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特許7439717車両システムにおける通信方法、および、車載ネットワークの通信管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】車両システムにおける通信方法、および、車載ネットワークの通信管理方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H04L12/28 200D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020165368
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057229
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】平島 侑人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 友裕
【審査官】和平 悠希
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118663(JP,A)
【文献】特開平09-298562(JP,A)
【文献】特開2010-057140(JP,A)
【文献】特開2004-343626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221050(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
H04L 41/00-101/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外との通信を要求するように構成された複数のアプリケーション(50、60、70、80)と、
当該通信を行う通信部(2)と、
前記複数のアプリケーションからの通信要求を管理するネットワークコーディネータ(20)と、を有する車両システムにおける通信方法であって、
前記アプリケーションは、前記ネットワークコーディネータに対して車外接続を要求すること、
前記車外接続の要求を受けると、前記ネットワークコーディネータは、車外接続を許可するか否かを判定すること、
前記ネットワークコーディネータが、車外接続の判定結果を前記アプリケーションに通知すること、
前記アプリケーションが前記ネットワークコーディネータにより車外接続を許可されると、前記通信部に対して車外接続を要求すること、
前記アプリケーションが、車外接続を完了したのち、ファイルのダウンロード又はアップロードが必要な場合、前記ネットワークコーディネータへデータ送受信開始の許可を要求すること、
前記ネットワークコーディネータが、前記データ送受信開始の要求を受けると、前記データ送受信開始を許可するか否かを判定すること、
前記ネットワークコーディネータが、データ送受信開始の判定結果を前記アプリケーションに通知すること、
前記アプリケーションは、前記ネットワークコーディネータからデータ送受信開始許可を受信すると、ファイルのダウンロード又はアップロードを開始すること、
前記アプリケーションは、ファイルのダウンロード又はアップロードが完了した場合、前記ネットワークコーディネータへデータ送受信終了を通知すること、を含む通信方法。
【請求項2】
車外及び車内との通信を要求するように構成された複数のアプリケーション(50、60、70、80)と、
前記アプリケーションからの指示を受ける電子制御装置(1、1A)と、
前記通信を行う通信部(2)と、
前記複数のアプリケーションからの通信要求を管理するネットワークコーディネータ(20)と、を有する車両システムにおける通信方法であって、
アプリケーションが、前記ネットワークコーディネータに対して車外接続を要求すること、
前記ネットワークコーディネータが、前記車外接続の要求を受けると、車外接続を許可するか否かを判定すること、
前記ネットワークコーディネータが、車外接続の判定結果を当該アプリケーションに通知すること、
前記アプリケーションが、前記ネットワークコーディネータから車外接続を許可されると、前記通信部に対して車外接続を要求すること、
前記アプリケーションが、車外接続を完了したのち、ファイルのダウンロード又はアップロードが必要な場合、前記ネットワークコーディネータへデータ送受信開始を要求すること、
前記ネットワークコーディネータが、前記データ送受信開始の要求を受けると、データ送受信開始を許可するか否かを判定すること、
前記ネットワークコーディネータが、データ送受信開始の判定結果を当該アプリケーションに通知すること、
前記アプリケーションは、前記ネットワークコーディネータからデータ送受信開始許可を受信すると、ファイルのダウンロード又はアップロードを開始すること、
前記アプリケーションは、ファイルのダウンロード又はアップロードが完了した場合、前記ネットワークコーディネータへデータ送受信終了を通知すること、
前記アプリケーションは、前記ネットワークコーディネータへ前記電子制御装置との車内接続を要求すること、
前記ネットワークコーディネータは、前記アプリケーションからの車内接続の要求を受けると、前記電子制御装置との車内接続を許可するか否かを判定すること、
前記ネットワークコーディネータは、前記電子制御装置との車内接続を許可するか否かの判定結果を当該アプリケーションに通知すること、
前記アプリケーションは、前記車内接続の許可を受信すると、前記電子制御装置と接続すること、
前記アプリケーションは、前記電子制御装置との接続後、前記電子制御装置との通信処理が完了した場合、前記ネットワークコーディネータへ車内接続終了を通知すること、を含む通信方法。
【請求項3】
前記ネットワークコーディネータは、前記車外接続の要求を受けた場合、前記車外接続を要求しているアプリケーションの優先度より低い優先度を有するアプリケーションに対し車外接続の中止を指示すること、をさらに含む請求項1または2に記載の通信方法。
【請求項4】
前記ネットワークコーディネータは、前記データ送受信開始要求を受けた場合、前記データ送受信開始要求を送信したアプリケーションの優先度より低い優先度を有するアプリケーションに対しデータ送受信の中止を指示すること、をさらに含む請求項1から3のいずれか一項に記載の通信方法。
【請求項5】
前記ネットワークコーディネータは、車内接続要求を受けた場合、前記車内接続要求を送信したアプリケーションの優先度より低い優先度を有するアプリケーションに対し車内接続の中止を指示すること、をさらに含む請求項1から4のいずれか一項に記載の通信方法。
【請求項6】
前記ネットワークコーディネータは、車外又は車内の通信帯域を監視すること、
前記通信帯域が制限される場合、アプリケーションへ通知すること、をさらに含む請求項1からのいずれか一項に記載の通信方法。
【請求項7】
車載ネットワーク(4)の通信管理方法であって、
