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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/50 20060101AFI20240220BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240220BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20240220BHJP
   H04L 45/80 20220101ALI20240220BHJP
【FI】
G06F9/50 150A
G08G1/00 D
H04W4/44
H04L45/80
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020133336
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029817
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大濱 吉紘
(72)【発明者】
【氏名】下岡 和也
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-338264(JP,A)
【文献】特開2000-278349(JP,A)
【文献】特開2010-44553(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/50
G08G 1/00
H04W 4/44
H04L 45/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報処理装置が互いに通信可能に構成される管制型交通マネジメントシステムにおいて用いられる前記情報処理装置であって、
通信部と、計算処理部と、処理装置特定部と、処理部とを含み、
前記通信部は、前記複数の情報処理装置のうちの他の情報処理装置の各々から、前記他の情報処理装置の処理能力に関する情報を表す処理能力情報を受信し、
前記計算処理部は、自らの前記情報処理装置の前記処理能力情報と、交通管制に関する管制情報処理の計算量を表す処理量情報とに基づいて、自らの前記情報処理装置が前記管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第1計算時間を算出し、前記第1計算時間と、自らの前記情報処理装置と管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第1時間を推定し、
複数の前記他の情報処理装置の各々について、前記通信部により受信された前記処理能力情報と前記処理量情報とに基づいて、前記他の情報処理装置が前記管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間を算出し、前記第2計算時間と、他の前記情報処理装置と前記管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第2時間を推定し、
前記処理装置特定部は、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在する場合、前記第1時間よりも短い前記第2時間に対応する前記他の情報処理装置へ前記管制情報処理の実行を要求し、
前記処理部は、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在しない場合、前記管制情報処理を自らの前記情報処理装置において実行する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記通信部は、更に、前記他の情報処理装置の各々から、前記他の情報処理装置の稼働状態に関する情報を取得し、
前記計算処理部は、前記稼働状態に関する情報が前記管制情報処理の実行に適さない前記稼働状態を示す場合に、前記稼働状態の前記他の情報処理装置の前記第2時間を推定しない、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記計算処理部は、前記情報処理装置のペア間の通信品質に関する情報に基づいて、前記第1時間及び前記第2時間の少なくとも一方を算出する、
請求項1又は請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理装置特定部は、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在する場合、最も短い前記第2時間に対応する前記他の情報処理装置へ前記管制情報処理の実行を要求する、
請求項1~請求項3の何れか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理装置特定部は、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在する場合、前記第2時間が短い順に前記複数の情報処理装置を順位付けした際の上位N台の前記他の情報処理装置へ前記管制情報処理の実行を要求する、
請求項1~請求項3の何れか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
複数の情報処理装置が互いに通信可能に構成される管制型交通マネジメントシステムにおいて用いられる前記情報処理装置において実行されるプログラムであって、
前記複数の情報処理装置のうちの他の情報処理装置の各々から、前記他の情報処理装置の処理能力に関する情報を表す処理能力情報を受信し、
自らの前記情報処理装置の前記処理能力情報と、交通管制に関する管制情報処理の計算量を表す処理量情報とに基づいて、自らの前記情報処理装置が前記管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第1計算時間を算出し、前記第1計算時間と、自らの前記情報処理装置と管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第1時間を推定し、
複数の前記他の情報処理装置の各々について、受信された前記処理能力情報と前記処理量情報とに基づいて、前記他の情報処理装置が前記管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間を算出し、前記第2計算時間と、他の前記情報処理装置と前記管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第2時間を推定し、
前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在する場合、前記第1時間よりも短い前記第2時間に対応する前記他の情報処理装置へ前記管制情報処理の実行を要求し、
前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在しない場合、前記管制情報処理を自らの前記情報処理装置において実行する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動運転を外部から制御する自動運転制御システムが知られている(例えば、特許文献1)。また、車両を制御するエージェントと呼ばれるアプリケーションが車両に追従し、車両制御の遅延を抑制する技術が知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】青木佳紀他、“エージェントマイグレーションによる低遅延保証型自動運転プラットフォーム”、信学技報、vol.118、no.505、PN2018-93、2019年3月、pp.61-66。
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-106674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、1台の管理サーバと複数のエッジサーバとによって移動体の一例である車両を制御するシステムが構成される場合がある。このような場合、複数のエッジサーバは、車両が走行する交通環境内の各箇所に設置される。
【0006】
この場合、管理サーバは、管制対象の車両に関する制御信号をエッジサーバへ送信し、エッジサーバはその制御信号に応じて管制対象の車両の走行を制御する。このような車両制御システムでは、エッジサーバは管制対象の車両の移動速度に応じて、制御信号を車両へ伝送し続ける必要がある。車両が増加した場合、管理サーバと複数のエッジサーバとの間の通信量は膨大なものとなるため、管理サーバと複数のエッジサーバとの間の通信網は十分な通信路容量を備えている必要がある。仮に、管制対象の車両が増加し、管理サーバと複数のエッジサーバとの間の通信網の通信路容量が乏しい場合、車両に対する制御に遅延が発生する。
【0007】
