(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】非常用照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/30 20200101AFI20240220BHJP
【FI】
H05B45/30
(21)【出願番号】P 2020150283
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】相場 明穂
(72)【発明者】
【氏名】阿野 康則
(72)【発明者】
【氏名】平本 雄也
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-032543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0196419(US,A1)
【文献】特開2007-188792(JP,A)
【文献】特開平07-184325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
前記光源部に電力を供給する電池を外部電源により充電する常用電源回路と、
前記外部電源の停電時に動作し、前記電池により前記光源部を点灯させる非常用電源回路と、
前記非常用電源回路を制御する制御部と、
前記電池の電池電圧を検出し前記制御部に当該電池電圧を入力する電池電圧検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記電池電圧の値が前記電池の正常電圧範囲の下限を示す第1閾値以上であって、前記正常電圧範囲の上限を示す第2閾値以下である場合は前記電池の状態が正常であると判定し、
前記電池電圧の値が前記第1閾値未満であるか、または前記第2閾値を超え
、かつ前記電池が未接続であるか否かを判定する閾値であって、前記第2閾値よりも大きい第3閾値以下である場合は前記電池の状態が異常であると判定
し、
前記電池電圧の値が、前記第3閾値を超える場合は、前記電池は未接続であると判定する非常用照明装置。
【請求項2】
前記制御部から受ける前記電池の状態を報知する報知部をさらに備える請求項
1に記載の非常用照明装置。
【請求項3】
前記外部電源が停電状態であることを検出すると、当該外部電源の状態を前記制御部に伝達する停電検出回路をさらに備える請求項1
または請求項2に記載の非常用照明装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電池電圧の値が前記第1閾値以上であって、前記第2閾値以下である状態が一定時間継続する場合は前記電池の状態が正常であると判定し、
前記制御部は、前記電池電圧の値が前記第1閾値未満である状態が一定時間継続する場合、または前記電池電圧の値が前記第2閾値を超え
、かつ前記第3閾値以下である状態が一定時間継続する場合は前記電池の状態が異常であると判定する請求項1に記載の非常用照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電池電圧の値が前記第3閾値を超える状態が一定時間継続する場合は、前記電池は未接続であると判定する請求項
1に記載の非常用照明装置。
【請求項6】
前記一定時間は、前記電池電圧が少なくとも満充電となるまでの時間である請求項
4または請求項
5に記載の非常用照明装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記電池が未接続であると判定すると、前記常用電源回路を定電圧制御する請求項
1または請求項
5に記載の非常用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非常用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不特定多数の人が集まる場所での火災、地震等の災害または事故の際に生じる停電時には、その場にいる人々が安全に避難できるように、室内を照明する非常用照明装置が用いられることがある。非常用照明装置は、常用時は外部電源から電力が供給され、当該電力で電池を充電し、外部電源から電力が供給されない非常時は、充電した電池からの電力を供給して光源を点灯させる。
【0003】