車両(300)において車載ネットワークの通信資源の使用状況を監視すること、
前記車両に搭載されたアプリケーション(50、60、70、80)が車両内または車両外のノードとの通信を要求する場合、前記アプリケーションから接続要求を通知されること、
前記通信資源の使用状況に基づいて、前記アプリケーションによる接続要求を許可するか否かを判定すること、
判定結果を、前記アプリケーションに通知すること、
前記接続を許可されたアプリケーションにより通信資源が確保され前記ノードとの接続が確立されたことを監視すること、
前記ノードとの通信を終了したのち、前記アプリケーションにより通信資源は破棄され、前記アプリケーションから通信終了が通知されること、を含む通信管理方法。
【請求項8】
前記車両に搭載されたアプリケーションが第1アプリケーションと第2アプリケーションを含み、
前記接続を許可され車両内または車両外のノードとの接続を確立しているアプリケーションに対して、通信終了を指示すること、
車両に搭載されたアプリケーションの優先度を記憶すること、
前記第1アプリケーションが車両内または車両外のノードと接続をすでに確立している状況で、前記第2アプリケーションから接続要求を通知された場合、前記第2アプリケーションの優先度と前記第1アプリケーションの優先度を比較すること、をさらに含み、
前記1アプリケーションの優先度が第2アプリケーションの優先度より低い場合、前記第1アプリケーションに対して通信終了を指示する、請求項に記載の通信管理方法。
【請求項9】
前記ノードは、車両に搭載された電子制御装置(1、1A)である、請求項またはに記載の通信管理方法。
【請求項10】
前記ノードは、車両外に設置されたセンタ(3)である、請求項またはに記載の通信管理方法。
【請求項11】
前記車載ネットワークは、イーサネットに基づく通信であって、
前記通信資源の使用状況として、使用されている帯域を監視する、請求項から1のいずれか一項に記載の通信管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車載ネットワークにおける通信管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車外装置と車内装置との間の通信において、通信速度の低下を抑制する技術を提供する。特許文献1の構成によれば、第1の通信装置から受信した、第1の通信プロトコルに用いられる第1の通信フレームに含まれる所定の認証情報に基づいて、第1の通信装置と対象とする第2の通信装置とのデータ通信を許可するか否かを判断し、データ通信が許可された場合に対象とする第2の通信装置を接続先とする制御信号を出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-48848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載される電子制御装置(ECU)の数は増加傾向にある。また、車両制御の方式として、セントラルECUを配置し、セントラルECUに対して、複数の車載ECU、センサ、アクチュエータ、さらには、クラウドやセンタを接続することが想定される。車両内の通信、および、車両内外の通信を適切に監視することが必要になる。車載イーサネットでは、確実なデータ伝送、リアルタイム性、大容量データの通信が要求される場合がある。車両において、所定の帯域(例えば、1Gbps)を用いて、ECU間、ECU-センサ間、ECU-アクチュエータ間、ECU-車外通信端末間、などの通信を実現する必要があり、通信資源を有効利用する必要がある。さらに、優先度の高い通信を優先度の低い通信よりも優先して通信させる必要がある。
【0005】
本開示は、通信資源を有効利用し、通信を要求するアプリケーションが適切なタイミングで通信できる環境を提供する通信ネットワークの管理に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、車外との通信を要求するように構成された複数のアプリケーション(50、60、70、80)と、当該通信を行う通信部(2)と、複数のアプリケーションからの通信要求を管理するネットワークコーディネータ(20)と、を有する車両システムにおける通信方法は、アプリケーションは、ネットワークコーディネータに対して車外接続を要求すること、ネットワークコーディネータが、車外接続の要求を受けると、車外接続を許可するか否かを判定すること、ネットワークコーディネータが、車外接続の判定結果をアプリケーションに通知すること、アプリケーションがネットワークコーディネータにより車外接続を許可されると、通信部に対して車外接続を要求すること、アプリケーションが、車外接続を完了したのち、ファイルのダウンロード又はアップロードが必要な場合、ネットワークコーディネータへデータ送受信開始の許可を要求すること、ネットワークコーディネータが、データ送受信開始の要求を受けると、データ送受信開始を許可するか否かを判定すること、ネットワークコーディネータが、データ送受信開始の判定結果をアプリケーションに通知すること、アプリケーションは、ネットワークコーディネータからデータ送受信開始許可を受信すると、ファイルのダウンロード又はアップロードを開始すること、アプリケーションは、ファイルのダウンロード又はアップロードが完了した場合、ネットワークコーディネータへデータ送受信終了を通知すること、を含む。
【0007】
本開示の別の態様によれば、車外及び車内との通信を要求するように構成された複数のアプリケーション(50、60、70、80)と、アプリケーションからの指示を受ける電子制御装置(1、1A)と、通信を行う通信部(2)と、複数のアプリケーションからの通信要求を管理するネットワークコーディネータ(20)と、を有する車両システムにおける通信方法は、アプリケーションが、ネットワークコーディネータに対して車外接続を要求すること、ネットワークコーディネータが、車外接続の要求を受けると、車外接続を許可するか否かを判定すること、ネットワークコーディネータが、車外接続の判定結果を当該アプリケーションに通知すること、アプリケーションが、ネットワークコーディネータから車外接続を許可されると、通信部に対して車外接続を要求すること、アプリケーションが、車外接続を完了したのち、ファイルのダウンロード又はアップロードが必要な場合、ネットワークコーディネータへデータ送受信開始を要求すること、ネットワークコーディネータが、データ送受信開始の要求を受けると、データ送受信開始を許可するか否かを判定すること、ネットワークコーディネータが、データ送受信開始の判定結果を当該アプリケーションに通知すること、アプリケーションは、ネットワークコーディネータからデータ送受信開始許可を受信すると、ファイルのダウンロード又はアップロードを開始すること、アプリケーションは、ファイルのダウンロード又はアップロードが完了した場合、ネットワークコーディネータへデータ送受信終了を通知すること、アプリケーションは、ネットワークコーディネータへ電子制御装置との車内接続を要求すること、ネットワークコーディネータは、アプリケーションからの車内接続の要求を受けると、電子制御装置との車内接続を許可するか否かを判定すること、ネットワークコーディネータは、電子制御装置との車内接続を許可するか否かの判定結果を当該アプリケーションに通知すること、アプリケーションは、車内接続の許可を受信すると、電子制御装置と接続すること、アプリケーションは、電子制御装置との接続後、電子制御装置との通信処理が完了した場合、ネットワークコーディネータへ車内接続終了を通知すること、を含む。
