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  • 特許-抄紙機のリール装置及び紙の巻取り方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】抄紙機のリール装置及び紙の巻取り方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/30 20060101AFI20240220BHJP
   B65H 18/14 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B65H19/30
B65H18/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020194542
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083223
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】坂野 賀津士
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-175758(JP,A)
【文献】特開平04-266354(JP,A)
【文献】特開2000-169006(JP,A)
【文献】特表平08-501052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00-18/28
B65H 19/00-19/30
B65H 21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を巻き付けるためのスプールシャフトを受け渡し位置まで搬送するプライマリアームと、
前記プライマリアームによって前記受け渡し位置まで搬送された前記スプールシャフトを転動可能に支持するレールと、
前記レールによって支持され前記受け渡し位置に位置する前記スプールシャフトに対して、当該スプールシャフトの周面に巻き付ける前記紙を搬送するためのリールドラムと、
前記受け渡し位置において、前記スプールシャフトの回転が前記リールドラムの回転と同調するように、前記スプールシャフトを回転駆動させるシャフト駆動手段と、
前記紙が巻きつけられて満巻状態になった前記スプールシャフトを前記レールに沿って移動させるセカンダリアームと、
前記プライマリアームによる搬送の間、前記スプールシャフトが前記受け渡し位置に到達するまで、前記スプールシャフトが前記リールドラムに実質的に接触しないように前記スプールシャフトの搬送状態を規制するガイドを備え、
前記ガイドは、前記プライマリアームの回動方向に沿って延在しており、前記プライマリアームによる搬送の間、前記スプールシャフトと前記リールドラムの間の間隙を維持し続けるように位置決めされている
抄紙機のリール装置。
【請求項2】
前記ガイドは、前記受け渡し位置において前記スプールシャフトと前記リールドラムの間の距離を調整可能なように構成されている
請求項1に記載のリール装置。
【請求項3】
前記シャフト駆動手段は、前記スプールシャフトが前記受け渡し位置にて前記レールに支持されている状態で当該スプールシャフトを回転駆動させるように配置されている
請求項1又は請求項2に記載のリール装置。
【請求項4】
紙を巻き付けるためのスプールシャフトを受け渡し位置まで搬送するプライマリアームと、
前記プライマリアームによって前記受け渡し位置まで搬送された前記スプールシャフトを転動可能に支持するレールと、
前記レールによって支持され前記受け渡し位置に位置する前記スプールシャフトに対して、当該スプールシャフトの周面に巻き付ける前記紙を搬送するためのリールドラムと、
前記受け渡し位置において、前記スプールシャフトの回転が前記リールドラムの回転と同調するように、前記スプールシャフトを回転駆動させるシャフト駆動手段と、
前記紙が巻きつけられて満巻状態になった前記スプールシャフトを前記レールに沿って移動させるセカンダリアームと、を備え、
前記シャフト駆動手段は、前記スプールシャフトへの前記紙の巻き付けが進み、前記紙の巻径が所定値以上になると、前記スプールシャフトに対して駆動力を付与しなくなるように構成されている
ール装置。
【請求項5】
