(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240220BHJP
【FI】
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2020124904
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】龍 建儒
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176253(JP,A)
【文献】特開2002-272182(JP,A)
【文献】特開2017-192206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧線と第1のノードとの間の経路に設けられた第1のスイッチング素子と、第2の電圧線と前記第1のノードとの間の経路に設けられた第2のスイッチング素子とを含み、前記第1のスイッチング素子がオン状態になる期間と前記第2のスイッチング素子がオン状態になる期間との間の所定の時間長を有する期間において前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子がオフ状態になる第1のスイッチング素子ペアと、
前記第1の電圧線と第2のノードとの間の経路に設けられた第3のスイッチング素子と、前記第2の電圧線と前記第2のノードとの間の経路に設けられた第4のスイッチング素子とを含み、前記第3のスイッチング素子がオン状態になる期間と前記第4のスイッチング素子がオン状態になる期間との間の前記所定の時間長を有する期間において前記第3のスイッチング素子および前記第4のスイッチング素子がオフ状態になる第2のスイッチング素子ペアと、
前記第1のノードから第1の出力端子までの第1の経路に設けられた第1のACリアクトルと、
前記第2のノードから前記第1の出力端子までの第2の経路に設けられた第2のACリアクトルと、
前記第1のACリアクトルに流れる第1の電流に応じた第1の信号に含まれる高周波成分を除去するとともに位相を調整することにより第2の信号を生成可能な第1のフィルタを有し、前記第2の信号に基づいて、前記所定の時間長に応じた絶対値を有し互いに極性が異なる第1の値および第2の値の間で、前記第2の信号の極性が変化する度に遷移する第1の誤差信号を生成可能な第1の誤差信号生成部と、
前記第2のACリアクトルに流れる第2の電流に応じた第3の信号に含まれる高周波成分を除去するとともに位相を調整することにより第4の信号を生成可能な第2のフィルタを有し、前記第4の信号に基づいて、前記第1の値および前記第2の値の間で、前記第4の信号の極性が変化する度に遷移する第2の誤差信号を生成可能な第2の誤差信号生成部と、
前記第1の誤差信号に基づいて前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の動作を制御可能
であり、前記第2の誤差信号に基づいて前記第3のスイッチング素子および前記第4のスイッチング素子の動作を制御可能なスイッチング制御部と
を備え
、
前記スイッチング制御部は、
前記第1の電流および前記第2の電流の電流指令値を生成し、
前記電流指令値と前記第1の誤差信号とを加算し、その加算結果から前記第1の信号を減算し、その減算結果に基づいて、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子におけるデューティ比を指示する第1のデューティ比信号を生成し、前記第1のデューティ比信号に基づいて前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の動作を制御可能であり、
前記電流指令値と前記第2の誤差信号とを加算し、その加算結果から前記第3の信号を減算し、その減算結果に基づいて、前記第3のスイッチング素子および前記第4のスイッチング素子におけるデューティ比を指示する第2のデューティ比信号を生成し、前記第2のデューティ比信号に基づいて前記第3のスイッチング素子および前記第4のスイッチング素子の動作を制御可能である
電力変換装置。
【請求項2】
前記第1の電圧線と第3のノードとの間の経路に設けられた第5のスイッチング素子と、前記第2の電圧線と前記第3のノードとの間の経路に設けられた第6のスイッチング素子とを含む第3のスイッチング素子ペアと、
前記第1の経路における、前記第1のACリアクトルと前記第1の出力端子との間に接続された第1の端子と、前記第3のノードから第2の出力端子までの第3の経路に接続された第2の端子とを有する容量素子と
をさらに備え、
前記スイッチング制御部は、さらに、前記第5のスイッチング素子および前記第6のスイッチング素子の動作を制御可能である
請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置の前記第1の電圧線および前記第2の電圧線に接続された直流電源と
を備えた
電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を変換する電力変換装置および電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ゼロクロスタイミング付近でのクロスオーバー歪みの改善を図るPWM(Pulse Width Modulation)駆動回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置では、スイッチング素子を駆動する際、入力電源の短絡を防ぐため、しばしば、上アームのスイッチング素子および下アームのスイッチング素子を共にオフ状態にする期間(デッドタイム)が設けられる。しかしながら、このようにデッドタイムを設けることにより、交流出力電流の波形に歪みが生じ、その結果、交流出力電圧の波形にも歪みが生じるおそれがある。よって、電力変換装置では、このような波形歪みを低減することが望まれている。
【0005】
波形歪みを低減することができる電力変換装置および電力変換システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電力変換装置は、第1のスイッチング素子ペアと、第2のスイッチング素子ペアと、第1のACリアクトルと、第2のACリアクトルと、第1の誤差信号生成部と、第2の誤差信号生成部と、スイッチング制御部とを備えている。第1のスイッチング素子ペアは、第1の電圧線と第1のノードとの間の経路に設けられた第1のスイッチング素子と、第2の電圧線と第1のノードとの間の経路に設けられた第2のスイッチング素子とを含む。第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子がオン状態になる期間と第2のスイッチング素子がオン状態になる期間との間の所定の時間長を有する期間においてオフ状態になる。第1のスイッチング素子ペアは、第1の電圧線と第2のノードとの間の経路に設けられた第3のスイッチング素子と、第2の電圧線と第2のノードとの間の経路に設けられた第4のスイッチング素子とを含む。第3のスイッチング素子および第4のスイッチング素子は、第3のスイッチング素子がオン状態になる期間と第4のスイッチング素子がオン状態になる期間との間の所定の時間長を有する期間においてオフ状態になる。第1のACリアクトルは、第1のノードから第1の出力端子までの第1の経路に設けられる。第2のACリアクトルは、第2のノードから第1の出力端子までの第2の経路に設けられる。第1の誤差信号生成部は、第1のACリアクトルに流れる第1の電流に応じた第1の信号に含まれる高周波成分を除去するとともに位相を調整することにより第2の信号を生成可能な第1のフィルタを有し、第2の信号に基づいて、所定の時間長に応じた絶対値を有し互いに極性が異なる第1の値および第2の値の間で、第2の信号の極性が変化する度に遷移する第1の誤差信号を生成可能に構成される。第2の誤差信号生成部は、第2のACリアクトルに流れる第2の電流に応じた第3の信号に含まれる高周波成分を除去するとともに位相を調整することにより第5の信号を生成可能な第2のフィルタを有し、第4の信号に基づいて、第1の値および第2の値の間で、第4の信号の極性が変化する度に遷移する第2の誤差信号を生成可能に構成される。スイッチング制御部は、第1の誤差信号に基づいて第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の動作を制御可能であり、第2の誤差信号に基づいて第3のスイッチング素子および第4のスイッチング素子の動作を制御可能に構成される。上記スイッチング制御部は、第1の電流および第2の電流の電流指令値を生成し、電流指令値と第1の誤差信号とを加算し、その加算結果から第1の信号を減算し、その減算結果に基づいて、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子におけるデューティ比を指示する第1のデューティ比信号を生成し、第1のデューティ比信号に基づいて第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の動作を制御可能であり、電流指令値と第2の誤差信号とを加算し、その加算結果から第3の信号を減算し、その減算結果に基づいて、第3のスイッチング素子および第4のスイッチング素子におけるデューティ比を指示する第2のデューティ比信号を生成し、第2のデューティ比信号に基づいて第3のスイッチング素子および第4のスイッチング素子の動作を制御可能である。
【0007】
本発明の電力変換システムは、上記電力変換装置と、直流電源とを備えている。直流電源は、電力変換装置の第1の電圧線および第2の電圧線に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電力変換装置および電力変換システムによれば、第1のACリアクトルに流れる第1の電流に応じた第1の信号に含まれる高周波成分を除去するとともに位相を調整することにより第2の信号を生成し、第2の信号に基づいて、所定の時間長に応じた絶対値を有し互いに極性が異なる第1の値および第2の値の間で、第2の信号の極性が変化する度に遷移する第1の誤差信号を生成し、第1の誤差信号に基づいて第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の動作を制御するようにしたので、波形歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【
図2】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図3】
図1に示した制御部におけるサンプリング動作の一例を表すタイミング波形図である。
【
図4】
図1に示した制御部の一構成例を表すブロック図である。
【
図5】
図4に示した誤差電圧生成部の一構成例を表すブロック図である。
【
図6】
図5に示した誤差電圧の一例を表す波形図である。
【
図7】
図4に示したゲート信号生成部の一構成例を表すブロック図である。
【
図8】
図7に示したゲート信号生成部の一動作例を表す波形図である。
【
図10】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図11】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表す他のタイミング波形図である。
【
図12】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表す他のタイミング波形図である。
【
図13A】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すスイッチングパターンの一例を表す説明図である。
【
図13B】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すスイッチングパターンの一例を表す説明図である。
【
図13C】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すスイッチングパターンの一例を表す説明図である。
【
図13D】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すスイッチングパターンの一例を表す説明図である。