【0008】
本開示の別の態様によれば、車載ネットワーク(4)の通信管理方法は、車両(300)において車載ネットワークの通信資源の使用状況を監視すること、車両に搭載されたアプリケーション(50、60、70、80)が車両内または車両外のノードとの通信を要求する場合、アプリケーションから接続要求を通知されること、通信資源の使用状況に基づいて、アプリケーションによる接続要求を許可するか否かを判定すること、判定結果を、アプリケーションに通知すること、接続を許可されたアプリケーションにより通信資源が確保され、ノードとの接続が確立されたことを監視すること、ノードとの通信を終了したのち、アプリケーションにより通信資源は破棄され、アプリケーションから通信終了が通知されること、を含む。
【0009】
以上、本開示の構成によれば、車載ネットワークにおける通信資源を有効利用し、通信を要求するアプリケーションが適切なタイミングで通信できる環境を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】通信システムの概略構成を示す図である。
図2】ネットワークコーディネータを含む論理アーキテクチャを例示する図である。
図3】ネットワークコーディネータの構成を例示する図である。
図4】ネットワークコーディネータによる通信ネットワーク制御処理を例示するフローチャートである。
図5】ネットワークコーディネータによる通信ネットワーク制御処理を例示するフローチャートである。
図6】通信開始処理を例示するフローチャートである。
図7】通信開始処理を例示するフローチャートである。
図8】SOTAにおけるシークエンスを例示する図であり、フロー開始からソフトウェア更新までのシークエンスを示す図である。
図9図8のシークエンスの続きを示す図である。
図10】リモートダイアグにおけるシークエンスを例示する図であり、フロー開始から通信開始の許可までのシークエンスを示す図である。
図11図9のシークエンスの続きを示す図である。
図12】ネットワークコーディネータとアプリケーション、その他の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
本開示の車載通信システム100の構成を説明する。なお、車載通信システム100は、単に通信システムとも記載される。車載通信システム100は、電子制御装置1、電子制御装置1A、センサ1B、通信部2、車載ネットワーク4を含む。電子制御装置1は、セントラルECU、統合ECUとも呼ばれる。車載ネットワーク4は例えば、イーサネットやイーサネットに基づく車載通信回線が相当する。なお、図示しないが、車載ネットワークには、アクチュエータなどが接続されてもよい。通信部2は、車両以外のノード(センタ、サーバ、クラウド、路側端末、携帯通信端末など)と通信する。なお、通信システム100は、車両300に搭載された、上記の構成に加えて、通信部2と通信するセンタ3を含んでもよい。センタ3は、サーバまたはクラウドとも呼ばれる。
【0012】
電子制御装置1は、プロセッサ10とメモリ11を含む。電子制御装置はECUとも呼ぶ。なお、図1では、1つの電子制御装置1が記載されるが、電子制御装置の数は複数であってもよい。同様に、通信部2、センタ3の数は、複数であってもよい。プロセッサは制御部に相当する。
【0013】
電子制御装置1は、プロセッサ10、メモリ11に加えて、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリ11に記憶された制御プログラムを実行することで各種の処理を実行する。なお、メモリ11は、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。
【0014】
メモリ11は、ネットワークコーディネータプログラムを記憶しており、ネットワークコーディネータプログラムを実行することで、ネットワークコーディネータ20の機能が実現する。実施形態では、ネットワークコーディネータ20をソフトウェアとして記載するが、ネットワークコーディネータ20の一部あるいは全部はハードウェアとして構成されてもよい。さらには、電子制御装置1により実現される機能は、メモリに記憶されたプログラムを実行することで実現されてもよいし、機能の一部あるいは全部をハードウェアとして構成してもよい。
【0015】
図2は、ネットワークコーディネータを含む論理アーキテクチャ200を例示する。車両300において、OS(オペレーティングソフトウェア)90上で、ネットワークコーディネータ20、コーディネータX 30、コーディネータY 40などのミドルウェアが動作する。なお、コーディネータは、ミドルウェア、管理装置、管理モジュール、マネージャなどと呼ばれる。第1アプリケーション50、第2アプリケーション60、第3アプリケーション70、第4アプリケーション80は、1つまたは複数のコーディネータの提供するサービスを利用して動作し、アプリケーション(アプリとも呼ぶ)ごとの機能を提供する。なお、OS90は仮想OSでもよい。また、アプリケーション、コーディネータ、OSは、同じ電子制御装置により実行されてもよいし、異なる電子制御装置により実行されてもよい。図2は、例示であり、OS、コーディネータ、アプリケーションの数は限定されない。
【0016】
図3を参照して、ネットワークコーディネータ20について説明する。
ネットワークコーディネータ20は通信資源の状態(帯域の使用状態、通信トラフィックの状態とも呼ぶ)を監視し、異常の検知、通信状態のログを記録する。
ネットワークコーディネータ20は、通信資源を利用するアプリケーションからの通信可否問い合わせに対して、通信資源の状態から通信可否を判断する。また、その結果をアプリケーションへ通知する。
【0017】
ネットワークコーディネータ20は異常時を除き、通信資源を操作しない。通信資源を利用するアプリケーションの意図しないタイミングで通信資源の変化が発生し、他のエラーを誘発することを防ぐため、ネットワークコーディネータ20は直接資源を操作しない。各アプリケーションが、通信資源の操作を行う。
ネットワークコーディネータ20は通信プロトコルを隠蔽しない。通信プロトコルに則り通信制御を行うのはアプリケーションが実施する。
ネットワークコーディネータ20は、接続許可部21、切断指示部22、通信許可部23、通信監視部24を含む。
【0018】
