(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240220BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240220BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240220BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
H01L29/78 653C
H01L29/78 652H
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
H01L29/78 652D
H01L29/78 652K
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
(21)【出願番号】P 2020213687
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-088158(JP,A)
【文献】特開2019-176013(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069416(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182233(WO,A1)
【文献】特開2016-096307(JP,A)
【文献】特開2021-034621(JP,A)
【文献】特開2021-086910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造が形成された炭化珪素半導体装置であって、
炭化珪素からなる第1導電型または第2導電型の基板(11)と、
前記基板の表面上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(16)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(17)と、
前記ベース領域の表層部に形成されると共に、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の不純物領域(18)と、
前記不純物領域および前記ベース領域を貫通して前記ドリフト層に達するトレンチ(210、220)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(21)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(22)とを有するトレンチゲート構造と、
前記不純物領域および前記ベース領域と電気的に接続される第1電極(26)と、
前記基板と電気的に接続される第2電極(27)と、を備え、
前記トレンチは、前記基板の面方向における一方向としての第1方向に沿って延びる第1トレンチ(210)が複数形成されていると共に、前記基板の面方向における一方向と交差する第2方向に沿って延び、隣合う前記第1トレンチを繋ぐ第2トレンチ(220)が複数形成されており、
前記ゲート絶縁膜のうちの前記第1トレンチの底面および前記第2トレンチの底面に形成された部分と接する状態で形成された第2導電型の底部領域(23)と、
前記第1トレンチの側面のうちの前記第2トレンチで開口される部分と対向する部分を端面(210a)とすると、前記ゲート絶縁膜のうちの前記端面に形成された部分と接する状態で形成され、前記ベース領域および前記底部領域と接続される接続領域(24)と、を有し、
前記不純物領域は、隣合う前記第1トレンチの間において、一方の前記第1トレンチにおける前記端面と、他方の前記第1トレンチのうちの前記端面と対向する部分との間と異なる部分に形成されており、
隣合う前記第1トレンチの間において、一方の前記第1トレンチにおける前記端面と、他方の前記第1トレンチのうちの前記端面と対向する部分との間には、第2導電型の領域(17、19)が配置されている炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記端面は、複数の前記第1トレンチに対してそれぞれ構成され、
前記接続領域は、複数の前記第1トレンチの端面に対してそれぞれ形成されている請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記ベース領域の表層部には、前記ベース領域よりも高不純物濃度とされたコンタクト領域(19)が形成されており、
前記コンタクト領域は、隣合う前記第1トレンチの間において、一方の前記第1トレンチにおける前記端面と、他方の前記第1トレンチのうちの前記端面と対向する部分との間に形成されていると共に、隣合う前記第1トレンチのそれぞれに接している請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ドリフト層には、前記ドリフト層と前記ベース領域との界面から離れた位置に、第2導電型とされた複数のディープ層(14)が第2方向に沿って配置され、
前記底部領域は、前記複数のディープ層と接続されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記ドリフト層は、前記基板よりも低不純物濃度とされた低濃度層(12)と、前記低濃度層上に配置された第1電流分散層(13)と、前記第1電流分散層上に配置され、前記ベース領域との界面を構成する第2電流分散層(15)とを有し、
前記第1電流分散層は、前記第2方向を長手方向とする複数の線状部分を有する構成とされ、
前記複数のディープ層は、前記第1電流分散層における線状部分の間にそれぞれ配置され、
前記第2電流分散層は、前記第1電流分散層および前記ディープ層上に配置され、
