(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/20 20160101AFI20240220BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20240220BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240220BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20240220BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240220BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240220BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240220BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20240220BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240220BHJP
【FI】
B60W20/20
B60K6/24 ZHV
B60K6/48
B60K6/54
B60W10/08 900
B60L50/16
B60L50/61
B60L7/14
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2020204855
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 怜
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097740(JP,A)
【文献】特許第6156050(JP,B2)
【文献】特開平11-229916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/20
B60K 6/24
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 10/08
B60L 50/16
B60L 50/61
B60L 7/14
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
電力を蓄えるバッテリと、
前記バッテリに蓄えられている電力を消費することにより前記車両の動力を発生させるモータジェネレータと、
燃料を消費することにより前記車両の動力を発生させるエンジンと、
前記モータジェネレータの動力を用いて走行する第1モードと前記エンジンの動力を用いて走行する第2モードとのいずれかに切換える制御装置とを備え、
前記モータジェネレータは、前記第2モードに切換えられた走行において電力を生成し後に該電力を前記バッテリに蓄えることが可能であり、
前記制御装置は、
前記第1モードでの走行の要求が発生した場合に、過去の前記第1モードでの1回の走行で消費された電力に基づく消費電力を取得し、
前記消費電力を前記第2モードで前記モータジェネレータが生成するために必要な燃料に基づく電力コストを算出し、
前記電力コストと基準コストとの比較に基づいて前記第1モードで走行するか否かを決定する、車両。
【請求項2】
前記バッテリは、
前記車両の減速回生により生成された第1電力と、
前記第2モードの走行において生成された第2電力とを蓄え、
前記モータジェネレータは、前記第1モードでの走行において前記第1電力と前記第2電力とを同一の割合で消費することにより、前記車両の動力を発生し、
前記制御装置は、第1値を第2値で除算することにより前記電力コストを算出し、
前記第1値は、
前記消費電力が消費されたと仮定した場合に前記バッテリに残存している前記第2電力を前記第2モードで前記モータジェネレータが生成するために必要な燃料の量と、
前記消費電力を前記第2モードで前記モータジェネレータが生成するために必要な燃料の量との加算値であり、
前記第2値は、
前記消費電力が消費されていない場合の前記バッテリに蓄え
られている、前記第1電力と前記第2電力との加算値である、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記基準コストは、前記第1モードにおける燃料削減量を、前記第1モードにおいて前記モータジェネレータで消費される電力で除算した値であり、
前記制御装置は、
前記電力コストが前記基準コスト以下である場合に、前記第1モードで走行することを決定し、
前記電力コストが前記基準コストより大きい場合に、前記第1モードで走行することを決定しない、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記電力コストが前記基準コスト以下である場合であっても、前記バッテリのSOCが閾値以下である場合には、前記第1モードで走行することを決定しない、請求項2に記載の車両。
【請求項5】
前記消費電力は、過去の前記第1モードでの複数回の走行で消費された平均電力である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記エンジンはディーゼルエンジンである、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記消費電力は、
前記車両を前記第1モードで走行させるために必要な電力と、
前記エンジンをクランキングするために必要な電力とを含む、請求項5に記載の車両。
【請求項8】
