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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】車両用支援装置及び車両用支援方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240220BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240220BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/16 F
A61B5/00 102B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020204478
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091570
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】井原 章太
(72)【発明者】
【氏名】西野 友英
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 好文
(72)【発明者】
【氏名】松井 一博
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205794(JP,A)
【文献】特開2007-205764(JP,A)
【文献】特開2010-203793(JP,A)
【文献】特開2020-029210(JP,A)
【文献】特開2011-027441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/16
A61B 5/00
B60W 40/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び前記運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定部(211,211a,212)と、
前記精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示部と、
前記探索指示部で探索させた、前記精神関連状態推定部で推定した前記精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定部(203)と、
前記推奨経路決定部で決定した前記推奨経路の提示を前記運転者に向けて行わせる提示制御部(204)と、
前記推奨経路決定部で決定した前記推奨経路の案内の要否を、前記運転者から入力装置(25,26)で受け付けた入力に応じて選択する選択部(206)と、
前記車両に設けられる、前記精神状態の悪化から前記精神状態を改善させる刺激を前記運転者に与える状態改善装置(27)の動作を制御する刺激制御部(207)とを備え、
前記提示制御部は、前記推奨経路の案内を行わせることも可能なものであって、
前記選択部で前記推奨経路の案内が不要と選択した場合には、前記提示制御部が前記推奨経路の案内を行わせずに、前記刺激制御部が前記状態改善装置の動作を自動で開始させる一方、前記選択部で前記推奨経路の案内が必要と選択した場合には、前記刺激制御部が前記状態改善装置の動作を自動では開始させずに、前記提示制御部が前記推奨経路の案内を行わせる車両用支援装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記精神関連状態推定部は、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の要因を少なくとも推定し、
前記推奨経路決定部は、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の要因に応じた、その精神状態を改善すると推定される前記推奨経路を決定する車両用支援装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記精神関連状態推定部は、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、
前記推奨経路決定部は、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた、その精神状態を改善すると推定される前記推奨経路を決定する車両用支援装置。
【請求項4】
車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び前記運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定部(211,211a,212)と、
前記精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示部と、
前記探索指示部で探索させた、前記精神関連状態推定部で推定した前記精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定部(203)と、
前記推奨経路決定部で決定した前記推奨経路の提示を前記運転者に向けて行わせる提示制御部(204)とを備え、
前記精神関連状態推定部は、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、
前記推奨経路決定部は、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた、その精神状態を改善すると推定される前記推奨経路を決定する車両用支援装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記精神状態を改善すると推定される経路の探索条件は複数種類であって、
前記推奨経路決定部は、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の度合いが大きくなるのに応じて、より多くの種類の前記探索条件を満たす経路を前記推奨経路として決定する車両用支援装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記精神状態の悪化は、ストレスである車両用支援装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記車両の前記運転者以外の乗員である同乗者の状態を推定する同乗者状態推定部(213,213b)を備え、
前記推奨経路決定部は、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態にも応じて、前記推奨経路の決定を行わせる車両用支援装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記精神関連状態推定部は、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、
前記推奨経路決定部は、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値以上の場合には、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態よりも、前記精神関連状態推定部で推定した前記精神関連状態に優先して応じた前記推奨経路を決定する一方、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値未満の場合には、前記精神関連状態推定部で推定した前記精神関連状態よりも、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態に優先して応じた前記推奨経路を決定する車両用支援装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記同乗者状態推定部(213b)は、前記同乗者の種別も推定し、
前記推奨経路決定部は、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の種別に応じて、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の前記精神関連状態、及び前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態のうちのいずれに優先して応じた前記推奨経路を決定するかを切り替える車両用支援装置。
【請求項10】
車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び前記運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定部(211,211a,212)と、
前記精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示部と、
前記探索指示部で探索させた、前記精神関連状態推定部で推定した前記精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定部(203)と、
前記推奨経路決定部で決定した前記推奨経路の提示を前記運転者に向けて行わせる提示制御部(204)と、
前記車両の前記運転者以外の乗員である同乗者の状態を推定する同乗者状態推定部(213,213b)とを備え、
前記推奨経路決定部は、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態にも応じて、前記推奨経路の決定を行わせ、
前記精神関連状態推定部は、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、
前記推奨経路決定部は、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値以上の場合には、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態よりも、前記精神関連状態推定部で推定した前記精神関連状態に優先して応じた前記推奨経路を決定する一方、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値未満の場合には、前記精神関連状態推定部で推定した前記精神関連状態よりも、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態に優先して応じた前記推奨経路を決定する車両用支援装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記精神関連状態推定部は、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の要因を少なくとも推定し、
前記推奨経路決定部は、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の要因に応じた、その精神状態を改善すると推定される前記推奨経路を決定する車両用支援装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記精神状態の悪化は、ストレスである車両用支援装置。
【請求項13】
車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び前記運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定部(211,211a,212)と、
前記精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示部と、
前記探索指示部で探索させた、前記精神関連状態推定部で推定した前記精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定部(203)と、
前記推奨経路決定部で決定した前記推奨経路の提示を前記運転者に向けて行わせる提示制御部(204)とを備え、
前記精神関連状態推定部は、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の要因を少なくとも推定し、
前記推奨経路決定部は、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の精神状態の悪化の複数種類の要因別に応じた、その精神状態を改善すると推定される前記推奨経路を決定する車両用支援装置。
【請求項14】
請求項1において、
前記精神状態の悪化は、ストレスである車両用支援装置。
【請求項15】
請求項13又は14において、
前記車両の前記運転者以外の乗員である同乗者の状態を推定する同乗者状態推定部(213,213b)を備え、