【
図13E】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すスイッチングパターンの一例を表す説明図である。
【
図13F】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表すスイッチングパターンの一例を表す説明図である。
【
図14】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表す他のタイミング波形図である。
【
図15】比較例に係る電力変換装置の一動作例を表す他のタイミング波形図である。
【
図16】
図1に示した電力変換装置の一特性例を表す表である。
【
図17】
図1に示した電力変換装置の一動作例を表す他のタイミング波形図である。
【
図18】変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【
図19】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【
図20】
図19に示した制御部の一構成例を表すブロック図である。
【
図21】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【
図22】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【
図23】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る電力変換装置(電力変換装置1)の一構成例を表すものである。この電力変換装置1は、インターリーブ方式のトーテムポールインバータである。電力変換装置1は、端子T11,T12と、端子T21,T22とを備えている。端子T11,T12には、直流電源PDCが接続されている。直流電源PDCは、例えば直流電源装置であってもよい。この直流電源装置は、例えば、バッテリおよびDC/DCコンバータを有し、DC/DCコンバータが、このバッテリから供給された直流電力を変換し、変換された直流電力を電力変換装置1に供給してもよい。端子T21,T22は、負荷装置LOADに接続されている。
【0012】
電力変換装置1は、電圧検出部21と、容量素子22と、スイッチング素子SW1~SW6と、電流検出部23A,23Bと、ACリアクトル24A,24Bと、容量素子25と、EMI(Electro Magnetic Interference)フィルタ26と、電流検出部27と、電圧検出部28と、スイッチ29U,29Wと、制御部30とを備えている。
【0013】
電圧検出部21は、直流バス電圧Vdcを検出するように構成される。電圧検出部21の一端は端子T11に導かれた電圧線L1に接続され、他端は端子T12に導かれた基準電圧線L2に接続される。電圧検出部21は、基準電圧線L2での電圧を基準とした電圧線L1での電圧を直流バス電圧Vdcとして検出する。そして、電圧検出部21は、検出した直流バス電圧Vdcについての情報を制御部30に供給するようになっている。
【0014】
容量素子22の一端は電圧線L1に接続され、他端は基準電圧線L2に接続される。容量素子22は、キャパシタンスCdcを有する。
【0015】
スイッチング素子SW1~SW6は、ゲート信号S1~S6に基づいてそれぞれスイッチング動作を行うように構成される。スイッチング素子SW1~SW6は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いて構成される。スイッチング素子SW1~SW6のそれぞれは、還流ダイオードを有している。スイッチング素子SW1の還流ダイオードのアノードは、スイッチング素子SW1のエミッタに接続され、カソードは、スイッチング素子SW1のコレクタに接続される。スイッチング素子SW2~SW6についても同様である。
【0016】
スイッチング素子SW1は、電圧線L1とノードN1との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN1に接続するように構成される。スイッチング素子SW1のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S1が供給され、エミッタはノードN1に接続される。スイッチング素子SW2は、基準電圧線L2とノードN1との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN1に接続するように構成される。スイッチング素子SW2のコレクタはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号S2が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。ノードN1は、スイッチング素子SW1のエミッタとスイッチング素子SW2のコレクタとの接続点である。
【0017】
スイッチング素子SW3は、電圧線L1とノードN2との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN2に接続するように構成される。スイッチング素子SW3のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S3が供給され、エミッタはノードN2に接続される。スイッチング素子SW4は、基準電圧線L2とノードN2との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN2に接続するように構成される。スイッチング素子SW4のコレクタはノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号S4が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。ノードN2は、スイッチング素子SW3のエミッタとスイッチング素子SW4のコレクタとの接続点である。
【0018】
スイッチング素子SW5は、電圧線L1とノードN3との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN3に接続するように構成される。スイッチング素子SW5のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S5が供給され、エミッタはノードN3に接続される。スイッチング素子SW6は、基準電圧線L2とノードN3との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN3に接続するように構成される。スイッチング素子SW6のコレクタはノードN3に接続され、ゲートにはゲート信号S6が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。ノードN3は、スイッチング素子SW5のエミッタとスイッチング素子SW6のコレクタとの接続点である。
【0019】
電流検出部23Aは、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24AにおいてノードN1から電圧線ULに向かって流れる電流i_inv1を検出するように構成される。電流検出部23Aの一端はノードN1に接続され、他端はACリアクトル24Aの一端に接続される。電流検出部23Aは、検出した電流i_inv1についての情報を制御部30に供給するようになっている。
【0020】
ACリアクトル24Aは、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24Aの一端は電流検出部23Aの他端に接続され、他端は電圧線ULに接続される。ACリアクトル24Aは、インダクタンスLinv1を有する。ACリアクトル24Aおよび容量素子25は、ローパスフィルタを構成する。
【0021】
電流検出部23Bは、ノードN2から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24BにおいてノードN2から電圧線ULに向かって流れる電流i_inv2を検出するように構成される。電流検出部23Bの一端はノードN2に接続され、他端はACリアクトル24Bの一端に接続される。電流検出部23Bは、検出した電流i_inv2についての情報を制御部30に供給するようになっている。
【0022】
ACリアクトル24Bは、ノードN2から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24Bの一端は電流検出部23Bの他端に接続され、他端は電圧線ULに接続される。ACリアクトル24Bは、インダクタンスLinv2を有する。インダクタンスLinv2は、例えばインダクタンスLinv1と同じにすることができる。ACリアクトル24Bおよび容量素子25は、ローパスフィルタを構成する。
【0023】
容量素子25の一端は電圧線ULに接続され、他端はノードN3に導かれた電圧線WLに接続される。容量素子25は、キャパシタンスCinvを有する。
【0024】
EMIフィルタ26は、電圧線UL,WLに設けられ、電磁ノイズを除去するように構成される。
【0025】
電流検出部27は、電圧線ULに設けられ、電力変換装置1の負荷電流i_ldを検出するように構成される。電流検出部27の一端はEMIフィルタ26に接続され、他端は電圧検出部28およびスイッチ29Uに接続される。電流検出部27は、検出した負荷電流i_ldについての情報を制御部30に供給するようになっている。
【0026】
電圧検出部28は、電力変換装置1から出力される交流出力電圧e_invを検出するように構成される。電圧検出部28の一端は電圧線ULに接続され、他端は電圧線WLに接続される。電圧検出部28は、電圧線WLでの電圧を基準とした電圧線ULでの電圧を交流出力電圧e_invとして検出する。そして、電圧検出部28は、検出した交流出力電圧e_invについての情報を制御部30に供給するようになっている。
【0027】
スイッチ29Uは、オン状態になることにより、電圧線ULを負荷装置LOADに接続するように構成される。スイッチ29Uの一端は電圧線ULに接続され、他端は端子T21に接続される。スイッチ29Uは、スイッチ制御信号Ssdに基づいてオンオフするようになっている。
【0028】
スイッチ29Wは、オン状態になることにより、電圧線WLを負荷装置LOADに接続するように構成される。スイッチ29Wの一端は電圧線WLに接続され、他端は端子T22に接続される。スイッチ29Wは、スイッチ制御信号Ssdに基づいてオンオフするようになっている。
【0029】
端子T21,T22は、負荷装置LOADに接続される。負荷装置LOADは、一端が端子T21に接続され他端が端子T22に接続された、インピーダンスZloadを有する負荷を含む。
【0030】
制御部30は、電力変換装置1の動作を制御するように構成される。制御部30は、例えば、1または複数のマイクロコントローラを用いて構成される。制御部30は、交流出力電圧e_inv、電流i_inv1,i_inv2、負荷電流i_ld、および直流バス電圧Vdcに基づいて、演算処理を行うことにより、ゲート信号S1~S6を生成する。これにより、制御部30は、交流出力電圧e_invの電圧振幅が所定の振幅になるように電圧振幅一定制御を行う。
【0031】
図2は、電力変換装置1におけるインターリーブ動作の一例を表すものであり、(A)はデューティ比dを示し、(B)はキャリア信号CR1の波形を示し、(C)はキャリア信号CR2の波形を示し、(D)~(I)はゲート信号S1~S6の波形を示す。この例では、ゲート信号S1が高レベルである場合にはスイッチング素子SW1はオン状態になり、ゲート信号S1が低レベルである場合にはスイッチング素子SW1はオフ状態になる。ゲート信号S2~S6についても同様である。なお、この
図2では、説明の便宜上、周期Tsの期間を長くしているが、例えば、周期Tsは50μsec.(=1/20kHz)に設定することができ、周期Tsdは16.7msec.(=1/60Hz)に設定することができる。
【0032】
制御部30は、後述するようにデューティ比dおよびキャリア信号CR1,CR2を生成する(