紙を巻き付けるためのスプールシャフトを受け渡し位置まで搬送するプライマリアームと、
前記プライマリアームによって前記受け渡し位置まで搬送された前記スプールシャフトを転動可能に支持するレールと、
前記レールによって支持され前記受け渡し位置に位置する前記スプールシャフトに対して、当該スプールシャフトの周面に巻き付ける前記紙を搬送するためのリールドラムと、
前記受け渡し位置において、前記スプールシャフトの回転が前記リールドラムの回転と同調するように、前記スプールシャフトを回転駆動させるシャフト駆動手段と、
前記紙が巻きつけられて満巻状態になった前記スプールシャフトを前記レールに沿って移動させるセカンダリアームと、を備え、
前記スプールシャフトは、巻き始め時には、前記リールドラムによって回転駆動力は付与されず、前記シャフト駆動手段のみによって回転駆動力が付与されるものであり、
前記スプールシャフトは、前記紙の巻き付けが進み、前記紙の巻径が所定値以上となったときに、前記リールドラムによって初めて回転駆動力が付与される
ール装置。
【請求項6】
紙を巻きつけるためのスプールシャフトをプライマリアームによって受け渡し位置まで搬送する工程と、
前記プライマリアームによって前記受け渡し位置まで搬送された前記スプールシャフトをレールによって転動可能に支持する工程と、
前記受け渡し位置において、前記スプールシャフトの回転がリールドラムの回転と同調するように、前記スプールシャフトを回転駆動させる工程と、
前記レールによって支持された前記スプールシャフトに対して、前記受け渡し位置にて、前記リールドラムによって搬送されてくる前記紙を前記スプールシャフトの周面に巻き付ける工程と、
前記紙が巻きつけられて満巻状態になった前記スプールシャフトをセカンダリアームにより前記レールに沿って移動させる工程と、含み、
前記搬送工程では、前記プライマリアームによる搬送の間、前記スプールシャフトが前記受け渡し位置に到達するまで、前記スプールシャフトが前記リールドラムに実質的に接触しないように、前記スプールシャフトの搬送状態がガイドによって規制されており、
前記ガイドは、前記プライマリアームの回動方向に沿って延在しており、前記プライマリアームによる搬送の間、前記スプールシャフトと前記リールドラムの間の間隙を維持し続けるように位置決めされている
紙の巻取り方法。
【請求項7】
紙を巻きつけるためのスプールシャフトをプライマリアームによって受け渡し位置まで搬送する工程と、
前記プライマリアームによって前記受け渡し位置まで搬送された前記スプールシャフトをレールによって転動可能に支持する工程と、
前記受け渡し位置において、前記スプールシャフトの回転がリールドラムの回転と同調するように、シャフト駆動手段によって前記スプールシャフトを回転駆動させる工程と、
前記レールによって支持された前記スプールシャフトに対して、前記受け渡し位置にて、前記リールドラムによって搬送されてくる前記紙を前記スプールシャフトの周面に巻き付ける工程と、
前記紙が巻きつけられて満巻状態になった前記スプールシャフトをセカンダリアームにより前記レールに沿って移動させる工程と、含み、
前記シャフト駆動手段は、前記スプールシャフトへの前記紙の巻き付けが進み、前記紙の巻径が所定値以上になると、前記スプールシャフトに対して駆動力を付与しなくなるように構成されている
紙の巻取り方法。
【請求項8】
紙を巻きつけるためのスプールシャフトをプライマリアームによって受け渡し位置まで搬送する工程と、
前記プライマリアームによって前記受け渡し位置まで搬送された前記スプールシャフトをレールによって転動可能に支持する工程と、
前記受け渡し位置において、前記スプールシャフトの回転がリールドラムの回転と同調するように、シャフト駆動手段によって前記スプールシャフトを回転駆動させる工程と、
前記レールによって支持された前記スプールシャフトに対して、前記受け渡し位置にて、前記リールドラムによって搬送されてくる前記紙を前記スプールシャフトの周面に巻き付ける工程と、
前記紙が巻きつけられて満巻状態になった前記スプールシャフトをセカンダリアームにより前記レールに沿って移動させる工程と、含み、
前記スプールシャフトは、巻き始め時には、前記リールドラムによって回転駆動力は付与されず、前記シャフト駆動手段のみによって回転駆動力が付与されるものであり、
前記スプールシャフトは、前記紙の巻き付けが進み、前記紙の巻径が所定値以上となったときに、前記リールドラムによって初めて回転駆動力が付与される
