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特許7439757アルカリ土類金属炭酸塩微粉末とその製造方法、及びアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】アルカリ土類金属炭酸塩微粉末とその製造方法、及びアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20240220BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240220BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240220BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20240220BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240220BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C01F11/18 M
C08G73/10
C08K3/26
C08K9/04
C08L67/00
C08L79/08 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020535905
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031574
(87)【国際公開番号】W WO2020032238
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2018150378
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】日元 武史
(72)【発明者】
【氏名】長井 淳
(72)【発明者】
【氏名】井東 優忠
(72)【発明者】
【氏名】河野 孝史
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-023019(JP,A)
【文献】特開2001-266651(JP,A)
【文献】特開2005-231917(JP,A)
【文献】特開2009-001475(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111692(WO,A1)
【文献】特開平11-092141(JP,A)
【文献】特開昭53-028644(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/18
C08G 73/10
C08K 3/26
C08K 9/04
C08L 67/00
C08L 79/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドに添加するためのアルカリ土類金属炭酸塩微粉末であって、
表面が、前記ポリイミドの原料であるテトラカルボン酸又はその無水物で被覆されていることを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
【請求項2】
前記テトラカルボン酸又はその無水物が、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物である請求項1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
【請求項3】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末が、炭酸ストロンチウム微粉末である請求項1又は2に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
【請求項4】
さらに、表面に付着した界面活性剤を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
【請求項5】
前記界面活性剤が、親水性基と疎水性基とを有し、更に水中でアニオンを形成する基を有する化合物である請求項4に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
【請求項6】
前記疎水性基が、フェニル基である請求項5に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
【請求項7】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルである請求項6に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
【請求項8】
ポリイミドに添加するためのアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造方法であって、
前記ポリイミドの原料であるテトラカルボン酸又はその無水物の存在下にて、アルカリ土類金属の水酸化物と二酸化炭素を反応させてアルカリ土類金属炭酸塩粒子を生成させる反応工程を含むことを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記反応工程で得られたアルカリ土類金属炭酸塩粒子を75℃以上115℃以下の範囲内で加熱熟成する熟成工程を備える請求項8に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、前記アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆している前記テトラカルボン酸又はその無水物との反応生成物であるアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリイミド組成物。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、前記アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆している前記テトラカルボン酸又はその無水物とを混合して、反応させるアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリイミド組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末とその製造方法、及びアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物とその製造方法に関する。