前記基準コストは、要求された車両の走行パワーを前記エンジンで出力した場合の前記エンジンの状態に基づいて算出される、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なハイブリッド車両が開発されている。ハイブリッド車両は、モータジェネレータとエンジンとの少なくとも一方の動力を用いて走行する。たとえば、特許第6156050号公報(特許文献1)では、EV走行モードおよびエンジン走行モードなどのモードに設定するハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両は、エンジン発電電力コストと、EV効果値とを算出する。そして、このハイブリッド車両は、エンジン発電電力コストと、EV効果値とを比較し、この比較結果に基づいて、EV走行モードを実行するか否かを決定する。これにより、このハイブリッド車両では、EV走行モードによる損失が発生する可能性を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、運転手によって走行のクセが異なる。このクセにより、モータジェネレータの動力を用いて走行するモード(つまりEV走行モード)において消費される電力は異なる。特許文献1に記載の車両では、このような運転手のクセについて鑑みられておらず、その結果、モータジェネレータの動力を用いて走行するモードによる損失が多大になるという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、モータジェネレータの動力を用いて走行するモードによる損失を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従う車両は、バッテリと、モータジェネレータと、エンジンと、制御装置とを備える。バッテリは、電力を蓄える。モータジェネレータは、バッテリに蓄えられている電力を消費することにより車両の動力を発生させる。エンジンは、燃料を消費することにより車両の動力を発生させる。制御装置は、モータジェネレータの動力を用いて走行する第1モードとエンジンの動力を用いて走行する第2モードとのいずれかに切換える。モータジェネレータは、第2モードに切換えられた走行において電力を生成し後に該電力をバッテリに蓄えることが可能である。制御装置は、第1モードでの走行の要求が発生した場合に、過去の第1モードでの1回の走行で消費された電力に基づく消費電力を取得する。また、制御装置は、消費電力を第2モードでモータジェネレータが生成するために必要な燃料に基づく電力コストを算出する。そして、制御装置は、電力コストと基準コストとの比較に基づいて第1モードで走行するか否かを決定する。
【0007】
このような構成によれば、過去の第1モードでの1回の走行で消費された電力に基づく消費電力を第2モードでモータジェネレータが生成するために必要な燃料に基づく電力コストを算出し、該電力コストと基準コストとの比較に基づいて第1モードで走行するか否かを決定する。したがって、過去の第1モードでの運転手のクセを鑑みて、第1モードで走行するか否かを決定できることから、その結果、第1モードによる損失を抑制できる。
【0008】
ある局面において、バッテリは、車両の減速回生により生成された第1電力と、第2モードの走行において生成された第2電力とを蓄える。モータジェネレータは、第1モードでの走行において第1電力と第2電力とを同一の割合で消費することにより、車両の動力を発生する。制御装置は、第1値を第2値で除算することにより電力コストを算出する。第1値は、消費電力が消費されたと仮定した場合にバッテリに残存している第2電力を第2モードでモータジェネレータが生成するために必要な燃料の量と、消費電力を第2モードでモータジェネレータが生成するために必要な燃料の量との加算値である。第2値は、消費電力が消費されていない場合のバッテリに蓄えられている、第1電力と第2電力との加算値である。
【0009】
このような構成によれば、第2電力を第2モードでモータジェネレータが生成するために必要な燃料の量のみならず、消費電力が消費されていない場合のバッテリに蓄えられている、第1電力と第2電力との加算値をも反映させた電力コストを算出することができる。
【0010】
ある局面において、基準コストは、第1モードにおける燃料削減量を、第1モードにおいてモータジェネレータで消費される電力で除算した値である。制御装置は、電力コストが基準コスト以下である場合に、第1モードで走行することを決定する。制御装置は、電力コストが基準コストより大きい場合に、第1モードで走行することを決定しない。
【0011】
このような構成によれば、電力コストが基準コスト以下である場合というのは、第1モードで走行した場合において、該第1モードでの消費電力を該第1モードの終了後における第2モードで生成したとしても該消費電力のコストが安くすみ損害が発生しない可能性が高い。一方、コストが基準コストよりも大きい場合というのは、第1モードで走行した場合において、該第1モードでの消費電力を該第1モードの終了後における第2モードで生成した場合に該消費電力のコストが高くなり損害が発生する可能性が高い。したがって、このような構成であれば、適切に、第1モードで走行するか否かを決定できる。
【0012】
ある局面において、制御装置は、電力コストが基準コスト以下である場合であっても、バッテリのSOCが閾値以下である場合には、第1モードで走行することを決定しない。
【0013】
このような構成によれば、車両は、バッテリ内の電力が枯渇しないように第1モードで走行することができる。
【0014】
ある局面において、記消費電力は、過去の第1モードでの複数回の走行で消費された平均電力である。
【0015】
このような構成によれば、過去の第1モードでの複数回の消費電力の差分値を抑制したコストを算出することができる。
【0016】
ある局面において、エンジンはディーゼルエンジンである。
このような構成によれば、ディーゼルエンジンを搭載している車両であっても、第1モードで走行するか否かを決定できる。
【0017】
ある局面において、消費電力は、車両を第1モードで走行させるために必要な電力と、エンジンをクランキングするために必要な電力とを含む。
【0018】
ディーゼルエンジンが搭載されている車両においては、ガソリンエンジンが搭載されている車両よりも、エンジンをクランキングするために必要な電力は多い。したがって、このような構成によれば、該多い電力を含む消費電力に基づいて電力コストを算出することができ、よって、制御装置は、より正確な電力コストを算出することができる。
【0019】
ある局面において、基準コストは、要求された車両の走行パワーをエンジンで出力した場合のエンジンの状態に基づいて算出される。
【0020】
このような構成によれば、エンジン状態に基づいて算出される基準コストを用いて第1モードで走行するか否かを決定することから、第1モードで走行するか否かをより正確に決定できる。
【発明の効果】
【0021】