また、例えば、車両の位置と最も近い位置に存在するエッジサーバによって車両が制御され、当該エッジサーバの周囲に複数の車両が存在する場合には、当該エッジサーバの情報処理負荷が増大する。このような状況下においては、車両の管制を実時間で処理することは難しい。このため、従来では、管制対象の移動体が増加した場合、それら複数の移動体を適切に制御することが難しいという課題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、移動体を外部のサーバにより管制する際に管制対象の移動体が増加した場合であっても、複数の移動体を適切に管制することができる情報処理装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の情報処理装置は、複数の情報処理装置が互いに通信可能に構成される管制型交通マネジメントシステムにおいて用いられる前記情報処理装置であって、通信部と、計算処理部と、処理装置特定部と、処理部とを含み、前記通信部は、前記複数の情報処理装置のうちの他の情報処理装置の各々から、前記他の情報処理装置の処理能力に関する情報を表す処理能力情報を受信し、前記計算処理部は、自らの前記情報処理装置の前記処理能力情報と、交通管制に関する管制情報処理の計算量を表す処理量情報とに基づいて、自らの前記情報処理装置が前記管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第1計算時間を算出し、前記第1計算時間と、自らの前記情報処理装置と管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第1時間を推定し、複数の前記他の情報処理装置の各々について、前記通信部により受信された前記処理能力情報と前記処理量情報とに基づいて、前記他の情報処理装置が前記管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間を算出し、前記第2計算時間と、他の前記情報処理装置と前記管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第2時間を推定し、前記処理装置特定部は、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在する場合、前記第1時間よりも短い前記第2時間に対応する前記他の情報処理装置へ前記管制情報処理の実行を要求し、前記処理部は、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在しない場合、前記管制情報処理を自らの前記情報処理装置において実行する、情報処理装置である。
【0010】
また、本発明のプログラムは、複数の情報処理装置が互いに通信可能に構成される管制型交通マネジメントシステムにおいて用いられる前記情報処理装置において実行されるプログラムであって、前記複数の情報処理装置のうちの他の情報処理装置の各々から、前記他の情報処理装置の処理能力に関する情報を表す処理能力情報を受信し、自らの前記情報処理装置の前記処理能力情報と、交通管制に関する管制情報処理の計算量を表す処理量情報とに基づいて、自らの前記情報処理装置が前記管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第1計算時間を算出し、前記第1計算時間と、自らの前記情報処理装置と管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第1時間を推定し、複数の前記他の情報処理装置の各々について、受信された前記処理能力情報と前記処理量情報とに基づいて、前記他の情報処理装置が前記管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間を算出し、前記第2計算時間と、他の前記情報処理装置と前記管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第2時間を推定し、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在する場合、前記第1時間よりも短い前記第2時間に対応する前記他の情報処理装置へ前記管制情報処理の実行を要求し、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在しない場合、前記管制情報処理を自らの前記情報処理装置において実行する、処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0011】
また、前記通信部は、更に、前記他の情報処理装置の各々から、前記他の情報処理装置の稼働状態に関する情報を取得し、前記計算処理部は、前記稼働状態に関する情報が前記管制情報処理の実行に適さない前記稼働状態を示す場合に、前記稼働状態の前記他の情報処理装置の前記第2時間を推定しないようにしてもよい。
【0012】
また、前記計算処理部は、前記情報処理装置のペア間の通信品質に関する情報に基づいて、前記第1時間及び前記第2時間の少なくとも一方を算出する、ようにしてもよい。
【0013】
また、前記処理装置特定部は、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在する場合、最も短い前記第2時間に対応する前記他の情報処理装置へ前記管制情報処理の実行を要求する、ようにしてもよい。
【0014】
また、前記処理装置特定部は、前記第1時間よりも短い前記第2時間が存在する場合、前記第2時間が短い順に前記複数の情報処理装置を順位付けした際の上位N台の前記他の情報処理装置へ前記管制情報処理の実行を要求する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の情報処理装置及びプログラムによれば、移動体を外部のサーバにより管制する際に管制対象の移動体が増加した場合であっても、複数の移動体を適切に管制することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】管制型交通マネジメントシステムの例を示す図である。
図2】管制型交通マネジメントシステムの例を示す図である。
図3】管制型交通マネジメントシステムの例を示す図である。
図4】管制型交通マネジメントシステムの例を示す図である。
図5】管制型交通マネジメントシステム1の概要を示す図である。
図6】管制型交通マネジメントシステム1の構成例を示す図である。
図7】移動サーバ10、エッジサーバ20、及びクラウドサーバ30のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8】クラウドサーバ30の機能構成を示すブロック図である。
図9】移動サーバ10、エッジサーバ20、及びクラウドサーバ30の各々が実行可能な管制情報処理を説明するための図である。
図10】各サーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間を説明するための図である。
図11】各サーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間を説明するための図である。
図12】各サーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間を説明するための図である。
図13】各サーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間を説明するための図である。
図14】各サーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間を説明するための図である。
図15】移動サーバ10の機能構成を示すブロック図である。
図16】エッジサーバ20の機能構成を示すブロック図である。
図17】本実施形態の管制型交通マネジメントシステム1の移動サーバ10、エッジサーバ20、及びクラウドサーバ30の行う情報処理ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
<管制型交通マネジメントシステムの概要>
【0019】
まず、図1図6を用いて、本実施形態に係る管制型交通マネジメントシステムの概要について説明する。
【0020】
本実施形態に係る管制型交通マネジメントシステムは、複数のサーバを備えている。サーバは情報処理装置の一例である。複数のサーバの各々は、交通管制に関する管制情報処理を実行する。管制情報処理は、移動体の一例である車両の管制を行うための各種の情報処理である。
【0021】
管制情報処理は、例えば、局所領域における車両の経路計画の立案を表す局所経路計画処理、大局領域の車両の経路計画の立案を表す大局経路計画処理、管制対象の車両を制御する車両制御処理、車両又は歩行者等の物体の検知処理を表す物体検知処理、車両又は歩行者等の物体を追跡する処理を表す物体追跡処理、及び信号機を制御する信号機制御処理等である。
