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特許7439789物品搬送設備、搬送車配置方法、及び搬送車配置プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】物品搬送設備、搬送車配置方法、及び搬送車配置プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/04 20060101AFI20240220BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20240220BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B61L27/04
B60L15/40 Z
B61B13/00 V
H01L21/68 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021073569
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167635
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】河野 誠
(72)【発明者】
【氏名】武野 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】岩満 和哲
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-039929(JP,A)
【文献】特開2004-227059(JP,A)
【文献】特開2002-096725(JP,A)
【文献】特開平04-370809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/04
B60L 15/40
B61B 13/00
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記制御装置は、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を設定し、
前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された前記目的地である搬送目的地へ向かって走行する第1状態と、前記搬送目的地が設定されていない第2状態と、が含まれ、
前記第2状態は、前記物品搬送車が、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すことを走行目的とせずに走行する際の前記目的地である非搬送目的地へ向かって走行する状態、及び前記非搬送目的地に到着して停車している状態を含み、
前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、
前記制御装置は、
前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定し、
複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の数と、当該エリアに存在していないが当該エリアを通る前記設定経路が設定されている前記待機搬送車の数とに基づいて当該エリアに存在するとみなす前記待機搬送車の数を決定し、
それぞれの前記エリアにおける前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する偏り減少制御を実行する、物品搬送設備。
【請求項2】
複数の前記エリアのそれぞれにおける前記待機搬送車の密度の平均値を平均密度とし、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも大きい値に設定された第1基準密度以上である前記エリアを高密度エリアとして、
前記制御装置は、前記偏り減少制御として、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を他の前記エリアへ移動させる密度調整処理を行う、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも小さい値に設定された第2基準密度以下である前記エリアを低密度エリアとして、
前記制御装置は、前記密度調整処理において、前記低密度エリアがある場合には、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を前記低密度エリアへ移動させる、請求項2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
複数の前記エリアのそれぞれにおける前記第1基準密度が、前記待機搬送車によるそれぞれの前記エリア内での前記物品の受け取りの数が多くなるに従って、高くなるように設定されている、請求項2又は3に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記エリア内に存在するとみなす前記待機搬送車の数は、当該エリア内に存在する前記待機搬送車であって当該エリア内に前記非搬送目的地が設定されていない前記待機搬送車の数と、当該エリア内に存在するか否かに拘わらず当該エリア内に前記非搬送目的地が設定されている前記待機搬送車の数と、を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
複数の前記エリアは、それぞれの前記エリアに含まれる前記走行可能経路の経路長が均等になるように設定され、
前記制御装置は、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の台数を、前記密度とみなして、前記偏り減少制御を実行する、請求項1から5の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を設定する物品搬送設備において、前記制御装置により前記物品搬送車を配置する搬送車配置方法であって、
前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、
前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、
前記制御装置により実行される偏り減少制御が、
前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定するステップと、
複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の数と、当該エリアに存在していないが当該エリアを通る前記設定経路が設定されている前記待機搬送車の数とに基づいて当該エリアに存在するとみなす前記待機搬送車の数を決定するステップと、
それぞれの前記エリアにおける前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置するステップと、を備える、搬送車配置方法。
【請求項8】
規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を設定する物品搬送設備において、前記物品搬送車を配置するために前記制御装置に実現させる搬送車配置プログラムであって、
前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、
前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、
前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定する機能と、