本願は、2018年8月9日に、日本に出願された特願2018-150378号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末は、ポリマーの添加剤として利用されている。例えば、炭酸ストロンチウム微粉末は、光学用フィルムに用いられるポリマー組成物の位相差制御用の添加剤として利用されている。ポリマー組成物の位相差制御用として用いられる炭酸ストロンチウム微粉末は、通常、平均長径が5~100nmの微細な針状粒子からなる。
【0003】
針状粒子からなる炭酸ストロンチウム微粉末を製造する方法として、結晶成長抑制剤の存在下にて、水酸化ストロンチウムと二酸化炭素を反応させて炭酸ストロンチウム微粒子を生成させ、次いで、得られた炭酸ストロンチウム微粒子を加熱熟成して針状に粒成長させる方法が知られている。例えば、特許文献1には、結晶成長抑制剤として、分子内に水酸基を1つ以上含むジカルボン酸を用いる炭酸ストロンチウム微粉末の製造方法が開示されている。この特許文献1の実施例では、分子内に水酸基を1つ以上含むジカルボン酸としてDL-酒石酸が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-193488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、炭酸ストロンチウム微粉末をポリマーに添加して、ポリマー組成物の位相差を制御するためには、炭酸ストロンチウム微粉末をポリマーに対して均一かつ高濃度に分散させることが必要となる。
しかしながら、前記特許文献1に記載されている結晶成長抑制剤として、分子内に水酸基を1つ以上含むジカルボン酸を用いて製造した炭酸ストロンチウム微粉末は、結晶成長抑制剤がストロンチウム塩として混在するおそれがある。ストロンチウム塩が混在した炭酸ストロンチウム微粉末を、ポリマーに高濃度で添加すると、得られたポリマー組成物は、着色して可視光透過率が低下したり、ヘイズが高くなる場合がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリマーに高濃度で添加しても、可視光透過率が高く、ヘイズが低いポリマー組成物を得ることが可能なアルカリ土類金属炭酸塩微粉末とその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を高濃度で添加しても可視光透過率が高く、ヘイズが低いアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物とその製造方法を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するために検討を重ねた結果、結晶成長抑制剤として、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を添加するポリマーの原料であるモノマーを用いることによって、微細なアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を製造することが可能となることを見出した。そして、そのモノマーで被覆されているアルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、モノマーとを混合して、反応させることによって、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を高濃度で添加しても可視光透過率が高く、ヘイズが低いアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物を得ることが可能となることを確認して、本発明を完成させた。
【0008】
[1]ポリマーに添加するためのアルカリ土類金属炭酸塩微粉末であって、表面が、前記ポリマーの原料であるモノマーで被覆されていることを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
[2]前記モノマーが、カルボキシル基を有する化合物又はその無水物である上記[1]に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
[3]前記ポリマーが、ポリエステル又はポリイミドである上記[1]又は[2]に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
[4]アルカリ土類金属炭酸塩微粉末が、炭酸ストロンチウム微粉末である上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
[5]さらに、表面に付着した界面活性剤を有する上記[1]から[4]のいずれか1つに記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
[6]前記界面活性剤が、親水性基と疎水性基とを有し、更に水中でアニオンを形成する基を有する化合物である上記[5]に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
[7]前記疎水性基が、フェニル基である上記[6]に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
[8]前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルである上記[7]に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末。
【0009】
[9]ポリマーに添加するためのアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造方法であって、前記ポリマーの原料であるモノマーの存在下にて、アルカリ土類金属の水酸化物と二酸化炭素を反応させてアルカリ土類金属炭酸塩粒子を生成させる反応工程を含むことを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造方法。
[10]さらに、前記反応工程で得られたアルカリ土類金属炭酸塩粒子を75℃以上115℃以下の範囲内で加熱熟成する熟成工程を備える上記[9]に記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造方法。
