(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】移動体の電源システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240220BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240220BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B60R16/02 645A
H02J7/00 S
H02H7/18
B60R16/023 P
(21)【出願番号】P 2020158406
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 康治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉武 慎介
(72)【発明者】
【氏名】岡野 俊一
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-104880(JP,A)
【文献】特開2017-136924(JP,A)
【文献】特開2015-205545(JP,A)
【文献】特開2008-220058(JP,A)
【文献】特開2016-201740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 7/00
H02H 7/18
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の電源システムであって、
バッテリと、
前記移動体が有するデバイスを制御可能な複数の演算装置と、
前記バッテリ及び前記複数の演算装置の少なくとも1つにそれぞれ電気的に接続され、前記バッテリと前記少なくとも1つの演算装置との間の電源経路を中継する中継装置と、を備え、
前記中継装置は、前記バッテリから前記少なくとも1つの演算装置への電力供給のオン
及びオフをそれぞれ制御するスイッチシステムを有し
、
前記複数の演算装置は、
前記デバイスに制御信号をそれぞれ送信可能な複数のサブ演算装置と、
前記複数のサブ演算装置とそれぞれ通信接続され、該複数のサブ演算装置を統括制御する中央演算装置と、
を含み、
前記中央演算装置は、前記中継装置と通信可能であるとともに、自身の異常を検知したときには、前記スイッチシステムをオフ状態にして、前記バッテリから自身への電力供給をオフ状態にするように前記中継装置に制御信号を出力する自己遮断機能を有し、
前記中央演算装置は、前記自己遮断機能を実行するときには、前記複数のサブ演算装置に通知するとともに、該通知の後に前記自己遮断機能を実行するように構成され、
前記複数のサブ演算装置は、前記中央演算装置から前記通知を受信したときには、前記移動体のシーン及び自身が制御する前記デバイスに応じて、当該デバイスにそれぞれ制御信号を出力することを特徴とする移動体の電源システム。
【請求項2】
移動体の電源システムであって、
バッテリと、
前記移動体が有するデバイスを制御可能な複数の演算装置と、
前記バッテリ及び前記複数の演算装置の少なくとも1つにそれぞれ電気的に接続され、前記バッテリと前記少なくとも1つの演算装置との間の電源経路を中継する中継装置と、を備え、
前記中継装置は、前記バッテリから前記少なくとも1つの演算装置への電力供給のオン及びオフをそれぞれ制御するスイッチシステムを有し、
前記複数の演算装置は、
前記デバイスに制御信号をそれぞれ送信可能な複数のサブ演算装置と、
前記複数のサブ演算装置とそれぞれ通信接続され、該複数のサブ演算装置を統括制御する中央演算装置と、
を含み、
前記中央演算装置は、前記中継装置と通信可能であるとともに、自身の異常を検知したときには、前記スイッチシステムをオフ状態にして、前記バッテリから自身への電力供給をオフ状態にするように前記中継装置に制御信号を出力する自己遮断機能を有し、
前記中央演算装置は、前記自己遮断機能を実行するときには、前記複数のサブ演算装置に、前記移動体のシーン及び前記各サブ
演算装置が制御する前記デバイスに応じて制御信号をそれぞれ送信するとともに、該制御信号を送信した後に前記自己遮断機能を実行するように構成されていることを特徴とする移動体の電源システム。
【請求項3】
移動体の電源システムであって、
バッテリと、
前記移動体が有するデバイスを制御可能な複数の演算装置と、
前記バッテリ及び前記複数の演算装置の少なくとも1つにそれぞれ電気的に接続され、前記バッテリと前記少なくとも1つの演算装置との間の電源経路を中継する中継装置と、を備え、
前記中継装置は、前記バッテリから前記少なくとも1つの演算装置への電力供給のオン及びオフをそれぞれ制御するスイッチシステムを有し、
前記複数の演算装置は、
前記デバイスに制御信号をそれぞれ送信可能な複数のサブ演算装置と、
前記複数のサブ演算装置とそれぞれ通信接続され、該複数のサブ演算装置を統括制御する中央演算装置と、
を含み、
前記中央演算装置は、前記中継装置と通信可能であるとともに、自身の異常を検知したときには、前記スイッチシステムをオフ状態にして、前記バッテリから自身への電力供給をオフ状態にするように前記中継装置に制御信号を出力する自己遮断機能を有し、
前記中継装置は、前記中央演算装置から前記自己遮断機能を実行する制御信号を受信して、前記スイッチシステムをオフ状態にするように構成され、
さらに前記中継装置は、前記中央演算装置から前記自己遮断機能を実行する制御信号を受信したときには、前記スイッチシステムをオフ状態にする前に、前記複数のサブ演算装置に、前記中央演算装置が前記自己遮断機能を実行することを通知するように構成されており、