紙の巻取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機によって製作された紙を巻き取るためのリール装置及びその紙の巻取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、抄紙工場では、抄紙機によって製作された紙(原反)を一定の速さで送り出し、その紙をリール装置によって巻き取ることで、原反ロールを連続的に形成する作業が行われている。
【0003】
従来のリール装置(特許文献1)は、一般的に、紙を搬送するリールドラムと、紙を巻き付けるためのスプールシャフトと、このスプールシャフトを把持してリールドラムの周面に沿って移動させるプライマリアームと、プライマリアームによって移動されたリールドラムが載置されるレールと、このレール上にてリールドラムからスプールシャフトに紙が巻き付けられて満巻状態になったときにこのスプールシャフトをレールに沿って移動させるセカンダリアームを備える。リール装置では、原反ロールの形成を連続的に行うために、先枠のスプールシャフトが満巻状態になる直前に、次枠の空のスプールシャフトをリールドラムに押圧接触させることでスプールシャフトとリールドラムの回転速度を同調さるとともに、満巻状態となった先枠のスプールシャフトと次枠のスプールシャフトとの間で紙を切断して次枠に巻き付けて、次枠の巻取り作業へと移行する。このようなプライマリアームとセカンダリアームを用いてスプールシャフトの枠替えを行う方式を、プライマリセカンダリ受け渡し方式ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-278238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のプライマリセカンダリ受け渡し方式のリール装置では、前述のとおり、スプールシャフトを先枠から次枠へと枠替えする際に、次枠の空のスプールシャフトをリールドラムの周面に押圧接触させてスプールシャフトとリールドラムの回転速度を同調さることが必要となる。しかし、回転速度を同調させるためには、空のスプールシャフトをリールドラムに対して強く押し付けなければならない。このとき、スプールシャフトのシャフト軸に多少でも撓みや歪みがあると、スプールシャフトをリールドラムに押し付けて回転させたときに、スプールシャフトがリールドラム上で跳ねるように挙動して大きな振動が発生し、スプールシャフトあるいは設備全体の故障に繋がる。また、リールドラムの回転速度が高速であるほど枠替え時に生じる振動も大きくなる。特には、リールドラムの表面速度が速いと、切り替え時の回転速度が相当に早くなるため、僅かな重芯ずれでも大きな振動になり故障の原因となる。このため、リールドラムの回転速度を低速にして枠替え時の振動を抑えることも考えられるが、そのようにすると紙の生産効率が低下して、紙の生産量が減少してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、リールドラムの回転速度を低下させることなく、スプールシャフトの枠替え時に発生する振動を抑えることで、設備の故障リスクを低下させることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記した従来技術の問題を解決する手段について鋭意検討した結果、プライマリアームからレールへのスプールシャフトの受け渡し位置に、スプールシャフトに対して回転力を付与する駆動手段を配置することにより、リールドラムに対してスプールシャフトを押圧接触させなくてもリールドラムとスプールシャフトの回転速度を同調させることができるようになるという知見を得た。そして、本発明者は、上記知見に基づけば従来技術の問題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成又は工程を有する。
【0008】