【0010】
[11]上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、前記アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆している前記モノマーとの反応生成物であるアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物。
【0011】
[12]上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、前記アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆している前記モノマーとを混合して、反応させるアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリマーに高濃度で添加しても、可視光透過率が高く、ヘイズが低いポリマー組成物を得ることが可能なアルカリ土類金属炭酸塩微粉末とその製造方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を高濃度で添加しても可視光透過率が高く、ヘイズが低いアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物とその製造方法を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で得られた炭酸ストロンチウム微粉末のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末とその製造方法、及びアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物とその製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末は、ポリマーに添加するためのアルカリ土類金属炭酸塩微粉末であって、表面が、そのポリマーの原料であるモノマーで被覆されていることを特徴としている。
【0015】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末は、炭酸マグネシウム微粉末、炭酸カルシウム微粉末、炭酸ストロンチウム微粉末、炭酸バリウム微粉末を含む。これらのアルカリ土類金属炭酸塩微粉末は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。アルカリ土類金属炭酸塩微粉末は、炭酸ストロンチウム微粉末であることが好ましい。
【0016】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末は、アスペクト比(平均長径/平均短径の比)が1.1以上であることが好ましく、1.2以上5.0以下の範囲内にあることがより好ましく、1.3以上4.0以下の範囲内にあることが特に好ましい。アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の平均長径は、5nm以上100nm以下の範囲内にあることが好ましく、10nm以上80nm以下の範囲内にあることがより好ましく、20nm以上70nm以下の範囲内にあることが特に好ましい。また、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の平均短径は、特に制限はないが、3nm以上50nm以下の範囲内にあることが好ましく、8nm以上40nm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0017】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の平均長径及び平均短径は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を目視又は自動的に画像処理する方法で測定することができる。アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の長径は、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を長方形とみなしたときの長手方向の長さ(長辺の長さ)として測定することができる。また、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の短径は、アルカリ土類金属炭酸塩を長方形と見立てたときの短手方向の長さ(短辺の長さ)として測定することができる。具体的には画像のアルカリ土類金属炭酸塩粒子に外接する、面積が最少となる長方形を算出し、その長辺と短辺の長さから長径と短径を求める。さらに、「平均」とは、統計学上の信頼性のある個数(N数)のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の長径と短径を測定して得られた平均値を意味し、その個数としては通常は100個以上、好ましくは300個以上、より好ましくは500個以上である。
【0018】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆するモノマーは、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末が添加されるポリマーの原料となるモノマーである。このモノマーは、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造時において、ポリマーの一部となるため、異物が生じない。
【0019】
モノマーは、カルボキシル基を有する化合物又はその無水物であることが好ましい。カルボキシル基は、アルカリ土類金属炭酸塩の炭酸塩との親和性が高い。このため、カルボキシル基を有する化合物又はその無水物は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造時において、アルカリ土類金属炭酸塩粒子に付着しやすく、結晶成長抑制剤として有効に作用する。
【0020】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末が添加されるポリマーは、カルボキシル基を有する化合物又はその無水物に由来するカルボニル基(-C(=O)-)を有するものであることが好ましい。ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリカーボネートを挙げることができる。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)を挙げることができる。これらポリマーの中で好ましいのは、ポリエステル又はポリイミドである。