接続許可部21は、アプリケーションに対して接続を許可する。具体的には、アプリケーションから接続許可要求を受け付ける。接続許可部21は、アプリケーションの優先度、通信資源の状態などに基づいて接続可否、つまり、接続を許可するか拒否するかを判定する。接続許可部21は、接続許可待ちのアプリケーションに接続判定結果を通知する。
【0019】
切断指示部22は通信の切断(通信終了)を指示する。具体的には、切断指示部22は、通信資源へ接続しているアプリケーションに切断の指示を出す。アプリケーションは通信終了時にネットワークコーディネータに対して通信終了を通知する。切断指示部22は、アプリケーションが通信資源から切断したことを確認する。なお、切断指示部22は、通信資源に対して切断指示を出してもよい。なお、通信資源は、アプリケーションとアプリケーションの接続先を接続するポート、通信ミドルウェア、通信インターフェースが相当する。あるいは、通信資源は、ポート、通信ミドルウェア、通信インターフェースにより提供される通信環境(例えば、通信帯域)を示す。アプリケーションが通信中に他の高優先アプリの通信開始やデバイス異常などの要因により通信を停止しなければならない場合に、ネットワークコーディネータからアプリケーション対して通信終了を通知する。アプリケーションは通信停止の指示を受け取ると、通信資源を破棄し、通信終了の通知をネットワークコーディネータへ通知する。ネットワークコーディネータ20は通信終了を受け付け、通信状態を更新する。なお、接続先は、車両内のノード、および車両外のノードがありうる。アプリケーション、電子制御装置、センサ、アクチュエータなど、車両内にて通信するコンポーネントが車両内のノードに相当する。また、センタ、サーバ、クラウド、携帯通信端末など、車両の外にあって、あるいは、車両に固定されていない状態で、車載アプリケーションと通信するコンポーネントが車両外のノードに相当する。
【0020】
通信許可部23は、アプリケーションによる通信を許可する。具体的には、通信許可部23は、アプリケーションの通信開始の要求を受け付ける。アプリケーションは通信開始時に、ネットワークコーディネータに対して通信可否を確認する。通信許可部23は、アプリケーションの優先度、通信資源の状態などに基づいて、通信開始の可否を判定する。通信許可部23は、通信開始許可待ちのアプリケーションに通信開始判定結果を通知する。
【0021】
通信監視部24、通信を監視する。具体的には、通信監視部24は、アプリケーションの通信資源使用状況、通信状態を監視し、一定時間毎にトラフィック量を監視する。通信監視部24は、通信監視を行い、通信状態に変化があった場合に、アプリケーションに対して状態を通知する。通信監視部24、一定時間毎に他ノードとの接続を監視する。通信監視部24は、一定時間毎にPHYデバイス(PHYポート)のリンクアップを監視してもよい。通信監視部24は、イーサネットスイッチが送受信したフレームを監視してもよい。通信監視部24は、イーサネットスイッチのMIB情報を監視してもよい。通信監視部24は、イーサネットスイッチの電源状態を監視してもよい。
【0022】
なお、ネットワークコーディネータ20は、接続許可部21、切断指示部22、通信許可部23、通信監視部24に加えて、以下の機能の一部または全部を備えてもよい。
ネットワークコーディネータ20は、異常から復帰するように構成されてもよい。具体的には、ネットワークコーディネータ20は、ポートをリンクダウン/アップしてもよい。ネットワークコーディネータ20は、PHYデバイス(PHYポート)の電源をリセットしてもよい。ネットワークコーディネータ20は、PHYデバイス(PHYポート)のレジスタをリフレッシュしてもよい。ネットワークコーディネータ20は、イーサネットスイッチのレジスタをリフレッシュしてもよい。
【0023】
なお、ネットワークコーディネータ20は、通信のログをとるように構成されてもよい。具体的には、ネットワークコーディネータ20は、収集したログをストレージに記録してもよい。ネットワークコーディネータ20は、他ノードとの接続監視記録をログに残すことをしてもよい。ネットワークコーディネータ20は、リンクアップ/リンクダウンした時刻のログに残すことをしてもよい。ネットワークコーディネータ20は、アプリケーションがポート開閉を要求した時刻をログに残すことをしてもよい。ネットワークコーディネータ20は、アプリケーションがポートを開閉した時刻をログに残すことをしてもよい。
【0024】
なお、ネットワークコーディネータ20は、初期化を実施する際に、アプリケーションが通信可能な状態か確認してもよい。ネットワークコーディネータ20は、ルーティングを設定する際に、予め定義したルーティングルールに従ってイーサネットスイッチのレジスタを設定してもよい。ネットワークコーディネータ20は、アクセスコントロールを設定する際に、予め定義したアクセスコントロールリストに従ってイーサネットスイッチのレジスタを設定してもよく、予め定義したアクセスコントロールリストに従ってTCP/IPプロトコルスタックのポート開閉を設定してもよい。ネットワークコーディネータ20は、終了処理をする際に、通信アプリケーションに通信終了を指示してもよく、イーサネットスイッチ内に滞留しているメッセージを破棄してもよい。
図10は、ネットワークコーディネータ20、第1アプリケーション50、その他のコンポーネントの関係を例示する図である。
【0025】
ネットワークコーディネータ20は、インターフェース(IF)304を介して第1アプリケーション50と接続され、IF305を介してTCP/IPプロトコルスタック302と接続され、IF306を介してイーサネットスイッチドライバ303と接続される。また、第1アプリケーション50と通信ミドルウェア301はIF307を介して接続される。
【0026】
第1アプリケーション50は、IF304を使い、通信開始時の開始確認、通信終了時の終了通知、通信状態の確認を行う。また、第1アプリケーション50はIF304より通信開始許可を受信したのち、通信資源(帯域)を確保しIF307を使い通信を行う。
【0027】
ネットワークコーディネータ20は、IF305とIF306を使い、通信資源の状態を監視する。ネットワークコーディネータ20は、第1アプリケーション50とその接続先が接続し通信している間、通信状態を監視するが、アプリケーションとその接続先の間でデータを受け渡す機能は備えない。このように構成することで、高い優先度のアプリケーション(例えば、緊急通報アプリケーション)が確実に通信できるようにしている。また、ネットワークコーディネータ20が必要とする計算資源を節約している。
【0028】
(処理)
図4は、ネットワークコーディネータによる通信ネットワーク制御処理を例示するフローチャートである。図4から図7を参照して、ネットワークコーディネータ20による通信ネットワーク制御処理を説明する。なお、通信ネットワーク制御処理は、例えば、電子制御装置1により実行される。また、通信ネットワーク制御処理は、ネットワークコーディネータプログラムが実行中、繰り返し実施される。通信ネットワーク制御処理は、アプリケーションがノードと接続し通信を要求するごとに開始する。アプリケーションAが、センタと接続し通信するために、第1の通信ネットワーク制御処理を開始したのち、アプリケーションAが別ノードとの接続、通信を要求する場合、第2の通信ネットワーク制御処理が開始する。