前記複数のサブ演算装置は、前記中継装置から前記通知を受信したときには、前記移動体のシーン及び自身が制御する前記デバイスに応じて、当該デバイスにそれぞれ制御信号を出力することを特徴とする移動体の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、移動体の電源システムに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの移動体には多数の電子機器が配置される。これに伴い、各電子機器への電源供給の構成が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、異なるネットワークのECU(演算装置)同士の通信を中継するゲートウェイECUを設け、全てのネットワークがスリープ状態になってから最初に送信を開始する送信対象ECUが存在するネットワークだけをウェイクアップさせる車載通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各演算装置は、制御対象であるデバイスと同様にバッテリから電力が供給されることで作動する。このため、演算装置にショートなどの通電異常が発生した場合には、バッテリからの電力が無駄に消費されることになる。また、ショートした状態が長時間放置されると、演算装置が故障するおそれがある。したがって、演算装置に通電異常が生じたときには、当該演算装置に対する電力供給を出来限り迅速に遮断することが好ましい。
【0006】
特許文献1では、ゲートウェイECUによって各演算装置のウェイクアップ状態を制御することで電力の消費を抑制が期待できる。しかし、各演算装置に対する通電異常が生じたときの各演算装置に対する制御については考慮されていない。このため、移動体の電動化が進む近年において、移動体における電費を向上させるという観点からは改良の余地がある。
【0007】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、演算装置に通電異常が生じたときに、該演算装置に対する電力供給を出来限り迅速に遮断して、移動体における電費を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、移動体の電源システムを対象として、バッテリと、前記移動体が有するデバイスを制御可能な複数の演算装置と、前記バッテリ及び前記複数の演算装置の少なくとも1つにそれぞれ電気的に接続され、前記バッテリと前記少なくとも1つの演算装置との間の電源経路を中継する中継装置と、を備え、前記中継装置は、前記バッテリから前記少なくとも1つの演算装置への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御するスイッチシステムを有し、前記少なくとも1つの演算装置は、前記中継装置と通信可能であるとともに、自身の異常を検知したときには、前記スイッチシステムをオフ状態にして、前記バッテリから自身への電力供給をオフ状態にするように前記中継装置に制御信号を出力する自己遮断機能を有する、という構成とした。
【0009】
この構成によると、演算装置は自身の異常を検知したときに、自身で電力供給をオフ状態にすることができる。このため、演算装置に異常が生じたときに、かなり迅速に電力供給を遮断することができる。これにより、移動体の電費を向上させることができる。
【0010】
前記移動体の電源システムにおいて、前記複数の演算装置は、前記デバイスに制御信号をそれぞれ送信可能な複数のサブ演算装置と、前記複数のサブ演算装置とそれぞれ通信接続され、該複数のサブ演算装置を統括制御する中央演算装置と、を含み、前記中央演算装置は、前記中継装置と通信可能であるとともに、前記自己遮断機能を有する、という構成でもよい。
【0011】
すなわち、複数のサブ演算装置を統括して制御する中央演算装置は、サブ演算装置と比較して消費電力がかなり大きい。したがって、中央演算装置が自己遮断機能を有していれば、移動体の電費を効果的に向上させることができる。
【0012】
サブ演算装置と中央演算装置とを有する移動体の電源システムにおいて、前記中央演算装置は、前記自己遮断機能を実行するときには、前記複数のサブ演算装置に通知するとともに、該通知の後に前記自己遮断機能を実行するように構成され、前記複数のサブ演算装置は、前記中央演算装置から前記通知を受信したときには、前記移動体のシーン及び自身が制御する前記デバイスに応じて、当該デバイスにそれぞれ制御信号を出力する、という構成でもよい。
【0013】
この構成によると、中央演算装置への電力供給が遮断されるときには、各サブ演算装置がデバイスを制御するため、移動体の操作を適切に維持することができる。
【0014】
サブ演算装置と中央演算装置とを有する移動体の電源システムにおいて、前記中央演算装置は、前記自己遮断機能を実行するときには、前記複数のサブ演算装置に、前記移動体のシーン及び前記各サブ制御装置が制御する前記デバイスに応じて制御信号をそれぞれ送信するとともに、該制御信号を送信した後に前記自己遮断機能を実行するように構成されている、という構成でもよい。
【0015】
この構成によると、例えば、移動体が自動車である場合に、中央演算装置は、自己遮断機能を実行するときには、自動車を路肩に停止させるための制御信号を各サブ制御装置に送信した後、自己遮断機能を実行することができる。これにより、移動体の安全性を向上させつつ、移動体の電費の向上を図ることができる。