【0021】
ポリマーがPETである場合は、モノマーとしてテレフタル酸を用いることができる。また、ポリマーがポリイミドである場合は、モノマーとしてテトラカルボン酸又はその無水物を用いることができる。テトラカルボン酸又はその無水物の例としては、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水和物(PMDA-HS)を挙げることができる。
【0022】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆するモノマーの量は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末100質量部に対して、3質量部以上30質量部以下の範囲内にあることが好ましく、5質量部以上20質量部以下の範囲内にあることがより好ましい。モノマーの量が少なくなりすぎると、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末製造時において結晶成長抑制効果が低下し、微粒子のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を得るのが難しくなるおそれがある。また、一方、モノマーの量が多くなりすぎると、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物の製造時において、未反応のモノマーが残存し、これが異物となることによって、生成したポリマー組成物の可視光透過率が低下したり、ヘイズが高くなるおそれがある。アルカリ土類金属炭酸塩微粉末のモノマーの含有量は、例えば、TG-DTA(熱重量示差熱分析装置)によって測定することができる。
【0023】
本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末は、さらに、界面活性剤で表面処理されていてもよい。界面活性剤で表面処理したアルカリ土類金属炭酸塩微粉末は、分散性が向上する。なお、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物の製造時において、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の分散処理を機械的に行う場合など、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末自体に分散性が要求されない場合には、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末は界面活性剤で表面処理されていなくてもよい。
【0024】
界面活性剤としては、親水性基と疎水性基とを有し、更に水中でアニオンを形成する基を有する化合物を用いることができる。この化合物は、親水性基がポリオキシアルキレン基であって、このポリオキシアルキレン基の一方の末端に疎水性基が結合し、他方の末端に水中でアニオンを形成する基が結合している化合物であることが好ましい。疎水性基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。水中でアニオンを形成する基は、カルボン酸基、硫酸基又はリン酸基であることが好ましい。
【0025】
界面活性剤は、水中でアニオンを形成する基がリン酸基であるリン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステルは、カルボン酸エステルや硫酸エステルと比較して耐熱性が高いため、リン酸エステルで表面処理されているアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を添加したポリマー組成物は、界面活性剤の熱分解による着色が起こりにくい。リン酸エステルの例としては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルやポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを挙げることができる。
【0026】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の表面に付着している界面活性剤の量は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末100質量部に対して、一般に1質量部以上40質量部以下の範囲内、好ましくは3質量部以上30質量部以下の範囲内である。界面活性剤の量が少なくなりすぎると、分散性を向上させる効果が得られにくくなるおそれがある。一方、界面活性剤の量が多くなりすぎると、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物の製造時において、界面活性剤が異物となることによって、生成したポリマー組成物の可視光透過率が低下したり、ヘイズが高くなるおそれがある。アルカリ土類金属炭酸塩微粉末の界面活性剤の含有量は、例えば、TG-DTA(熱重量示差熱分析装置)によって測定することができる。
【0027】
以上のような構成とされた本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末によれば、表面が、そのアルカリ土類金属炭酸塩微粉末が添加されるポリマーの原料であるモノマーで被覆されているので、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物の製造時において異物が混入しにくい。このため本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を用いることによって、ポリマーに高濃度で添加しても、可視光透過率が高く、ヘイズが低いポリマー組成物を得ることが可能となる。
【0028】
また、本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末において、表面に付着した界面活性剤を有する場合は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物の製造時において分散性が向上するので、ポリマー組成物中にアルカリ土類金属炭酸塩微粉末をより均一に分散させることができる。