【0029】
S100では、接続許可部21がアプリケーションから接続許可の要求を受けたか否か判定する。接続要求を受けていないと判定している間は、S100を繰り返す。接続許可部21がいずれかのアプリケーションから接続要求を受けたと判定すると、S101に進む。あるいは、接続要求を受けていないと判定した場合は、このフローは終了してもよい。所定時間ごとに、通信ネットワーク制御処理は開始されてもよいし、アプリケーションから他ノード、センタなど接続先への接続要求を通知された場合にフローを開始してもよい。
【0030】
接続開始の処理を以下に例示する。
アプリケーションが他ノードとの通信が必要であると判定する。アプリケーションが接続開始時にネットワークコーディネータ20に対して通信可否を確認する。アプリケーションからネットワークコーディネータ20には、例えば、使用するポート番号、プロトコル(例えば、TCP/UDP)、通信開始を要求してきたアプリケーションを特定するアプリケーションIDの情報が送られる。なお、ポート番号は通信可否の判断やポートの監視に利用される。ネットワークコーディネータ20は、接続の可否を判断し、接続を要求したアプリケーションに対して、通信可否結果、通信不可時の要因の情報などが送られる。
【0031】
S101では、接続許可部21は、アプリケーションの優先度および通信資源の状態のうち少なくとも1つに基づいて、接続を許可するか否かを判定する。なお、接続許可部21は、利用可能な通信資源の量に基づいて、接続可否を決めてもよい。S101で肯定判定の場合、S102に進む。否定判定の場合、S105に進む。
【0032】
S105では、接続を拒否する旨をアプリケーションに通知する。なお、接続を拒否されたアプリケーションの動作はアプリケーションごとに定められる。例えば、接続を拒否されたアプリケーションは、所定時間経過後に改めて接続先への接続要求を通知してもよい。この場合、図4の通信ネットワーク制御処理は、S100から開始する。
【0033】
S102では、接続許可部21は、接続許可待ちのアプリケーションに接続判定結果を通知する。具体的には、接続を許可することを通知する。なお、接続を許可されたアプリケーションは、通信ポート(通信ミドルウェアに対応する)にアクセスし通信資源を確保する。その後、アプリケーションは接続先(例えば、センタ、他ノード)と接続を確立する。S106に進む。
【0034】
S106では、通信許可部23は、アプリケーションから通信開始の許可を要求されたか否かを判定する。通信開始の許可の要求を受けると、S103に進む。通信開始の許可の要求がない場合、S104に進む。なお、アプリケーションがいつ通信終了の通知をネットワークコーディネータ20に送信するかは不明であるので、S106で本処理は待機しており、通信開始要求を受信すればS103に進み、通信終了通知を受信すればS104に進むともいえる。あるいは、S106で否定判定ののち、通信終了通知を受信したか否かを判定してもよい。この場合、通信終了通知を受信すると(肯定判定)、S104に進む。一方、通信終了通知を受信していない場合は、S106に戻る構成でもよい。なお、通信開始の要求は、例えば、通信量が所定値を超える場合、通信量の変化率が所定値を超える場合、または、通信ネットワークへの負荷が増加する所定の条件を満たす場合に、アプリケーションから通知される。あるいは、接続確立後に、通信を開始する際には常に通信開始要求が通知されてもよい。
【0035】
S103では、図6あるいは図7の通信開始処理が実施される。はじめに図6を参照し通信開始処理を説明する。S103は通信許可部23により実施される。
S201では、アプリケーションの優先度および通信資源の状態(例えば、帯域の使用状態)のうち少なくとも1つに基づいて、アプリケーションの通信開始を許可するか否か判定される。肯定判定の場合、S202でアプリケーションに対して通信開始を許可する。否定判定の場合、S203でアプリケーションに対して通信開始を拒否することを通知する。なお、通信開始を拒否された場合のアプリケーションの動作はアプリケーションごとに設定される。例えば、あるアプリケーションは、所定時間経過後に、再度、通信開始の許可を要求してもよい。あるいは、あるアプリケーションは、接続先との接続を切断し、通信終了の通知をネットワークコーディネータ20に送信してもよい。
【0036】
アプリケーションは、接続先とデータの送信、受信、または、送受信を行う。接続先との通信を終了すると、ネットワークコーディネータに対して、通信終了の通知を出力する。
S104では、切断指示部22は、アプリケーションが通信資源を破棄し、接続先との接続を切断したことを確認する。あるいは、切断指示部22は、アプリケーションから通信終了の通知を受けたが、アプリケーションが通信資源との接続を維持している場合、アプリケーションに切断の指示を出してもよいし、切断指示部22が通信資源に切断指示を出してもよい。
【0037】
なお、通信終了時の処理を以下に例示する。
第1のケースは、アプリケーションから通信終了する場合である。
アプリケーションは、通信を終了すると、通信ミドルウェアに対して通信資源の破棄を通知する。その後、アプリケーションからネットワークコーディネータ20に、使用しているポート番号、プロトコル(TCP/UDP)、アプリケーションIDの情報が、通信終了通知として送られる。ネットワークコーディネータ20は、アプリケーションに対して、通知を受け付けた旨を通知する。
【0038】
第2のケースは、接続時に失敗し通信終了する場合である。
接続時に通信資源を確保できなかった場合(例えば、socketエラーの発生)、アプリケーションは必要に応じて通信資源確保のリトライを実施する。それでも通信資源を確保できない場合、アプリケーションは通信不可と判断し、ネットワークコーディネータ20に対して通信終了を通知する。
【0039】
(変形例)
次に、図5を参照し、通信ネットワーク制御処理の変形例を説明する。図5は、ネットワークコーディネータによる通信ネットワーク制御処理を例示するフローチャートである。
S100からS106は、上述の通信ネットワーク制御処理と同様であるので説明を省略し、主な相違点を説明する。
【0040】
S101では、上述の通り、アプリケーションによる接続先への接続を許可するか否かを判定する。但し、否定判定の場合、S110に進む。
S110では、接続許可の要求を通知したアプリケーション(第1アプリケーションとも呼ぶ)よりも優先度の低いアプリケーション(低優先アプリケーション)があるか否かを判定する。具体的には、接続許可の要求を通知したアプリケーションの優先度と、通信資源を確保したのちいずれかの接続先と通信を確立しているアプリケーション(第3アプリケーションと呼ぶ)の優先度を比較する。第1アプリケーションの優先度が、第3アプリケーションの優先度よりも高い場合、S111に進む。否定判定の場合は、S105に進む。S105は、上記と同様であり、説明を省略する。