【0022】
図1に、管制型交通マネジメントシステムの例を示す。図1に示すように、管制型交通マネジメントシステムは、管制対象となる車両V、車両Vに搭載された移動サーバ10、管制対象ではない歩行者W、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Z、及びクラウドサーバ30を備える。複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zの各々は、車両が走行する交通環境内の各箇所に設置される。また、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zの各々には、センサの一例であるカメラS,S,・・・,Sが各々設置されている。
【0023】
移動サーバ10、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Z、及びクラウドサーバ30は通信網N1を介して接続されている。移動サーバ10、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Z、及びクラウドサーバ30は、管制情報処理の一部又は全部を実行する。これにより、例えば、車両Vは適切な経路Rを走行する。
【0024】
例えば、図1に示されるような管制型交通マネジメントシステム1のクラウドサーバ30は、交通環境に存在する物体の物体追跡処理を実行する。この場合には、例えば、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zは、センサであるカメラによって撮像された画像に基づいて物体検知処理を実行する。
【0025】
複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zの各々は、物体検知処理の結果をクラウドサーバ30へ送信する。クラウドサーバ30は、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zから送信された物体検知処理の結果に基づき物体追跡処理を実行し、その結果に応じて交通環境内の車両V又は信号機(図示省略)等を制御するための制御信号を複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zの各々へ送信する。
【0026】
そして、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zはクラウドサーバ30から送信された制御信号に応じて各種の管制情報処理を実行する。例えば、あるエッジサーバは移動サーバ10に対して制御信号を出力する。移動サーバ10は当該エッジサーバから受信した制御信号に応じて車両を制御する。また、あるエッジサーバは、クラウドサーバ30から受信した制御信号に応じて信号機(図示省略)を制御する。
【0027】
ここで、例えば、図1に示されるように、ある場所において歩行者Wが突発的に多数発生した場合を考える。この場合、歩行者Wが多数発生している場所に管制対象の車両が存在しなかったとしても、その場所に存在するエッジサーバ20Cから歩行者Wの物体検知処理の結果がクラウドサーバ30へ送信される。この場合には、クラウドサーバ30の処理負荷が増大し、その他の管制情報処理を即時に実行できない可能性がある。この結果、例えば、図1に示されるように、管制対象の車両Vに対して管制結果に基づく制御信号が送信されず、管制対象の車両Vを適切に制御することができない場合がある。
【0028】
また、図2に示されるように、管制型交通マネジメントシステム1において、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zとクラウドサーバ30との間の通信路の長さは長くなる。この場合、図2に示されるような上流の通信路Nにおいて異常が発生すると、交通環境における管制機能が広範囲で失われる可能性がある。管制対象となる車両が多い場合には、その影響は広範囲に亘り、管制結果である制御信号がエッジサーバ20A及び移動サーバ10に到達せず、車両を適切に管制することができない。
【0029】
そこで、本実施形態に係る管制型交通マネジメントシステム1では、管制情報処理に要する時間を最小化する。具体的には、管制型交通マネジメントシステム1は、管制情報処理を実行するのに適したサーバに、処理対象の管制情報処理を割り当てる。これにより、管制情報処理が分散実行され、管制情報処理に要する時間が最小化される。
【0030】
例えば、管制型交通マネジメントシステム1は、管制対象の車両と地理的に関係のあるセンシング範囲を有するサーバ(例えば、管制対象の車両との間の距離が所定の閾値以下であるサーバ)に対して、物体追跡処理の実行を割り当てる。
【0031】
または、例えば、管制型交通マネジメントシステム1は、あるサーバの処理負荷が増大した場合、当該サーバとは異なる他のサーバに管制情報処理の実行を割り当てる。あるサーバから他のサーバへの情報処理の割り当ての変更は、ハンドオーバとも称される。また、例えば、管制型交通マネジメントシステム1は、管制対象の車両が追加された場合、及び管制対象の車両の経路の変更が発生した場合等にもハンドオーバを実行してもよい。
【0032】
または、例えば、図3に示すように、管制型交通マネジメントシステム1は、エッジサーバ20Yに物体追跡処理の実行を割り当てる。これにより、クラウドサーバ30は他の管制情報処理(例えば、信号機制御)の実行に備えることができる。
【0033】
または、例えば、図4に示すように、管制対象の車両が少ない場合又は制御対象の信号機(図示省略)が少ない場合、管制型交通マネジメントシステム1は、管制情報処理の全て又は多くを複数のエッジサーバ20A,20B,・・・20Zに割り当てる。例えば、図4の例では、エッジサーバ20Bに信号機制御処理が割り当てられ、エッジサーバ20Yに物体追跡処理が割り当てられる。これにより、管制型交通マネジメントシステム1における上流の通信路Nに異常が発生したとしてもその影響を低減させることができる。
【0034】
ここで、どのサーバにどの管制情報処理の実行を割り当てるのか、といった点が問題となる。この点、ある管制情報処理をあるサーバへ割り当てる際には、当該サーバが当該管制情報処理を実行するのにどれくらいの時間を要するのか、という点を考慮する必要がある。管制情報処理の実行が所定の時間内に完了しない場合には、その処理結果が管制対象物(例えば、車両及び信号機等)へ所定の時間内に到達しない。この場合には管制処理を所定の時間内に完了することができないため適切ではない。
【0035】
更に、管制情報処理の処理結果に応じて管制対象物を制御する場合、当該管制対象物と管制情報処理を実行したサーバとの間の通信に要する時間を考慮する必要がある。管制対象物と管制情報処理を実行したサーバとの間の通信に要する時間が長い場合、たとえ管制情報処理の実行が即時に完了されたとしても、その処理結果が管制対象物へ所定の時間内に到達しない場合には管制処理が所定の時間内に完了せず適切ではない。
【0036】
そこで、本実施形態の管制型交通マネジメントシステム1は、サーバが管制情報処理を実行するのに要する時間とサーバ間の通信に要する時間とを考慮して、管制情報処理の実行をサーバへ割り当てる。管制情報処理を複数のサーバへ分散させることにより、管制情報処理の負荷分散とロバスト化とを図ることが可能となる。
【0037】
以下、具体的に説明する。
【0038】
<第1実施形態の管制型交通マネジメントシステムの構成>
【0039】
図5は、管制型交通マネジメントシステム1の概要を示す図である。図5に示すように、管制型交通マネジメントシステム1は、管制対象となる移動体の一例である車両V、管制対象でない歩行者W、及び図示しない信号機等を含む。
【0040】
図6に、第1実施形態に係る管制型交通マネジメントシステム1のブロック図を示す。図6に示されるように、管制型交通マネジメントシステム1は、複数の移動サーバ10A,10B,・・・,10Z、交通環境に設置された複数のエッジサーバ20A,20B,・・・,20Z、及びクラウドサーバ30を含む。管制型交通マネジメントシステム1は、複数の車両と複数のサーバとが互いに通信可能に構成される。具体的には、複数のエッジサーバ20A,20B,・・・,20Zとクラウドサーバ30とは、通信網N1により通信可能に接続される。また、複数の移動サーバ10A,10B,・・・,10Zと複数のエッジサーバ20A,20B,・・・,20Zとは、無線通信網N2により通信可能に接続される。なお、移動サーバ10同士は、車車間通信により直接通信可能に構成してもよい。また、移動サーバ10とエッジサーバ20との通信、エッジサーバ20同士の通信が、通信網を介さずに直接行われてもよい。
【0041】
なお、管制対象となる車両は、自律運転でも手動運転でもよい。また、車両には、移動サーバ10が搭載される場合もあれば、搭載されない場合もある。すなわち、管制対象となる車両に移動サーバ10が搭載されていないという交通環境も想定される。