この開示によると、車両は、過去の第1モード(モータジェネレータの動力を用いて走行するモード)での1回の走行で消費された電力に基づく消費電力を取得し、該消費電力を前記第2モードで前記モータジェネレータが生成するために必要な燃料に基づく電力コストを算出する。そして、車両は、電力コストと基準コストとの比較に基づいて前記第1モードで走行するか否かを決定する。したがって、モータジェネレータの動力を用いて走行する第1モードで走行するか否かを、該過去の第1モードでの1回の走行で消費された電力に基づく消費電力に基づいて決定することから、モータジェネレータの動力を用いて走行するモードによる損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態による車両の全体構成図である。
【
図6】電力コストと、EV効果値とを示す図である。
【
図7】1回のEV走行での消費電力を示す図である。
【
図8】車両1の動作方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0024】
[車両1の全体構成図]
図1は、本実施の形態による車両1の全体構成図である。車両1は、エンジン10と、クラッチ15と、モータジェネレータ20と、インバータ21と、バッテリ22と、DC(Direct Current)/DCコンバータ23と、燃料タンク28と、自動変速機40と、駆動輪50と、ECU(Electronic Control Unit)70と、スタータ80とを含む。
【0025】
エンジン10は、複数の気筒を有する、過給機付きのディーゼルエンジンである。なお、エンジン10は、過給機付きのガソリンエンジンであってもよい。エンジン10のクランク軸とモータジェネレータ20の回転軸とは、クラッチ15を介在させて連結される。燃料タンク28には燃料が蓄えられている。エンジン10は、燃料タンク28内の燃料を消費することにより車両1の動力を発生させる。たとえば、エンジン10がディーゼルエンジンである場合には、燃料は、軽油である。
【0026】
バッテリ22は、モータジェネレータ20に供給される電力を蓄える蓄電装置である。バッテリ22の出力電圧は、低電圧系の補機装置に用いられる電圧(たとえば12ボルト程度)よりも高い電圧(たとえば数百ボルト程度)に設定される。
【0027】
モータジェネレータ20は、バッテリ22に蓄えられている電力を消費することにより車両1の動力を発生させる。モータジェネレータ20は、たとえば、三相交流回転電機である。モータジェネレータ20の回転軸は、エンジン10のクランク軸と自動変速機40の入力軸との間の動力伝達経路上に連結される。なお、モータジェネレータ20と自動変速機40との間にトルクコンバータが設けられてもよい。自動変速機40の出力軸は、駆動輪50に連結される。
【0028】
インバータ21は、モータジェネレータ20とバッテリ22との間で電力変換を行なう。具体的には、インバータ21は、バッテリ22からの直流電力を三相交流電力に変換してモータジェネレータ20に供給したり、モータジェネレータ20が発電した三相交流電力を直流電力に変換してバッテリ22に供給したりする。モータジェネレータ20は、バッテリ22からインバータ21を経由して供給される電力によって駆動される。また、バッテリ22は、モータジェネレータ20からインバータ21を経由して供給される電力によって充電される。なお、モータジェネレータ20とインバータ21との間に電圧変換器(昇降圧コンバータ)を設けるようにしてもよい。
【0029】
DC/DCコンバータ23は、バッテリ22と低電圧系の補機装置との間に設けられ、バッテリ22からの高圧の直流電力を低圧の直流電力に変換して低電圧系の補機装置に供給する。
【0030】
エンジン10およびモータジェネレータ20の少なくとも一方の動力が、自動変速機40を経由して駆動輪50に伝達される。すなわち、車両1は、エンジン10およびモータジェネレータ20の少なくとも一方の動力を用いて走行可能なハイブリッド車両である。
【0031】
ECU70は、エンジンモード、EVモード、アシストモード、充電モード、および回生モードのいずれかに走行モードを切り替えることができる。なお、走行モードを切換える構成部は、ECU70以外であってもよい。以下では、エンジンモードでの走行、EVモードでの走行、アシストモードでの走行、充電モードでの走行、および回生モードでの走行をそれぞれ「エンジン走行」、「EV走行」、「アシスト走行」、「充電走行」、「回生走行」とも称する。
【0032】
エンジンモードは、車両1がクラッチ15を係合状態にしてエンジン10の動力を用いて走行するモードである。EVモードは、車両1がクラッチ15を解放状態にしてエンジン10を停止しつつ、モータジェネレータ20の動力で走行するモードである。アシストモードは、車両1がクラッチ15を係合状態にしてエンジン10およびモータジェネレータ20の双方の動力を用いて走行するモードする。したがって、EVモードおよびアシストモードにおいては、バッテリ22に蓄えられた電力がモータジェネレータ20に放電される。
【0033】
充電モードは、車両1が、クラッチ15を係合状態にしてエンジン10の動力の一部を用いて走行するとともに、エンジン10の余剰エネルギ(走行に用いられないエネルギ)を用いてモータジェネレータ20が発電した電力でバッテリ22を充電するモードである。回生モードは、車両1が減速して走行するとともに、車両1の減速エネルギを用いてモータジェネレータ20が発電した電力でバッテリ22を充電するモードである。したがって、充電モード中および回生モード中においては、モータジェネレータ20が発電した電力でバッテリ22が充電される。また、EVモードが、本開示の「第1モード」に対応し、充電モードが、本開示の「第2モード」に対応する。また、バッテリ22に蓄えられた電力が消費されることにより、モータジェネレータ20の動力は発生する。つまり、EVモードは、バッテリ22の電力を消費して走行するモードである。また、EVモードでの走行を「EV走行」とも称する場合がある。
【0034】
ECU70は、エンジンECU(ENG-ECU)71と、モータジェネレータECU(MG-ECU)72と、ハイブリッドECU(HV-ECU)73とを含む。各ECU71~73は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵する。
【0035】
エンジンECU71は、エンジン10を制御する。モータジェネレータECU72は、インバータ21を制御することによってモータジェネレータ20を制御する。ハイブリッドECU73は、エンジンECU71およびモータジェネレータECU72などを制御することによって車両1を駆動させるためのシステム全体を制御する。