前記第1トレンチおよび前記第2トレンチは、底面が前記第2電流分散層内に位置している請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第2トレンチは、隣合う前記第1トレンチの間のそれぞれに形成されると共に前記第1方向に沿って複数形成され、さらに前記第1方向に沿って隣合う前記第2トレンチの間隔(L)がそれぞれ等しくされ、
共通の前記第1トレンチを挟んで両側に配置された前記第2トレンチにおいて、前記第1トレンチに対して一方の側に配置された前記第2トレンチは、前記第1トレンチに対して他方の側に配置された前記第1方向に沿って隣合う前記第2トレンチの中心となる部分と対向する状態で形成されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する炭化珪素(以下では、SiCともいう)で構成されたSiC半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トレンチゲート構造を有するSiCで構成されたSiC半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、このSiC半導体装置では、n+型の基板上に、n-型のドリフト層およびp型のベース領域が順に積層され、ベース領域上に、n+型のソース領域およびp+型のコンタクト領域が配置された半導体基板を用いて構成されている。そして、半導体基板には、ソース領域およびベース領域を貫通するように複数のトレンチが形成されており、各トレンチには、ゲート絶縁膜およびゲート電極が順に形成されている。これにより、トレンチゲート構造が形成されている。
【0003】
なお、トレンチは、基板の面方向における一方向を第1方向とし、当該面方向における第1方向と交差する方向を第2方向とすると、次のように形成されている。具体的には、トレンチは、第1方向に沿って複数の第1トレンチが形成され、第2方向に沿って複数の第1トレンチを繋ぐように第2トレンチが形成されている。そして、ソース領域は、各第1トレンチの長手方向に沿って第1トレンチの側面と接するように形成され、コンタクト領域は、ソース領域の間に配置されている。
【0004】
また、半導体基板には、半導体基板のうちの第1トレンチおよび第2トレンチの底面に形成されたゲート絶縁膜と接する部分に、p型の底部領域が形成されている。また、半導体基板には、半導体基板のうちの第1トレンチの側面に形成されたゲート絶縁膜と接する部分に、底部領域とベース領域とを接続するp型の接続領域が形成されている。具体的には、接続領域は、第1トレンチの側面のうちの第2トレンチにて開口された部分と対向する部分に形成されている。
【0005】
さらに、このSiC半導体装置では、コンタクト領域およびソース領域と電気的に接続されるように上部電極が形成され、基板と接続されるように下部電極が形成されている。
【0006】
このようなSiC半導体装置は、第1トレンチおよび第2トレンチの底面に底部領域が形成され、底部領域が接続領域を介してコンタクト領域と接続されている。このため、底部領域からドリフト層へ空乏層が広がり、高電界がゲート絶縁膜に入り込み難くなる。したがって、ゲート絶縁膜が破壊されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記SiC半導体装置では、n型のソース領域、p型のベース領域およびコンタクト領域、n型のドリフト層にてnpn寄生トラジスタ(以下では、単に寄生トランジスタともいう)が構成される。そして、上記のようなSiC半導体装置では、アバランシェ降伏が発生した場合、アバランシェ降伏によって発生したホールが底部領域および接続領域を介してコンタクト領域へ引き抜かれる。
【0009】
この場合、上記SiC半導体装置では、ホールが寄生トランジスタにおけるp型領域を通過するため、寄生トランジスタが作動することによってdv/dt耐量やアバランシェ耐量が低くなる可能性がある。特に、SiC半導体装置が高速動作する場合等では、dv/dt耐量の低下やアバランシェ耐量の低下が顕著となる。
【0010】
本発明は上記点に鑑み、耐量が低下することを抑制できるSiC半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための請求項1では、トレンチゲート構造が形成されたSiC半導体装置であって、SiCからなる第1導電型または第2導電型の基板(11)と、基板の表面上に形成され、基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(16)と、ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(17)と、ベース領域の表層部に形成されると共に、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の不純物領域(18)と、不純物領域およびベース領域を貫通してドリフト層に達するトレンチ(210、220)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(21)と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(22)とを有するトレンチゲート構造と、不純物領域およびベース領域と電気的に接続される第1電極(26)と、基板と電気的に接続される第2電極(27)と、を備えている。そして、トレンチは、基板の面方向における一方向としての第1方向に沿って延びる第1トレンチ(210)が複数形成されていると共に、基板の面方向における一方向と交差する第2方向に沿って延び、隣合う第1トレンチを繋ぐ第2トレンチ(220)が複数形成されており、ゲート絶縁膜のうちの第1トレンチの底面および第2トレンチの底面に形成された部分と接する状態で形成された第2導電型の底部領域(23)と、第1トレンチの側面のうちの第2トレンチで開口される部分と対向する部分を端面(210a)とすると、ゲート絶縁膜のうちの端面に形成された部分と接する状態で形成され、ベース領域および底部領域と接続される接続領域(24)と、を有し、不純物領域は、隣合う第1トレンチの間において、一方の第1トレンチにおける端面と、他方の第1トレンチのうちの端面と対向する部分との間と異なる部分に形成されており、隣合う第1トレンチの間において、一方の第1トレンチにおける端面と、他方の第1トレンチのうちの端面と対向する部分との間には、第2導電型の領域(17、19)が配置されている。
