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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シートキャノピ装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240220BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020184188
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074277
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末次 悠一
(72)【発明者】
【氏名】赤池 文敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健人
(72)【発明者】
【氏名】石川 智規
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531229(JP,A)
【文献】特表平05-507213(JP,A)
【文献】特開2020-018676(JP,A)
【文献】特開平11-009387(JP,A)
【文献】特開2008-029804(JP,A)
【文献】実公昭43-031603(JP,Y1)
【文献】独国実用新案第202010005774(DE,U1)
【文献】実公昭30-018215(JP,Y1)
【文献】特開2013-067370(JP,A)
【文献】登録実用新案第3159770(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0090405(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013017727(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0224128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/00-7/74
A47C 1/00-1/16
B64D 11/06
B62B 7/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに設けられて着座者の身体を覆うシートキャノピ装置であって、
着座者の身体をシート幅方向の両側から覆う一対の側方覆い部と、
当該一対の側方覆い部の間に架け渡されて着座者の身体を上方と前方とからそれぞれ覆う天板覆い部と、
該天板覆い部を前記一対の側方覆い部に対して当該一対の側方覆い部に沿う方向に摺動可能なように連結する摺動連結部と、を有し、
前記摺動連結部により、前記天板覆い部が、着座者の頭部を前方から覆う前方被覆モードと、着座者の頭部を前方から覆わない開放モードと、に開閉切り替え可能とされ
前記天板覆い部が、面状の布帛材と、該布帛材に沿ってシート幅方向に線状に延びて撓みにより該布帛材を凸状に湾曲させる形に支持する複数本のワイヤフレームと、を有し、
前記摺動連結部が、前記一対の側方覆い部にそれぞれ固定されて前記複数本のワイヤフレームの各側の端部を摺動ガイドした状態に当接させる一対の摺動レールを有し、
前記一対の摺動レールが、前記天板覆い部を閉じる方向に向けて互いのシート幅方向の離間幅が連続的に広がるレール形状とされ、該レール形状により前記複数本のワイヤフレームによる前記布帛材の凸状に湾曲する曲率が前記天板覆い部を閉じる方向に向けて小さくなり、かつ、開く方向に向けて大きくなるシートキャノピ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートキャノピ装置であって、
前記開放モードが、着座者の頭部を上方から覆う上方被覆モードと、着座者の頭部を上方からも覆わない完全開放モードと、を含み、
前記天板覆い部が、前記摺動連結部により、前記上方被覆モードと前記完全開放モードとにも開閉切り替え可能とされるシートキャノピ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシートキャノピ装置であって、
前記シートが、リクライニング動作が可能なシートバックを備え、
当該シートキャノピ装置が、前記シートバックに固定されて該シートバックの背面を覆うと共に該シートバックのシート幅方向の両側から前方へと張り出す曲面形状のアッパシェルを有し、
前記一対の側方覆い部が、前記アッパシェルから成るシートキャノピ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシートキャノピ装置であって、
当該シートキャノピ装置が、更に、前記シートのシートクッションのシート幅方向の両側から上方へと張り出して前記一対の側方覆い部とシート幅方向に面状にオーバラップすることで前記アッパシェルとの間で前記シートを包み込み状に覆う一対のロアシェルを有するシートキャノピ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシートキャノピ装置であって、
前記一対のロアシェルが、前記シートバックのリクライニング動作の可動範囲全域において前記一対の側方覆い部とシート幅方向に面状にオーバラップするシートキャノピ装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のシートキャノピ装置であって、
当該シートキャノピ装置が、更に、前記一対の側方覆い部及び/又は前記シートバックのシート幅方向の両側部にそれぞれシート幅方向に延びる軸まわりに回転可能なように連結されると共に、前記一対のロアシェルに形成されたシート前後方向に延びるガイド孔に対して当該各ガイド孔の延びる方向に摺動可能なように連結されることで、前記シートバックのリクライニング動作に追従して傾斜角度を変動させる一対のアームレストを有するシートキャノピ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
