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  • 特許-ブレーキ操作ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ブレーキ操作ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/06 20060101AFI20240220BHJP
   B60T 13/16 20060101ALI20240220BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B60T17/06
B60T13/16
B60T13/74 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020165920
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057591
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】村山 隆
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】安部 恒平
(72)【発明者】
【氏名】木野村 優至
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭扶
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082871(JP,A)
【文献】特開2015-075177(JP,A)
【文献】特開2019-137202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-17/22
F04C 2/08-2/28
F04C 11/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作に応じたブレーキ液圧を発生可能なマスタシリンダと、
液体を吸入及び吐出するギヤポンプと、回転軸を介して前記ギヤポンプを回転駆動するモータと、前記回転軸を保持する保持体と、前記ギヤポンプから漏れた液体を貯留するように前記保持体の内部に設けられた貯留室と、前記貯留室から外部に通じるように前記保持体に設けられた通路とを有し、前記マスタシリンダとは独立してブレーキ液圧を発生可能であり且つ前記マスタシリンダをブースト可能なギヤポンプ装置と、
前記マスタシリンダ及び前記ギヤポンプ装置を収容する共通のハウジングと、
液体を大気圧状態で貯留されたリザーバと前記ギヤポンプの吸入口とを接続する吸入路と、
前記ハウジングに設けられ前記リザーバと前記通路とを接続する接続路と、を備え、
前記吸入路及び前記接続路は、独立して設けられ、前記マスタシリンダを介さずに前記リザーバと接続されていることを特徴とするブレーキ操作ユニット。
【請求項2】
前記吸入路及び前記接続路は、前記リザーバのポートに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ操作ユニット。
【請求項3】
前記通路が上方を向くように、前記保持体が位置決めされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ操作ユニット。
【請求項4】
前記保持体の外周には、前記通路が開口する位置に環状室が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のブレーキ操作ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、ブレーキ操作ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用のブレーキ装置には、ブレーキ液を圧送するためのポンプ装置が設けられている。ポンプ装置としては、アウターロータの内歯とインナーロータの外歯との噛み合いによって形成される複数の空隙部の容積が変化することにより液体の吸入及び吐出を行うギヤポンプを備えたギヤポンプ装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているギヤポンプ装置には、ギヤポンプ側に高圧シールが設けられ、モータ側に低圧シールが設けられている。