【0012】
これによれば、隣合う第1トレンチの間において、一方の第1トレンチにおける端面と、他方の第1トレンチにおける端面と対向する部分との間に不純物領域が形成されていない。このため、隣合う第1トレンチの間において、一方の第1トレンチにおける端面と、他方の第1トレンチにおける端面と対向する部分との間に寄生トランジスタが構成されない。そして、接続領域は、端面と接するように形成されている。したがって、アバランシェが発生した場合、例えば、第1導電型がn型であると共に第2導電型がp型である場合には、ホールが寄生トランジスタを通過し難くなり、dV/dt耐量やアバランシェ耐量の向上を図ることができる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の平面図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図1中のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図1中のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図6】
図1中のVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7A】第1実施形態におけるSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図7B】
図7Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図7C】
図7Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図7D】
図7Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図7E】
図7Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図7F】
図7Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図7G】
図7Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図7H】
図7Gに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図7I】
図7Hに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図9】第2実施形態におけるSiC半導体装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、
図1~
図6に示されるように、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略)が形成されて構成されている。なお、SiC半導体装置は、特に図示しないが、セル領域、およびセル領域を囲むように形成された外周領域を有している。そして、MOSFETは、SiC半導体装置のうちのセル領域に形成されている。
【0017】
また、
図1は、SiC半導体装置の平面図であるが、後述する、ソース領域18、コンタクト領域19、接続領域24、第1トレンチ210、および第2トレンチ220の位置関係を示す平面図であり、上部電極26等を省略して示してある。そして、以下では、後述する基板11の面方向における一方向をX軸方向とし、基板の面方向における一方向と交差する方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向として説明する。なお、本実施形態では、X軸方向とY軸方向とは直交している。また、本実施形態では、Y軸方向が第1方向に相当し、X軸方向が第2方向に相当している。
【0018】
SiC半導体装置は、半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、SiC半導体装置は、SiCからなるn+型の基板11を備えている。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cm3とされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。なお、基板11は、本実施形態ではドレイン領域を構成するものである。
【0019】
基板11の表面上には、例えば、窒素やリン等のn型不純物濃度が5.0~10.0×1015/cm3とされ、厚さが10~15μm程度とされたSiCからなるn-型の低濃度層12が形成されている。この低濃度層12は、不純物濃度が深さ方向において一定とされていてもよいが、濃度分布に傾斜が付けられ、低濃度層12のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにされると好ましい。例えば、低濃度層12は、基板11の表面から3~5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×1015/cm3程度他の部分よりも高くされるのが好ましい。このような構成にすることにより、低濃度層12の内部抵抗を低減でき、オン抵抗を低減することができる。