【0036】
なお、
図1においては各ECU71~73が別々に設けられているが、各ECU71~73のうち少なくとも2つが1つのユニットとして設けられるようにしてもよい。以下では、エンジンECU71とモータジェネレータECU72とハイブリッドECU73とを区別することなく、ECU70と記載する。
【0037】
[本実施形態の思想について]
以下では、パラメータの単位を括弧書きで示す。たとえば、(kWh)は、電力量を示し、(g)は、質量を示す。
図2は、本実施形態の思想を示す図である。上述のように、EVモードは、バッテリ22の電力を消費して走行するモードである。本実施形態の車両1は、たとえばエンジンモードで走行している場合にEV要求が発生した場合において、EVモードで走行した場合に燃料のコストの観点で損害が発生しないか否かを判断する。EV要求は、EVモードで走行することを車両1に要求することである。EV要求は、予め定められた条件が発生したときに、発生する。予め定められた条件は、たとえば、車両1の速度が、予め定められた閾値未満になるという条件である。
【0038】
図2(A)は、EV走行前での走行(たとえば、エンジン走行、充電走行など)の状態における、電力が蓄えられているバッテリ22と燃料が蓄えられている燃料タンク28とが示されている。そして、EV要求が発生したとする。ECU70は、過去のEV走行における平均電力量D(kWh)を取得する。この平均電力量Dは、所定の記憶領域(たとえば、ECU70の記憶部)に記憶されている。つまり、平均電力量D(kWh)は、EV走行が実行されたときにおいて、消費されると想定される電力量である。平均電力量Dは、消費電力とも称される。
【0039】
図2(B)は、バッテリ22から平均電力量Dの電力が消費されたことが示されている。そして、
図2(C)に示すように、ECU70は、EV走行で消費されると想定される平均電力量Dを、該EV走行後の充電走行において生成する(回復する)ために必要な燃料量G(g)に基づくコスト(以下、「電力コストX(後述する)」という。)を算出する。
図2(C)は、該燃料量Gを示す図である。電力コストXは、過去のEV走行での平均消費電力を充電モードでモータジェネレータ20が生成するために必要な燃料に基づく値である。
【0040】
次に、電力コストXの比較対象を説明する。
図2(D)は、電力コストXの比較対象を示す図である。
図2(D)に示すように、EV走行ではなく、エンジン走行した場合に消費される燃料S(g)が示されている。つまり、燃料Sは、たとえば、平均電力量Dの電力で走行される距離と同一の距離をエンジンモードで走行した場合に消費される燃料である。この燃料Sは、EV走行したときには、消費が削減される燃料であり、以下では、セーブ燃料Sとも称される。ECU70は、このセーブ燃料Sに基づくコスト(以下、「EV効果値Y」とも称される。)を算出する。EV効果値Yは、本開示の「基準コスト」に対応する。
【0041】
そして、
図2(E)に示すように、ECU70は、電力コストXと、EV効果値Yとを比較し、電力コストX≦EV効果値Yであれば、燃料のコストの観点で損害が発生しない可能性が高いことから、EVモードに切り換えることを決定する。一方、ECU70は、電力コストX>EV効果値Yであれば、燃料のコストの観点で損害が発生する可能性があることから、EVモードに切り換えることを決定しない(たとえば、エンジンモードを維持する)。つまり、電力コストXがEV効果値Yより大きい場合には、EV要求が発生しているにもかかわらず、車両1は、EV走行に切換えない。なお、消費電力の電力コストは、たとえば、以下の式(1)により表すことができる。
【0042】
消費電力の電力コスト=消費電力を生成するために必要な燃料の重さ(g)/消費電力(kWh) (1)
図3は、バッテリ22内の電力を示す図である。
図3(A)の縦軸は、バッテリ22内の電力を示す。
図3(B)の縦軸は、発電電力コストを示す。
図3においては、EV走行前(
図2(A)に対応)と、EV走行想定(
図2(B)に対応)と、バッテリ22のSOC(State Of Charge)回復想定(
図2(C)に対応)とが示されている。
【0043】
図3(A)のグラフ201は、EV要求が発生する前の電力量を示すグラフである。
図3(A)において、グラフ201に示される電力は、回生電力と、燃料電力とにより構成されている。回生電力は、回生モードで発電した電力である。燃料電力および回生電力をまとめて「全体電力」とも称する。燃料電力は、充電モードで発電した電力である。回生電力は、本開示の「第1電力」に対応する。燃料電力は、本開示の「第2電力」に対応する。
【0044】
図3(A)のグラフ201では、回生電力の量は、A(kWh)であるとし、燃料電力の量は、B(kWh)であるとする。また、B(kWh)の燃料電力を生成するために消費された燃料の量をC(g)であるとする。また、回生電力の生成に必要な燃料は、0(g)である。なお、
図3において、回生電力をハッチング付きのグラフで示し、燃料電力をドット付きのグラフで示す。
【0045】
また、
図3(A)のグラフ202は、EV走行が実行された場合に仮定される(想定される)電力量を示すグラフである。また、
図2でも説明したように、1回のEV走行で消費される平均電力量は、D(kWh)である。
【0046】
また、電力が消費される場合には、回生電力と、燃料電力とを同一の割合で消費される。たとえば、モータジェネレータ20は、EVモードにおいて、回生電力と、燃料電力とを同一の割合で消費することにより車両1の動力を発生する。グラフ202に示すように、バッテリ内の電力において、平均電力量D(kWh)が消費された後の回生電力の量は、A1(kWh)であるとし、燃料電力の量は、B1(kWh)であるとする。また、B1(kWh)の燃料電力を生成するために消費された燃料の量をC1(g)であるとする。
【0047】
図3(A)のグラフ203は、消費されると想定される平均電力量D(kWh)を、充電モードでの燃料発電により回復させるため(SOCを回復させるため)に必要な燃料などを示すグラフである。本実施の形態では、車両1は、平均電力量D(kWh)を回生発電は用いられずに燃料発電のみで回復させる。
図3(C)の例では、平均電力量D(kWh)を回復させるために必要な燃料の量が、G(g)であるとする。
