(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/28 20060101AFI20240220BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20240220BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01F27/28 131
H01F41/12 F
H01F41/12 G
H01F30/10 E
H01F30/10 F
(21)【出願番号】P 2020152991
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀川 俊之
(72)【発明者】
【氏名】古市 朋広
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 正明
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004759(JP,A)
【文献】特開2019-134097(JP,A)
【文献】特開2020-107853(JP,A)
【文献】特開2021-077879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 41/12
H01F 30/10
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが外周に巻回される巻回部を持つボビンと、
前記ワイヤのリード部が接続される端子と、
前記端子が取り付けられ、前記ボビンの第1軸方向と第2軸方向の双方に移動自在に前記ボビンに取り付けられる端子台と、
前記端子台の前記第1軸方向の端部と前記リード部との間に所定の隙間を形成するように前記リード部を案内するガイド部と、を有するコイル装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記端子台の前記第1軸方向への可動距離と同等以上の距離で、前記端子台の前記第1軸方向の端部から離間した位置に設けられている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、外方に向けて突出する一対の突出部を有し、
一対の前記突出部の各々の間には、前記リード部が挿通するリード挿通路が形成されている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記ボビンは、前記巻回部の外周に形成された鍔部を有し、
前記ガイド部は、前記鍔部の第2軸方向の端部において、前記端子台の前記第1軸方向への可動範囲の外側に形成されている請求項1~3のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項5】
前記ワイヤは、第1ワイヤおよび第2ワイヤからなり、
前記ボビンには、前記第1ワイヤを巻回してなる第1コイル部と、前記第2ワイヤを巻回してなる第2コイル部とが形成されている請求項1~4のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項6】
前記第1コイル部および前記第2コイル部の各々は、その巻回軸方向に沿って隣接して配置されている請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記第1コイル部および前記第2コイル部のいずれか一方と、前記ボビンの前記第2軸方向の端部から前記端子に向けて引き出される前記第1コイル部および前記第2コイル部の他方のリード部とを絶縁する絶縁カバーが、前記ボビンの前記第2軸方向の端部に装着されており、
前記ガイド部は、前記絶縁カバーに設けられている請求項5または6に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤのいずれか一方の径は他方の径よりも太く、
径が太い方の前記ワイヤの前記リード部が、前記ガイド部によって案内される請求項5~7のいずれかに記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトランスなどとして好適に用いることができるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトランスなどに用いられるコイル装置として、特許文献1に記載のコイル装置が知られている。特許文献1に記載のコイル装置は、ボビンと、その外周に巻回されるワイヤと、ワイヤのリード部が接続される端子とを有する。ボビンには端子台が形成されており、端子台には端子を嵌合して固定することが可能となっている。
【0003】
この種のコイル装置において、回路基板への接続時に、端子を回路基板に直接接続したいという要求がある。しかしながら、このような態様の接続は、回路基板の取付位置と端子の位置とを高精度で位置合わせする必要性から容易ではなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、回路基板などの基板との位置決めが容易なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
ワイヤが外周に巻回される巻回部を持つボビンと、
前記ワイヤのリード部が接続される端子と、
前記端子が取り付けられ、前記ボビンの第1軸方向と第2軸方向の双方に移動自在に前記ボビンに取り付けられる端子台と、
前記端子台の前記第1軸方向の端部と前記リード部との間に所定の隙間を形成するように前記リード部を案内するガイド部と、を有する。
【0007】
本発明に係るコイル装置は、端子が取り付けられ、ボビンの第1軸方向と第2軸方向の双方に移動自在に前記ボビンに取り付けられる端子台を有する。そのため、回路基板などの基板とコイル装置とをラフに位置決めした後、ボビンに対して端子台を相対移動させるのみで、端子台の端子と基板とを正確に位置決めして接続することができる。
【0008】
また、本発明に係るコイル装置では、コイル装置の製造の段階で、端子台の端子の位置を、基板の取付位置に正確に位置合わせして製造する必要がなくなり、コイル装置を構成する各部品の製造と組立が容易になり、製造コストの低減に寄与する。
【0009】
特に、本発明に係るコイル装置は、端子台の第1軸方向の端部とリード部との間に所定の隙間を形成するようにリード部を案内するガイド部を有する。このように、ガイド部を具備させることにより、以下に示すように、端子台の第1軸方向への移動をスムーズに行うことができる。
【0010】
端子にリード部を熱圧着等により接続すると、その熱の影響により、熱圧着等が施された部分においてリード部が硬化し屈曲しにくくなる場合があり、この場合、リード部に端子を介して連結された端子台の第1軸方向への移動が困難となるおそれがある。そこで、ガイド部をコイル装置に設け、ガイド部によって案内される経路に沿ってリード部を端子に向けて引き回すことにより、リード部に十分な長さの線長を具備させることが可能となり、熱圧着等により端子にリード部を接続したときに、その熱の影響により硬化する部分の割合を低減しリード部の屈曲性を十分に維持することができる。したがって、リード部の硬化部分によって端子台の第1軸方向への移動が阻害されることを防止し、端子台による第1軸方向へのスムーズな移動が実現され、端子台の端子と基板との位置決めの精度を格段に高めることができる。
【0011】
また、端子台は上記隙間の範囲内においてガイド部あるいはこれに案内されるリード部に妨げられることなく自在に移動することができるため、第1軸方向への移動時において、端子台の第1軸方向の端部と、ガイド部あるいはこれに案内されるリード部とが接触することを防止することが可能となる。したがって、この点においても、端子台による第1軸方向へのスムーズな移動が実現され、上述した効果を得ることができる。
【0012】
好ましくは、前記ガイド部は、前記端子台の前記第1軸方向への可動距離と同等以上の距離で、前記端子台の前記第1軸方向の端部から離間した位置に設けられている。このような構成とすることにより、端子台の第1軸方向への可動範囲の外側にガイド部が配置されるため、ガイド部あるいはこれに案内されるリード部に端子台が接触することを有効に防止することが可能となり、端子台による第1軸方向へのスムーズな移動を効果的に実現することができる。