前記一対の摺動レールが、前記複数本のワイヤフレームの各側の端部を当接させる断面V字状に傾斜した傾斜溝であって、着座者の頭部上方で前記布帛材を凸状に湾曲させる特定のワイヤフレームの各側の端部をV字の内側の立ち上がり面との当接によって立ち上げた状態に支持する前記傾斜溝を有し、
前記一対の側方覆い部が、前記特定のワイヤフレームの各側の端部から立ち上がった先の箇所に外側から当接して前記特定のワイヤフレームを中央の膨らみが大きい絞り形状に変化させるシートキャノピ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
前記一対の摺動レールのうちの少なくとも一方が、着座者が上方から指を引っ掛けて掴むことができる凹面を備えたアシストグリップとされるシートキャノピ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
前記一対の摺動レールのうちの少なくとも一方が、所定の取付部品を着脱可能に取り付けるための引掛溝を備える取付部とされるシートキャノピ装置。
【請求項10】
請求項から請求項9のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
前記天板覆い部が、個別に開閉切り替えが可能な通気性のある網状の内戸と該内戸よりも通気性の低い外戸との内外2重構造から成るシートキャノピ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートキャノピ装置に関する。詳しくは、シートに設けられて着座者の身体を覆うシートキャノピ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートに着座する着座者の頭部を上方からドーム状に覆うことが可能な覆い部を備えたシートキャノピ装置が知られている(特許文献1)。上記シートキャノピ装置は、シートバックの上部に設けられ、覆い部を着座者の頭部に上方から覆い被せる位置と、シートバックの後方に格納する位置と、に切り替えられる構成とされる。覆い部が着座者の頭部に被せられることで、着座者の前方、上方及び側方の視界が遮られる。また、覆い部がシートバックの後方に格納されることで、着座者の上記各視界が開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-197090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、覆い部により着座者の身体を側方から覆いつつ前方からは覆わないような開度調整ができない。そこで、本発明は、着座者の身体を側方から覆いつつ前方から覆ったり開放したりする開度調整が可能なシートキャノピ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシートキャノピ装置は次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシートキャノピ装置は、シートに設けられて着座者の身体を覆うシートキャノピ装置である。このシートキャノピ装置は、着座者の身体をシート幅方向の両側から覆う一対の側方覆い部と、一対の側方覆い部の間に架け渡されて着座者の身体を上方と前方とからそれぞれ覆う天板覆い部と、天板覆い部を一対の側方覆い部に対して一対の側方覆い部に沿う方向に摺動可能なように連結する摺動連結部と、を有する。摺動連結部により、天板覆い部が、着座者の頭部を前方から覆う前方被覆モードと、着座者の頭部を前方から覆わない開放モードと、に開閉切り替え可能とされる。
【0007】
上記構成によれば、一対の側方覆い部により、着座者の身体が側方から覆われる。また、天板覆い部の開閉切り替えにより、着座者の身体が前方から覆われたり開放されたりするよう切り替えられる。それにより、着座者の身体を側方から覆いつつ前方から覆ったり開放したりする開度調整を行うことができる。
【0008】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。開放モードが、着座者の頭部を上方から覆う上方被覆モードと、着座者の頭部を上方からも覆わない完全開放モードと、を含む。天板覆い部が、摺動連結部により、上方被覆モードと完全開放モードとにも開閉切り替え可能とされる。
【0009】
上記構成によれば、着座者の身体を側方から覆いつつ、前方から覆ったり開放したりする開度調整に加え、上方から覆ったり開放したりする開度調整も更に行うことができる。
【0010】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。シートが、リクライニング動作が可能なシートバックを備える。シートキャノピ装置が、シートバックに固定されてシートバックの背面を覆うと共にシートバックのシート幅方向の両側から前方へと張り出す曲面形状のアッパシェルを有する。一対の側方覆い部が、アッパシェルから成る。
【0011】
上記構成によれば、一対の側方覆い部を、シートバックを後方から包み込むように覆うアッパシェルによって互いに一体感のある見栄えの良い合理的な構成とすることができる。
【0012】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。シートキャノピ装置が、更に、シートのシートクッションのシート幅方向の両側から上方へと張り出して一対の側方覆い部とシート幅方向に面状にオーバラップすることでアッパシェルとの間でシートを包み込み状に覆う一対のロアシェルを有する。
【0013】
上記構成によれば、一対のロアシェルにより、シートバックと一体でリクライニング動作するアッパシェルを大型化することなく、シートをアッパシェルとの間で広く包み込むように覆うことができる。
【0014】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。一対のロアシェルが、シートバックのリクライニング動作の可動範囲全域において一対の側方覆い部とシート幅方向に面状にオーバラップする。
【0015】
上記構成によれば、シートバックのリクライニング角度によらず、常に、シートをアッパシェルとロアシェルとによって広く包み込むように覆うことができる。