前記推奨経路決定部は、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態にも応じて、前記推奨経路の決定を行わせる車両用支援装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記同乗者状態推定部(213b)は、前記同乗者の種別も推定し、
前記推奨経路決定部は、前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の種別に応じて、前記精神関連状態推定部で推定した前記運転者の前記精神関連状態、及び前記同乗者状態推定部で推定した前記同乗者の状態のうちのいずれに優先して応じた前記推奨経路を決定するかを切り替える車両用支援装置。
【請求項17】
少なくとも1つのプロセッサにより実行される、
車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び前記運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定工程と、
前記精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示工程と、
前記探索指示工程で探索させた、前記精神関連状態推定工程で推定した前記精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定工程と、
前記推奨経路決定工程で決定した前記推奨経路の提示を前記運転者に向けて行わせる提示制御工程と、
前記推奨経路決定工程で決定した前記推奨経路の案内の要否を、前記運転者から入力装置(25,26)で受け付けた入力に応じて選択する選択工程と、
前記車両に設けられる、前記精神状態の悪化から前記精神状態を改善させる刺激を前記運転者に与える状態改善装置(27)の動作を制御する刺激制御工程とを含み、
前記提示制御工程では、前記推奨経路の案内を行わせることも可能なものであって、
前記選択工程で前記推奨経路の案内が不要と選択した場合には、前記提示制御工程で前記推奨経路の案内を行わせずに、前記刺激制御工程で前記状態改善装置の動作を自動で開始させる一方、前記選択工程で前記推奨経路の案内が必要と選択した場合には、前記刺激制御工程で前記状態改善装置の動作を自動では開始させずに、前記提示制御工程で前記推奨経路の案内を行わせる車両用支援方法。
【請求項18】
少なくとも1つのプロセッサにより実行される、
車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び前記運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定工程と、
前記精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示工程と、
前記探索指示工程で探索させた、前記精神関連状態推定工程で推定した前記精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定工程と、
前記推奨経路決定工程で決定した前記推奨経路の提示を前記運転者に向けて行わせる提示制御工程とを含み、
前記精神関連状態推定工程では、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、
前記推奨経路決定工程では、前記精神関連状態推定工程で推定した前記運転者の精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた、その精神状態を改善すると推定される前記推奨経路を決定する車両用支援方法。
【請求項19】
少なくとも1つのプロセッサにより実行される、
車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び前記運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定工程と、
前記精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示工程と、
前記探索指示工程で探索させた、前記精神関連状態推定工程で推定した前記精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定工程と、
前記推奨経路決定工程で決定した前記推奨経路の提示を前記運転者に向けて行わせる提示制御工程と、
前記車両の前記運転者以外の乗員である同乗者の状態を推定する同乗者状態推定工程とを含み、
前記推奨経路決定工程では、前記同乗者状態推定工程で推定した前記同乗者の状態にも応じて、前記推奨経路の決定を行わせ、
前記精神関連状態推定工程では、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、
前記推奨経路決定工程では、前記精神関連状態推定工程で推定した前記運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値以上の場合には、前記同乗者状態推定工程で推定した前記同乗者の状態よりも、前記精神関連状態推定工程で推定した前記精神関連状態に優先して応じた前記推奨経路を決定する一方、前記精神関連状態推定工程で推定した前記運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値未満の場合には、前記精神関連状態推定工程で推定した前記精神関連状態よりも、前記同乗者状態推定工程で推定した前記同乗者の状態に優先して応じた前記推奨経路を決定する車両用支援方法。
【請求項20】
少なくとも1つのプロセッサにより実行される、
車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び前記運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定工程と、
前記精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示工程と、
前記探索指示工程で探索させた、前記精神関連状態推定工程で推定した前記精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定工程と、
前記推奨経路決定工程で決定した前記推奨経路の提示を前記運転者に向けて行わせる提示制御工程とを含み、
前記精神関連状態推定工程では、前記精神関連状態として、前記運転者の精神状態の悪化の要因を少なくとも推定し、
前記推奨経路決定工程では、前記精神関連状態推定工程で推定した前記運転者の精神状態の悪化の複数種類の要因別に応じた、その精神状態を改善すると推定される前記推奨経路を決定する車両用支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用支援装置及び車両用支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドライバの状態を検知する技術が知られている。例えば、特許文献1には、顔の表情の認識結果から、対象者の感情を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6467965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者の精神状態は、車両の走行に影響を及ぼす可能性がある。よって、運転者の精神状態が悪化している場合には、その精神状態を改善することが好ましい。
【0005】
この開示のひとつの目的は、車両の運転者の精神状態が悪化した場合に、その精神状態をより精度良く改善することを可能にする車両用支援装置及び車両用支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、開示の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の車両用支援装置は、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定部(211,211a,212)と、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示部と、探索指示部で探索させた、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定部(203)と、推奨経路決定部で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる提示制御部(204)と、推奨経路決定部で決定した推奨経路の案内の要否を、運転者から入力装置(25,26)で受け付けた入力に応じて選択する選択部(206)と、車両に設けられる、精神状態の悪化から精神状態を改善させる刺激を運転者に与える状態改善装置(27)の動作を制御する刺激制御部(207)とを備え、提示制御部は、推奨経路の案内を行わせることも可能なものであって、選択部で推奨経路の案内が不要と選択した場合には、提示制御部が推奨経路の案内を行わせずに、刺激制御部が状態改善装置の動作を自動で開始させる一方、選択部で推奨経路の案内が必要と選択した場合には、刺激制御部が状態改善装置の動作を自動では開始させずに、提示制御部が推奨経路の案内を行わせる。
上記目的を達成するために、本開示の第2の車両用支援装置は、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定部(211,211a,212)と、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示部と、探索指示部で探索させた、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定部(203)と、推奨経路決定部で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる提示制御部(204)とを備え、精神関連状態推定部は、精神関連状態として、運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、推奨経路決定部は、精神関連状態推定部で推定した運転者の精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた、その精神状態を改善すると推定される推奨経路を決定する。
上記目的を達成するために、本開示の第3の車両用支援装置は、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定部(211,211a,212)と、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示部と、探索指示部で探索させた、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定部(203)と、推奨経路決定部で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる提示制御部(204)と、車両の運転者以外の乗員である同乗者の状態を推定する同乗者状態推定部(213,213b)とを備え、推奨経路決定部は、同乗者状態推定部で推定した同乗者の状態にも応じて、推奨経路の決定を行わせ、精神関連状態推定部は、精神関連状態として、運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、推奨経路決定部は、精神関連状態推定部で推定した運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値以上の場合には、同乗者状態推定部で推定した同乗者の状態よりも、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に優先して応じた推奨経路を決定する一方、精神関連状態推定部で推定した運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値未満の場合には、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態よりも、同乗者状態推定部で推定した同乗者の状態に優先して応じた推奨経路を決定する。
