(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】カーペット
(51)【国際特許分類】
A47G 27/02 20060101AFI20240220BHJP
D06M 11/79 20060101ALN20240220BHJP
D06M 13/513 20060101ALN20240220BHJP
D06M 15/277 20060101ALN20240220BHJP
D06M 15/643 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
A47G27/02 D
D06M11/79
D06M13/513
D06M15/277
D06M15/643
(21)【出願番号】P 2020557714
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046050
(87)【国際公開番号】W WO2020111019
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2018220983
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】境 賢一
(72)【発明者】
【氏名】梶山 宏史
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-503196(JP,A)
【文献】特開2018-071023(JP,A)
【文献】特開2016-073374(JP,A)
【文献】国際公開第02/002862(WO,A2)
【文献】特表2002-523645(JP,A)
【文献】特表2012-503031(JP,A)
【文献】特開2003-265301(JP,A)
【文献】特開平09-067774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G27/00-27/06
D06M11/79
D06M13/513
D06M15/277
D06M15/643
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆パイル単糸を有するパイル糸を備え、
前記被覆パイル単糸は、オルガノポリシロキサン
、フッ素系化合物と
硬化樹脂を含有する層Aが付着したパイル単糸であり、
前記被覆パイル単糸の繊度が8~40dtexであり、
前記パイル糸の捲縮伸長率が10~30%であり、
防汚ドライ試験におけるカーペット汚染度(△E)が30以下であり、
防汚ウェット試験におけるカーペット汚染度(△E)が30以下である、カーペット。
【請求項2】
前記被覆パイル単糸の異形度が1.1~5.0である、請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記フッ素系化合物がシロキサン結合を有する、請求項1または2に記載のカーペット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のカーペットの製造方法であって、
パイル単糸を有するパイル糸と一次基布とを備えるカーペット層を得る工程と、
カーペット層をオルガノポリシロキサン
、フッ素系化合物
および硬化樹脂の前駆体を含有する溶液に含浸する工程とを、
この順に有するカーペットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットは、オフィス、ホテル、飲食店、公共施設、家庭、建物の入り口などや、自動車用などに幅広く使用されているが、使用するにつれて汚れがカーペットに付着して、その外観が損なわれていくとの課題があった。そこで、カーペットに汚れがつきにくくするために、カーペットに防汚性能を付与する検討が、従来から行われてきた。
【0003】
ここで、カーペットにドライソイルおよびウェットソイルに対する防汚性能を付与する技術としては、カーペットを構成するパイル糸の表面にオルガノポリシロキサン、フッ素樹脂および組成物のpHを酸性とする酸を含む組成物とを付着させる手法(特許文献1参照)が知られている。そして、これらのカーペットの防汚性能には以下の種類があった。使用開始直後におけるドライソイルに対する防汚性能(以下、ドライ初期防汚性能と称することがある)。カーペットの使用開始直後におけるウェットソイルに対する防汚性能(以下、ウェット初期防汚性能と称することがある)。このウェット初期防汚性能はパイル糸の撥水性能の向上により向上する性能である。特許文献1に開示された手法は、表面にオルガノポリシロキサンおよびフッ素樹脂が担持されていないパイル糸で構成されるカーペットのドライ初期防汚性能およびウェット初期防汚性能に比べ、優れたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、特許文献1に記載のカーペットのドライ初期防汚性能およびウェット初期防汚性能は優れたものである。しかし、発明者らの知見によると、このカーペットを土足で踏みつけられることの多いタイルカーペットなど、汚れやすい環境下における使用が想定されているカーペットとして用いた場合には、ドライソイルに対する防汚性能およびウェットソイルに対する防汚性能が著しく低下するとの課題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記の課題に鑑み、ドライ初期防汚性能およびウェット初期防汚性能に優れ、さらに、ドライソイルに対する防汚性能の低下を抑制する性能(以下、ドライ防汚耐久性能と称することがある)とウェットソイルに対する防汚性能の低下を抑制する性能(以下、ウェット防汚耐久性能と称することがある)にも優れるカーペットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、本発明のカーペットは次のものである。
(1)被覆パイル単糸を有するパイル糸を備え、被覆パイル単糸を有するパイル糸を備え、
前記被覆パイル単糸は、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物とを含有する層Aが付着したパイル単糸であり、
前記被覆パイル単糸の繊度が8~40dtexであり、
前記パイル糸の捲縮伸長率が10~30%であり、