図2(A)~(C))。キャリア信号CR1の位相と、キャリア信号CR2の位相とは、互いに180度ずれている。そして、制御部30は、デューティ比dおよびキャリア信号CR1に基づいてゲート信号S1,S2を生成し(
図2(D),(E))、デューティ比dおよびキャリア信号CR2に基づいてゲート信号S3,S4を生成する(
図2(F)、(G))。また、制御部30は、周期Tsdのゲート信号S5,S6を生成する(
図2(H),(I))。スイッチング素子SW1~SW6は、これらのゲート信号S1~S6に基づいてそれぞれオンオフする。ACリアクトル24Aおよび容量素子25からなるローパスフィルタは、スイッチング素子SW1,SW2,SW5,SW6のスイッチング動作により生成された信号に含まれる高周波数成分を除去する。同様に、ACリアクトル24Bおよび容量素子25からなるローパスフィルタは、スイッチング素子SW3,SW4,SW5,SW6のスイッチング動作により生成された信号に含まれる高周波数成分を除去する。このようにして、電力変換装置1は、インターリーブ動作を行うことにより、交流出力電圧e_invを生成するようになっている。
【0033】
図示していないが、ゲート信号S1が高レベルになる期間と、ゲート信号S2が高レベルになる期間との間には、ゲート信号S1,S2がともに低レベルになる、所定の時間長(デッドタイムTd)を有する期間が設けられている。このデッドタイムTdは、電圧線L1および基準電圧線L2が電気的に短絡するのを回避するために設けられる。ゲート信号S3,S4についても同様であり、ゲート信号S5,S6についても同様である。このようにデッドタイムTdを設けることにより、出力電流波形に歪みが生じ、その結果、出力電圧波形にも歪みが生じるおそれがある。そして、この出力電圧波形の歪みにより、出力電圧の実効値が低下してしまうおそれがある。そこで、電力変換装置1では、デッドタイム補償を行うことにより、波形歪みや、出力電圧の実効値の低下を抑制するようになっている。
【0034】
制御部30は、交流出力電圧e_inv、電流i_inv1,i_inv2、負荷電流i_ld、および直流バス電圧Vdcを、周期Ts(例えば50μsec.(=1/20kHz))ごとにサンプリングするAD変換回路を有している。例えば、制御部30は、
図3(A),(B)に示したように、キャリア信号CR1が“0”になるタイミングで、電流検出部23Aにより検出された電流I_inv1をサンプリングしてAD変換を行うことにより、電流I_inv1を示すデジタル値を求める。また、制御部30は、
図3(A),(C)に示したように、キャリア信号CR2が“0”になるタイミングで、電流検出部23Bにより検出された電流I_inv2をサンプリングしてAD変換を行うことにより、電流I_inv2を示すデジタル値を求める。交流出力電圧e_inv、負荷電流i_ld、および直流バス電圧Vdcについても同様である。そして、制御部30は、これらのデジタル値に基づいて演算処理を行う。以下、AD変換されたデジタル値を表すものとして、交流出力電圧e_inv、電流i_inv1,i_inv2、負荷電流i_ld、および直流バス電圧Vdcを適宜用いる。
【0035】
なお、
図3では、キャリア信号CR1,CR2が“0”になるタイミングで、電流I_inv1,I_inv2をそれぞれサンプリングしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、キャリア信号CR1,CR2が“1”になるタイミングで、電流I_inv1,I_inv2をそれぞれサンプリングしてもよい。また、例えば、キャリア信号CR1が“0”になるタイミングで電流Iinv1をサンプリングし、キャリア信号CR2が“1”になるタイミングで電流Iinv2をサンプリングしてもよい。また、例えば、キャリア信号CR1が“1”になるタイミングで電流Iinv1をサンプリングし、キャリア信号CR2が“0”になるタイミングで電流Iinv2をサンプリングしてもよい。
【0036】
また、
図3では、キャリア信号CR1の周期Tsに対応する期間において電流Iinv1を1回サンプリングするとともに、キャリア信号CR2の周期Tsに対応する期間において電流Iinv2を1回サンプリングしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、キャリア信号CR1の周期Tsに対応する期間において電流Iinv1を複数回サンプリングしてもよい。そして、この複数回のサンプリング結果の平均値を算出してもよい。同様に、例えば、キャリア信号CR2の周期Tsに対応する期間において電流Iinv2を複数回サンプリングしてもよい。そして、この複数回のサンプリング結果の平均値を算出してもよい。
【0037】
図4は、制御部30の一構成例を表すものである。制御部30は、指令値生成部31と、電圧制御部32と、誤差電圧生成部40A,40Bと、乗算部33A,33Bと、電流制御部50と、キャリア信号生成部34と、ゲート信号生成部60とを有している。
【0038】
指令値生成部31は、交流出力電圧e_invの指令値e_inv*を生成するように構成される。指令値生成部31は、次式に基づいて、指令値e_inv*を生成する。
e_inv* = Einv*・Sin(θinv)
この式において、Einv*は振幅値の指令値であり、θinvは位相角度である。
【0039】
電圧制御部32は、交流出力電圧e_invの指令値e_inv*、交流出力電圧e_inv、および負荷電流i_ldに基づいて、交流出力電圧e_invが交流出力電圧e_invの指令値e_inv*になるように交流出力電圧e_invを制御することにより、電流i_inv1,i_inv2の指令値i_inv*を生成するように構成される。
【0040】
誤差電圧生成部40Aは、電流i_inv1および直流バス電圧Vdcに基づいて、スイッチング素子SW1,SW2に係るデッドタイム補償を行うための誤差電圧e_td1を生成するように構成される。同様に、誤差電圧生成部40Bは、電流i_inv2および直流バス電圧Vdcに基づいて、スイッチング素子SW3,SW4に係るデッドタイム補償を行うための誤差電圧e_td2を生成するように構成される。以下に、誤差電圧生成部40Aを例に挙げて詳細に説明する。なお、誤差電圧生成部40Bについても同様である。
【0041】
図5は、誤差電圧生成部40Aの一構成例を表すものである。誤差電圧生成部40Aは、極性検出部41と、ゲイン乗算部45とを有している。
【0042】
極性検出部41は、電流i_inv1の極性を検出するように構成される。言い換えれば、極性検出部41は、ACリアクトル24A(
図1)に流れる電流i_inv1の向きが、ノードN1から電圧線ULに向かう方向、および電圧線ULからノードN1に向かう方向のどちらであるかを検出するようになっている。極性検出部41は、ローパスフィルタ(LPF)42と、オールパスフィルタ(APF)43と、比較部44とを有している。
【0043】
ローパスフィルタ42は、電流i_inv1に含まれる高周波数成分を除去するように構成される。ローパスフィルタ42は、カットオフ周波数fcについての情報に基づいて、フィルタのカットオフ周波数を設定するようになっている。
【0044】
オールパスフィルタ43は、ローパスフィルタ42から供給された信号の位相を進めることにより、ローパスフィルタ42により遅れた位相を元に戻す処理を行うように構成される。オールパスフィルタ43には、ローパスフィルタ42のカットオフ周波数fcについての情報に基づいて、ローパスフィルタ42により遅れた位相を元に戻す処理を行う。そして、オールパスフィルタ43は、この処理を行うことにより信号i_dir1を生成するようになっている。
【0045】
比較部44は、信号i_dir1と信号値“0”とを比較することにより、極性信号I_dir1を生成するように構成される。比較部44は、次式に基づいて、極性信号I_dir1を生成する。
i_dir1≧0 → I_dir1=1
i_dir1<0 → I_dir1=-1
このように、極性信号I_dir1は、“1”および“-1”の間で遷移する信号である。“1”は、ACリアクトル24A(
図1)に流れる電流の向きが、ノードN1から電圧線ULに向かう方向であることを示し、“-1”は、ACリアクトル24A(
図1)に流れる電流の向きが、電圧線ULからノードN1に向かう方向であることを示す。
【0046】
この構成により、極性検出部41では、ローパスフィルタ42により、電流i_inv1に含まれるスイッチングノイズの成分を除去することができる。また、極性検出部41では、ローパスフィルタ42に入力される電流i_inv1の位相と、オールパスフィルタ43から出力される信号i_dir1の位相とを一致させることができる。よって、極性検出部41では、電流i_inv1の極性の変化を精度よく検出することにより極性信号I_dir1を生成することができるようになっている。
【0047】
ゲイン乗算部45は、極性検出部41により生成された極性信号I_dir1にゲインを乗算することにより誤差電圧e_td1を生成するように構成される。ゲイン乗算部45は、次式に基づいて、誤差電圧e_td1を生成する。
e_td1 = a・fs・Vdc・Td・I_dir1
すなわち、“a・fs・Vdc・Td”がゲインである。ここで、aは“0”より大きく“1”より小さい係数である。この係数aは、例えば、負荷電流i_ldが小さい場合には小さい値にし、負荷電流i_ldが大きい場合には大きい値にすることが望ましい。よって、係数aは、出力電力や出力電流の振幅などに応じて変化させることが望ましい。
【0048】
このようにして、誤差電圧生成部40Aは、電流i_inv1の極性が変化する度に遷移し、スイッチング素子SW1,SW2におけるデッドタイムTdに応じた振幅を有する誤差電圧e_td1を生成する。同様に、誤差電圧生成部40Bは、電流i_inv2の極性が変化する度に遷移し、スイッチング素子SW3,SW4におけるデッドタイムTdに応じた振幅を有する誤差電圧e_td2を生成する。なお、スイッチング素子SW5,SW6は、スイッチング周波数が交流出力電圧の周波数と同じであり、スイッチングの頻度が低いので、スイッチング素子SW5,SW6におけるデッドタイムTdに応じた振幅を有する誤差電圧は、スイッチング素子SW1,SW2に係る誤差電圧e_td1、およびスイッチング素子SW3,SW4に係る誤差電圧e_td2に比べて十分に小さい。よって、この例では、スイッチング素子SW5,SW6に係るデッドタイム補償は行っていない。
【0049】
図6は、誤差電圧生成部40A,40Bの一動作例を表すものであり、(A)は信号i_dir1,i_dir2の波形を示し、(B)は誤差電圧e_td1の波形を示し、(C)は誤差電圧e_td2の波形を示す。
【0050】
制御部30は、
図3(A),(B)に示したように、キャリア信号CR1が“0”になるタイミングで、電流検出部23Aにより検出された電流I_inv1をサンプリングしてAD変換を行うことにより、電流i_inv1を示すデジタル値を求める。そして、誤差電圧生成部40Aのローパスフィルタ42およびオールパスフィルタ43は、AD変換された電流i_inv1に基づいてフィルタ処理を行うことにより信号i_dir1を生成する(
図6(A))。
【0051】
同様に、制御部30は、
図3(A),(C)に示したように、キャリア信号CR2が“0”になるタイミングで、電流検出部23Bにより検出された電流i_inv2をサンプリングしてAD変換を行うことにより、電流i_inv2を示すデジタル値を求める。そして、誤差電圧生成部40Bのローパスフィルタ42およびオールパスフィルタ43は、AD変換された電流i_inv2に基づいてフィルタ処理を行うことにより信号i_dir2を生成する(
図6(B))。
【0052】
図3(B),(C)に示したように、電流i_inv1のサンプリングタイミングと、電流i_inv2のサンプリングタイミングとは、交互に生じる。よって、そのサンプリングタイミングのずれに応じて、AD変換された後の電流I_inv1,Iinv2は互いにずれるので、
図6(A)に示したように、電流I_inv1と同位相の信号i_dir1と、電流I_inv2の同位相の信号i_dir2とは互いにずれる。
【0053】