上記目的を達成するために、本開示の第4の車両用支援装置は、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定部(211,211a,212)と、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示部と、探索指示部で探索させた、精神関連状態推定部で推定した精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定部(203)と、推奨経路決定部で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる提示制御部(204)とを備え、精神関連状態推定部は、精神関連状態として、運転者の精神状態の悪化の要因を少なくとも推定し、推奨経路決定部は、精神関連状態推定部で推定した運転者の精神状態の悪化の複数種類の要因別に応じた、その精神状態を改善すると推定される推奨経路を決定する。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第1の車両用支援方法は、少なくとも1つのプロセッサにより実行される、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定工程と、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示工程と、探索指示工程で探索させた、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定工程と、推奨経路決定工程で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる提示制御工程と、推奨経路決定工程で決定した推奨経路の案内の要否を、運転者から入力装置(25,26)で受け付けた入力に応じて選択する選択工程と、車両に設けられる、精神状態の悪化から精神状態を改善させる刺激を運転者に与える状態改善装置(27)の動作を制御する刺激制御工程とを含み、提示制御工程では、推奨経路の案内を行わせることも可能なものであって、選択工程で推奨経路の案内が不要と選択した場合には、提示制御工程で推奨経路の案内を行わせずに、刺激制御工程で状態改善装置の動作を自動で開始させる一方、選択工程で推奨経路の案内が必要と選択した場合には、刺激制御工程で状態改善装置の動作を自動では開始させずに、提示制御工程で推奨経路の案内を行わせる。
上記目的を達成するために、本開示の第2の車両用支援方法は、少なくとも1つのプロセッサにより実行される、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定工程と、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示工程と、探索指示工程で探索させた、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定工程と、推奨経路決定工程で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる提示制御工程とを含み、精神関連状態推定工程では、精神関連状態として、運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、推奨経路決定工程では、精神関連状態推定工程で推定した運転者の精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた、その精神状態を改善すると推定される推奨経路を決定する。
上記目的を達成するために、本開示の第3の車両用支援方法は、少なくとも1つのプロセッサにより実行される、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定工程と、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示工程と、探索指示工程で探索させた、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定工程と、推奨経路決定工程で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる提示制御工程と、車両の運転者以外の乗員である同乗者の状態を推定する同乗者状態推定工程とを含み、推奨経路決定工程では、同乗者状態推定工程で推定した同乗者の状態にも応じて、推奨経路の決定を行わせ、精神関連状態推定工程では、精神関連状態として、運転者の精神状態の悪化の度合いを少なくとも推定し、推奨経路決定工程では、精神関連状態推定工程で推定した運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値以上の場合には、同乗者状態推定工程で推定した同乗者の状態よりも、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に優先して応じた推奨経路を決定する一方、精神関連状態推定工程で推定した運転者の精神状態の悪化の度合いが所定の閾値未満の場合には、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態よりも、同乗者状態推定工程で推定した同乗者の状態に優先して応じた推奨経路を決定する。
上記目的を達成するために、本開示の第4の車両用支援方法は、少なくとも1つのプロセッサにより実行される、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態を推定する精神関連状態推定工程と、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた推奨経路を探索させる探索指示工程と、探索指示工程で探索させた、精神関連状態推定工程で推定した精神関連状態に応じた、複数のリンクを含む推奨経路を決定する推奨経路決定工程と、推奨経路決定工程で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる提示制御工程とを含み、精神関連状態推定工程では、精神関連状態として、運転者の精神状態の悪化の要因を少なくとも推定し、推奨経路決定工程では、精神関連状態推定工程で推定した運転者の精神状態の悪化の複数種類の要因別に応じた、その精神状態を改善すると推定される推奨経路を決定する。
【0009】
これらによれば、車両の運転者の精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかである精神関連状態に応じた推奨経路を運転者に向けて提示することが可能になる。よって、単なる精神状態の悪化の有無よりも詳細な、精神状態の悪化の度合い、及び運転者の精神状態の悪化の要因の少なくともいずれかに応じた、その精神状態の悪化を改善する経路を運転者に提示することが可能になる。その結果、車両の運転者の精神状態が悪化した場合に、その精神状態をより精度良く改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】運転支援システム1の概略的な構成の一例を示す図である。
図2】HCU20の概略的な構成の一例を示す図である。
図3】HCU20での状態改善関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】HCU20aの概略的な構成の一例を示す図である。
図5】HCU20aでの状態改善関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】HCU20bの概略的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態における説明を参照することができる。
【0012】
(実施形態1)
<運転支援システム1の概略構成>
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。図1に示す運転支援システム1は、自動車(以下、単に車両)で用いることが可能なものである。運転支援システム1は、HMI(Human Machine Interface)システム2、通信モジュール3、ロケータ4、地図データベース(以下、地図DB)5、車両制御ECU6、周辺監視センサ7、自動運転ECU8、及び車両状態センサ9を含んでいる。HMIシステム2、通信モジュール3、ロケータ4、地図DB5、車両制御ECU6、自動運転ECU8、及び車両状態センサ9は、例えば車内LANに接続されているものとする。以降では、運転支援システム1を用いている車両を自車と呼ぶ。
【0013】
通信モジュール3は、近距離通信部31及び広域通信部32を含む。近距離通信部31は、近距離無線通信を行う。近距離無線通信としては、Bluetooth(登録商標) Low Energy等の近距離無線通信規格に準拠した近距離無線通信,UWB(Ultra Wide Band)通信等が挙げられる。近距離無線通信規格に準拠した近距離無線通信としては、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を用いてもよい。近距離通信部31は、近距離無線通信によって携帯端末と通信接続する。携帯端末としては、自車の乗員が装着するウェアラブルデバイス,自車の乗員が携帯する多機能携帯電話機等が挙げられる。広域通信部32は、公衆通信網を介してセンタサーバとの間で通信を行う。公衆通信網としては、携帯電話網,インターネット等が挙げられる。広域通信部32は、路側機を介してセンタとの間で通信を行う構成としてもよい。広域通信部32は、センタサーバから交通情報等を取得し、車内LANへ出力する。
【0014】
ロケータ4は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサを備えている。GNSS受信機は、複数の人工衛星からの測位信号を受信する。慣性センサは、例えばジャイロセンサ及び加速度センサを備える。ロケータ4は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、自車の車両位置を逐次測位する。なお、車両位置の測位には、自車に搭載された車速センサから逐次出力される信号から求めた走行距離も利用する構成としてもよい。
【0015】
図DB5は、案内用地図データと高精度地図データとを格納している。地図DB5は、例えば不揮発性メモリである。案内用地図データと高精度地図データとは、それぞれ別のメモリに格納される構成であってもよい。案内用地図データ及び高精度地図データは、広域通信部32を用いて自車の外部のセンタサーバから取得する構成としてもよい。自車が自動運転可能な自動運転車両でない場合には、地図DB5に高精度地図データを含まない構成としてもよい。
【0016】
案内用地図データは、経路案内を行うナビゲーション機能に用いられる地図データである。一例として、目的地までの推奨経路を探索し、その推奨経路の経路案内を行うのに用いられる。案内用地図データは、車両が走行する道路を、ノード及びリンク等によって表現したデータである。ノードは、地図上の各道路が交差,分岐,合流する点である。リンクは、ノード間を結ぶものである。リンクが道路区間を表す。リンクデータは、リンクを特定する固有番号、リンクの長さを示すリンク長、リンク方向、リンクの形状情報、リンクの始端と終端とのノード座標、及び道路属性の各データから構成される。道路属性としては、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、及び速度規制値等がある。一方、ノードデータは、地図上のノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノード種別、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種別等の各データから構成される。
【0017】
高精度地図データは、車両の走行制御に用いられる地図データである。高精度地図データは、案内用地図データよりも詳細な地図データである。高精度地図データには、例えば道路形状及び構造物の特徴点の点群からなる三次元地図等を含む。
【0018】
車両制御ECU6は、自車の加減速制御及び/又は操舵制御を行う電子制御装置である。車両制御ECU6としては、操舵ECU、パワーユニット制御ECU、及びブレーキECU等がある。操舵ECUは、操舵制御を行う。パワーユニット制御ECUは、加減速制御を行う。ブレーキECUは減速制御を行う。車両制御ECU6は、自車に搭載されたアクセルポジションセンサ,ブレーキストロークセンサ,舵角センサ,車速センサ等の各センサから出力される検出信号を取得し、電子制御スロットル,ブレーキアクチュエータ,EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力する。
【0019】