ところで、非常用照明装置では、光源の点灯ユニットに適合する電池を接続する必要があり、例えば特許文献1には、電池ユニットが点灯ユニットに適合していないことを報知することができる照明器具が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された照明器具では、電池と記憶部を含む電池ユニットが開示されており、当該記憶部には電池ユニットの識別情報が記憶されている。これにより、当該照明器具は、電池ユニットの識別情報を用いて電池ユニットが点灯ユニットに適合しているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の照明器具では、電池ユニットが点灯ユニットに適合しているか否かを判定するために電池に加えて記憶部や、電池ユニットと点灯ユニットの間の通信線等を設ける必要がある。したがって、非常用照明装置のコストアップに繋がる恐れがある。また、特許文献1に記載の照明器具では、電池ユニットが点灯ユニットに適合するものであったとしても、電池の状態が正常であるか否かを判定することは難しいものとなっていた。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、電池に新たな部品を追加することなく電池の状態が正常であるか否かを判定することができる非常用照明装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る非常用照明装置は、光源部と、光源部に電力を供給する電池を外部電源により充電する常用電源回路と、外部電源の停電時に動作し、電池により光源部を点灯させる非常用電源回路と、非常用電源回路を制御する制御部と、電池の電池電圧を検出し制御部に当該電池電圧を入力する電池電圧検出部と、を備え、制御部は、電池電圧の値が電池の正常電圧範囲の下限を示す第1閾値以上であって、正常電圧範囲の上限を示す第2閾値以下である場合は電池の状態が正常であると判定し、電池電圧の値が第1閾値未満であるか、または第2閾値を超え、かつ電池が未接続であるか否かを判定する閾値であって、第2閾値よりも大きい第3閾値以下である場合は電池の状態が異常であると判定し、電池電圧の値が、前記第3閾値を超える場合は、前記電池は未接続であると判定する非常用照明装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る非常用照明装置によれば、電池に新たな部品を追加することなく電池の状態が正常であるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る非常用照明装置の回路ブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る非常用照明装置の各閾値を説明する図である。
【
図3】実施の形態2に係る非常用照明装置の各閾値を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施の形態について添付の図面を用いて説明する。各図では、同一又は相当する部分に同一の符号を付している。重複する説明は、適宜簡略化あるいは省略する。なお、以下に説明される実施の形態により本開示が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1に係る非常用照明装置について以下説明する。
【0013】
図1は、実施の形態1の非常用照明装置100の回路ブロック図である。非常用照明装置100は、点灯ユニット10と、光源部30を備える。光源部30は、非常時に明るさを確保するための光源である。光源部30は、例えばLEDである。光源部30をLEDとすることで非常用照明装置100の消費エネルギーを抑制できる。非常用照明装置100は、光源部30を点灯するために電池50を搭載する。点灯ユニット10は、外部電源ACから電力を供給され、電池50を充電する。外部電源ACは、交流電源である。電池50は、停電等の非常時に光源部30に電力を供給し、光源部30を点灯する。電池50は、充電可能な電池あればよく、例えばニカド電池、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池などの2次電池である。
【0014】
点灯ユニット10は、ダイオードブリッジ1と、常用電源回路2と、充電回路3と、電池電圧検出部4と、停電検出回路5と、非常用電源回路6と、制御部7と、報知部8を備える。
【0015】
ダイオードブリッジ1は、交流を直流に変換する。ダイオードブリッジ1の出力は、常用電源回路2に接続される。ダイオードブリッジ1の出力の低電位側は、接地用端子に接続される。
【0016】