タイミングt1において、信号i_dir1が“0”を上回ると、誤差電圧生成部40Aは、誤差電圧e_td1を立ち上げる(
図6(A),(B))。そして、タイミングt2において、信号i_dir2が“0”を上回ると、誤差電圧生成部40Bは、誤差電圧e_td2を立ち上げる(
図6(A),(C))。誤差電圧e_td1の立ち上がりタイミングと、誤差電圧e_td2の立ち上がりタイミングのずれは、上述したサンプリングタイミングのずれに対応し、そのずれの時間長は、
図3に示したように、Ts/2である。
【0054】
また、タイミングt3において、信号i_dir1が“0”を下回ると、誤差電圧生成部40Aは、誤差電圧e_td1を立ち下げる(
図6(A),(B))。そして、タイミングt4において、信号i_dir2が“0”を下回ると、誤差電圧生成部40Bは、誤差電圧e_td2を立ち下げる(
図6(A),(C))。この誤差電圧e_td1の立ち下がりタイミングと、誤差電圧e_td2の立ち下がりタイミングのずれは、上述したサンプリングタイミングのずれに対応し、そのずれの時間長はTs/2である。
【0055】
このようにして、誤差電圧生成部40Aは、スイッチング素子SW1,SW2のデッドタイムTdに起因する交流出力信号の波形歪みや交流出力電圧e_invの実効値の低下を補償するための誤差電圧e_td1を生成する。同様に、誤差電圧生成部40Bは、スイッチング素子SW3,SW4のデッドタイムTdに起因する交流出力信号の波形歪みや交流出力電圧e_invの実効値の低下を補償するための誤差電圧e_td2を生成する。
【0056】
乗算部33A(
図4)は、誤差電圧e_td1と係数kとを乗算するように構成される。乗算部33Bは、誤差電圧e_td2と係数kとを乗算するように構成される。係数kは、誤差電圧を誤差電流に変換するための係数である。乗算部33Aは、誤差電圧e_td1と係数kとを乗算することにより誤差電圧e_td1を誤差電流に変換し、乗算部33Bは、誤差電圧e_td2と係数kとを乗算することにより誤差電圧e_td2を誤差電流に変換するようになっている。
【0057】
電流制御部50は、電流i_inv1,i_inv2の指令値i_inv*、電流i_inv1,i_inv2、交流出力電圧e_inv、乗算部33Aの乗算結果(誤差電圧e_td1×係数k)、乗算部33Bの乗算結果(誤差電圧e_td2×係数k)、および直流バス電圧Vdcに基づいて、電流i_inv1を制御するための信号d_inv1を生成するとともに、電流i_inv2を制御するための信号d_inv2を生成するように構成される。電流制御部50は、加算部51A,51Bと、演算部52A,52Bと、加算部53A,53Bと、除算部54A,54Bとを有している。加算部51A、演算部52A、加算部53A、および除算部54Aは、スイッチング素子SW1,SW2についての処理を行い、加算部51B、演算部52B、加算部53B、および除算部54Bは、スイッチング素子SW3,SW4についての処理を行う。
【0058】
加算部51Aは、電流i_inv1の指令値i_inv*と乗算部33Aの乗算結果(誤差電圧e_td1×係数k)とを加算し、その加算結果から電流i_inv1を減算するように構成される。すなわち、電流制御部50は、電流i_inv1に基づいてフィードバック制御を行い、誤差電圧e_td1に基づいてフィードフォワード制御を行う。演算部52Aは、加算部51Aの演算結果に基づいて、所定の伝達関数Ginv(s)を用いて演算を行うように構成される。加算部53Aは、演算部52Aの演算結果と交流出力電圧e_invとを加算するように構成される。除算部54Aは、加算部53Aの加算結果を直流バス電圧Vdcにより除算することにより信号d_inv1を生成するように構成される。
【0059】
加算部51Bは、電流i_inv2の指令値i_inv*と乗算部33Bの乗算結果(誤差電圧e_td2×係数k)とを加算し、その加算結果から電流i_inv2を減算するように構成される。すなわち、電流制御部50は、電流i_inv2に基づいてフィードバック制御を行い、誤差電圧e_td2に基づいてフィードフォワード制御を行う。演算部52Bは、加算部51Bの演算結果に基づいて、所定の伝達関数Ginv(s)を用いて演算を行うように構成される。加算部53Bは、演算部52Bの演算結果と交流出力電圧e_invとを加算するように構成される。除算部54Bは、加算部53Bの加算結果を直流バス電圧Vdcにより除算することにより信号d_inv2を生成するように構成される。
【0060】
この構成により、電流制御部50は、電流i_inv1の指令値i_inv*と、誤差電圧e_td1に応じた誤差信号(誤差電圧e_td1×係数k)とを加算することにより指令値を補正し、電流i_inv1が、補正された指令値と同じになるように電流i_inv1を制御するとともに、電流i_inv2の指令値i_inv*と、誤差電圧e_td2に応じた誤差信号(誤差電圧e_td2×係数k)とを加算することにより指令値を補正し、電流i_inv2が、補正された指令値と同じになるように電流i_inv2を制御する。その際、電流制御部50は、電流i_inv1,i_inv2に基づいてフィードバック制御を行い、誤差電圧e_td1,e_td2に基づいてフィードフォワード制御を行う。電流制御部50では、加算部51Aが誤差電圧e_td1に応じた誤差信号(誤差電圧e_td1×係数k)を加算するとともに、加算部51Bが誤差電圧e_td2に応じた誤差信号(誤差電圧e_td2×係数k)を加算するようにしたので、フィードバック制御とフィードフォワード制御とが干渉するおそれを低減することができる。
【0061】
すなわち、例えば、加算部51Aが誤差電圧e_td1に応じた誤差信号を加算する代わりに、後段の加算部53Aが誤差電圧e_td1を加算し、加算部51Bが誤差電圧e_td2に応じた誤差信号(誤差電圧e_td2×係数k)を加算する代わりに、後段の加算部53Bが誤差電圧e_td2を加算するように構成した場合には、フィードバック制御とフィードフォワード制御とが干渉するおそれがある。この場合には、
図6に示した誤差電圧e_td1と誤差電圧e_td2の位相差を実現しにくくなり、その結果、後述するゼロクロスタイミング付近における転流が生じにくくなるおそれがある。一方、電流制御部50では、加算部51Aが誤差電圧e_td1に応じた誤差信号を加算するとともに、加算部51Bが誤差電圧e_td2に応じた誤差信号を加算するようにしたので、フィードバック制御とフィードフォワード制御とが干渉するおそれを低減することができる。その結果、電力変換装置1では、出力電力が変化した場合における電流制御の追従性を改善することができ、
図6に示した誤差電圧e_td1と誤差電圧e_td2の位相差を実現しやすくすることができる。
【0062】
キャリア信号生成部34は、
図2に示したキャリア信号CR1,CR2を生成するように構成される。
【0063】
ゲート信号生成部60は、信号d_inv1,d_inv2およびキャリア信号CR1,CR2に基づいて、ゲート信号S1~S6を生成するように構成される。
【0064】
図7は、ゲート信号生成部60の一構成例を表すものである。ゲート信号生成部60は、比較部61と、加算部62,63と、PWM(Pulse Width Modulation)信号生成部64,65と、信号生成部66とを有している。
【0065】
比較部61は、Sin(θinv)の値と“0”とを比較することにより信号d_cを生成するように構成される。比較部61は、Sin(θinv)の値が“0”以上である場合(Sin(θinv)≧0)に信号d_cを“0”にし、Sin(θinv)の値が“0”未満である場合(Sin(θinv)<0)に信号d_cを“1”にする。このようにして、比較部61は、Sin(θinv)のゼロクロスタイミングで、“1”および“0”の間で遷移する信号d_cを生成するようになっている。
【0066】
加算部62は、電流制御部50(
図4)から供給された信号d_inv1と信号d_cとを加算することによりデューティ比d_aを生成するように構成される。このデューティ比d_aは、
図2に示したデューティ比dに対応する。
【0067】
加算部63は、電流制御部50から供給された信号d_inv2と信号d_cとを加算することによりデューティ比d_bを生成するように構成される。このデューティ比d_bは、
図2に示したデューティ比dに対応する。
【0068】
PWM信号生成部64は、デューティ比d_aおよびキャリア信号CR1に基づいて、
図2(D),(E)に示したゲート信号S1,S2を生成するように構成される。PWM信号生成部64は、ゲート信号S1,S2を生成する際、デッドタイムTdについての情報に基づいて、ゲート信号S1が高レベルになる期間と、ゲート信号S2が高レベルになる期間との間に、ゲート信号S1,S2がともに低レベルになる、所定の時間(デッドタイムTd)を有する期間を設けるようになっている。
【0069】
PWM信号生成部65は、デューティ比d_bおよびキャリア信号CR2に基づいて、
図2(F),(G)に示したゲート信号S3,S4を生成するように構成される。PWM信号生成部65は、ゲート信号S3,S4を生成する際、デッドタイムTdについての情報に基づいて、ゲート信号S3が高レベルになる期間と、ゲート信号S4が高レベルになる期間との間に、ゲート信号S3,S4がともに低レベルになる、所定の時間(デッドタイムTd)を有する期間を設けるようになっている。
【0070】
信号生成部66は、信号d_cに基づいて、
図2(H),(I)に示したゲート信号S5,S6を生成するように構成される。信号生成部66は、ゲート信号S5,S6を生成する際、デッドタイムTdについての情報に基づいて、ゲート信号S5が高レベルになる期間と、ゲート信号S6が高レベルになる期間との間に、ゲート信号S5,S6がともに低レベルになる、所定の時間(デッドタイムTd)を有する期間を設けるようになっている。
【0071】
図8は、ゲート信号生成部60の一動作例を表すものであり、(A)は信号d_inv1,d_inv2の波形を示し、(B)は信号d_cの波形を示し、(C)はデューティ比d_a,d_bの波形を示す。
図8(A)において、信号d_inv1,d_inv2の波形は、
図6(A)に示した信号i_dir1,i_dir2と同様に互いにややずれているが、説明の便宜上、1つの波形で描いている。
図8(C)に示したデューティ比d_a,d_bの波形についても同様である。
【0072】
比較部61は、Sin(θinv)の値と“0”とを比較することにより信号d_cを生成する(
図8(B))。加算部62は、電流制御部50から供給された信号d_inv1と信号d_cとを加算することによりデューティ比d_aを生成し、加算部63は、電流制御部50から供給された信号d_inv2と信号d_cとを加算することによりデューティ比d_bを生成する(
図8(C))。PWM信号生成部64は、
図2に示したように、デューティ比d_a(
図2(A)におけるデューティ比d)およびキャリア信号CR1(
図2(B))に基づいて、ゲート信号S1,S2(
図2(D),(E))を生成する。PWM信号生成部65は、
図2に示したように、デューティ比d_b(
図2(A)におけるデューティ比d)およびキャリア信号CR2(
図2(C))に基づいて、ゲート信号S3,S4(
図2(F),(G))を生成する。信号生成部66は、信号d_cに基づいて、ゲート信号S5,S6(
図2(H),(I))を生成するようになっている。
【0073】