【0020】
低濃度層12上には、低濃度層12よりも高不純物濃度とされたn型の第1電流分散層13が形成されている。第1電流分散層13は、例えば、窒素やリン等が導入されたn型不純物層によって構成されて不純物濃度が低濃度層12以上とされ、深さが0.3~1.5μmとされている。
【0021】
そして、第1電流分散層13には、p型のディープ層14が複数形成されている。ディープ層14は、例えば、ボロン等のp型不純物濃度が2.0×1017~2.0×1018/cm3とされている。そして、複数のディープ層14は、ストライプ状となるように、それぞれx軸方向に沿って延設され、y軸方向に沿って等間隔に配列されている。このため、第1電流分散層13は、X軸方向を長手方向とする複数の線状部分を有する構成とされ、ディープ層14は、線状部分の間に配置された状態となっている。
【0022】
また、ディープ層14は、第1電流分散層13より浅く形成されている。つまり、ディープ層14は、底部が第1電流分散層13内に位置するように形成されている。言い換えると、ディープ層14は、低濃度層12との間に第1電流分散層13が位置するように形成されている。
【0023】
第1電流分散層13およびディープ層14上には、窒素やリン等が導入されたn型不純物層で構成され、厚さが0.5~2μmとされた第2電流分散層15が形成されている。第2電流分散層15のn型不純物濃度は、例えば、1.0×1016~5.0×1017/cm3とされており、第1電流分散層13以上とされている。そして、第2電流分散層15は、第1電流分散層13と繋がっている。このため、本実施形態では、低濃度層12、第1電流分散層13、および第2電流分散層15が繋がり、これらによってドリフト層16が構成されている。
【0024】
第2電流分散層15上には、p-型のベース領域17が形成されている。そして、ベース領域17の表層部には、n+型のソース領域18およびp+型のコンタクト領域19が形成されている。なお、ソース領域18およびコンタクト領域19の配置関係は、後述する。また、本実施形態では、ソース領域18が不純物領域に相当している。そして、本実施形態では、このようにドリフト層16を構成する第2電流分散層15上にベース領域17が形成されていることにより、ドリフト層16とベース領域17との界面から離れた位置にディープ層14が形成された状態となる。
【0025】
ベース領域17は、例えば、ボロン等のp型不純物濃度が5.0×1016~2.0×1019/cm3とされ、厚さが2.0μm程度で構成されている。ソース領域18は、表層部における窒素やリン等のn型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cm3とされ、厚さが0.3μm程度で構成されている。コンタクト領域19は、表層部におけるボロン等のp型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cm3とされ、厚さが0.3μm程度で構成されている。
【0026】
本実施形態では、このように、基板11、ドリフト層16、ディープ層14、ベース領域17、ソース領域18、コンタクト領域19等が積層されて半導体基板10が構成されている。以下、半導体基板10のうちの基板11側の面を半導体基板10の他面10bとし、ソース領域18およびコンタクト領域19側の面を半導体基板10の一面10aとする。そして、ソース領域18およびコンタクト領域19は、半導体基板10の一面10aから露出した状態となっている。
【0027】
半導体基板10には、ベース領域17等を貫通して第2電流分散層15に達すると共に、底面が第2電流分散層15内に位置するように、例えば幅が1.4~2.0μmとされた第1トレンチ210および第2トレンチ220が形成されている。なお、第1トレンチ210および第2トレンチ220は、第1電流分散層13およびディープ層14に達しないように形成されている。つまり、第1トレンチ210および第2トレンチ220は、底面よりも下方に第1電流分散層13およびディープ層14が位置するように形成されている。但し、第1トレンチ210および第2トレンチ220は、底面に接するように形成される後述の底部領域23がディープ層14と繋がるように形成されている。また、第1トレンチ210および第2トレンチ220の幅は、長手方向と交差する方向であって基板11の面方向に沿った方向の長さのことである。そして、第1トレンチ210および第2トレンチ220の幅は、後述する斜め方向からイオン注入を行った際に端面210aと異なる部分にイオンが注入されない程度に狭くされている。
【0028】
第1トレンチ210および第2トレンチ220は、内壁面に形成されたゲート絶縁膜21と、ゲート絶縁膜21の表面に形成されたドープトPoly-Siによって構成されるゲート電極22によって埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜21は、第1トレンチ210および第2トレンチ220の内壁面を熱酸化またはCVD(chemical vapor depositionの略)で形成される。そして、ゲート絶縁膜21は、厚さが第1トレンチ210および第2トレンチ220の側面側および底面側で共に100nm程度とされている。
【0029】