複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の数と、当該エリアに存在していないが当該エリアを通る前記設定経路が設定されている前記待機搬送車の数とに基づいて当該エリアに存在するとみなす前記待機搬送車の数を決定するステップと、
それぞれの前記エリアにおける前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する機能と、を備える偏り減少制御機能を前記制御装置に実現させる、搬送車配置プログラム。
【請求項9】
規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地である搬送目的地へ向かって走行する第1状態と、前記搬送目的地が設定されていない第2状態と、が含まれ、
前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、
前記制御装置は、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定し、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する偏り減少制御を実行し、
複数の前記エリアのそれぞれにおける前記待機搬送車の密度の平均値を平均密度とし、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも大きい値に設定された第1基準密度以上である前記エリアを高密度エリアとして、
前記制御装置は、前記偏り減少制御として、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を他の前記エリアへ移動させる密度調整処理を行う、物品搬送設備。
【請求項10】
規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備において、前記制御装置により前記物品搬送車を配置する搬送車配置方法であって、
前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、
前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、
前記制御装置により実行される偏り減少制御が、
前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定するステップと、
複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置するステップと、を備え
複数の前記エリアのそれぞれにおける前記待機搬送車の密度の平均値を平均密度とし、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも大きい値に設定された第1基準密度以上である前記エリアを高密度エリアとして、
前記待機搬送車を配置するステップでは、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を他の前記エリアへ移動させる密度調整処理を行う、搬送車配置方法。
【請求項11】
規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備において、前記物品搬送車を配置するために前記制御装置に実現させる搬送車配置プログラムであって、
前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、
前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、
前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定する機能と、
複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する機能と、を備える偏り減少制御機能を前記制御装置に実現させ、
複数の前記エリアのそれぞれにおける前記待機搬送車の密度の平均値を平均密度とし、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも大きい値に設定された第1基準密度以上である前記エリアを高密度エリアとして、
前記待機搬送車を配置する機能では、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を他の前記エリアへ移動させる密度調整処理を行う、搬送車配置プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する物品搬送車と、物品搬送車を制御する制御装置とを備えた物品搬送設備、物品搬送設備における搬送車配置方法及び搬送車配置プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備として、例えば、特開2019-080411号公報に記載されたものが知られている。この物品搬送設備の制御装置は、物品搬送車を現在位置から走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を設定して物品搬送設備における物品搬送車を配置している。設定経路を設定するにあたっては、物品搬送車の現在位置から目的地までの設定経路の候補となる候補経路が複数ある場合も有り得る。このような場合に、制御装置は、経路設定制御において、例えば、複数の候補経路のうちの経路の長さが最も短い候補経路や、目的地までの所要時間が最も短くなる候補経路を設定経路として設定する。例えば、経路長が短くても、経路の途中に多くの物品搬送車が配置されている場合には、最高速度での走行が制限されたり、徐行が必要であったり、渋滞が発生していたりする場合があり、制御装置は、他の物品搬送車の配置状況も考慮して、最適な設定経路を設定することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-080411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行可能経路上に存在する物品搬送車の全てが、物品の搬送(受け取りに行く場合の搬送も含む)に携わっているとは限らず、物品を届け終えた物品搬送車や、次の搬送指令を待っている物品搬送車も走行可能経路上に存在する。このような物品搬送車が、上記の候補経路上に位置していると、物品を搬送する物品搬送車にとって走行の妨げとなる場合がある。特に、そのような物品搬送車が同じ領域に多く集まっていると、渋滞を生じさせる要因となり、物品搬送設備の全体の稼働効率を低下させる要因となり得る。
【0005】
そこで、物品を受け取る又は物品を引き渡すという目的が設定されていない物品搬送車が、当該目的が設定されている物品搬送車の走行を妨げる可能性を低減できる技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備は、1つの態様として、前記制御装置は、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を設定し、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された前記目的地である搬送目的地へ向かって走行する第1状態と、前記搬送目的地が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態は、前記物品搬送車が、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すことを走行目的とせずに走行する際の前記目的地である非搬送目的地へ向かって走行する状態、及び前記非搬送目的地に到着して停車している状態を含み、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記制御装置は、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定し、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の数と、当該エリアに存在していないが当該エリアを通る前記設定経路が設定されている前記待機搬送車の数とに基づいて当該エリアに存在するとみなす前記待機搬送車の数を決定し、それぞれの前記エリアにおける前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する偏り減少制御を実行する。