周辺監視センサ7は、歩行者,他車等の移動物体、及び路上の落下物等の静止物体といった自車周辺の物体を検出する。他にも、自車周辺の走行区画線等の路面標示を検出する。周辺監視センサ7は、例えば、自車周囲の所定範囲を撮像する周辺監視カメラ、自車周囲の所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、ソナー、LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等のセンサである。周辺監視カメラは、逐次撮像する撮像画像をセンシング情報として自動運転ECU8へ逐次出力する。周辺監視カメラとしては、複数台のカメラで自車の全周囲を撮像する構成としてもよい。ソナー、ミリ波レーダ、LIDAR等の探査波を送信するセンサは、障害物によって反射された反射波を受信した場合に得られる受信信号に基づく走査結果をセンシング情報として自動運転ECU8へ逐次出力する。周辺監視センサ7は、自車の周辺の環境状態を検出する。
【0020】
自動運転ECU8は、車両制御ECU6を制御することにより、運転者による運転操作の代行を行う自動運転機能を実行する。自動運転機能における自動運転の度合い(以下、自動化レベル)としては、例えばSAEが定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えばSAEの定義では、以下のようにレベル0~5に区分される。
【0021】
レベル0は、システムが介入せずに運転者が全ての運転タスクを実施するレベルである。運転タスクは、例えば操舵及び加減速とする。レベル0は、いわゆる手動運転に相当する。レベル1は、システムが操舵と加減速とのいずれかを支援するレベルである。レベル2は、システムが操舵と加減速とのいずれをも支援するレベルである。レベル1~2は、いわゆる運転支援に相当する。
【0022】
レベル3は、高速道路等の特定の場所ではシステムが全ての運転タスクを実施可能であり、緊急時に運転者が運転操作を行うレベルである。レベル3では、システムから運転交代の要求があった場合に、運転者が迅速に対応可能であることが求められる。レベル3は、いわゆる条件付き自動運転に相当する。レベル4は、対応不可能な道路,極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル4は、いわゆる高度自動運転に相当する。レベル5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル5は、いわゆる完全自動運転に相当する。レベル3~5は、いわゆる自動運転に相当する。
【0023】
実施形態1では、自車がレベル3以上の自動運転が可能な車両である場合を例に挙げて説明を行っている。自動化レベルは切り替え可能であってもよい。実施形態1では、自動化レベル3以上の自動運転と、レベル0の手動運転とに切り替え可能である場合を例に挙げて、以降の説明を行う。なお、自車がレベル3以上の自動運転が可能でない車両であってもよい。この場合には、自動運転ECU8で推奨経路を探索する代わりに、自車で用いられるナビゲーション装置で推奨経路を探索する構成とすればよい。
【0024】
自動運転ECU8は、ロケータ4から取得した自車の車両位置及び地図DB5から取得した高精度地図データ,周辺監視センサ7での検出結果から、自車の走行環境を認識する。一例としては、周辺監視センサ7での検出結果から、自車周辺の物体の形状及び移動状態を認識したり、自車周辺の標示の形状を認識したりする。そして、自車の車両位置及び高精度地図データと組み合わせることで、実際の走行環境を三次元で再現した仮想空間を生成する。
【0025】
また、自動運転ECU8は、認識した走行環境に基づき、自動運転機能によって自車を自動走行させるための走行計画を生成する。走行計画としては、長中期の走行計画と、短期の走行計画とが生成される。長中期の走行計画では、設定された目的地に自車を向かわせるための経路が生成される。この経路とは、複数のリンクを含む経路である。自動運転ECU8は、この経路を、ナビゲーション機能の経路探索と同様にして生成すればよい。この経路探索は、例えばダイクストラ法によるコスト計算によって行えばよい。ダイクストラ法によるコスト計算では、距離優先,時間優先等の探索条件を満たすリンクのリンクコストを小さく設定する。そして、リンクコストの値がより小さくなる経路を推奨経路として探索する。自動運転ECU8は、後述するHCU20から探索条件が送られてくる場合には、HCU20から送られてきた探索条件を満たす推奨経路を探索してHCU20に返信する。
【0026】
自動運転ECU8は、短期の走行計画では、生成した自車の周囲の仮想空間を用いて、長中期の走行計画に従った走行を実現するための予定走行軌跡が生成される。具体的に、車線変更のための操舵、速度調整のための加減速、及び障害物回避のための操舵及び制動等の実行を決定する。そして、自動運転ECU8は、生成した走行計画に従い、車両制御ECU6との連携によって自車の加減速制御及び/又は操舵制御を行うことにより、自動運転を行う。
【0027】
車両状態センサ9は、自車の走行状態,操作状態等の自車の状態を検出するためのセンサ群である。車両状態センサ9としては、自車の車速を検出する車速センサ,自車のステアリングの操舵角を検出する操舵センサ,自車のアクセルペダルの開度を検出するアクセルポジションセンサ,自車のブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキストロークセンサ等がある。車両状態センサ9は、検出結果を車内LANへ出力する。なお、車両状態センサ9での検出結果は、自車に搭載されるECUを介して車内LANへ出力される構成であってもよい。
【0028】
HMIシステム2は、HCU(Human Machine Interface Control Unit)20、室内カメラ21、生体センサ22、音声出力装置23、表示装置24、マイク25、操作デバイス26、及び状態改善装置27を備えている。HMIシステム2は、運転者からの入力操作を受け付ける。HMIシステム2は、自車の運転者を含む乗員の状態を監視する。HMIシステム2は、運転者に向けて情報を提示する。
【0029】
室内カメラ21は、自車の車室内の所定範囲を撮像する。なお、室内カメラ21として、自車の運転者をモニタリングするDSM(Driver Status Monitor)を用いる構成としてもよい。また、自車の助手席,後方座席を含む範囲を撮像するカメラも用いる構成としてもよい。室内カメラ21で撮像した画像の情報は、HCU20へ逐次出力すればよい。
【0030】
生体センサ22は、運転者の生体情報を計測し、計測した生体情報をHCU20へ逐次出力する。生体センサ22は、自車の一部に設ける構成とすればよい。生体センサ22は、運転者等の乗員が装着するウェアラブルデバイスに設けられる構成としてもよい。運転者が装着するウェアラブルデバイスに生体センサ22が設けられている場合には、近距離通信部31を介して生体センサ22での計測結果をHCU20が取得する構成とすればよい。
【0031】
生体センサ22としては、脈波を計測する脈波センサが挙げられる。脈波センサとしては、光電式脈波センサ,インピーダンス式脈波センサ等を用いればよい。脈波センサは、接触式のものであってもよいし、非接触式のものであってもよい。生体センサ22としては、体温を計測する体温センサが挙げられる。体温センサとしては、IRセンサ等を用いればよい。生体センサ22としては、呼気を計測する呼気センサが挙げられる。呼気センサとしては、ガスセンサ等を用いればよい。生体センサ22としては、体組成を計測する体組成センサが挙げられる。体組成センサとしては、体に微電流を流してその抵抗値から体脂肪率,筋肉量,体水分量を推定する体組成計を用いればよい。乗員の体に接触して計測することが必要な生体センサ22については、自車のステアリングホイール,運転席シート等に設ける構成とすればよい。
【0032】
なお、生体センサ22として、脈波,体温,呼気,体組成以外の生体情報を計測するものを用いる構成としてもよい。例えば、呼吸,脳波,心拍,心拍ゆらぎ,発汗,血圧,皮膚コンダクタンスを計測するものが挙げられる。
【0033】
音声出力装置23は、音声を出力することで情報の提示を行う。音声出力装置23は、HCU20の指示に従って音声を出力する。音声出力装置23としては、スピーカ等が挙げられる。表示装置24は、画像,テキストを表示することで情報の提示を行う。表示装置24は、HCU20の指示に従って画像,テキストを表示する。表示装置24は、自車の車室内に表示面が向くように設けられる。例えば、表示装置24は、自車の運転席正面に表示面が位置するように設けられる。表示装置24としては、CID(Center Information Display),ナビゲーション装置のディスプレイ,ヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)等を用いることができる。
【0034】
マイク25は、自車の乗員が発話した音声を集音し、電気的な音声信号に変換して、HCU20に出力する。マイク25は、運転者の音声を集音しやすいように、例えばステアリングコラムカバーの上面,運転席側のサンバイザー等に設けられる構成とすればよい。また、マイク25は、座席別の乗員の音声を区別して集音可能なように、座席ごとに設けられる構成としてもよい。この場合、座席ごとに設けられるマイク25としては、指向性が絞られたズームマイクを用いればよい。マイク25は、ユーザからの音声によるコマンドの入力を受け付けてもよい。
【0035】
操作デバイス26は、運転者からの操作入力を受け付ける。操作デバイス26としては、メカニカルなスイッチであってもよいし、表示装置24と一体となったタッチスイッチであってもよい。メカニカルなスイッチとしては、ステアリングのスポーク部に設けられたステアリングスイッチ等が挙げられる。マイク25及び操作デバイス26は、運転者からの入力を受け付ける入力装置と言い換えることもできる。
【0036】
状態改善装置27は、精神状態の悪化から精神状態を改善させる刺激を運転者に与える装置である。状態改善装置27は、自車に設けられる。精神状態の悪化の例としては、ストレス,イライラ,恐れ,悲嘆等が挙げられる。ストレスは緊張状態と言い換えることもできる。恐れは、不安と恐怖とに細分化してもよい。不安は、対象のない恐れの精神状態とすればよい。恐怖は対象のある恐れの精神状態とすればよい。本実施形態では、精神状態の悪化として、ストレスを対象とする場合を例に挙げて説明を行う。
【0037】
状態改善装置27は、ストレスを軽減する刺激を運転者に与える。例えば、状態改善装置27は、ストレスを軽減すると推定される匂い成分を噴出する装置とすればよい。この装置は、空調装置とアロマユニットとを組み合わせて実現すればよい。状態改善装置27は、運転者に温熱刺激を与えて血行を良くすることで凝りをほぐし、ストレスを緩和する装置としてもよい。この場合、運転席シートのシートバックに設けれられたヒータ,送風機によって実現すればよい。運転者の血行を良くするためには、運転者の首筋,肩を温めたり冷やしたりを繰り返す構成とすることが好ましい。状態改善装置27は、運転者の呼吸をリラックスできると推定される呼吸に誘導することでストレスを緩和する装置としてもよい。この場合、シートベルトでの締め付けによって深呼吸を誘導する構成とすればよい。他にも、状態改善装置27は、運転者がリラックスできると推定される発光によってストレスを緩和する装置としてもよい。発光はLED等で行えばよい。状態改善装置27は、運転者の好みの楽曲を演奏することでストレスを緩和する装置としてもよい。この場合、音声出力装置23を状態改善装置27として利用してもよい。
【0038】
状態改善装置27としては、ストレスを緩和すると推定される刺激を発生する装置であれば、上述した以外の構成としてもよい。なお、精神状態の悪化として、ストレス以外を対象とする場合であっても、状態改善装置27は、運転者をリラックスさせる刺激を与えることで、精神状態を改善する構成とすればよい。
【0039】
HCU20は、プロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるマイクロコンピュータを主体として構成され、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで運転者の精神状態の悪化からの改善に関する処理(以下、状態改善関連処理)等の各種の処理を実行する。このHCU20が車両用支援装置に相当する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non- transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。
【0040】
<HCU20の概略構成>