ここで、本実施形態の第1トレンチ210および第2トレンチ220の配置について説明する。第1トレンチ210は、Y軸方向に沿って延びるように複数本が延設されていると共に、X軸方向に等間隔で並べられてストライプ状に形成されている。また、第2トレンチ220は、隣合う第1トレンチ210を繋ぐように、X軸方向に沿って形成されている。なお、本実施形態では、第2トレンチ220は、全ての隣合う第1トレンチ210の間に形成されていると共に、隣合う第1トレンチ210の複数個所を繋ぐように形成されている。このため、本実施形態の半導体基板10の一面10aは、第1トレンチ210および第2トレンチ220で囲まれる複数の表面領域100が構成された状態となっている。
【0030】
そして、共通の第1トレンチ210を挟んで両側に配置される第2トレンチ220は、Y軸方向に沿ってずらされて配置されている。言い換えると、共通の第1トレンチ210を挟んで両側に配置される第2トレンチ220は、当該第1トレンチ210を挟んで対向しないように配置されている。
【0031】
さらに詳しくは、本実施形態では、X軸方向において隣合う第2トレンチ220は、2つの第1トレンチ210を挟むように配置されている。また、本実施形態の第2トレンチ220は、Y軸方向において隣合う第2トレンチ220の間隔Lがそれぞれ等しくなるように形成されている。そして、共通の第1トレンチ210を挟んで両側に配置される第2トレンチ220は、Y軸方向に沿ってL/2だけずらされて配置されている。つまり、共通の第1トレンチ210を挟んで両側に配置される第2トレンチ220は、次のように配置されている。すなわち、第1トレンチ210の一方の側に配置された第2トレンチ220は、第1トレンチ210の他方の側に配置された第2トレンチ220に対し、当該他方の側に配置されたY軸方向に沿って隣合う第2トレンチ220の中心と対向する状態で配置されている。したがって、本実施形態の第1トレンチ210および第2トレンチ220は、表面領域100が千鳥状となるように形成されているともいえる。
【0032】
そして、コンタクト領域19は、各表面領域100において、隣合う第1トレンチ210のそれぞれと接すると共に、X軸方向において第2トレンチ220と対向する部分に形成されている。ソース領域18は、表面領域100のうちのコンタクト領域19が形成されない部分に形成されており、Y軸方向において、コンタクト領域19を挟むように形成されている。このため、表面領域100では、Y軸方向に沿ってソース領域18、コンタクト領域19、ソース領域18が順に配置されると共に、コンタクト領域19がX軸方向において第2トレンチ220と対向するように形成された状態となっている。
【0033】
なお、本実施形態のコンタクト領域19は、Y軸方向に沿った幅が第2トレンチ220のY軸方向に沿った幅以上とされている。また、本実施形態のコンタクト領域19は、Y軸方向における中心が第2トレンチ220のY軸方向における中心と一致するように形成されている。
【0034】
そして、半導体基板10のうちの第1トレンチ210および第2トレンチ220の底面に形成されたゲート絶縁膜21と接する部分には、ベース領域17よりも高不純物濃度とされたp型の底部領域23が形成されている。具体的には、底部領域23は、ドリフト層16内に配置されるディープ層14と接続されるように形成されている。なお、底部領域23は、半導体基板10のうちの第1トレンチ210および第2トレンチ220の底面に形成されたゲート絶縁膜21の全体と接するように形成されている。
【0035】
また、第1トレンチ210の側面のうちの第2トレンチ220で開口する部分と対向する部分を端面210aとする。そして、半導体基板10のうちの端面210aに形成されたゲート絶縁膜21と接する部分には、底部領域23、ベース領域17、コンタクト領域19と接続されるp型の接続領域24が形成されている。なお、第1トレンチ210の端面210aとは、言い換えると、第1トレンチ210の側面のうちの当該第1トレンチ210内に対向する側面を有しない部分であるともいえる。
【0036】
そして、上記のように、ソース領域18、コンタクト領域19、接続領域24が形成されている。このため、隣合う第1トレンチ210の間において、ソース領域18は、一方の第1トレンチ210における端面210aと、他方の第1トレンチ210における当該端面210aと対向する部分との間と異なる部分に配置された状態となる。また、隣合う第1トレンチ210の間において、一方の第1トレンチ210における端面210aと、他方の第1トレンチ210における端面210aと対向する部分との間には、ベース領域17およびコンタクト領域19が配置された状態となる。なお、本実施形態では、上記のようにX軸方向において隣合う第2トレンチ220が2本の第1トレンチ210を挟むように形成されているため、隣合う第1トレンチ210では、各第1トレンチ210の端面210a同士が対向した状態となっている。
【0037】
そして、本実施形態では、上記のように、第2トレンチ220は、全ての隣合う第1トレンチ210の間に形成されていると共に、隣合う第1トレンチ210の複数個所を繋ぐように形成されている。このため、接続領域24は、全ての第1トレンチ210の少なくとも1か所に形成されている。
【0038】
また、第1トレンチ210および第2トレンチ220は、表面領域100が千鳥状となるように形成されている。このため、接続領域24が集中して形成され難くなっている。
【0039】
半導体基板10の一面10aには、層間絶縁膜25が形成されている。層間絶縁膜25上には、層間絶縁膜25に形成されたコンタクトホール25aを介してソース領域18およびコンタクト領域19と電気的に接続される上部電極26が形成されている。なお、ベース領域17、接続領域24、および底部領域23は、コンタクト領域19を介して上部電極26と接続されている。
【0040】