ここで、スイッチング素子SW1~SW6は、本開示における「第1~第6のスイッチング素子」の一具体例にそれぞれ対応する。電源線L1は、本開示における「第1の電源線」の一具体例に対応し、基準電源線L2は、本開示における「第2の電源線」の一具体例に対応する。ノードN1~N3は、本開示における「第1~第3のノード」の一具体例にそれぞれ対応する。ACリアクトル24Aは、本開示における「第1のACリアクトル」の一具体例に対応し、ACリアクトル24Bは、本開示における「第2のACリアクトル」の一具体例に対応する。端子T21は、本開示における「第1の出力端子」の一具体例に対応し、端子T22は、本開示における「第2の出力端子」の一具体例に対応する。誤差電圧生成部40Aおよび乗算部33Aは、本開示における「第1の誤差信号生成部」の一具体例に対応する。乗算部33Aの出力信号(誤差電圧e_td1×係数k)は、本開示における「第1の誤差信号」の一具体例に対応する。誤差電圧生成部40Aのローパスフィルタ42およびオールパスフィルタ43は、本開示における「第1のフィルタ」の一具体例に対応する。誤差電圧生成部40Bおよび乗算部33Bは、本開示における「第2の誤差信号生成部」の一具体例に対応する。乗算部33Bの出力信号(誤差電圧e_td2×係数k)は、本開示における「第2の誤差信号」の一具体例に対応する。誤差電圧生成部40Bのローパスフィルタ42およびオールパスフィルタ43は、本開示における「第2のフィルタ」の一具体例に対応する。電圧制御部32、電流制御部50、およびゲート信号生成部60は、本開示における「スイッチング制御部」の一具体例に対応する。指令値i_inv*は、本開示における「電流指令値」の一具体例に対応する。デューティ比d_aは、本開示における「第1のデューティ比信号」の一具体例に対応する。デューティ比d_bは、本開示における「第2のデューティ比信号」の一具体例に対応する。容量素子25は、本開示における「容量素子」の一具体例に対応する。
【0074】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の電力変換装置1の動作および作用について説明する。
【0075】
(全体動作概要)
まず、
図1,2を参照して、電力変換装置1の全体動作概要を説明する。自立運転を行う際、電力変換装置1は、スイッチ29U,29Wをオン状態にする。これにより、負荷装置LOADが電力変換装置1に接続される。制御部30は、交流出力電圧e_inv、電流i_inv1,i_inv2、負荷電流i_ld、および直流バス電圧Vdcに基づいて、演算処理を行うことにより、ゲート信号S1~S6を生成する。スイッチング素子SW1~SW6は、ゲート信号S1~S6に基づいてそれぞれオンオフする。制御部30は、交流出力電圧e_invの電圧振幅が所定の振幅になるように電圧振幅一定制御を行う。
【0076】
(詳細動作)
制御部30は、交流出力電圧e_inv、電流i_inv1,i_inv2、負荷電流i_ld、および直流バス電圧Vdcを、周期Ts(例えば50μsec.(=1/20kHz))ごとにサンプリングしてAD変換を行うことにより、交流出力電圧e_inv、電流i_inv1,i_inv2、負荷電流i_ld、および直流バス電圧Vdcを示すデジタル値をそれぞれ求める。そして、制御部30は、これらのデジタル値に基づいて演算処理を行う。
【0077】
指令値生成部31(
図4)は、交流出力電圧e_invの指令値e_inv*を生成する。電圧制御部32は、交流出力電圧e_invの指令値e_inv*、交流出力電圧e_inv、および負荷電流i_ldに基づいて、交流出力電圧e_invが交流出力電圧e_invの指令値e_inv*になるように交流出力電圧e_invを制御することにより、電流i_inv1,i_inv2の指令値i_inv*を生成する。
【0078】
誤差電圧生成部40Aは、電流i_inv1および直流バス電圧Vdcに基づいて、スイッチング素子SW1,SW2に係るデッドタイム補償を行うための誤差電圧e_td1を生成する。具体的には、誤差電圧生成部40Aにおいて、ローパスフィルタ42は、電流i_inv1に含まれる高周波数成分を除去する。オールパスフィルタ43は、ローパスフィルタ42から供給された信号の位相を進めることにより、ローパスフィルタ42により遅れた位相を元に戻す処理を行う。比較部44は、オールパスフィルタ43により生成された信号i_dir1と信号値“0”とを比較することにより、極性信号I_dir1を生成する。ゲイン乗算部45は、極性信号I_dir1にゲイン(“a・fs・Vdc・Td”)を乗算することにより誤差電圧e_td1を生成する。このようにして、誤差電圧生成部40Aは、電流i_inv1の極性が変化する度に遷移し、デッドタイムTdに応じた振幅を有する誤差電圧e_td1を生成する。乗算部33Aは、誤差電圧e_td1と係数kとを乗算する。
【0079】
同様に、誤差電圧生成部40Bは、電流i_inv2および直流バス電圧Vdcに基づいて、スイッチング素子SW3,SW4に係るデッドタイム補償を行うための誤差電圧e_td2を生成する。乗算部33Bは、誤差電圧e_td2と係数kとを乗算する。
【0080】
電流制御部50は、電流i_inv1,i_inv2の指令値i_inv*、電流i_inv1,i_inv2、交流出力電圧e_inv、乗算部33Aの乗算結果(誤差電圧e_td1×係数k)、乗算部33Bの乗算結果(誤差電圧e_td2×係数k)、および直流バス電圧Vdcに基づいて、電流i_inv1を制御することにより信号d_inv1を生成するとともに、電流i_inv2を制御することにより信号d_inv2を生成する。
【0081】
キャリア信号生成部34は、キャリア信号CR1,CR2を生成する。そして、ゲート信号生成部60は、信号d_inv1,d_inv2およびキャリア信号CR1,CR2に基づいて、ゲート信号S1~S6を生成する。
【0082】
以下に、いくつかのシミュレーション結果を用いて、電力変換装置1の動作および作用について説明する。以下のシミュレーションでは、
図9に示したように、シミュレーション条件を設定した。
【0083】
図10,11は、電力変換装置1の一動作例を表すものであり、(A)は交流出力電圧e_invの波形を示し、(B)は負荷電流i_ldの波形を示し、(C)~(H)はゲート信号S1~S6の波形をそれぞれ示す。
図11に示した波形は、
図10に示した波形における、交流出力電圧e_inv(
図10(A))が正の電圧から負の電圧へ変化する際のゼロクロスタイミング付近の波形を示している。
【0084】
図12は、ゼロクロスタイミング付近における電力変換装置1の一動作例を表すものであり、(A)は交流出力電圧e_invの波形を示し、(B)は電流i_inv1,i_inv2の波形を示す。
【0085】
図13A~13Fは、電力変換装置1におけるスイッチングパターンPATA~PATFの一例を表すものである。スイッチングパターンPATA~PATC(
図13A~13C)は、交流出力電圧e_invが正の電圧である場合におけるパターンであり、スイッチングパターンPATD~PATF(
図13D~13F)は、交流出力電圧e_invが負の電圧である場合におけるパターンである。
図13A~13Fでは、電力変換装置1を簡略化して描いている。
【0086】
図10に示した1周期の前半の期間では、交流出力電圧e_invは正の電圧であり、後半の期間では、交流出力電圧e_invは負の電圧である。
【0087】
交流出力電圧e_invが正の電圧である期間では、例えば、スイッチングパターンPATA(
図13A)のように、スイッチング素子SW1,SW3の一方または双方、およびスイッチング素子SW6がオン状態になることにより、2つの電流経路が生じる。具体的には、スイッチング素子SW1、ACリアクトル24A、容量素子25および負荷装置LOAD、スイッチング素子SW6をこの順に通過する電流経路と、スイッチング素子SW3、ACリアクトル24B、容量素子25および負荷装置LOAD、スイッチング素子SW6をこの順に通過する電流経路とが生じる。このとき、ACリアクトル24Aでは、ノードN1から電圧線ULに向かって電流i_inv1が流れるので、電流i_inv1の極性は正である。また、ACリアクトル24Bでは、ノードN2から電圧線ULに向かって電流i_inv2が流れるので、電流i_inv2の極性は正である。すなわち、電流i_inv1,i_inv2の極性はともに正である。
【0088】
また、交流出力電圧e_invが負の電圧である期間では、例えば、スイッチングパターンPATF(
図13F)のように、スイッチング素子SW2,SW4の一方または双方、およびスイッチング素子SW5がオン状態になることにより、2つの電流経路が生じる。具体的には、スイッチング素子SW5、容量素子25および負荷装置LOAD、ACリアクトル24A、スイッチング素子SW2をこの順に通過する電流経路と、スイッチング素子SW5、容量素子25および負荷装置LOAD、ACリアクトル24B、スイッチング素子SW4をこの順に通過する電流経路とが生じる。このとき、ACリアクトル24Aでは、電圧線ULからノードN1に向かって電流i_inv1が流れるので、電流i_inv1の極性は負である。また、ACリアクトル24Bでは、電圧線ULからノードN2に向かって電流i_inv2が流れるので、電流i_inv2の極性は負である。すなわち、電流i_inv1,i_inv2の極性はともに負である。
【0089】
電力変換装置1では、デッドタイム補償を行うことにより、交流出力電圧e_invが正の電圧から負の電圧へ変化する際、ゼロクロスタイミング付近において、スイッチングパターンPATB~PATE(
図13B~13E)が生じる。
【0090】
例えば、
図11において、タイミングtbでは、ゲート信号S1,S4,S6が高レベルになることにより、スイッチング素子SW1,SW4,SW6がオン状態になる。これにより、スイッチングパターンPATB(
図13B)のように、2つの電流経路が生じる。具体的には、スイッチング素子SW1、ACリアクトル24A、容量素子25および負荷装置LOAD、スイッチング素子SW6をこの順に通過する電流経路と、スイッチング素子SW1、ACリアクトル24A、ACリアクトル24B、スイッチング素子SW4をこの順に通過する電流経路とが生じる。このとき、ACリアクトル24Aでは、ノードN1から電圧線ULに向かって電流i_inv1が流れるので、電流i_inv1の極性は正である。ACリアクトル24Bでは、電圧線ULからノードN2に向かって電流i_inv2が流れるので、電流i_inv2の極性は負である。
【0091】
また、例えば、
図11において、タイミングtcでは、ゲート信号S2,S3,S6が高レベルになることにより、スイッチング素子SW2,SW3,SW6がオン状態になる。これにより、スイッチングパターンPATC(
図13C)のように、2つの電流経路が生じる。具体的には、スイッチング素子SW3、ACリアクトル24B、容量素子25および負荷装置LOAD、スイッチング素子SW6をこの順に通過する電流経路と、スイッチング素子SW3、ACリアクトル24B、ACリアクトル24A、スイッチング素子SW2をこの順に通過する電流経路とが生じる。このとき、ACリアクトル24Aでは、電圧線ULからノードN1に向かって電流i_inv1が流れるので、電流i_inv1の極性は負である。ACリアクトル24Bでは、ノードN2から電圧線ULに向かって電流i_inv2が流れるので、電流i_inv2の極性は正である。
【0092】
また、例えば、
図11において、タイミングtdでは、ゲート信号S2,S3,S5が高レベルになることにより、スイッチング素子SW2,SW3,SW5がオン状態になる。これにより、スイッチングパターンPATD(
図13D)のように、2つの電流経路が生じる。具体的には、スイッチング素子SW5、容量素子25および負荷装置LOAD、ACリアクトル24A、スイッチング素子SW2をこの順に通過する電流経路と、スイッチング素子SW3、ACリアクトル24B、ACリアクトル24A、スイッチング素子SW2をこの順に通過する電流経路とが生じる。このとき、ACリアクトル24Aでは、電圧線ULからノードN1に向かって電流i_inv1が流れるので、電流i_inv1の極性は負である。ACリアクトル24Bでは、ノードN2から電圧線ULに向かって電流i_inv2が流れるので、電流i_inv2の極性は正である。
【0093】
また、例えば、
図11において、タイミングteでは、ゲート信号S1,S4,S5が高レベルになることにより、スイッチング素子SW1,SW4,SW5がオン状態になる。これにより、スイッチングパターンPATE(
図13E)のように、2つの電流経路が生じる。具体的には、スイッチング素子SW5、容量素子25および負荷装置LOAD、ACリアクトル24B、スイッチング素子SW4をこの順に通過する電流経路と、スイッチング素子SW1、ACリアクトル24A、ACリアクトル24B、スイッチング素子SW4をこの順に通過する電流経路とが生じる。このとき、ACリアクトル24Aでは、ノードN1から電圧線ULに向かって電流i_inv1が流れるので、電流i_inv1の極性は正である。ACリアクトル24Bでは、電圧線ULからノードN2に向かって電流i_inv2が流れるので、電流i_inv2の極性は負である。