防汚ドライ試験におけるカーペット汚染度(△E)が30以下であり、
防汚ウェット試験におけるカーペット汚染度(△E)が30以下である、カーペットである。
(2)前記被覆パイル単糸の異形度が1.1~5.0である、(1)のカーペットであることが好ましい。
(3)前記フッ素系化合物がシロキサン結合を有する、(1)または(2)のカーペットであることが好まししい。
【0008】
また本発明のカーペットの製造方法は以下のものである。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載のカーペットの製造方法であって、
パイル単糸を有するパイル糸と一次基布とを備えるカーペット層を得る工程と、
カーペット層をオルガノポリシロキサンおよびフッ素系化合物を含有する溶液に含浸する工程とを、この順に有するカーペットの製造方法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドライ初期防汚性能およびウェット初期防汚性能に優れ、さらに、ドライ防汚耐久性能とウェット防汚耐久性能にも優れるカーペットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のカーペットの一の実施形態例の断面概念図である。
【
図2】
図1に示す本発明のカーペットのA-A’断面の断面概念図である。
【
図3】
図1に示す本発明のカーペットが有する被覆パイル単糸の断面概念図である。
【
図4】本発明のカーペットの一実施形態例における被覆パイル単糸の表面SEM写真である。
【
図5】本発明のパイル単糸の断面形状を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実態の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明のカーペットは、パイル糸を備えており、それを構成するパイル単糸がオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aが付着している。そして、本発明のカーペットにおいては、上記の被覆パイル単糸の繊度(以下、単糸繊度と称することがある)は8~40dtexであり、上記のパイル糸の捲縮伸長率は10~30%であり、防汚ドライ試験におけるカーペット汚染度(△E)が30以下であり、防汚ウェット試験におけるカーペット汚染度(△E)が30以下である。そして、これらの条件の全てを具備する本発明のカーペットはドライ初期防汚性能およびウェット初期防汚性能に優れ、さらに、ドライ防汚耐久性能とウェット防汚耐久性能にも優れたものとなる。
【0013】
まず、本発明のカーペットのドライ初期防汚性能およびウェット初期防汚性能が優れたものとなるメカニズムについて、以下のとおり推測する。すなわち、本発明のカーペットが有する被覆パイル単糸の繊度が8~40dtexであることで、パイル糸に存在する空隙のサイズが適当な大きさとなり、さらに、本発明のカーペットが有するパイル糸の捲縮伸長率が10~30%であることで、パイル糸とパイル糸との間に存在する空間のサイズが適当な大きさとなる。そして、上記の特徴に加え、このパイル糸を構成する被覆パイル単糸がオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aを有しているため、パイル糸に存在する空隙や、パイル糸とパイル糸との間に存在する空間に入り込んだドライソイルやウェットソイルなどのダストが、これらの空隙や空間から抜け出しやすい環境が実現され、結果として、本発明のカーペットのドライ初期防汚性能およびウェット初期防汚性能が優れたものとなるものと推測する。
【0014】
次に、本発明のカーペットのドライ防汚耐久性能およびウェット防汚耐久性能が優れたものとなるメカニズムについては以下のとおり推測する。すなわち、被覆パイル単糸の繊度が8~40dtexであり、かつ、パイル糸の捲縮伸長率が10~30%であることで、パイル糸が嵩高となり、パイル糸が、へたりにくくなる。すなわち、パイル糸の摩耗ストレスに対する耐久性が優れたものとなる。そして、その結果、土足による繰り返しの踏みつけなどの物理的な摩耗ストレスを受けることによる、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aのパイル糸からの離脱が抑制され、このことによって、カーペットのドライ防汚耐久性能およびウェット防汚耐久性能が格段に向上するものと推測する。
【0015】
そして、上記の構成を有する本発明のカーペットは、実施例の項で述べる防汚試験方法に基づき測定したカーペットの汚染度(△E)において、防汚ドライ試験におけるカーペット汚染度(△E)が30以下であり、かつ、防汚ウェット試験におけるカーペット汚染度(△E)が30以下である。すなわち、本発明のカーペットは、特にドライソイルと呼ばれる乾燥した土埃、砂埃、黒ずみなどの汚れに対する防汚性能とウェットソイルと呼ばれるドライソイルに水気を含んだ泥などの汚れに対する防汚性能のいずれにも優れたものといえる。そして、このようなカーペットは、土足により踏みつけられる環境下で使用されるタイルカーペットなどに好適に用いられる。防汚ドライ試験におけるカーペット汚染度(△E)は、より好ましくは、15以下であり、さらに好ましくは、10以下である。また、防汚ウェット試験におけるカーペット汚染度(△E)は、より好ましくは、20以下であり、さらに好ましくは、15以下である。このようなカーペットを得る手段としては、例えば、実施例1等で記載の材料を用い、実施例1で記載の製造方法を採用することを挙げることができる。
【0016】
次に、本発明のカーペットの一実施形態例について
図1を用いて説明する。このカーペット1は、カーペット層2と裏張り層3とを有し、カーペット層2はパイル糸4と一次基布5とを有する。そして、カーペット層において、パイル糸は一次基布に打ち込まれ一次基布の面に対し立ち上がった状態でパイル層(図示せず)を形成している。また、
図2は、
図1に示す本発明のカーペットのA-A’断面の断面概念図を示すものであり、パイル糸4は複数の被覆パイル単糸6の集合体であることを示している。
【0017】