低圧シールと高圧シールとの間には、ギヤポンプからのブレーキ液の微小な漏れを貯めるため、又は外部から吸い込まれた空気を貯めるための空間が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-52988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されているギヤポンプ装置は、マスタシリンダのブースト用加圧源として用いられるものではない。具体的には、上記のギヤポンプ装置は、マスタシリンダから離れた位置に設けられたハウジングに収容され、マスタシリンダからホイールシリンダへの液圧の制御をするABS(Anti-lock Brake System)やESC(Electronic Stability Control(車両安定化制御))用のユニットに組み込まれるポンプ装置である。
【0006】
自動車の自動運転では、ブレーキ操作が自動で行われるため、この自動ブレーキ操作に伴うブレーキ液の加圧などにポンプ装置を用いた場合、このポンプ装置の作動回数は、上述のABSやESC用のユニットのポンプ装置と比較して飛躍的に増える。このため、上記の空間(低圧シールと高圧シールとの間に設けられた、ギヤポンプからのブレーキ液の微小な漏れを貯めるため、又は外部から吸い込まれた空気を貯めるための空間)に蓄えられるブレーキ液又は空気の量が増加する可能性が非常に高くなる。上記の空間は密閉されているので、低圧シールから漏れ出たブレーキ液や外部から吸い込まれた空気の量が多くなると、空間内が徐々に高圧になっていく。その結果、ブレーキ液の漏れや、ブレーキの効きの低下を招くという懸念が生じやすい。
【0007】
本件の一態様は、簡素な構成にてブレーキ性能の向上を図ることができるブレーキ操作ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本件の一態様に係るブレーキ操作ユニットは、ブレーキ操作に応じたブレーキ液圧を発生可能なマスタシリンダと、液体を吸入及び吐出するギヤポンプと、回転軸を介して前記ギヤポンプを回転駆動するモータと、前記回転軸を保持する保持体と、前記ギヤポンプから漏れた液体を貯留するように前記保持体の内部に設けられた貯留室と、前記貯留室から外部に通じるように前記保持体に設けられた通路とを有し、前記マスタシリンダとは独立してブレーキ液圧を発生可能であり且つ前記マスタシリンダをブースト可能なギヤポンプ装置と、前記マスタシリンダ及び前記ギヤポンプ装置を収容する共通のハウジングと、液体を大気圧状態で貯留されたリザーバと前記ギヤポンプの吸入口とを接続する吸入路と、前記ハウジングに設けられ、前記リザーバと前記通路とを接続する接続路と、を備え、前記吸入路及び前記接続路は、独立して設けられ、前記マスタシリンダを介さずに前記リザーバと接続されていることを特徴とするブレーキ操作ユニットである。
【0009】
上記の構成によれば、作動回数が多くなりがちな、上述のようにマスタシリンダと独立してブレーキ液圧を発生可能であり且つマスタシリンダをブースト可能なギヤポンプ装置において、その貯留室に蓄えられた液体を、十分な貯留容積を有するリザーバに戻すことができる。又、ギヤポンプ装置とリザーバとの間を接続する吸入路及び接続路を共通のハウジング内で短く形成することができる。このため、例えばブレーキ操作ユニットと離間した異なるハウジングにポンプ装置が収容される態様とは異なり、長い吸入路及び接続路などの配管を車両内部に配策及び固定するための部品を不要にすることができる。更に、吸入路と接続路とを独立して設けている。これにより、例えば、共通のハウジングにありがちなリザーバへの経路の共通化(例えば吸入路用の孔と接続路用の孔との部分共通化)を図った態様とは異なり、ギヤポンプ装置の吸入時に生じる負圧が貯留室(ひいては、当該貯留室をシールする部材)に伝播することを防止できる。したがって、シール部材の耐久性向上、又、信頼性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本件の一態様によれば、ブレーキ操作ユニットにおいて簡素な構成にてブレーキ性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本件の一実施形態に係るブレーキ操作ユニットの外観構成を示す斜視図である。
図2】上記ブレーキ操作ユニットの内部構成を示す部分断面図である。
図3】上記ブレーキ操作ユニットにおけるギヤポンプ装置の側面図である。
図4】上記ブレーキ操作ユニットを含む自動車用のブレーキシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件の一実施形態について、図1図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0013】