【0029】
次に、本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造方法について説明する。
本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末は、例えば、モノマーの存在下にて、アルカリ土類金属の水酸化物と二酸化炭素を反応させてアルカリ土類金属炭酸塩粒子を生成させる反応工程と、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を針状に成長させる熟成工程と、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を界面活性剤で処理する表面処理工程と、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を乾燥する乾燥工程とを有する方法によって製造することができる。
【0030】
(反応工程)
反応工程では、モノマーとアルカリ土類金属の水酸化物とを含む原料液を撹拌しながら、この原料液に二酸化炭素ガスを導入し、アルカリ土類金属の水酸化物を炭酸化させることによってアルカリ土類金属炭酸塩粒子を生成させることが好ましい。原料液は、アルカリ土類金属の水酸化物が溶解した水溶液であってもよいし、アルカリ土類金属の水酸化物が分散した水性懸濁液であってもよい。原料液中のアルカリ土類金属の水酸化物の濃度は、特に制限はないが、通常は1質量%以上20質量%以下の範囲内であり、好ましくは2質量%以上18質量%以下の範囲内、より好ましくは3質量%以上15質量%以下の範囲内である。
【0031】
モノマーは、生成したアルカリ土類金属炭酸塩粒子に付着し、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の結晶成長抑制剤として作用する。モノマーとしては、上述したアルカリ土類金属炭酸塩微粉末が添加されるポリマーの原料となるモノマーである。原料液のモノマーの含有量は、アルカリ土類金属の水酸化物100質量部に対して一般に0.1質量部以上20質量部以下の範囲内、好ましくは1質量部以上10質量部以下の範囲内である。
【0032】
原料液の液温は、5℃以上60℃以下の範囲内にあることが好ましい。また、原料液に導入する二酸化炭素ガスの流量は、アルカリ土類金属の水酸化物1gに対して、一般に0.5mL/分以上200mL/分以下の範囲内、好ましくは0.5mL/分以上100mL/分以下の範囲内である。
【0033】
反応工程にて生成するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の粒子形状は、特に制限はなく、粒状であってもよいし、針状であってもよい。アルカリ土類金属炭酸塩粒子の粒子形状やサイズは、原料液の液温、原料液のアルカリ土類金属の水酸化物及びモノマーの濃度、原料液に導入される二酸化炭素ガスの流量などの条件によって調整することができる。なお、反応工程にて生成するアルカリ土類金属炭酸塩粒子が針状である場合は、次の熟成工程は省略してもよい。
【0034】
(熟成工程)
熟成工程では、反応工程で得られたアルカリ土類金属炭酸塩粒子の水性懸濁液を75℃以上115℃以下の範囲内の温度で加熱熟成することによって、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を針状に粒成長させることが好ましい。加熱温度が75℃未満であると、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長径の結晶成長が不十分で平均アスペクト比が低くなる傾向がある。一方、加熱温度が115℃を超えると、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の短径の結晶成長が促進されてアスペクト比が低くなる傾向がある。加熱温度は、好ましくは80℃以上110℃以下の範囲内であり、特に好ましくは85℃以上105℃以下の範囲内である。加熱熟成は、撹拌しながら行うことが好ましい。加熱時間は、特に限定はないが、通常は1時間以上100時間以下の範囲内であり、好ましくは5時間以上50時間以下の範囲内であり、特に好ましくは10時間以上30時間以下の範囲内である。
【0035】
(表面処理工程)
表面処理工程では、熟成工程で得られた針状のアルカリ土類金属炭酸塩粒子のスラリーに界面活性剤を添加して、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の表面を界面活性剤で処理することによって、高分散性針状アルカリ土類金属炭酸塩粒子の水性スラリーを得ることが好ましい。スラリーに界面活性剤を添加した後は、スラリーを撹拌して界面活性剤の濃度を均一にし、次いで、スラリーにせん断力を付与することが好ましい。せん断力を付与して、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の凝集粒子を解砕することによって、アルカリ土類金属炭酸塩粒子(一次粒子)の表面を界面活性剤で均一に処理することができる。スラリーに添加する界面活性剤の量は、スラリー中のアルカリ土類金属炭酸塩粒子100質量部に対して、一般に1質量部以上40質量部以下の範囲内、好ましくは3質量部以上30質量部以下の範囲内である。
【0036】
(乾燥工程)
乾燥工程では、上記の表面処理工程で得られた高分散性針状アルカリ土類金属炭酸塩粒子の水性スラリーを乾燥してアルカリ土類金属炭酸塩を得る。乾燥工程は、スプレードライヤ及びドラムドライヤーなどの乾燥機を用いた公知の乾燥方法によって行なうことができる。
【0037】
以上のような構成とされた本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の製造方法によれば、反応工程において、モノマーの存在下にて、アルカリ土類金属の水酸化物と二酸化炭素を反応させてアルカリ土類金属炭酸塩粒子を生成させるので、モノマーで被覆されたアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を工業的に有利に製造することができる。また、熟成工程において、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を針状に成長させることによって、ポリマー組成物の位相差制御用として有用な針状粒子からなるアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を工業的に有利に製造することができる。さらに、表面処理工程において、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を界面活性剤で処理することによって、分散性が向上したアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を工業的に有利に製造することができる。