本発明の第1の側面は、抄紙機のリール装置に関する。リール装置は、プライマリアーム、レール、リールドラム、シャフト駆動手段、及びセカンダリアームを備える。プライマリアームは、紙を巻き付けるためのスプールシャフトを受け渡し位置まで搬送する。レールは、プライマリアームによって受け渡し位置まで搬送されたスプールシャフトを転動可能に支持する。リールドラムは、レールによって支持され受け渡し位置に位置しているスプールシャフトに対して、当該スプールシャフトの周面に巻き付ける紙を搬送する。シャフト駆動手段は、受け渡し位置において、スプールシャフトの回転がリールドラムの回転と同調するように、スプールシャフトを回転駆動させる。セカンダリアームは、紙が巻きつけられて満巻状態になったスプールシャフトをレールに沿って移動させる。また、セカンダリアームは、スプールシャフトによる紙の巻取り中に、このスプールシャフトをリールドラム側に加圧する。
【0009】
上記構成のように、受け渡し位置にあるスプールシャフトをシャフト駆動手段によって回転させることで、リールドラムに対してスプールシャフトを強く接触させなくても、リールドラムとスプールシャフトの回転速度を同調させることができる。これにより、スプールシャフトの枠替え時に発生する振動を抑えることが可能となり、設備の故障リスクを低下させることができる。また、振動を抑えることができれば、リールドラムの回転速度を低下させる必要もなくなるため、リールドラムの回転速度を高速にして紙の生産効率を高く維持することができる。
【0010】
本発明に係るリール装置は、ガイドをさらに備えることが好ましい。ガイドは、プライマリアームによる搬送の間、スプールシャフトが受け渡し位置に到達するまで、スプールシャフトがリールドラムに実質的に接触しないようにスプールシャフトの搬送状態を規制する。スプールシャフトがリールドラムに「実質的に接触しない」状態とは、スプールシャフトとリールドラムとが離間しており両者が直接触れない場合だけでなく、スプールシャフトとリールドラムとが触れているもののリールドラムの回転力がスプールシャフトに伝達しない程度に軽接触している場合を含む。このように、ガイドを設けてスプールシャフトとリールドラムの接触を阻害することで、スプールシャフトとリールドラムとが触れることにって生じる振動を実質的になくすことができる。
【0011】
本発明に係るリール装置において、ガイドは、受け渡し位置においてスプールシャフトとリールドラムの間の距離を調整可能なように構成されていることとしてもよい。このようにガイドによってスプールシャフトとリールドラムの間の距離を調整できるようにすることで、例えば両者の距離が近すぎて振動が生じている場合に両者の距離を離すといったような微調整が容易になる。
【0012】
本発明に係るリール装置において、シャフト駆動手段は、スプールシャフトが受け渡し位置にてレールに支持されている状態でスプールシャフトを回転駆動させるように配置されていることが好ましい。このように、スプールシャフトをレール上で回転させることで、安定的に紙の巻き付けを行うことができる。
【0013】
本発明に係るリール装置において、シャフト駆動手段は、スプールシャフトへの紙の巻き付けが進み、紙の巻径が所定値以上になると、スプールシャフトに対して駆動力を付与しなくなるように構成されていることが好ましい。なお、シャフト駆動手段よってスプールシャフトへの駆動力の付与が終了した後は、リールドラムからスプールシャフトに対して回転に同調するように駆動力が付与される必要がある。これにより、スプールシャフトへの紙の巻き付け進むと、最終的にはリールドラムとスプールシャフトの回転を完全に同調させることができる。この段階では、スプールシャフトとリールドラムの間に紙が多層に亘って介在するようになるため、スプールシャフトに多少の撓みや歪みが生じていても、それを原因とした振動はほぼ発生しないといえる。
【0014】
本発明の第2の側面は、紙の巻取り方法に関する。本発明に係る紙の巻取り方法は、少なくとも以下の1)~5)の工程をこの順に含む。
1)紙を巻きつけるためのスプールシャフトをプライマリアームによって受け渡し位置まで搬送する(搬送工程)
2)プライマリアームによって受け渡し位置まで搬送されたスプールシャフトをレールによって転動可能に支持する(支持工程)
3)受け渡し位置において、スプールシャフトの回転がリールドラムの回転と同調するように、スプールシャフトを回転駆動させる(回転駆動工程)
4)レールによって支持されたスプールシャフトに対して、受け渡し位置にて、リールドラムによって搬送されてくる紙をスプールシャフトの周面に巻き付ける工程(巻付け工程)なお、セカンダリアームは、スプールシャフトによる紙の巻取り中に、このスプールシャフトをリールドラム側に加圧する。