続いて、図2を用いて、HCU20の概略構成について説明を行う。HCU20は、状態改善関連処理に関して、図2に示すように、推定部201、探索指示部202、推奨経路決定部203、提示制御部204、音声認識部205、選択部206、及び刺激制御部207を機能ブロックとして備える。なお、HCU20が実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、HCU20が備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。コンピュータによってHCU20の各機能ブロックの処理が実行されることが、車両用支援方法が実行されることに相当する。
【0041】
推定部201は、車両の乗員の状態に関連する推定を行う。推定部201は、運転者状態推定部211、要因推定部212、及び同乗者状態推定部213をサブ機能ブロックとして備える。
【0042】
運転者状態推定部211は、自車の運転者の精神状態の悪化の度合いを推定する。本実施形態の例では、運転者状態推定部211は、運転者のストレスの度合いを推定する。運転者状態推定部211が精神関連状態推定部に相当する。この運転者状態推定部211での処理が精神関連状態推定工程に相当する。運転者状態推定部211は、ストレスの「あり」と「なし」との2段階の度合いを推定してもよいし、3段階以上の度合いを推定してもよい。
【0043】
運転者状態推定部211は、周辺監視センサ7のうちの周辺監視カメラで撮像した、乗車前の運転者の画像から、運転者のストレスの度合いを推定すればよい。例えば、画像中の運転者の姿勢,歩き方から運転者のストレスの度合いを推定すればよい。
【0044】
運転者状態推定部211は、室内カメラ21で撮像した運転者の画像から、運転者のストレスの度合いを推定してもよい。例えば、画像中の運転者の表情から運転者のストレスの度合いを推定すればよい。
【0045】
運転者状態推定部211は、生体センサ22のうちの脈波センサで計測した運転者の脈波をもとに、運転者のストレスの度合いを推定してもよい。この場合、運転者状態推定部211は、脈波の周波数分析から自律神経における交感神経優位の度合いを推定し、交感神経優位な度合いをストレスの度合いとして推定すればよい。
【0046】
運転者状態推定部211は、生体センサ22のうちの呼気センサで計測した運転者の呼気から、運転者のストレスの度合いを推定してもよい。この場合、ストレス判定物質であるコレチゾール分泌量を呼気から推定し、コレチゾール分泌量をストレスの度合いとして推定すればよい。
【0047】
運転者状態推定部211は、車両状態センサ9で検出する操作状態から、運転者のストレスの度合いを推定してもよい。この場合、急加速,急ブレーキ,急操舵等の頻度が高いほどストレスの度合いを高く推定すればよい。ここで言うところの「急」とは、単位時間あたりの変化量が閾値以上であることとすればよい。
【0048】
運転者状態推定部211は、マイク25で集音した運転者の音声から、運転者のストレスの度合いを推定してもよい。この場合、緊張時に人の音声の周波数が高くなることを利用して、運転者の音声からストレスの度合いを推定すればよい。他にも、発話の速度からストレスの度合いを推定してもよい。
【0049】
要因推定部212は、自車の運転者の精神状態の悪化の要因を推定する。本実施形態の例では、要因推定部212は、運転者のストレスの要因を推定する。要因推定部212も精神関連状態推定部に相当する。この要因推定部212での処理も精神関連状態推定工程に相当する。無駄な処理を抑制するために、要因推定部212は、運転者状態推定部211で推定したストレスの度合いが閾値以上の場合に限って、ストレスの要因を推定する構成とすることが好ましい。ここで言うところの閾値とは、ストレスの有無を区分する値とすればよい。
【0050】
要因推定部212は、自車の周辺環境,運転者の前後のスケジュール,運転者の身体状態,運転者の操作状態等の入力情報から、ストレスの要因を推定すればよい。上述した入力情報の一部のみからストレスの要因を推定してもよいし、複数種類の入力情報の組み合わせからストレスの要因を推定してもよい。一例としては、入力情報とストレスの要因とを予め対応付けた対応関係を参照してストレスの要因を推定すればよい。対応関係の一例としては、マップが挙げられる。また、上述の入力情報を入力とし、ストレスの要因を出力とする機械学習を行った学習器を用いて、入力情報からストレスの要因を推定してもよい。
【0051】
自車の周辺環境は、周辺監視センサ7で検出すればよい。周辺環境の一例としては、周辺の歩行者数,道路種別,道路幅員,渋滞度合い等が挙げられる。周辺の歩行者数が多いことは、運転操作の負荷が高くなるので、ストレスの要因になり得る。道路種別が高速道路であることは、手動運転時には運転操作の負荷が高くなるのでストレスの要因になり得る。道路幅員が狭いことは、運転操作の負荷が高くなるので、ストレスの要因になり得る。逆光は、眩しさがストレスの要因になり得る。渋滞度合いが大きいことも、ストレスの要因になり得る。
【0052】
運転者の前後のスケジュールは、運転者の携帯する携帯端末のスケジュールアプリケーションから、近距離通信部31を介して取得すればよい。前後のスケジュールの一例としては、直前直後の作業内容等が挙げられる。直前の仕事の作業内容がデスクワークであった場合、目の疲れによってストレスの要因になり得る。直前が仕事で直後が帰宅の場合、仕事終わりによる精神的な疲労の顕在化がストレスの要因になり得る。
【0053】
運転者の身体状態は、周辺監視センサ7,室内カメラ21,生体センサ22等で検出すればよい。身体状態の一例としては、肉体的な疲労,体の凝り等が挙げられる。身体状態が肉体的な疲労の場合、ストレスの要因になり得る。肉体的な疲労は、周辺監視センサ7のうちの周辺監視カメラで撮像した、乗車前の運転者の姿勢,歩き方から推定すればよい。他にも、室内カメラ21で撮像した運転者の表情から、肉体的な疲労を推定してもよい。身体状態が体の凝りの場合にも、ストレスの要因になり得る。体の凝りは、例えば体温センサで計測する肩,首筋等の温度の低下から推定すればよい。
【0054】
運転者の操作状態は、車両状態センサ9で検出すればよい。操作状態の一例としては、頻繁な加速,頻繁なブレーキ,頻繁な操舵等が挙げられる。ここで言うところの「頻繁」とは、単位時間あたりの発生回数が閾値以上であることとすればよい。操作状態が、頻繁な加速,頻繁なブレーキ,頻繁な操舵等の場合、これらの頻繁な運転操作による運転負荷がストレスの要因になり得る。
【0055】
同乗者状態推定部213は、自車の運転者以外の乗員(以下、同乗者)の状態を推定する。同乗者状態推定部213は、同乗者の疲労,睡眠,体調不良といった状態を推定すればよい。同乗者状態推定部213は、室内カメラ21で撮像した同乗者の画像から、同乗者の疲労,睡眠,体調不良を推定すればよい。例えば、画像中の同乗者の表情から同乗者の疲労,体調不良を推定すればよい。例えば、画像中の同乗者の開眼度から同乗者の睡眠を推定すればよい。同乗者状態推定部213は、シートに設けられた生体センサ22で計測した生体情報から、同乗者の体調不良を推定してもよい。なお、同乗者状態推定部213は、疲労,睡眠,体調不良以外の状態を推定する構成としてもよい。また、同乗者状態推定部213は、同乗者の種別も推定すればよい。同乗者状態推定部213は、室内カメラ21で撮像した同乗者の画像から、同乗者の種別を推定すればよい。同乗者の種別としては、老人,子供等を区別して推定すればよい。なお、同乗者状態推定部213は、性別等を区別して推定してもよい。
【0056】
探索指示部202は、要因推定部212で推定した精神状態の悪化の要因に応じた推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送る。本実施形態の例では、探索指示部202が、推定したストレスの要因に応じて、ストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件を決定する。そして、探索指示部202が、その探索条件で推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送る。探索条件の決定は、ストレスの要因別に、ストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件が予め対応付けられた対応関係を参照して行う構成とすればよい。対応関係の一例としては、マップが挙げられる。探索条件は、リンクコストを下げるリンクの条件と言い換えることもできる。
【0057】
探索指示部202は、周辺の歩行者数が多いことがストレスの要因と推定した場合には、歩行者数のより少ない経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、自動車専用道路のリンクを優先する探索条件を決定すればよい。他にも、施設,住宅から離れたリンクを優先する探索条件を決定してもよい。探索指示部202は、高速道路の走行がストレスの要因と推定した場合には、一般道路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、一般道路のリンクを優先する探索条件を決定すればよい。探索指示部202は、道路幅が狭いことがストレスの要因と推定した場合には、道路幅のより広い経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、道路幅のより広いリンクほど優先する探索条件を決定すればよい。探索指示部202は、渋滞がストレスの要因と推定した場合には、渋滞のより少ない経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、渋滞度合いのより低いリンクほど優先する探索条件を決定すればよい。
【0058】
探索指示部202は、直前のデスクワークによる目の疲れがストレスの要因と推定した場合に、目を休めやすいと推定される経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、森,海岸等の目の疲れを癒しやすいと推定されるポイントを経由するリンクほど優先する探索条件を決定すればよい。他にも、目を酷使せずに済むと推定されるリンクほど優先する探索条件を決定してもよい。目を酷使せずに済むと推定されるリンクとしては、速度規制値の低いリンク等が挙げられる。探索指示部202は、仕事終わりによる精神的な疲労の顕在化がストレスの要因の場合に、リラックスできると推定される場所,風景を経由する経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、森,海岸等のリラックスできると推定されるポイントを経由するリンクほど優先する探索条件を決定すればよい。他にも、運転者の好みの店舗を経由するリンクほど優先する探索条件を決定すればよい。運転者の好みの店舗は、近距離通信部31を介して取得する、運転者の携帯する携帯端末の検索履歴等から推定すればよい。
【0059】
探索指示部202は、肉体的な疲労がストレスの要因と推定した場合に、肉体的な疲労を軽減しやすいと推定される経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、レベル3以上の自動運転を継続できるリンクほど優先する探索条件を決定すればよい。他にも、サービスエリアを経由するリンクほど優先する探索条件を決定すればよい。探索指示部202は、体の凝りがストレスの要因と推定した場合に、公衆浴場を経由するリンクほど優先する探索条件を決定すればよい。
【0060】
また、探索指示部202は、ストレスの要因を入力とし、ストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件を出力とする機械学習を行った学習器を用いて、推定したストレスの要因から探索条件を決定してもよい。この機械学習では、運転者状態推定部211で推定する運転者のストレスの度合いが実際に低下した際の事象を逐次学習していくことが好ましい。例えば、特定の店舗に立ち寄った場合にストレスが緩和された場合には、その店舗及びその店舗に類似する種別の店舗を経由する経路が優先的に探索される探索条件を出力するように学習すればよい。他にも、特定の風景が見られる場所を通過した場合にストレスが緩和された場合には、その場所及びその場所と同様の風景が見られる場所を経由する経路が優先的に探索される探索条件を出力するように学習すればよい。機械学習は、時間帯,渋滞度合い等の環境といった他の要素も入力に追加することで、さらに精度良く、ストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件が決定されるようにしてもよい。この場合、探索指示部202は、推定したストレスの要因に加え、時間帯,環境といった要素も入力として、学習器で探索条件を決定することになる。
【0061】