【0013】
好ましくは、前記ガイド部は、外方に向けて突出する一対の突出部を有し、一対の前記突出部の各々の間には、前記リード部が挿通するリード挿通路が形成されている。リード挿通路の内部にリード部を挿通させることにより、一対の突出部の各々によってリード部の第1軸方向への位置ずれが制限され、端子台の第1軸方向への移動経路の内部にリード部が入り込むことを防止し、端子台による第1軸方向へのスムーズな移動を効果的に実現することができる。
【0014】
好ましくは、前記ボビンは、前記巻回部の外周に形成された鍔部を有し、前記ガイド部は、前記鍔部の第2軸方向の端部において、前記端子台の前記第1軸方向への可動範囲の外側に形成されている。ガイド部を鍔部に一体的に形成することにより、ガイド部の形成に伴うコイル装置の大型化を防止することができる。また、ガイド部を上記領域に形成することにより、端子台の第1軸方向の端部を迂回するように端子に向けてリード部を引き出すことが可能となり、リード部に十分な長さの線長を与え、熱圧着等による熱の影響により硬化する部分の割合を低減し、リード部の屈曲性を十分に維持することができる。
【0015】
好ましくは、前記ワイヤは、第1ワイヤおよび第2ワイヤからなり、前記ボビンには、前記第1ワイヤを巻回してなる第1コイル部と、前記第2ワイヤを巻回してなる第2コイル部とが形成されている。このような構成とすることにより、第1コイル部および第2コイルのいずれか一方を一次コイルとし他方を二次コイルとするトランスとしての使用が可能となる。
【0016】
好ましくは、前記第1コイル部および前記第2コイル部の各々は、その巻回軸方向に沿って隣接して配置されている。このような構成とすることにより、例えばボビンの外周に第1コイル部を配置し、その外側に第2コイル部を配置する場合に比べて、部品点数を少なくすることが可能となり、コイル装置のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
好ましくは、前記第1コイル部および前記第2コイル部のいずれか一方と、前記ボビンの前記第2軸方向の端部から前記端子に向けて引き出される前記第1コイル部および前記第2コイル部の他方のリード部とを絶縁する絶縁カバーが、前記ボビンの前記第2軸方向の端部に装着されており、前記ガイド部は、前記絶縁カバーに設けられている。このような構成とすることにより、第1コイル部と第2コイル部との絶縁を良好に図ることができる。また、ガイド部を絶縁カバーに一体的に形成することにより、ガイド部の形成に伴うコイル装置の大型化を防止することができる。
【0018】
好ましくは、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤのいずれか一方の径は他方の径よりも太く、径が太い方の前記ワイヤの前記リード部が、前記ガイド部によって案内される。径が太いワイヤはもともと剛性が高く曲がりにくいため、熱圧着等による熱の影響により径が太い方のワイヤのリード部が硬化した場合、リード部の屈曲性は特に損なわれやすくなる。そのため、径が太い方のワイヤのリード部をガイド部によって案内される経路に沿って引き回すことにより、当該リード部の硬化部分の割合を低減させ、屈曲性をできるだけ維持すること可能となり、端子台の第1軸方向への移動が阻害される問題を効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図3A】
図3Aは
図2に示すボビンおよびこれに取り付けられる各種部材の構成を示す解斜視図である。
【
図4】
図4は
図2に示すボビンおよびそのX軸方向の一方側および他方側に取り付けられる各端子台の構成を示す分解斜視図である。
【
図5A】
図5Aは
図4に示すボビンおよびそのX軸方向の一方側の端子台にそれぞれ取り付けられる各種部材の構成を示す分解斜視図である。
【
図5B】
図5Bは
図4に示すボビンおよびそのX軸方向の他方側の端子台にそれぞれ取り付けられる各種部材の構成を示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は
図4に示すボビンおよびそのX軸方向の一方側の端部に取り付けられた端子台の構成を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るコイル装置10は、たとえばトランスなどとして用いられ、回路基板300などの基板に取り付けられて使用される。図面において、X軸は略楕円形状を有するボビン40(
図2参照)の長軸方向に対応し、Y軸はボビン40の短軸方向に対応し、Z軸はボビン40の高さ方向に対応する。
【0022】
図2に示すように、コイル装置10は、4つのコア12と、第1コイル部20(
図6A)と、第2コイル部30(
図6A)と、ボビン40と、絶縁カバー50と、一対のコアカバー60,60と、一対の端子台70_1,70_2とを有する。
【0023】
4つのコア12は、組み立てられて、後述するコイルにより発生する磁束を通過させる磁路を形成する。これらのコア12は、対称な形状を有しており、コアカバー60,60およびボビン40を上下方向(図においてZ軸方向)から挟むようにして互いに連結される。
【0024】
各コア12は、それぞれ縦断面(Y軸およびZ軸を含む切断面)が略E字形状のコアである。各コア12は、たとえばフェライト、金属磁性体などの軟磁性体で構成され、Y軸方向に延びる平板状のベース13と、各ベース13のY軸方向の両端からZ軸方向に突出する一対の側脚16,16と、各ベース13のY軸方向の中間位置からZ軸方向に突出する中脚14とを有する。
【0025】
各コア12の中脚14は、ボビン40の中空筒部44に形成してある貫通孔44aの内部に入り込む。中空筒部44の内周壁に形成してある分離用凸部44bにより、X軸方向に隣り合うコア12,12には、相互に隙間が形成される。この隙間に、ポッティング樹脂などの高熱伝導性樹脂が入り込むことにより、コイル装置10の内部に発生する熱の放熱性が向上する。
【0026】
分離用凸部44bにより形成される隙間は、分離用凸部44bのX軸方向の厚みに対応する。分離用凸部44bは、貫通孔44aの内部で、X軸方向の中央部で、Y軸方向の両側に、Z軸に沿って形成してある。分離用凸部44bのX軸方向の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.05~5mm、さらに好ましくは、0.1~3mmである。
【0027】
ボビン40は、中空筒部44を有する。中空筒部44は、Z軸方向に向かって延在する筒形状を有する。
図3Aに示すように、中空筒部44のZ軸方向下部には、ボビン下鍔部47がX-Y軸平面で中空筒部44から径方向に突き出るように一体成形してある。また、中空筒部44のZ軸方向上部には、ボビン上鍔部48がX-Y軸平面で中空筒部44から径方向に突き出るように一体成形してある。ボビン上鍔部48の上面には段差部48aが形成されており、段差部48aにはボビン40の中心部に向かって凹む位置決め凹部48bが形成されている。位置決め凹部48bの内側には係合凸部48cが形成されており、
図2に示すコアカバー60の取付縁64に形成された開口部64bの内部に係合することが可能となっている。
【0028】
中空筒部44の外周部には、巻回部45が形成してある。巻回部45には、複数の巻回隔壁鍔46が、ボビン下鍔部47およびボビン上鍔部48と略平行に中空筒部44と一体に形成してある。複数の巻回隔壁鍔46は、楕円リング形状を有し、第1コイル部20を構成する第1ワイヤ22および第2コイル部30を構成する第2ワイヤ32の各々の巻回軸(Z軸)に沿って相互に隣り合うワイヤ巻回部分相互を分離する。
【0029】
巻回部45には、たとえば1次コイルとなる第1ワイヤ22および2次コイルとなる第2ワイヤ32がそれぞれα巻き(または整列巻き)される。α巻きについては後述する。なお、整列巻とは、巻回軸の一方の端から他方の端に向けてワイヤが巻かれる通常の巻き方である。
【0030】
図6Aおよび