常用電源回路2は、絶縁形フライバック回路で構成される。常用電源回路2は、常用時に外部電源ACから電力を供給され、電池50を充電する。常用電源回路2は、コンデンサ11、コンデンサ13、コンデンサ24、抵抗12、抵抗17、抵抗22、抵抗23、トランス14、スイッチング素子15、制御IC(Integrated Circuit)16、フォトカプラ18、疑似停電発生回路19、ダイオード20、電解コンデンサ21、を備える。
【0017】
常用電源回路2において、外部電源ACの全波とスイッチングによるリップルを低減するために、ダイオードブリッジ1の出力と並列にコンデンサ11が接続される。コンデンサ11の正極には、抵抗12の一端およびトランス14の一次側の一端が接続される。
【0018】
トランス14の一次側の他端には、スイッチング素子15の第1端子が直列に接続される。スイッチング素子15の第2端子はコンデンサ11の負極に接続される。スイッチング素子15の制御端子は、制御IC16に接続される。制御端子は、第1端子、第2端子間をスイッチングするための端子である。制御IC16は、常用電源回路2を制御する。ここで常用時とは、外部電源ACが停電状態または疑似停電状態では無い状態を示す。なお、以下の説明において特に断りが無い限り、停電状態または疑似停電状態をまとめて停電状態と称する。
【0019】
スイッチング素子15は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。スイッチング素子15がMOSFETの場合、第1端子はドレイン端子、第2端子はソース端子、制御端子はゲート端子である。スイッチング素子15において、第1端子がトランス14と接続され、第2端子が接地用端子と接続され、制御端子が制御IC16と接続される。
【0020】
制御IC16は、例えばPFC(Power Factor Correction)ドライバである。制御IC16は、スイッチング素子15を駆動させる。コンデンサ11と並列に抵抗12、コンデンサ13の順で接続された回路は、制御IC16の電源を供給する。
【0021】
制御IC16には抵抗17を介してフォトカプラ18が接続される。抵抗17およびフォトカプラ18は、トランス14の二次側の情報を制御IC16に入力するために設けられる。
【0022】
常用電源回路2は、疑似停電発生回路19を備える。疑似停電発生回路19は、疑似停電状態を発生させることができる回路である。疑似停電発生回路19は、疑似停電点検スイッチ、リモコン点検ボタンなどを備える。疑似停電発生回路19は、例えば疑似停電点検スイッチを入れることをトリガとして制御IC16の動作させることができる。これにより疑似停電発生回路19は、疑似的に停電状態を作り出すことができる。したがって、外部電源ACの停電時に非常用照明装置100が正常に動作するか否かを確認できる。
【0023】
トランス14の二次側のフライバック巻き線の一端には、ダイオード20のアノードが接続される。ダイオード20は、トランス14の二次側に直列に接続され、出力側に安定した電圧を伝達するために設けられる。ダイオード20のカソードには、電解コンデンサ21の正極が接続される。電解コンデンサ21の負極は、接地用端子に接続される。
【0024】
常用電源回路2の接地用の経路において、トランス14の一次側と二次側は、コンデンサ24によって絶縁されている。
【0025】
常用電源回路2は、常用電源出力電圧検出部を備える。常用電源出力電圧検出部は、直列に接続された抵抗22と抵抗23から構成される。常用電源出力電圧検出部は、電解コンデンサ21と並列に接続される。抵抗22と抵抗23の分圧値は、制御部7であるマイクロコンピュータに入力される。これにより、制御部7は、常用電源回路2の出力電圧を検出する。
【0026】
充電回路3は、電池50を充電する回路である。充電回路3は、スイッチング素子31と抵抗32とツェナーダイオード33から構成される。充電回路3は、トランス14のフライバック巻きと電池50の間に接続されている。トランス14のフライバック巻きには、スイッチング素子31の第1端子が接続される。スイッチング素子31の第2端子には抵抗32の一端が接続される。抵抗32の他端には電池50の正極が接続される。抵抗32は、電池50と直列に接続される。電池50の負極は、接地用端子に接続される。すなわち、常用電源回路2の出力端には、スイッチング素子31、抵抗32、電池50が直列に接続される。
【0027】
スイッチング素子31は、例えばトランジスタである。スイッチング素子31がトランジスタの場合、第1端子はコレクタであり、第2端子はエミッタであり、制御端子はベースである。制御端子は第1端子、第2端子間をスイッチングするための端子である。