【0016】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。シートキャノピ装置が、更に、一対の側方覆い部及び/又はシートバックのシート幅方向の両側部にそれぞれシート幅方向に延びる軸まわりに回転可能なように連結されると共に、一対のロアシェルに形成されたシート前後方向に延びるガイド孔に対して各ガイド孔の延びる方向に摺動可能なように連結されることで、シートバックのリクライニング動作に追従して傾斜角度を変動させる一対のアームレストを有する。
【0017】
上記構成によれば、アッパシェル及び/又はシートバックとロアシェルの構成を利用して、シートバックのリクライニング動作に追従して傾斜角度を変動させる一対のアームレストを合理的に設けることができる。
【0018】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。天板覆い部が、面状の布帛材と、布帛材に沿ってシート幅方向に線状に延びて撓みにより布帛材を凸状に湾曲させる形に支持する複数本のワイヤフレームと、を有する。摺動連結部が、一対の側方覆い部にそれぞれ固定されて複数本のワイヤフレームの各側の端部を摺動ガイドした状態に当接させる一対の摺動レールを有する。一対の摺動レールが、天板覆い部を閉じる方向に向けて互いのシート幅方向の離間幅が連続的に広がるレール形状とされ、このレール形状により複数本のワイヤフレームによる布帛材の凸状に湾曲する曲率が天板覆い部を閉じる方向に向けて小さくなり、かつ、開く方向に向けて大きくなる。
【0019】
上記構成によれば、布帛材を、着座者の頭部上方では頭部に当たりにくいよう上方に大きく膨らむ湾曲形状とすることができる。また、布帛材及び各ワイヤフレームを、一対の摺動レールの離間幅に合わせてシート幅方向に伸縮させることなく、前方に横幅を大きく広げる一対の側方覆い部間の形状に沿わせた形に変形させることができる。
【0020】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。一対の摺動レールが、複数本のワイヤフレームの各側の端部を当接させる断面V字状に傾斜した傾斜溝であって、着座者の頭部上方で布帛材を凸状に湾曲させる特定のワイヤフレームの各側の端部をV字の内側の立ち上がり面との当接によって立ち上げた状態に支持する傾斜溝を有する。一対の側方覆い部が、特定のワイヤフレームの各側の端部から立ち上がった先の箇所に外側から当接して特定のワイヤフレームを中央の膨らみが大きい絞り形状に変化させる。
【0021】
上記構成によれば、一対の摺動レールと一対の側方覆い部とによる挟み込みにより、特定のワイヤフレームをより着座者の頭部に当たりにくい絞り形状に化させることができる。
【0022】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。一対の摺動レールのうちの少なくとも一方が、着座者が上方から指を引っ掛けて掴むことができる凹面を備えたアシストグリップとされる。
【0023】
上記構成によれば、一対の摺動レールのうちの少なくとも一方をアシストグリップとして合理的に機能させることができる。
【0024】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。一対の摺動レールのうちの少なくとも一方が、所定の取付部品を着脱可能に取り付けるための引掛溝を備える取付部とされる。ここで、「所定の取付部品」とは、引掛け具として使用可能な各種フックやLED照明等の照明器具、スマートフォン等の電子機器のホルダ、グリップ等の各種取付部品を指す。
【0025】
上記構成によれば、一対の摺動レールのうちの少なくとも一方を所定の取付部品の取付部として合理的に機能させることができる。
【0026】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。天板覆い部が、個別に開閉切り替えが可能な通気性のある網状の内戸と内戸よりも通気性の低い外戸との内外2重構造から成る。
【0027】
上記構成によれば、天板覆い部による覆いを、網状の内戸による通気性のある覆いと、内戸よりは通気性の低い外戸による覆いと、に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の実施形態に係るシートキャノピ装置の概略構成を表す斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3図1の正面図である。
図4図1の平面図である。
図5図2のV-V線断面図である。
図6図2のVI-VI線断面図である。
図7図2からシートバックを後方にリクライニングさせた状態を表す側面図である。
図8図2からシートバックをウォークイン姿勢に切り換えた状態を表す側面図である。
図9】天板覆い部を上方被覆モードに切り換えた状態を表す斜視図である。
図10図9の正面図である。
図11図9の平面図である。
図12】天板覆い部を完全開放モードに切り換えた状態を表す斜視図である。
図13図12の正面図である。
図14図12の平面図である。
図15】第2の実施形態に係るシートキャノピ装置の概略構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0030】
《第1の実施形態》
(シートキャノピ装置7の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートキャノピ装置7の構成について、図1図14を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、後述するシート1の左右方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に符号がない場合には、図1図14のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係るシートキャノピ装置7は、自動車のフロアF上に設置されるシート1に適用されている。上記シート1は、着座者の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れ部となるヘッドレスト4と、肘置きとなる左右一対のアームレスト5と、を備えるキャプテンシートとして構成されている。