【0042】
なお、以下では、特定の移動サーバを指し示す以外の場合には、移動サーバを単に「移動サーバ10」と称する。また、特定のエッジサーバを指し示す以外の場合には、エッジサーバを単に「エッジサーバ20」と称する。
【0043】
移動サーバ10及びエッジサーバ20は、物体を検知するためのセンサと接続される。センサの一例としてはカメラ又はレーザレーダが挙げられる。
【0044】
図7は、移動サーバ10のハードウェア構成を示すブロック図である。図7に示すように、移動サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0045】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、特定処理ルーチンを実行するためのプログラムが記憶されている。
【0046】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを記憶する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを記憶する。
【0047】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、及び音声入力デバイスを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0048】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ又はスピーカーであり、各種の情報を表示又は再生する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0049】
通信IF17は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)、LTE、5G等の規格が用いられる。無線通信を行う場合、図示しないアンテナが接続される。また、通信IF17は、LTE D2Dを実行するように構成可能である。
【0050】
なお、図7は、エッジサーバ20及びクラウドサーバ30のハードウェア構成を示すブロック図でもある。エッジサーバ20及びクラウドサーバ30は、移動サーバ10と同様に、図7に示されるようなコンピュータにより構成される。
【0051】
なお、本実施形態の移動サーバ10、エッジサーバ20、及びクラウドサーバ30は同様の機能を有する。以下では、クラウドサーバ30の機能構成を説明する。
【0052】
<クラウドサーバ30>
【0053】
図8は、クラウドサーバ30の機能構成を示すブロック図である。図8に示すように、本実施形態に係るクラウドサーバ30は、通信部300と、計算処理部302と、処理装置特定部304と、処理部306とを含む。
【0054】
図9に、移動サーバ10、エッジサーバ20、及びクラウドサーバ30の各々が実行可能な管制情報処理を説明するための図を示す。図9に示されるように、局所経路計画処理、大局経路計画処理、物体追跡処理、及び信号機制御処理は、何れのサーバも実行可能である。一方、移動サーバ10及びエッジサーバ20は、物体検知処理を実行することが可能である。また、移動サーバ10は、車両制御処理を実行することが可能である。また、エッジサーバ20は、ルーティング処理を実行することが可能である。ここで、ルーティング処理とは、取得した情報を適切な送信先へ送信する処理である。
【0055】
通信部300は、他のサーバとの間において情報のやり取りをする。ここで他のサーバとは、移動サーバ10及びエッジサーバ20である。
【0056】
具体的には、通信部300は、他のサーバの各々から、当該他のサーバの処理能力に関する情報を表す処理能力情報Cを受信する。また、通信部300は、割り当て対象の管制情報処理の計算量を表す処理量情報Nを受信する。なお、iは処理能力情報又は処理量情報を識別するためのインデックスである。
【0057】
サーバの処理能力情報Cは、サーバのCPUの処理負荷又はRAMのメモリ使用率等に応じて決定される情報であるため、サーバの処理負荷状況に応じて変動する。このため、通信部300は、複数のサーバの各々に対して処理能力情報Cの問い合わせを表す信号を送信することにより、各サーバの処理能力情報Cを取得する。なお、複数のサーバの各々の処理能力情報Cは、応答時間を確認するための信号(いわゆる「ping」)の応答時間に応じて推定されてもよい。
【0058】
また、管制情報処理の処理量情報は、管制情報処理を実行する際の計算量を表す情報であり、処理対象の管制情報処理に応じて異なる。このため、通信部300は、処理対象の管制情報処理が発生した場合には、他のサーバ経由で管制情報処理の処理量情報を受信する。
【0059】
計算処理部302は、自らのサーバの処理能力情報Cと、処理対象の管制情報処理の処理量情報Nとに基づいて、自らのサーバが当該管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第1計算時間C -1・Nを算出する。
【0060】
具体的には、計算処理部302は、自らのサーバの現在の処理負荷状況に応じて、自らのサーバの処理能力情報Cを算出する。また、計算処理部302は、処理対象の管制情報処理が自らのサーバにおいて発生した場合には、その処理対象の管制情報処理の処理量情報Nを取得する。なお、計算処理部302は、処理対象の管制情報処理が他のサーバにおいて発生した場合には、他のサーバ経由で通信部300により受信された処理対象の管制情報処理の処理量情報Nを取得する。
【0061】
次に、計算処理部302は、自らのサーバと管制対象物との間の通信に要する時間を算出する。例えば、処理対象の管制情報処理によって管制される管制対象物が車両であった場合、計算処理部302は、自らのサーバと当該車両に搭載されている移動サーバ10との間の通信に要する時間を計算する。また、例えば、処理対象の管制情報処理によって管制される管制対象物が信号機であった場合、計算処理部302は、自らのサーバと当該信号機を制御するサーバとの間の通信に要する時間を計算する。
【0062】
そして、計算処理部302は、第1計算時間と自らのサーバと管制対象物との間の通信に要する時間とを足すことにより、自らのサーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間である第1時間を推定する。
【0063】
また、計算処理部302は、複数の他のサーバの各々について、通信部300により受信されたサーバの処理能力情報Cと、処理対象の管制情報処理の処理量情報Nとに基づいて、他のサーバが対象の管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間を算出する。
【0064】
具体的には、計算処理部302は、インデックスがi=1~Mに相当する複数のサーバの各々についての処理能力情報C(i=1~M)を用いて、各サーバの第2計算時間を算出する。次に、計算処理部302は、複数の他のサーバの各々について、当該他のサーバと管制対象物との間の通信に要する時間を算出する。
【0065】
そして、計算処理部302は、複数の他のサーバの各々について、第2計算時間と他のサーバと管制対象物との間の通信に要する時間とを足すことにより、他のサーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間である第2時間を推定する。
【0066】
図10図14に、サーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間を説明するための図を示す。図10図14の例では、管制情報処理の一例として物体追跡処理が実行される場合を説明する。
【0067】
まず、クラウドサーバ30において物体追跡処理を実行する場合について説明する。
【0068】
<クラウドサーバ30において物体追跡処理を実行する場合に要する時間>
【0069】
図10及び図11は、クラウドサーバ30において物体追跡処理を実行する場合の期待時間を説明するための図である。図10及び図11の例は、移動サーバ10又はエッジサーバ20に備えられたカメラによって画像が撮像され、その画像からN個の物体が検知される場合の物体追跡問題となる。当該物体追跡問題の計算量は、既知のハンガリアン法とカルマンフィルタとを用いた典型手法を用いると、O(N)である。
【0070】
なお、以下では、説明に用いる数式との関係上、クラウドサーバ0、移動サーバ1、エッジサーバ2、エッジサーバ3、エッジサーバ4、及びエッジサーバ5において管制情報処理が実行される場合を例に説明する。
【0071】
図10に示されるように、エッジサーバ2に備えられたカメラS2-1,S2-2によって、2台の車両が写る画像が撮像され、エッジサーバ3に備えられたカメラS3-1によって、1台の車両と1人の人物が写る画像が撮像される。また、エッジサーバ4に備えられたカメラS4-1によって、3人の人物が写る画像が撮像される。また、エッジサーバ5に備えられたカメラS5-1によって、1台の車両と2人の人物が写る画像が撮像される。