【0094】
このように、電力変換装置1では、デッドタイム補償を行うことにより、ゼロクロスタイミング付近において、スイッチングパターンPATB~PATEが生じるようにしている。具体的には、電流i_inv1,i_inv2の極性はともに正であるスイッチングパターンPATA(
図13A)から、電流i_inv1,i_inv2の極性がともに負であるスイッチングパターンPATF(
図13F)へ変化する際、ゼロクロスタイミング付近において、電流i_inv1,i_inv2の極性のうちの一方が正であり他方が負であるスイッチングパターンPATB~PATEが生じる。すなわち、ゼロクロスタイミング付近において転流が生じる。これにより、
図12(B)に示したように、ゼロクロスタイミング付近において、電流i_inv1,i_inv2の極性のうちの一方が正であり他方が負である複数の期間が生じる。このように、ゼロクロスタイミング付近において、電流i_inv1および電流i_inv2が互いに反対方向に流れることにより、負荷電流i_ldが“0”(ゼロ)付近になる。すなわち、電流i_inv1および電流i_inv2が互いに打ち消しあう。これにより、電力変換装置1では、負荷電流i_ldは、正の値から“0”になめらかに近づき、“0”から負の値になめらかに変化していく。
【0095】
以上では、交流出力電圧e_invが正の電圧から負の電圧へ変化する場合の動作を説明したが、交流出力電圧e_invが負の電圧から生の電圧へ変化する場合についても同様である。この場合でも、ゼロクロスタイミング付近において転流が生じ、電流i_inv1および電流i_inv2が互いに反対方向に流れることにより、負荷電流i_ldが“0”(ゼロ)付近になる。電力変換装置1では、負荷電流i_ldは、負の値から“0”になめらかに近づき、“0”から正の値になめらかに変化していく。
【0096】
図14は、電力変換装置1における動作波形の一例を表すものであり、(A)は交流出力電圧e_invの波形を示し、(B)は負荷電流i_ldの波形を示す。このように、電力変換装置1では、デッドタイム補償を行うことにより、ゼロクロスタイミング付近において、負荷電流i_ldの波形をなめらかにすることができる。よって、電力変換装置1では、負荷電流i_ldの波形の歪みを抑えることができ、その結果、交流出力電圧e_invの波形の歪みを抑えることができる。
【0097】
すなわち、仮に、ゼロクロスタイミング付近において、スイッチングパターンPATB~PATE(
図13B~13E)を設けずに、スイッチング素子SW1~SW6をオフ状態に維持した場合には、波形歪みが生じるおそれがある。
【0098】
図15は、比較例に係る電力変換装置1Rの動作波形の一例を表すものであり、(A)は交流出力電圧e_invの波形を示し、(B)は負荷電流i_ldの波形を示す。この電力変換装置1Rでは、ゼロクロスタイミング付近においてスイッチング素子SW1~SW6をオフ状態に維持している。これにより、電力変換装置1Rでは、ゼロクロスタイミング付近において負荷電流i_ldが過渡的に急激に増加するような波形歪みが生じるおそれを低減することができる。しかしながら、電力変換装置1Rでは、
図15において符号W1で示したように、ゼロクロスタイミング付近の短い期間において負荷電流i_ldはほぼ“0”(ゼロ)に維持されるので、負荷電流i_ldの波形が歪み、その結果、交流出力電圧e_invの波形が歪んでしまう。
【0099】
一方、本実施の形態に係る電力変換装置1では、ゼロクロスタイミング付近において、転流が生じるようにしたので、
図14に示したように、負荷電流i_ldおよび交流出力電圧e_invの波形をなめらかにすることができ、波形の歪みを抑えることができる。
【0100】
図16は、交流出力電圧e_invのTHD(Total Harmonic Distortion)特性の一例を表すものである。本実施の形態に係る電力変換装置1では、上述した比較例に係る電力変換装置1Rと比べて、3次の高調波歪み、5次の高調波歪み、7次の高調波歪みを、ともに低減することができる。
【0101】
例えば、比較例に係る電力変換装置1Rでは、例えばACリアクトル24A,24BのインダクタンスLinv1,Linv2を増加させることにより、ローパスフィルタの遮断周波数を下げることができるので、高調波歪みを低減することができる。具体的には、例えば、インダクタンスLinv1,Linv2を0.3mHから1.2mHに変更することにより、これらの高調波歪みを3%以下にすることができる。しかしながら、この場合には、ACリアクトル24A,24Bの部品サイズが大きくなってしまい、電力変換装置1Rの装置サイズもまた大きくなってしまう。
【0102】
一方、本実施の形態に係る電力変換装置1では、ACリアクトル24A,24BのインダクタンスLinv1,Linv2を大きくすることなく、
図16に示したように、高調波歪みを3%以下にすることができる。このように、電力変換装置1では、装置サイズを大きくすることなく、高調波歪みを抑えることができる。
【0103】
図17は、負荷装置LOADのインピーダンスが急変したときの電力変換装置1の一動作例を表すものであり、(A)は交流出力電圧e_invの波形を示し、(B)は負荷電流i_ldの波形を示し、(C)は交流出力電圧e_invのRMS電圧e_inv_rmsを示す。この例では、タイミングt11において、負荷装置LOADのインピーダンスを8Ωから大きい値に変更している。これにより、このタイミングt11以降において、負荷電流i_ldの振幅が減少する。このとき、交流出力電圧e_invのRMS電圧e_inv_rmsは、交流出力電圧e_invの1周期分の時間以内に元の値に戻ることができる。そして、タイミングt12において、負荷装置LOADのインピーダンスを元の値に戻している。これにより、このタイミングt12以降において、負荷電流i_ldも元に戻る。このとき、交流出力電圧e_invのRMS電圧e_inv_rmsは、交流出力電圧e_invの1周期分の時間以内に元の値に戻る。このように、電力変換装置1では、負荷が急変した場合において、出力電圧の変動期間を短い時間に抑えることができる。
【0104】
このように、電力変換装置1では、
図4,5に示したように、誤差電圧生成部40Aのローパスフィルタ42およびオールパスフィルタ43が、ACリアクトル24Aに流れる電流i_inv1に応じた、AD変換された電流i_inv1に含まれる高周波成分を除去するとともに位相を調整することにより、信号i_dir1を生成するようにした。そして、誤差電圧生成部40Aおよび乗算部33Aは、この信号i_dir1に基づいて誤差信号(誤差電圧e_td1×係数k)を生成するようにした。この誤差信号は、デッドタイムTdに応じた絶対値を有し互いに極性が異なる第1の値(-a・fs・Vdc・Td・I_dir1×k)および第2の値(a・fs・Vdc・Td・I_dir1×k)の間で、信号i_dir1の極性が変化する度に遷移する信号である。そして、電圧制御部32、電流制御部50、およびゲート信号生成部60は、この誤差信号に基づいて、スイッチング素子SW1,SW2の動作を制御するようにした。これにより、電力変換装置1では、電流i_inv1の極性の変化を精度よく検出することができ、適切な誤差信号を生成することができる。その結果、電力変換装置1では、効果的にデッドタイム補償を行うことができるので、負荷電流i_ldおよび交流出力電圧e_ldの波形歪みを効果的に低減することができる。
【0105】
また、電力変換装置1では、同様に、誤差電圧生成部40Bのローパスフィルタ42およびオールパスフィルタ43が、ACリアクトル24Bに流れる電流i_inv2に応じた、AD変換された電流i_inv2に含まれる高周波成分を除去するとともに位相を調整することにより、信号i_dir2を生成するようにした。そして、誤差電圧生成部40Bおよび乗算部33Bは、この信号i_dir2に基づいて、この信号i_dir2の極性が変化する度に遷移し、デッドタイムTdに応じた振幅を有する誤差信号(誤差電圧e_td2×係数k)を生成するようにした。そして、電圧制御部32、電流制御部50、およびゲート信号生成部60は、この誤差信号に基づいて、スイッチング素子SW3,SW4の動作を制御するようにした。これにより、負荷電流i_ldおよび交流出力電圧e_ldの波形歪みを効果的に低減することができる。
【0106】
特に、電力変換装置1は、スイッチング素子SW1~SW4を用いてインターリーブ動作を行うことにより、ACリアクトル24A,24Bに流す電流を減らすことができ、ACリアクトル24A,24Bのサイズを小さくすることができる。また、スイッチング素子SW5,SW6のスイッチング周波数が低いので、スイッチングノイズを低くすることができるので、EMIフィルタ26のサイズを小さくすることができる。その結果、電力変換装置1のサイズを小さくすることができる。
【0107】
また、電力変換装置1では、
図4,5に示したように、電流制御部50およびゲート信号生成部60は、電流i_inv1の指令値i_inv*と誤差信号(誤差電圧e_td1×係数k)とを加算し、その加算結果から電流i_inv1を減算し、その減算結果に基づいてスイッチング素子SW1,SW2におけるデューティ比d_aを生成するようにした。同様に、電流制御部50およびゲート信号生成部60は、電流i_inv2の指令値i_inv*と誤差信号(誤差電圧e_td2×係数k)とを加算し、その加算結果から電流i_inv2を減算し、その減算結果に基づいてスイッチング素子SW3,SW4におけるデューティ比d_bを生成するようにした。これにより、電流i_inv1,i_inv2に基づくフィードバック制御と誤差電圧e_td1,e_td2に基づくフィードフォワード制御とが干渉するおそれを低減することができる。これにより、
図6に示した誤差電圧e_td1と誤差電圧e_td2の位相差を実現しやすくすることができ、ゼロクロスタイミング付近において、スイッチングパターンPATB~PATEのように転流が生じやすくなる。この転流により、負荷電流i_ldは、正の値から“0”になめらかに近づき、“0”から負の値になめらかに変化していく。その結果、電力変換装置1では、負荷電流i_ldの波形の歪みを抑えることができ、交流出力電圧e_invの波形の歪みを抑えることができる。
【0108】
[効果]
以上のように本実施の形態では、ACリアクトル24Aに流れる電流に応じた、AD変換された電流i_inv1に含まれる高周波成分を除去するとともに位相を調整することにより、信号i_dir1を生成し、この信号i_dir1に基づいて、デッドタイムに応じた絶対値を有し互いに極性が異なる第1の値および第2の値の間で、信号i_dir1の極性が変化する度に遷移する誤差信号を生成するようにした。そして、この誤差信号に基づいて、スイッチング素子SW1,SW2の動作を制御するようにした。これにより、負荷電流および交流出力電圧の波形歪みを低減することができる。
【0109】
本実施の形態では、電流i_inv1の指令値と誤差信号とを加算し、その加算結果から電流i_inv1を減算し、その減算結果に基づいてスイッチング素子SW1,SW2におけるデューティ比を生成するようにした。また、電流i_inv2の指令値と誤差信号とを加算し、その加算結果から電流i_inv2を減算し、その減算結果に基づいてスイッチング素子SW3,SW4におけるデューティ比を生成するようにした。これにより、負荷電流および交流出力電圧の波形歪みを低減することができる。
【0110】
[変形例1]
上記実施の形態では、スイッチング素子SW1,SW2と、スイッチング素子SW3,SW4とを用いてインターリーブ動作を行うようにしたが、このように2つのレグを用いる例に限定されるものではない。これに代えて3つ以上のレグを用いてインターリーブ動作を行うようにしてもよい。以下に、3つのレグを用いてインターリーブ動作を行う電力変換装置1Aを例に挙げて、詳細に説明する。
【0111】
図18は、電力変換装置1Aの一構成例を表すものである。電力変換装置1Aは、スイッチング素子SW1~SW8と、電流検出部23A~23Cと、ACリアクトル24A~24Cと、容量素子25と、制御部30Aとを備えている。
【0112】