図6Bに示すように、巻回隔壁鍔46は、中空筒部44の外周部に、Z軸方向に沿って所定間隔の巻回区画S1~S4が形成されるように、X-Y軸に略平行な平面で形成してある。巻回区画S1はボビン上鍔部48と最上位置の巻回隔壁鍔46との間に形成された巻回区画であり、巻回区画S2は最上位置の巻回隔壁鍔46と中央位置の巻回隔壁鍔46との間に形成された巻回区画であり、巻回区画S3は中央位置の巻回隔壁鍔46と最下位置の巻回隔壁鍔46との間に形成された巻回区画であり、巻回区画S4は最下位置の巻回隔壁鍔46とボビン下鍔部47との間に形成された巻回区画である。本実施形態では、Z軸方向に沿って所定間隔で複数の巻回隔壁鍔46が略平行に形成してあるが、その数は特に限定されない。これらの巻回隔壁鍔46が形成してある領域が、巻回部45となる。
【0031】
巻回隔壁鍔46で分離される各巻回区画S1~S4における巻回軸(Z軸)に沿っての巻回区画幅は、1本のみの第1ワイヤ22(あるいは第2ワイヤ32)が入り込める幅に設定してある。すなわち、巻回区画幅w1(図示省略)は、第1ワイヤ22(あるいは第2ワイヤ32)の線径d1(図示省略)に対して、好ましくは、d1<w1<(2×d1)、さらに好ましくはd1<w1<(1.2×d1)の関係にあることが好ましい。線径d1に対して巻回区画幅w1が広すぎると、巻乱れが生じやすくなると共に、コイル装置のコンパクト化の要請に反する。
【0032】
なお、各巻回区画S1~S4において、巻回区画幅は、全て同一であることが好ましいが、多少異なっていてもよい。本実施形態では、各巻回区画S1~S4に巻回される予定の総巻回数は、特に限定されない。
【0033】
図2に示すように、ボビン40における中空筒部44、巻回隔壁鍔46、ボビン下鍔部47およびボビン上鍔部48は、射出成形などにより一体成形してあることが好ましい。
【0034】
貫通孔44aには、コア12における中脚14が、Z軸方向の上下から入り込み、貫通孔44aのZ軸方向の略中央部において中脚14の先端が突き合わされるようになっている。なお、貫通孔44aのZ軸方向の略中央部において、Z軸の上下から挿入された中脚14の先端は、接触せずに所定間隔でギャップが形成されていてもよい(
図6A,6B参照)。
【0035】
ボビン40の外周には、Y軸方向の両側から一対のコアカバー60,60が装着される。コアカバー60は、たとえば合成樹脂などの絶縁部材で構成され、カバー本体62を有し、その外周面は、コア12における側脚16を案内する案内面となり、その内周面には、第1コイル部20および第2コイル部30が位置する。
【0036】
カバー本体62のZ軸方向の両端には、取付縁64,64が一体に形成してある。Z軸上側の取付縁64は、ボビン上鍔部48の上面に係合し、Z軸下側の取付縁64は、ボビン下鍔部47の下面に係合する。より詳細には、取付縁64,64のY軸方向の略中央部には突出片64aが形成されており、この突出片64aに形成された開口部64bの内部に、ボビン上鍔部48の段差部48aに形成された係合凸部48c(
図3A)が係合することにより、取付縁64,64とボビン上鍔部48,48とを係合することが可能となっている。
【0037】
カバー本体62は、ボビン40の外周面形状に対応した内周面形状を有し、そのX軸方向の両端には、絶縁板部66が一体に成形してある。絶縁板部66のZ軸方向の上下には、Y軸方向の内側に突出する係合凸部66aが形成してある。
図1に示すように、Z軸上方側の係合凸部66aは、ボビン40の第1端子台設置部41の絶縁壁410または第2端子台設置部42の絶縁壁420の内面に係合し、Z軸下側の係合凸部66aは、
図2に示すボビン下鍔部47のX軸両端で、ボビン下鍔部47の下面に係合する。
【0038】
その結果、コアカバー60の絶縁板部66は、絶縁壁410,420とボビン下鍔部47と組み合わされて、コア12と第1コイル部20および第2コイル部30との絶縁を向上させる。絶縁板部66の内面(コイル装置10の中心側)は、コア12と接触していてもよく、コア12の外形状に合わせた形状を有していてもよい。
【0039】
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1ワイヤ22は、単線で構成されても良く、あるいは撚り線で構成されても良く、絶縁被覆導線で構成されることが好ましい。第1ワイヤ22の外径d1(図示省略)は、特に限定されないが、大電流を流す場合には、たとえばφ1.0~φ3.0mmが好ましい。第2ワイヤ32は、第1ワイヤ22と同じであっても良いが、異なっていても良い。
【0040】
本実施形態では、第2ワイヤ32の線径は、第1ワイヤ22の線径よりも太くなっている。ただし、ワイヤ22,32の線径の関係はこれに限定されるものではなく、第2ワイヤ32の線径は、第1ワイヤ22の線径よりも細くても良く、あるいは等しくても良い。また、第1ワイヤ22および第2ワイヤ32の材質は同一でもよく、あるいは異なっていても良い。また、第1コイル部20を二次コイルとして用い、第2コイル部30を一次コイルとして用いてもよい。
【0041】
図3Aおよび
図5Bに示すように、本実施形態のボビン40では、最上位置の巻回隔壁鍔46のX軸方向の端部と、最下位置の巻回隔壁鍔46のX軸方向の端部とには、それぞれ連絡溝49が形成されている。巻回部45では、第1ワイヤ22および第2ワイヤ32をそれぞれα巻きすることにより形成される。より詳細には、第1ワイヤ22の中央部を、最上位置の巻回隔壁鍔46に形成された連絡溝49を通過するように配置し、第1ワイヤ22の中央部よりも一方側をたとえば
図6Aに示す巻回区画S1に巻回し、第1ワイヤ22の中央部よりも他方側をたとえば巻回区画S2に巻回する。
【0042】
同様に、第2ワイヤ32の中央部を最下位置の巻回隔壁鍔46に形成された連絡溝49を通過するように配置し、第2ワイヤ32の中央部よりも一方側をたとえば巻回隔壁鍔S3に巻回し、第2ワイヤ32の中央部よりも他方側をたとえば巻回区画S4に巻回する。これにより、第コイル部20および第2コイル部30の各々が、その巻回軸方向に沿って隣接して配置されることになる。
【0043】
巻回区画S1に巻回された第1ワイヤ22の一方の第1リード部22aは、第1端子台70_1に向けて巻回区画S1のY軸方向の一方側から引き出され、第1端子台70_1のY軸方向の一方側に固定された端子金具92に接続される。巻回区画S2に巻回された第1ワイヤ22の他方の第1リード部22aは、第1端子台70_1に向けて巻回区画S2のY軸方向の他方側から引き出され、第1端子台70_1のY軸方向の他方側に固定された端子金具91に接続される。
【0044】
図3Bおよび
図6Aに示すように、巻回区画S3に巻回された第2ワイヤ32の一方の第2リード部32aは、第2端子台70_2に向けて巻回区画S3のY軸方向の一方側から引き出され、第2端子台70_2のY軸方向の一方側に固定された端子金具93に接続される。巻回区画S4に巻回された第2ワイヤ32の他方の第2リード部32aは、第2端子台70_2に向けて巻回区画S4のY軸方向の他方側から引き出され、第2端子台70_2のY軸方向の他方側に固定された端子金具94に接続される。
【0045】
図4に示すように、ボビン上鍔部48のX軸方向の両端部には、第1端子台設置部41および第2端子台設置部42がそれぞれ一体成形されている。第1端子台設置部41には第1端子台70_1が設置され、第2端子台設置部42には第2端子台70_2が設置される。本実施形態では、端子台70_1,70_2は、ボビン40のX軸方向およびY軸方向の双方に移動自在に端子台設置部41,42に取り付けられる。
【0046】
第1端子台設置部41は、X-Y軸に略平行な略平板形状からなる底部414を有する。底部414は、ボビン上鍔部48のX軸方向の延長線上に形成されており、第1端子台設置部41における土台を構成する。
【0047】
底部414のX軸方向の内側端部には、絶縁壁410が形成されている。絶縁壁410はZ軸上方に向かって延びており、
図1に示すコア12(ベース13)と、第1端子台70_1に固定される端子91,92あるいはこれに接続される第1リード部22a,22aとの絶縁を良好に図るための機能を有する。なお、本実施形態において、「外側」とは、ボビン40の中心軸から遠ざかる側であり、「内側」とは、ボビン40の中心軸に近づく側である。
【0048】