【0028】
スイッチング素子31の制御端子にはツェナーダイオード33のカソードが接続される。ツェナーダイオード33は電流が変化しても電圧が一定であるという特長を利用して、サージ電流や静電気からICなどを守る保護素子として使用されるダイオードである。ツェナーダイオード33のアノードは、電池50の正極に接続される。これにより、スイッチング素子31は、能動領域で動作を行い、抵抗32にはツェナーダイオード33のツェナー電圧からスイッチング素子31の制御端子と第2端子間の電圧を引いた電圧が印加されることで、定電流でフィードバック制御される。したがって、電池50は定電流で充電される。
【0029】
電池電圧検出部4は、直列に接続された抵抗51と抵抗52から構成される。電池50と並列に抵抗51と抵抗52の直列回路が接続される。また、電池電圧検出部4は、コンデンサ34と並列に接続される。抵抗51、抵抗52で電池電圧を分圧した電圧は、制御部7に入力される。制御部7は、常用電源出力電圧検出部で検出した常用電源回路2の出力電圧と、抵抗51、抵抗52で電池電圧を分圧した電圧との電位差を算出する。制御部7は、算出した電位差に基づいて演算を行い、スイッチング素子15をオンオフする信号の目標値を算出する。
【0030】
常用電源回路2の出力電圧は、検出する電池電圧に合わせて変化させるようにし、定電流で電池50を充電する。そうすることで充電回路における電力の損失を抑えることができる。
【0031】
制御部7は、スイッチング素子15をオンオフする信号の目標値を出力端子から出力する。制御部7の出力端子には、フォトカプラ25が接続される。制御部7から出力される信号は、フォトカプラ25を介してトランス14の一次側に設けられたフォトカプラ18に伝達される。
【0032】
制御部7の出力信号は、フォトカプラ18、抵抗17を介して制御IC16へ伝達される。制御IC16は、制御部7から受ける出力信号により出力電圧の目標値と常用電源回路2の出力電圧が一致するようにスイッチング素子15をオンオフ制御する。以上から、絶縁型フライバック回路である常用電源回路2による出力可変型定電圧フィードバック制御が実現する。
【0033】
非常用電源回路6は、昇圧型スイッチング回路で構成されている。非常用電源回路6は、外部電源ACの停電時等の非常時に動作し、電池50の出力電圧を昇圧して光源部30を点灯させる。すなわち、非常用電源回路6は、直流電源である電池50から電力の供給を受け、光源部30を点灯させる。
【0034】
非常用電源回路6の入力端にはコンデンサ34が並列に接続される。コンデンサ34の正極には、電池50の正極とコイル53の一端が接続される。コンデンサ34の負極は、接地用端子に接続される。コイル53の他端は、ダイオード54のアノードに接続される。ダイオード54のカソードは、コンデンサ58の正極に接続される。コンデンサ58の負極はコンデンサ34の負極に接続される。すなわち、コンデンサ34と並列にコイル53、ダイオード54、コンデンサ58の順で接続された直列回路が接続されている。
【0035】
コイル53とダイオード54の接続点と接地用端子との間には、スイッチング素子55が接続されている。スイッチング素子55の第1端子は、ダイオード54のアノードに接続される。スイッチング素子55の第2端子はコンデンサ58の負極に接続される。スイッチング素子の制御端子は制御部7に接続される。スイッチング素子55は、例えばMOSFETである。
【0036】
コンデンサ58の正極には、光源部30のアノード側が接続される。光源部30のカソード側に抵抗59の一端が接続される。抵抗59の他端は、コンデンサ58の負極に接続される。
図1では、光源部30はLEDが2つ示されているが、非常用照明装置100が備える光源の数は1つ以上であればよい。
【0037】
停電検出回路5は、外部電源ACの停電状態を検出する回路である。停電検出回路5は、トランス14の二次側のフライバック巻き線の一端から出力電圧の信号によって外部電源ACが停電状態であるか否かを監視し、外部電源ACの停電状態を検出する。停電検出回路5は、制御部7に接続される。停電検出回路5は、外部電源ACの停電を検出すると、外部電源ACが停電状態であることを示す信号を制御部7に伝達する。制御部7は、停電検出回路から当該信号を受けると非常用電源回路6を動作する。
【0038】
非常用電源回路6は、非常用電源出力電圧検出部を備える。非常用電源出力電圧検出部は、直列に接続された抵抗56と抵抗57から構成される。非常用電源出力電圧検出部は、コンデンサ58と並列に接続される。抵抗56と抵抗57の分圧値は、制御部7に入力される。これにより、制御部7は非常用電源回路6の出力電圧を検出する。