【0007】
また、上記に鑑みた、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備は、別の態様として、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地である搬送目的地へ向かって走行する第1状態と、前記搬送目的地が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記制御装置は、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定し、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する偏り減少制御を実行し、複数の前記エリアのそれぞれにおける前記待機搬送車の密度の平均値を平均密度とし、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも大きい値に設定された第1基準密度以上である前記エリアを高密度エリアとして、前記制御装置は、前記偏り減少制御として、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を他の前記エリアへ移動させる密度調整処理を行う。
【0008】
待機搬送車は、搬送目的地に向かう第1状態の物品搬送車の走行を妨げないように走行することが望ましいが、待機搬送車の密度が高いエリアでは、密度の高さに起因した渋滞が生じやすくなり、第1状態の物品搬送車が円滑に走行できなくなる可能性がある。しかし、本構成によれば、複数のエリアのそれぞれにおける待機搬送車の密度を比較的均等にすることができる。従って、待機搬送車の密度が高いエリアが生じることを回避でき、第1状態の物品搬送車を円滑に走行させ易くすることができる。即ち、本構成によれば、物品を受け取る又は物品を引き渡すという目的が設定されていない物品搬送車が、当該目的が設定されている物品搬送車の走行を妨げる可能性を低減できる技術を提供することができる。
【0009】
上述した物品搬送設備の種々の技術的特徴は、物品搬送設備における搬送車配置方法や搬送車配置プログラムにも適用可能である。以下にその代表的な態様を例示する。例えば、物品搬送設備における搬送車配置方法は、上述した物品搬送設備の特徴を備えた各種のステップを有することができる。また、搬送車配置プログラムは、上述した物品搬送設備の特徴を備えた各種の機能をコンピュータとしての制御装置に実現させることが可能である。当然ながらこれらの搬送車配置方法及び搬送車配置プログラムも、上述した物品搬送設備の作用効果を奏することができる。さらに、物品搬送設備の好適な態様として、下記の実施形態の説明において例示する種々の付加的特徴も、これら搬送車配置方法や搬送車配置プログラムに組み込むことが可能であり、当該方法及び当該プログラムはそれぞれの付加的特徴に対応する作用効果も奏することができる。
【0010】
1つの好適な態様として、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を設定する物品搬送設備において、前記制御装置により前記物品搬送車を配置する搬送車配置方法は、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記制御装置により実行される偏り減少制御が、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定するステップと、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の数と、当該エリアに存在していないが当該エリアを通る前記設定経路が設定されている前記待機搬送車の数とに基づいて当該エリアに存在するとみなす前記待機搬送車の数を決定するステップと、それぞれの前記エリアにおける前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置するステップと、を備える。
【0011】
また、1つの好適な態様として、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備において、前記制御装置により前記物品搬送車を配置する搬送車配置方法は、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記制御装置により実行される偏り減少制御が、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定するステップと、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置するステップと、を備え、複数の前記エリアのそれぞれにおける前記待機搬送車の密度の平均値を平均密度とし、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも大きい値に設定された第1基準密度以上である前記エリアを高密度エリアとして、 前記待機搬送車を配置するステップでは、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を他の前記エリアへ移動させる密度調整処理を行う
【0012】
また、1つの好適な態様として、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を設定する物品搬送設備において、前記物品搬送車を配置するために前記制御装置に実現させる搬送車配置プログラムは、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定する機能と、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の数と、当該エリアに存在していないが当該エリアを通る前記設定経路が設定されている前記待機搬送車の数とに基づいて当該エリアに存在するとみなす前記待機搬送車の数を決定するステップと、それぞれの前記エリアにおける前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する機能と、を備える偏り減少制御機能を前記制御装置に実現させる。
【0013】
また、1つの好適な態様として、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備において、前記物品搬送車を配置するために前記制御装置に実現させる搬送車配置プログラムは、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定する機能と、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する機能と、を備える偏り減少制御機能を前記制御装置に実現させ、複数の前記エリアのそれぞれにおける前記待機搬送車の密度の平均値を平均密度とし、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも大きい値に設定された第1基準密度以上である前記エリアを高密度エリアとして、前記待機搬送車を配置する機能では、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を他の前記エリアへ移動させる密度調整処理を行う。
【0014】