絶縁壁410のX軸方向の外側面には、絶縁壁410のY軸方向の略中央部からX軸方向の外側に突出する緩嵌合凸部411が形成されている。緩嵌合凸部411は、主凸部412と、一対の副凸部413a1,413a1と、一対の補助副凸部413a2,413a2とを有する。主凸部412は、X-Z軸に平行な略平板形状を有し、絶縁壁410のY軸方向の略中央部からX軸方向の外側に突出している。主凸部412は、絶縁壁410のZ軸の略中央部に形成されており、Z軸方向に所定の長さを有する。
【0049】
副凸部413a1,413a1および補助副凸部413a2,413a2は、主凸部412のY軸方向の両側に形成されており、底部414に対してZ軸方向に所定の高さだけ離間した位置に配置されている。副凸部413a1,413a1および補助副凸部413a2,413a2は、主として第1端子台70_1のX軸方向の一方側への移動幅および他方側への移動幅を制限するための機能を有し、ストッパとしての役割を果たす。なお、主凸部412についても、これと同様の役割を果たす。
【0050】
一方の副凸部413a1は、主凸部412のY軸方向の一方側の面からその法線方向に突出しており、Y軸方向の一方側に向かって延在している。他方の副凸部413a1は、主凸部412のY軸方向の他方側の面からその法線方向に突出しており、Y軸方向の他方側に向かって延在している。各副凸部413a1,413a1は、Y軸方向に関して、互いに反対側に向かって延びている。
【0051】
一方の補助副凸部413a2は、一方の副凸部413a1のY軸方向の一方側の端部に一体的に形成されており、X軸方向の内側に向かって延在している。一方の補助副凸部413a2のX軸方向の内側端部は、絶縁壁410のX軸方向の外側面に連結されている。他方の補助副凸部413a2は、他方の副凸部413a1のY軸方向の他方側の端部に一体的に形成されており、一方の補助副凸部413a2に対して略平行となる向きで、X軸方向の内側に向かって延在している。他方の補助副凸部413a2のX軸方向の内側端部は、絶縁壁410のX軸方向の外側面に連結されている。
【0052】
主凸部412のY軸方向の両側には、各々貫通孔からなり一対の抜け止め孔419,419が形成されている。一方の抜け止め孔419は、主凸部412と一方の副凸部413a1と一方の補助副凸部413a2と絶縁壁410とで囲まれた領域に形成されている。他方の抜け止め孔419は、主凸部412と他方の副凸部413a1と他方の補助副凸部413a2と絶縁壁410とで囲まれた領域に形成されている。抜け止め孔419,419には、後述する第1端子台70_1のストッパ凸部72c2,72c2が移動可能に係合し、これにより第1端子台70_1が第1端子台設置部41から外れることを防止することが可能となっている。
【0053】
底部414のY軸方向の両端部には、一対の制限壁部415,415が形成されている。制限壁部415,415は、それぞれ緩嵌合凸部411のY軸方向の両側に形成されている。一方の制限壁部415は、底部414のY軸方向の一方側の端部において、底部414からZ軸上方に突出するとともに、Y軸方向の一方側に向けて所定の長さを有する。他方の制限壁部415は、底部414のY軸方向の他方側の端部において、底部414からZ軸方向に突出するとともに、Y軸方向の他方側に所定の長さを有する。制限壁部415,415は、それぞれ第1端子台70_1のX軸方向の一方側への移動幅および他方側への移動幅を制限するための機能を有し、ストッパとしての役割を果たす。
【0054】
制限壁部415,415のX軸方向の外側面には、段差部416,416が形成されている。一方の制限壁部415に形成された段差部416は、そのY軸方向の略中央部よりもY軸方向の一方側の領域に形成されており、X軸方向の内側に凹む段差を形成している。他方の制限壁部415に形成された段差部416は、そのY軸方向の略中央部よりもY軸方向の他方側の領域に形成されており、X軸方向の内側に凹む段差を形成している。制限壁部415と緩嵌合凸部411(副凸部413a1および補助副凸部413a2)との間には所定の隙間が形成されており、この隙間のY軸方向幅が第1端子台41のY軸方向の一方側または他方側への移動幅に対応する。
【0055】
制限壁部415,415のX軸方向の外側面には、ボビン側ガイド部417,417が一体的に形成されている。ボビン側ガイド部417,417は、それぞれ第1端子台70_1のY軸方向の端部E1,E1と第1リード部22a,22aとの間に所定の隙間を形成するように、第1リード部22a,22aを端子金具91(92)に向けて案内する。
【0056】
各ボビン側ガイド部417は、X軸方向の外側に向けて突出する一対の突出部417a1,417a2を有する。突出部417a1,417a2は、それぞれY軸方向に所定の間隔をあけつつ隣接して配置されている。突出部417a1は緩嵌合凸部411に近接した位置に形成されており、突出部417a2は制限壁部415のうち段差部416が形成された位置に配置されている。突出部417a1,417a2はZ軸方向に所定の厚みを有し、突出部417a1のZ軸方向の厚みは突出部417a2のZ軸方向の厚みよりも大きく、制限壁部415のZ軸方向の厚みより小さくなっている。また、突出部417a2のX軸方向の外側への突出幅は突出部417a1のX軸方向の外側への突出幅よりも小さくなっている。
【0057】
一対の突出部417a1,417a2の各々の間には、第1リード部22aが挿通するリード挿通路418が形成されている。リード挿通路418の内部に第1リード部22aを挿通させることにより、ボビン側ガイド部417によって第1リード部22aを端子金具91(92)に向けて案内することが可能となっている(
図3A参照)。
【0058】
リード挿通路418は、Z軸方向に延在しており、X軸方向に所定の深さを有する。リード挿通路418のY軸方向幅は、第1リード部22aの直径と同等以上の長さとなっている。リード挿通路418のX軸方向の深さは、その内部を挿通する第1リード部22aがリード挿通路418の外側に抜けない程度の深さであり、好ましくは第1リード部22aの直径と同等以上である。
【0059】
図7に示すように、第1リード部22aは、リード挿通路418の内部をZ軸方向に引き出される。第1リード部22aは、第1コイル部20の巻回部分から端子91(あるいは92)に向けて斜めに引き出されるというよりは、第1コイル部20の巻回部分(第1端子台設置部41のY軸方向の端部付近)からZ軸上方に向けて略垂直に立ち上げられ、Z軸方向からY軸方向に向けて屈曲した状態で、Y軸方向の外側に引き出される。
【0060】
第1端子台70_1のY軸方向の端部E1,E1と第1リード部22a,22aとの間には、所定の隙間G1,G1が形成されている。本実施形態では、ボビン側ガイド部417,417は、隙間G1,G1が形成されるように、第1端子台70_1のY軸方向の端部E1,E1から離間した位置に設けられている。そのため、リード挿通路418,418の内部に第1リード部22a,22aを挿通させたとき、第1リード部22a,22aを第1端子台70_1のY軸方向の端部E1,E1から強制的に離間させた位置に配置させることが可能となっている。隙間G1,G1の長さ(距離)W1は、第1端子台70_1のY軸方向への可動距離と同等以上である。あるいは、隙間G1,G1の距離は、第1ワイヤ22の線径と同等以上である。
【0061】
ボビン側ガイド部417,417は、ボビン上鍔部48のX軸方向の一方側の端部において、第1端子台70_1のY軸方向の可動範囲A1のY軸方向外側に形成されている。そのため、第1端子台70_1がY軸方向の一方側または他方側に向かって移動したときに、第1端子台70_1のY軸方向の端部E1の一部(特に、第1端子台70_1の下端部)が、ボビン側ガイド部417,417(特に、突出部417a1,417a1)や、リード挿通路418,418の内部を挿通する第1リード部22a,22aに接触することがない。そのため、第1端子台70_1は、ボビン側ガイド部417,417あるいは第1リード部22a,22aに干渉されることなくY軸方向に移動することが可能となっている。なお、第1端子台70_1のY軸方向の可動範囲A1とは、第1端子台70_1のY軸方向の一方側への最大移動位置と他方側への最大移動位置との間の範囲に対応する。
【0062】