図1は、本実施形態に係るブレーキ操作ユニット100の外観構成を示す斜視図である。図2は、ブレーキ操作ユニット100の内部構成を示す部分断面図である。図3は、ブレーキ操作ユニット100におけるギヤポンプ装置2の側面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、ブレーキ操作ユニット100は、ハウジング1と、ギヤポンプ装置2と、マスタシリンダ3と、吸入管4と、接続管5と、補給管6と、モータ7とを備えている。
【0015】
ハウジング1は、ギヤポンプ装置2、マスタシリンダ3、吸入管4(吸入路)、接続管5(接続路)及び補給管6を収容する。ハウジング1は、アルミニウム合金などによって形成されている。特に、ハウジング1は、マスタシリンダ3及びギヤポンプ装置2を収容するために共通に設けられている。
【0016】
マスタシリンダ3は、円筒状に形成されており、ハウジング1を貫くようにハウジング1と一体に形成されている。図1に示すように、マスタシリンダ3は、その長手方向が、ブレーキ操作ユニット100が搭載される自動車などの車両の前進方向及び後進方向に向くように配置されている。マスタシリンダ3については後に詳しく説明する。
【0017】
ハウジング1における、ギヤポンプ装置2が配置された下部の一側面には、モータ7が固定されている。モータ7は、後述する回転軸24を介してギヤポンプ27を回転駆動する駆動源である。モータ7としては、例えば、3相ブラシレスモータが用いられる。
【0018】
又、ハウジング1の上端にはリザーバ8が固定されている。リザーバ8は、ブレーキ操作ユニット100が圧送する液体を大気圧状態で貯留するタンクである。
【0019】
ギヤポンプ装置2は、マスタシリンダ3と独立して所謂ブレーキ液圧を発生させることが可能な液圧源である。又、ギヤポンプ装置2は、マスタピストン(後述するセカンダリピストン32)にサーボ圧を付与して、マスタシリンダ3の発するブレーキ圧を増加可能(サーボ圧を減少させれば減圧も可能)な、即ち、マスタシリンダ3をブースト可能なポンプ装置である。ギヤポンプ装置2は、円筒状に形成されており、その中心軸がマスタシリンダ3の中心軸と直交するように配置されている。
【0020】
ギヤポンプ装置2は、シリンダトップ22(保持体)と、シリンダエンド23(保持体)と、回転軸24と、ベアリングトップ25と、ベアリングエンド26と、ギヤポンプ27と、位置決めピン28と、組付決めピン29とを有している。
【0021】
シリンダトップ22及びシリンダエンド23は、ハウジング1に形成されたポンプ収容孔21の内周面に嵌め込まれている。又、シリンダトップ22及びシリンダエンド23は、組付決めピン29によって組み付け位置が規定されている。
【0022】
シリンダトップ22及びシリンダエンド23は、モータ7の駆動軸に直結された回転軸24を、それぞれの中央部に設けられた穴で保持する。ベアリングトップ25は、シリンダトップ22に設けられた上記の穴に組み込まれており、回転軸24を回転可能に支持する。ベアリングエンド26は、シリンダエンド23に設けられた上記の穴に組み込まれており、回転軸24を回転可能に支持する。
【0023】
ギヤポンプ27は、ポンプ部27aと、サイドシール27bとを有している。ギヤポンプ27は、シリンダトップ22及びシリンダエンド23の間に配置されている。ポンプ部27aは、回転軸24にトルクピン200を介して固定されたインナーロータと、そのインナーロータに偏心して嵌められるアウターロータとを含んでいる。アウターロータは、ケーシングに回転可能に嵌め込まれている。
【0024】
又、ポンプ部27aは、回転軸24の軸方向の両側で、円板状のサイドシール27bに挟持されている。サイドシール27bは、液体の吸入時及び吐出時にポンプ部27aからの液体の漏れを防ぐために、ポンプ部27aに形成される吸入側と吐出側とのそれぞれの圧力室をシールし区分する。
【0025】
シリンダエンド23には、インナーロータ及びアウターロータの噛み合う箇所に開口する吸入口23aが設けられている。吸入口23aは、吸入管4を介してリザーバ8のポート81と接続されている。これにより、吸入口23aには、リザーバ8からの液体が吸入管4を介して供給される。
【0026】
図3に示すように、吸入口23aは、通路面積を大きくして液体の吸入時の圧力損失(抵抗値)を低減し、かつ、インナーロータとアウターロータとの噛み合い箇所に均等に臨むように、3つ設けられている。又、シリンダエンド23には、図示はしないが、吸入口23aの回転軸24に対する反対側の位置に吐出口が設けられている。