そして、本発明のカーペットの有する被覆パイル単糸は、パイル単糸の表面にはオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aが付着している。そして、これらの材料が付着していることで、本発明のカーペットの初期防汚性能が優れたものとなる。また、本発明のカーペットのドライソイルとウェットソイルの双方に対する防汚性がより優れたものとなるとの理由から、パイル単糸の表面の全面積に対するオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aが付着しているパイル単糸の表面の面積の比率(以下、単に、被覆パイル単糸における付着面積率と称する)は、20%以上であることが好ましい。ここで、被覆パイル単糸における付着面積率とは、実施例の項に記載の方法にて測定されるものをいう。上記の理由により、被覆パイル単糸における付着面積率は、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、パイル単糸の表面の全体がオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aで被覆されていることが特に好ましい。
【0018】
図4は、本発明のカーペットの一実施形態例における被覆パイル単糸の表面SEM写真を示すものである。このSEM写真では、被覆パイル糸の表面に、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層A(
図4において符号9で示されている)と、上記の層Aに被覆されずに露出しているパイル単糸の表面10とが観察される。なお、この被覆パイル単糸の、被覆パイル単糸における被覆面積は31%である。
【0019】
ここで、
図3は、
図1に示す本発明のカーペットが有する被覆パイル単糸の断面概念図を示すものであり、被覆パイル単糸6は、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層A(
図3において符号7で示されている)と、このオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aで被覆されるパイル単糸8とで構成されていることを示している。
【0020】
本発明のカーペットに用いることができるオルガノポリシロキサンとしては、主鎖にシロキサン結合(Si-O-Si結合)による骨格を有し、かつ、側鎖に種々の有機基を有する高分子化合物を例示することができる。具体例としては、側鎖にアルキル基を有するオルガノシリコーン、側鎖にアルコキシ基を有するオルガノシリケートなどを挙げることができる。これらの化合物の化学構造の側鎖や末端が、各種の変性基で置換されたものであってもよい。ここで、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aがパイル糸から脱落することを抑制できるとの理由から、オルガノポリシロキサンはカチオン変性オルガノシリケートであることが好ましい。また、オルガノポリシロキサンとしては、具体的には、信越化学社製の型番、シリコンSC9450N、信越化学社製の型番、POLONMK-206、高松油脂社製の型番、TSG-808、ゼネラルエレクトリック社製の型番、PSA6574等を用いることができる。
【0021】
カチオン変性オルガノシリケートは、1~3級アミノ基や4級アンモニウム基などのカチオン性基と、シラノール基に対して反応性を有する官能基との双方を有する有機化合物により、シリカを処理することによって製造することができる。1~3級アミノ基や4級アンモニウム基などのカチオン性基と、シラノール基に対して反応性を有する官能基との双方を有する有機化合物としては、例えば、アミノエトキシシランやアミノアルキルジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0022】
本発明のカーペットに用いることができるフッ素系化合物としては、炭素数1から炭素数6のいずれかのパーフルオロアルキル基を含む化合物を例示することができる。より好ましくは炭素数6のパーフルオロアルキル基を含む化合物である。ここで、パーフルオロアルキル基を含む化合物は、パーフルオロアルキル基を有するアクリル酸エステルや、パーフルオロアルキル基を有するメタクリル酸エステルを例示することができる。また、フッ素化合物としては、具体的には、日華化学社製、NKガードS-2020、日華化学社製S-1130、ソルベイ社製“フルオロリンク”(登録商標)P56、高松油脂社製TKガードC-654等を用いることができる。ここで、ウェットソイルがパイル糸およびカーペットへ付着することをより抑制できるとの理由から、パーフルオロアルキル基を含む化合物はノニオン性であることが好ましい。
【0023】
本発明のフッ素系化合物は、シロキサン結合を有することが好ましい。フッ素系化合物がシロキサン結合を有することで、ポリオルガノシロキサンとの相溶性が向上して、カーペットのドライソイルおよびウェットソイルに対する防汚性能(初期防汚性能を含む概念である)がより優れたものとなる。本発明でフッ素原子を有するシロキサン結合を有する化合物はフッ素系化合物に分類するものとする。
【0024】
本発明において、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物とを含有する層Aをパイル単糸の表面に設ける方法について、特に限定されることはなく、以下に例示する方法を用いることができる。例えば、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含む処理液をパイル単糸の群に付与した後、熱処理させることでパイル糸に固着させる方法などが挙げられる。ここで、パイル単糸に、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含む処理液を付与する手段としては、特に限定されない。例えば含浸法、スプレー法、またはロールコート法が挙げられる。ここで、パイル単糸の表面に均一に固着させる理由と、パイル糸と一次基布とを備えるカーペット層全体で防汚性能を発揮させる理由とから、パイル単糸を有するパイル糸と一次基布とを備えるカーペット層を得る工程と、カーペット層をオルガノポリシロキサンおよびフッ素系化合物を含有する溶液に含浸する工程とを、この順に有するカーペットの製造方法であることが好ましい。また含浸法とする場合に処理液を絞る方法としては、ロールニップ法やバキューム法が挙げられる。特に高目付のカーペットやパイル長の高いカーペットに対してでもパイル単糸の表面に均一に固着させることができる理由からバキューム法が好ましい。