図5Bに示すように、第2端子台設置部42の構成は第1端子台設置部41の構成と一部共通し、絶縁壁420、緩嵌合凸部421、主凸部422、副凸部423a1,423a1、補助副凸部423a2,423a2、底部424、制限壁部425,425、段差部426,426および抜け止め孔429,429の構成は、前述の絶縁壁410、緩嵌合凸部411、主凸部412、副凸部413a1,413a1、補助副凸部413a2,413a2、底部414、制限壁部415,415、段差部416,416および抜け止め孔429,429の構成と同様であり、その詳細な説明については省略する。
【0063】
また、絶縁壁420、副凸部423a1,423a1および補助副凸部423a2,423a2、制限壁部425,425および抜け止め孔429,429は、それぞれ絶縁壁410、副凸部413a1,413a1および補助副凸部413a2,413a2、制限壁部415,415および抜け止め孔419,419が第1端子台70_1に対して発揮する機能と同様の機能を第2端子台70_2に対して発揮する。
【0064】
制限壁部425,425のX軸方向の外側面には、差込部427,427が形成されている。差込部427,427には、X軸方向に所定の深さを有する差込孔427a,427aが形成されている。差込孔427a,427aには、後述する絶縁カバー50の差込片52,52が差し込まれ、これにより絶縁カバー50を第2端子台設置部42に固定することが可能なっている。
【0065】
図5Aに示すように、端子金具(端子)91,92は、第1端子台70_1に装着される。また、
図5Bに示すように、端子金具(端子)93,94は、第2端子台70_2に装着される。端子金具91,92はX軸およびZ軸に相互に線対称な形状を有し、端子金具93,94はX軸およびZ軸に相互に線対称な形状を有する。端子金具91と端子金具93とは同様の形状からなり、端子金具92と端子金具94とは同様の形状からなる。端子金具91~94は、それぞれ金属板などの導電性板材に対してプレス加工などを施すことにより形成することができる。
【0066】
図5Aに示すように、端子金具91,92は、それぞれ第1ワイヤ22のリード部22aを挟み込んで接合するためのワイヤ接続部91a,92aを有する。また、端子金具91,92は、それぞれワイヤ接続部91a,92aとは別の位置に形成されるフック部91b,92bを有する。フック部91b,92bは、それぞれ第1端子台70_1に形成してある端子溝74,74にZ軸方向に移動自在に差し込まれる。
【0067】
フック部91b,92bは、それぞれ平面状の取付部91c,92cのY軸方向の端部からZ軸方向の下側に突出するように形成してあり、フック部91b,92bの下端先端は、鈎状に成形してある。取付部91c,92cの中央部には、それぞれ挿通孔91d,92dが形成してある。挿通孔91d,92dは、それぞれ第1端子台70_1に設けられた取付孔76に装着してあるナット306のボルト孔にラフに位置合わせされて、各端子金具91,92が第1端子台70_1に取り付けられる。これらの挿通孔91d,92dには、
図1に示すボルトまたはビス304などの締結具が取り付けられ、締結具を介して、端子金具91,92を位置決めして回路基板300に取り付けることができる。
【0068】
取付部91c,92cとワイヤ接続部91a,92aとは、それぞれ連結部91e,92eにより一体的に連結してある。連結部91e,92eは、取付部91c,92cの平面と面一の平面となる部分と、当該部分に対して略垂直に下方に屈曲してなる段差状折曲部とを有する。連結部91e,92eのX軸方向幅は、取付部91c,92cのX軸方向幅よりも狭くなっている。
【0069】
取付部91c,92cのフック部91b,92bとは反対側端部には、取付部91c,92cの平面からZ軸方向の下方に向けて突出している差込凸部91f,92fが形成してある。差込凸部91f,92fは、第1端子台70_1のY軸方向の両端部の上面に形成してある嵌合溝75,75にそれぞれ差し込まれる。
【0070】
端子金具93,94の構成は端子金具91,92の構成と同じであり、ワイヤ接続部93a,94a、フック部93b,94b、取付部93c,94c、挿通孔93d,94d、連結部93e,94eおよび差込孔93f,94fの構成は、それぞれワイヤ接続部91a,92a、フック部91b,92b、取付部91c,92c、挿通孔91d,92d、連結部91e,92eおよび差込孔91f,92fの構成と同様である。端子金具93,94には、それぞれ第2ワイヤ32のリード部32a,32aが接続される。
【0071】
本実施形態では、第1端子台70_1および第2端子台70_2は、ボビン40とは別体に形成されている。第2端子台70_2の構成は、第1端子台70_1の構成と同様であるため、その詳細な説明については省略する。第1端子台70_1および第2端子台70_2を構成する材料としては、たとえばボビン40と異なる樹脂を選択することができ、たとえばボビン40よりも成形性が良好な樹脂、あるいは放熱性が良好な樹脂を選択することができる。具体的には、たとえばPET、PBKあるいはPPS等の樹脂材料が挙げられる。
【0072】
図4および
図5Aに示すように、第1端子台70_1は、台本体71を有する。台本体71には貫通孔72が形成されており、貫通孔72は台本体71をX軸方向に貫通している。台本体71のY軸方向の両側には、端子取付部73,73が一体的に形成してある。端子取付部73,73の上面略中央部には、それぞれ取付孔76,76が形成してあり、各取付孔76には、それぞれナット306が装着可能になっている。
【0073】
端子取付部73,73と台本体71との境界には、それぞれ端子溝74,74が形成してあり、各端子溝74,74には、それぞれ端子金具91,92のフック部91b,92bがZ軸方向に移動自在に差し込まれる。また、端子取付部73,73のY軸方向の端部の上面には、嵌合溝75,75が形成してあり、それぞれに端子金具91,92の差込凸部91f,92fが差し込まれる。その結果、端子金具91,92は、第1端子台70_1に対して、X軸およびY軸方向の移動が制限され、各端子金具91,92は、第1端子台70_1に対して、Z軸方向の移動のみが許容される。
【0074】
端子金具91,92のワイヤ接続部91a,92aは、第1端子台70_1のY軸方向の両端からY軸方向に沿って外側に位置し、ワイヤ接続部91a,92aの上面は、取付部91c,92cの上面よりもZ軸下方に位置する。
【0075】
台本体71に形成してある貫通孔72のボビン40に向き合う側には、第1端子台設置部41に形成してある緩嵌合凸部411が入り込む緩嵌合凹部72aが形成してある。本実施形態では、緩嵌合凹部72を構成する内壁の一部が、緩嵌合凹部72の開口入口のZ軸方向の幅を開くことが可能に弾性変形可能な支持片72c1で構成してある。支持片72c1の先端側には一対のストッパ凸部72c2,72c2が形成されている。ストッパ凸部72c2,72c2は、一対の抜け止め孔419,419に係合し、抜け止めとしての機能を有する。ストッパ凸部72c2,72c2は、Y軸方向に所定の間隔をあけて形成されている。支持片72c1を片持ち梁状に弾性変形させるために、支持片72c1のY軸方向の両側には、それぞれスリットが形成してある。
【0076】
抜け止め孔419,419にストッパ凸部72c2,72c2を係合させた状態において、各抜け止め孔419と各ストッパ凸部72c2との間にはX軸方向およびY軸方向にそれぞれ隙間が形成されている。そのため、第1端子台70_1は、第1端子台設置部41に対して、この隙間の範囲内において、X軸方向およびY軸方向の各々に自由にスライド移動(摺動)することが可能となっている。
【0077】
緩嵌合凹部72aは、主凹部72a1と、副凹部72a2と、補助副凹部72a3とを有する。これらの凹部はX軸方向から見て全体として略T字形状からなり、主凹部72a1はZ軸方向に延在する部分を構成し、副凹部72a2および補助副総部72a3はY軸方向に延在する部分を構成する。副凹部72a2および補助副凹部72a3はそれぞれX軸方向に接続されており、補助副凹部72a3は副凹部72a2よりもX軸方向の内側に位置する。副凹部72a2および補助副凹部72a3は、それぞれ主凹部72a1のZ軸方向の下端部に接続されており、主凹部72a1のY軸方向の一方側および他方側に延在している。補助副凹部72a3は、副凹部72a2よりもY軸方向に幅広となるように形成されている。