物品搬送設備、物品搬送設備における経路設定方法及び経路設定プログラムのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】物品搬送設備の平面図
図2】走行可能経路のノードとリンクとを示す図
図3】物品搬送車の側面図
図4】物品搬送車の正面図
図5】制御ブロック図
図6】搬送制御のフローチャート
図7】経路設定制御のフローチャート
図8】物品搬送車の設定経路及び候補経路の例を示す図
図9】空走行状態における対象車が対象リンクに進入する状態を示す図
図10】空走行状態における対象車が対象リンクから退出する状態を示す図
図11】実走行状態における対象車が対象リンクに進入する状態を示す図
図12】実走行状態における対象車が対象リンクから退出する状態を示す図
図13】対象リンクに存在するとみなす他車を示す図
図14】偏り減少制御を含む待機搬送車の配置制御の一例を示すフローチャート
図15】偏り減少制御の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
物品搬送設備、物品搬送設備における搬送車配置方法及び搬送車配置プログラムの実施形態について図面に基づいて説明する。図1に示すように、物品搬送設備は、規定の走行可能経路1に沿って走行して物品Wを搬送する物品搬送車3と、物品搬送車3を制御する制御装置H(図5参照)とを備えている。本実施形態では、規定の走行可能経路1に沿って走行レール2(図2及び図3参照)が設置され、物品搬送車3が複数備えられており、複数の物品搬送車3のそれぞれは、走行レール2上を走行可能経路1に沿って一方向に走行する。図4に示すように、走行レール2は、左右一対のレール部2Aによって構成されている。尚、本実施形態では、物品搬送車3は、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)を物品Wとして搬送する。
【0017】
図1に示すように、走行可能経路1は、2つの主経路4と、複数の物品処理装置Pを経由する複数の副経路5とを備えている。2つの主経路4及び複数の副経路5のそれぞれは、環状に形成されている。2つの主経路4は、2重の環状となる状態で設けられている。これら2つの環状の主経路4は、物品搬送車3が同じ方向周り(反時計回り)で走行する経路である。尚、図1においては、物品搬送車3の走行方向を矢印にて示している。
【0018】
2つの主経路4のうち、内側の主経路4を第1主経路4Aとし、外側の主経路4を第2主経路4Bとする。第1主経路4Aは、複数の保管部Rを経由するように設定されている。第1主経路4Aは、保管部Rとの間で物品Wを移載するために物品搬送車3を停止させる物品移載用の経路として用いられる。一方、第2主経路4Bは、物品搬送車3を連続して走行させる連続走行用の経路として用いられる。
【0019】
走行可能経路1には、短絡経路6、分岐経路7、合流経路8、及び、乗継経路9が備えられている。短絡経路6は、第1主経路4Aにおける互いに平行で且つ直線状に延びる一対の部分のそれぞれに接続されている。この短絡経路6は、第1主経路4Aにおける直線状に延びる一対の部分の一方から他方又は他方から一方に物品搬送車3を走行させるための経路である。分岐経路7は、第2主経路4Bと副経路5とに接続されており、第2主経路4Bから副経路5に物品搬送車3を走行させるための経路である。合流経路8は、副経路5と第2主経路4Bとに接続されており、副経路5から第2主経路4Bに物品搬送車3を走行させるための経路である。乗継経路9は、第1主経路4Aと第2主経路4Bとに接続されており、第1主経路4Aから第2主経路4B又は第2主経路4Bから第1主経路4Aに物品搬送車3を走行させるための経路である。
【0020】
図2に示すように、走行可能経路1は、経路が分岐又は合流するノードNと、一対のノードNを接続する経路部分であるリンクLと、をそれぞれ複数備えている。本実施形態では、ノードNは、2つの経路が分岐又は合流する接続点Cから上流側及び下流側に規定の範囲の経路部分としている。図2に示した第2主経路4Bの一部を例に説明すると、第2主経路4Bに対して乗継経路9が分岐又は合流する点を接続点Cとして、第2主経路4B及び乗継経路9における接続点Cから規定の範囲をノードNとしている。また、第2主経路4Bから分岐経路7が分岐する点を接続点Cとして、第2主経路4B及び分岐経路7における接続点Cから規定の範囲をノードNとしている。また、第2主経路4Bに合流経路8が合流する点を接続点Cとして、第2主経路4B及び合流経路8における接続点Cから規定の範囲をノードNとしている。そして、第2主経路4Bにおける一対のノードNの間にあり、これら一対のノードNに接続されている経路部分をリンクLとしている。本実施形態では、接続点Cから規定の範囲は、後述するように、走行可能経路1に沿って複数設置された被検出体Tの位置を基準として設定されている。言い換えると、ノードNとリンクLとの境界となる位置に被検出体Tが設置されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、物品搬送車3は、天井から吊り下げ支持された走行レール2上をその走行レール2に沿って走行する走行部11と、走行レール2の下方に位置して走行部11に吊り下げ支持された本体部12と、走行可能経路1に沿って配設された給電線20から供給される駆動用電力を非接触で受電する受電部90とを備えている。本体部12には、物品Wを吊り下げ状態で支持する支持機構13と、支持機構13を本体部12に対して上下方向に沿って移動させる昇降機構14とが備えられている。そして、物品搬送車3は、物品処理装置Pや保管部Rを移載対象場所15(図1参照)として、搬送元の移載対象場所15に対応する位置まで走行した後、搬送元の移載対象場所15にある物品Wを支持して移載対象場所15から本体部12内に移載する。その後、搬送先の移載対象場所15に対応する位置まで走行し、支持機構13が支持している物品Wを本体部12内から移載対象場所15に移載する。これにより、搬送元の移載対象場所15から搬送先の移載対象場所15に物品Wを搬送する。この際、本実施形態では、物品搬送車3は、直線状の経路を走行する場合は第1速度で走行し、曲線状の経路を走行する場合は第1速度より低速の第2速度で走行する。
【0022】
図4に示すように、給電線20は、走行レール2を構成する一対のレール部2Aのそれぞれに支持されて、走行可能経路1(走行レール2)に沿って配設されている。本実施形態では、給電線20は、受電部90に対して、水平方向に沿うと共に走行可能経路1(走行レール2)の延在方向に直交する方向の両側に配置されている。受電部90は、本実施形態では、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いて、物品搬送車3に駆動用電力を供給する。具体的には、誘導線である給電線20に高周波電流を流し、給電線20の周囲に磁界を発生させる。受電部90は、ピックアップコイル91を備えて構成されており、磁界からの電磁誘導によってピックアップコイル91に交流電圧が誘起される。受電部90は、全波整流回路や平滑コンデンサを有した受電回路(不図示)を備えており、誘起された交流電圧が直流電圧に整流される。
【0023】
図5に示すように、物品搬送車3は、検出装置16と送受信装置17と制御部18とを備えている。検出装置16は、走行可能経路1に沿って複数設置された被検出体T(図2及び図4参照)を検出する。被検出体Tには、当該被検出体Tが設置されている位置を示す位置情報が保持されており、検出装置16は、被検出体Tに保持されている位置情報を読み取るように構成されている。被検出体Tは、走行可能経路1に沿って複数設置されており、ノードNとリンクLとの接続箇所や、移載対象場所15に対応する位置等に設置されている。送受信装置17は、検出装置16によって被検出体Tの位置情報を読み取り、その読み取った位置情報Sを随時、制御装置Hの送受信部21に送信する。つまり、物品搬送車3は、リンクLに進入する際、リンクLから退出する際、及び、移載対象場所15に対応する位置に到達した際に、位置情報Sを制御装置Hに送信する。この物品搬送車3が制御装置Hに送信する位置情報Sが、自車の位置を示す位置情報Sに相当する。そして、複数の物品搬送車3のそれぞれが、自車の位置を示す位置情報Sを制御装置Hに送信する。また、送受信装置17は、制御装置Hの送受信部21から送信された情報を受信する。