【0048】
また、
図3(B)の点S1~S3に示すように、EV走行前、EV走行想定、およびSOC回復想定のいずれにもおいても燃料電力の電力コストについては一定値である。また、点S4、S5に示すように、EV走行前、およびEV走行想定のいずれにおいても、全体電力の電力コストは一定値である。しかしながら、SOC回復想定においては、全体電力の電力コストは、EV走行前およびEV走行想定の場合よりも高くなる。これは、上述のように、はEV走行で消費される平均電力量D(kWh)を、回生発電は用いられずに燃料発電のみで回復させるからである。
【0049】
なお、後述では、回生電力量A、A1、B、B1、Dについては、参照符号として用いられる場合がある。たとえば、回生電力量A、回生電力量A1、燃料電力量B、燃料電力量B1、平均電力量Dというように表現される。
【0050】
図3(B)のEV効果値の箇所では、EV効果値M1~M3が示されている。また、SOC回復想定の電力コストが線Lで示されている。EV効果値M1が、SOC回復想定の電力コストよりも大きい場合には、EV走行を実行すると、損失が発生しない可能性が高い。したがって、EV要求が発生した場合において、EV効果値M1が、SOC回復想定の電力コストよりも大きい場合には、車両1は、EV走行を実行する。また、EV効果値M1と、SOC回復想定の電力コストとが同一である場合には、1回のEV走行中および該EV走行終了後に回生発電が実行されると、損失が発生しない可能性がある。したがって、EV要求が発生した場合において、EV効果値M1と、SOC回復想定の電力コストとが同一である場合には、車両1は、EV走行を実行する。なお、変形例として、EV効果値M1が、SOC回復想定の電力コストとが同一である場合には、車両1は、EV走行を実行しないようにしてもよい。また、EV効果値M1が、SOC回復想定の電力コストよりも小さい場合には、EV走行を実行すると、損失が発生する可能性が高い。したがって、EV要求が発生した場合において、EV効果値M1が、SOC回復想定の電力コストよりも大きい場合には、車両1は、EV走行を実行しない。
【0051】
図4は、モード毎の生成電力量などを示す図である。
図4(A)は、モード毎の車速を示す。
図4(B)は、モータジェネレータ20のトルク(以下、「MGトルク」とも称する。)を示す。また、
図4(B)の例では、MGトルクの基準値を「0」とする。
図4(C)は、バッテリ22に電力量を示す。
図4(C)においては、生成される全体電力の電力量(バッテリ22に蓄えられる全体電力の電力量)と、生成される燃料電力の電力量(バッテリ22に蓄えられる燃料電力の電力量)とが示されている。
図4(D)は、モータジェネレータ20による発電に要した燃料の積算値を示す。
図4(E)は、発電電力コストを示す。また、
図4の横軸は、時間を示す。
【0052】
図4の例では、タイミングT1~T2の期間においては、車両1が回生モードで走行したとする。また、タイミングT2~T3の期間においては、車両1がエンジンモードで走行したとする。また、タイミングT3~T4の期間においては、車両1がアシストモードで走行したとする。また、タイミングT4~T5の期間においては、車両1が充電モードで走行したとする。
【0053】
まず、
図4(A)を説明する。回生モードにおいては、車両1の速度は、徐々に低下している。エンジンモードにおいては、車両1の速度は一定である。アシストモードにおいては、車両1の速度は徐々に増加している。充電モードにおいては、車両1の速度は一定である。
【0054】
次に、
図4(B)を説明する。回生モードにおいては、MGトルクは、0未満の値となる。エンジンモードにおいては、MGトルクは、0となる。アシストモードにおいては、MGトルクは、0より大きな値となる。充電モードにおいては、MGトルクは0未満の値となる。
【0055】
次に、
図4(C)を説明する。回生モードにおいては、全体電力が増加している。何故ならば、回生モードにおいて回生電力が生成されているからである。なお、回生モードにおいては、燃料電力は変化しない。エンジンモードにおいては、全体電力が徐々に減少している。何故ならば、DCDCコンバータ23において電力が消費されているからである。また、上述のように、回生電力と、燃料電力とは同一の割合で消費される。したがって、エンジンモードにおいては、燃料電力も徐々に減少している。
【0056】
また、アシストモードにおいては、車両1の走行のために電力が消費されることから、全体電力および燃料電力は消費されている。また、充電モードにおいては、全体電力および燃料電力は増加している。
【0057】
ECU70は、周期的に、現在の回生電力量Aと、現在の燃料電力量B(
図3(A)参照)とを取得している。これらの電力を取得した時刻として、現在の時刻を「t」とし、該現在の時刻の直近の時刻を「t-1」とする。また、時刻tで取得された回生電力量は、A(t)と表され、時刻t-1で取得された回生電力量は、A(t-1)と表される。時刻tで取得された燃料電力量は、B(t)と表され、時刻t-1で取得された燃料電力量は、B(t-1)と表される。また、時刻tでの燃料量は、C(t)と表され、時刻t-1での燃料量は、C(t-1)と表される。
【0058】
また、時刻t-1から時刻tにおける回生電力量の変化量をΔA(=A(t)-A(t-1))と表す。時刻t-1から時刻tにおける燃料電力量の変化量をΔB(=B(t)-B(t-1))と表す。
【0059】
回生モードにおいては、変化量ΔAは、以下の式(11)により表される。
ΔA=(モータジェネレータ20での発電量-DCDC23での消費電力量)×充電効率 (11)
なお、充電効率は、バッテリ状態関数とも称される。
【0060】
充電モードにおいては、変化量ΔA=0となる。また、それ以外の特定モード(たとえば、エンジンモード、アシストモード)については、変化量ΔAは、以下の式(12)により表される。
【0061】
ΔA=(モータジェネレータ20での発電量-DCDC23での消費電力量)×充電効率×(A(t-1)/A(t-1)+B(t-1)) (12)
また、回生モードにおいては、変化量ΔBは、0である。充電モードにおいては、変化量ΔBについては、以下の式(13)により表される。
【0062】
ΔB=(モータジェネレータ20での発電量-DCDC23での消費電力量)×充電効率 (13)
また、特定モードにおいては、変化量ΔBについては、以下の式(14)により表される。