【0032】
シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、不図示のリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に連結されている。それにより、シートバック2は、上記リクライナの中心であるリクライニングヒンジセンタ6のまわりに背凭れ角度を前後に変化させるリクライニング調節が可能な構成とされている。ヘッドレスト4は、シートバック2の上部に装着されている。シートクッション3は、車両のフロアF上に不図示のスライドレールを介して前後方向の位置調節を行える状態に連結されている。
【0033】
シートキャノピ装置7は、シートバック2に固定されてシートバック2の左右両サイドから前方に張り出す左右一対の側方覆い部11を備えたアッパシェル10を有する。また、シートキャノピ装置7は、上記アッパシェル10の左右の側方覆い部11間に架け渡されて着座者の身体を上方及び前方から覆うことが可能な天板覆い部20を有する。上記アッパシェル10及び天板覆い部20は、それぞれ、左右対称形状に形成されている。
【0034】
上記天板覆い部20は、アッパシェル10に対して、手動により前後に開閉操作を行える構成とされる。具体的には、天板覆い部20は、図1図4に示すように、そのアッパシェル10の後方覆い部12に固定された後縁を支点に前方に形状を広げるように閉じられる操作により、着座者の頭部を含む身体を上方と前方とからそれぞれ覆う前方被覆モードに切り換えられる。
【0035】
また、天板覆い部20は、図9図11に示すように、前方に途中まで閉じる操作により、着座者の頭部を含む身体を上方から覆う一方、前方からは覆わない上方被覆モードに切り換えられる。また、天板覆い部20は、図12図14に示すように、後方に完全に開く操作により、蛇腹状に折り畳まれて、着座者の頭部を含む身体を前方からも上方からも覆わない完全開放モードに切り換えられる。
【0036】
図1図4に示すように、上記シートキャノピ装置7は、更に、シートクッション3に固定されてシートクッション3の左右両サイドから上方へと張り出す左右一対のロアシェル30を有する。左右一対のロアシェル30は、互いに左右対称形状に形成されている。また、シートキャノピ装置7は、上記天板覆い部20の内周面に沿って後方から前方に向けた風を吹き出す左右一対の送風機40を有する。
【0037】
(シートキャノピ装置7の各部の構成について)
以下、シートキャノピ装置7の各部の具体的な構成について詳しく説明する。図1図4に示すように、アッパシェル10は、シートバック2の背面に取り付けられてシートバック2、ヘッドレスト4、及びこれらの周囲を後方から広く覆う面状の後方覆い部12を有する。また、アッパシェル10は、後方覆い部12の左右両側の縁部から前方へと張り出してシートバック2、ヘッドレスト4、着座者の頭部を含む身体、及びこれらの周囲を側方から広く覆う左右一対の面状の側方覆い部11を有する。
【0038】
上記後方覆い部12は、その上部と左右両側部とが前方に湾曲する、前方に凹となる三次元曲面のパネル形状に形成されている。詳しくは、後方覆い部12は、その横幅が、上方に向けて山状に先細りとなるパネル形状に形成されている(図4参照)。
【0039】
また、各側方覆い部11は、それらの上部と後部とが後方覆い部12と滑らかに連続する曲面形状を成すようにシート幅方向の内方に湾曲する、内方に凹となる三次元曲面のパネル形状に形成されている。詳しくは、各側方覆い部11は、前方に向かって互いのシート幅方向の離間幅が滑らかに連続的に広がる曲面形状に形成されている。
【0040】
それにより、アッパシェル10は、各側方覆い部11によって着座者の身体を側方から覆いながらも、前方に向かって被覆空間を横に広げて、窮屈感の少ないパーソナルスペースを形成できる構成とされる。また、アッパシェル10は、図9図14に示すように、天板覆い部20を上方に開いた時には、着座者の前方視界を広く確保することができる構成とされる。
【0041】
上記アッパシェル10は、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の合成樹脂から成る1枚のパネル材により構成されている。上記のように、アッパシェル10は、着座者の頭部及び胴体部の周囲に、これらを後方及び両側方から広く丸みのある形で包み込むような快適なパーソナルスペースを確保できる仕切りを形成することが可能な構成とされる。
【0042】
図1図4に示すように、天板覆い部20は、前後方向に長尺な横幅が一定の布帛材から成るカーテン21と、カーテン21の骨組みを成す複数本のワイヤフレーム22と、を有する。各ワイヤフレーム22は、カーテン21の前後5か所の部位に、カーテン21に沿ってシート幅方向に延びる形に取り付けられている。ここで、カーテン21が、本発明の「布帛材」に相当する。
【0043】
各ワイヤフレーム22は、上記カーテン21の前後5か所の部位に対し、それぞれ、シート幅方向の全域に亘って一体的に取り付けられた状態とされる。そして、各ワイヤフレーム22は、それらのカーテン21からシート幅方向の両側に張り出す各側の端部が、それぞれ、アッパシェル10の各側方覆い部11の内側面に取り付けられた左右一対の摺動レール13に組み付けられている。
【0044】
上記組み付けにより、各ワイヤフレーム22は、各摺動レール13の間で弓なりに撓まされた状態に支持される。そしてそれにより、カーテン21が、各ワイヤフレーム22の撓んだ形に合わせて、各摺動レール13の間で凸状に湾曲した形に配設される。ここで、各摺動レール13が、本発明の「摺動連結部」に相当する。
【0045】
上記カーテン21は、その後側の縁部が、アッパシェル10の後方覆い部12の内周面上に固定されている。そして、上記カーテン21には、その前縁部と中間部4箇所との計5か所の部位に沿って各ワイヤフレーム22が取り付けられている。
【0046】