【0024】
制御装置Hは、上述したような走行可能経路1を構成するリンクL及びノードNの情報を走行可能経路1のマップ情報Mとして記憶する記憶部22を備えている。記憶部22は、さらに、複数の物品搬送車3のそれぞれから受信した位置情報Sを時刻Dに関連付けて記憶する。本実施形態では、制御装置Hは、物品搬送車3の送受信装置17から位置情報Sを受信した時刻Dを、当該位置情報Sに関連付けて記憶する。尚、物品搬送車3が被検出体Tの位置情報Sを読み取った時刻Dを示す時刻情報を、位置情報Sと共に制御装置Hへ送信する構成である場合には、制御装置Hは、当該時刻情報に示された時刻Dと位置情報Sとを関連付けて記憶部22に記憶してもよい。そして、制御装置Hは、記憶部22に記憶された情報から求められる、物品搬送車3のそれぞれの各時点での位置に基づいて、台数情報を取得する。制御装置Hは、複数の物品搬送車3のそれぞれから受信した位置情報Sに基づいて、複数の物品搬送車3のそれぞれの走行可能経路1の位置を取得することができる。
【0025】
例えば、制御装置Hは、物品搬送車3がリンクLに進入した場合(当該リンクLの手前のノードNを退出した場合)に送信される位置情報Sを受信してから、当該リンクLを退出する場合に送信される位置情報Sを受信するまでは、受信した位置情報Sを入口とするリンクLに物品搬送車3が存在していると判断できる。また、リンクL内に移載対象場所15が存在する場合に、当該リンクL内に存在していると判断している物品搬送車3から移載対象場所15に到達した場合に送信される位置情報Sを受信していない場合は、物品搬送車3はリンクL内おける移載対象場所15より上流側に存在していると判断でき、この位置情報Sを受信した場合は、物品搬送車3はリンクL内における移載対象場所15又はそれより下流側に存在していると判断できる。このように、制御装置Hは、複数の物品搬送車3のそれぞれの各時点での位置に基づいて、複数のリンクLのそれぞれに位置している物品搬送車3の台数を取得する。また、この際、移載対象場所15が存在するリンクLについては、リンクLにおける移載対象場所15の上流側に位置している物品搬送車3の台数と、リンクLにおける移載対象場所15の下流側に位置している物品搬送車3の台数とをそれぞれ取得する。
【0026】
上述したように、制御装置Hは、マップ情報Mを記憶部22に記憶している。マップ情報Mは、走行可能経路1における複数のリンクL及び複数のノードNの位置及び接続関係を示す情報、複数のリンクL及び複数のノードNのそれぞれの属性を示す属性情報、並びに、複数のリンクLのそれぞれの形状及び複数のノードNのそれぞれの形状を示す情報を含む、基本マップ情報を含んでいる。また、マップ情報は、基本マップ情報に、走行可能経路1の複数地点のそれぞれの位置情報S等、物品搬送車3の走行に必要な各種情報を関連付けた走行制御用情報も含んでいる。
【0027】
制御装置Hは、搬送元から搬送先に物品Wを搬送する場合、図6の搬送制御のフローチャートに示すように、基本マップ情報に基づいて現在位置から搬送元の移載対象場所15に対応する位置(目的地)に物品搬送車3を走行させるための第1設定経路を設定する第1経路設定制御#1、第1設定経路に沿って物品搬送車3を走行させて物品搬送車3を搬送元の移載対象場所15に対応する位置まで走行させる第1走行制御#2、搬送元の移載対象場所15にある物品Wを本体部12内に移載する第1移載制御#3、基本マップ情報に基づいて現在位置から搬送先の移載対象場所15に対応する位置(目的地)に物品搬送車3を走行させるための第2設定経路を設定する第2経路設定制御#4、第2設定経路に沿って物品搬送車3を走行させて物品搬送車3を搬送先の移載対象場所15に対応する位置まで走行させる第2走行制御#5、本体部12内の物品Wを搬送先の移載対象場所15に移載する第2移載制御#6を順に実行する。
【0028】
尚、第1経路設定制御#1及び第2経路設定制御#4は同様の制御であり、両者を区別しない場合には、単に、経路設定制御#10と称する。即ち、経路設定制御#10には、第1経路設定制御#1及び第2経路設定制御#4が含まれる。従って、設定経路1Aには、上述した第1設定経路及び第2設定経路が含まれる。
【0029】
図8に示すように、現在位置から目的地へ向かう経路は複数存在する。つまり、設定経路1Aの候補である候補経路1Bは複数存在する。図8には、第1候補経路1B1、第2候補経路1B2、第3候補経路1B3、第4候補経路1B4の4つの候補経路1Bを例示している。このように複数の候補経路1Bが存在する場合、制御装置Hは、複数の候補経路1Bの中から1つの設定経路1Aを決定する。図8に示す例では、第1候補経路1B1が設定経路1Aとして設定されている。
【0030】
制御装置Hは、物品搬送車3を現在位置から走行可能経路1上の目的地に走行させるための経路である設定経路1A(例えば、図8に破線で示した第1候補経路1B1)を、リンクLのそれぞれに設定されたリンクコストLCに基づいて設定する経路設定制御#10を実行する。リンクコストLCには、静的な(固定的な)コストである基準コストSTと、動的なコストである変動コストDYとが含まれており、リンクコストLCは下記式(1)により算出される。リンクコストLCについては後述する。
【0031】
LC=ST+DY ・・・(1)
【0032】
本実施形態では、図7の経路設定制御#10のフローチャートに示すように、制御装置Hは、設定車3Cの現在位置の情報と目的地の情報とマップ情報とに基づいて、現在位置から目的地まで走行可能な経路を候補経路1Bとして、1以上の候補経路1Bを設定する(#11)。次に、設定された候補経路1Bが2以上であるか否かが判定される(#12)。設定された候補経路1Bが1つのみの場合、制御装置Hは、その候補経路1Bを設定経路1Aとして設定する(#15)。設定された候補経路1Bが2以上の場合、制御装置Hは、まず、候補経路1Bに属する全てのリンクLのそれぞれについて台数値nを決定する(#13)。この台数値nの決定方法については後述する。次に、制御装置Hは、候補経路1Bに属する全てのリンクLのそれぞれについて、基準コストSTと台数値nに応じた変動コストDYとに基づいてリンクコストLCを決定する(#14)。そして、制御装置Hは、候補経路1Bに属するリンクLのそれぞれのリンクコストLCに基づいて、それぞれの候補経路1Bの全体のコストである経路コストTCを求め(#15)、それぞれの候補経路1Bの経路コストTCに基づいて、2以上の候補経路1Bから1つの設定経路1Aを設定する(#16)。
【0033】
制御装置Hは、経路設定制御#10を、少なくとも一定時間ごとに繰り返し実行する。設定車3Cが対象リンクLAに近づくに従って、実際の他車3Bの影響が現実の状態に近づく。このため、経路設定制御#10が、一定時間ごとに繰り返し実行されると、設定車3Cが移動する途中において経路設定を見直すことができ、より高精度に他車3Bの影響を考慮して経路設定を行うことができる。
【0034】
以下、リンクコストLC及び台数値nについて説明する。ここで、経路設定制御#10により設定経路1Aが設定される対象の物品搬送車3を設定車3Cとする。また、設定車3Cの候補経路1B上のリンクLを通過する物品搬送車3を対象車3Aとし、対象車3Aが通過するリンクLを対象リンクLAとする。また、対象車3A以外の物品搬送車3を他車3Bとする。
【0035】