【0025】
また、熱処理の温度は、100~210℃が好ましい。熱処理温度を100℃以上とすることで、オルガノポリシロキサンおよびフッ素系化合物とパイル単糸との固着力が向上し、摩耗ストレスに対するカーペットの防汚性能耐久性がより優れたものとなる。一方で、熱処理温度を210℃以下とすることで、パイル糸の黄変と脆化の発生が抑制され、カーペットを構成するパイル糸の品位と耐久性の低下が抑制される。より好ましくは、熱処理温度の下限は120℃以上であり、上限は180℃以下である。
【0026】
次に、本発明のカーペットが有するパイル糸について説明する。このパイル糸は、パイル単糸がオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aが付着した被覆パイル単糸を有するものである。
【0027】
そして、パイル単糸の断面形状としては、いずれの形状でも構わない。たとえば、丸や、Y型、Y型中空、三角、四角、多葉、扁平、
図5に示すような断面が例示できる。Y型、Y型中空、
図5に示すような断面が採用される場合、丸型断面よりも嵩高性が増しカーペット自体の耐久性や風合いが向上する。
【0028】
このパイル糸は、カーペットの意匠性や風合いの観点で、インターミングル糸加工や撚り糸加工を施されたものであることが好ましい。
【0029】
また、撚り糸加工は、片撚および諸撚のどちらでも良い。諸撚りを実施するに際しては、パイル糸のバルキー性を高めるため、熱セットしても良く、熱セットの方法は、連続セット法(弛緩状態でスチームまたは乾熱によるセット法)やオートクレープ等の方法で良く、熱セット温度は110~150℃が好ましい。
【0030】
また、このパイル単糸を構成する素材は熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体的には、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂およびポリアミド樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0031】
この中でも、パイル単糸を構成する素材の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂を含有するものであることが好ましく、ポリアミド樹脂により構成されていることがより好ましい。ポリアミド樹脂は風合いや耐久性に優れるため、ポリアミド樹脂からなるパイル単糸を有する本発明のカーペットは、防汚性能耐久性およびカーペット自体の耐久性や風合いにも、より一層、優れたものとなる。本発明で用いることができるポリアミド樹脂としては、例えばポリカプロアミド(ナイロン6)や、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)等を挙げることができる。
【0032】
また、パイル単糸を構成する素材として特に好適に用いられるポリアミド樹脂は、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、顔料、光沢改善剤、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤及び難燃剤等からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。酸化防止剤としては黄系・リン系酸が例示でき、耐熱安定剤としてはヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、リン系化合物、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等が例示でき、耐候剤としてはレゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等が例示でき、顔料としては硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等が例示でき、光沢改善剤としては酸化チタン、炭酸カルシウム等が例示でき、染料としてはニグロシン、アニリンブラック等が例示でき、結晶核剤としてはタルク、シリカ、カオリン、クレー等が例示でき、可塑剤としてはp-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等が例示でき、帯電防止剤としてはアルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等が例示でき、難燃剤としてはメラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等が例示できる。
【0033】
パイル単糸がポリアミド樹脂を含有するものであれば、このパイル単糸が構成するパイル糸も当然ポリアミド樹脂を含有するものとなる。そして、このパイル糸の全体に対するポリアミド樹脂の含有量は、風合いや耐摩耗性を考慮して50~99質量%であることが好ましい。また、ポリアミド樹脂と他の素材とを複合してパイル糸に用いることもできる。複合できるポリアミド樹脂以外の素材としては、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアクリロニトルおよびポリプロピレンなどの合成繊維などが例示できる。
【0034】
本発明において、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物とを含有する層Aに硬化樹脂を含むことが好ましい。オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物とを含有する層Aに硬化樹脂を含むものとすることで、カーペットのドライ防汚耐久性能およびウェット防汚耐久性能がより優れたものとなる。オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物とを含有する層Aが硬化樹脂を含むものとすることで、カーペットのドライ防汚耐久性能およびウェット防汚耐久性能がより優れたものメカニズムは以下のとおりと推測する。