【0027】
ギヤポンプ27は、モータ7によるインナーロータの回転につれてアウターロータも回転し、インナーロータとアウターロータとの噛み合い量の変化によって、流体を吸入口23aから吸入するとともに吐出口へ吐出する。
【0028】
シリンダトップ22には、回転軸24の周りにおけるベアリングトップ25の近傍に、シール室22a(貯留室)が形成されている。シール室22aには、低圧シール201が嵌められている。低圧シール201は、液体のモータ7側への漏れを阻止する。又、シリンダトップ22には、回転軸24の周りにおけるギヤポンプ27の近傍に、高圧シール202が組み込まれている。高圧シール202は、ポンプ部27aからの液体の漏れを抑える。
【0029】
シリンダトップ22には、回転軸24の周りにおける低圧シール201が配置される空間とシール室22aとの間には、僅かな隙間が流路22bとして形成されている。又、シリンダトップ22には、上下に対向する位置に、2つの通路22cが形成されている。通路22cは、シール室22aから外部に通じている。
【0030】
位置決めピン28は、その先端がハウジング1のポンプ収容孔21内に設けられた穴21aに嵌まり込むことにより、シリンダトップ22及びシリンダエンド23が一定の位置に安定するように位置決めしている。位置決めピン28が規定する位置は、通路22cが上下方向に向く位置である。
【0031】
シリンダトップ22の外周面には、通路22cの開口を通る位置に環状の溝が形成されている。一方、ポンプ収容孔21の内周面には、シリンダトップ22の溝と対向する位置に環状の溝が形成されている。シリンダトップ22の溝とポンプ収容孔21の溝とによって、環状室203が形成されている。
【0032】
シール室22aは、通路22cを介して環状室203と連通している。又、環状室203は、接続管5を介してリザーバ8のポート81と接続されている。これにより、環状室203とリザーバ8との間で液体の流通が可能になる。
【0033】
シール室22aには、回転軸24の全周が確実に浸かるように液体が充填されている。回転軸24が液体に浸かれば、シール室22a内の液体により、回転軸24とシリンダトップ22との間のシールが確実に行われる。これにより、ギヤポンプ27への空気の流入が阻止される。
【0034】
ブレーキの作動回数が増すことにより、高圧シール202から漏れ出た液体は、低圧シール201を通過することなく、通路22c及び接続管5を通ってポート81からリザーバ8内に戻される。これにより、シール室22aの圧力は上昇しないので、低圧シール201からの液体の漏れを防止することができる。
【0035】
又、低圧シール201から吸い込まれた空気は、シール室22aの上部に移動して、シリンダトップ22の上部に設けられた通路22cを通って環状室203に達すると、接続管5を通ってリザーバ8に戻される。これにより、高圧シール202を介して空気が吸い込まれることはない。
【0036】
リザーバ8は、大気と通じるように微小な穴が設けられている。これにより、液体や空気がギヤポンプ装置2から戻されても、リザーバ8の内部の圧力が上がったままになるという不具合を回避することができる。
【0037】
続いて、上述したブレーキ操作ユニット100を含む自動車用のブレーキシステムについて説明する。図4は、当該ブレーキシステムの構成を示す図である。
【0038】
図4に示すブレーキシステムにおいて、リザーバ8は、大気圧状態で液体を貯留するタンクである。リザーバ8の下部は、仕切り板82によって、第1リザーバ室83と、第2リザーバ室84とに区画されている。リザーバ8内に液体が満たされた状態では、液体の液面は、仕切り板82の高さよりも上にある。このため、液体は、仕切り板82を超えて、第1リザーバ室83と第2リザーバ室84との間を自由に移動することができる。一方、リザーバ8内の液体の量が減少し、液体の液面が仕切り板82の高さよりも低くなると、第1リザーバ室83と第2リザーバ室84とは、独立して液体を貯留する。
【0039】
マスタシリンダ3は、プライマリピストン31と、セカンダリピストン32とを移動可能に収容している。又、マスタシリンダ3は、第1弾性体33と、第2弾性体34とを収容している。マスタシリンダ3は、底部を有するシリンダ部材である。マスタシリンダ3は、第1室3aと、第2室3bと、第3室3cとを有している。第1室3aには、プライマリピストン31の前端部と、セカンダリピストン32の後端部とが配置されている。