5)紙が巻きつけられて満巻状態になったスプールシャフトをセカンダリアームによりレールに沿って移動させる工程(移動工程)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リールドラムの回転速度を低下させることなく、スプールシャフトの枠替え時に発生する振動を抑えることで、設備の故障リスクを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るリール装置の全体構造を模式的に示した側面図である。
図2図2は、リール装置による紙の巻取り方法の一例を示している。
図3図3は、リール装置による紙の巻取り方法の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るリール装置100を示している。リール装置100は、抄紙機によって製作された紙を巻き取って原反ロールを形成するために用いられる。リール装置100には空のスプールシャフト10が順次送り込まれてくるが、リール装置100はこれを受け取って、空のスプールシャフト10の周面に紙を巻き付ける。図1においては、このスプールシャフト10の移動経路を破線の矢印で示している。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るリール装置100は、プライマリアーム20、レール30、ガイド40、リールドラム50、駆動ローラ60(シャフト駆動手段)、及びセカンダリアーム70を備える。
【0020】
プライマリアーム20は、スプールシャフト10の供給装置(不図示)からスプールシャフト10を受け取り、このスプールシャフト10をリールドラム50の周面に沿ってレール30上まで搬送する。プライマリアーム20は、リールドラム50の両端面側に2箇所配置されている。各プライマリアーム20は、例えば、略コの字型のアーム部21と、このアーム部21を回動させる回動軸22を含む。プライマリアーム20の回動軸22は、リールドラム50の駆動軸と同軸上に設定されていることが好ましい。プライマリアーム20は、アーム部21によってスプールシャフト10の両端部を保持した状態で、回動軸22による回動に従って、このスプールシャフト10をレール30まで搬送する。また、プライマリアーム10は、スプールシャフト10による紙の巻取り中に、このスプールシャフト10を駆動ローラ60側に向かって押し付ける方向に付勢する。
【0021】
レール30は、スプールシャフト10を支持するために略水平に設置されている。レール30も、リールドラム50の両端面側に2箇所配置されており、これらのレール30上に、プライマリアーム20によってスプールシャフト10の両端部が載置される。なお、レール30に載せられるスプールシャフト10の両端部は、紙の巻き付けが行われない部分である。詳しくは後述するが、プライマリアーム20からレール30へのスプールシャフト10への受け渡し位置において、スプールシャフト10に対する紙の巻き付けが開始される。
【0022】
ガイド40は、プライマリアーム20によるスプールシャフト10の搬送の間、このスプールシャフト10がレール30への受け渡し位置に到達するまで、スプールシャフト10の周面がリールドラム50に実質的に接触しないようにスプールシャフト10の搬送状態(搬送経路)を規制するように構成されている。図1に示した実施形態では、プライマリアーム20にスプールシャフト10が供給されたときに、このスプールシャフト10の両端部は、プライマリアーム20のアーム部21によって保持されると同時に、ガイド40に載置される。このため、スプールシャフト10は、リールドラム50の周面までは落下せず、ガイド40によって支持されることで、スプールシャフト10とリールドラム50の間に所定の間隙(スペース)が形成されることとなる。また、ガイド40は、プライマリアーム20の回動方向に沿って延在しており、プライマリアーム20による搬送の間、スプールシャフト10とリールドラム50の間の間隙を維持し続ける。他方、ガイド40は、プライマリアーム20からレール30へのスプールシャフト10の受け渡し位置までは延在していない。このため、この受け渡し位置に到達して初めてスプールシャフト10の周面がリールドラム50に接触するようになる。
【0023】