それぞれのリンクLにおける基準コストSTは、対象リンクLAに他車3Bが存在しない状態で、対象車3Aが対象リンクLAを通過するのに要する時間である基準通過時間に基づいて設定される値である。本実施形態では、制御装置Hは、図9に示すように、対象リンクLAに他車3Bが存在しない空走行状態において、対象リンクLAに進入する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した場合に、対象リンクLAに進入する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した時刻Dと、図10に示すように、対象リンクLAから退出する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した時刻Dとの差から基準通過時間を算出する。そして、制御装置Hは、この基準通過時間に基づいて基準コストSTを設定する。例えば、基準コストSTは、基準通過時間の秒数とすることができる。
【0036】
変動コストDYは、対象リンクLAに他車3Bが存在する状態で対象車3Aが対象リンクLAを走行する実走行状態における通過時間(実通過時間)に応じた値であり、他車3Bの台数によって変動する値である。対象リンクLAに存在する他車3Bの台数が多いほど、実通過時間は長くなる。ここで、対象リンクLAに存在する他車3Bが1台増加するごとに増加する通過時間を「台数起因増加時間ΔTn」と称する。変動コストDYは、対象リンクLAに他車3Bが存在する状態で対象車3Aが対象リンクLAを走行する実走行状態において、対象車3Aが対象リンクLAを通過するのに要する時間である実通過時間が、基準通過時間に対して、対象リンクLAに存在する他車3Bの台数に応じて増加する時間(台数起因増加時間ΔTn(実通過時間の増加量))に基づいて設定される値である。
【0037】
ここでは、変動コストDYの指標としての精度を高めるため、制御装置Hは、対象リンクLAに他車3Bが存在する状態で対象車3Aに対象リンクLAを複数回走行させ、各回の走行において、対象リンクLAに存在していた他車3Bの台数を示す台数情報と実通過時間とを取得し、基準通過時間に対する実通過時間の増加量と台数情報との相関に基づいて台数起因増加時間ΔTnを求める。具体的には、制御装置Hは、基準通過時間に対する実通過時間の増加量を、台数情報に示される台数で除算して求められる、他車1台あたりの実通過時間の増加量を台数起因増加時間ΔTnとしている。そして、対象車3Aに対象リンクLAを複数回走行させて得られた台数起因増加時間ΔTnの平均値を、最終的な台数起因増加時間ΔTnとしている。
【0038】
制御装置Hは、経路設定制御において、対象リンクLAに存在するとみなす他車3Bの台数である台数値nを決定し、当該台数値nに応じて対象リンクLAの変動コストDYを設定する。制御装置Hは、上記のようにして求めた対象リンクLAの台数起因増加時間ΔTn(他車1台あたりの実通過時間の増加量)に、対象リンクLAの台数値nを乗算した値を変動コストDYとして設定することができる。つまり、変動コストDYは、下記式(2)に示すように、台数起因増加時間ΔTnに台数値nを乗算して得られる秒数として設定することができる。
【0039】
DY=ΔTn・n ・・・(2)
【0040】
例えば、対象リンクLAの台数値nが4、台数起因増加時間ΔTnが5秒である場合は、変動コストDYとして20が設定される。このように、変動コストDYは、対象リンクLAに存在するとみなされる他車3Bの台数の増加に伴って増加すると予想される、対象リンクLAの実通過時間の増加量を表す指標となっている。そして、制御装置Hは、経路設定制御を実行する場合に、設定車3Cの現在位置から目的地までの設定経路1Aの候補となる候補経路1Bに属する全てのリンクLのそれぞれに対して変動コストDYを設定する。
【0041】
制御装置Hは、このように設定される変動コストDYと基準コストSTとに基づいて、設定車3Cの現在位置から目的地までの設定経路1Aの候補となる候補経路1BにおけるリンクLのそれぞれのリンクコストLCを決定する。そして、当該リンクコストLCに基づいて候補経路1Bの全体のコストである経路コストTCを求め、候補経路1Bのそれぞれの経路コストTCに基づいて設定経路1Aを設定する。
【0042】
ここで、台数値nの決定方法について説明する。制御装置Hは、対象リンクLAに実際に存在していると判断している他車3Bを、対象リンクLAに存在するとみなして、台数値nを決定する。このような他車3Bの台数は、現在台数値naである。更に、本実施形態では、制御装置Hは、対象リンクLAを通過する設定経路1Aが既に設定されている他車3Bを、当該他車3Bの現在位置に関わらず対象リンクLAに存在するとみなして、台数値nを決定する。尚、対象リンクLAを通過する設定経路1Aが既に設定されている他車3Bには、対象リンクLA内を目的地とする設定経路1Aが既に設定されている他車3Bも含まれる。このような他車3Bの台数は、将来台数値nbである。即ち、台数値nは、下記式(3)に示すように、現在台数値naと将来台数値nbとの和である。
【0043】
n=na+nb・・・(3)
【0044】
つまり、本実施形態では、制御装置Hは、設定車3Cの経路設定制御#10を実行する時点で、対象リンクLAに存在していると判断している他車3B(図13に示す例では2台)に加えて、経路設定制御#10を実行する時点で、対象リンクLAに存在していないと判断している他車3Bであっても、対象リンクLAの全体又は一部を設定経路1Aとして既に設定されている他車3B(図13に示す例では2台)を、対象リンクLAに存在するとみなして台数値n(図13に示す例では4)を決定する。制御装置Hは、このようにして複数の候補経路1Bのそれぞれに属するリンクLを対象リンクLAとし、複数の対象リンクLAのそれぞれについての台数値nを決定する。
【0045】
このように台数値nを決定することで、設定車3Cの経路設定制御を行う時点での対象リンクLAの実際の混雑度(図13に示す例では他車3Bが2台)だけでなく、将来における対象リンクLAの混雑度も考慮して対象リンクLAのリンクコストLCを決定することができる。具体的には、経路設定制御を行う時点で対象リンクLAに存在しない他車3Bであっても、対象リンクLAを通過する予定となっている場合には、設定車3Cが対象リンクLAを通過する前後で対象リンクLAに存在する可能性があるため、対象リンクLAの混雑度を高める可能性がある。また、設定車3Cが対象リンクLAを通過する前後で対象リンクLAに存在しない他車3Bであっても、対象リンクLAを通過する予定となっている他車3Bが多い場合には、対象リンクLAの将来的な混雑度は高くなる可能性が高い。本実施形態の構成によれば、このような対象リンクLAの将来の混雑度も考慮して対象リンクLAのリンクコストLCを決定することができるため、設定車3Cの設定経路1Aを適切に設定し易くなっている。
【0046】
ところで、それぞれの物品搬送車3の走行目的は同じではない。例えば、図6を参照して上述したように、第1走行制御#2では物品搬送車3を搬送元の移載対象場所15に対応する位置まで走行させており、第2走行制御#5では物品搬送車3を搬送元の移載対象場所15に対応する位置まで走行させている。また、上述したように、物品搬送設備100には、複数の物品処理装置Pと、複数の保管部Rとが備えられている。本実施形態の物品搬送設備100は、例えば半導体の製造設備であり、それぞれの物品処理装置Pは、半導体基板に対して種々の製造処理を施す生産装置であり、搬送対象の物品Wの使用場所である。また、保管部Rは、材料としての半導体基板の保管部、或いは製造途中の半導体(いくつかの工程による処理が施された半導体基板)の保管部であり、搬送対象の物品Wの保管場所である。従って、搬送元には、物品処理装置Pと保管部Rとが含まれ、搬送先にも物品処理装置Pと保管部Rとが含まれる。
【0047】