各ワイヤフレーム22は、それらの各側の端部が、各摺動レール13に対して、各摺動レール13の延びる方向に沿って摺動可能なように組み付けられている。各摺動レール13は、アッパシェル10の各側方覆い部11の上縁部に沿って弓なりに湾曲した形で前後方向に延びる形状とされている。
【0047】
詳しくは、各摺動レール13は、図9図14に示すように、各側方覆い部11の上縁部に沿って、前方に向かって互いのシート幅方向の離間幅が滑らかに連続的に広がるレール形状とされる。具体的には、各摺動レール13は、次のような一定断面を持つレール形状に形成されている。
【0048】
すなわち、各摺動レール13は、図5図6に示すように、上向きに開口する断面V字状に傾斜する傾斜溝13Aと、シート幅方向の内側に開口する断面矩形状の嵌合溝13Bと、を有するレール形状とされている。各傾斜溝13Aは、各ワイヤフレーム22の各側の端部を上方から当接させる当接面とされる。
【0049】
また、各傾斜溝13Aは、上向きに開口する凹面形状となっていることで、着座者が上方から指(不図示)を引っ掛けて各摺動レール13を掴むことができる構成とされる。それにより、各摺動レール13は、それらのどの部分にも着座者が上方から指を引っ掛けて各摺動レール13を掴むことができるアシストグリップが形成された構成とされる。
【0050】
また、各傾斜溝13Aは、上向きに開口する凹面形状となっていることで、着座者が上方から取付部品となるフックBを引掛けることができる構成とされる。そして、各嵌合溝13Bは、上記各傾斜溝13Aに引っ掛けたフックBに形成される凸部を嵌合させることで、フックBを各摺動レール13に固定する固定溝とされる。上記各嵌合溝13Bにより、各摺動レール13は、それらのどの部分にもフックBを引っ掛けて固定することができる構成とされる。
【0051】
ここで、各傾斜溝13Aが、本発明の「凹面」及び「引掛溝」に相当する。また、フックBが、本発明の「所定の取付部品」に相当する。なお、上記取付部品は、フックBの他、上記フックと同一の各摺動レール13に対する取付け構造を備えた別の部品であっても良い。具体的には、LED照明等の照明器具、スマートフォン等の電子機器のホルダ等の部品が挙げられる。
【0052】
上記各摺動レール13に対し、各ワイヤフレーム22は、次のように各側の端部を当接させた状態にセットされる。すなわち、各ワイヤフレーム22は、それぞれ、弓なりに撓まされて、各側の端部が各摺動レール13の傾斜溝13A内に入り込んだ状態に組み付けられる。この組み付けにより、各ワイヤフレーム22は、それらの弾発力により、常時、湾曲を戻そうとする方向に作用力を及ぼす状態とされる。
【0053】
しかし、各ワイヤフレーム22は、図5に示すように、着座者の頭部上方に位置するところでは、アッパシェル10の各側方覆い部11間のシート幅方向の離間幅が狭いことから、各側方覆い部11の内周面との当たりにより、両サイドから内側へと押し込まれて、弓なりに大きく湾曲した形に保持される。併せて、各ワイヤフレーム22は、それらの両側の端部が、シート幅方向の離間幅の狭い各摺動レール13の傾斜溝13Aとの当たりにより傾斜溝13Aの下端へと追い込まれて、傾斜面の内側の立ち上がり面との当接により上方に立ち上がる向きに保持される。
【0054】
上記作用により、各ワイヤフレーム22は、図1図4図9図14に示すように、着座者の頭部上方に位置するところでは、着座者の頭部に当たりにくい、上方に大きく膨らむ湾曲形状とされて保持される。それにより、各ワイヤフレーム22により支持されるカーテン21も、各ワイヤフレーム22の形状に沿って上方に大きく膨らむ湾曲形状とされて保持される。
【0055】
一方、各ワイヤフレーム22は、図1図4に示すように、着座者の頭部前方へ向けた摺動に伴い、アッパシェル10の各側方覆い部11間のシート幅方向の離間幅が広がっていくことから、各摺動レール13による支持スパンの広がりと共に弓なりの湾曲を緩めていき(曲率を小さくしていき)、各側方覆い部11による両サイドからの押し込みを受けない状態となる。それに伴い、各ワイヤフレーム22は、図6に示すように、それらの両側の端部が、弾発力の作用により各摺動レール13の傾斜溝13A上を外側へと摺動していき、各側方覆い部11の内周面と突き当たる外端に当接して係止される。
【0056】
上記作用により、各ワイヤフレーム22は、着座者の頭部前方に位置するところでは、各側方覆い部11間のシート幅方向の離間幅に合わせて、伸縮を伴うことなく横幅を広げた状態とされて保持される。それにより、各ワイヤフレーム22により支持されるカーテン21も、各ワイヤフレーム22の形状に沿って、伸縮を伴うことなく横幅を広げた形状とされて保持される。各ワイヤフレーム22は、各摺動レール13に対する任意のスライド位置で摩擦抵抗により係止される構成とされる。
【0057】
図1図4に示すように、左右一対のロアシェル30は、シートクッション3の左右両側部に取り付けられて、シート幅方向に面を向けて上方に張り出す構成とされる。各ロアシェル30は、図1図2に示すように、シートクッション3を前端から後端までの全域を側方から広く覆うパネル形状とされる。
【0058】
また、各ロアシェル30は、シートクッション3の着座面よりも上方に張り出して、着座者の腰部から大腿部にかけての身体領域を側方から広く覆うパネル形状とされる。詳しくは、各ロアシェル30は、アッパシェル10の各側方覆い部11とシート幅方向の内側から面状にオーバラップする位置まで上方に張り出す形状とされる。
【0059】
上記構成により、各ロアシェル30は、アッパシェル10との間で、シート1を包み込み状に覆うことができる構成とされる。各ロアシェル30は、シートバック2の背凭れ角度を前後に変化させるリクライニング動作の可動範囲全域において、アッパシェル10の各側方覆い部11とシート幅方向にオーバラップするように張り出す構成とされる。
【0060】
具体的には、図7に示すように、各ロアシェル30は、アッパシェル10がシートバック2の後傾と共に後上方に動かされても、各側方覆い部11とシート幅方向にオーバラップした状態を維持する。したがって、シート1をシートバック2を後傾させた安楽な姿勢に切り換えた場合でも、着座者の身体を側方から広く覆った状態を維持することができる。