探索指示部202は、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送ることが好ましい。一例として、探索指示部202が、推定した同乗者の状態に応じて探索条件を決定する。そして、探索指示部202が、その探索条件で推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送る。探索条件の決定は、同乗者の状態別に探索条件が予め対応付けられた対応関係を参照して行う構成とすればよい。対応関係の一例としては、マップが挙げられる。例えば、探索指示部202は、同乗者の状態が体調不良と推定した場合に、カーブ路の少ない経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、直線路のリンクを優先する探索条件を決定すればよい。これによれば、同乗者の状態の悪化を防ぐ推奨経路を提案することが可能になる。
【0062】
探索指示部202は、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の種別及び状態に応じた推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送ることがより好ましい。この場合、探索条件の決定は、同乗者の種別及び状態の組み合わせ別に探索条件が予め対応付けられた対応関係を参照して行う構成とすればよい。対応関係の一例としては、マップが挙げられる。例えば、探索指示部202は、同乗者の種別が老人であって、同乗者の状態が疲労と推定した場合に、自車の窓を開けられる空気のきれいな経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、森,公園,海沿い等を経由するリンクを優先する探索条件を決定すればよい。地図データに空気がきれいなエリアの情報が付与されている場合には、この情報を利用して空気がきれいなエリアのリンクを優先する探索条件を決定してもよい。また、探索指示部202は、同乗者の種別が子供であって、同乗者の状態が睡眠と推定した場合に、遠回りする経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。例えば、リンク長の長いリンクを優先する探索条件を決定すればよい。これによれば、同乗者の種別及び状態の組み合わせに応じた望ましい経路を提案することが可能になる。
【0063】
上述した同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示を行う処理は、自車に同乗者が存在せず、同乗者状態推定部213で同乗者の種別及び状態が推定できない場合には実行しない。探索指示部202は、運転者状態推定部211で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値以上の場合に、同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示を行わず、運転者のストレスの要因に応じた推奨経路を探索させる指示を行う構成とすることが好ましい。一方、探索指示部202は、運転者状態推定部211で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値未満の場合に、運転者のストレスの要因に応じた推奨経路を探索させる指示を行わず、同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示を行う構成とすることが好ましい。ここで言うところの所定の閾値とは、ストレスの有無を区分する値とすればよい。これによれば、運転者にストレスがある場合には、このストレスを緩和すると推定される経路を提案して運転への影響を抑えつつ、運転者にストレスがなく運転への影響が小さい場合には、同乗者の状態に応じた望ましい経路を提案して同乗者にとって快適な走行を可能にする。
【0064】
なお、運転者のストレスの要因に応じた推奨経路を探索させる指示と、同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示との両方を行うことで、両方を満たす推奨経路を自動運転ECU8で探索させる構成としてもよい。この場合、探索指示部202は、運転者状態推定部211で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値以上の場合に、同乗者の状態に応じた推奨経路を優先的に探索させる探索条件(以下、同乗者考慮探索条件)よりも運転者のストレスの要因に応じた推奨経路を優先的に探索させる探索条件(以下、運転者考慮探索条件)の優先度を高くした指示を行ってもよい。具体的には、同乗者考慮探索条件よりも運転者考慮探索条件のリンクコストの下げ幅を大きくする指示を行えばよい。また、探索指示部202は、運転者状態推定部211で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値未満の場合に、運転者考慮探索条件よりも同乗者考慮探索条件の優先度を高くした指示を行ってもよい。具体的には、運転者考慮探索条件よりも同乗者考慮探索条件のリンクコストの下げ幅を大きくする指示を行えばよい。
【0065】
自動運転ECU8では、探索指示部202から送られてきた探索条件を満たす推奨経路を探索してHCU20に返信する。つまり、自動運転ECU8は、要因推定部212で推定した精神状態の悪化の要因に応じた推奨経路を探索する。また、自動運転ECU8は、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の種別及び状態のうちの少なくとも状態に応じた推奨経路も探索する。この場合、自動運転ECU8は、時間,距離に優先して、探索指示部202から送られてきた探索条件を満たす推奨経路を探索すればよい。自動運転ECU8は、ロケータ4で測位する現在の車両位置を出発地として推奨経路を探索すればよい。自動運転ECU8は、操作デバイス26等での入力によって設定された地点を目的地として推奨経路を探索すればよい。自動運転ECU8では、運転者考慮探索条件と同乗者考慮探索条件との一方の探索条件のリンクコストの下げ幅を大きくする指示を受けた場合には、その一方の探索条件のリンクコストをより小さく設定すればよい。自動運転ECU8は、リンクコストの値がより小さくなる複数の経路を推奨経路として探索すればよい。そして、探索した推奨経路をHCU20に返信する。自動運転ECU8で探索される推奨経路は、複数のリンクを含む推奨経路である。
【0066】
推奨経路決定部203は、探索指示部202の指示に従って自動運転ECU8で探索された推奨経路を、推奨経路として決定する。つまり、推奨経路決定部203は、要因推定部212で推定した精神状態の悪化の要因に応じた推奨経路を決定することになる。また、推奨経路決定部203は、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の種別及び状態のうちの少なくとも状態にも応じて、推奨経路の決定を行わせることになる。この推奨経路決定部203での処理が推奨経路決定工程に相当する。
【0067】
探索指示部202において、運転者状態推定部211で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値以上の場合に、同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示を行わず、運転者のストレスの要因に応じた推奨経路を探索させる指示を行う構成とした場合には、以下のようになる。推奨経路決定部203は、運転者状態推定部211で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値以上の場合には、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の状態よりも、要因推定部212で推定したストレスの要因に優先して応じた推奨経路を決定することになる。一方、推奨経路決定部203は、運転者状態推定部211で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値未満の場合には、要因推定部212で推定したストレスの要因よりも、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の状態に優先して応じた推奨経路を決定することになる。
【0068】
提示制御部204は、推奨経路決定部203で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる。この提示制御部204での処理が提示制御工程に相当する。提示制御部204は、表示装置24に推奨経路を表示させることで推奨経路を運転者に設けて提示させればよい。一例としては、地図上に推奨経路を区別可能に表示させればよい。推奨経路が複数決定されている場合には、複数の推奨経路を表示させればよい。他にも、提示制御部204は、推奨経路の目的地までの経由地を推奨経路別に表示装置24にテキスト表示させることで推奨経路を提示させてもよい。
【0069】
提示制御部204は、経路案内を実施中であった場合には、推奨経路に加え、経路案内中の経路も提示してもよい。この場合、経路案内中の経路であることを区別可能に提示することが好ましい。ここで言うところの経路案内中の経路とは、運転者の精神状態の悪化の度合いもその要因も考慮せずに探索した推奨経路である。この経路を以降では、状態非考慮経路と呼ぶ。提示制御部204は、推奨経路を提示する場合に、推奨経路の案内の要否を問い合わせる提示も行わせることが好ましい。
【0070】
また、提示制御部204は、推奨経路決定部203で決定した推奨経路の経路案内も行わせることが可能とする。経路案内については、推奨経路に沿った走行を行うためのガイダンスを表示装置24に表示させたり音声出力装置23から音声出力させたりすることで行わせればよい。
【0071】
音声認識部205は、マイク25が集音した音声に対して音声認識を実施し、乗員の発話内容を認識する。選択部206は、推奨経路決定部203で決定した推奨経路の案内の要否を、運転者からマイク25若しくは操作デバイス26で受け付けた入力に応じて選択する。選択部206は、推奨経路の案内を必要とする旨の入力をマイク25若しくは操作デバイス26で受け付けた場合に、その推奨経路の案内が必要と選択する。複数の推奨経路が提示される構成の場合には、そのうちの1つの推奨経路の案内を必要とする旨の入力を受け付け、その推奨経路の案内が必要と選択する。一方、選択部206は、推奨経路の案内を不要とする旨の入力をマイク25若しくは操作デバイス26で受け付けた場合に、推奨経路の案内が不要と選択する。選択部206は、推奨経路の提示若しくは推奨経路の案内の要否を問い合わせる提示から一定時間内に推奨経路の案内を必要とする旨の入力を受け付けなかった場合に、推奨経路の案内が不要と選択してもよい。推奨経路の案内の要否に関する入力をマイク25で受け付けたか否かは、音声認識部205での音声認識の結果から選択部206が判断すればよい。
【0072】
刺激制御部207は、状態改善装置27の動作を制御する。刺激制御部207は、選択部206で推奨経路の案内が不要と選択した場合には、状態改善装置27の動作を自動で開始させることが好ましい。一方、刺激制御部207は、選択部206で推奨経路の案内が必要と選択した場合には、状態改善装置27の動作を自動では開始させない構成とすればよい。刺激制御部207は、選択部206で推奨経路の案内が必要と選択した場合であっても、状態改善装置27の動作を開始させることを指示する旨の入力をマイク25若しくは操作デバイス26で受け付けた場合には、状態改善装置27の動作を開始させればよい。
【0073】
提示制御部204は、選択部206で推奨経路の案内が不要と選択した場合には、推奨経路の案内を行わせない。状態非考慮経路の経路案内を実施中であった場合には、状態非考慮経路の経路案内を継続させる。経路案内を実施中でなかった場合には、経路案内を実施中でない状態を継続させる。一方、提示制御部204は、選択部206で推奨経路の案内が必要と選択した場合には、その推奨経路の案内を行わせる。
【0074】
<HCU20での状態改善関連処理>
ここで、図3のフローチャートを用いて、HCU20での状態改善関連処理の流れの一例について説明する。図3のフローチャートは、例えば、自車の内燃機関又はモータジェネレータを始動させるためのスイッチ(以下、パワースイッチ)がオンになった場合に開始される構成とすればよい。他にも、運転者の状態を周辺監視カメラで撮像した画像から推定する構成を採用する場合には、駐車中の自車に運転者が接近した場合に開始する構成とすればよい。自車への運転者の接近は、運転者が携帯する電子キーと自車側とでやり取りする電波の強度等からHCU20で推定すればよい。
【0075】
まず、ステップS1では、推定部201が、自車の乗員の状態に関連する推定を行う。S1では、運転者状態推定部211が運転者のストレスの度合いを推定する。S1では、同乗者状態推定部213が同乗者の状態を推定する。