【0016】
サブ演算装置と中央演算装置とを有する移動体の電源システムにおいて、前記中継装置は、前記中央演算装置から前記自己遮断機能を実行する制御信号を受信して、前記スイッチシステムをオフ状態にするように構成され、さらに前記中継装置は、前記中央演算装置から前記自己遮断機能を実行する制御信号を受信したときには、前記スイッチシステムをオフ状態にする前に、前記複数のサブ演算装置に、前記中央演算装置が前記自己遮断機能を実行することを通知するように構成されており、前記複数のサブ演算装置は、前記中継装置から前記通知を受信したときには、前記移動体のシーン及び自身が制御する前記デバイスに応じて、当該デバイスにそれぞれ制御信号を出力する、という構成でもよい。
【0017】
この構成によると、中継装置は中央演算装置への電力供給を遮断する前に、各サブ演算装置にそれぞれ通知するため、中央演算装置への電力供給が遮断されるときには、各サブ演算装置がデバイスを制御するようになる。これにより、移動体の操作を適切に維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、演算装置に通電異常が生じたときに、該演算装置に対する電力供給を出来限り迅速に遮断して、移動体における電費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係る電源システムが搭載された車両の電力供給系統を示す構成図である。
【
図3】中央ECUが自己遮断機能を実行する際の電力供給系統の制御状態を概略的に示すブロック図である。
【
図4】実施形態2に係る電源システムが搭載された車両の電力供給系統を示す構成図である。
【
図5】実施形態2における電力供給系統を示すブロック図である。
【
図6】実施形態2において、中央ECUが自己遮断機能を実行する際の電力供給系統の制御状態を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、
図1は、実施形態1に係る電源システムが搭載された移動体の電力供給系統の構成を示す。本実施形態1において、移動体は自動車の車両1である。この車両1は、4つのサイドドアと1つのバックドアとを備える5ドア式の車両である。車両1は、運転者によるアクセル等の操作に応じて走行するマニュアル運転と、運転者の操作をアシストして走行するアシスト運転と、運転者の操作なしに走行する自動運転とが可能な車両である。以下の説明においては、移動体のこと単に車両1と表現することがある。また、「前」、「後」、「右」、及び「左」については、「車両1の前」、「車両1の後」、「車両1の右」、及び「車両1の左」を意味する。
【0022】
車両1は、
図1に示すように、バッテリ2と、車両1が有するデバイスに制御信号を送信可能な第1~第6サブECU11~16(Electric Control Unit)と、第1~第6サブECU11~16とそれぞれ通信接続され、第1~第6サブECU11~16を統括制御する中央ECU20と、を備える。バッテリ2、第1~第6サブECU11~16、及び中央ECU20は、それぞれ電線を介してヒューズボックス30に接続されている。各電線は、電力が供給できる電線であればよく、例えばワイヤーハーネスで構成されている。尚、サブECUの数は6つ未満でも7つ以上でもよい。また、バッテリ2やヒューズボックス30が複数あってもよい。電線の数は、サブECUの数、バッテリ2の数、ヒューズボックス30の数に応じて増減される。
【0023】
第1~第6サブECU11~16により制御されるデバイスは複数ある。デバイスは、車両1の基本動作である、駆動、制動、及び操舵に関連しない所謂ボディ系デバイスも含まれる。尚、
図1で示すデバイスは、車両1に搭載されたデバイスの一例であり、車両1が、
図1に示すデバイス以外のデバイスを有することを排除しない。
【0024】
本実施形態において、デバイスは主に3つのタイプに分類される。第1のタイプは、車両1の基本動作に関するデバイスであり、緊急時においても連続的な制御の継続が求められるデバイスである。第2のタイプは、車両1の基本動作には関連しないデバイスであって、緊急時において、車両1の状態によって作動又は非作動を区別すべきデバイスである。第3のタイプは、車両1の基本動作には関連しないデバイスであって、緊急時において、作動又は非作動のいずれかの状態を継続すればよいデバイスである。以下、第1のタイプに属するデバイスを基本デバイスといい、第2のタイプに属するデバイスを選択型デバイスといい、第3のタイプに属するデバイスを固定型デバイスという。
【0025】
基本デバイスとしては、例えば、電動パワーステアリング装置(EPS装置)の電動モータD11や、電動ブレーキ装置D12、エンジンのスロットル弁や燃料噴射弁が含まれる。選択型デバイスとしては、ブレーキランプD21やパワーウィンドウ装置D22、等が含まれる。固定型デバイスとしては、前照灯D31、オーディオ装置D32等が含まれる。
【0026】
中央ECU20は、車両1に搭載されたデバイスを作動させるための制御信号を生成する。車両1においては、各デバイスへの制御信号は、基本的には、中央ECU20で生成され、第1~第6サブECU11~16を経由して各デバイスに伝達される。
【0027】
中央ECU20には、