【0061】
また、上記アッパシェル10は、各ロアシェル30とに分かれてシート1を側方から覆う構成とされることで、図8に示すように、シートバック2の前傾と共に前下方に動かされても、フロアFと当接しない構成とされる。したがって、上記アッパシェル10と各ロアシェル30とでシート1をリクライニング動作の可動範囲全域において側方から広く覆うことができる構成であっても、シートバック2を前傾させてシート1をウォークイン姿勢(後席への乗降開口を拡大できる姿勢)に切り換える動作を阻害しないようにすることができる。
【0062】
図1図4に示すように、左右一対のアームレスト5は、それぞれ、前後方向に長尺状に延びる板状の部材から成る。各アームレスト5は、それぞれ、後端部がアッパシェル10の各側方覆い部11の内側部にシート幅方向に延びる軸5Aにより回転可能なように連結されている。また、各アームレスト5は、それぞれ、前端部が各ロアシェル30の内側部に形成された前後方向に延びる長孔状のガイド孔31に対して、シート幅方向に延びる軸5Bにより回転可能かつ摺動可能なように連結されている。
【0063】
上記各ガイド孔31は、それぞれ、前側の領域が前下がり状に湾曲して延び、後側の領域が後下がり状に湾曲して延びる形状とされている。各アームレスト5は、上記アッパシェル10の各側方覆い部11及び各ロアシェル30のガイド孔31との連結により、シートバック2のリクライニング動作に伴って次のように追従動作する構成とされる。
【0064】
すなわち、各アームレスト5は、図2に示すように、シートバック2が通常の起立角度にある時には、略水平状の天板面を成す角度に保持される。また、各アームレスト5は、図7に示すように、シートバック2が上記通常の起立角度から後傾するのに伴い、それらの後端部がアッパシェル10と共に後下がり方向に動かされる一方、それらの前端部が各ガイド孔31の形状に沿って緩やかに下降しながら後方へと引き込まれる移動軌跡をとる。
【0065】
上記移動により、各アームレスト5は、シートバック2を安楽姿勢に後傾させた時には、シートバック2に追従して後下がり方向に移動する一方で、それらの傾き角度を水平よりも僅かに前上がりとする肘を楽に置きやすい姿勢に切り換えられる。具体的には、各アームレスト5は、シートバック2に直角な前上がりの角度よりも低い前上がり角度に切り換えられるようになっている。
【0066】
また、各アームレスト5は、図8に示すように、シートバック2が上記通常の起立角度から前傾するのに伴い、それらの後端部がアッパシェル10と共に前方に動かされる一方、それらの前端部が各ガイド孔31の形状に沿って前下がり方向に落とされる移動軌跡をとる。上記移動により、各アームレスト5は、シートバック2を前傾させる移動を阻害しないようになっている。
【0067】
なお、各アームレスト5は、それらの後端部が、アッパシェル10の各側方覆い部11にではなく、シートバック2のシート幅方向の両側部に回転可能なように連結される構成であっても良い。また、各アームレスト5は、それらの後端部が、アッパシェル10の各側方覆い部11とシートバック2のシート幅方向の両側部とに跨って回転可能なように連結される構成であっても良い。
【0068】
図1図4に示すように、各送風機40は、アッパシェル10の後方覆い部12に取り付けられている。詳しくは、各送風機40は、シートバック2の両肩口の上方となるヘッドレスト4の左右両サイドに位置するように配設される。
【0069】
各送風機40は、それぞれ、アッパシェル10の後方覆い部12を貫通して後方に吸込口を露出させた状態に設けられる。各吸込口には、不図示のHEPAフィルタ等のフィルタが内蔵されている。各フィルタにより、各吸込口から取り込まれる空気に含まれる最近やウィルスが吸着され、濾過されて清浄化された空気が各送風機40内へと取り込まれるようになっている。
【0070】
また、各送風機40には、図示は省略されているが、各吸込口から取り込んだ空気の温度や湿度を調節したり取り込んだ空気にアロマオイル等の香り成分を付加したりすることのできる空気調節部が設けられている。上記空気調節部は、着座者による不図示の電動スイッチの操作により設定される温度や湿度、それに付加したい香り成分の設定に合わせて取り込んだ空気の状態を調節できるようになっている。
【0071】
各送風機40は、各吸込口から取り込んだ空気を前方に開口する各吹出口から前斜め上方に吹き出す構成とされる。上記風の吹き出しにより、天板覆い部20が着座者の頭部を含む身体を覆った状態に閉じられている時には、天板覆い部20の内周面に沿って後方から前方へと風が流される。
【0072】
そして、吹き出された風は、天板覆い部20の内周面に沿って天板覆い部20の先から外部へと排出される。それにより、天板覆い部20による覆いのなくなった先の領域に、天板覆い部20を延長する形に沿って面状に風が吹き出されるエアカーテンが形成される。
【0073】
上記エアカーテンの吹き出しにより、天板覆い部20による覆いのない領域に、外部からの空気の侵入を阻止することが可能なエアシールドが形成される。また、天板覆い部20に沿ってシートキャノピ装置7内から外部へと風が吹き出されることにより、シートキャノピ装置7内を陽圧化することができる。したがって、そのことによっても、シートキャノピ装置7内に外部の空気が侵入することを適切に阻止することができる。
【0074】
また、上記のように天板覆い部20による覆いのない先の領域に前下方向に吹き出される風の流れが形成されることで、着座者が咳き込んだりして口や鼻からシートキャノピ装置7内にウィルスや飛沫が飛散しても、これらが車室内に拡散することなくシートキャノピ装置7内から足元へと排出されるようになる。したがって、シートキャノピ装置7により、室内空間を着座者毎に仕切るゾーン空調を適切に行うことができる。
【0075】
なお、各送風機40は、吸込口がシートキャノピ装置7内に露出して設けられており、シートキャノピ装置7内の空気を取り込んで天板覆い部20に後方から空気を吹き出す構成となっているものであっても良い。