【0039】
非常用電源回路6は、出力電流検出部を備える。出力電流検出部は、LEDのカソード側に接続された抵抗59から構成される。非常用電源回路6が動作すると、コンデンサ58には電池50の出力電圧が昇圧された電圧が印加される。コンデンサ58に印加される電圧は、非常用電源回路6の出力電圧である。抵抗59には、光源部30を流れる電流に対応する電圧が印加される。抵抗59に印加される電圧は、制御部7に入力される。これにより、制御部7は、非常用電源回路6の出力電流を検出する。非常用電源出力電圧検出部で検出した出力電圧で出力電流の目標値を設定することにより、定電力フィードバック制御される。このように、光源部30の電力を一定に制御する。
【0040】
続いて制御部7について説明する。制御部7はマイクロコンピュータで構成される。マイクロコンピュータは各種の演算を行うCPUと、メモリと、タイマを備える、メモリは、例えば不揮発性メモリから構成される。
【0041】
制御部7は、電池電圧検出部4から入力された電池電圧の分圧値と予めプログラムされた閾値とを比較し、電池50の状態を判定する。なお、閾値はマイクロコンピュータのメモリに記憶しておき、制御部7はメモリから閾値を読み出し、電池電圧の分圧値と比較して電池50の状態を判定するようにしてもよい。以下では制御部7は、予めメモリに第1閾値と第2閾値を記憶しているとして説明する。
【0042】
電池50の状態の判定について詳しく説明する。
図2は、実施の形態1に係る非常用照明装置100の閾値を説明する図である。横軸が電池電圧を表し、縦軸が常用電源回路2の出力電圧を表す。
図2には、第1閾値、第2閾値がそれぞれ示されている。第2閾値は、第1閾値よりも大きい値である。
【0043】
電池電圧は、抵抗51と抵抗52から構成される電池電圧検出部4により検出した値であり、常用電源回路2の出力電圧は、抵抗22と抵抗23から構成される常用電源出力電圧検出部により検出した値である。
【0044】
続いて電池50の状態を判定する閾値について説明する。非常用照明装置100においては、常用電源回路2の出力電圧に対して電池50が正常に動作する電池50の電圧範囲である正常電池電圧範囲がある。すなわち、電圧が正常電池電圧範囲である電池50が点灯ユニット10に適合した正常な状態の電池50である。例えば、ある電池50の正常電池電圧範囲は、電池50のセル数に1.15Vを掛けた値から電池50のセル数に1.80Vを掛けた値までの範囲である。このような電池50を用いる場合、正常電池電圧範囲の下限値、すなわち電池50のセル数に1.15Vを掛けた値を第1閾値と設定し、正常電池電圧範囲の上限値、すなわち電池50のセル数に1.80Vを掛けた値を第2閾値と設定する。
【0045】
例えば、電池電圧の値が第1閾値未満である場合、電池電圧が正常電池電圧範囲から外れているため、点灯ユニット10に適合しない電池50が接続されている場合や、スイッチング素子に異常があることで回路不良が発生しているため電池50の状態が異常となっている場合が考えられる。
【0046】
制御部7に電池電圧検出部4から入力された電池電圧の値が第1閾値以上であって第2閾値以下である場合、当該電池50は正常であると判定することができる。この際、制御部7はプログラムによりメモリから第1閾値、第2閾値を取得し、入力された電池電圧と比較を行い判定する。一方、制御部7に電池電圧検出部4から入力された電池電圧が第1閾値未満である場合、電池電圧は正常電池電圧範囲から外れているため当該電池50は異常であると判定することができる。また、電池電圧が第2閾値を超える場合、電池電圧は正常電池電圧範囲から外れているため当該電池50は異常であると判定することができる。
【0047】
このように、非常用照明装置100は電池電圧の値を、第1閾値および第2閾値を用いて判定することで、電池50の状態が正常であるか否かを判定することができる。
【0048】
電池50が正常であっても、例えば電池50が満充電ではない場合のように電池50の接続直後は電池電圧が低く検出されることもある。そのため、非常用照明装置100は制御部7に電池電圧の値を一定時間に渡って入力するようにし、制御部7は入力された電池電圧の値を第1閾値、第2閾値との比較を一定時間継続して行うようにしてもよい。例えば電池電圧の値が第1閾値未満である状態が一定時間継続する場合は、当該電池50は異常であると判定する。また、電池電圧の値が第1閾値以上であって、第2閾値以下である状態が一定時間継続する場合、当該電池50は正常であると判定する。そうすることで電池50が正常であるか否かを判定する精度を高めることができる。