ただし、ガイド40は、受け渡し位置においてもスプールシャフト10がリールドラム50に接触しないように、受け渡し位置において両者の間隔を維持するように延在していてもよい。このとき、スプールシャフト10とリールドラム50の間の間隔は、少なくとも1~10mm程度は確保するとよい。この場合、スプールシャフト10に紙を巻き付かせるために、エアー噴射手段によってエアーを吹き付けるなどして、紙をスプールシャフト10に接触させることとしてもよい。エアーで紙に巻き付けを補助するのは、この受け渡し位置とすることが最も有効である。このような補助エアーは、リールドラム50側から紙をスプールシャフト10に向かって吹き付けられる。この補助エアーでスプールシャフト10に紙に吹き付けながら、糊等を塗布して紙の端部をスプールシャフト10に巻き付ければよい。
【0024】
なお、図1に示した実施形態において、ガイド40は、受け渡し位置においてスプールシャフト10とリールドラム50とが接触するように構成されているが、受け渡し位置においてもスプールシャフト10とリールドラム50の間の間隙を維持するようにガイド40を構成することとしてもよい。本発明は、スプールシャフト10への紙の巻き始め時点においては、リールドラム50によってスプールシャフト10を回転させるものではないため、この受け渡し位置(紙の巻き始め時点)においてスプールシャフト10とリールドラム50を接触させることは必ずしも要求されない。また、ガイド40は、スプールシャフト10とリールドラム50の間の間隙距離を任意に調整できるように構成されていてもよい。例えば、ガイド40の設置位置を変更可能としたり、ガイド40の形状を変更可能としたり、あるいはガイド40に別のパーツを付加できるようにしたりすることで、スプールシャフト10とリールドラム50の間の距離を任意に調整できるようにすればよい。
【0025】
リールドラム50は、抄紙機(不図示)から供給されてきた紙をその周面に沿って搬送して、スプールシャフト10へと巻き付ける。スプールシャフト10への紙の巻き付け速度は、基本的にリールドラム50の回転速度に依存する。このため、リールドラム50の回転速度を早くすることで、紙の生産効率を高くすることができる。
【0026】
駆動ローラ60は、レール30の受け渡し位置に載置されたスプールシャフト10を回転駆動させる。駆動ローラ60の回転速度は、基本的にリールドラム50の回転速度と一致するように設定されている。駆動ローラ60は、プライマリアーム20などと同様にリールドラム50の両端面側に2箇所配置されていることが好ましいが、リールドラム50の一端面側にのみ設置されていてもよい。駆動ローラ60が2箇所に設置されている場合、スプールシャフト10の両端部(紙の巻き付けが行われない部分)がこの駆動ローラ60の周面に接触する。これにより、駆動ローラ60の回転に伴ってスプールシャフト10が回転する。図1に示されるように、各駆動ローラ60は、この駆動ローラ60とリールドラム50との間にスプールシャフト10が介在するように配置されている。すなわち、スプールシャフト10は、受け渡し位置において、各駆動ローラ60に接触すると同時に、リールドラム50にも接触する。また、駆動ローラ60の回転方向は、リールドラム50の回転方向と一致する。このため、駆動ローラ60によって回転駆動されるスプールシャフト10は、これら駆動ローラ60とリールドラム50と反対方向に回転することとなる。さらに、各駆動ローラ60の回転速度は、リールドラム50の回転速度と一致する。これにより、各駆動ローラ60によって回転駆動されるスプールシャフト10の回転速度は、結果的にリールドラム50の回転速度と同調することとなる。なお、駆動ローラ60は、スプールシャフト10の移動中も回転力を伝達できるように、ベルトタイプのものであることが好ましい。
【0027】
ただし、例えば家庭紙を生産する場合には、スプールシャフト10の回転速度(具体的にはスプールシャフト10を駆動する駆動ローラ60の回転速度)を、リールドラム50の回転速度よりも遅くして、スプールシャフト10に紙を巻き付けることも可能である。家庭紙の場合、クレープが付与されていることが多いため、スプールシャフト10の回転速度を下げても巻くことが可能である。なお、クレープ率が変わるので製品には使えないが、下巻きは通常製品化されることはないので問題はない。スプールシャフト10の回転速度が速いと回転数が高くなり、振動も大きくなりスプールシャフト10の故障につながるが、その回転数を下げれれば故障対策になる。スプールシャフト10(駆動ローラ60)の回転速度を下げる範囲としては、リールドラム50の回転速度に対して70~90%が好ましい。スプールシャフト10の回転速度を70%以下に遅くすると、リールドラム50に接触した際に速度差で断紙しやすくなる。また、スプールシャフト10の回転速度を90%以上であると振動が大きいままとなるため、回転速度を調整する意味があまりない。