【0078】
主凹部72a1には主凸部412(より詳細には、主凸部412のうち、副凸部413a1,413a1および補助副凸部413a2,413a2の各々の上面よりも上方に位置する部分)が挿入される。主凹部72a1のY軸方向幅は主凸部412のY軸方向幅よりも大きくなっているため(
図7参照)、主凹部72a1と主凸部412との間にはY軸方向に隙間が形成される。そのため、主凸部412は主凹部72a1に対してこの隙間の範囲内においてY軸方向に移動自在に嵌合し、これに伴い、第1端子台70_1が第1端子台設置部41に対してこの隙間の範囲内においてY軸方向にスライド移動することが可能となっている。なお、主凹部72a1のY軸方向幅と主凸部412のY軸方向幅との差分に応じた長さ(例えば、当該差分の半分の長さ)が、第1端子台70_1のY軸方向への可動距離となっている。
【0079】
副凹部72a2には、一対の副凸部413a1,413a1が挿入される。副凹部72a2の内部に副凸部413a1,413a1を挿入したとき、一方の副凸部413a1のY軸方向の一方側の端部と副凹部72a2のY軸方向の一方側との間には隙間が形成される。また、他方の副凸部413a1のY軸方向の他方側の端部と副凹部72a2のY軸方向の他方側との間には隙間が形成される。したがって、副凸部413a1,413a1は副凹部72a2に対してこれらの隙間の範囲内においてY軸方向に移動自在に嵌合し、これに伴い、第1端子台70_1が第1端子台設置部41に対してこれらの隙間の範囲内においてY軸方向にスライド移動することが可能となっている。
【0080】
補助副凹部72a3には、一対の補助副凸部413a2,413a2が挿入される。補助副凹部72a3の内部に補助副凸部413a3,413a2を挿入したとき、一方の補助副凸部413a2のY軸方向の一方側の端部と補助副凹部72a3のY軸方向の一方側との間には隙間が形成される。また、他方の補助副凸部413a2のY軸方向の他方側の端部と補助副凹部72a3のY軸方向の他方側との間には隙間が形成される。したがって、補助副凸部413a2,413a2は補助副凹部72a3に対してこれらの隙間の範囲内においてY軸方向に移動自在に嵌合し、これに伴い、第1端子台70_1が第1端子台設置部41に対してこれらの隙間の範囲内においてY軸方向にスライド移動することが可能となっている。
【0081】
貫通孔72のボビン40に向き合う側と反対側には、取付凹部72bが形成してある。取付凹部72bは、副凹部72a2のX軸方向の外側に接続されている。取付凹部72bには、内カバー78が取り付けられる。
【0082】
内カバー78は、端子金具91,92のフック部91b,92bが第1端子台70_1の端子溝74,74にそれぞれ挿入された後に、第1端子台70_1の取付凹部72bに取り付けられる。これにより、端子金具91,92が第1端子台70_1から抜け出すことを抑制すると共に、端子金具91,92の第1端子台70_1に対するZ軸移動範囲を制限することが可能となる。
【0083】
内カバー78の外側には、
図3Aおよび
図3Bに示す外カバー79が取り付けられる。外カバー79は、内カバー78が取り付けられた第1端子台70_1を、端子金具91および92と共に、X軸およびY軸の外側から覆う。外カバー79は、第1端子台70_1のZ軸の下方も覆う一方で、Z軸の上方は覆わないようになっている。外カバー79は、第1端子台70_1に取り付けられた状態において、第1端子台70_1によるX軸およびY軸方向への相対移動に追随するように、ボビン40に対して同方向に相対移動可能に構成されている。
【0084】
図5Bに示すように、絶縁カバー50は、カバー本体51と、一対の差込片52,52と、下固定片53と、一対のカバー側ガイド部54,54とを有する。絶縁カバー50は、ボビン40のX軸方向の端部(第2端子台設置部42が配置される側)に着脱自在に装着され、ボビン40の巻回部45に巻回された第1コイル部20と、ボビン40のX軸方向の端部から端子93,94に向けて引き出される第2コイル部30の第2リード部32a,32aとを絶縁するための機能を有する。
【0085】
カバー本体51は、ボビン40のX軸方向の端部における湾曲形状に対応した形状を有し、巻回部45に形成された第1コイル部20の外側に配置される。一対の差込片52,52は、カバー本体51の上端部に一体的に形成されており、それぞれカバー本体51のY軸方向の両端部に形成されている。差込片52,52は、X-Y軸に平行な略平板形状を有し、X軸方向の内側に向かって突出している。差込片52,52は、第2端子台設置部42の差込孔427a,427aに差し込まれる。
【0086】
下固定片53は、カバー本体51の下端部に一体的に形成されており、X-Y軸に平行な略平板形状を有する。下固定片53は、差込片52,52に対して、略平行となるように配置されている。下固定片53は、X軸方向の内側に向かって突出しており、
図6Aに示す巻回区画S2と巻回区画S3との間に位置する巻回隔壁鍔46の下面に固定される。
【0087】
カバー側ガイド部54,54は、カバー本体51のX軸方向の外側面に一体的に形成されており、カバー本体51のY軸方向の両端部に配置されている。カバー側ガイド部54,54は、ボビン側ガイド部417,417と同様の機能を有し、
図3Bに示すように、第2端子台70_2のY軸方向の端部E2と第2リード部32aとの間に所定の隙間G2を形成するように、第2リード部32aを端子金具93(94)に向けて案内する。本実施形態では、ボビン40のX軸方向の一方側の端部(第1端子台70_1が配置される側)ではボビン側ガイド部417,417がボビン40に一体的に形成されており、ボビン40のX軸方向の他方側の端部(第2端子台70_2が配置される側)ではカバー側ガイド部54,54がボビン40とは別体で構成された絶縁カバー50に一体的に形成されている。
【0088】
図3Bおよび
図5Bに示すように、カバー側ガイド部54,54は、それぞれX軸方向の外側に向けて突出する一対の突出部54a1,54a2を有する。突出部54a1,54a2はそれぞれY軸方向に所定の間隔をあけつつ隣接して配置されている。突出部54a1,54a2はZ軸方向に所定の長さを有し、突出部54a2のX軸方向への突出長は、突出部54a1のX軸方向への突出長よりも大きくなっている。
【0089】
一対の突出部54a1,54a2の各々の間には、第2リード部32aが挿通するリード挿通路55が形成されている。リード挿通路55の内部に第2リード部32aを挿通させることにより、カバー側ガイド部54によって第2リード部32aを端子金具93(94)に向けて案内することが可能となっている。
【0090】
リード挿通路55は、Z軸方向に延在しており、X軸方向に所定の深さを有する。リード挿通路55のY軸方向幅は、第2リード部32aの直径と同等以上の長さとなっている。リード挿通路55のX軸方向の深さは、その内部を挿通する第2リード部32aがリード挿通路55の外側に抜けない程度の深さであり、好ましくは第2リード部32aの直径と同等以上である。
【0091】
第2リード部32aは、リード挿通路55の内部をZ軸方向に引き出される。第2リード部32aは、第2コイル部30の巻回部分から端子93(あるいは94)に向けて斜めに引き出されるというよりは、第2コイル部30の巻回部分(第2端子台設置部42のY軸方向の端部付近)からZ軸上方に向けて略垂直に立ち上げられ、Z軸方向からY軸方向に向けて屈曲した状態で、Y軸方向の外側に引き出される。
【0092】
第2端子台70_2のY軸方向の端部E2,E2と第2リード部32a,32aとの間には、所定の隙間G2,G2が形成されている。本実施形態では、カバー側ガイド部54,54は、隙間G2,G2が形成されるように、第2端子台70_2のY軸方向の端部E2,E2から離間した位置に設けられている。そのため、リード挿通路55,55の内部に第2リード部32a,32aを挿通させたとき、第2リード部32a,32aを第2端子台70_2のY軸方向の端部E2,E2から強制的に離間させた位置に配置させることが可能となっている。隙間G2,G2の長さ(距離)は、第2端子台70_2のY軸方向への可動距離と同等以上である。あるいは、隙間G2,G2の距離は、第2ワイヤ32の線径と同等以上である。