【0049】
なお、制御部7に電池電圧の値を入力する時間は予め設定しておいた時間としてもよいし、電池電圧が未充電の状態から満充電となるまでに要する時間としてもよい。また、制御部7に電池電圧の値が入力された時点から満充電までに要する時間を制御部7において算出し、当該時間を制御部7に電池電圧の値を入力する時間としてもよい。すなわち、当該時間は電池電圧が少なくとも満充電となるまでの時間としてもよい。電池電圧の値を入力する時間を電池電圧が満充電となるまでの時間以上となるように、例えば48時間以上と設定してもよい。そうすると電池50の状態が安定した状態で電池50の状態の判定を行うことができる。電池電圧の値を入力する時間は、以下説明する形態においても同様である。
【0050】
電池50が点灯ユニット10に適合するものであっても、電池電圧が一時的に第2閾値を超えるような場合も考えられる。例えば、電池50の内部抵抗が上昇している場合に電池電圧が第2閾値を超えることがあり得る。電池電圧の内部抵抗が上昇していると、電池電圧が大きくなるため電池電圧が正常電圧電池範囲を超えるためである。したがって、非常用照明装置100は制御部7に電池電圧の値を一定時間入力するようにし、電池電圧の値が第2閾値を超える状態が一定時間継続する場合、当該電池50は異常であると判定してもよい。そうすることで電池50が正常であるか否かを判定する精度を高めることができる。
【0051】
制御部7は接続されている電池50の状態が異常であると判定すると異常状態であることを示す信号を報知部8へ伝達する。報知部8は、制御部7から信号を受けると、非常用照明装置100の外部に電池50の異常を報知する。報知部8は、例えば報知用LEDであり、当該LEDを点滅状態にして、電池50の状態が異常であることを外部へ報知する。なお、電池50の状態を外部に報知する際、常用電源回路2によって充電が行われているか否かを報知するための充電用LEDを使用してもよい。そうすることで報知部8として新たにLEDを追加する必要がない。なお、報知部8は、報知用LEDには限定されず、例えばスピーカーのような、音または音声を出力する音出力部であってもよく、以下説明する他の形態においても同様である。
【0052】
制御部7は接続されている電池50の状態が正常であると判定すると正常状態であることを示す信号を報知用LEDへ伝達する。報知部8は、例えば報知用LEDを点灯状態にして、電池50の状態が正常であることを外部へ報知する。
【0053】
以上説明した通り、実施の形態1に係る非常用照明装置100は、光源部30と、光源部30に電力を供給する電池50を外部電源により充電する常用電源回路2と、外部電源ACの停電時に動作し、電池50により光源部30を点灯させる非常用電源回路6と、非常用電源回路6を制御する制御部7と、電池50の電圧を検出し制御部7に当該電池電圧を入力する電池電圧検出部4と、を備え、制御部7は、電池電圧の値が電池50の正常電圧範囲の下限を示す第1閾値以上であって、正常電圧範囲の上限を示す第2閾値以下である場合は電池50の状態が正常であると判定し、電池電圧の値が第1閾値未満であるか、または第2閾値を超える場合は電池50の状態が異常であると判定する非常用照明装置100である。
【0054】
このような構成によれば、電池50に新たな部品を追加することなく電池50が正常であるか否かを判定することができる。
【0055】
また、非常用照明装置100は、電池電圧の値を一定時間に渡って制御部7に入力し、一定時間継続して電池電圧の値を閾値と比較するようにしてもよい。電池電圧の値が第1閾値以上であって、第2閾値以下の状態が一定時間継続する場合は、電池50の状態が正常であると判定し、電池電圧の値が第1閾値未満である状態が一定時間継続する場合、または電池電圧の値が第2閾値を超える状態が一定時間継続する場合は、電池50の状態が異常であると判定する。
【0056】
このような構成によれば、電池50が点灯ユニット10に適合するにもかかわらず、異常であると誤判定してしまうことを回避し、電池50が正常であるか否かを判定する精度を高めることができる。
【0057】
また、非常用照明装置100は、制御部7が判定した電池50の状態を報知する報知部を備えてもよく、このような構成によれば制御部7が判定する電池50の状態を外部に報知することができる。
【0058】
実施の形態2.