【0076】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシートキャノピ装置7は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0077】
すなわち、シートキャノピ装置(7)は、シート(1)に設けられて着座者の身体を覆うシートキャノピ装置(7)である。このシートキャノピ装置(7)は、着座者の身体をシート幅方向の両側から覆う一対の側方覆い部(11)と、一対の側方覆い部(11)の間に架け渡されて着座者の身体を上方と前方とからそれぞれ覆う天板覆い部(20)と、天板覆い部(20)を一対の側方覆い部(11)に対して一対の側方覆い部(11)に沿う方向に摺動可能なように連結する摺動連結部(13)と、を有する。摺動連結部(13)により、天板覆い部(20)が、着座者の頭部を前方から覆う前方被覆モード(図1図4に示す状態)と、着座者の頭部を前方から覆わない開放モード(図9図14に示す状態)と、に開閉切り替え可能とされる。
【0078】
上記構成によれば、一対の側方覆い部(11)により、着座者の身体が側方から覆われる。また、天板覆い部(20)の開閉切り替えにより、着座者の身体が前方から覆われたり開放されたりするよう切り替えられる。それにより、着座者の身体を側方から覆いつつ前方から覆ったり開放したりする開度調整を行うことができる。
【0079】
また、開放モードが、着座者の頭部を上方から覆う上方被覆モード(図9図11に示す状態)と、着座者の頭部を上方からも覆わない完全開放モード(図12図14に示す状態)と、を含む。天板覆い部(20)が、摺動連結部(13)により、上方被覆モードと完全開放モードとにも開閉切り替え可能とされる。上記構成によれば、着座者の身体を側方から覆いつつ、前方から覆ったり開放したりする開度調整に加え、上方から覆ったり開放したりする開度調整も更に行うことができる。
【0080】
また、シート(1)が、リクライニング動作が可能なシートバック(2)を備える。シートキャノピ装置(7)が、シートバック(2)に固定されてシートバック(2)の背面を覆うと共にシートバック(2)のシート幅方向の両側から前方へと張り出す曲面形状のアッパシェル(10)を有する。一対の側方覆い部(11)が、アッパシェル(10)から成る。上記構成によれば、一対の側方覆い部(11)を、シートバック(2)を後方から包み込むように覆うアッパシェル(10)によって互いに一体感のある見栄えの良い合理的な構成とすることができる。
【0081】
また、シートキャノピ装置(7)が、更に、シート(1)のシートクッション(3)のシート幅方向の両側から上方へと張り出して一対の側方覆い部(11)とシート幅方向に面状にオーバラップすることでアッパシェル(10)との間でシート(1)を包み込み状に覆う一対のロアシェル(30)を有する。上記構成によれば、一対のロアシェル(30)により、シートバック(2)と一体でリクライニング動作するアッパシェル(10)を大型化することなく、シート(1)をアッパシェル(10)との間で広く包み込むように覆うことができる。
【0082】
また、一対のロアシェル(30)が、シートバック(2)のリクライニング動作の可動範囲全域において一対の側方覆い部(11)とシート幅方向に面状にオーバラップする。上記構成によれば、シートバック(2)のリクライニング角度によらず、常に、シート(1)をアッパシェル(10)とロアシェル(30)とによって広く包み込むように覆うことができる。
【0083】
また、シートキャノピ装置(7)が、更に、一対の側方覆い部(11)及び/又はシートバック(2)のシート幅方向の両側部にそれぞれシート幅方向に延びる軸(5A)まわりに回転可能なように連結されると共に、一対のロアシェル(30)に形成されたシート前後方向に延びるガイド孔(31)に対して各ガイド孔(31)の延びる方向に摺動可能なように連結されることで、シートバック(2)のリクライニング動作に追従して傾斜角度を変動させる一対のアームレスト(5)を有する。
【0084】
上記構成によれば、アッパシェル(10)及び/又はシートバック(2)とロアシェル(30)の構成を利用して、シートバック(2)のリクライニング動作に追従して傾斜角度を変動させる一対のアームレスト(5)を合理的に設けることができる。
【0085】
また、天板覆い部(20)が、面状の布帛材(21)と、布帛材(21)に沿ってシート幅方向に線状に延びて撓みにより布帛材(21)を凸状に湾曲させる形に支持する複数本のワイヤフレーム(22)と、を有する。摺動連結部(13)が、一対の側方覆い部(11)にそれぞれ固定されて複数本のワイヤフレーム(22)の各側の端部を摺動ガイドした状態に当接させる一対の摺動レール(13)を有する。
【0086】
一対の摺動レール(13)が、天板覆い部(20)を閉じる方向に向けて互いのシート幅方向の離間幅が連続的に広がるレール形状とされ、このレール形状により複数本のワイヤフレーム(22)による布帛材(21)の凸状に湾曲する曲率が天板覆い部(20)を閉じる方向に向けて小さくなり、かつ、開く方向に向けて大きくなる。
【0087】
上記構成によれば、布帛材(21)を、着座者の頭部上方では頭部に当たりにくいよう上方に大きく膨らむ湾曲形状とすることができる。また、布帛材(21)及び各ワイヤフレーム(22)を、一対の摺動レール(13)の離間幅に合わせてシート幅方向に伸縮させることなく、前方に横幅を大きく広げる一対の側方覆い部(11)間の形状に沿わせた形に変形させることができる。
【0088】
また、一対の摺動レール(13)が、複数本のワイヤフレーム(22)の各側の端部を当接させる断面V字状に傾斜した傾斜溝(13A)であって、着座者の頭部上方で布帛材(21)を凸状に湾曲させる特定のワイヤフレーム(22)の各側の端部をV字の内側の立ち上がり面との当接によって立ち上げた状態に支持する傾斜溝(13A)を有する。一対の側方覆い部(11)が、特定のワイヤフレーム(22)の各側の端部から立ち上がった先の箇所に外側から当接して特定のワイヤフレーム(22)を中央の膨らみが大きい絞り形状に変化させる。
【0089】