図1に示すように、車両1に搭載された複数のセンサ100からの信号が入力される。複数のセンサ100は、例えば、車両のボディ等に設けられかつ車外環境を撮影する複数のカメラ、車両のボディ等に設けられかつ車外の物標等を検知する複数のレーダ、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)を利用して、車両の位置(車両位置情報)を検出する位置センサ、車両の運転者によるブレーキペダルの踏み込み量を取得するブレーキペダルセンサ、車両の運転者によるステアリングの操舵角を取得する操舵角センサ、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を取得するアクセル開度センサ等を含む。また、センサ100は、パワーウィンドウ装置D22のスイッチ、前照灯D31のスイッチ、及びオーディオ装置D32のスイッチ等のスイッチ類を含む。尚、ここに例示するセンサ100は、中央ECU20に情報を入力するセンサの一例であり、本実施形態は、前記で列挙したセンサ100以外のセンサから中央ECU20に情報が入力されることを排除しない。
【0028】
中央ECU20は、例えば、1つまたは複数のチップで構成されたプロセッサと、各種デバイスへの制御信号を生成するためのソフトウェアやモジュールが格納されたメモリとを有する。中央ECU20は、AI(Artificial Intelligence)機能を有している場合もある。
【0029】
中央ECU20は、
図2及び
図3に示すように、マイクロコントロールユニット(以下MCU21という)と、第1~第6サブECU11~16(
図2及び
図3では、第1~第3サブECU11~13のみを示す)と通信するための通信部22とを有する。
【0030】
MCU21は、車両1がマニュアル運転やアシスト運転を行っているときには、アクセル開度センサ、ブレーキペダルセンサ、及び操舵角センサ等の検知値に基づいて、各デバイスが出力すべき駆動力、制動力、及び操舵角を算出する。MCU21は、算出した駆動力、制動力、及び操舵角、すなわち、各デバイスにより実現すべき駆動力、制動力、及び操舵角の目標状態を表す目標信号を生成する。
【0031】
MCU21は、車両1の自動運転やアシスト運転を可能にするために、複数のセンサ100からの情報を受けて、車両1が走行すべき経路を算出する。MCU21は、算出した経路を追従するための車両の目標運動を決定し、決定した目標運動を実現するための、駆動力、制動力、及び操舵角をそれぞれ算出する。MCU21は、算出した駆動力、制動力、及び操舵角、すなわち、各アクチュエータにより実現すべき駆動力、制動力、及び操舵角の目標状態を表す目標信号を生成する。
【0032】
MCU21は、推定した車外環境や算出した走行経路に基づいて、車両1の駆動制御、制動制御、及び操舵制御に関わらないボディ系デバイスのアクチュエータへの制御信号を生成する。例えば、MCU21は、周囲が暗いと推定したときには、前照灯D31を点灯させるように、前照灯D31に送る制御信号を生成する。
【0033】
MCU21は、乗員状態センサで得られた情報に基づいて、車室内の乗員の状態について、深層学習により生成した学習済みモデルを利用して推定する。乗員の状態とは、乗員の健康状態や感情を意味する。乗員の健康状態としては、例えば、健康、軽い疲労、体調不良、意識低下等がある。乗員の感情としては、例えば、楽しい、普通、退屈、イライラ、不快等がある。MCU21は、乗員の健康状態や乗員の感情も考慮して、各種制御信号を生成する。例えば、MCU21は、車室内の温度が高く、乗員の気分が優れないと推定したときには、窓を開けるように、パワーウィンドウ装置D22に送る制御信号を生成する。
【0034】
MCU21は、ヒューズボックス30と通信可能である。MCU21は、ヒューズボックス30の作動を制御することで、第1~第6サブECU11~16及び中央ECU20(つまり、自身)への通電を制御することが可能である。MCU21による通電制御についての詳細は後述する。
【0035】
MCU21は、自己の通電異常を診断する診断機能を有する。MCU21は、自身に流れる電流値等に基づいて、自身にショート等の通電異常が生じているか否かを診断する。MCU21は、通電異常が生じていると判断したときには、自身への電力供給を遮断するように、ヒューズボックス30における後述の中央半導体ヒューズ34を制御する自己遮断機能を有する。
【0036】
通信部22は、MCU21が生成した制御信号を第1~第6サブECU11~16に送信するとともに、第1~第6サブECU11~16から作動状態についての情報を取得する。第1~第6サブECU11~16の作動状態とは、第1~第6サブECU11~16の通電状態を含む。通信部22と第1~第6サブECU11~16との間の通信方式は、CAN(Controller Area Network)、CAN-FD(CAN with Flexible Datarate)、イーサネット(登録商標)を用いることができる。通信部22と第1~第3サブECU11~13との間の通信方式は、無線方式でもよく、一部を無線方式にして、他を有線方式にしてもよい。通信部22は、中央ECU20のメモリに格納されたモジュールの一例である。
【0037】
第1~第6サブECU11~16は、各デバイスの近傍に配置されている。本実施形態では、第1サブECU11は車両右中央に配置され、第2サブECU12は車両右後側に配置され、第3サブECU13は車両右前側に配置され、第4サブECU14は車両左中央に配置され、第5サブECU15は車両左後側に配置され、第6サブECU16は車両左後側に配置される。図示は省略しているが、第1~第6サブECU11~16は、該第1~第6サブECU11~16と中央ECU20の通信部22との通信規格と、第1~第6サブECU11~16と各デバイスとの通信規格とが異なるときに、プロトコル変換を行う機能がそれぞれ設けられている。