スイッチング素子SW1は、電圧線L1とノードN1との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN1に接続するように構成される。スイッチング素子SW1のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S1が供給され、エミッタはノードN1に接続される。スイッチング素子SW2は、基準電圧線L2とノードN1との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN1に接続するように構成される。スイッチング素子SW2のコレクタはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号S2が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。
【0113】
スイッチング素子SW3は、電圧線L1とノードN2との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN2に接続するように構成される。スイッチング素子SW3のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S3が供給され、エミッタはノードN2に接続される。スイッチング素子SW4は、基準電圧線L2とノードN2との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN2に接続するように構成される。スイッチング素子SW4のコレクタはノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号S4が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。
【0114】
スイッチング素子SW5は、電圧線L1とノードN3との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN3に接続するように構成される。スイッチング素子SW5のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S5が供給され、エミッタはノードN3に接続される。スイッチング素子SW6は、基準電圧線L2とノードN3との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN3に接続するように構成される。スイッチング素子SW6のコレクタはノードN3に接続され、ゲートにはゲート信号S6が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。
【0115】
スイッチング素子SW7は、電圧線L1とノードN4との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN4に接続するように構成される。スイッチング素子SW7のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S7が供給され、エミッタはノードN4に接続される。スイッチング素子SW8は、基準電圧線L2とノードN4との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN4に接続するように構成される。スイッチング素子SW8のコレクタはノードN4に接続され、ゲートにはゲート信号S8が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。
【0116】
電流検出部23Aは、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24AにおいてノードN1から電圧線ULに向かって流れる電流i_inv1を検出するように構成される。電流検出部23Aの一端はノードN1に接続され、他端はACリアクトル24Aの一端に接続される。ACリアクトル24Aは、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24Aの一端は電流検出部23Aの他端に接続され、他端は電圧線ULに接続される。
【0117】
電流検出部23Bは、ノードN2から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24BにおいてノードN2から電圧線ULに向かって流れる電流i_inv2を検出するように構成される。電流検出部23Bの一端はノードN2に接続され、他端はACリアクトル24Bの一端に接続される。ACリアクトル24Bは、ノードN2から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24Bの一端は電流検出部23Bの他端に接続され、他端は電圧線ULに接続される。
【0118】
電流検出部23Cは、ノードN3から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24CにおいてノードN3から電圧線ULに向かって流れる電流i_inv3を検出するように構成される。電流検出部23Cの一端はノードN3に接続され、他端はACリアクトル24Cの一端に接続される。ACリアクトル24Cは、ノードN3から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24Cの一端は電流検出部23Cの他端に接続され、他端は電圧線ULに接続される。
【0119】
容量素子25の一端は電圧線ULに接続され、他端はノードN4に導かれた電圧線WLに接続される。
【0120】
制御部30Aは、電力変換装置1Aの動作を制御するように構成される。制御部30Aは、交流出力電圧e_inv、電流i_inv1,i_inv2,i_inv3、負荷電流i_ld、および直流バス電圧Vdcに基づいて、演算処理を行うことにより、ゲート信号S1~S8を生成するようになっている。
【0121】
ここで、スイッチング素子SW1~SW4は、本開示における「第1~第4のスイッチング素子」の一具体例にそれぞれ対応する。スイッチング素子SW7~SW8は、本開示における「第5のスイッチング素子および第6のスイッチング素子」の一具体例にそれぞれ対応する。
【0122】
制御部30Aは、上記実施の形態に係る制御部30の場合(
図2)と同様に、デューティ比dおよびキャリア信号CR1~CR3を生成する。キャリア信号CR1~CR3の位相は、互いに120度ずれている。制御部30Aは、デューティ比dおよびキャリア信号CR1に基づいてゲート信号S1,S2を生成し、デューティ比dおよびキャリア信号CR2に基づいてゲート信号S3,S4を生成し、デューティ比dおよびキャリア信号CR3に基づいてゲート信号S5,S6を生成する。また、制御部30Aは、周期Tsdのゲート信号S7,S8を生成する。スイッチング素子SW1~SW8は、これらのゲート信号S1~S8に基づいてそれぞれオンオフする。ACリアクトル24Aおよび容量素子25からなるローパスフィルタは、スイッチング素子SW1,SW2,SW7,SW8のスイッチング動作により生成された信号に含まれる高周波数成分を除去する。同様に、ACリアクトル24Bおよび容量素子25からなるローパスフィルタは、スイッチング素子SW3,SW4,SW7,SW8のスイッチング動作により生成された信号に含まれる高周波数成分を除去する。ACリアクトル24Cおよび容量素子25からなるローパスフィルタは、スイッチング素子SW5,SW6,SW7,SW8のスイッチング動作により生成された信号に含まれる高周波数成分を除去する。このようにして、電力変換装置1Aは、3つのレグを用いてインターリーブ動作を行うことにより、交流出力電圧e_invを生成するようになっている。
【0123】
制御部30Aは、電流i_inv1に基づいてスイッチング素子SW1,SW2におけるデューティ比を生成する処理と、電流i_inv2に基づいてスイッチング素子SW3,SW4におけるデューティ比を生成する処理と、電流i_inv3に基づいてスイッチング素子SW5,SW6におけるデューティ比を生成する処理とを含む3系統の処理を行う。すなわち、上記実施の形態に係る制御部30は、
図4に示したように、電流i_inv1に基づいてスイッチング素子SW1,SW2におけるデューティ比を生成する処理と、電流i_inv2に基づいてスイッチング素子SW3,SW4におけるデューティ比を生成する処理とを含む2系統の処理を行うようにしたが、本変形例に係る制御部30Aは、3系統の処理を行う。
【0124】
[変形例2]
上記実施の形態では、インターリーブ動作を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、インターリーブ動作を行わなくてもよい。以下に、いくつか例を挙げて、本変形例について説明する。
【0125】
図19は、変形例に係る電力変換装置1Bの一構成例を表すものである。電力変換装置1Bは、フルブリッジインバータである。
図19では、EMIフィルタ26およびスイッチ29U,29Wの図示を省略している。電力変換装置1Bは、スイッチング素子SW1~SW4と、電流検出部23と、ACリアクトル24と、制御部30Bとを備えている。
【0126】
スイッチング素子SW1は、電圧線L1とノードN1との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN1に接続するように構成される。スイッチング素子SW1のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S1が供給され、エミッタはノードN1に接続される。スイッチング素子SW2は、基準電圧線L2とノードN1との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN1に接続するように構成される。スイッチング素子SW2のコレクタはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号S2が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。
【0127】
スイッチング素子SW3は、電圧線L1とノードN2との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN2に接続するように構成される。スイッチング素子SW3のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S3が供給され、エミッタはノードN2に接続される。スイッチング素子SW4は、基準電圧線L2とノードN2との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN2に接続するように構成される。スイッチング素子SW4のコレクタはノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号S4が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。
【0128】
電流検出部23は、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24においてノードN1から電圧線ULに向かって流れる電流i_inv1を検出するように構成される。電流検出部23の一端はノードN1に接続され、他端はACリアクトル24の一端に接続される。ACリアクトル24は、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24の一端は電流検出部23の他端に接続され、他端は電圧線ULに接続される。
【0129】
制御部30Bは、電力変換装置1Bの動作を制御するように構成される。制御部30Bは、デューティ比dおよびキャリア信号CRを生成する。制御部30Bは、デューティ比dおよびキャリア信号CRに基づいてゲート信号S1,S2を生成する。また、制御部30Bは、周期Tsdのゲート信号S3,S4を生成する。スイッチング素子SW1~SW4は、これらのゲート信号S1~S4に基づいてそれぞれオンオフする。ACリアクトル24および容量素子25からなるローパスフィルタは、スイッチング素子SW1~SW4のスイッチング動作により生成された信号に含まれる高周波数成分を除去するようになっている。