【0093】
カバー側ガイド部54,54は、ボビン上鍔部48のX軸方向の他方側の端部において、第2端子台70_2のY軸方向の可動範囲の外側に形成されている。そのため、第2端子台70_2がY軸方向の一方側または他方側に向かって移動したときに、第2端子台70_2のY軸方向の端部E2の一部(特に、第2端子台70_2の下端部)は、カバー側ガイド部54,54(特に、突出部54a1)や、リード挿通路55の内部を挿通する第2リード部32a,32aに接触することがない。そのため、第2端子台70_2は、カバー側ガイド部54,34あるいは第2リード部32aに干渉されることなくY軸方向に移動することが可能となっている。なお、第2端子台70_2のY軸方向の可動範囲は、前述の第1端子台70_1のY軸方向の可動範囲A1(
図7)と同様となっている。
【0094】
本実施形態では、第2ワイヤ32の径は第1ワイヤ22の径よりも太くなっており、ボビン40のX軸方向の他方側の端部では、この径の太い第2ワイヤ32の第2リード部32aがカバー側ガイド部54,54によって端子93(94)に向けて案内される。
【0095】
以下に、コイル装置10の製造方法の一例を説明する。コイル装置10の作製においては、まず、
図2に示すボビン40を準備する。ボビン40の材質は、特に限定されないが、樹脂等の絶縁材料が挙げられる。
【0096】
次に、
図6Aに示すボビン40の巻回区画S1,S2の位置において、中空筒部44の外周に第1ワイヤ22を巻回し第1コイル部20を形成する。また、ボビン40の巻回区画S3,S4の位置において、中空筒部44の外周に第2ワイヤ32を巻回し第2コイル部30を形成する。第1コイル部20および第2コイル部30の形成後、ボビン40のX軸方向の端部において、ボビン40の外周に絶縁カバー50を取り付ける。第1ワイヤ22としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。第2ワイヤ32についても同様である。
【0097】
次に、第1リード部22a,22aを巻回区画S1,S2からY軸方向の相互に反対側に引き出し、
図5Aに示すように、Z軸方向に向けて立ち上げて、ボビン側ガイド部417,417のリード挿通路418,418の内部に挿通させる。これにより、ボビン側ガイド部417,417を介して、第1リード部22a,22aをY軸方向およびZ軸方向に向けて十分に引き回した状態で、端子91,92に向けて案内することが可能となる。第1リード部22a,22aをリード挿通路418,418の内部に挿通させた後、これらをY軸方向に向けて屈曲させ、Y軸方向の外側に引き出す。
【0098】
また、第2リード部32a,32aを巻回区画S3,S4からY軸方向の相互に反対側に引き出し、
図5Bに示すように、Z軸方向に向けて立ち上げて、カバー側ガイド部54,54のリード挿通路55,55の内部に挿通させる。これにより、カバー側ガイド部54,54を介して、第2リード部32a,32aをY軸方向およびZ軸方向に向けて十分に引き回した状態で、端子93,94に向けて案内することが可能となる。第2リード部32a,32aをリード挿通路55,55の内部に挿通させた後、これらをY軸方向に向けて屈曲させ、Y軸方向の外側に引き出す。
【0099】
その後に、
図5Aおよび
図5Bに示すように、ボビン40の第1端子台設置部41および第2端子台設置部42に、それぞれ第1端子台70_1および第2端子台70_2をX軸方向の外側から移動させて取り付ける。
【0100】
より詳細には、
図4に示すように、第1端子台70_1の取付時には、主凸部412に主凹部72a1をX軸方向およびY軸方向に移動自在に嵌合させ、副凸部413a1,413a1に副凹部72a2をX軸方向およびY軸方向に移動自在に嵌合させ、補助副凸部413a2,413a2に補助副凹部72a3をX軸方向およびY軸方向に移動自在に嵌合させることにより行う。
【0101】
また、
図4および
図5Bに示すように、第2端子台70_2の取付時には、主凸部422に主凹部72a1をX軸方向およびY軸方向に移動自在に嵌合させ、副凸部423a1,423a1に副凹部72a2をX軸方向およびY軸方向に移動自在に嵌合させ、補助副凸部423a2,423a2に補助副凹部72a3をX軸方向およびY軸方向に移動自在に嵌合させることにより行う。
【0102】
図5Aおよび
図5Bに示すように、第1端子台70_1および第2端子台70_2に、それぞれ端子金具91,92および端子金具93,94が取り付けてある場合には、その後に、各端子金具91~94のワイヤ接続部91a~94aに、各リード部22a,32aを接続する。各端子金具91~94のワイヤ接続部91a~94aに、各リード部22a,32aを接続するための方法としては、特に限定されず、はんだ付け、溶接、抵抗溶接、超音波溶接、レーザ溶接、カシメ止め、熱圧着、熱融着などが例示される。
【0103】
なお、端子台設置部41,42に端子台70_1,70_2を取り付ける前に、各端子金具91~94のワイヤ接続部91a~94aに各リード部22a,32aを予め接続しておき、当該各端子金具91~94を端子台70_1,70_2に取り付けてもよい。
【0104】
その後、端子台70_1,70_2に内カバー78,78を取り付ける。また、その前後に、
図2に示すコアカバー60,60をボビン40におけるY軸方向の両側に取り付け、その後に、Z軸方向の上下方向から、コア12を取り付ける。
【0105】
以上、本実施形態に係るコイル装置10は、端子91~94が取り付けられ、ボビン40のX軸方向とY軸方向の双方に移動自在にボビン40に取り付けられる端子台70_1,70_2を有する。そのため、回路基板300の各取付孔302の位置とコイル装置10の端子91~94の位置とをラフに位置決めした後、ボビン40に対して端子台70_1,70_2を相対移動させるのみで、端子台70_1,70_2の端子91~94の位置と回路基板300の各取付孔302とを正確に位置決めして接続することができる。
【0106】
また、本実施形態に係るコイル装置10では、コイル装置10の製造の段階で、端子台70_1,70_2の端子91~94の位置を、回路基板300の各取付孔302に正確に位置合わせして製造する必要がなくなり、コイル装置10を構成する各部品の製造と組立が容易になり、製造コストの低減に寄与する。
【0107】
特に、本実施形態に係るコイル装置10は、第1端子台70_1のY軸方向の端部E1,E1と第1リード部22a,22aとの間に所定の隙間G1,G1を形成するように第1リード部22a,22aを案内するボビン側ガイド部417,417を有する。このように、ボビン側ガイド部417,417を具備させることにより、以下に示すように、第1端子台70_1のY軸方向への移動をスムーズに行うことができる。
【0108】
端子91,92に第1リード部22a,22aを熱圧着等により接続すると、その熱の影響により、熱圧着等が施された部分において第1リード部22a,22aが硬化し屈曲しにくくなる場合があり、この場合、第1リード部22a,22aに端子91,92を介して連結された第1端子台70_1のY軸方向への移動が困難となるおそれがある。そこで、ボビン側ガイド部417,417をコイル装置10に設け、ボビン側ガイド部417,417によって案内される経路に沿って第1リード部22a,22aを端子91,92に向けて引き回すことにより、第1リード部22a,22aに十分な長さの線長を具備させることが可能となり、熱圧着等により端子91,92に第1リード部22a,22aを接続したときに、その熱の影響により硬化する部分の割合を低減し第1リード部22a,22aの屈曲性を十分に維持することができる。したがって、第1リード部22a,22aの硬化部分によって第1端子台70_1のY軸方向への移動が阻害されることを防止し、第1端子台70_1によるY軸方向へのスムーズな移動が実現され、第1端子台70_1の端子91,92と回路基板300との位置決めの精度を格段に高めることができる。
【0109】