【0035】
硬化樹脂の前駆体である未硬化の樹脂をオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物と共にパイル端子の表面に付与し、そして架橋反応することによりオルガノポリシロキサンとフッ素系化合物とを硬化樹脂と共にからませ、また硬化に伴う化学反応によりパイル単糸との密着力もより強力なものとなると考える。またパイル単糸の表面のより多くの部分を覆うことができる。
【0036】
本発明において、層Aに含有するオルガノポリシロキサン、フッ素系化合物、硬化樹脂の組成比(固体分基準)は、オルガノポリシロキサン10質量部に対して、フッ素系化合物1~100質量部、硬化樹脂1~100質量部であることが好ましい。
【0037】
前記硬化樹脂としては、それぞれ硬化性のメラミン系樹脂や尿素系樹脂が例示できる。風合いの観点より、なかでもメラミン系樹脂であることが好ましい。前記メラミン系樹脂としては、一般的に用いられるものであれば特に限定はされず、具体的には、トリメチロールメラミン樹脂、ヘキサメチロールメラミン樹脂などが例示できる。特に、パイル単糸の表面のより多くの部分を覆うことができるとの観点からアミノ基を有するトリメチロールメラミン樹脂が好ましい。硬化樹脂を用いる場合、処理液中の硬化樹脂の前駆体の濃度は、処理液に対して2~100g/Lであることが好ましい。前記モノマーの濃度を3g/L以上とすることで厚みの均一な層を形成でき、カーペットの防汚性能耐久性が向上する。一方で、前駆体の濃度が50g/L以下とすることでパイル糸が硬くなり品位が低下することが抑制される。より好ましくは、処理液に対して5~50g/Lである。
【0038】
架橋反応を効率的に進めることができるとの観点から、硬化触媒を処理液に添加することが好ましく、硬化触媒としては、一般的に用いられるものであれば特に限定はされず、具体的には、有機アミン塩系、金属塩系、複合金属塩系などが例示できる。前記硬化樹脂にメラミン樹脂を適用する場合、低温で高い反応促進性が得られるとの観点より有機アミン塩系であることが好ましい。硬化触媒を用いる場合においては、モノマーの濃度は、処理液に対して1~100g/Lであることが好ましい。モノマーの濃度を2g/L以上とすることで、架橋反応をより促進させることができる。一方で、モノマーの濃度を100g/Lを超えると反応が低下する。より好ましくは、硬化触媒は処理液に対して3~50g/Lである。
【0039】
本発明のカーペットにおいて、被覆パイル単糸の繊度は8~40dtexである。カーペットのドライソイルやウェットソイルに対する防汚性をより優れたものとするためには、被覆パイル単糸の繊度は10dtex以上であることが好ましく、15dtex以上であることがより好ましい。繊度を40dtex以下とすることで風合いが硬くなるのを抑制することができる。より好ましくは繊度が35dtex以下である。また、パイル単糸の繊度を上記の範囲とする手段としては、パイル単糸の繊度を大きくして調整することや、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aの厚みを大きくして調整すること等が挙げられる。そして、この達成手段としては、調整が容易であり、かつ、カーペットのドライソイルおよびウェットソイルに対する防汚性がより優れたものとなる傾向が見られるとの理由により、パイル単糸の繊度を調整することが好ましい。
【0040】
本発明のカーペットにおいてパイル糸の捲縮伸長率は10~30%である。本発明のカーペットが有するパイル糸は捲縮性を有するものであるが、上記の捲縮伸長率とは、沸騰水中における捲縮の発現率をいう。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。カーペットのドライソイルおよびウェットソイルに対する防汚性がより優れたものとなるとの理由から、捲縮伸長率の下限は12%以上であることが好ましい。一方で、上記と同様の理由から、捲縮伸長率の上限は24%以下であることが好ましい。また、パイル糸の捲縮伸長率を上記の範囲とする手段としては、パイル糸に含まれるパイル単糸に捲縮糸を用い、パイル糸に含まれるパイル単糸の集合体としての捲縮伸長率を調整すること等が挙げられる。そして、この達成手段としては、調整が容易であり、かつ、カーペットのドライソイルおよびウェットソイルに対する防汚性がより優れたものとなる傾向が見られるとの理由により、パイル糸に含まれるパイル単糸すべての集合体自体の捲縮伸長率を調整することが好ましい。
【0041】
本発明のカーペットにおいて被覆パイル単糸の異形度は1.1~5.0であることが好ましい。被覆パイル単糸の異形度を1.1~5.0とすることで、カーペットのドライソイルおよびウェットソイルに対する防汚性がより優れたものとすることができる。上記の異形度とは、被覆パイル単糸横断面の外接円の直径Dと、被覆パイル単糸横断面の内接円の直径dの比率(D/d)で表される。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。
【0042】
また、オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層Aを設ける前のパイル糸からなる層の目付は、400g/m2以上であることが好ましい。パイル糸からなる層の目付を400g/m2以上とすることで、このパイル層を有するカーペットのドライソイルおよびウェットソイルに対する防汚性が優れたものとなる。このの目付の上限は、特に限定はされないが、パイル層の取扱いの観点から、3000g/m2以下であることが好ましい。より好ましくは500g/m2以上であり、2500g/m2以下である。
【0043】
カーペットの形態としては、パイル糸のあるカーペットとし、段通、ウイルトン、ダブルフェイス、アキスミンター等の織りカーペットや、タフティング、フックドラグ等の刺繍カーペットや、ボンデッド、電着、コード等の接着カーペットが例示できる。生産性の観点より、タフティングカーペットとすることが好ましい。
【0044】