【0038】
各サブECU11~16の構成について説明する。ここでは、
図2を参照しながら、第1~第3サブECU11~13の構成を詳細に説明する。
【0039】
図2に示すように、第1サブECU11は、例えば、EPS装置D11、電動ブレーキ装置D12、及びパワーウィンドウ装置D22と通信接続されている。第1サブECU11は、中央ECU20から送信された制御信号(目標信号)に基づいてEPS装置D11、電動ブレーキ装置D12、及びパワーウィンドウ装置D22を制御する。第1サブECU11は、複数のセンサ100のうちの一部から情報を取得可能に構成されている。本実施形態では、第1サブECU11は、少なくとも操舵角センサ、ブレーキペダルセンサ、パワーウィンドウ装置のスイッチの出力を取得可能に構成されている。
【0040】
第1サブECU11は、中央ECU20から伝達された目標操舵角の情報に基づいて、EPS装置D11が目標操舵角を実現するように、EPS装置D11の制御量(アシストモータに供給する電流量等)を算出する。第1サブECU11は、算出した制御量に基づく信号をEPS装置D11に出力する。
【0041】
また、第1サブECUは、中央ECU20から伝達された目標制動力の情報に基づいて、電動ブレーキ装置D12が目標制動力を実現するように、電動ブレーキ装置D12の制御量(モータへの電流量など)を算出する。第1サブECU11は、算出した制御量に基づく信号を電動ブレーキ装置D12に出力する。
【0042】
第1サブECU11は、センサ100の出力に基づいてEPS装置D11の目標操舵角や電動ブレーキ装置D12の目標制動力を算出可能な予備演算部11aを有する。予備演算部11aは、中央ECU20への電力供給が遮断されたときには、該中央ECU20からの通知を受けて、EPS装置D11の目標操舵角及び電動ブレーキ装置D12の目標制動力を算出する。予備演算部11aは、第1サブECU11に入力されるセンサの情報に基づいて、EPS装置D11の目標操舵角及び電動ブレーキ装置D12の目標制動力を算出する。その後、第1サブECU11は、算出した目標操舵角を実現するためのEPS装置D11の制御量や算出した目標制動力を実現するための電動ブレーキ装置D12の制御量を算出して、算出した制御量に基づく信号をEPS装置D11及び電動ブレーキ装置D12に送信する。
【0043】
予備演算部11aは、中央ECU20のように車外環境に合わせた制御を行わず、車両1の乗員の操作に基づくEPS装置D11及び電動ブレーキ装置D12の制御のみを行う。
【0044】
また、第1サブECU11は、中央ECU20から伝達された窓の開閉情報に基づいて、パワーウィンドウ装置D22を作動させる。予備演算部11aは、中央ECU20への電力供給が遮断されたときには、該中央ECU20からの通知を受けて、車両1のシーンに応じてパワーウィンドウ装置D22のオン/オフを判定する。第1サブECU11は、判定結果に基づく制御信号をパワーウィンドウ装置D22に送信する。予備演算部11aは、例えば、車両1が停車中に中央ECU20への電力供給が遮断されるときには、窓を閉じるようにパワーウィンドウ装置D22に制御信号を出力する。
【0045】
図2に示すように、第2サブECU12は、ブレーキランプD21と通信接続されている。第2サブECU12は、中央ECU20から送られたブレーキランプD21の情報を、そのままブレーキランプD21に伝達する。つまり、ブレーキランプD21は、基本的には、中央ECU20から送られかつ第2サブECU12を中継した制御信号に基づいて作動する。第2サブECU12は、複数のセンサ100のうちの一部から情報を取得可能に構成されている。本実施形態では、第2サブECU12は、少なくともブレーキペダルセンサからの出力を取得可能に構成されている。
【0046】
第2サブECU12は、ブレーキランプD21を作動させるか否かを判定可能な予備判定部12aを有する。予備判定部12aは、中央ECU20への電力供給が遮断されたときには、該中央ECU20からの通知を受けて、ブレーキランプD21を作動させるか否かを判定する。予備判定部12aは、第2サブECU12に入力されるセンサの情報に基づいて、ブレーキランプD21を作動させるか否かを判定する。予備判定部12aは、ブレーキランプD21を制御するための制御信号を該ブレーキランプD21に送信する。
【0047】
図2に示すように、第3サブECU13は、例えば、右側の前照灯D31やオーディオD32と通信接続されている。本実施形態では、第3サブECU13は、センサからの出力が入力されないようになっている。尚、他のデバイスについては図示を省略しているが、第3サブECU13は、基本デバイス及び選択型デバイスとは接続されず、固定型デバイスとのみ接続されている。
【0048】
第3サブECU13は、中央ECU20から送られた前照灯D31の情報やオーディオD32の情報を、そのまま前照灯D31やオーディオD32に伝達する。つまり、前照灯D31やオーディオD32は、基本的には、中央ECU20から送られかつ第3サブECU13を中継した制御信号に基づいて作動する。
【0049】
第3サブECU13は、前照灯D31を点灯状態に維持するためのオン信号を出力可能な固定信号出力部13aを有する。固定信号出力部13aは、中央ECU20への電力供給が遮断されたときには、該中央ECU20からの通知を受けて、前照灯D31にオン信号を出力する。これにより、中央ECU20に通電異常があるときには、前照灯D31は点灯した状態が維持されるようになる。