【0063】
ΔB=(モータジェネレータ20での発電量-DCDC23での消費電力量)×充電効率×(A(t-1)/A(t-1)+B(t-1)) (14)
次に、
図4(D)を説明する。回生モードにおいては、発電に要した燃料積算値は変化しない。エンジンモードおよびアシストモードにおいては、発電に要した燃料積算値は減少する。エンジンモードにおいては、DCDCコンバータ23により電力が消費される。
図4(D)では、エンジンモードにおいて該消費された電力の発電に要した燃料積算値が減少されている。また、アシストモードにおいては、DCDCコンバータ23および車両1の走行のために電力が消費される。
図4(D)では、エンジンモードにおいて該消費された電力の発電に要した燃料積算値が減少されている。また、充電モードにおいては、燃料が消費されて電力が生成されることから、該消費された燃料分、燃料積算値が増加する。
【0064】
次に、燃料量Cを説明する。回生モードにおいては、ΔC=0となる。充電モードにおいては、ΔC=ECU70の指令により噴射された燃料量となる。また、特定モードにおいては、C(t)は、以下の式(15)により表される。
【0065】
C(t)=C(t-1)×(B(t)/A(t)+B(t)) (15)
次に、
図4(E)を説明する。
図4(E)に示すように、燃料電力コストは、走行モードに関わらず、また、バッテリ22内の電力量に関わらず、同一である。また、全体電力については、回生モードでは、減少している。何故ならば、回生モードでは、燃料が消費されることなく回生電力が生成されており、その結果、全体電力の電力コストは低下するからである。また、エンジンモードおよびアシストモードにおいては、全体電力の電力コストは、一定である。また、充電モードにおいては、全体電力の電力コストは、増加する。何故ならば、充電モードでは、燃料が消費されることにより該燃料に対応する電力コストが増加するからである。
【0066】
[ECU70の機能構成例]
図5は、ECU70の機能ブロック図である。ECU70は、判断部101と、取得部102と、記憶部104と、算出部106と、決定部108とを備える。
【0067】
判断部101は、EV要求が発生したか否かを判断する。判断部101は、EV要求が発生したことを判断した場合には、該判断結果を示す信号を取得部102に出力する。
【0068】
取得部102は、過去のEVモードでの1回の走行で消費された電力に基づく消費電力を取得する。「過去のEVモードでの1回の走行で消費された電力」については、後述の
図7で説明する。また、本実施の形態では、取得部102は、過去のEVモードでの複数回の走行で消費された平均電力量Dを取得する。また、本実施形態の記憶部104は、N(Nは2以上の整数)回のEV走行の各々の消費電力を記憶している。1回のEV走行における消費電力は、「EV消費電力」とも称される。取得部102はN個のEV消費電力を取得し、該N個のEV消費電力の平均値を算出することにより、平均電力量Dを取得する。
【0069】
また、ECU70は、1回のEV走行が終了する度に、該1回のEV走行で消費された電力(EV消費電力)を記憶部104に記憶する。取得部102は、取得した平均電力を算出部106に出力する。また、
図4で説明したように、取得部102は、周期的に、現在の回生電力量Aと、現在の燃料電力量Bとを取得している。さらに、
図4で説明したように、取得部102は、直近に取得した燃料電力量Bを生成するために必要な燃料量Cも取得する。取得部102は、直近に取得した回生電力量Aと、直近に取得した燃料電力量Bと、燃料電力量Bを生成するために必要な燃料量Cと、平均電力量Dとを算出部106に出力する。
【0070】
算出部106は、取得部102から出力された、回生電力量Aと、直近に取得した燃料電力量Bと、燃料量Cと、平均電力量Dとに基づいて、上述の電力コストX(EVモード走行での消費電力の電力コスト)を算出する。また、算出部106は、上述のEV効果値Yを算出する。まず、電力コストXの算出手法を説明する。
【0071】
図3のグラフ201およびグラフ202に基づいて以下の式(21)が成り立つ。
A1+B1=(A+B)-D (21)
上述のように、回生電力と、燃料電力とは同一の割合で消費されることから、以下の式(22)~(24)が成り立つ。
【0072】
A1=A-(A/(A+B)×D)) (22)
B1=B-(B/(A+B)×D)) (23)
C1=C×(B1/(A1+B1)) (24)
算出部106は、式(22)および式(23)により回生電力量A1および燃料電力量B1を算出する。そして、算出部106は、式(24)に、燃料量Cと、回生電力量A1と、燃料電力量B1とを代入することにより、燃料量C1(
図3(A)のグラフ202参照)を算出する。
【0073】
次に、算出部106は、平均電力量Dを充電モードで生成するために必要な燃料量G(
図3(A)のグラフ203参照)を以下の式(25)により算出する。
【0074】
G=D×(C1/B1) (25)
式(25)の右辺の第2項の「C1/B1」は、燃料電力量B1の電力コストを表している(上記の式(1)参照)。燃料量Gは、EV走行で平均電力量Dの電力が消費されたと仮定した場合の電力コスト換算に基づく平均電力量Dの電力を充電モードで生成するために必要な燃料量である。
【0075】
次に、算出部106は、以下の式(26)により、電力コストXを算出する。
X=(C1+G)/(A+B) (26)
式(26)の右辺において、C1は上記式(24)により算出され、Gは式(25)により算出される。
【0076】
また、式(26)の右辺の分子の「C1+G」が本開示の「第1値」に対応する。また、式(26)の右辺の分母の「A+B」が本開示の「第2値」に対応する。つまり、電力コストは、第1値を第2値で除算することにより算出される。
【0077】
第1値のうちの「C1」は、平均電力量Dの電力が消費されたと仮定した場合にバッテリ22に残存している発電電力を充電モードでモータジェネレータ20が生成するために必要な燃料量である。また、第1値のうちの「G」は、平均電力量Dを充電モードでモータジェネレータ20が生成するために必要な燃料量である。第1値は、C1とGとの加算値である。
【0078】
第2値は、平均電力量Dの電力が消費されていない場合のバッテリ22に蓄えられている、回生電力量Aと燃料電力量Bとの加算値である。また、電力コストXは、消費された電力によっては変わらない。
