設されている。差込片6の幅方向WDの寸法は、側対面部12の幅方向WDの寸法よりも小さく設定される。ここでは、先細り形状となるように台形状をなす差込片6を例示する。
スリット5は、箱体1において、差込片6の突設された内装体2が延出する側面部12~14と対向する位置に形成される。本実施形形態では、各側対面部12の上縁部17(あるいは、側対面部12と内装体2との境界)に形成されたスリット5を例示する。スリット5は、側対面部12の上縁部17における幅方向WDの中央部に形成されている。ここでは、幅方向WDに沿って延びる直線状のスリット5を例示する。
【0025】
〈使用手順〉
図3及び図4を参照して、包装箱3の使用手順(包装箱3で物品を包装する手順)を例説する。ここでは、二つの内装体2を互いに区別するために、図3及び図4における右側の内装体2を「第一内装体2A」ともいい、図3及び図4における左側の内装体2を「第二内装体2B」ともいう。また、第一内装体2Aが延出する側対面部12を「第一側対面部12A」ともいい、第二内装体2Bが延出する側対面部12を「第二側対面部12B」ともいう。なお、図3及び図4では、マット状の内装体2に出現する多数のセル構造23を格子状の線で簡略化して示す。
【0026】
まず、図3(a)に示すように、第一内装体2Aを延出方向に引き伸ばしてマット状に変形させる。同様に、図3(b)に示すように、第二内装体2Bを延出方向に引き伸ばしてマット状に変形させる。それから、図3(c)に示すように、マット状をなす第一内装体2Aを箱体1の内部に配置する。そして、第一内装体2Aの先端部に突設された差込片6を、第二側対面部12Bの上縁部17に形成されたスリット5に差し込む。
【0027】
これにより、第一内装体2Aは、第一側対面部12Aに連設された基端部と差込片6の設けられた先端部との双方が支持された状態(両端支持状態)となるとともに、二つの側対面部12の上縁部17間に架け渡された状態(懸架状態)となる。また、このとき、内装体2における上記の基端部と先端部との間の中間部は、箱体1のいずれの部位にも固定されずに配置される。
【0028】
続いて、図4(a)に示すように、上記の両端支持状態かつ懸架状態とされた第一内装体2Aに対し、物品7を載置する。これにより、物品7は、マット状の第一内装体2Aで底面部11側(図4では下側)から支持されるとともに、底面部11側からの衝撃に対して第一内装体2Aで保護される。
次いで、図4(b)に示すように、マット状の第二内装体2Bを物品7に被せる。そして、第二内装体2Bの先端部に突設された差込片6を、第一側対面部12Aの上縁部17に形成されたスリット5に差し込む。
【0029】
これにより、第二内装体2Bは、第一内装体2Aと同様に両端支持状態となる。また、物品7は、マット状の第二側対面部2で開口部4側(図4では上側)から覆われるとともに、開口部4側からの衝撃に対して第二内装体2Bで保護される。
このように、物品7は、二つの内装体2により底面部11側と開口部4側との両側(図4では上下)から挟まれた状態で、包装箱3に包装される。
続いて、図4(c)に示すように、天面部15を開口部4に被せて開口部4を閉鎖する。そして、凸片16を箱体1の内部に差し込み、前面部13の内側に重ねる。これにより、物品7を包装した包装箱3が封緘状態となる。
【0030】
なお、図3(c)に示すように、物品7を底面部11側から支持する第一内装体2Aの先端部に突設された差込片6は、対向する位置のスリット5に対し、箱体1の内側から外側に向けて差し込まれて第二側対面部12Bの外側に重なる。また、図4(b)に示すように、物品7を開口部4側から覆う第二内装体2Bの先端部に突設された差込片6は、対向する位置のスリット5に対し、箱体1の外側から内側に向けて差し込まれて第一内装体2Aの内側に重なる。したがって、側対面部12が単層構造をなす場合は、第一側対面部12Aの内側と第二側対面部12Bの外側とのそれぞれに差込片6が露出する。これに対し、側対面部12を二層構造とし、側対面部12における二層の間に差込片6を差し込む構成とすれば、上記のような差込片6の露出が防止される。
【0031】
包装箱3の使用手順は、上記の手順に限定されない。例えば、図3(a),(b)に示したように二つの内装体2を順に伸張させる手順に代えて、二つの内装体2を互いに反対方向に同時に引っ張ることで、二つの内装体2を同時にマット状に変形させてもよい。あるいは、第二内装体2Bを伸張させるよりも前に、マット状に変形させた第一内装体2Aを箱体1の内部に配置して両端支持状態かつ懸架状態としてもよく、この状態の第一内装体2Aに物品7を載置してから第二内装体2Bを伸張させてもよい。