本実施形態の上部電極26は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域18)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、コンタクト領域19)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、本実施形態では、上部電極26が第1電極に相当している。
【0041】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続される下部電極27が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極27が第2電極に相当している。本実施形態では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。そして、このようなMOSFETが複数配置されることでセル領域が構成されている。
【0042】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。なお、本実施形態では、n+型、n型、n-型が第1導電型に相当しており、p-型、p型、p+型が第2導電型に相当している。次に、上記SiC半導体装置の作動について説明する。
【0043】
まず、上記SiC半導体装置は、ゲート電極22にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース領域17に反転層が形成されない。このため、下部電極27に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、ソース領域18からベース領域17内に電子が流れず、SiC半導体装置は、上部電極26と下部電極27との間に電流が流れないオフ状態となる。
【0044】
また、SiC半導体装置がオフ状態である場合には、ドレイン-ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜21の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置では、第1トレンチ210および第2トレンチ220よりも深い位置に、ディープ層14および第1電流分散層13が備えられている。このため、ディープ層14および第1電流分散層13との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線のせり上がりが抑制され、高電界がゲート絶縁膜21に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜21が破壊されることを抑制できる。
【0045】
さらに、本実施形態では、第1トレンチ210および第2トレンチ220の底面に底部領域23が形成され、底部領域23が接続領域24を介してコンタクト領域19と接続されている。このため、底部領域23からもドリフト層16へ空乏層が広がり、さらに高電界がゲート絶縁膜21に入り込み難くなる。
【0046】
ところで、このようなSiC半導体装置では、オフ状態である場合、ドリフト層16内に局所的な高電界が発生することによってアバランシェ降伏が発生する場合がある。そして、アバランシェ降伏が発生した場合には、アバランシェ降伏によって発生したホールが底部領域23および接続領域24を介してコンタクト領域19から引き抜かれる。この場合、本実施形態では、隣合う第1トレンチ210の間において、一方の第1トレンチ210における端面210aと、他方の第1トレンチ210における当該端面210aと対向する部分との間にソース領域18が形成されていない。つまり、本実施形態では、隣合う第1トレンチ210の間において、一方の第1トレンチ210における端面210aと、他方の第1トレンチ210における端面210aと対向する部分との間に寄生トランジスタが構成されない。そして、接続領域24は、端面210aと接するように形成されている。したがって、アバランシェが発生した場合、ホールが寄生トランジスタを通過することなくコンタクト領域19に引き抜かれるため、dV/dt耐量やアバランシェ耐量の向上を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、各第1トレンチ210に対して少なくとも1つの接続領域24が形成されるようにしている。このため、アバランシェが発生した際、ホールが底部領域23を流れる距離を短くし易くできる。したがって、さらに、dV/dt耐量やアバランシェ耐量の向上を図ることができる。
【0048】
そして、ゲート電極22に所定のゲート電圧、例えば20Vが印加されると、ベース領域17のうちの第1トレンチ210および第2トレンチ220に接している表面にチャネルが形成される。このため、上部電極26から注入された電子は、ソース領域18からベース領域17に形成されたチャネルを通った後、第2電流分散層15に流れる。そして、第2電流分散層15に流れた電子は、第1電流分散層13を通過して低濃度層12に流れ、その後にドレイン層としての基板11を通過して下部電極27へ流れる。これにより、上部電極26と下部電極27との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。なお、本実施形態では、チャネルを通過した電子が第2電流分散層15、第1電流分散層13および低濃度層12を通過して基板11へ流れるため、第2電流分散層15、第1電流分散層13および低濃度層12を有したドリフト層16が構成されているといえる。
【0049】
次に、上記SiC半導体装置の製造方法について、
図7A~
図7I、
図8A、および
図8Bを参照して説明する。なお、
図7A~
図7Iは、第1トレンチ210と第2トレンチ220との連結部分の近傍を示す斜視図である。