【0040】
プライマリピストン31の後端部は、マスタシリンダ3から露出しており、ブレーキペダル9による踏力が伝達される。プライマリピストン31は、前端部寄りの位置に設けられたフランジ31aによって、自動車の後進方向への移動が規制されている。プライマリピストン31は、圧縮バネから成る第1弾性体33によって後進方向に付勢されている。
【0041】
セカンダリピストン32は、第1室3aと第2室3bと第3室3cに配置されることにより、第1室3aと第2室3bとを区画するとともに、第2室3bと第3室3cとを区画する。セカンダリピストン32は、圧縮バネから成る第2弾性体34によって後進方向に付勢されている。
【0042】
又、セカンダリピストン32は、フランジ32aによって、第2室3bをさらにサーボ圧室3b1と、後方室3b2とに区画している。後方室3b2は、マスタ圧室としての第3室3cの後進方向側に隣接している。サーボ圧室3b1はフランジ32aに対して自動車の後進方向側に位置し、後方室3b2は前進方向側に位置している。
【0043】
第1室3a及び後方室3b2は、図示しない電磁弁を介してリザーバ8と接続されている。又、後方室3b2には、プライマリピストン31のストロークに応じたブレーキペダル9の反力を生成するための図示しない既知のストロークシミュレータが接続されている。そして、上述の電磁弁の開閉状態の制御によって第1室3aと後方室3b2とを連通させ且つこれら両室3a,3b2とリザーバ8との連通を遮断する。これにより、プライマリピストン31とセカンダリピストン32とが連動しないようにすることができるようになっている。
【0044】
このようにプライマリピストン31とセカンダリピストン32とを非連動とすることで、例えば、車輪に連動するジェネレータにより十分な回生制動力が得られる状況(車速やバッテリ充電状態などの状況)にあるときには、ブレーキペダル9が踏み込まれてプライマリピストン31が押し込まれても、セカンダリピストン32が第3室3cに押し込まれないようにすることができる。その結果、第3室3cの液体が前輪FL,FRのそれぞれのホイールシリンダ101,102に圧送されることによる所謂液圧制動力を発生させることなく回生制動力を最大限に活用することが可能となる。又、上述したギヤポンプ装置2からサーボ圧室3b1に圧送される液体の圧力を制御することで、セカンダリピストン32を駆動してブレーキペダル9の操作と独立した所謂自動制動制御を行うことや、所謂マスタシリンダのブースト(セカンダリピストン32に対する補助動力の付与)も可能となる。
【0045】
後輪RR,RLのそれぞれのホイールシリンダ103,104の液圧は、調圧ユニット10によって調整される。調圧ユニット10は、上述したギヤポンプ装置2及びモータ7を含んでいる。ギヤポンプ装置2は、リザーバ8の第2リザーバ室84から吸入される液体をホイールシリンダ103,104に向けて送出する。
【0046】
調圧ユニット10において、ギヤポンプ装置2の下流側には、逆止弁10aが設けられている。逆止弁10aは、リザーバ8の第2リザーバ室84からギヤポンプ装置2に流れる方向に液体の移動を可能にする一方、その逆方向への液体の移動を阻止する。
【0047】
ホイールシリンダ103,104に供給される液圧、及びサーボ圧室3b1に供給される液圧は、第1調圧弁10b及び第2調圧弁10cにより制御される。第1調圧弁10bによって調圧された液体は、ホイールシリンダ103,104に供給される。又、第1調圧弁10bを介してサーボ圧室3b1側に供給された液体は、第2調圧弁10cによってさらに圧力が調整されてサーボ圧室3b1に供給される。
【0048】
調圧ユニット10において、第2調圧弁10cの両端をバイパスするバイパス流路には、逆止弁10dが設けられている。逆止弁10dは、リザーバ8からサーボ圧室3b1への液体の流れを可能にする一方、サーボ圧室3b1からリザーバ8への液体の流れを阻止する。
【0049】