【0079】
次に、算出部106によるEV効果値Yの算出の手法を説明する。EV効果値Yは、以下の式(27)または式(28)により表すことができる。
【0080】
EV効果値Y=
図2(D)のセーブ燃料S(g)/EV走行時のモータジェネレータ20で消費される電力(kWh) (27)
EV効果値Y=エンジン走行時の単位時間当たりの燃料消費量(g/hr)/エンジン走行での要求走行パワー(kW) (28)
次に、EV効果値Yの具体的な求め方の一例を説明する。算出部106は、EV要求が発生したときのエンジン要求パワー(kw)を以下の式(29)により算出する。
【0081】
エンジン要求パワー(kw)=走行要求パワー(kw)×トランスミッション効率×トルクコンバータ効率 (29)
トランスミッション効率は、自動変速機40による動力伝達効率である。トルクコンバータ効率は、トルクコンバータによる動力伝達効率である。トランスミッション効率およびトルクコンバータ効率は一定の値である。
【0082】
次に、算出部106は、エンジン要求パワーを、所定の第1マップまたは所定の換算式(双方とも図示せず)などを用いて、エンジン回転数とトルクとに換算する。次に、算出部106は、所定の第2マップ(図示せず)を用いて、エンジン回転数とトルクとを用いてEV効果値Yを算出する。
【0083】
次に算出部106は、電力コストXおよびEV効果値Yを決定部108に出力する。決定部108は、電力コストXとEV効果値Yとの大小を比較する。決定部108は、電力コストXがEV効果値以下である場合には、EVモードで走行することを決定する。決定部108は、EVモードで走行することを決定した場合には、指令信号をインバータ21などに送信することにより、EV走行を実行する。一方、決定部108は、電力コストがEV効果値Yより大きい場合には、EVモードで走行することを決定しない。EVモードで走行することを決定しない場合には、たとえば、EV要求が発生した場合の走行モードを維持して車両1は走行する。
【0084】
一般的に、運転手によって走行のクセが異なる。このクセにより、EV走行の消費電力は異なる。従来の車両では、このような運転手のクセについて鑑みられておらず、その結果、EVモードによる損失が多大になるという問題が生じ得る。そこで、本実施形態の車両1は、過去の第1モードでの1回の走行で消費された電力に基づく消費電力を充電モードでモータジェネレータ20が生成するために必要な燃料に基づく電力コストを算出する(
図8のステップS6参照)。車両1は、該電力コストとEV効果との比較に基づいてEVモードで走行するか否かを決定する(ステップS10~S14)。したがって、車両1は、過去のEVモードでの運転手のクセを鑑みて、EVモードで走行するか否かを決定できることから、その結果、EVモードによる損失を抑制できる。
【0085】
また、車両1は、式(26)により電力コストXを算出することができる。したがって、兵電力量を生成するために必要な燃料量のみならずバッテリ22に蓄えられる電力量なども反映させた電力コストを算出することができる。
【0086】
また、EV効果値Yは、式(27)などにより示したように、EVモードにおける燃料削減量を、EVモードにおいてモータジェネレータ20で消費される電力で除算した値である。また、ECU70は、電力コストXがEV効果値Y以下である場合に(ステップS10でYES)、EVモードで走行することを決定する。電力コストXがEV効果値Y以下である場合には、EVモードで走行した場合において、該EVモードでの消費電力を該EVモードの終了後における充電モードで生成したとしても該消費電力のコストが安くすみ損害が発生しない可能性が高い。したがって、この場合には、ECU70は、EVモードで走行することを決定する。特に、本実施形態では、電力を回復させる回生モードを含ませずに充電モードのみで消費電力を回復させるための電力コストを算出する。よって、消費電力を回復させるための電力コストとして、最も高い電力コストが算出されることから、ECU70は、損害が発生するか否かをより高精度に決定できる。
【0087】
一方、ECU70は、電力コストXがEV効果値Yより大きい場合には(ステップS10でNO)、EVモードで走行することを決定しない。電力コストXがEV効果値Yより大きい場合というのは、EVモードで走行した場合において、該EVモードでの消費電力を該EVモードの終了後における充電モードで生成した場合に該消費電力のコストが高くなり損害が発生する可能性が高い。以上により、ECU70は、適切に、第1モードで走行するか否かを決定できる。
【0088】
図6は、電力コストと、EV効果値とを示す図である。
図6において、横軸が要求走行パワー(式(28)参照)を示し、縦軸がエンジン走行時の単位時間当たりの燃料消費量(式(28)参照)を示す。グラフLは、電力コストXに対応するグラフである。また、点M1~M3は、EV効果値を示す。なお、点M1~M3は、
図3(B)で説明した点M1~M3と同一である。
【0089】
点M1は、EV効果値Yが電力コストXよりも大きいことを示している。点M2は、EV効果値Yと電力コストXとが同一であることを示している。点M3は、EV効果値Yが電力コストXよりも小さいことを示している。
【0090】
また、算出部106は、過去の第1モードでの複数回の走行で消費された平均電力に基づいて電力コストを算出する。したがって、算出部106は、過去のEVモードでの複数回の消費電力の差分値を抑制した電力コストを算出することができる。
【0091】
また、決定部108は、式(29)などで説明したように、エンジン状態に基づいて算出される基準コストを用いて第1モードで走行するか否かを決定する。したがって、決定部108は、第1モードで走行するか否かをより正確に決定できる。
【0092】
[EV走行での消費電力]
図7は、1回のEV走行での消費電力を示す図である。1回のEV走行とは、たとえば、エンジン10の停止が開始したときから、エンジン10の始動が完了するときまでの期間での走行である。
図7(A)は、エンジン10の回転を示し、
図7(B)は、走行要求パワーを示し、
図7(C)は、モータジェネレータ20の力行パワーを示す。また、
図7(A)~
図7(C)において、横軸が時間を示す。また、タイミングT11が、エンジン10の停止が開始されたタイミングであり、タイミングT12が、エンジン10の始動が完了されたタイミングである。