図8Aは、
図2に相当する部分の断面図であり、
図8Bは、
図3に相当する部分の断面図である。
【0050】
まず、
図7Aに示されるように、基板11上に、低濃度層12および第1電流分散層13を順に形成する。なお、低濃度層12および第1電流分散層13は、基板11の表面に対するエピタキシャル成長等によって形成される。
【0051】
次に、
図7Bに示されるように、第1電流分散層13上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことでディープ層14を形成する。
【0052】
なお、ここでは、ディープ層14をイオン注入によって形成しているが、イオン注入以外の方法によってディープ層14を形成してもよい。例えば、第1電流分散層13を選択的に異方性エッチングしてディープ層14と対応する位置に凹部を形成する。そして、凹部を埋め込むようにp型SiCをエピタキシャル成長させた後、第1電流分散層13の上に位置する部分のp型SiCを除去することでディープ層14を形成するようにしてもよい。
【0053】
続いて、
図7Cに示されるように、第1電流分散層13およびディープ層14の上に第2電流分散層15を形成することにより、低濃度層12、第1電流分散層13、第2電流分散層15を有するドリフト層16を構成する。第2電流分散層15は、第1電流分散層13の表面に対するエピタキシャル成長によって形成される。
【0054】
続いて、
図7D示されるように、第1電流分散層13上にベース領域17およびノンドープ層30を形成することにより、半導体基板10を構成する。ベース領域17およびノンドープ層30は、第2電流分散層15の表面上にエピタキシャル成長等をすることによって形成される。
【0055】
続いて、
図7Eに示されるように、第2電流分散層15上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことでコンタクト領域19を形成する。また、
図7Fに示されるように、第2電流分散層15上に図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行い、フォトレジストをマスクとしてイオン注入等を行うことでソース領域18を形成する。
【0056】
次に、
図7Gに示されるように、図示しないフォトレジストを配置してパターニングを行う。そして、フォトレジストをマスクとして異方性エッチングを行うことでソース領域18、ベース領域17を貫通して第2電流分散層15に達する第1トレンチ210および第2トレンチ220を形成する。なお、第1トレンチ210および第2トレンチ220は、上記の
図1を参照して説明した配置関係となるように形成される。
【0057】
続いて、
図7H、
図8A、および
図8Bに示されるように、半導体基板10の一面10a上にマスク40が配置された状態でイオン注入を行うことにより、底部領域23および接続領域24を形成する。なお、
図7Hでは、マスク40を省略して示している。また、このマスク40は、例えば、第1トレンチ210および第2トレンチ220を形成する際のマスクがそのまま用いられる。
【0058】
具体的には、半導体基板10の一面10aに対する法線方向に沿ってイオン注入を行うことにより、第2電流分散層15のうちの第1トレンチ210および第2トレンチ220の底面と接する部分に底部領域23を形成する。
【0059】
また、
図8Aに示されるように、半導体基板10の一面10aに対する法線方向(すなわち、Z軸方向)に対してX軸方向に傾いた方向からイオン注入を行うことにより、第1トレンチ210の端面210aに接続領域24を形成する。より詳しくは、第2トレンチ220の延設方向に沿った方向から斜めにイオン注入することにより、第2トレンチ220によって開放されている第1トレンチ210の端面210aにイオン注入を行って接続領域24を形成する。この際、
図8Bに示されるように、第1トレンチ210の側面のうちの端面210aと異なる部分は、第1トレンチ210の幅が狭いため、マスク40の影となってイオン注入が行われず、接続領域24が形成されない。
【0060】
続いて、
図7Iに示されるように、熱酸化等でゲート絶縁膜21を形成すると共に、CVD法等でゲート電極22を構成する。その後は特に図示しないが、一般的な製造プロセスを行い、層間絶縁膜25、上部電極26、下部電極27等を形成することにより、上記
図1に示すSiC半導体装置が製造される。
【0061】
以上説明した本実施形態によれば、隣合う第1トレンチ210の間において、一方の第1トレンチ210における端面210aと、他方の第1トレンチ210における端面210aと対向する部分との間にソース領域18が形成されていない。このため、隣合う第1トレンチ210の間において、一方の第1トレンチ210における端面210aと、他方の第1トレンチ210における端面210aと対向する部分との間に寄生トランジスタが構成されない。そして、接続領域24は、端面210aと接するように形成されている。したがって、アバランシェが発生した場合、ホールが寄生トランジスタを通過することなくコンタクト領域19に引き抜かれるため、dV/dt耐量やアバランシェ耐量の向上を図ることができる。
【0062】
(1)本実施形態では、接続領域24は、複数の第1トレンチ210のそれぞれと接するように形成されている。つまり、SiC半導体装置は、各第1トレンチ210に対して少なくとも1つの接続領域24が接するように形成されている。このため、ホールが底部領域23を流れる距離を短くし易くでき、さらに、dV/dt耐量やアバランシェ耐量の向上を図ることができる。
【0063】