これらの搬送を行う際、物品搬送車3は、物品Wを受け取り又は物品Wを引き渡すために設定された目的地である搬送目的地へ向かって走行する。本実施形態では、この走行のことを「搬送関連走行」とする。また、本実施形態では、この場合の物品搬送車3の運行状態を、物品Wを受け取り又は物品Wを引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する「第1状態」とする。また、第1状態の物品搬送車3を、「稼働搬送車3W」と称する(図1参照)。
【0048】
ところで、走行目的には、上述したような物品Wの搬送を目的としたものには限らず、物品Wの搬送を終えた物品搬送車3が搬送先から離脱するための走行や、次の搬送指令に備えて待機するための場所へ移動するための走行を目的するものもある。本実施形態では、この走行のことを「退避走行」、「待機走行」、「非搬送関連走行」等と称する。尚、待機走行には、物品搬送車3が停車している状態も含む。また、これは、物品Wを搬送する他の物品搬送車3から見た場合には、当該物品搬送車3を追い出すものでもあり、「追い出し走行」と称される場合もある。そして、この場合の物品搬送車3の運行状態を、物品Wを受け取り及び物品Wを引き渡すための目的地(搬送目的地)が設定されていない「第2状態」とする。尚、第2状態においても、移動先の目的地は設定されており、ここでは、この目的地を「非搬送目的地」と称する。また、第2状態の物品搬送車3を、「待機搬送車3S」と称する(図1参照)。
【0049】
上述したように、制御装置Hは、経路コストTCに基づいて、例えば、複数の候補経路1Bのうちの経路の長さが最も短い候補経路や、目的地までの所要時間が最も短くなる候補経路1Bを設定経路1Aとして設定する。経路長が短くても、経路の途中に多くの物品搬送車3が存在している場合には、最高速度での走行が制限されたり、徐行が必要であったり、渋滞が発生していたりする場合がある。このため、制御装置Hは、上述したように、台数値nに基づく変動コストDYも考慮して、設定経路1Aを設定している。
【0050】
しかし、そのように変動コストDYを考慮していたとしても、その時点での最適な経路を選択しているに過ぎない。つまり、物品搬送設備100における走行可能経路1が、効率的に使用されていなければ、最適な経路が設定経路1Aとして選択されても、まだ、搬送効率を向上させる余地がある。例えば、候補経路1Bに含まれるリンクLに待機搬送車3Sが存在していると、物品Wを搬送する稼働搬送車3Wにとって走行の妨げとなる場合がある。特に、待機搬送車3Sが同じ領域に多く集まっていると、その領域を通るリンクLの変動コストDYが大きくなる。変動コストDYが小さければ、最適な経路となり得る候補経路1Bに含まれる1つ以上のリンクLに複数の待機搬送車3Sが存在していると、当該領域を迂回するような経路が設定経路1Aとして設定され、搬送効率を低下させる場合も有り得る。また、当該領域を通る経路が設定経路1Aとして設定されている場合には、渋滞等によって実際の搬送時間が長くなり、搬送効率を低下させる場合もある。
【0051】
そこで、本実施形態では、物品Wを受け取る又は物品Wを引き渡すという目的が設定されていない物品搬送車3(待機搬送車3S)が、当該目的が設定されている物品搬送車3(稼働搬送車3W)の走行を妨げる可能性を低減できるように、物品搬送車3の配置が制御されている。具体的には、制御装置Hは、走行可能経路1の全体を分割して複数のエリアEを設定し、複数のエリアEのそれぞれに存在する待機搬送車3Sの密度の偏りが予め定めた範囲(偏り許容範囲ρref)内となるように、待機搬送車3Sを配置する偏り減少制御#50を実行する(図1図14参照)。
【0052】
ここで、エリアEは、走行可能経路1に沿って線状に設定されていても良いし、面状に設定されていても良い。図1には、第1エリアE1から第12エリアE12までの12のエリアEが設定されている形態を例示している。第1エリアE1及び第2エリアE2は、第2主経路4Bに沿って線状に設定されたエリアEである。第3エリアE3及び第4エリアE4は、第1主経路4Aにおいて面上に設定されたエリアEである。また、第5エリアE5から第12エリアE12まで8つのエリアEは、それぞれの副経路5の全てを含んで面上に設定されたエリアEである。尚、乗継経路9は、第1主経路4Aの側のエリアE(E3,E4)に含まれても良いし、第2主経路4Bの側のエリアE(E1,E2)に含まれても良い。同様に、分岐経路7及び合流経路8は、第2主経路4Bの側のエリアE(E1,E2)に含まれても良いし、副経路5の側のエリアE(E5~E6)に含まれていても良い。或いは、乗継経路9、分岐経路7及び合流経路8は、何れのエリアEにも含まれていなくても良い。それぞれのエリアEにおける経路長や面積は均等でなくてもよい。
【0053】
図14のフローチャートに示すように、制御装置Hは、走行可能経路1の全体を分割して複数のエリアEを設定する(#20)。次に、制御装置Hは、各エリアEにおける物品搬送車3の密度ρを演算する(#30)。密度ρの演算に際しては、上述した台数値nと同じアルゴリズムを用いることができる。例えば、当該エリアEに含まれるリンクLを統合して統合リンクを形成し、当該統合リンクに存在する待機搬送車3Sの台数を現在台数値naとし、当該統合リンクを通る設定経路1Aが設定されている待機搬送車3Sの台数を将来台数値nbとすることができる。尚、上述したように、それぞれの物品搬送車3には走行目的が設定されている。制御装置Hは、走行目的として「搬送関連走行」が設定されていない物品搬送車3(走行目的として「待機走行」が設定されている物品搬送車3)のみを計数して、現在台数値na及び将来台数値nbを求め、台数値nを演算する。そして、例えば、エリアEにおける台数値nを経路長で除算することによって、密度ρを演算する。
【0054】
或いは、エリアE内の待機搬送車3Sの数は、当該エリアE内に存在する待機搬送車3Sであって当該エリアE内に目的地(非搬送目的地)が設定されていない待機搬送車3Sの数と、当該エリアE内に存在するか否かに拘わらず当該エリアE内に目的地(非搬送目的地)が設定されている待機搬送車3Sの数とを含むように、計数されてもよい。当該エリアE内に存在する待機搬送車3Sであって搬送目的地が設定されていない待機搬送車3Sの数は、当該エリアEにおける現在台数値naの一部に相当する。また、当該エリアE内に存在するか否かに拘わらず当該エリアE内に目的地(非搬送目的地)が設定されている待機搬送車3Sの数は、当該エリアEにおける現在台数値naの残りと将来台数値nbとの和に相当する。制御装置Hは、このようにして計数したエリアE内の待機搬送車3Sの数(台数値nに相当する)を経路長で除算することによって、密度ρを演算する。
【0055】
尚、本実施形態では、図1に例示したように、各エリアEの経路長や面積が均等ではない。しかし、複数のエリアEは、それぞれのエリアEに含まれる走行可能経路1の経路長が均等になるように設定されていてもよい。そのような場合には、上述したような密度ρの演算における分母が一定となる。このため、密度ρは、それぞれのエリアEにおける待機搬送車3Sの台数と等価となる。従って、制御装置Hは、複数のエリアEのそれぞれに存在する待機搬送車3Sの台数を、密度ρとみなして、偏り減少制御#50を実行することができる。
【0056】
次に、制御装置Hは、全てのエリアEの密度ρの偏りσが、偏り許容範囲ρref以内であるか否かを判定する(#40)。例えば、密度ρの標準偏差が偏り許容範囲ρref以下であるか否かを判定基準としても良いし、密度ρの最大値と最小値との差が、偏り許容範囲ρref以下であるか否かを判定基準としても良い。図14に示すように、密度ρの偏りσが偏り許容範囲ρrefよりも大きい場合(密度ρの偏りσが偏り許容範囲ρref以下ではない場合)には、偏り減少制御#50が実行される。
【0057】