【0072】
この場合、エッジサーバ2,3,4,5の各々は、カメラにより撮像された画像に対して物体検知処理を実行し、その結果をクラウドサーバ30へ送信する。エッジサーバ,3,4,5の各々は、取得した物体検知処理の結果をルーティング処理することにより、物体検知処理の結果をクラウドサーバ30へ送信する。
【0073】
そして、クラウドサーバ30は、エッジサーバ2,3,4,5の各々から送信された結果を受信し、それらの結果に基づいて物体追跡処理を実行する。また、クラウドサーバ30により実行された物体追跡処理の結果に応じて後述する車両の走行が管制される。
【0074】
この場合には、まず、計算処理部302は、以下の式(1)に示されるような計算式に従って、クラウドサーバ30が物体追跡処理を実行した場合に要する上り通信時間の期待値τup0を算出する。上り通信時間の期待値は、エッジサーバ2,3,4,5の各々がルーティング処理を実行し、エッジサーバ2,3,4,5の各々からクラウドサーバ30へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。
【0075】
【数1】

(1)
【0076】
なお、上記式(1)におけるτ1:0は、ネットワークN1からクラウドサーバ0へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。上記式(1)におけるτi:1は、エッジサーバiからネットワークN1へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。なお、iは、エッジサーバを識別するためのインデックスである。
【0077】
次に、計算処理部302は、以下の式(2)に示されるような計算式に従って、クラウドサーバ0が物体追跡処理を実行した場合に要する下り通信時間の期待値τdown,0:ADを算出する。ADはAuto-Drivingの略であり、自動運転により走行制御がされる車両を表す。図11は、下り通信時間の期待値の算出を説明するための図である。
【0078】
【数2】

(2)
【0079】
なお、上記式(2)におけるτ0:1は、クラウドサーバ0からネットワークN1へデータとしての物体追跡処理の結果が送信される場合に要する時間の期待値である。上記式(1)におけるτ1:iは、ネットワークN1からエッジサーバiへ物体追跡処理の結果が送信される場合に要する時間の期待値である。なお、ρi:ADは、エッジサーバiから管制対象物である車両に搭載された移動サーバ10へ物体追跡処理の結果が無線通信される場合に要する時間の期待値である。
【0080】
また、計算処理部302は、自らのサーバの処理能力情報Cと、処理対象の物体追跡処理の処理量情報Nとに基づいて、自らのサーバが当該物体追跡処理を実行した場合に要する時間を表す第1計算時間C -1・N を算出する。処理能力情報Cは、時々刻々と変化する(例えば、他の処理を行っている場合等)。このため、計算処理部302は、処理能力情報Cを逐次取得して計算処理に利用する。Nは、物体検知処理により検知された物体の数である。N は、物体追跡処理を実行する際の実行アルゴリズムの計算量のオーダとして扱うことが可能である。
【0081】
計算処理部302は、以下の式(3)に従って、上り通信時間の期待値τup0と、下り通信時間の期待値τdown,0:ADと、第1計算時間C -1・N との和を、第1時間τAD0として算出する。第1時間τAD0は、クラウドサーバ0が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である。
【0082】
【数3】

(3)
【0083】
上述した処理により、クラウドサーバ0が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である第1時間τAD0が算出される。
【0084】
次に、管制対象物と直結しているエッジサーバにおいて物体追跡処理を実行する場合について説明する。
【0085】
<管制対象物と直結するエッジサーバにて物体追跡処理を実行する場合に要する時間>
【0086】
図12は、エッジサーバにおいて物体追跡処理を実行する場合の期待時間を説明するための図である。
【0087】
図12に示されるように、エッジサーバ2に備えられたカメラS2-1,S2-2によって、2台の車両が写る画像が撮像され、エッジサーバ3に備えられたカメラS3-1によって、1台の車両と1人の人物が写る画像が撮像される。
【0088】
なお、図12の左側は、エッジサーバ2において物体追跡処理が実行される際の上り通信時間に関する図である。また、図12の右側は、エッジサーバ2において物体追跡処理が実行される際の下り通信時間に関する図である。
【0089】
この場合、エッジサーバ3は、カメラS3-1により撮像された画像に対して物体検知処理を実行し、その結果をエッジサーバ2へ送信する。また、エッジサーバ2は、カメラS2-1,S2-2により撮像された画像に対して物体検知処理を実行し、その結果を取得する。
【0090】
計算処理部302は、以下の式(4)に示されるような計算式に従って、エッジサーバ2が物体追跡処理を実行した場合に要する上り通信時間の期待値τup2を算出する。上り通信時間の期待値は、エッジサーバ3がルーティング処理を実行し、エッジサーバ3からエッジサーバ2へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。
【0091】
【数4】

(4)
【0092】
なお、上記式(4)におけるτ3:1は、エッジサーバ3からネットワークN1へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。上記式(4)におけるτ1:2は、ネットワークN1からエッジサーバ2へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。
【0093】
次に、計算処理部302は、以下の式(5)に示されるような計算式に従って、エッジサーバ2が物体追跡処理を実行した場合に要する下り通信時間の期待値τdown,2:ADを算出する。
【0094】
【数5】

(5)
【0095】
なお、上記式(5)におけるδはδ関数を表す。i=3である場合にδ(i-3)=1となる。上記式(5)のδ(i-3){τi-1:1+τ1:i}は、物体追跡処理を実行しないエッジサーバ3を経由して、管制対象物の車両へ物体追跡処理の結果を送信する場合に要する時間である。
【0096】
また、計算処理部302は、他のサーバであるエッジサーバ2の処理能力情報Cと、処理対象の物体追跡処理の処理量情報Nとに基づいて、他のサーバであるエッジサーバ2が当該物体追跡処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間C -1・N を算出する。なお、Nは、エッジサーバ2によって検知された物体数とエッジサーバ3によって検知された物体数との和である。処理能力情報Cは、時々刻々と変化する(例えば、他の処理を行っている場合等)。このため、クラウドサーバ30の計算処理部302は、処理能力情報Cを逐次取得して計算処理に利用する。また、エッジサーバiの処理能力情報Cとクラウドサーバ30の処理能力情報Cとの間には以下の関係が成立する。以下の式におけるtは時刻を表す。
【0097】
【数6】
【0098】
計算処理部302は、以下の式(6)に従って、上り通信時間の期待値τup2と、下り通信時間の期待値τdown,2:ADと、エッジサーバ2の第2計算時間C -1・N との和を、エッジサーバ2の第2時間τAD2として算出する。エッジサーバ2の第2時間τAD2は、エッジサーバ2が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である。
【0099】
【数7】

(6)
【0100】
図13は、エッジサーバ3において物体追跡処理を実行する場合に要する時間を説明するための図である。
【0101】
図13の左側は、エッジサーバ3において物体追跡処理が実行される際の上り通信時間に関する図である。また、図13の右側は、エッジサーバ3において物体追跡処理が実行される際の下り通信時間に関する図である。
【0102】
この場合、エッジサーバ2は、カメラS2-1,S2-2により撮像された画像に対して物体検知処理を実行し、その結果をエッジサーバ3へ送信する。また、エッジサーバ3は、カメラS3-1により撮像された画像に対して物体検知処理を実行し、その結果を取得する。
【0103】
この場合には、まず、計算処理部302は、以下の式(7)に示されるような計算式に従って、エッジサーバ3が物体追跡処理を実行した場合に要する上り通信時間の期待値τup3を算出する。上り通信時間の期待値は、エッジサーバ2がルーティング処理を実行し、エッジサーバ2からエッジサーバ3へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。