【0038】
次に、本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を用いたアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物及びその製造方法について説明する。
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物は、上述のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、このアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆しているモノマーとの反応生成物であり、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末とモノマーとを混合して、反応させることによって製造することができる。より具体的には、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、このアルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆しているモノマーと、溶媒とを混合して前駆体を得て、次いで、得られた前駆体中のモノマーを反応させることによって製造することができる。前駆体は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆しているモノマーと反応してポリマーを生成するモノマーを含んでいてもよい。
【0039】
例えば、ポリマー組成物のポリマーがポリエチレンテレフタレート(PET)である場合は、テレフタル酸で被覆されているアルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、エチレングリコールと、テレフタル酸と、溶媒とを混合してPET前駆体を得る。次いで、PET前駆体を常法に従って加熱して、エチレングリコールとテレフタル酸とを反応(重合)させることによって、PETを生成させる。
【0040】
また、ポリマー組成物のポリマーがポリイミドである場合は、テトラカルボン酸又はその無水物で被覆されているアルカリ土類金属炭酸塩微粉末と、ジアミンと、テトラカルボン酸又はその無水物と、溶媒を混合してポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得る。次いで、ポリイミド前駆体を常法に従って加熱して、ジアミンとテトラカルボン酸又はその無水物とを反応(重合)させることによって、ポリイミドを生成させる。
【0041】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物を、光学用フィルムとして製造する方法としては、例えば、前駆体を基板の上に塗布して塗布膜を得て、次いで塗布膜を加熱する方法、ポリマー組成物を射出成形や押出成形する方法を用いることができる。得られたアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物のフィルムは、延伸処理を行って、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を配向させることが好ましい。
【0042】
アルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末の含有量は、ポリマー組成物の用途によっても異なるが、一般に0.1質量%以上50質量%以下の範囲内、好ましくは1.0質量%以上30質量%以下の範囲内である。
【0043】
以上のような構成とされた本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物の製造方法によれば、モノマーを反応させてポリマーを生成させる際に、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を被覆しているモノマーとポリマー生成用のモノマーとが反応することによって、生成したポリマーとアルカリ土類金属炭酸塩粒子との間に異物が混入することが抑えられる。このため、本実施形態のアルカリ土類金属炭酸塩微粉末含有ポリマー組成物は、アルカリ土類金属炭酸塩微粉末を高濃度で添加しても可視光透過率が高く、ヘイズが低くなる。
【実施例
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0045】
[実施例1]
(1)炭酸ストロンチウム微粉末の製造
(a)反応工程
水温10℃の純水3Lに、結晶成長抑制剤としてビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)13.92gを加えて撹拌してs-BPDA水溶液を調製した。得られたs-BPDA水溶液に、水酸化ストロンチウム八水和物(特級試薬、純度:96%以上)366gを投入し、撹拌して濃度5.6質量%の水酸化ストロンチウム水性懸濁液を調製した。得られた水酸化ストロンチウム水性懸濁液を10℃に維持しつつ、撹拌を続けながら、この水性懸濁液に二酸化炭素ガスを0.5L/分の流量(水酸化ストロンチウム1gに対して22mL/分の流量)にて、水性懸濁液のpHが7になるまで吹き込み、炭酸ストロンチウム微粒子を生成させた。その後、さらに30分間撹拌を続け、炭酸ストロンチウム微粒子水性懸濁液を得た。
【0046】
(b)熟成工程
上記(a)で得られた炭酸ストロンチウム微粒子水性懸濁液を、周速2.5m/secで回転する撹拌羽を用いて撹拌しながら85℃の温度にて12時間加温処理して炭酸ストロンチウム微粒子を針状に成長させた。その後、室温まで放冷して、炭酸ストロンチウム微粒子の水性スラリーを製造した。
【0047】
(c)表面処理工程