続いて
図3を用いて実施の形態2に係る非常用照明装置100について説明する。以下の説明では、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。実施の形態2に係る非常用照明装置100は、実施の形態1の非常用照明装置100と比較して、制御部7がメモリに第3閾値を記憶している点でのみ異なっており、その他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0059】
制御部7は、予めメモリに第1閾値と、第2閾値と、第3閾値を記憶している。第3閾値は、第2閾値よりも大きい値の閾値である。
図3には、第1閾値、第2閾値、第3閾値がそれぞれ示されている。
【0060】
電池電圧検出部4が検出する電池電圧が、常用電源回路2の出力電圧と略同等かまたは近い値を示す場合、電池50が接続されていない状態を示している。すなわち、電池電圧が所定の値を境にして電池50が未接続であることを示すこととなる。当該所定の値を第3閾値とし、電池電圧と第3閾値とを比較することで電池50が未接続であるか否かを判定することができる。
【0061】
図3に示す通り、電池電圧が第3閾値を超える範囲においては電池50が未接続、すなわち電池無であることを示している。また、
図3では電池電圧が第3閾値を超えた後は、常用電源回路2の出力電圧を一定とする定電圧制御を行っていることを示している。これは、電池50が未接続である場合に常用電源回路2の出力電圧を上昇させたとしても回路損失が発生するため定電圧制御を行っている。なお、
図3のように、電池電圧が第3閾値を超えて少し上昇したところで定電圧制御を行っているが、これは出力電圧の誤差を考慮するためであるが、定電圧制御を開始する出力電圧の値はこれに限られるものでない。
【0062】
第3閾値は、例えば電池50が未接続であると判定することができる電圧として、電池50のセル数に1.90Vを掛けた値に設定する。ここでは、第1閾値、第2閾値の値はそれぞれ実施の形態1の場合と同様とする。
【0063】
制御部7は電池電圧検出部4から電池電圧の値が入力されると、電池電圧の値を各閾値と比較する。電池電圧の値が第3閾値を超える場合、電池50が未接続であると判定する。なお、電池電圧の値が第2閾値を超えており、第3閾値以下である場合は、電池50の状態が異常であると判定する。電池電圧の値が第1閾値未満である場合、または電池電圧の値が第1閾値以上であって、第2閾値以下である場合については実施の形態1と同様であるため省略する。
【0064】
制御部7に電池電圧の値を一定時間入力するようにしてもよい。この場合、制御部7は入力される電池電圧の値と各閾値とを比較する。電池電圧の値が第3閾値を超える状態が一定時間継続する場合は、電池50が未接続であると判定する。
【0065】
制御部7は接続されている電池50が未接続であると判定すると、電池50が未接続であることを示す信号を報知用LEDへ伝達する。報知部8である報知用LEDは、例えば当該LEDを消灯状態にする。
【0066】
このように、非常用照明装置100は電池電圧の値を、第1閾値、第2閾値および第3閾値を用いて判定することで、電池50に新たな部品を追加することなく、電池50の状態が正常であるか否か、または電池50が未接続であるかを判定することができる。
【0067】
制御部7は電池50が未接続であると判定すると、常用電源回路2の出力電圧を定電圧制御する。常用電源回路2の出力電圧を、電池電圧検出部4が検出した電池電圧を超えて上昇させないようにすることで、充電回路3における電力の損失を抑えることができる。
【0068】
以上説明した通り、実施の形態2の非常用照明装置100は、電池電圧の値が、第3閾値を超える場合は、電池50は未接続であると判定する非常用照明装置100である。
【0069】
このような構成によれば、制御部7により電池50が未接続であるか否かを判定することができる。
【0070】
また、非常用照明装置100は、電池50が未接続であると判定すると、常用電源回路2の出力電圧を定電圧制御する。
【0071】
このような構成によれば、常用電源回路2の出力電圧を、電池電圧検出部4が検出した電池電圧を超えて上昇させないようにすることで、充電回路3における電力の損失を抑えることができる。
【0072】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示の非常用照明装置100は、実施の形態1および実施の形態2で説明した形態には限られず、本開示の内容の一部を示すものである。本開示の非常用照明装置は、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、適宜、組み合わせる等、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 ダイオードブリッジ、2 常用電源回路、3 充電回路、4 電池電圧検出部、5 停電検出回路、6 非常用電源回路、7 制御部、8 報知部、10 点灯ユニット、11 コンデンサ、12 抵抗、13 コンデンサ、14 トランス、15 スイッチング素子、16 制御IC、17 抵抗、18 フォトカプラ、19 疑似停電発生回路、20 ダイオード、21 電解コンデンサ、22 抵抗、23 抵抗、24 コンデンサ、25 フォトカプラ、30 光源部、31 スイッチング素子、32 抵抗、33 ツェナーダイオード、34 コンデンサ、50 電池、51 抵抗、52 抵抗、53 コイル、54 ダイオード、55 スイッチング素子、56 抵抗、57 抵抗、58 コンデンサ、59 抵抗、100 非常用照明装置