【0050】
また、固定信号出力部13aは、オーディオ装置D32をオフ状態に維持するためのオフ信号を出力可能に構成されている。固定信号出力部13aは、中央ECU20への電力供給が遮断されたときには、該中央ECU20からの通知を受けて、オーディオD32にオフ信号を出力する。これにより、中央ECU20に通電異常があるときには、オーディオ装置D32はオフ状態が維持されるようになる。
【0051】
第4~第6サブECU14~16についても、第1~第3サブECU11~13と同等の設計方法で構成されている。すなわち、第4サブECU14のように基本デバイス(例えば、ブレーキ装置D12)が接続されているサブECUは、第1サブECU11のように、予備演算部11aを有している。第5サブECU15のように、選択型アクチュエータ(例えば、ブレーキランプD21)と接続されているサブECUは、第2サブECU12のように、予備判定部12aを有している。第6サブECU16のように、固定型デバイス(ここでは、前照灯D31)と接続されているサブECUは、第3サブECU13のように、固定信号出力部13aを有している。
【0052】
ヒューズボックス30は、
図2及び
図3に示すように、バッテリ2から第1~第3サブECU11~13への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御する複数のスイッチシステムを有する。バッテリ2と第1~第3サブECU11~13との間のスイッチシステムは、ヒューズでそれぞれ構成されている。バッテリ2と第1サブECU11との間には第1ヒューズ31が設けられ、バッテリ2と第2サブECU12との間には第2ヒューズ32が設けられ、バッテリ2と第3サブECU13との間には第3ヒューズ33が設けられている。また、ヒューズボックス30は、バッテリ2から中央ECU20への電力供給のオン/オフを制御する中央半導体ヒューズ34を有する。尚、図示は省略しているが、ヒューズボックス30には、バッテリ2と第4~第6サブECU14~16との間のスイッチシステムである第4~第6ヒューズも設けられている。尚、第1~第6サブECU11~16に対するスイッチシステムは、それぞれ半導体ヒューズで構成されていてもよい。ヒューズボックス30は、中継装置の一例である。
【0053】
中央半導体ヒューズ34は、MCU21と通信可能に構成されている。MCU21と中央半導体ヒューズ34との間の通信方式は、CAN、CAN-FD、イーサネット(登録商標)等を用いることができる。中央半導体ヒューズ34は、MCU21によってオン/オフ状態が制御される。例えば、MCU21により、中央半導体ヒューズ34がオン状態とされたときには、バッテリ2から中央ECU20に電力が供給される一方で、MCU21により、中央半導体ヒューズ34がオフ状態とされたときには、バッテリ2から中央ECU20への電力供給が遮断される。
【0054】
ここで、従来のヒューズボックスでは、中央ECU20は、電線に過電流が流れたときにヒューズが断線ことで保護されていた。しかし、中央ECU20の内部にショートなどの通電異常が発生した場合には、従来のヒューズによる保護ができない。このため、通電異常状態の中央ECU20に電力が供給され続けて、通電状態が更に悪化して、故障してしまうおそれがある。また、通電異常状態の中央ECU20に電力を供給し続けると、必要以上に電流が消費されるようになり、車両1の電費が悪化することになる。中央ECU20は、各デバイスの目標制御量を算出するため、特に消費電力が大きく、また特に故障を抑制する重要性が高い。そこで、本実施形態1では、中央ECU20(特にMCU21)は、中央ECU20に流れる電流が過剰に大きくなっていることを検知するなどして、通電異常を検知したときには、バッテリ2から中央ECU20への電力供給をオフ状態にするように中央半導体ヒューズ34に制御信号を出力する自己遮断機能を有する構成とした。
【0055】
このように、中央ECU20自身で電力供給を遮断するようにすることで、中央ECU20に通電異常が発生したときには、かなり迅速に自身への電力供給を遮断することができる。これにより、車両1の電費を向上させるとともに、通電異常による中央ECU20の故障を効果的に抑制することができる。
【0056】
次に、
図3を参照しながら、中央ECU20の通電を遮断するまでのプロセスについて説明する。まず、中央ECU20の内部でショートが発生したとする。中央ECU20のMCU21は、通信部22介して、第1~第6サブECU11~16(
図3では第1~第3サブECU11~13)に中央ECU20への電力供給を遮断することを通知する。通知の後、MCU21は、前記自己遮断機能を実行して、中央半導体ヒューズ34に制御信号を送信することで、中央半導体ヒューズ34をオフ状態にする。以上により、中央ECU20への電力供給が遮断される。
【0057】
一方で、中央ECU20からの通知を受けた第1~第6サブECU11~16は、中央ECU20を用いることなく、車両1のシーン(状況)及び通信接続されたデバイスのタイプに応じて各デバイスを制御する。すなわち、第1サブECU11は、センサ100からの信号に基づいて、目標操舵角を算出してEPS装置D11を制御しかつ目標制動力を算出して電動ブレーキ装置D12を制御し、第2サブECU12は、車両1の状態に応じてブレーキランプD21にオン/オフ信号を出力し、第3サブECU13は、車両1のシーンとは無関係に前照灯D31にオン信号を出力しかつオーディオD32にオフ信号を出力する。
【0058】