タフティングカーペットは、タフティングマシンでパイル糸を一次基布に刺し込んで植毛し、いわゆるタフトし、 その裏側にパイル糸のほつれを防止する目的から目止め加工を施し製造され、用途に応じて目止め加工の後に、施工時や使用中の強度向上や寸法安定性などを目的に裏加工として二次基布の接着を施す。一次基布としては、従来公知のものを使用することができ、例えばスパンボンド法にて製造されたポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性フィラメントからなる不織布や長繊維織物が例示できる。目止め加工に用いられる目止め剤としては、スチレン・ブタジエンラバー(SBR)系やニトリル・ブタジエンラバー(NBR)系やエチレン・ビニールアセテート(EVA)系のラテックスや、ポリウレタン、ポリ塩化ビニール(PVC)が例示できる。裏加工において接着させる二次基布としては、ジュート布や合成繊維不織布が例示できる。
【0045】
カーペットのパイル層の形態としてはカット形態、ループ形態、またカット&ループ形態などがある。カーペットのパイル層の形態は、ループ形態が好ましい。ループ形態とすることで、カーペットのドライソイルおよびウェットソイルに対する防汚性が向上する。
【0046】
カーペットの前記防汚試験方法に基づいた防汚ドライ試験におけるカーペットの汚染度△Eが30以下であり、防汚ウェット試験におけるカーペットの汚染度△Eが30以下であれば、ドライソイルに対する防汚性能に優れ、かつ、ウェットソイルに対する防汚性能に優れたカーペットとなり、ドライソイルやウェットソイルが付きやすく土足による踏みつけ頻度の多い箇所であるオフィスなどで使用される土足用カーペット(例えば、タイルカーペットなど)や自動車内装用カーペット(例えば、オプションマットなど)に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の性能は次の方法で測定した。
【0048】
[測定方法]
(1)防汚ドライ試験におけるカーペットの汚染度(△E)
JIS L 1919(8.1.2 A―2法)(2012)に準拠して、カーペットの汚染度の評価を実施した。
【0049】
まず、カーペットを20℃65%RH環境下で24時間調湿させた後、このカーペットから1.5cm×1.5cmのカーペットの試験片10枚を作製し、色彩色差計(Minolta製、測定ヘッド:CR-300、データプロセッサ:DP-300)を用い、汚染前の試験片のL*値、a*値、b*値を測定した。
【0050】
次に、JIS Z 8901試験用粉体1の11種(関東ローム、日本粉体工業技術協会が販売)を粉体汚染物質として用意した。この粉体汚染物質1gをチャック付きポリエチレン製袋(たて約280mm、よこ約200mm、厚さ約0.08mm)に入れた後、試験片1枚(1.5cm×1.5cm)を入れ、エアポンプで前記ポリエチレン製袋が完全に膨らむまで空気を封入した。これをJIS L 1076(4.1)に規定のICI形ピリング試験機の回転箱に入れ、毎分60回転速度で60分間操作した。操作後、試験片の四隅を持ちかえて、試験片の裏中央部を5回指ではじき、余分な汚れを取った。その後、前記色彩色差計を用い、汚染後の試験片のL*’値、a*’値、b*’値を測定した。
【0051】
得られた汚染前と汚染後とにおける、試験片のL*値、a*値、b*値から、次の式によって△Eを算出し、10枚の平均値を求めカーペットの汚染度として△E(色差)として、防汚ドライ試験におけるカーペットの汚染度(△E)を求めた。
△E=[(L*’―L*)2+(a*’―a*)2+(b*’―b*)2]1/2 。
【0052】
(2)防汚ウェット試験におけるカーペットの汚染度(△E)
カーペットを20℃65%RH環境下で24時間調湿させた後、このカーペットから2cm×12cmのカーペットの試験片10枚を作製し、色彩色差計(Minolta製、測定ヘッド:CR-300、データプロセッサ:DP-300)を用い、汚染前の試験片のL*値、a*値、b*値を測定した。
【0053】
次に、7cm×30cm×厚み1.0mmの大きさの市販のゴム板を用意した。ゴム板上に、またそこからスプレーノズルまでの高さが11.5cm、直径30mmの市販のスプレーボトルを用意し、水道水を入れた。スプレーボトルを前記ゴム板上から20cm離した場所でゴム板上に30度傾け、ゴム板の端を含める2.5cm間隔の箇所に対して各1回の計5回箇所に水道水をスプレー噴霧した。その後、粉体汚染物質(日本粉体工業技術協会製のJIS Z 8901試験用粉体1の11種 関東ローム、日本粉体工業技術協会が販売)0.005gをゴム板上の中心3cm×16cm内に均一になるようにまぶした。
【0054】
次に、水道水と粉体汚染物質が載ったゴム板を傾けずに平面摩耗試験機(大栄科学精器製作所製、摩擦ストローク140mm、往復速度60回/分)にセットし、平面摩耗試験機の端子(曲面、R10mm)にはカーペット試験片をセットした。
【0055】
次に、平面摩耗試験機を往復10回、500g荷重にて試験させ、端子につけたまま試験片の摩耗面を“キムタオル”(登録商標。日本製紙クレシア製、4枚重ね)に5回それぞれ違う“キムタオル”の箇所に押しあてた。その後、24時間風乾させた後に上記の汚染度試験用の試験片を得た。
【0056】
試験片摩耗面について、(1)に記載の方法と同様の方法で汚染度(△E)の評価を行い、防汚ウェット試験におけるカーペットの汚染度(△E)を求めた。
【0057】
(3)被覆パイル単糸の繊度
カーペットから無作為に50本のパイル糸を刈り取り、パイル糸各々から無作為に被覆パイル単糸を5本ずつ抽出し、合計250本のパイル単糸を得た。次に、250本の被覆パイル単糸の合計重量を測定し、さらに、250本の被覆パイル単糸各々の長さを測定し、得られた長さの和を250本の被覆パイル単糸の合計長さとした。そして、上記の合計重量と上記の合計長さとを用い次式により、被覆パイル単糸の繊度を算出した。
被覆パイル単糸の繊度(dtex)=10000×W/L
ここに、W:被覆パイル単糸の合計重量(g)
L:被覆パイル単糸の合計長さ(m)。
【0058】
(4)パイル糸の捲縮伸長率