上記(b)で得られた炭酸ストロンチウム微粒子の水性スラリー(固形分濃度:6質量%)に、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル(炭酸ストロンチウム微粒子100質量部に対して30質量部)を添加して溶解させ、次いでスターラーで5分間撹拌した後、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)を用いて、せん断力をかけて、分散処理を行った。
【0048】
(d)乾燥工程(ドラムドライヤー)
上記(c)で得られた高分散性針状炭酸ストロンチウム微粒子の水性スラリーを110~120℃に加熱した回転式ドラムドライヤーに吹き付けて、炭酸ストロンチウム微粉末を得た。得られた炭酸ストロンチウム微粉末を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した。図1に、炭酸ストロンチウム微粉末のSEM写真を示す。図1の写真から、炭酸ストロンチウム微粉末は、針状粒子の微粉末であることが確認された。また、SEM写真の画像解析を行ったところ、針状粒子の平均長径は50nmで、アスペクト比は2.1であった。
【0049】
(2)炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリアミック酸の調製
上記(1)で製造した炭酸ストロンチウム微粉末0.28gとN-メチルピロリドン(NMP)25.0gを試験管に投入し、次いで超音波ホモジナイザーを用いて分散処理を行って、炭酸ストロンチウム分散液を得た。得られた炭酸ストロンチウム分散液に、シクロヘキシルジアミン(DACH)1.0gを添加して70℃に加温しながら15分間撹拌して溶解させた。次いで、炭酸ストロンチウム分散液に、さらにs-BPDA2.6gを添加して、70℃に維持しつつ6時間撹拌した後、さらに室温で20時間撹拌して溶解・重合を行い、炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリアミック酸溶液を得た。
【0050】
(3)炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムの作製
上記(2)で調製した炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリアミック酸を、スピンコーターを用いてガラス板上に塗布して塗布膜を形成した。次いで、得られた塗布膜を、イナートオーブンを用いて窒素雰囲気下で30℃から2℃/minで350℃まで昇温し、350℃で10分間保持する熱処理により乾燥させた。得られた乾燥膜をガラス板から剥離して、炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムを得た。得られた炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムの膜厚は9.8μmであった。
【0051】
(4)炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムの評価
得られた炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムの可視光透過率とヘイズを、分光光度計(日本分光株式社製)を用いて測定した。その結果を、下記の表1に示す。なお、可視光透過率は、波長400nmの光を用いて測定した。
【0052】
[比較例1]
(1)炭酸ストロンチウム微粉末の製造の(a)反応工程において、結晶成長抑制剤としてs-BPDAの代わりにDL-酒石酸を7.1g添加したこと以外は、実施例1と同様にして炭酸ストロンチウム微粉末を製造した。得られた炭酸ストロンチウム微粉末を、SEMを用いて観察した。その結果、得られた炭酸ストロンチウム微粉末は、平均長径が60nmで、アスペクト比が2.1の針状炭酸ストロンチウム微粒子からなる微粉末であることが確認された。
次いで、得られた炭酸ストロンチウム微粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムを作製し、膜厚、可視光透過率及びヘイズを測定した。その結果を表1に示す。
【0053】
[比較例2]
(1)炭酸ストロンチウム微粉末の製造の(a)反応工程において、結晶成長抑制剤としてs-BPDAの代わりにテレフタル酸を7.1g添加したこと以外は、実施例1と同様にして炭酸ストロンチウム微粉末を製造した。得られた炭酸ストロンチウム微粉末を、SEMを用いて観察した。その結果、得られた炭酸ストロンチウム微粉末は、平均長径が55nmで、アスペクト比が2.1の針状炭酸ストロンチウム微粒子からなる微粉末であることが確認された。
次いで、得られた炭酸ストロンチウム微粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリアミック酸溶液を調製したところ、炭酸ストロンチウム微粉末の分散不良が発生した。これは、炭酸ストロンチウム微粉末の表面を被覆しているテレフタル酸とポリアミック酸との親和性が低いためであると考えられる。そして、その得られた炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリアミック酸溶液を用いて作製した炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムは、白濁しており、可視光透過率及びヘイズを測定できなかった。
【0054】
【表1】
【0055】
上記の結果から明らかなように、結晶成長抑制剤としてポリイミド合成用のモノマーであるs-BPDAを使用して製造した炭酸ストロンチウム微粉末を添加した実施例1の炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムは、結晶成長抑制剤としてDL-酒石酸を使用して製造した炭酸ストロンチウム微粉末を添加した比較例1の炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムと比較して、可視光透過率が高く、ヘイズが低くなった。比較例1の炭酸ストロンチウム微粉末含有ポリイミド組成物フィルムの可視光透過率が低下し、ヘイズが高くなったのは、ポリイミドと炭酸ストロンチウム微粉末との間に異物(酒石酸)が残存したためであると考えられる。
【0056】
以上の結果から、本実施例によれば、ポリマーに高濃度で添加しても、可視光透過率が高く、ヘイズが低いポリマー組成物を得ることが可能な炭酸ストロンチウム微粉末を得ることができることが確認された。
図1