【0093】
図7(A)に示すように、タイミングT11において、エンジン10の停止処理が開始したタイミングT11からエンジン回転速度は徐々に減少する。また、エンジンの始動処理が開始されたときから、エンジン回転速度は徐々に増加する。
【0094】
図7(B)に示すように、走行要求パワーは、車両1の運転手の運転に応じて変化する。
図7(C)に示すように、1回のEV走行での消費電力は、電力E1と電力E2と電力E3と電力E4を含む。なお、電力E4については、
図7には示されていない。
【0095】
電力E1は、車両1をEVモードで走行させるために必要な電力である。電力E2は、エンジン10のスタータ80を駆動することによりエンジン10をクランキングするために必要な電力である。また、エンジン10が始動してトルクが走行要求パワーに到達するまでは、モータジェネレータ20が該トルクを担保する。電力E3は、モータジェネレータ20が該トルクを担保するために必要な電力である。電力E4は、DCDCコンバータ23で消費される電力である。なお、エンジン10のクランキングについては、スタータ80ではなく他の装置により実現されてもよい。
【0096】
本実施形態においては、1回のEV走行での消費電力は、以下の式(29)で表される。
【0097】
1回のEV走行での消費電力=E1+E2+E3+E4 (29)
車両1は、タイミングT12において、1回のEV走行が終了したときには、記憶部104に1回のEV走行での消費電力を記憶させる。
【0098】
本実施形態のエンジン10は、ディーゼルエンジンである。したがって、ディーゼルエンジンを搭載している車両1であっても、EVモードで走行するか否かを決定できる。
【0099】
また、一般的に、ディーゼルエンジンの方がガソリンエンジンよりも圧縮比が大きい。圧縮比は、「エンジンのシリンダ内の空気または混合気が、ピストン上昇によってどれくらい圧縮されるのか」を示す比である。したがって、ディーゼルエンジンの各部が頑強な構造となるためフリクションが大きくなる等の理由により、エンジン10をクランキングするために必要な電力が、ガソリンエンジンよりも大きくなる。そこで、
図7に示すように、電力コストの算出に用いられる1回のEV走行の消費電力には、エンジン10をクランキングするために必要なクランキング電力E2が含まれる。したがって、算出部106は、ガソリンエンジンよりも大きいクランキング電力E2を含む消費電力に基づいて電力コストを算出することができる。よって、ECU70は、より正確な電力コストを算出することができる。
【0100】
[車両のフローチャート]
図8は、車両1の動作方法を説明するためのフローチャートである。まずステップS2において、ECU70は、EV要求が発生したか否かを判断する。ECU70は、EV要求が発生するまで、ステップS2の処理を実行する(ステップS2のNO)。ステップS2において、ECU70が、EV要求が発生したと判断した場合には(ステップS2でYES)、処理は、ステップS4に進む。
【0101】
ステップS4において、ECU70は、平均電力量Dを取得する。次に、ステップS6において、ECU70は、上記式(26)により電力コストXを算出する。次に、ステップS8において、ECU70は、上記式(29)により算出されるエンジン要求パワーに基づいてEV効果値Yを算出する。次に、ステップS10において、EV効果値Yと電力コストXとを比較する。ステップS10において、電力コストXが、EV効果値Y以下である場合には(ステップS10でYES)、処理は、ステップS12に進む。一方、ステップS10において、電力コストXが、EV効果値Yより大きい場合には(ステップS10でNO)、
図8の処理は終了する。
【0102】
ステップS12において、ECU70は、バッテリ22のSOCを検出し、該SOCが、閾値以下であるか否かを判断する。閾値は予め定められた値であり、たとえば、20%である。SOCが閾値以上である場合には(ステップS12でYES)、ステップS14において、ECU70は、EVモードに切り換える。一方、SOCが閾値未満である場合には(ステップS12でNO)、
図8の処理は終了する。
【0103】
ステップS10でYESと判断された場合であっても、バッテリ22のSOCが低い場合がある。バッテリ22のSOCが低い状態においてEV走行が実行されると、バッテリ22の電力が枯渇してしまう可能性が高い。また、「バッテリ22のSOCが低い場合に、強制的に充電モードに切り換える構成」が車両1に採用されている場合には、燃費悪化を招く可能性がある。そこで、車両1は、バッテリ22のSOCが閾値未満の場合には、EVモードで走行することを決定しない(ステップS12でNO)。これにより、車両1は、バッテリ内の電力が枯渇しないように第1モードで走行することができる。
[変形例]
(1) 上述の実施形態では、取得部102は、記憶部104に記憶されている複数個のEV消費電力を取得することにより平均電力量Dを取得する構成を説明した。しかしながら、取得部102は、外部のサーバ装置などから、複数個のEV消費電力を取得するようにしてもよい。
【0104】
(2) 上述の実施形態では、算出部106は、式(21)~(26)に示すように、平均電力量Dを用いて、EV効果値Yを算出する構成を説明した。しかしながら、過去のEVモードでの1回の走行で消費された電力に基づく消費電力であれば、算出部106は、他の消費電力を用いて、EV効果値Yを算出するようにしてもよい。たとえば、算出部106は、複数個のEV消費電力のうち直近に記憶部104に記憶されたEV消費電力を用いてよい。
【0105】
(3) 上述の実施形態では、ECU70は、式(26)を用いて、電力コストXを算出した。しかしながら、ECU70は、電力コストXを他の手法により算出してもよい。たとえば、ECU70は、燃料量Gに基づくコストを電力コストXとして算出する。たとえば、電力コストXとして、燃料量Gの料金を算出するようにしてもよい。
【0106】
また、上述の実施の形態およびその変形例については適宜組合せることも可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 車両、15 クラッチ、21 インバータ、22 バッテリ、23 コンバータ、28 燃料タンク、40 自動変速機、50 駆動輪、80 スタータ、101 判断部、102 取得部、104 記憶部、106 算出部、108 決定部。