【0032】
[2.作用及び効果]
(1)包装箱3によれば、側面部12~14の少なくとも二つから延出して箱体1に内装される内装体2により、箱体1の内部に配置された物品7を底面部11側(本実施形態の例では下側)と開口部4側(本実施形態の例では上側)との両側から包める。このため、内装体2により、物品7に対する衝撃を底面部11側と開口部4側との双方で緩和できる。よって、物品7の保護性を高められる。
【0033】
(2)内装体2が、互いに対面する二つの側対面部12の各々から延出していれば、側対面部12の間にわたって内装体2を配置できる。このため、物品7に対する衝撃を側対面部12の間の全域で緩和できる。よって、物品7の保護性をより確実に高められる。
【0034】
(3)内装体2の先端部に突設された差込片6が、この差込片6の突設された内装体2が延出する側面部12~14(本実施形態では側対面部12)と対向する位置に形成されたスリット5に差し込まれることで、内装体2を上記の両端支持状態にできる。これにより、内装体2の姿勢が安定化するため、内装体2の緩衝性をより確実に発揮させられる。よって、物品7の保護性を更に確実に高められる。
【0035】
(4)内装体2の延出方向に対し、切れ込み部21の延びる所定方向が交差していれば、内装体2を延出方向に引っ張ることでマット状に変形させられる。このため、内装体2をマット状に変形させる作業が容易となる。
また、上記のスリット5への差込片6の差し込みにより両端支持状態とされた内装体2において、延出方向が所定方向と交差していれば、この内装体2に載置された物品7の重量によっても内装体2が延出方向(交差方向)に伸張する。このため、物品7の重量を利用して内装体2をマット状に変形させられる。よって、包装箱3で物品7を包装する作業を簡素化できる
【0036】
(5)内装体2が、側面部12~14(本実施形態では側対面部12)のうち開口部4を囲む上縁部17から延出していれば、底面部11と開口部4との間にわたって内装体2を配置できる。このため、物品7に対する衝撃を底面部11と開口部4との間の全域で緩和できる。よって、物品7の保護性をより確実に高められる。
また、側対面部12の上縁部17から延出した内装体2は、B式の箱の内フラップ部分に対応するため、既存のB式の箱体1への適用が容易である。よって、包装箱3の設計や製造の簡素化に寄与する。
また、上縁部17から延出した内装体2が上記のスリット5への差込片6の差し込みにより両端支持状態とされれば、内装体2を懸架状態にできる。これにより、内装体2に載置された物品7がより柔軟に支持されるため、物品7の保護性を更に高められる。
【0037】
(6)箱体1及び内装体2が単一のシート材で形成されていれば、シート状の資材を所定形状に打ち抜くことで、包装箱3に組立可能なシート材を形成できる。このように、包装箱3に組み立てられるシート材が単一の部材(シート材)で構成されることにより、複数の部材が組み合わされて構成される場合と比べて、包装箱3の製造工程を簡素化できる。また、部品点数が抑えられることで、管理及び保管も容易となる。
【0038】
(7)一つの側面部(本実施形態では後面部14)と連設されて開口部4を覆う天面部15が設けられた箱体1によれば、部品点数を増加させることなく包装箱3の封緘性を高められる。また、物品7を底面部11側と開口部4側との両側から包む内装体2を箱体1で包み込めるため、物品7に対するいずれの方向からの衝撃に対しても、物品7を保護できる。よって、物品7の保護性を更に高められる。
【0039】
(8)図5に示すように、紙で形成された内装体2において、切れ込み部21の延在する所定方向が紙の流れ方向と一致していれば(すなわち、切れ込み部21が紙の流れ方向に沿って延びていれば)、切れ込み部21の形成時にパルプ繊維の切断を抑制できる。これにより、所定方向が紙の流れ方向と交差する場合と比べて、衝撃に対して強い内装体2を形成できる。このため、物品7の保護性を更に高められる。
【0040】