このように、ブレーキシステムにおいて、ブレーキ操作ユニット100のギヤポンプ装置2及びマスタシリンダ3は、ブレーキペダル9の操作に伴って、或いは、所謂自動制動制御に基づき、液体をホイールシリンダ101~104へ圧送する。なお、図4に示す150は、複数の電磁弁等を備えた、例えばABSやESCのための下流側液圧制御ユニットである。マスタシリンダ3及び調圧ユニット10即ちブレーキ操作ユニット100からのブレーキ液圧は、ハウジング1とは別体の下流側液圧制御ユニット150を介して各ホイールシリンダ101~104に供給される。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るブレーキ操作ユニット100において、ギヤポンプ装置2がマスタシリンダ3を加圧する加圧源となっているので、ギヤポンプ装置2がマスタシリンダ3を介さずにリザーバ8から直接液体を供給される。又、ブレーキ操作ユニット100において、ギヤポンプ装置2及びマスタシリンダ3がハウジング1に収容されている。又、ブレーキ操作ユニット100において、吸入管4及び接続管5は、独立して設けられ、マスタシリンダ3を介さずにリザーバ8のポート81と接続されている。
【0051】
上記の構成によれば、ギヤポンプ装置2とリザーバ8との間を接続する吸入管4及び接続管5を短く形成することができる。又、長い吸入管4及び接続管5を車両内部に固定するための部品を不要にすることができる。したがって、ブレーキ操作ユニット100の部品構成を簡素化することができる。
【0052】
又、接続管5を吸入管4に接続すれば、接続管5を短くすることができる。しかしながら、ギヤポンプ装置2の吸入時に生じる負圧がシール室22aを介して低圧シール201及び高圧シール202の間の領域に伝播して、低圧シール201及び高圧シール202によるシール性に影響を及ぼすという懸念がある。
【0053】
これに対し、ブレーキ操作ユニット100では、吸入管4及び接続管5は、独立して設けられている。これにより、ギヤポンプ装置2の吸入時に生じる負圧が低圧シール201及び高圧シール202の間の領域に伝播することを防止できる。したがって、上記のような懸念を回避することができる。
【0054】
又、吸入管4及び接続管5は、リザーバ8のポート81に接続されている。
【0055】
これにより、吸入管4及び接続管5は、それぞれに流れる流体の影響を受けることがなくなる。
【0056】
又、2つの通路22cの少なくとも1つが上方を向くように、シリンダエンド23が位置決めピン28によって位置決めされている。
【0057】
これにより、シール室22aに溜まった空気を上方に向いた通路22cによって抜けやすくすることができる。
【0058】
又、シリンダトップ22の外周には、通路22cが開口する位置に空気が通る環状室203が設けられている。
【0059】
狭い通路22cから出てきた空気を接続管5に流すと、通路22cと接続管5との太さ相違により、空気がスムーズに流れにくくなる。これに対し、通路22cから出てきた空気を環状室203に一旦逃がすことにより、空気をスムーズに接続管5に導くことができる。したがって、通路22cから接続管5へ空気を滞りなく送出することができる。又、図2に示されるように接続管5の上方にリザーバ8のポート81があることにより、空気をリザーバ8に送出することができる。
【0060】
又、ギヤポンプ装置2は、アキュムレータを備えたハイドロブースタの補助加圧源であってもよい。具体的には、ギヤポンプ装置2は、リザーバ8とハイドロブースタとを接続する管路に設けられている。このような構成においては、ギヤポンプ装置2の吐出口がハイドロブースタに接続されるので、上記のように構成されるリザーバ8とギヤポンプ装置2との間の吸入管4及び接続管5との接続構造をそのまま用いることができる。
【0061】
一般に、ハイドロブースタには、ハイドロブースタに加える液圧を発生させる補助加圧源(ポンプ)が備えられている。ハイドロブースタは、アキュムレータに蓄えられた液圧(アキュムレータ圧)が所定圧力範囲となるように圧力センサによって圧力を検出し、アキュムレータ圧が低いと、補助加圧源を駆動することによって液体の吸入吐出動作を行わせる。これにより、ハイドロブースタは、ブレーキペダル9の操作力の加圧補助を行うことができる。
【0062】
本件は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。又、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本件の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 ハウジング
2 ギヤポンプ装置
3 マスタシリンダ
4 吸入管(吸入路)
5 接続管(接続路)
7 モータ
8 リザーバ
22 シリンダトップ(保持体)
23 シリンダエンド(保持体)
22a シール室(貯留室)
22c 通路
24 回転軸
27 ギヤポンプ
81 ポート
100 ブレーキ操作ユニット
203 環状室
図1
図2
図3
図4