【0041】
S111では、切断指示部22は第3アプリケーションまたは第3アプリケーションに対して接続環境を提供している通信資源に対して、通信の切断を指示する。通信切断指示をうけると、第3アプリケーションまたは通信資源は通信を終了し、第3アプリケーションは通信の終了をネットワークコーディネータ20に通知する。
S112では、第3アプリケーションが通信資源から切断したことを確認する。フローはS101に戻る。
【0042】
なお、アプリケーションの優先度は、例えば、メモリ11に予め保存されている。また、アプリケーションの優先度は、センタにより設定されてもよい。また、アプリケーションの優先度はアプリケーションにより相対的または絶対的な表現としてネットワークコーディネータ20に対して通知されてもよい。
【0043】
図7を参照し、通信開始処理の変形例を説明する。図7は、通信開始処理を例示するフローチャートである。
S201からS203は、図6を参照して説明した通信開始処理と同様であるので説明を省略し、主な相違点を説明する。
S201では、アプリケーションより通信開始の許可を要求される。通信開始を許可する場合は、S202に進む。通信開始を拒否する場合は、S210に進む。
【0044】
S210では、接続許可の要求を通知したアプリケーション(第1アプリケーションとも呼ぶ)よりも優先度の低いアプリケーション(第3アプリケーションと呼ぶ)があるか否かを判定する。アプリケーションの優先度の判定は、S110と同様である。第1アプリケーションより優先度の低い第3アプリケーションがある場合は、S211に進む。第1アプリケーションより優先度の低い第3アプリケーションがない場合は、S203に進む。
S211は、S111と同様である。S211の後は、S212に進む。
S212は、S112と同様である。第3アプリケーションが通信資源から切断したことを確認したのち、フローはS201に戻る。
【0045】
なお、ネットワークコーディネータ20は、接続先と接続済みのアプリケーションに対して通信停止を指示してもよい。例えば、アプリケーションが通信中に、他の高優先アプリの接続開始や通信開始、デバイス異常、その他の要因により通信を停止しなければならない場合に、ネットワークコーディネータ20からアプリケーションに対して通信終了を通知する。アプリケーションは通信停止通知を受け取ると、通信ミドルウェアに対して通信資源を破棄し、通信終了通知をネットワークコーディネータ20へ通知する。なお、通信終了通知は、例えば、通信を止めるポート番号、プロトコル(TCP/UDP)、アプリケーションID、通信停止要因に関する情報を含む。
【0046】
なお、アプリケーションが通信資源を確保しているため、通信資源に異常が発生した場合には、アプリケーションがネットワークコーディネータ20よりも先に異常を検知する場合がある。このような場合、アプリケーションは通信資源を破棄した後、通信終了通知をネットワークコーディネータ20に対して通知してもよい。
【0047】
なお、実施形態では、アプリケーションがネットワークコーディネータに対して、アプリケーションの接続先との接続要求を通知する構成を記載しているが、接続要求を送信するのはアプリケーションではなく、ネットワークコーディネータ以外の車載コーディネータが、車両内のノードまたはセンタと通信するため接続要求をネットワークコーディネータに通知してもよい。
【0048】
(具体例)
次に、本開示について、具体的なシーンにおけるネットワークコーディネータ20の動作を説明する。以下では、ソフトウェアアップデートにおける通信ネットワーク制御処理と、リモートダイアグにおける通信ネットワーク制御処理を説明する。
【0049】
(ソフトウェアアップデート)
図8および図9は、SOTAにおけるシークエンスを例示する図である。図8は、フロー開始からソフトウェア更新までのシークエンスを示す。図9は、図8のシークエンスの続きである。
なお、SOTAとは、Software Over The Airの略称で、車載ソフトを更新する際に、データを無線通信を経由して車載ECUに取り込み、リプロすることである。
【0050】
SOTAアプリは第1アプリケーション50に対応する。SOTAアプリは、更新ソフトをダウンロードするためのダウンロードモジュールと、システムへのインストールを行うためのインストールモジュールを含む。なお、SOTAインストーラは、他ノードへ更新データを転送できる。なお、ダウンロードモジュールをSOTAダウンローダとも呼ぶ。また、インストールモジュールをSOTAインストーラとも呼ぶ。センタはセンタ3に対応する。ポートは通信資源に対応する。低優先アプリは第3アプリケーション70に対応する。
【0051】
図8のシーケンスは、例えば、システムがOTA(Over The Air)でリプロするタイミングで開始する。
SOTAダウンローダはセンタとの接続許可をネットワークコーディネータに要求する。
ネットワークコーディネータは、接続を許可してもよいか否か判定する。許可してよいと判定すると、接続を許可する。あるいは、接続を拒否する。あるいは、SOTAダウンローダよりも優先度の低いアプリ(低優先アプリ)があるか否かを判定し、低優先アプリがあれば、接続を切断する指示を低優先アプリに通知する。低優先アプリは、接続を切断すると、ネットワークコーディネータに通信の終了を通知する。これにより通信資源は増加するので、ネットワークコーディネータは、SOTAダウンローダにセンタとの接続を許可する。
【0052】
SOTAダウンローダは、ポートに対して通信資源を確保し、センタとの接続を確立する。
SOTAダウンローダは、センタにソフトウェアバージョンを送信する。
センタは、SOTAダウンローダにOTAのトリガを送信する。
SOTAダウンローダは、センタから更新ソフトを受信するのに伴い通信量が増えることをネットワークコーディネータに通知する。換言すると、SOTAダウンローダは、センタとの通信開始をネットワークコーディネータに要求する。
【0053】
ネットワークコーディネータは通信開始を許可するか否かを判定する。通信開始を許可する場合は、通信開始許可を通知する。通信開始を許可しない場合は、通信開始の拒否を通知する。あるいは、低優先アプリがあるか否かを判定する。低優先アプリがあれば、低優先アプリに対して接続を切断する。低優先アプリは接続を切断すると、ネットワークコーディネータに通信の終了を通知する。これにより通信資源は増加するので、ネットワークコーディネータは、SOTAダウンローダにセンタとの通信開始を許可する。
SOTAダウンローダは、通信開始を許可されると、センタから更新データをダウンロードする。
SOTAダウンローダは、更新データのダウンロードが終了すると、通信が終了したことを通知する。