【0130】
図20は、制御部30Bの一構成例を表すものである。制御部30Bは、誤差電圧生成部40と、電流制御部70とを有している。
【0131】
誤差電圧生成部40は、上記実施の形態に係る誤差電圧生成部40A,40Bと同様に、電流i_invおよび直流バス電圧Vdcに基づいて、スイッチング素子SW1,SW2に係るデッドタイム補償を行うための誤差電圧e_tdを生成するように構成される。
【0132】
電流制御部70は、電流i_invの指令値i_inv*、電流i_inv、交流出力電圧e_inv、誤差電圧e_td、および直流バス電圧Vdcに基づいて、電流i_invを制御することにより信号d_invを生成するように構成される。電流制御部70は、加算部71と、演算部72と、加算部73と、除算部74とを有している。
【0133】
加算部71は、電流i_invの指令値i_inv*から電流i_invを減算するように構成される。演算部72は、加算部71の演算結果に基づいて、所定の伝達関数Ginv(s)を用いて演算を行うように構成される。加算部73は、演算部72の演算結果と交流出力電圧e_invと誤差電圧e_tdとを加算するように構成される。除算部74は、加算部73の加算結果を直流バス電圧Vdcにより除算することにより信号d_invを生成するように構成される。
【0134】
この構成により、電流制御部70では、電流i_invが、電流i_invの指令値i_inv*と同じになるように電流i_invを制御する。その際、電流制御部70は、電流i_invに基づいてフィードバック制御を行い、誤差電圧e_tdに基づいてフィードフォワード制御を行う。すなわち、上記実施の形態に係る電流制御部50(
図4)では、インターリーブ動作を行うので、電流i_inv1,i_inv2に基づくフィードバック動作と、誤差電圧e_td1,e_td2に基づくフィードフォワード動作とが干渉しないようにするため、加算部51Aが誤差電圧e_td1に応じた誤差信号(誤差電圧e_td1×係数k)を加算するとともに、加算部51Bが誤差電圧e_td2に応じた誤差信号(誤差電圧e_td2×係数k)を加算するようにした。しかしながら、本変形例では、インターリーブ動作を行わないので、後段の加算部73が誤差電圧e_tdを加算している。なお、これに限定されるものではなく、上記実施の形態の場合と同様に、前段の加算部71が誤差電圧e_tdに応じた誤差信号(誤差電圧e_td×係数k)を加算してもよい。
【0135】
ここで、スイッチング素子SW1,SW2は、本開示における「第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子」の一具体例にそれぞれ対応する。スイッチング素子SW3,SW4は、本開示における「第5のスイッチング素子および第6のスイッチング素子」の一具体例にそれぞれ対応する。ACリアクトル24は、本開示における「第1のACリアクトル」の一具体例に対応する。誤差電圧生成部40は、本開示における「第1の誤差信号生成部」の一具体例に対応する。誤差電圧e_td1は、本開示における「第1の誤差信号」の一具体例に対応する。
【0136】
図21は、他の変形例に係る電力変換装置1Cの一構成例を表すものである。電力変換装置1Cは、フルブリッジインバータである。電力変換装置1Cは、ACリアクトル24,124と、制御部30Cとを備えている。
【0137】
ACリアクトル24は、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24の一端は電流検出部23の他端に接続され、他端は電圧線ULに接続される。
【0138】
ACリアクトル124は、ノードN2から端子T22への経路に設けられ、ACリアクトル124の一端はノードN2に接続され、他端は電圧線WLに接続される。
【0139】
制御部30Cは、電力変換装置1Cの動作を制御するように構成される。制御部30Cは、デューティ比dおよびキャリア信号CRを生成する。制御部30Cは、デューティ比dおよびキャリア信号CRに基づいてゲート信号S1,S2およびゲート信号S3,S4を生成する。例えば、ゲート信号S1およびゲート信号S4は互いに同じであってもよく、ゲート信号S2およびゲート信号S3は互いに同じであってもよい。スイッチング素子SW1~SW4は、これらのゲート信号S1~S4に基づいてそれぞれオンオフする。制御部30Cは、例えば、
図20に示した制御部30Bの誤差電圧生成部40および電流制御部70を有するようにしてもよい。
【0140】
図22は、他の変形例に係る電力変換装置1Dの一構成例を表すものである。電力変換装置1Dは、ハーフブリッジインバータである。電力変換装置1Dは、スイッチング素子SW1,SW2と、容量素子C1,C2と、制御部30Dとを備えている。
【0141】
スイッチング素子SW1は、電圧線L1とノードN1との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電圧線L1をノードN1に接続するように構成される。スイッチング素子SW1のコレクタは電圧線L1に接続され、ゲートにはゲート信号S1が供給され、エミッタはノードN1に接続される。スイッチング素子SW2は、基準電圧線L2とノードN1との間の経路に設けられ、オン状態になることにより基準電圧線L2をノードN1に接続するように構成される。スイッチング素子SW2のコレクタはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号S2が供給され、エミッタは基準電圧線L2に接続される。
【0142】
容量素子C1の一端は電圧線L1に接続され、他端はノードN2に接続される。容量素子C2の一端はノードN2に接続され、他端は基準電圧線L2に接続される。
【0143】
制御部30Dは、電力変換装置1Dの動作を制御するように構成される。制御部30Dは、例えば、
図20に示した制御部30Bの誤差電圧生成部40および電流制御部70を有するようにしてもよい。
【0144】
図23は、他の変形例に係る電力変換装置1Eの一構成例を表すものである。電力変換装置1Eは、3相のインバータである。電力変換装置1は、端子T21~T23を備えている。端子T21~T23は、負荷装置LOADに接続されている。負荷装置LOADは、一端が端子T21に接続され他端が端子T22に接続された負荷と、一端が端子T22に接続され他端が端子T23に接続された負荷と、一端が端子T21に接続され他端が端子T23に接続された負荷とを含む。
【0145】
電力変換装置1Eは、電流検出部23A~23Cと、ACリアクトル24A~24Cと、容量素子25A~25Cと、電圧検出部28A~28Cと、制御部30Eとを備えている。
【0146】
電流検出部23Aは、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24AにおいてノードN1から電圧線ULに向かって流れる電流i_inv1を検出するように構成される。電流検出部23Aの一端はノードN1に接続され、他端はACリアクトル24Aの一端に接続される。ACリアクトル24Aは、ノードN1から端子T21への経路に設けられ、ACリアクトル24Aの一端は電流検出部23Aの他端に接続され、他端は電圧線ULに接続される。容量素子25Aの一端は電圧線ULに接続され、他端はノードNNに接続される。電圧検出部28Aは、電力変換装置1から出力されるU相の交流出力電圧e_inv1を検出するように構成される。電圧検出部28Aの一端は電圧線ULに接続され、他端はノードNNに接続される。電圧検出部28Aは、ノードNNでの電圧を基準とした電圧線ULでの電圧をU相の交流出力電圧e_inv1として検出するようになっている。
【0147】
電流検出部23Bは、ノードN2から端子T22への経路に設けられ、ACリアクトル24BにおいてノードN2から電圧線VLに向かって流れる電流i_inv2を検出するように構成される。電流検出部23Bの一端はノードN2に接続され、他端はACリアクトル24Bの一端に接続される。ACリアクトル24Bは、ノードN2から端子T22への経路に設けられ、ACリアクトル24Bの一端は電流検出部23Bの他端に接続され、他端は電圧線VLに接続される。容量素子25Bの一端は電圧線VLに接続され、他端はノードNNに接続される。電圧検出部28Bは、電力変換装置1から出力されるV相の交流出力電圧e_inv2を検出するように構成される。電圧検出部28Bの一端は電圧線VLに接続され、他端はノードNNに接続される。電圧検出部28Bは、ノードNNでの電圧を基準とした電圧線VLでの電圧をV相の交流出力電圧e_inv2として検出するようになっている。
【0148】
電流検出部23Cは、ノードN3から端子T23への経路に設けられ、ACリアクトル24Cにおいて電圧線WLからノードN3に向かって流れる電流i_inv3を検出するように構成される。電流検出部23Cの一端はノードN3に接続され、他端はACリアクトル24Cの一端に接続される。ACリアクトル24Cは、ノードN3から端子T23への経路に設けられ、ACリアクトル24Cの一端は電流検出部23Cの他端に接続され、他端は電圧線WLに接続される。容量素子25Cの一端は電圧線WLに接続され、他端はノードNNに接続される。電圧検出部28Cは、電力変換装置1から出力されるW相の交流出力電圧e_inv3を検出するように構成される。電圧検出部28Cの一端は電圧線WLに接続され、他端はノードNNに接続される。電圧検出部28Cは、ノードNNでの電圧を基準とした電圧線WLでの電圧をW相の交流出力電圧e_inv3として検出するようになっている。
【0149】
制御部30Eは、電力変換装置1Eの動作を制御するように構成される。制御部30Eは、例えば、
図20に示した制御部30Bの誤差電圧生成部40および電流制御部70を有するようにしてもよい。具体的には、制御部30Eは、電流i_inv1に基づいてスイッチング素子SW1,SW2におけるデューティ比を生成する処理と、電流i_inv2に基づいてスイッチング素子SW3,SW4におけるデューティ比を生成する処理と、電流i_inv3に基づいてスイッチング素子SW5,SW6におけるデューティ比を生成する処理とを含む3系統の処理を行う。
【0150】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0151】
例えば、
図9に示したシミュレーション条件に記載の各パラメータの設定値は、一例であり、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0152】
1,1A,1B,1C,1D,1E…電力変換装置、21…電圧検出部、22…容量素子、23,23A~23C…電流検出部、24,24A~24C,124…ACリアクトル、25,25A~25C…容量素子、26…EMIフィルタ、27…電流検出部、28,28A~28C…電圧検出部、29U,29W…スイッチ、30,30A,30B,30C,30D,30E…制御部、31…指令値生成部、32…電圧制御部、33A,33B…乗算部、40…40A,40B…誤差電圧生成部、41…極性検出部、42…ローパスフィルタ、43…オールパスフィルタ、44…比較部、45…ゲイン乗算部、50,70…電流制御部、51A,51B,71…加算部、52A,52B,72…演算部、53A、53B,73…加算部、54A,54B,74…除算部、60…ゲート信号生成部、61…比較部、62,63…加算部、64,65…PWM信号生成部、66…信号生成部、a…係数、CR,CR1,CR2…キャリア信号、C1,C2…容量素子、d,d_a,d_b…デューティ比、d_c…信号、d_inv,d_inv1,d_inv2…信号、e_inv,e_inv1,e_inv2,e_inv3…交流出力電圧、e_inv*…指令値、e_td,e_td1,e_td2…誤差電圧、i_dir1…信号、I_dir1…極性信号、i_inv,i_inv1,i_inv2,i_inv3…電流,i_ld…負荷電流、k…係数、LOAD…負荷装置、N1~N4,NN…ノード、PDC…直流電源、SW1~SW8…スイッチング素子、S1~S8…ゲート信号、Td…デッドタイム、T11,T12,T21~T23…端子、Vdc…直流バス電圧。