【0076】
ステップS2では、S1で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値以上であった場合(S2でYES)には、ステップS3に移る。一方、S1で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値未満であった場合(S2でNO)には、ステップS5に移る。
【0077】
ステップS3では、要因推定部212が、運転者のストレスの要因を推定する。ステップS4では、探索指示部202が、S3で推定したストレスの要因に応じた、ストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件を決定し、ステップS7に移る。
【0078】
ステップS5では、自車に同乗者がある場合(S5でYES)には、ステップS6に移る。一方、自車に同乗者がない場合(S5でNO)には、ステップS14に移る。自車の同乗者があるか否かは、同乗者状態推定部213が、同乗者の種別及び状態が推定できるか否かによって判定すればよい。ステップS6では、探索指示部202が、S1で推定できた同乗者の種別及び状態のうちの少なくとも状態に応じた探索条件を決定し、ステップS7に移る。
【0079】
ステップS7では、探索指示部202が、S4若しくはS6で決定した探索条件で推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送る。ステップS8では、推奨経路決定部203が、S7で送った探索条件に従って自動運転ECU8で探索された推奨経路を取得する。そして、取得した推奨経路を、推奨経路決定部203が推奨経路として決定する。ステップS9では、提示制御部204が、S8で決定した推奨経路の提示を運転者に向けて行わせる。
【0080】
ステップS10では、選択部206が推奨経路の案内が必要と選択した場合(S10でYES)には、ステップS11に移る。一方、選択部206が推奨経路の案内が不要と選択した場合(S10でNO)には、ステップS12に移る。ステップS11では、提示制御部204が、選択部206で案内が必要と選択した推奨経路の案内を行わせ、ステップS13に移る。S11では、刺激制御部207が、状態改善装置27の動作を自動では開始させない。一方、ステップS12では、刺激制御部207が、状態改善装置27の動作を自動で開始させ、ステップS13に移る。S12では、提示制御部204は、S8で決定した推奨経路の案内を行わせない。
【0081】
ステップS13では、S9で推奨経路の提示を行わせてから一定時間経過した場合(S13でYES)には、ステップS14に移る。一方、S9で推奨経路の提示を行わせてから一定時間経過していない場合(S13でNO)には、S13の処理を繰り返す。ここで言うところの一定時間とは、任意に設定可能である。一例としては、フローの繰り返しによる推奨経路の提示の頻度が運転者にとって煩わしくならないと推定される頻度となるような時間を設定すればよい。また、時間の代わりに走行距離を用いる構成としてもよい。
【0082】
ステップS14では、状態改善関連処理の終了タイミングであった場合(S14でYES)には、状態改善関連処理を終了する。一方、状態改善関連処理の終了タイミングでなかった場合(S14でNO)には、S1に戻って処理を繰り返す。状態改善関連処理の終了タイミングの一例としては、パワースイッチがオフになったこと等が挙げられる。
【0083】
<実施形態1のまとめ>
実施形態1の構成によれば、単なるストレスの有無よりも詳細な、ストレスの要因に応じた、そのストレスを改善する経路を運転者に提示することが可能になる。詳しくは、以下の通りである。運転者がストレスを感じている状態であっても、ストレスの要因によってはストレスの緩和に効果的な経路が異なる場合がある。例えば、デスクワークでの目の疲れが要因のストレスは、渋滞の少ない推奨経路の走行によって緩和されることもあるが、目を休めやすいと推定される推奨経路の走行の方が、より緩和されやすいと考えられる。このように、ストレスの要因に応じて、そのストレスを緩和すると推定される推奨経路を提案し、その推奨経路の案内を可能にすることで、より精度良くストレスを緩和することが可能になる。その結果、車両の運転者の精神状態が悪化した場合に、その精神状態をより精度良く改善することが可能になる。
【0084】
また、実施形態1の構成によれば、ストレスの要因に応じた推奨経路の案内を運転者が望まない場合であっても、状態改善装置27の動作を自動で開始させることで、ストレスを緩和することが可能になる。
【0085】
実施形態1では、精神状態の悪化がストレスである場合を例に挙げて説明したが、ストレス以外の精神状態の悪化についても、精神状態の悪化の要因に応じた推奨経路を提示することで、より精度良くその精神状態の悪化から改善する構成とすればよい。
【0086】
(実施形態2)
実施形態1では、精神状態の悪化の内容に応じた推奨経路を提案する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた推奨経路を提案する構成(以下、実施形態2)としてもよい。以下では、実施形態2の一例について図を用いて説明する。実施形態2の運転支援システム1は、HCU20の代わりにHCU20aを含む点を除けば、実施形態1の運転支援システム1と同様である。
【0087】
<HCU20aの概略構成>
ここで、図4を用いてHCU20aの概略構成についての説明を行う。HCU20aは、状態改善関連処理に関して、図4に示すように、推定部201a、探索指示部202a、推奨経路決定部203、提示制御部204、音声認識部205、選択部206、及び刺激制御部207を機能ブロックとして備える。HCU20aは、推定部201及び探索指示部202の代わりに推定部201a及び探索指示部202aを備える点を除けば、実施形態1のHCU20と同様である。このHCU20aも車両用支援装置に相当する。また、コンピュータによってHCU20aの各機能ブロックの処理が実行されることが、車両用支援方法が実行されることに相当する。
【0088】
推定部201aは、運転者状態推定部211a及び同乗者状態推定部213をサブ機能ブロックとして備える。推定部201aは、運転者状態推定部211の代わりに運転者状態推定部211aを備える点と、要因推定部212を備えない点とを除けば、実施形態1の推定部201と同様である。
【0089】
運転者状態推定部211aは、自車の運転者の精神状態の悪化の3段階以上の度合いを推定する。運転者状態推定部211aは、精神状態の悪化の3段階以上の度合いを推定する構成に限られる点を除けば、実施形態1の運転者状態推定部211と同様である。本実施形態の例でも、運転者状態推定部211aは、運転者のストレスの度合いを推定するものとして説明する。運転者状態推定部211aも精神関連状態推定部に相当する。この運転者状態推定部211aでの処理も精神関連状態推定工程に相当する。
【0090】
探索指示部202aは、運転者状態推定部211aで推定した精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送る。本実施形態の例では、探索指示部202aが、推定したストレスの3段階以上の度合いに応じて、ストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件(以下、緩和探索条件)を決定する。そして、探索指示部202aが、その探索条件で推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送る。
【0091】
探索指示部202aは、運転者状態推定部211aで推定した運転者の精神状態の悪化の度合いが大きくなるのに応じて、より多くの種類の緩和探索条件を決定すればよい。緩和対策条件としては、例えば以下が挙げられる。
【0092】
緩和探索条件の種類の1つとして、渋滞のより少ない経路が優先的に探索される探索条件が挙げられる。この探索条件は、例えば渋滞度合いのより低いリンクほど優先する探索条件とすればよい。これは、渋滞が少ない方が、ストレスが緩和されると推定されるためである。緩和探索条件の種類の1つとして、歩行者数の少ない経路が優先的に探索される探索条件が挙げられる。この探索条件は、例えば自動車専用道路のリンクを優先する探索条件とすればよい。これは、周辺の歩行者が少ない方が、歩行者の飛び出しに注意を向けずに済み、ストレスが緩和されると推定されるためである。緩和探索条件の種類の1つとして、速度規制値の低い経路が優先的に探索される探索条件が挙げられる。この探索条件は、例えば速度規制値のより低いリンクを優先する探索条件とすればよい。これは、低速で走行することが可能な方が、ゆったりと走行でき、ストレスが緩和されると推定されるためである。
【0093】
緩和探索条件の種類の1つとして、サービスエリアを経由する経路が優先的に探索される探索条件が挙げられる。この探索条件は、例えばサービスエリアのリンクを優先する探索条件とすればよい。これは、サービスエリアで休憩することでストレスが緩和されると推定されるためである。緩和探索条件の種類の1つとして、レベル3以上の自動運転を継続できる経路が優先的に探索される探索条件が挙げられる。この探索条件は、レベル3以上の自動運転を継続できるリンクを優先する探索条件とすればよい。これは、運転から解放されることでストレスが緩和されると推定されるためである。緩和探索条件の種類の1つとして、リラックスできると推定される場所,風景を経由する経路が優先的に探索される探索条件が挙げられる。この探索条件は、例えば、森,海岸等のリラックスできると推定されるポイントを経由するリンクほど優先する探索条件とすればよい。緩和探索条件の種類の1つとして、運転者の好みの店舗を経由する経路が優先的に探索される探索条件が挙げられる。この探索条件は、例えば、運転者の好みの店舗を経由するリンクほど優先する探索条件とすればよい。運転者の好みの店舗は、近距離通信部31を介して取得する、運転者の携帯する携帯端末の検索履歴等から推定すればよい。
【0094】
探索指示部202aは、推定した運転者のストレスの度合いが大きくなるのに応じて、より多くの種類の緩和探索条件を決定し、決定した緩和探索条件で推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送ればよい。例えば、ストレスの度合いが1段階大きくなるのに応じて、緩和探索条件として組み合わせる探索条件を1種類ずつ増やしていく等すればよい。ストレスの度合いに応じた緩和探索条件の組み合わせは、予め設定した固定の組み合わせでもよいし、機械学習によって学習した組み合わせとしてもよい。緩和探索条件の組み合わせの学習については、例えばストレスの度合い別に、緩和探索条件の組み合わせをランダムに変更しながら、運転者状態推定部211aで推定されるストレスの度合いの緩和の効果が高い組み合わせを学習すればよい。
【0095】
また、探索指示部202aは、ストレスの度合いを入力とし、ストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件を出力とする機械学習を行った学習器を用いて、推定したストレスの度合いから探索条件の組み合わせを決定してもよい。この機械学習では、実施形態1で述べたのと同様にして、運転者状態推定部211aで推定する運転者のストレスの度合いが実際に低下した際の事象を逐次学習していくことが好ましい。
【0096】
探索指示部202aは、実施形態1で述べたのと同様にして、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送ることが好ましい。つまり、探索指示部202aは、実施形態1で述べたのと同様に、運転者状態推定部211aで推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値以上の場合に、同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示を行わず、運転者のストレスの要因に応じた推奨経路を探索させる指示を行う構成とすることが好ましい。一方、探索指示部202aは、運転者状態推定部211aで推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値未満の場合に、運転者のストレスの要因に応じた推奨経路を探索させる指示を行わず、同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示を行う構成とすることが好ましい。また、実施形態1で述べたのと同様にして、運転者のストレスの要因に応じた推奨経路を探索させる指示と、同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示との両方を行うことで、両方を満たす推奨経路を自動運転ECU8で探索させる構成としてもよい。