【0054】
SOTAインストーラはダウンロードした更新データを用いて、ソフトウェアをアップデートする。あるいは、他ノードへソフトウェアを配布する場合は、以下のように、SOTAインストーラがネットワークコーディネータに対して他ノードとの接続を要求する通信ネットワーク制御処理を開始する。
SOTAインストーラはネットワークコーディネータに他ノードのSOTAダウンローダとの接続を要求する。
【0055】
ネットワークコーディネータはSOTAインストーラと他ノードとの接続を許可するか否かを判定する。接続を許可する場合は、SOTAインストーラに接続許可を通知する。あるいは、接続を許可しない場合は、接続の拒否を通知する。あるいは、低優先アプリがあるか否かを判定する。低優先アプリがあれば、低優先アプリに対して接続を切断する。低優先アプリは接続を切断すると、ネットワークコーディネータに通信の終了を通知する。これにより通信資源は増加するので、ネットワークコーディネータは、SOTAインストーラに他ノードとの接続を許可する。
【0056】
接続を許可されると、SOTAインストーラは他ノードと接続する。
SOTAインストーラは他ノードのSOTAダウンローダに更新データを送信する。
SOTAインストーラはネットワークコーディネータに通信が終了したことを報告する。
以上で、SOTAアプリによる通信処理は終了する。
【0057】
(リモートダイアグ)
図10および図11は、リモートダイアグにおけるシークエンスを例示する図である。図10は、フロー開始から通信開始の許可までのシークエンスを示す。図11は、図10のシークエンスの続きである。
【0058】
リモートダイアグは、システムがリモートで自己診断する際に実施される。リモートダイアグアプリが、センタとの接続をネットワークコーディネータに要求することで処理が開始する。例えば、リモートダイアグアプリがセントラルECUで実行され、他ノードとしてエンジンECUなど、ダイアグ機能を備えた各種ECUが相当する。
【0059】
ネットワークコーディネータは、リモートダイアグアプリとセンタとの接続を許可するか否かを判定する。接続を許可する場合、ネットワークコーディネータは接続許可を通知する。あるいは、接続を許可しない場合、ネットワークコーディネータは接続の拒否を通知する。あるいは、リモートダイアグアプリよりも優先度の低いアプリ(低優先アプリ)があるか否かを判定する。低優先アプリがあれば、低優先アプリに対して接続を切断する。低優先アプリは接続を切断すると、ネットワークコーディネータに通信の終了を通知する。これにより通信資源は増加するので、ネットワークコーディネータは、リモートダイアグアプリにセンタと接続許可を通知する。
【0060】
接続を許可されると、リモートダイアグダイアグアプリは通信資源を確保してセンタと接続する。
センタはリモートダイアグアプリにダイアグ設定データを送信する。センタはリモートダイアグアプリにダイアグ開始のトリガを送信する。
リモートダイアグアプリは他ノードのダイアグアプリとの接続をネットワークコーディネータに要求する。
【0061】
ネットワークコーディネータは、他ノードとの接続を許可するか否かを判定する。他ノードとの接続を許可する場合は、リモートダイアグアプリに接続と許可する。あるいは、他ノードとの接続を許可しない場合は、リモートダイアグアプリに接続拒否を通知する。あるいは、リモートダイアグアプリよりも優先度の低いアプリ(低優先アプリ)があるか否かを判定する。低優先アプリがあれば、低優先アプリに対して接続を切断する。低優先アプリは接続を切断すると、ネットワークコーディネータに通信の終了を通知する。これにより通信資源は増加するので、ネットワークコーディネータは、リモートダイアグアプリに他ノードとの接続を許可する。
【0062】
他ノードとの接続を許可されると、通信資源を確保し、リモートダイアグアプリはダイアグアプリ(他ノード)と接続する。
リモートダイアグアプリはダイアグアプリにダイアグコマンドを送信する。
ダイアグアプリはリモートダイアグアプリにコマンドの応答を送信する。
【0063】
ダイアグコマンドの応答を受信し終わると、リモートダイアグアプリは他ノードのダイアグアプリとの接続を切断する。リモートダイアグアプリは他ノードと切断したことをネットワークコーディネータに通知する。
リモートダイアグアプリはセンタにダイアグコマンドの応答をするため、通信量が増えることをネットワークコーディネータに通知する。
【0064】
ネットワークコーディネータは通信開始を許可するか否かを判定する。通信開始を許可する場合は、リモートダイアグアプリに対して通信開始を許可する。あるいは、通信開始を許可しない場合は、通信開始を拒否する。あるいは、低優先アプリがあるか否かを判定する。低優先アプリがあれば、低優先アプリに対して接続を切断する。低優先アプリは接続を切断すると、ネットワークコーディネータに通信の終了を通知する。これにより通信資源は増加するので、ネットワークコーディネータは、リモートダイアグアプリにセンタとの通信開始を許可する。
【0065】
リモートダイアグアプリは、通信開始を許可されると、センタにダイアグコマンドの応答を送信する。
リモートダイアグアプリはセンタとの通信が終了したことをネットワークコーディネータに通知する。
以上で、リモートダイアグアプリによる通信処理は終了する。
【0066】
つまり、本開示によれば、以下の通信方法および通信管理方法が提供される。なお、本開示は、さらに、ネットワークコーディネータ、ネットワークコーディネータプログラム、ネットワークコーディネータプログラムを記憶する記憶媒体、車載通信システム、車載通信管理システム、など多様な態様で実現できる。ネットワークコーディネータは通信管理装置に対応する。
【0067】
本開示の一態様によれば、車外との通信を要求するように構成された複数のアプリケーションと、当該通信を行う通信部と、前記複数のアプリケーションからの通信要求を管理するネットワークコーディネータと、を有する車両システムにおける通信方法が提供される。
【0068】
車両システムにおける通信方法は、アプリケーションは、前記ネットワークコーディネータに対して車外接続を要求すること、前記ネットワークコーディネータが、前記車外接続の要求を受けると、車外接続を許可するか否かを判定すること、前記ネットワークコーディネータが、車外接続の判定結果を前記アプリケーションに通知すること、前記アプリケーションが前記ネットワークコーディネータにより車外接続を許可されると、前記通信部に対して車外接続を要求すること、前記アプリケーションが、車外接続を完了したのち、ファイルのダウンロード又はアップロードが必要な場合、前記ネットワークコーディネータへデータ送受信開始の許可を要求すること、前記ネットワークコーディネータが、前記データ送受信開始の要求を受けると、前記データ送受信開始を許可するか否かを判定すること、前記ネットワークコーディネータが、データ送受信開始の判定結果を前記アプリケーションに通知すること、前記アプリケーションは、前記ネットワークコーディネータからデータ送受信開始許可を受信すると、ファイルのダウンロード又はアップロードを開始すること、記アプリケーションは、ファイルのダウンロード又はアップロードが完了した場合、前記ネットワークコーディネータへデータ送受信終了を通知すること、を含む。