【0028】
セカンダリアーム70は、紙の巻き付けが完了した(満巻状態となった)スプールシャフト10をレール30上に沿って移動させる。なお、セカンダリアーム70は、スプールシャフト10に紙を巻き付けている間、このスプールシャフト10をリールドラム50側に向かって押し付ける方向に付勢するものであってもよい。セカンダリアーム70は、プライマリアーム20と同様に、リールドラム50の両端面側に2箇所配置されている。各セカンダリアーム70は、例えば、コの字型のアーム部71と、このアーム部71に接続されたシャフト部72と、このシャフト部72を軸方向に進退(伸縮)させるためのシリンダ部73を含む。セカンダリアーム70は、アーム部71によってスプールシャフト10の両端部を保持した状態で、シリンダ部73によってシャフト部72を進行させる(伸ばす)ことにより、このスプールシャフト10をレール30上に沿って移動させる。なお、セカンダリアーム70は、シリンダ部73によってシャフト部72を退行させる(縮ませる)方向に力を加えることで、スプールシャフト10をリールドラム50側に向かって押し付ける方向に付勢することもできる。
【0029】
続いて、図2及び図3を参照して、リール装置100の動作例について説明する。まず、図2(a)に示されるように、プライマリアーム20は、初期位置にあるときに、アーム部71の開口部分を上方に向けた状態で待機している。そこに、スプールシャフト10が供給される。スプールシャフト10は、プライマリアーム20のアーム部71によって保持されると同時に、ガイド40上に載置される。
【0030】
次に、図2(b)に示されるように、プライマリアーム20が、リールドラム50の周方向に沿って90度程度回動すると、このプライマリアーム20の搬送によってスプールシャフト10がレール30上に受け渡される。また、この搬送の間、スプールシャフト10がリールドラム50に直接触れることがないように、ガイド40によってスプールシャフト10の搬送経路は規制されている。また、スプールシャフト10がレール30上の受け渡し位置にまで到達すると、リールドラム50の周面に沿って送られてきた紙Sがこのスプールシャフト10の周面に取り付けられる。
【0031】
また、レール30上においてスプールシャフト10の両端部が駆動ローラ60に接触することで、この駆動ローラ60によってスプールシャフト10に対して回転駆動力が付与される。このとき、プライマリアーム10は、スプールシャフト10を駆動ローラ60側に向かって押し付ける方向に付勢する。駆動ローラ60とリールドラム50の回転速度はほぼ一致しているため、結果としてスプールシャフト10の回転速度はリールドラム50の回転速度と同調する。この段階において、スプールシャフト10は、実質的に駆動ローラ60のみによって回転駆動されることとなる。すなわち、この時点では、スプールシャフト10は、リールドラム50に対しては接触していないか、回転力が伝達しない程度の軽接触しかしておらず、実質的にリールドラム50によってスプールシャフト10に対して回転駆動力が付与されることはない。このため、スプールシャフト10をリールドラム50に向かって強く押圧することも必要ない。
【0032】
次に、図2(c)に示されるように、スプールシャフト10は駆動ローラ60によって回転されることで、その周面への紙の巻き付けが進行する。スプールシャフト10への紙の巻き付けが進むと、スプールシャフト10に巻き付けられた紙面がリールドラム50にも接触するようになり、このリールドラム50からスプールシャフト10に対して徐々に回転駆動力が伝達されることとなる。ただし、紙の巻き付けの初期段階では、スプールシャフト10は主に駆動ローラ60によって回転駆動されており、リールドラム50の回転駆動力のみに依存するものではない。
【0033】