【0104】
【数8】

(7)
【0105】
なお、上記式(7)におけるτ2:1は、エッジサーバ2からネットワークN1へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。上記式(7)におけるτ1:3は、ネットワークN1からエッジサーバ3へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。
【0106】
次に、計算処理部302は、以下の式(8)に示されるような計算式に従って、エッジサーバ3が物体追跡処理を実行した場合に要する下り通信時間の期待値τdown,3:ADを算出する。
【0107】
【数9】

(8)
【0108】
なお、上記式(8)のδ(i-2){τi-1:1+τ1:i}は、物体追跡処理を実行しないエッジサーバ3を経由して、管制対象物の車両へ物体追跡処理の結果を送信する場合に要する時間である。
【0109】
また、計算処理部302は、他のサーバであるエッジサーバ3の処理能力情報Cと、処理対象の物体追跡処理の処理量情報Nとに基づいて、他のサーバであるエッジサーバ3が当該物体追跡処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間C -1・N を算出する。なお、Nは、エッジサーバ2によって検知された物体数とエッジサーバ3によって検知された物体数との和である。処理能力情報Cは、時々刻々と変化する(例えば、他の処理を行っている場合等)。このため、クラウドサーバ30の計算処理部302は、処理能力情報Cを逐次取得して計算処理に利用する。
【0110】
計算処理部302は、以下の式(9)に従って、上り通信時間の期待値τup3と、下り通信時間の期待値τdown,3:ADと、エッジサーバ3の第2計算時間C -1・N との和を、エッジサーバ3の第2時間τAD3として算出する。エッジサーバ3の第2時間τAD3は、エッジサーバ3が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である。
【0111】
【数10】

(9)
【0112】
上述した処理により、エッジサーバ2が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である第2時間τAD2と、エッジサーバ3が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である第2時間τAD3とが算出される。
【0113】
次に、管制対象物と直結していないエッジサーバ4において物体追跡処理を実行する場合について説明する。
【0114】
<管制対象物と直結していないエッジサーバ4にて物体追跡処理を実行する場合に要する時間>
【0115】
図14は、管制対象物である車両と直結していないエッジサーバ4において物体追跡処理を実行する場合に要する時間を説明するための図である。
【0116】
図14の左側は、エッジサーバ4において物体追跡処理が実行される際の上り通信時間に関する図である。また、図14の右側は、エッジサーバ4において物体追跡処理が実行される際の下り通信時間に関する図である。
【0117】
図14に示されるように、エッジサーバ2に備えられたカメラS2-1,S2-2によって、2台の車両が写る画像が撮像され、エッジサーバ3に備えられたカメラS3-1によって、1台の車両と1人の人物が写る画像が撮像される。
【0118】
この場合、エッジサーバ2は、カメラS2-1,S2-2により撮像された画像に対して物体検知処理を実行し、その結果をエッジサーバ4へ送信する。エッジサーバ3は、カメラS3-1により撮像された画像に対して物体検知処理を実行し、その結果をエッジサーバ4へ送信する。
【0119】
この場合には、まず、計算処理部302は、以下の式(10)に示されるような計算式に従って、エッジサーバ4が物体追跡処理を実行した場合に要する上り通信時間の期待値τup4を算出する。上り通信時間の期待値は、エッジサーバ2及びエッジサーバ3がルーティング処理を実行し、エッジサーバ2及びエッジサーバ3からエッジサーバ4へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。
【0120】
【数11】

(10)
【0121】
なお、上記式(10)におけるτi:1は、エッジサーバiからネットワークN1へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。上記式(10)におけるτ1:4は、ネットワークN1からエッジサーバ4へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。
【0122】
次に、計算処理部302は、以下の式(11)に示されるような計算式に従って、エッジサーバ4が物体追跡処理を実行した場合に要する下り通信時間の期待値τdown,4:ADを算出する。
【0123】
【数12】

(11)
【0124】
なお、上記式(11)におけるτ4:1は、エッジサーバ4からネットワークN1へ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。上記式(11)におけるτ1:iは、ネットワークN1からエッジサーバiへ物体検知結果が送信される場合に要する時間の期待値である。
【0125】
計算処理部302は、他のサーバであるエッジサーバ4の処理能力情報Cと、処理対象の物体追跡処理の処理量情報Nとに基づいて、他のサーバであるエッジサーバ4が当該物体追跡処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間C -1・N を算出する。なお、Nは、エッジサーバ2によって検知された物体数とエッジサーバ3によって検知された物体数との和である。処理能力情報Cは、時々刻々と変化する(例えば、他の処理を行っている場合等)。このため、クラウドサーバ30の計算処理部302は、処理能力情報Cを逐次取得して計算処理に利用する。
【0126】
計算処理部302は、以下の式(12)に従って、上り通信時間の期待値τup4と、下り通信時間の期待値τdown,4:ADと、エッジサーバ4の第2計算時間C -1・N との和を、エッジサーバ4の第2時間τAD4として算出する。エッジサーバ4の第2時間τAD4は、エッジサーバ4が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である。
【0127】
【数13】

(12)
【0128】
上述した処理により、エッジサーバ4が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である第2時間τAD4が算出される。
【0129】
上述したように、計算処理部302は、自らのサーバであるクラウドサーバ30が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である第1時間τAD0、エッジサーバ2が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である第2時間τAD2、エッジサーバ3が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である第2時間τAD3、及びエッジサーバ4が物体追跡処理を実行した場合の期待時間である第2時間τAD4を算出する。
【0130】
処理装置特定部304は、計算処理部302により計算された計算結果に基づいて、処理対象の管制情報処理をどのサーバへ割り当てるかを決定する。具体的には、処理装置特定部304は、第1時間よりも短い第2時間が存在する場合、第1時間よりも短い第2時間に対応する他のサーバへ管制情報処理の実行を要求する要求信号を出力する。
【0131】
例えば、処理装置特定部304は、以下の式(13)に従って、期待時間が最も短いサーバi ADを特定する。そして、処理装置特定部304は、サーバi ADに対して対象の管制情報処理の実行を要求する要求信号を出力する。
【0132】
【数14】

(13)
【0133】
例えば、上述した図10図14に示す例の場合、処理装置特定部304は、クラウドサーバ30の第1時間τAD0、エッジサーバ2の第2時間τAD2、エッジサーバ3の第2時間τAD3、及びエッジサーバ4の第2時間τAD4を比較する。そして、処理装置特定部304は、エッジサーバ2の第2時間τAD2が、クラウドサーバ30の第1時間τAD0、エッジサーバ2の第2時間τAD2、エッジサーバ3の第2時間τAD3及びエッジサーバ4の第2時間τAD4をよりも短い場合には、エッジサーバ2に対して物体追跡処理の実行を要求する要求信号を出力する。
【0134】