このように、中央ECU20は、第1~第6サブECU11~16に通知をしてから、自身への電力供給を遮断する。これにより、第1~第6サブECU11~16により各デバイスの制御を継続できるため、車両1が走行中であったとしても走行を継続できるとともに、車両1が停車中であるときには車両1の盗難防止を図ることができる。
【0059】
したがって、本実施形態では、バッテリ2と、車両1が有するデバイスに制御可能な中央ECU20及び第1~第6サブECU11~16と、バッテリ2、中央ECU20及び第1~第6サブECU11~16に接続され、バッテリ2と中央ECU20及び第1~第6サブECU11~16との間の電源経路を中継するヒューズボックス30と、を備え、ヒューズボックス30は、バッテリ2から中央ECU20への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御する中央半導体ヒューズ34を有し、中央ECU20は、中央半導体ヒューズ34と通信可能であるとともに、自身の通電異常を検知したときには、バッテリ2から自身への電力供給をオフ状態にするように中央半導体ヒューズ34に制御信号を出力する自己遮断機能を有する。これにより、中央ECU20は自身の通電異常を検知したときに、自ら電力供給をオフ状態にすることができるため、中央ECU20に通電異常が生じたときに、かなり迅速に電力供給を遮断することができる。これにより、車両1の電費を向上させることができる。また、通電異常が継続することによる中央ECU20の故障を効果的に抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、中央ECU20は、前記自己遮断機能を実行するときには、第1~第6サブECU11~16に通知するとともに、該通知の後に前記自己遮断機能を実行するように構成され、第1~第6サブECU11~16は、中央ECU20から前記通知を受信したときには、車両1のシーン及び自身が制御するデバイスのタイプに応じて、当該デバイスにそれぞれ制御信号を出力する。これにより、車両1の各デバイスの制御を適切に継続することができる。
【0061】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0062】
図4に示すように、本実施形態3では、車両201の電力供給系統は、相対的に電圧が低い電力を供給するための低圧バッテリ202と、相対的に電圧が高い電力を供給するための高圧バッテリ203とを有する。低圧バッテリ202は、例えば12Vバッテリであって、鉛蓄電池等で構成されている。高圧バッテリ203は、例えば48Vバッテリであって、リチウムイオン電池等で構成されている。
【0063】
図5及び
図6に示すように、高圧バッテリ203には、ISG50(Integrated Starter Generator)が接続されている。ISG50には、高圧バッテリ203からの電力が降圧されることなく供給される。
【0064】
車両201の電力供給系統は、ヒューズボックス230とDCDCコンバータ240(以下、単にコンバータ240という)とを有する。低圧バッテリ202は、電線を介してヒューズボックス230に接続されるとともに、別の電線を介してコンバータ240と接続されている。高圧バッテリ203は、電線を介してコンバータ240と接続されている。
【0065】
ヒューズボックス230は、低圧バッテリ202から第1~第6サブECU11~16への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御する複数のスイッチシステムを有する。図示は省略するが、各スイッチシステムは、ヒューズでそれぞれ構成されている。
【0066】
コンバータ240は、高圧バッテリ203から供給される電力の電圧を、低圧バッテリ202と同じ電圧(例えば、12V)に降圧する。コンバータ240は、降圧後の電力を中央ECU20に供給する。DCDCコンバータ240は、中継装置の一例である。
【0067】
図5に示すように、コンバータ240は、2つのコンバータ回路241,242と、各コンバータ回路241,242を制御する2つのコントローラ243,244と、各コントローラ243,244に制御信号を出力するCPU245とを有する。各コンバータ回路241,242は、CPU245からの制御信号に基づいて、各コントローラ243,244により制御される。各コンバータ回路241,242は、高圧バッテリ203の電圧(例えば48V)を低圧バッテリ202と同程度の電圧(例えば12V)に低下させる。
【0068】
コンバータ240は、中央ECU20と通信するための通信IC246を有する。通信IC246は、中央ECU20の通信IC22から送られてくる信号を受信して、CPU245に送信する。コンバータ240の通信IC246と中央ECU20の通信IC22との間の通信方式は、例えば、CANやCAN-FDを採用することができる。
【0069】
図6に示すように、コンバータ240は、高圧バッテリ203から中央ECU20への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御するスイッチシステムを有する。スイッチシステムは、半導体ヒューズ(以下、中央半導体ヒューズ247という)で構成されている。
【0070】
中央半導体ヒューズ247は、CPU245によってオン/オフ状態が制御される。CPU245は、通信IC246を介して中央ECU20から中央半導体ヒューズ247のオン/オフに関する制御信号を受信したときに、中央半導体ヒューズ247のオン/オフ状態を切り換える。結果的に、高圧バッテリ203と中央ECU20との間の通電状態は、中央ECU20自身により制御されている。