次に、図3(d)に示されるように、先枠のスプールシャフト10は、紙の巻き付け量が所定値を超えると、その両端部が駆動ローラ60には接触しなくなり、駆動ローラ60からの回転駆動力は受けなくなる。すなわち、スプールシャフト10の回転軸は、その周面に巻き付けられている紙の巻径が増大するにつれて、徐々にレール30上を進行していくことになるが、駆動ローラ60の位置は固定であるため、スプールシャフト10がレール30上を進行していくと、ある地点をもって駆動ローラ60との接触が外れることになる。その代わりに、スプールシャフト10の周面に巻き付けられた紙面がリールドラム50に接触しているため、スプールシャフト10は、リールドラム50の回転駆動力を受けて回転を続ける。特に、スプールシャフト10に巻き付けられた紙の巻径が増加するにつれて、スプールシャフト10の紙面とリールドラム50は強く接触することになる。このため、スプールシャフト10は、引き続きリールドラム50と同調して回転する。
【0034】
また、スプールシャフト10は、駆動ローラ60から外れると、プライマリアーム20からも外れることとなる。言い換えると、スプールシャフト10は、駆動ローラ60から外れるまではプライマリアーム20によって保持された状態にある(図2(c)参照)。そして、スプールシャフト10がプライマリアーム20から外れた段階で、このスプールシャフト10をセカンダリアーム70によって保持することとしてもよい。このとき、セカンダリアーム70によってスプールシャフト10をリールドラム50側に向かって付勢して、スプールシャフト10に巻き付けられた紙面がリールドラム50の周面に強く接触することとしてもよい。
【0035】
また、プライマリアーム20は、先枠のスプールシャフト10の保持が外れると、初期位置に戻って次枠のスプールシャフト10を受け付ける。この次枠のスプールシャフト10は、先枠のスプールシャフト10と同様に、プライマリアーム20のアーム部71によって保持されると同時に、ガイド40上に載置されることになる。
【0036】
次に、図3(e)に示されるように、先枠のスプールシャフト10が満巻状態に近づくと、次枠のスプールシャフト10を保持するプライマリアーム20をリールドラム50の周方向に沿って回動させて、次枠のスプールシャフト10の周面を先枠のスプールシャフト10に巻き付けられている紙面に接触させる。なお、この次枠のスプールシャフト10の回動搬送中にも、ガイド40によって次枠とリールドラム50の間の間隙は維持されているため、次枠のスプールシャフト10の周面がリールドラム50に直接接触することはない。このように、プライマリアーム20を回動させて、次枠の空のスプールシャフト10を先枠のスプールシャフト10に接触させる。そして、先枠のスプールシャフト10が満巻状態になると、先枠と次枠のスプールシャフト10の間で紙を高速空気噴射などによって切断して、紙の端部を次枠のスプールシャフト10に巻き付けて、この次枠のスプールシャフト10による紙の巻き付け作業へと移行する。
【0037】
次に、図3(f)に示されるように、満巻状態となった先枠のスプールシャフト10は、セカンダリアーム70によってレール30に沿って移動され、原反ロールの保管設備(不図示)へと移送される。このようにして先枠のスプールシャフト10が払い出される。他方で、次枠のスプールシャフト10は、先枠のスプールシャフト10と同様に、プライマリアーム20によってレール30の受け渡し位置まで搬送されると、駆動ローラ60の回転駆動力を受けて紙の巻き付けが開始される。このように、先枠と次枠のスプールシャフト10の枠替え工程を繰り返すことによって、スプールシャフト10に紙を巻き付けた原反ロールが連続的に形成される。
【0038】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、抄紙機によって製作された紙を巻き取るためのリール装置及びその紙の巻取り方法に関する。従って、本発明は、紙の製造業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0040】
10…スプールシャフト 20…プライマリアーム
21…アーム部 22…回動軸
30…レール 40…ガイド
50…リールドラム 60…駆動ローラ(シャフト駆動手段)
70…セカンダリアーム 71…アーム部
72…シャフト部 73…シリンダ部
100…リール装置
図1
図2
図3