一方、処理装置特定部304は、第1時間よりも短い第2時間が存在しない場合、管制情報処理を自らのサーバにおいて実行する要求信号を出力する。例えば、処理装置特定部304は、クラウドサーバ30の第1時間τAD0が最も短く、第1時間τAD0よりも短い第2時間が存在しない場合、自らのサーバにおいて管制情報処理の実行を要求する要求信号を出力する。
【0135】
処理部306は、第1時間よりも短い第2時間が存在せず、処理装置特定部304によって管制情報処理の実行を要求する要求信号が出力された場合、処理対象の管制情報処理を自らのサーバにおいて実行する。例えば、上述した図10図14に示す例の場合、クラウドサーバ30の第1時間τAD0が最も短い場合、処理部306は物体追跡処理を実行する。
【0136】
また、通信部300は、処理装置特定部304により他のサーバに対する要求信号が出力された場合、当該他のサーバに対して当該要求信号を送信する。
【0137】
要求信号を受信した他のサーバは、処理対象の管制情報処理を実行し、その結果を所定のサーバへ送信する。
【0138】
<移動サーバ10>
【0139】
図15は、移動サーバ10の機能構成を示すブロック図である。図15に示すように、本実施形態に係る移動サーバ10は、通信部300と、計算処理部302と、処理装置特定部304と、処理部306とを含む。
【0140】
また、図15に示されるように、移動サーバ10は、センサ110と通信可能に接続されている。センサ110は、カメラ及びレーザレーダ等である。例えば、センサ110がカメラである場合、そのカメラは車両のルームミラー裏等に搭載され、車両の前方を逐次撮像する。また、センサ110がレーザレーダである場合、そのレーザレーダは車両の天井部分等に搭載され、車両の前後左右方向の点群データを逐次取得する。
【0141】
移動サーバ10における、通信部100、計算処理部102、処理装置特定部104、及び処理部106は、クラウドサーバ30の各部と同様の機能を有している。
【0142】
処理部106は、センサ110によって取得された情報に基づいて、物体検知処理及び車両制御処理等の管制情報処理を実行する。
【0143】
例えば、センサ110がカメラである場合、処理部106は、カメラによって撮像された画像を、SVM等の予め機械学習された学習済みモデルへ入力して、画像に写る歩行者又は車両等の物体を検知する。
【0144】
また、例えば、センサ110がレーザレーダである場合、処理部106は、レーザレーダによって取得された点群データと事前に取得した地図データとに基づいて、既知の技術を用いて、車両の位置及び姿勢等を推定し車両制御等を行う。
【0145】
なお、移動サーバ10の通信部100は、複数のアクセスポイントとの接続を動的に切替える従来技術(例えば特開第2018-121162号公報)を採用することが好適である。
【0146】
移動サーバ10の計算処理部102は、クラウドサーバ30と同様に、自らのサーバが処理対象の管制情報処理を実行する場合の期待時間である第1時間を算出すると共に、他のサーバの各々が処理対象の管制情報処理を実行する場合の期待時間である第2時間を算出する。
【0147】
そして、移動サーバ10の処理装置特定部104は、第1時間よりも短い第2時間が存在する場合、第1時間よりも短い第2時間に対応する他のサーバへ管制情報処理の実行を要求する要求信号を出力する。一方、移動サーバ10の処理装置特定部104は、第1時間よりも短い第2時間が存在しない場合、自らのサーバにおいて管制情報処理の実行を要求する要求信号を出力する。
【0148】
移動サーバ10の処理部106は、処理装置特定部104により自らのサーバにおいて管制情報処理の実行を要求する要求信号が出力された場合、物体検知処理及び車両制御処理等の管制情報処理を実行する。
【0149】
<エッジサーバ20>
【0150】
図16は、エッジサーバ20の機能構成を示すブロック図である。図16に示すように、本実施形態に係るエッジサーバ20は、通信部200と、計算処理部202と、処理装置特定部204と、処理部206とを含む。
【0151】
また、図16に示されるように、エッジサーバ20は、センサ210と通信可能に接続されている。センサ210は、カメラ等である。例えば、センサ210がカメラである場合、そのカメラは例えば、交差点等に搭載され、交差点周辺の画像を逐次撮像する。
【0152】
エッジサーバ20における、通信部200、計算処理部202、処理装置特定部204、及び処理部206は、クラウドサーバ30及び移動サーバ10の各部と同様の機能を有している。
【0153】
処理部206は、センサ210によって取得された情報に基づいて、物体検知処理を行う。また、処理部206は、管制情報処理の結果等を他のサーバへ送信するルーティング処理を実行する。
【0154】
エッジサーバ20の計算処理部202は、クラウドサーバ30と同様に、自らのサーバが処理対象の管制情報処理を実行する場合の期待時間である第1時間を算出すると共に、他のサーバの各々が処理対象の管制情報処理を実行する場合の期待時間である第2時間を算出する。
【0155】
そして、エッジサーバ20の処理装置特定部204は、第1時間よりも短い第2時間が存在する場合、第1時間よりも短い第2時間に対応する他のサーバへ管制情報処理の実行を要求する要求信号を出力する。一方、エッジサーバ20の処理装置特定部204は、第1時間よりも短い第2時間が存在しない場合、自らのサーバにおいて管制情報処理の実行を要求する要求信号を出力する。
【0156】
エッジサーバ20の処理部206は、処理装置特定部204により自らのサーバにおいて管制情報処理の実行を要求する要求信号が出力された場合、物体検知処理及び車両制御処理等の管制情報処理を実行する。
【0157】
以上のように、本実施形態の管制型交通マネジメントシステム1では、交通環境管制情報処理を実行するのに適したサーバに管制情報処理が割り当てられ、その管制情報処理が実行される。これにより、管制対象の車両が増加した場合であっても、複数の車両を適切に管制することができる。
【0158】
<移動サーバ10、エッジサーバ20、及びクラウドサーバ30の作用>
【0159】
次に、図17を参照して、本実施形態の管制型交通マネジメントシステム1の移動サーバ10、エッジサーバ20、及びクラウドサーバ30の行う情報処理ルーチンについて説明する。なお、以下ではクラウドサーバ30が情報処理ルーチンを実行する場合を例に説明する。
【0160】
まず、ステップS100において、通信部300は、他のサーバの各々から、当該他のサーバiの処理能力に関する情報を表す処理能力情報Cを取得する。
【0161】
ステップS102において、通信部300は、処理対象の管制情報処理の計算量を表す処理量情報Nを受信する。
【0162】
ステップS104において、計算処理部302は、自らのサーバの処理能力情報Cと、処理対象の管制情報処理の処理量情報Nとに基づいて、自らのサーバが当該管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第1計算時間C -1・Nを算出する。
【0163】
ステップS106において、計算処理部302は、自らのサーバと管制対象物との間の通信に要する時間を算出する。そして、ステップS106において、計算処理部302は、上記ステップS104で算出された第1計算時間C -1・Nと、自らのサーバと管制対象物との間の通信に要する時間とを足すことにより、自らのサーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間である第1時間を推定する。
【0164】
ステップS108において、計算処理部302は、複数の他のサーバの各々について、上記ステップS100で受信されたサーバの処理能力情報Cと、上記ステップS102で受信された処理対象の管制情報処理の処理量情報Nとに基づいて、他のサーバが対象の管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間C -1・Nを算出する。
【0165】
ステップS110において、計算処理部302は、複数の他のサーバの各々について、当該他のサーバと管制対象物との間の通信に要する時間を算出する。そして、ステップS110において、計算処理部302は、複数の他のサーバの各々について、上記ステップS108で算出された第2計算時間C -1・Nと、上記ステップS106で算出された他のサーバと管制対象物との間の通信に要する時間とを足すことにより、他のサーバが管制情報処理を実行した場合に要する期待時間である第2時間を推定する。
【0166】
ステップS112において、処理装置特定部304は、上記ステップS106で推定された自らのサーバの第1時間と、上記ステップS110で推定されて複数の他のサーバの各々の第2時間とを比較して、第1時間よりも短い第2時間が存在するか否かを判定する。第1時間よりも短い第2時間が存在する場合には、ステップS114へ進む。一方、第1時間よりも短い第2時間が存在しない場合には、ステップS118へ進む。
【0167】