カーペットのパイル層よりパイル糸を抜き取り、室温25℃、相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置した。その後、パイル糸を、無荷重状態で、30分間沸騰水で浸漬処理した後、室温25℃、相対湿度65%で24時間乾燥し、これを捲縮伸長率の測定試料とした。室温25℃、相対湿度65%の雰囲気下において、この試料に2mg/dtexの初荷重をかけ、30秒経過した後の試料長(L1)とした。次いで初荷重を除去した後、同試料に100mg/dtexの定荷重をかけて30秒経過後に伸びた試料長(L2)を測定する。そして下記式により、パイル糸の捲縮伸長率(%)を求めた。
パイル糸の捲縮伸長率(%)=[(L2-L1)/L1]×100。
【0059】
(5)被覆パイル単糸の異形度
カーペットのパイル層よりパイル糸を抜き取り、パイル糸端をレーヨンステープルで包み、厚さ0.5mmのステンレス製プレパラートに設けた穴(穴径1.0mm)に通し、安全カミソリでプレパラートの両面に沿って平行にカットしたものを断面観察用の試料とした。この試料をキーエンス社製デジタルマイクロスコープ「VHX-500」を用いて500倍で観察し、被覆パイル単糸横断面の外接円の直径Dと、被覆パイル単糸横断面の内接円の直径dから下記式により求めた。10サンプルの平均値から求めた。
異形度=D/d。
【0060】
(6)パイル層の目付
タフト前の一次基布を50cm角に切り出して一次基布の質量を測定する。続いて、タフト後のカーペット層(タフト生機)を50cm角に切り出してカーペット層の重量を測定する。カーペット層の重量から一次基布の重量を差し引き、当該試料におけるパイル糸の重量を得る。パイル糸の重量を単位面積(1m2)あたりに換算したものをパイル層の目付(g/m2)とした。
【0061】
(7)カーペットの耐久性
JIS L 1021-11(2007)の7に基づき、円形試料台の回転回数5000回で、カーペットに負荷を加え、JIS L 1021-13(2007)に準じてカーペットの自体の耐久性を判定した。
【0062】
(8)カーペットの品位評価
得られたカーペットを用いて、10人の被験者に対して以下の基準によりカーペットの品を評価した。
<個別評価基準>
3点:手触りによる風合いが極めて優れる。
2点:手触りによる風合いが優れる。
1点:手触りによる風合いが劣る。
<合計評価基準>
A:25~30点
B:17~24点
C:10~16点
(9)被覆パイル単糸の表面組成分析
カーペットの被覆パイル単糸の被覆層がオルガノポリシロキサンおよびフッ素系化合物を含有することについては、飛行時間二次イオン質量分析(:TOF-SIMS)装置(アルバック・ファイ製)を用いて検知することにより確認することができる。なお、測定装置は、金属型イオン銃がBiイオンビーム搭載のものを使用する。
【0063】
(10)被覆パイル単糸における付着面積率
カーペットのパイル糸を有する側の面に日本電子製の金属蒸着装置(商品名:JEC-3000FCオートファインコーター)を用いて金属蒸着を行い観察用の試料を得た。次に、その試料を日立製の超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(商品名:SU8010)に装着し、その試料の金属蒸着を行った側の表面を倍率3万5千倍で観察し、無作為に選出した異なる5本の被覆パイル単糸について、各々の表面SEM写真を撮影した。次に、得られた表面SEM写真、5枚それぞれを画像処理ソフト(ソフト名:WinROOF、三谷商事株式会社製)を用いて処理し、上記SEM写真の視野の全面積に対する被覆されているパイル単糸の表面の全面積の比率を測定し、その平均値を被覆パイル単糸における付着面積率とした。被覆面積の測定には、上記の画像処理ソフトの自動2値化(しきい値決定方法:判別分析法、抽出領域の明暗:明るい領域、対象濃度範囲:0~255)を用いた。但し、上記の自動2値化に拠っては、しきい値の決定が困難である場合は、平動設定により行うことができる。
【0064】
以下の実施例1、2、4、5、6、7および8は表中も含め、それぞれ参考例1、2、3、4、5、6および7と読み替えるものとする。
[実施例1]
(カーペットの作製)
970dtex-54f(単糸繊度18.0dtex、捲縮伸長率:18%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸(
図5に示す断面形状)を2本合糸し、インターミングル機にて交絡させインターミングル加工糸を得た。
【0065】
次に、前記インターミングル加工糸を目付け100g/m2のポリエステルスパンボンド一次基布にタフトし、目付700g/m2のレベルループのカーペット層(タフト生機)を作製した。また、上記のカーペット層(タフト生機)の有するパイル層の目付は600g/m2であった。
【0066】
次に、前記カーペット層(タフト生機)をウインス染色機により酸性染料にて白色に染色した。
【0067】
(処理液1の処方)
下記のとおりに処理液1を処方した。
・溶媒:水
・カチオン変性オルガノシリケート微粒子の水分散液(固形分20%、平均粒子径30nm):60g/L
・ノニオン性であり、C6パーフルオロアルキル基を含み、シロキサン結合を有する化合物の水分散液(固形分30%):10g/L
(処理液1の固着加工)
得られたカーペット層(タフト生機)を、処方した処理液1に浸漬してマングルで圧搾させ付与し、その後ヒートセッターにて130℃で乾燥させ、カーペット層が有するパイル単糸にオルガノポリシロキサンおよびフッ素系化合物を含有する層Aを固着させた。
【0068】
(裏貼り加工)
オルガノポリシロキサンおよびフッ素系化合物を含有する層Aの固着加工を実施したカーペット層(タフト生機)のパイル層を有する面の反対の面(裏面)に、アクリル系樹脂を目付180g/m2(乾燥時)塗布し、130℃で乾燥した。次にカーペット層の裏面に目付300g/m2のポリエステル不織布(裏張り層)を貼り合わせてカーペットを得た。このカーペットの構成および性能を表1に示す。
【0069】
[実施例2]
実施例1で用いた970dtex-54f(単糸繊度18.0dtex、捲縮伸長率:18%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸を980dtex-118f(単糸繊度8.3dtex、捲縮伸長率18%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。このカーペットの構成および性能を表1に示す。