上記構成によれば、一対の摺動レール(13)と一対の側方覆い部(11)とによる挟み込みにより、特定のワイヤフレーム(22)をより着座者の頭部に当たりにくい絞り形状に変化させることができる。
【0090】
また、一対の摺動レール(13)のうちの少なくとも一方が、着座者が上方から指を引っ掛けて掴むことができる凹面(13A)を備えたアシストグリップとされる。上記構成によれば、一対の摺動レール(13)のうちの少なくとも一方をアシストグリップとして合理的に機能させることができる。
【0091】
また、一対の摺動レール(13)のうちの少なくとも一方が、所定の取付部品(B)を着脱可能に取り付けるための引掛溝(13A)を備える取付部とされる。上記構成によれば、一対の摺動レール(13)のうちの少なくとも一方を所定の取付部品(B)の取付部として合理的に機能させることができる。
【0092】
《第2の実施形態》
続いて、第2の実施形態に係るシートキャノピ装置の構成について、図15を用いて説明する。本実施形態に係るシートキャノピ装置は、天板覆い部が、第1の実施形態で示したカーテン21とは別に、内戸となる網戸23を備えた内外2重構造から成る構成とされる。ここで、カーテン21が本発明の「外戸」に相当し、網戸23が本発明の「内戸」に相当する。
【0093】
上記網戸23は、カーテン21と同様に、その前後5か所の部位に、骨組みを成すワイヤフレーム24がシート幅方向に延びる形に取り付けられた構成とされる。そして、上記網戸23は、カーテン21と同様に、各ワイヤフレーム24の各側の端部が、アッパシェルの各側方覆い部の内周面に別途取り付けられた左右一対の摺動レールにそれぞれ組み付けられて、カーテン21とは独立して手動による開け閉めを行える構成とされる。
【0094】
上記網戸23を支持する各摺動レールは、カーテン21を支持する各摺動レールの下方に並んで設けられている。上記網戸23を支持する各摺動レールは、カーテン21を支持する各摺動レールと同様に、網戸23を着座者の頭部上方では頭部に当たりにくいよう上方に大きく膨らませる湾曲形状となるように支持する。また、網戸23を支持する各摺動レールは、各ワイヤフレーム24を着座者の頭部前方に向けた摺動に伴い、各側方覆い部間のシート幅方向の離間幅に合わせて、伸縮を伴うことなく横幅を広げた状態に変形させる構成とされる。
【0095】
上記網戸23は、外戸であるカーテン21よりも通気性の高い網目状の面状部材から成る。したがって、カーテン21を完全開放モードに開いた状態で網戸23を閉じることで、着座者の頭部を含む身体を上方及び前方から通気性のある比較的開放的な形態で覆うことができる。上記以外の構成については、第1の実施形態で示したものと実質的に同一の構成となっているため、第1の実施形態で示した構成と同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0096】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシートキャノピ装置7は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0097】
すなわち、シートキャノピ装置(7)は、天板覆い部(20)が、個別に開閉切り替えが可能な通気性のある網状の内戸(23)と内戸(23)よりも通気性の低い外戸(21)との内外2重構造から成る。上記構成によれば、天板覆い部(20)による覆いを、網状の内戸(23)による通気性のある覆いと、内戸(23)よりは通気性の低い外戸(21)による覆いと、に切り替えることができる。
【0098】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を2つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0099】
1.本発明のシートキャノピ装置は、自動車のシートの他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機或いは船舶等の車両以外の乗物のシートにも適用することができるものである。また、シートキャノピ装置は、乗物の他、スポーツ施設や劇場、映画館、コンサート会場、イベント会場等の各種施設用のシートや、マッサージシート等の乗物用以外のシートにも適用することができるものである。
【0100】
2.一対の側方覆い部は、アッパシェルの構成要素としてではなく、各々が別々にシートバック或いはシートクッションに取り付けられて設けられるものであっても良い。
【0101】
3.摺動連結部は、天板覆い部を一対の側方覆い部に対して電動で自動送りできるように連結するものであっても良い。また、摺動連結部は、天板覆い部を一対の側方覆い部に対して、各側方覆い部に設けた摺動用の溝或いは孔に嵌合させることで摺動可能なように連結するものであっても良い。
【0102】
4.一対の摺動レールのうちの少なくとも一方に設けられる凹面(着座者が上方から指を引っ掛けて掴むための凹面)は、傾斜溝とは別に設けられるものであっても良い。引掛溝も同様に、傾斜溝とは別に設けられるものであっても良い。
【0103】
5.天板覆い部は、各側方覆い部間に架け渡し状に張設されて、各側方覆い部間のシート幅方向の離間幅の変化を伸縮により吸収する布状部材から成るものであっても良い。各側方覆い部は、互いのシート幅方向の離間幅が変化しない平行配置とされるものであっても良い。
【符号の説明】
【0104】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
4 ヘッドレスト
5 アームレスト
5A 軸
5B 軸
6 リクライニングヒンジセンタ
7 シートキャノピ装置
10 アッパシェル
11 側方覆い部
12 後方覆い部
13 摺動レール(摺動連結部)
13A 傾斜溝(凹面、引掛溝)
13B 嵌合溝
20 天板覆い部
21 カーテン(布帛材、外戸)
22 ワイヤフレーム
23 網戸(内戸)
24 ワイヤフレーム
30 ロアシェル
31 ガイド孔
40 送風機
B フック(所定の取付部品)
F フロア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15