(9)図5に示すように、未伸張状態の内装体2において、切れ込み部21の所定方向に沿う長さ寸法A(以下、「切れ込み長さA」ともいう)は、好ましくは10mm以上かつ30mm以下である。また、非切れ込み部24の所定方向に沿う長さ寸法C(以下、「非切れ込み長さC」ともいう)は、好ましくは3mm以上かつ15mm以下である。さらに、所定方向に並ぶ複数の切れ込み部21で構成される列25のうち、所定方向と直交する方向において隣接する列25どうしの間隔B(以下、「列間隔B」ともいう)は、好ましくは2mm以上かつ20mm以下である。
【0041】
切れ込み長さAを30mm以下とすることで、内装体2の伸張に伴って出現する立体的なセル構造23が大きくなりすぎることを防止できる。このため、内装体2のクッション性(緩衝性)の低下及び形状保持性の低下を防止できる。また、切れ込み長さAを10mm以上とすることで、切れ込み部21を形成する刃(例えばトムソン刃)の数を減らせるため、打ち抜きに必要な力を抑えることができ、生産性を高められる。
【0042】
非切れ込み長さCを15mm以下とすることで、内装体2の伸張に伴って出現する立体的なセル構造23の数(密度)を確保できる。このため、内装体2のクッション性を確保できる。また、非切れ込み長さCを3mm以上とすることで、切れ込み部21の破れを防止できる。これにより、内装体2の生産性を高められる。
【0043】
列間隔Bを20mm以下とすることで、内装体2の伸張に伴って出現する立体的なセル構造23の立ち上がり角度を確保できる。このため、内装体2におけるクッション性の発現を効率化できる。また、列間隔Bを2mm以上とすることで、切れ込み部21を形成する刃の間隔が狭くなりすぎることを防止できる。このため、内装体2の生産性を高められる。
【0044】
[3.変形例]
箱体1及び内装体2の各構成は、上記の実施形態で例示したものに限定されない。
箱体1の側面部は、少なくとも三つ設けられればよい。例えば、三角筒状に連設された三つの側面部と三角形状の底面部とにより、有底三角筒状をなす箱体が形成されてもよい。
天面部15及び凸片16は、箱体1から省略されてもよい。また、箱体1は、いわゆるC式の箱のように身とは別体の蓋で開閉される有底筒状のものであってもよい。具体的には、底面部11及び側面部12~14がなすトレー状の本体部とは別体の蓋部が、上記の天面部15及び凸片16に代えて用いられてもよい。
【0045】
内装体2は、底面部11側と開口部4側との双方から物品7を包むという観点から、少なくとも二つ設けられればよい。また、内装体2は、上記の側対面部12に代えて(あるいは加えて)、前面部13や後面部14から延出していてもよい。なお、内装体2の切れ込み部21が延びる所定方向は、内装体2の延出方向と一致していてもよい。このように延出方向に沿って延びる切れ込み部21の設けられた内装体2は、差込片6の差し込みとは独立して伸張させられる。また、内装体2の延出方向の寸法doは、上記の実施形態で例示したものに限定されない。
【0046】
スリット5が形成される位置は、差込片6の突設された内装体2が延出する側面部12~14と対向する位置であればよく、上記の側対面部12の上縁部17に限定されず、内装体2の基端部に設けられてもよい。内装体2の基端部に位置するスリット5に差し込まれた差込片6が内装体2の延在面に沿って折り返されれば、差込片6を外部に露出させることなく内装体2の姿勢を安定化できる。また、差込片6及びスリット5は、包装箱3から省略されてもよい。
【0047】
内装体2には、複数の差込片6が突設されてもよい。また、これらの差込片6にそれぞれ対応する位置にスリット5を設ければ、内装体2の姿勢をより安定化できる。
【符号の説明】
【0048】
1 箱体
2 内装体
2A 第一内装体
2B 第二内装体
3 包装箱
4 開口部
5 スリット
6 差込片
7 物品
11 底面部
12 側対面部(側面部)
12A 第一側対面部
12B 第二側対面部
13 前面部(側面部)
14 後面部(側面部)
15 天面部
16 凸片
17 上縁部
21 切れ込み部
22 片部
23 セル構造
24 非切れ込み部
25 列
A 切れ込み長さ(切れ込み部の所定方向に沿う長さ寸法)
B 列間隔(列どうしの間隔)
C 非切れ込み長さ(非切れ込み部の所定方向に沿う長さ寸法)
D1 横方向
D2 縦方向
da 箱体の長さ方向の寸法
do 内装体の延出方向の寸法
HD 高さ方向
LD 長さ方向
WD 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5