【0069】
あるいは、本開示の一態様は、車外及び車内との通信を要求するように構成された複数のアプリケーションと、前記アプリケーションからの指示を受ける電子制御装置と、前記通信を行う通信部と、前記複数のアプリケーションからの通信要求を管理するネットワークコーディネータと、を有する車両システムにおける通信方法が提供される。
【0070】
車両システムにおける通信方法は、アプリケーションが、前記ネットワークコーディネータに対して車外接続を要求すること、前記ネットワークコーディネータが、前記車外接続の要求を受けると、車外接続を許可するか否かを判定すること、前記ネットワークコーディネータが、車外接続の判定結果を当該アプリケーションに通知すること、前記アプリケーションが、前記ネットワークコーディネータから車外接続を許可されると、前記通信部に対して車外接続を要求すること、前記アプリケーションが、車外接続を完了したのち、ファイルのダウンロード又はアップロードが必要な場合、前記ネットワークコーディネータへデータ送受信開始を要求すること、前記ネットワークコーディネータが、前記データ送受信開始の要求を受けると、データ送受信開始を許可するか否かを判定すること、前記ネットワークコーディネータが、データ送受信開始の判定結果を当該アプリケーションに通知すること、前記アプリケーションは、前記ネットワークコーディネータからデータ送受信開始許可を受信すると、ファイルのダウンロード又はアップロードを開始すること、前記アプリケーションは、ファイルのダウンロード又はアップロードが完了した場合、前記ネットワークコーディネータへデータ送受信終了を通知すること、前記アプリケーションは、前記ネットワークコーディネータへ前記電子制御装置との車内接続を要求すること、前記ネットワークコーディネータは、前記アプリケーションからの車内接続の要求を受けると、前記電子制御装置との車内接続を許可するか否かを判定すること、前記ネットワークコーディネータは、前記電子制御装置との車内接続を許可するか否かの判定結果を当該アプリケーションに通知すること、前記アプリケーションは、前記車内接続の許可を受信すると、前記電子制御装置と接続すること、前記アプリケーションは、前記電子制御装置との接続後、前記電子制御装置との通信処理が完了した場合、前記ネットワークコーディネータへ車内接続終了を通知すること、を含む。
【0071】
さらに、通信方法は、前記ネットワークコーディネータは、前記車外接続の要求を受けた場合、前記車外接続を要求しているアプリケーションの優先度より低い優先度を有するアプリケーションに対し車外接続の中止を指示すること、を含んでもよい。
【0072】
さらに、通信方法は、前記ネットワークコーディネータは、前記データ送受信開始要求を受けた場合、前記データ送受信開始要求を送信したアプリケーションの優先度より低い優先度を有するアプリケーションに対しデータ送受信の中止を指示すること、をさらに含んでもよい。
【0073】
さらに、通信方法は、前記ネットワークコーディネータは、車内接続要求を受けた場合、前記車内接続要求を送信したアプリケーションの優先度より低い優先度を有するアプリケーションに対し車内接続の中止を指示すること、をさらに含んでもよい。
【0074】
さらに、通信方法は、前記アプリケーションは、前記通信部に対して車外接続切断を要求した後、前記ネットワークコーディネータに対して車外接続終了を通知することを含んでもよい。
【0075】
さらに、通信方法は、前記ネットワークコーディネータは、車外又は車内の通信帯域を監視すること、前記通信帯域が制限される場合、アプリケーションへ通知すること、をさらに含んでもよい。
【0076】
本開示の一態様によれば、車載ネットワークの通信管理方法が提供される。車載ネットワークの通信管理方法は、車両において車載ネットワークの通信資源の使用状況を監視すること、前記車両に搭載されたアプリケーションが車両内または車両外のノードとの通信を要求する場合、前記アプリケーションから接続要求を通知されること、前記通信資源の使用状況に基づいて、前記アプリケーションによる接続要求を許可するか否かを判定すること、判定結果を、前記アプリケーションに通知すること、前記接続を許可されたアプリケーションにより通信資源が確保され、前記ノードとの接続が確立されたことを監視すること、前記ノードとの通信を終了したのち、前記アプリケーションにより通信資源は破棄され、前記アプリケーションから通信終了が通知されること、を含む。
【0077】
なお、通信管理方法は、前記接続を許可され車両内または車両外のノードとの接続を確立しているアプリケーションに対して、通信終了を指示すること、車両に搭載されたアプリケーションの優先度を記憶すること、前記車両に搭載されたアプリケーションのうち第2アプリケーションが接続要求を通知するより前に第1アプリケーションが車両内または車両外のノードと接続を確立している状況で、前記第2アプリケーションから接続要求を通知された場合、前記第2アプリケーションの優先度と前記第1アプリケーションの優先度を比較すること、をさらに含んでもよく、前記1アプリケーションの優先度が第2アプリケーションの優先度より低い場合、前記第1アプリケーションに対して通信終了を指示してもよい。
さらに、通信管理方法は、前記ノードは、車両に搭載された電子制御装置であってもよい。
さらに、通信管理方法は、前記ノードは、車両外に設置されたセンタであってもよい。
【0078】
さらに、通信管理方法は、前記車載ネットワークは、イーサネットに基づく通信であって、前記通信資源の使用状況として、使用されている帯域を監視してもよい。
本開示の構成によれば、通信資源を有効利用し、通信を要求するアプリケーションが適切なタイミングで通信できる環境を提供できる。
【0079】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【0080】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0081】
1…電子制御装置、1A…電子制御装置、2…通信部、3…センタ、4…車載ネットワーク、20…ネットワークコーディネータ、50…第1アプリケーション、60…第2アプリケーション、70…第3アプリケーション、80…第4アプリケーション、300…車両。
図1
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図3
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図5
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