【0097】
自動運転ECU8では、実施形態1で述べたのと同様にして、探索指示部202aから送られてきた探索条件を満たす推奨経路を探索してHCU20に返信する。つまり、自動運転ECU8は、運転者状態推定部211aで推定した精神状態の悪化の度合いに応じた推奨経路を探索する。また、自動運転ECU8は、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の種別及び状態のうちの少なくとも状態に応じた推奨経路も探索する。この場合、自動運転ECU8は、時間,距離に優先して、探索指示部202から送られてきた探索条件を満たす推奨経路を探索すればよい。
【0098】
推奨経路決定部203は、探索指示部202aの指示に従って自動運転ECU8で探索された推奨経路を、推奨経路として決定する。つまり、推奨経路決定部203は、運転者状態推定部211aで推定した精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた推奨経路を決定することになる。推奨経路決定部203は、運転者状態推定部211aで推定した運転者の精神状態の悪化の度合いが大きくなるのに応じて、より多くの種類の緩和探索条件を満たす経路を推奨経路として決定することになる。
【0099】
<HCU20aでの状態改善関連処理>
ここで、図5のフローチャートを用いて、HCU20aでの状態改善関連処理の流れの一例について説明する。図5のフローチャートも図3のフローチャートと同様にして開始される構成とすればよい。
【0100】
まず、ステップS21では、推定部201aが、自車の乗員の状態に関連する推定を行う。S21では、運転者状態推定部211aが運転者の3段階以上のストレスの度合いを推定する。S21では、同乗者状態推定部213が同乗者の状態を推定する。
【0101】
ステップS22では、S2と同様にして、S21で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値以上であった場合(S22でYES)には、ステップS23に移る。一方、S21で推定した運転者のストレスの度合いが所定の閾値未満であった場合(S22でNO)には、ステップS24に移る。
【0102】
ステップS23では、探索指示部202aが、S21で推定したストレスの度合いに応じた、ストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件を決定し、ステップS26に移る。S23では、ストレスの度合いが高くなるのに応じて、決定される探索条件の種類を増やせばよい。
【0103】
ステップS24では、S5と同様にして、自車に同乗者がある場合(S24でYES)には、ステップS25に移る。一方、自車に同乗者がない場合(S24でNO)には、ステップS33に移る。ステップS25では、探索指示部202aが、S21で推定できた同乗者の種別及び状態のうちの少なくとも状態に応じた探索条件を決定し、ステップS26に移る。
【0104】
ステップS26では、探索指示部202aが、S23若しくはS25で決定した探索条件で推奨経路を探索させる指示を自動運転ECU8に送る。ステップS27~ステップS32までの処理は、S8~S13までの処理と同様にして行う。ステップS33では、状態改善関連処理の終了タイミングであった場合(S33でYES)には、状態改善関連処理を終了する。一方、状態改善関連処理の終了タイミングでなかった場合(S33でNO)には、S21に戻って処理を繰り返す。
【0105】
<実施形態2のまとめ>
実施形態2の構成によれば、単なるストレスの有無よりも詳細な、ストレスの3段階以上の度合いに応じた、そのストレスを改善する経路を運転者に提示することが可能になる。詳しくは、以下の通りである。運転者がストレスを感じている場合であっても、ストレスの高さによってストレスの緩和に効果的な経路が異なる場合がある。これに対して、実施形態2の構成によれば、ストレスの3段階以上の高さに応じて、そのストレスを緩和すると推定される推奨経路を提案する。よって、より精度良くストレスを緩和することが可能になる。その結果、車両の運転者の精神状態が悪化した場合に、その精神状態をより精度良く改善することが可能になる。
【0106】
また、実施形態2の構成によれば、運転者のストレスの度合いが大きくなるのに応じて、より多くの種類の緩和探索条件を満たす経路を推奨経路として決定して提案することになる。これによれば、運転者のストレスが高いほど複数の要因がストレスの原因となっている場合に、より精度良くストレスを緩和できる可能性が高まる。
【0107】
また、実施形態2の構成でも、ストレスの要因に応じた推奨経路の案内を運転者が望まない場合であっても、状態改善装置27の動作を自動で開始させることで、ストレスを緩和することが可能になる。
【0108】
実施形態2でも、精神状態の悪化がストレスである場合を例に挙げて説明したが、ストレス以外の精神状態の悪化についても、精神状態の悪化の3段階以上の度合いに応じた推奨経路を提示することで、より精度良くその精神状態の悪化から改善する構成とすればよい。
【0109】
(実施形態3)
また、以下の実施形態3のような構成としてもよい。以下では、実施形態3の一例について図を用いて説明する。実施形態3の運転支援システム1は、HCU20の代わりにHCU20bを含む点を除けば、実施形態1の運転支援システム1と同様である。
【0110】
<HCU20bの概略構成>
ここで、図6を用いてHCU20bの概略構成についての説明を行う。HCU20bは、状態改善関連処理に関して、図6に示すように、推定部201b、探索指示部202b、推奨経路決定部203、提示制御部204、音声認識部205、選択部206、及び刺激制御部207を機能ブロックとして備える。HCU20bは、推定部201及び探索指示部202の代わりに推定部201b及び探索指示部202bを備える点を除けば、実施形態1のHCU20と同様である。このHCU20bも車両用支援装置に相当する。また、コンピュータによってHCU20bの各機能ブロックの処理が実行されることが、車両用支援方法が実行されることに相当する。
【0111】
推定部201bは、運転者状態推定部211、要因推定部212、及び同乗者状態推定部213bをサブ機能ブロックとして備える。推定部201bは同乗者状態推定部213の代わりに同乗者状態推定部213bを備える点を除けば、実施形態1の推定部201と同様である。本実施形態の例でも、運転者状態推定部211は、運転者のストレスの度合いを推定するものとして説明する。
【0112】
同乗者状態推定部213bは、同乗者の種別及び状態を推定する。同乗者状態推定部213bは、同乗者の種別及び状態を推定する構成に限られる点を除けば、実施形態1の同乗者状態推定部213と同様である。
【0113】
探索指示部202bは、同乗者状態推定部213で推定した同乗者の状態に応じた推奨経路を探索させる指示も自動運転ECU8に送ることが可能となっている。探索指示部202bは、どの乗員を優先して探索条件を決定するかが異なる点を除けば、実施形態1の探索指示部202と同様である。
【0114】
探索指示部202bは、同乗者状態推定部213bで推定した同乗者の種別に応じて、要因推定部212で推定した運転者のストレスの要因、及び同乗者状態推定部213bで推定した同乗者の状態のうちのいずれに優先して応じた推奨経路の探索条件を決定するかを切り替える。なお、優先する対象となる同乗者の状態は、同乗者の種別ごとに予め設定されている構成とすればよい。例えば、老人であれば、疲労が優先する対象となる状態とすればよい。子供であれば、睡眠が優先する対象となる状態とすればよい。
【0115】
探索指示部202bは、一例として、子供>老人>運転者の順に優先する構成とすればよい。例えば、運転者状態推定部211で運転者の閾値以上のストレスの度合いを推定し、同乗者状態推定部213bで老人の疲労を推定し、且つ、同乗者状態推定部213bで子供の睡眠を推定した場合には、子供の睡眠に応じた推奨経路を優先的に探索する探索条件を決定すればよい。例えば、遠回りする経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。また、運転者状態推定部211で運転者の閾値以上のストレスの度合いを推定し、同乗者状態推定部213bで老人の疲労を推定し、且つ、同乗者状態推定部213bで子供の睡眠を推定していない場合には、老人の疲労に応じた推奨経路を優先的に探索する探索条件を決定すればよい。例えば、自車の窓を開けられる空気のきれいな経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。運転者状態推定部211で運転者の閾値以上のストレスの度合いを推定し、同乗者状態推定部213bで老人の疲労を推定しておらず、且つ、同乗者状態推定部213bで子供の睡眠を推定していない場合には、運転者のストレスの緩和に効果があると推定される経路が優先的に探索される探索条件を決定すればよい。
【0116】
推奨経路決定部203は、探索指示部202bの指示に従って自動運転ECU8で探索された推奨経路を、推奨経路として決定する。つまり、同乗者状態推定部213bで推定した同乗者の種別に応じて、要因推定部212で推定した運転者のストレスの要因、及び同乗者状態推定部213bで推定した同乗者の状態のうちのいずれに優先して応じた推奨経路を決定するかを切り替える。
【0117】
以上の構成によれば、優先すべき乗員の状態に応じた推奨経路を優先して提案することが可能になる。なお、実施形態3の構成は、実施形態1の構成でなく実施形態2の構成と組み合わせてもよい。
【0118】
(実施形態4)
実施形態3では、同乗者の種別に応じて、どの乗員に優先して応じた推奨経路を決定するか切り替える構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、どの乗員に優先して応じた推奨経路を決定するかを、運転者からマイク25若しくは操作デバイス26で受け付けた入力に応じて切り替える構成としてもよい。これによれば、運転者がどの乗員に優先して応じた推奨経路を決定するかを選択可能となる。
【0119】
(実施形態5)
前述の実施形態では、同乗者の状態にも応じた推奨経路を提案する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、同乗者の状態に応じた推奨経路を提案しない構成としてもよい。この場合、推定部201,201a,201bに同乗者状態推定部213,213bを備えない構成とすればよい。
【0120】
(実施形態6)
前述の実施形態では、探索指示部202,202a,202bが自動運転ECU8に指示を行って推奨経路を探索させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、HCU20,20a,20bに推奨経路を探索する機能ブロックを備え、HCU20,20a,20b側で推奨経路を探索する構成としてもよい。この場合、推奨経路決定部203が推奨経路を探索することで推奨経路を決定する構成とすればよい。探索指示部202,202a,202bは、この推奨経路決定部203に探索条件を送って推奨経路を探索させればよい。他にも、探索指示部202,202a,202bをHCU20,20a,20bに備えず、探索指示部202,202a,202bの機能と推奨経路を探索する機能とを推奨経路決定部203が有する構成としてもよい。
【0121】
(実施形態7)
前述の実施形態では、選択部206で推奨経路の案内が不要と選択した場合に、状態改善装置27の動作を自動で開始させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、選択部206で推奨経路の案内が不要と選択した場合であっても、状態改善装置27の動作を自動で開始させない構成としてもよい。また、自車に状態改善装置27が設けられず、HCU20,20a,20bに刺激制御部207が備えられない構成としてもよい。
【0122】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 運転支援システム、20,20a,20b HCU(車両用支援装置)、25 マイク(入力装置)、26 操作デバイス(入力装置)、27 状態改善装置、202,202a,202b 探索指示部、203 推奨経路決定部、204 提示制御部、206 選択部、207 刺激制御部、211,211a 運転者状態推定部(精神関連状態推定部)、212 要因推定部(精神関連状態推定部)、213,213b 同乗者状態推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6