【0070】
[実施例3]
処理液1を下記する処理液2に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。このカーペットの構成および性能を表1に示す。
【0071】
(処理液2の処方)
下記のとおりに処理液2を処方した。
・溶媒:水
・カチオン変性オルガノシリケート微粒子の水分散液(固形分20%、平均粒子径30nm):60g/L
・ノニオン性であり、C6パーフルオロアルキル基を含み、シロキサン結合を有する化合物の水分散液(固形分30%):10g/L
・トリメチロールアミンメラミン樹脂の水分散液((固形分80%):10g/L
・有機アミン塩の水分散液(固形分40%):5g/L
[実施例4]
実施例1で用いたナイロン6マルチフィラメント捲縮糸(断面形状:田型、異形度:1.2)をナイロン6マルチフィラメント捲縮糸(断面形状:3葉Y型、異形度:5.5)に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。得られたカーペットの構成および性能を表1に示す。
【0072】
[実施例5]
実施例1で用いた970dtex-54f(単糸繊度18.0dtex、捲縮伸長率:18%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸を1280dtex-54f(単糸繊度:23.7dtex、捲縮伸長率:22%、黒原着、断面形状:3葉Y型、異形度:3.0)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸に変更し、さらに、タフト後のカーペット層の目付を1700g/m2に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。得られたカーペットの構成および性能を表1に示す。
【0073】
[実施例6]
処理液1を下記する処理液3に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。このカーペットの構成および性能を表1に示す。
【0074】
(処理液3の処方)
下記のとおりに処理液3を処方した。
・溶媒:水
・カチオン変性オルガノシリケート微粒子の水分散液(固形分20%、平均粒子径30nm):60g/L
・カチオン性であり、C6パーフルオロアルキル基を含む化合物の水分散液(固形分30%):10g/L
[実施例7]
処理液1を下記する処理液4に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。このカーペットの構成および性能を表1に示す。
【0075】
(処理液4の処方)
下記のとおりに処理液4を処方した。
・溶媒:水
・カチオン変性オルガノシリケート微粒子の水分散液(固形分20%、平均粒子径30nm):60g/L
・アニオン性であり、C6パーフルオロアルキル基を含む化合物の水分散液(固形分30%):10g/L
[実施例8]
処理液1を下記する処理液5に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。このカーペットの構成および性能を表1に示す。
【0076】
(処理液5の処方)
下記のとおりに処理液5を処方した。
・溶媒:水
・カチオン変性オルガノシリケート微粒子の水分散液(固形分20%、平均粒子径30nm):60g/L
・両性イオンであり、C6パーフルオロアルキル基を含む化合物の水分散液(固形分30%):10g/L
[比較例1]
カーペット層が有するパイル単糸に処理液1を付与する処理を行わないこと以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。得られたカーペットの構成および性能を表2に示す。
【0077】
[比較例2]
実施例1で用いた970dtex-54f(単糸繊度18.0dtex、捲縮伸長率:18%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸を1000dtex-360f(単糸繊度2.8dtex、捲縮伸長率:18%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。得られたカーペットの構成および性能を表2に示す。
【0078】
[比較例3]
実施例1で用いた970dtex-54f(単糸繊度18.0dtex、捲縮伸長率:18%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸を、970dtex-54f(単糸繊度18dtex、捲縮伸長率:5%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。得られたカーペットの構成および性能を表2に示す。
【0079】
[比較例4]
実施例1で用いた970dtex-54f(単糸繊度18.0dtex、捲縮伸長率:18%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸を、970dtex-54f(単糸繊度18dtex、捲縮伸長率:35%)のナイロン6マルチフィラメント捲縮糸に変更した以外は、実施例1と同様にしてカーペットを得た。得られたカーペットの構成および性能を表2に示す。
【0080】
【0081】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のカーペットの用途としては、住居用、商業用、自動車用等、特に限定されないが、土足による踏みつけ頻度の多く長期耐久性や耐摩耗性が求められるタイルカーペットなどの土足用カーペットやオプションマットなどの自動車内装用カーペットで用いるのに特に好適である。
【符号の説明】
【0083】
1 : カーペット
2 : カーペット層
3 : 裏張り層
4 : パイル糸
5 : 一次基布
6 : 被覆パイル単糸
7 : オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層A
8 : パイル単糸
9 : オルガノポリシロキサンとフッ素系化合物を含有する層A
10 :パイル単糸の表面