また、第1端子台70_1は上記隙間G1,G1の範囲内においてボビン側ガイド部417,417あるいはこれに案内される第1リード部22a,22aに妨げられることなく自在に移動することができるため、Y軸方向への移動時において、第1端子台70_1のY軸方向の端部E1,E1と、ボビン側ガイド部417,417あるいはこれに案内される第1リード部22a,22aとが接触することを防止することが可能となる。したがって、この点においても、第1端子台70_1によるY軸方向へのスムーズな移動が実現され、上述した効果を得ることができる。
【0110】
また、本実施形態では、ボビン側ガイド部417,417は、第1端子台70_1のY軸方向への可動距離と同等以上の距離で、第1端子台70_1のY軸方向の端部E1,E1から離間した位置に設けられている。これにより、第1端子台70_1のY軸方向への可動範囲の外側にボビン側ガイド部417,417が配置されることになるため、ガイド部あるいはこれに案内されるリード部に端子台が接触することを有効に防止することが可能となり、端子台による第1軸方向へのスムーズな移動を効果的に実現することができる。
【0111】
また、本実施形態では、ボビン側ガイド部417,417は、X軸方向の外側に向けて突出する一対の突出部417a1,417a2を有し、一対の突出部417a1,417a2の各々の間には、第1リード部22a,22aが挿通するリード挿通路418,418が形成されている。各リード挿通路418の内部に第1リード部22aを挿通させることにより、一対の突出部417a1,417a2の各々によって第1リード部22aのY軸方向への位置ずれが制限され、第1端子台70_1のY軸方向への移動経路の内部に第1リード部22aが入り込むことを防止し、第1端子台70_1によるY軸方向へのスムーズな移動を効果的に実現することができる。
【0112】
また、本実施形態では、ボビン40はボビン上鍔部48を有し、ボビン側ガイド部417,417は、ボビン上鍔部48のX軸方向の端部において、第1端子台70_1のY軸方向への可動範囲A1の外側に形成されている。ボビン側ガイド部417,417をボビン上鍔部48に一体的に形成することにより、ボビン側ガイド部417,417の形成に伴うコイル装置10の大型化を防止することができる。また、ボビン側ガイド部417,417を上記領域に形成することにより、第1端子台70_1のY軸方向の端部E1,E1を迂回するように端子91,92に向けて第1リード部22a,22aを引き出すことが可能となり、第1リード部22a,22aに十分な長さの線長を与え、熱圧着等による熱の影響により硬化する部分の割合を低減し、第1リード部22a,22aの屈曲性を十分に維持することができる。
【0113】
また、本実施形態では、第1コイル部20および第2コイル部30の各々は、その巻回軸方向に沿って隣接して配置されている。そのため、例えばボビン40の外周に第1コイル部20を配置し、その外側に第2コイル部30を配置する場合に比べて、部品点数を少なくすることが可能となり、コイル装置10のコンパクト化を図ることができる。
【0114】
また、本実施形態では、第1コイル部20と第2コイル部30の第2リード部32とを絶縁する絶縁カバー50が、ボビン40のX軸方向の端部に装着されており、絶縁カバー50にはカバー側ガイド部54,54が設けられている。カバー側ガイド部54,54は、第2端子台70_2のY軸方向の端部E2,E2と第2リード部32a,32aとの間に所定の隙間G2,G2を形成するように第2リード部32a,32aを案内する。そのため、カバー側ガイド部54,54に基づいて、ボビン側ガイド部417について説明した上述した作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0115】
また、絶縁カバー50によって、第1コイル部20と第2コイル部30との絶縁を良好に図ることができる。また、カバー側ガイド部54,54を絶縁カバー50に一体的に形成することにより、カバー側ガイド部54,54の形成に伴うコイル装置10の大型化を防止することができる。
【0116】
また、本実施形態では、第2ワイヤ32の径は第1ワイヤ22の径よりも太く、径が太い方の第2ワイヤ32の第2リード部32aが、カバー側ガイド部54によって案内される。径が太い第2ワイヤ32はもともと剛性が高く曲がりにくいため、熱圧着等による熱の影響により径が太い方の第2ワイヤ32の第2リード部32aが硬化した場合、第2リード部32aの屈曲性は特に損なわれやすくなる。そのため、径が太い方の第2ワイヤ32の第2リード部32aをカバー側ガイド部54によって案内されるリード挿通路55に沿って引き回すことにより、第2リード部32aの硬化部分の割合を低減させ、屈曲性をできるだけ維持すること可能となり、第2端子台70_2のY軸方向への移動が阻害される問題を効果的に回避することができる。
【0117】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。例えば、
図6Aに示す第1コイル部20と第2コイル部30との配置を逆にしてもよい。また、第1コイル部20を二次コイルとして用い、第1ワイヤ22の径を第2ワイヤ32の径よりも太くしてもよい。
【0118】
また、第1ワイヤ22の巻回方法は、α巻きに限定されるものではなく、整列巻きでもよい。整列巻きでも、本発明の作用効果を期待することができる。第2ワイヤ32についても同様である。さらに、ボビン40の具体的な形状、あるいはコア12の具体的な形状は、上述した実施形態に限らず、種々に改変することができる。
【0119】
上記実施形態では、本発明のトランスへの適用例について示したが、他のコイル装置に本発明を適用してもよい。例えば、本発明のコイル装置は、リアクトルなどにも用いることができる。
【0120】
上記実施形態において、緩嵌合凸部411,421と緩嵌合凹部72aとの各配置は逆でもよい。すなわち、緩嵌合凸部411,421が第1端子台70_1または第2端子台70_2に形成され、緩嵌合凹部72aがボビン40に形成されてもよい。
【0121】
また、コイル装置10の内部に巻回される第1ワイヤ22および第2ワイヤ32の巻き方は、上述した実施形態に限定されない。例えば、第1コイル部20をボビン40の外周(巻回部45)に形成し、第1コイル部20の外側にボビンカバーを取り付け、ボビンカバーの外周に第2コイル部30を形成してもよい。この場合、第1コイル部20が内側に配置され、第2コイル部30が外側に配置されることになり、第1コイル部20および第2コイル部30を二重で配置することが可能となる。
【0122】
上記実施形態では、端子台70_1,70_2がボビン40のX軸方向の両側に形成されていたが、X軸方向の片側にのみ端子台70_1,70_2のいずれか一方が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0123】
10…コイル装置
20…第1コイル
22…第1ワイヤ
22a…第1リード部
30…第2コイル
32…第2ワイヤ
32a…第2リード部
40…ボビン
41…第1端子台設置部
410…絶縁壁
411…緩嵌合凸部
412…主凸部
413a1,413a1…副凸部
413a2,413a2…補助副凸部
414…底部
415…制限壁部
416…段差部
417…ボビン側ガイド部
417a1,417a2…突出部
418…リード挿通路
419…抜け止め孔
42…第2端子台設置部
420…絶縁壁
421…緩嵌合凸部
422…主凸部
423a1,423a1…副凸部
423a2,423a2…補助副凸部
424…底部
425…制限壁部
426…段差部
427…差込部
427a…差込孔
429…抜け止め孔
45…巻回部
50…絶縁カバー
51…カバー本体
52…差込片
53…下固定片
54…カバー側ガイド部
54a1,54a2…突出部
55…リード挿通路
70_1,70_2…端子台
71…台本体
72…貫通孔
72a…緩嵌合凹部
72a1…主凹部
72a2…副凹部
72a3…補助副凹部
72b…取付凹部
72c1…支持片
72c2…ストッパ凸部
73…端子取付部
74…端子溝
75…嵌合溝
76…取付孔
91~94…端子金具(端子)
91a~94a…ワイヤ接続部
91b~94b…フック部
91c~94c…取付部
91d~94d…挿通孔
91e~94e…連結部
91f~94f…差込凸部
300…回路基板