ステップS114において、処理装置特定部304は、上記式(13)に従って、最も短い第2時間に対応する他のサーバi ADを特定する。そして、ステップS114において、処理装置特定部304は、他のサーバi ADに対して対象の管制情報処理の実行を要求する要求信号を出力する。
【0168】
ステップS116において、通信部300は、他のサーバi ADに対して上記ステップS114で出力された要求信号を送信する。
【0169】
ステップS118において、処理装置特定部304は、処理対象の管制情報処理を自らのサーバにおいて実行する要求信号を出力する。
【0170】
ステップS120において、処理部306は、処理対象の管制情報処理を自らのサーバにおいて実行する。
【0171】
以上説明したように、第1実施形態に係る管制型交通マネジメントシステム1の移動サーバ10、エッジサーバ20、及びクラウドサーバ30の何れかのサーバは、他のサーバの各々から、他のサーバの処理能力に関する情報を表す処理能力情報を受信する。そして、サーバは、自らのサーバの処理能力情報と、交通管制に関する管制情報処理の計算量を表す処理量情報とに基づいて、自らのサーバが管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第1計算時間を算出する。そして、サーバは、第1計算時間と、自らのサーバと管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第1時間を推定する。また、サーバは、複数の他のサーバの各々について、処理能力情報と処理量情報とに基づいて、他のサーバが管制情報処理を実行した場合に要する時間を表す第2計算時間を算出する。そして、サーバは、第2計算時間と、他のサーバと管制対象物との間の通信に要する時間とを含む第2時間を推定する。サーバは、第1時間よりも短い第2時間が存在する場合、第1時間よりも短い第2時間に対応する他のサーバへ管制情報処理の実行を要求する。また、サーバは、第1時間よりも短い第2時間が存在しない場合、管制情報処理を自らのサーバにおいて実行する。これにより、移動体を外部のサーバにより管制する際に管制対象の移動体が増加した場合であっても、複数の移動体を適切に管制することができる。
【0172】
また、システム全体の処理速度を向上し、交通流の円滑性を高めることができる。
【0173】
<第2実施形態の管制型交通マネジメントシステムの構成>
【0174】
次に、第2実施形態の管制型交通マネジメントシステムについて説明する。第2の実施形態の管制型交通マネジメントシステムは、サーバ間の通信時間、損失率、及び誤り訂正率等の通信品質を考慮して、サーバ間又はサーバと管制対象物との間の通信の期待時間を補正する点が第1実施形態と異なる。なお、第2実施形態の管制型交通マネジメントシステムの構成は、第1実施形態と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0175】
第2実施形態のクラウドサーバ30の通信部300は、他のサーバの各々から、サーバ間でやり取りされる通信品質に関する情報を受信する。通信品質に関する情報とは、サーバ間の通信時間、損失率、及び誤り訂正率等の通信状態を表す情報である。
【0176】
第2実施形態のクラウドサーバ30の計算処理部302は、通信部300により受信したサーバのペア間の通信品質に関する情報に基づいて、第1時間及び第2時間を推定する。
【0177】
上記式(1)~(9)に示されるように、通信時間の期待値を表す第1時間及び第2時間には、τA:BといったサーバAとサーバBとの間の通信時間の期待値の項が含まれている。そのため、第2実施形態では、それらのサーバのペア間の通信品質を考慮してτA:Bといったサーバ間の通信時間の期待値を算出し、その結果を第1時間及び第2時間へ反映する。
【0178】
具体的には、計算処理部302は、複数のサーバのペアの各々について、例えば、サーバAとサーバBとの間の通信時間τA:Bを、以下の式(14)に従って算出する。
【0179】
なお、TcommはサーバAとサーバBとの間の通信時間の実測値の平均値Tcommである。Tlostは、通信における伝送損失であるパケットロスを通信時間に換算した定数である。Terrは、通信における誤り訂正を通信時間に換算した定数である。Tlostはパケットロスが発生した際に逐次設定され、Terrは誤り訂正が発生した際に逐次設定される。Tcomm、Tlost、Terrは、通信品質に関する情報に応じて逐次設定される。
【0180】
【数15】

(14)
【0181】
上記式(14)の上線部分は論理否定を表す。なお、上記式(14)におけるP(S=Lost)はパケットロスの発生率、P(U=Error)は誤り訂正の発生率であり、通信品質に関する情報の一例である。
【0182】
そして、例えば、計算処理部302は、複数のサーバのペアの各々について、以下の表1に示されるような予測時間表を作成する。
【0183】
【表1】
【0184】
計算処理部302は、複数のサーバのペアの各々について算出された通信時間に基づいて、上記式(1)~(9)に従って、第1時間及び第2時間を算出する。なお、第1時間及び第2時間の何れか一方のみが算出されてもよい。
【0185】
なお、クラウドサーバ30のみならず、移動サーバ10及びエッジサーバ20も通信品質に関する情報に基づいて第1時間及び第2時間を推定する。
【0186】
なお、第2実施形態に係る管制型交通マネジメントシステムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0187】
以上説明したように、第2実施形態に係る管制型交通マネジメントシステムは、サーバのペア間の通信品質に関する情報に基づいて、第1時間及び第2時間を算出する。これにより、サーバ間の通信時間が精度良く算出され、どのサーバへ管制情報処理を割り当てるべきかが適切に決定される。
【0188】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0189】
例えば、所定の確認信号を他のサーバに送信することにより当該サーバの稼働状態に関する情報を取得し、稼働状態に関する情報を用いて第1時間又は第2時間を算出するか否かを決定してもよい。稼働状態に関する情報とは、サーバが稼働しているか否かを示す情報又はサーバは稼働しているが情報処理を行うことに適さない状態を示す情報である。この場合には、例えば、通信部300は、更に、他のサーバの各々から、当該他のサーバの稼働状態に関する情報を取得する。そして、計算処理部302は、稼働状態に関する情報が管制情報処理の実行に適さない稼働状態を示す場合に、稼働状態の他のサーバの第2時間を推定しないようにしてもよい。
【0190】
また、上記実施形態では、第1時間よりも短い第2時間が存在する場合、複数のサーバから、第1時間よりも短い第2時間に対応する他のサーバへ管制情報処理を要求する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2時間が短い順に複数のサーバを順位付けした際の上位N台の他のサーバへ管制情報処理を要求するようにしてもよい。この場合には、処理装置特定部304は、第1時間よりも短い第2時間が存在する場合、第2時間が短い順に複数のサーバを順位付けした際の上位N台の他のサーバへ管制情報処理の実行を要求する。これにより、例えば、管制情報処理の要求に対する応答が最も早く返ってきた他のサーバの情報処理結果を採用することができる。これにより、例えば、突然の通信障害及び計算負荷の増大等に対応することができる。また、複数の他のサーバへ管制情報処理を要求することにより、一定時間に得られた管制情報処理の結果の整合性の確認及び管制情報処理の結果の平均化等の処理を行うことができる。これにより、各サーバからの通信に対する通信誤り等の誤差を吸収することができる。
【0191】
また、例えば、上記管制型交通マネジメントシステムにおいて、移動サーバとエッジサーバとクラウドサーバが混在する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。エッジサーバのみ、クラウドサーバとエッジサーバのみ、クラウドサーバと移動サーバのみを含む各構成も採用することができる。
【0192】
また、CPUの代わりに、又は併用して、ECU(Electronic Control Unit)等の処理装置を用いてもよい。
【0193】
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0194】
1 管制型交通マネジメントシステム
20 エッジサーバ
30 クラウドサーバ
100,200,300 通信部
102,202,302 計算処理部
104,204,304 処理装置特定部
106,206,306 処理部
110,210 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図16
図17