【0071】
コンバータ240は、
図6に示すように、第1~第3サブECU11~13と通信可能に構成されている。詳しくは後述するが、コンバータ240は、中央ECU20が自ら電力供給を遮断するとき(自己遮断機能を実行するとき)に、第1~第3サブECU11~13に中央ECU20が前記自己遮断機能を実行することを通知する。尚、図示は省略しているが、コンバータ240は、第4~第6サブECU14~16とも通信可能に構成されており、中央ECU20が前記自己遮断機能を実行するときには、第4~第6サブECU14~16にも中央ECU20が前記自己遮断機能を実行することを通知する。
【0072】
本実施形態2でも、中央ECU20は、自身にショートなどの通電異常が発生したことを検知したときには、低圧及び高圧バッテリ202,203から中央ECU20への電力供給をオフ状態にするようにコンバータ240(厳密にはコンバータ240の半導体ヒューズ)に制御信号を出力する自己遮断機能を実行する。これについて、
図6を参照しながら説明する。
【0073】
まず、中央ECU20の内部でショートが発生したとする。中央ECU20のMCU21は、コンバータ240のCPU245に前記自己遮断機能を実行することを通知する。中央ECU20からの通知と受けたCPU245は、通信IC246を介して、第1~第6サブECU11~16(
図6では第1~第3サブECU11~13)に、中央ECU20が前記自己遮断機能を実行することを通知する。CPU245は、各サブECU11~16に通知をした後、中央半導体ヒューズ247をオフ状態にする。以上により、中央ECU20への電力供給が遮断される。
【0074】
一方で、CPU245からの通知を受けた第1~第6サブECU11~16は、中央ECU20を用いることなく、車両1のシーン(状況)及び通信接続されたデバイスのタイプに応じて各デバイスを制御する。すなわち、第1サブECU11は、センサ100からの信号に基づいて、目標操舵角を算出してEPS装置D11を制御しかつ目標制動力を算出して電動ブレーキ装置D12を制御し、第2サブECU12は、車両1の状態に応じてブレーキランプD21にオン/オフ信号を出力し、第3サブECU13は、車両1のシーンとは無関係に前照灯D31にオン信号を出力しかつオーディオD32にオフ信号を出力する。
【0075】
このように、本実施形態2では、コンバータ240が第1~第6サブECU11~16に通知をしてから、自身への電力供給を遮断する。このため、本実施形態2でも、中央ECU20の電力供給が遮断されたとしても、第1~第6サブECU11~16により各デバイスの制御を継続できるため、車両1が走行中には走行を継続させることができる。
【0076】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0077】
例えば、実施形態1及び2では、中央ECU20の電力供給を遮断するときには、各サブECU11~16が各々に接続されているデバイスの制御を行っていた。これに限らず、中央ECU20は、該中央ECU20自身の通電異常を検知したときには、第1~第6サブECU11~16に車両1のシーン及び各サブECU11~16が制御するデバイスに応じて制御信号をそれぞれ送信してもよい。すなわち、中央ECU20は、自己遮断機能を実行する前に、例えば、第1サブECU11には、車両1を路肩に移動させるようにEPS装置D11を動作させる目標操舵角を送信しかつ車両1を路肩に停止させるように電動ブレーキ装置D12を動作させる目標制動力を送信し、第2サブECU12にはブレーキランプD21をオン状態にする制御信号を送信し、第3サブECU13には前照灯D31をオン状態にする制御信号を送信する。このように、中央ECU20は、自己遮断機能を実行する前に、運転者等の安全を得るための最低限の制御信号を各サブECU11~16に送信する。これにより、車両1の安全性を効果的に向上させつつ、差や量の電費の向上を図ることができる。
【0078】
また、中央ECU20の電力供給を遮断するときには、例えば、各サブECU11~16が、通信IC22を介してMCU21と通信することで、MCU21を用いて各デバイスに対する制御を生成してもよい。
【0079】
また、前述の実施形態2では、コンバータ240のCPU245は、中央ECU20が自己遮断機能を実行するときには、各サブECU11~16に通知するのみであった。これに限らず、中央ECU20が自己遮断機能を実行するときには、中央ECU20に代わって、コンバータ240のCPU245が各サブECU11~16に制御信号を出力するようにしてもよい。
【0080】
また、前述の実施形態1及び2では、移動体として自動車の車両を対象としていたが、これに限らず、重機の車両等を対象としてもよい。
【0081】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
ここに開示された技術は、移動体の電源システムにおいて、移動体における電費を向上させるために有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 車両(移動体)
2 バッテリ
11~16 第1~第6サブECU(演算装置、サブ演算装置)
20 中央ECU(演算装置、中央演算装置)
30 ヒューズボックス(中継装置)
201 車両(移動体)
202 低圧バッテリ
203 高圧バッテリ
240 DCDCコンバータ(中継装置)
247 中央半導体ヒューズ(スイッチシステム)