(2)本実施形態では、ドリフト層16内にディープ層14が形成されている。このため、ドリフト層16とディープ層14との間に構成される空乏層により、高電界がゲート絶縁膜21に入り込むことを抑制でき、ゲート絶縁膜21が破壊されることを抑制できる。
【0064】
(3)本実施形態では、ドリフト層16は、低濃度層12、第1電流分散層13、第2電流分散層15を有する構成とされている。そして、ディープ層14の間には、低濃度層12よりも高不純物濃度とされた第1電流分散層13が配置されている。したがって、例えば、ドリフト層16を低濃度層12のみで構成した場合と比較して、オン抵抗の低減を図ることができる。
【0065】
(4)本実施形態では、隣合う第1トレンチ210の間の部分では、第2トレンチ220と対向する部分にコンタクト領域19が形成され、第2トレンチ220と対向する部分と異なる部分にソース領域18が形成されている。つまり、隣合う第1トレンチ210の間の部分では、Y軸方向に沿ってソース領域18とコンタクト領域19とが交互に形成されている。このため、ソース領域18およびコンタクト領域19を配置し易くなり、面積効率を向上することでSiC半導体装置の小型化を図ることができる。
【0066】
(5)本実施形態では、Y軸方向において隣合う第2トレンチ220は、それぞれ間隔がLで等しくされている。また、共通の第1トレンチ210を挟んで両側に配置される第2トレンチ220において、一方の側に配置される第2トレンチ220は、他方の側に配置されるY軸方向に沿って隣合う第2トレンチ220の中心と対向する状態で形成されている。つまり、第1トレンチ210および第2トレンチ220は、表面領域100が千鳥状となるように形成されている。このため、接続領域24が不均一に形成され難くなり、さらに、ホールが底部領域23を流れる距離を短くし易くでき、dV/dt耐量やアバランシェ耐量の向上を図ることができる。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第2トレンチ220の形状を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、
図9に示されるように、第2トレンチ220は、隣合う3本の第1トレンチ210を繋ぐように形成されている。但し、上記のように、第2トレンチ220は、各第1トレンチ210の少なくとも1か所に接続領域24が形成されるように形成されている。つまり、第2トレンチ220は、各第1トレンチ210の少なくとも1個所が端面210aとなるように形成されている。
【0069】
本実施形態では、第2トレンチ220は、X軸方向において隣合う第2トレンチ220の間に3つの表面領域100が構成されるように配置されている。また、第2トレンチ220は、X軸方向において、徐々にY軸方向にずれるように配置されている。
【0070】
以上説明した本実施形態によれば、隣合う第1トレンチ210の間において、一方の第1トレンチ210における端面210aと、他方の第1トレンチ210における端面210aと対向する部分との間に寄生トランジスタが構成されない。したがって、アバランシェが発生した場合、ホールが寄生トランジスタを通過することなくコンタクト領域19に引き抜かれるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態のように、第1トレンチ210および第2トレンチ220の位置関係は適宜変更可能である。そして、第2トレンチ220によって繋がれる第1トレンチ210の数も適宜変更可能である。
【0072】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0073】
上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されたSiC半導体装置について説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、SiC半導体装置は、例えば、nチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されていてもよい。さらに、SiC半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記第1実施形態におけるn+型のドレイン領域(すなわち、基板11)をp+型のコレクタ領域に変更する以外は、上記第1実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。
【0074】
また、上記各実施形態において、接続領域24は、各第1トレンチ210に形成されていなくてもよい。さらに、上記各実施形態において、コンタクト領域19が形成されておらず、ベース領域17が半導体基板10の一面10aから露出していてもよい。つまり、表面領域100は、ベース領域17およびソース領域18にて構成されていてもよい。そして、上記各実施形態において、ドリフト層16は、例えば、低濃度層12のみで構成されていてもよい。この場合、ディープ層14は形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。このようなSiC半導体装置としても、隣合う第1トレンチ210の間において、一方の第1トレンチ210における端面210aと、他方の第1トレンチ210における端面210aと対向する部分との間にソース領域18が形成されないようにすることにより、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0075】
11 基板
16 ドリフト層
17 ベース領域
18 ソース領域(不純物領域)
19 コンタクト領域
21 ゲート絶縁膜
22 ゲート電極
23 底部領域
24 接続領域
26 上部電極(第1電極)
27 下部電極(第2電極)
210 第1トレンチ
220 第2トレンチ