偏り減少制御#50では、密度ρの高いエリアEから待機搬送車3Sを退出させることによって、当該エリアEにおける密度ρを低下させる。制御装置Hは、例えば、平均密度ρaveに基づいて、密度ρの高いエリアEであるか否かを判定する。ここで、平均密度ρaveとは、複数のエリアEのそれぞれにおける待機搬送車3Sの密度ρの平均値である。制御装置Hは、平均密度ρaveに基づいて第1基準密度Hrefを設定する。第1基準密度Hrefは、平均密度ρaveに予め規定された第1設定値(可変でも良い)を加算して設定されても良いし、平均密度ρaveに予め規定された第1係数(可変でも良い、例えば1.2~2.0)を乗算して設定されても良い。何れにしても、第1基準密度Hrefは、平均密度ρaveよりも大きい値に設定される。尚、第1基準密度Hrefは、全てのエリアEについて同じ値であっても良いし、異なる値であってもよい。
【0058】
同様に、制御装置Hは、平均密度ρaveに基づいて第2基準密度Lrefを設定する。第2基準密度Lrefは、平均密度ρaveから予め規定された第2設定値(可変でも良い)を減算して設定されても良いし、平均密度ρaveに予め規定された第2係数(可変でも良い、例えば0.5~0.8)を乗算して設定されても良い。何れにしても、第2基準密度Lrefは、平均密度ρaveよりも小さい値に設定される。第1基準密度Hrefと同様に、第2基準密度Lrefも、全てのエリアEについて同じ値であっても良いし、異なる値であってもよい。
【0059】
制御装置Hは、各エリアEについては、図15に示すように、偏り減少制御#50を実行する。初めに、制御装置Hは、1つのエリアEの密度ρが第1基準密度Href以上であるか否かを判定する(#51)。当該密度ρが第1基準密度Href以上である場合には、制御装置Hは当該エリアEのエリア属性を「高密度エリア」に設定する(#52)。一方、密度ρが第1基準密度Href未満である場合には、制御装置Hは、次に、当該エリアEの密度ρが第2基準密度Lref以下であるか否かを判定する(#54)。当該密度ρが第2基準密度Lref以下である場合には、制御装置Hは当該エリアEのエリア属性を「低密度エリア」に設定する(#55)。密度ρが第1基準密度Href以上でもなく、第2基準密度Lref以下でも無い場合には、当該エリアEのエリア属性は空欄(いわゆるnull)もしくは、「平均密度エリア」に設定される。このように、制御装置Hは、偏り減少制御#50の過程において、それぞれのエリアEのエリア属性を判定し、設定する。
【0060】
ステップ#52において、当該エリアEが高密度エリアであると判定された場合、制御装置Hは、当該エリアEに位置する待機搬送車3Sを他のエリアEに移動させる密度調整処理#53を実行する。つまり、待機搬送車3Sの密度ρが、平均密度ρaveよりも大きい値に設定された第1基準密度Href以上であるエリアEを高密度エリアとして、制御装置Hは、偏り減少制御#50として、高密度エリア内の待機搬送車3Sを他のエリアEへ移動させる密度調整処理#53を行う。この際、低密度エリアがある場合には、制御装置Hは、密度調整処理#53において、高密度エリア内の待機搬送車3Sを低密度エリアへ移動させる。即ち、待機搬送車3Sの密度が、平均密度ρaveよりも小さい値に設定された第2基準密度以下であるエリアEを低密度エリアとして、制御装置Hは、密度調整処理#53において、低密度エリアがある場合には、高密度エリア内の待機搬送車3Sを低密度エリアへ移動させる。
【0061】
低密度エリアがない場合には、制御装置Hは、密度調整処理#53において、任意のエリアEに待機搬送車3Sを移動させる。この際、例えば、最も密度ρの値が小さいエリアEに待機搬送車3Sを移動させても良いし、エリアEの内で最も近いエリアEに待機搬送車3Sを移動させてもよい。尚、移動先のエリアEは、他の高密度エリアではないことが好ましいが、高密度エリアが移動先となることが妨げられるものではない。当該他の高密度エリアにおいても、密度調整処理が実行されるため、時間の経過と共に、エリアE間における密度の平準化は進んでいく。
【0062】
また、低密度エリアが存在する場合においても、低密度エリアへの移動が優先されることなく、制御装置Hが、エリアEの内で最も近いエリアEに待機搬送車3Sを移動させることを妨げるものではない。また、図15におけるステップ#54及びステップ#55が実行されず、低密度エリアの設定が行われない形態であってもよい。
【0063】
ところで、複数の物品処理装置Pが配置された副経路5に設定された第5エリアE5~第12エリアE12や、保管部Rが配置された第1主経路4Aに設定された第3エリアE3及び第4エリアE4においては、物品Wを受け取るために、多くの物品搬送車3が頻繁に派遣される場合がある。当然ながら、目的地となる物品処理装置Pや保管部Rに近い位置に待機搬送車3Sが配置されている方が、搬送指令を受けてから当該目的地へ迅速に到着することができる。このため、単に物品搬送車3が通過する第2主経路4Bに設定された第1エリアE1及び第2エリアE2に比べて、第3エリアE3~第12エリアE12は、現在台数値na及び将来台数値nbが大きくなる場合がある。
【0064】
このような場合に、第3エリアE3~第12エリアE12に配置されている待機搬送車3Sが他のエリアEに移動してしまうと、却って物品搬送設備100の搬送効率を低下させるおそれがある。このため、搬送指令により待機搬送車3Sの目的地となる地点が多いエリアEに関しては、台数値nが大きくなることが許容されると好ましい。例えば、制御装置Hは、待機搬送車3SによるそれぞれのエリアE内での物品Wの受け取りの数が多くなるに従って、第1基準密度Hrefが高くなるように設定すると好適である。即ち、第1基準密度Hrefは、それぞれのエリアE内における物品搬送車3(稼働搬送車3Wとして機能する物品搬送車3)の需要が高くなるに従って高くなるように設定されると好適である。これにより、待機搬送車3Sの台数値nが増加しても、高密度エリアとして判定されにくくなり、密度調整処理#53の対象エリアとはなりにくくなる。そして、当該エリアEに配置された待機搬送車3Sが稼働搬送車3Wとなることで、迅速に物品Wを搬送することができ、物品搬送設備100の搬送効率が向上する。
【0065】
尚、上述したように、台数値nには、現在台数値naと、将来台数値nbとが含まれる。これと同様の考え方により、エリアEにおいて物品Wを受け取る物品搬送車3の台数は、搬送指令が出されて目的地へ向かっている物品搬送車3の数と、搬送指令を出すことが決まっている物品搬送車3の数との双方を含むと好適である。例えば、搬送指令を出す予定の目的地から、別の物品搬送車3が出発していないような場合や、当該目的地において受け渡される予定の物品Wの準備が完了していない場合がある。このような場合には、物品Wの受け渡しが可能となるまで搬送指令は保留されることがある。しかし、搬送管理を行う制御装置Hは、搬送指令の計画を生成しており、今後出す予定の搬送指令も把握している。従って、エリアEにおいて物品Wを受け取る物品搬送車3の台数に、搬送指令を出すことが決まっている物品搬送車3の数を含めることができる。尚、当然ながら、エリアEにおいて物品Wを受け取る物品搬送車3の台数が、搬送指令が出されて目的地へ向かっている物品搬送車3の数と、搬送指令を出すことが決まっている物品搬送車3の数との何れか一方であってもよい。
【0066】
また、制御装置Hは、搬送指令により待機搬送車3Sの目的地となる地点が多くなるに従って、第1基準密度Hrefが高くなるように設定してもよい。上述したように、搬送管理を行う制御装置Hは、搬送指令の計画を生成しており、今後出す予定の搬送指令も把握している。従って、制御装置Hは、搬送指令を出すことが決まってはいなくても、搬送指令により待機搬送車3Sの目的地となる地点のそれぞれのエリアEにおける数の予定数を把握することができる。そして、搬送指令により待機搬送車3Sの目的地となる地点が多くなるに従って、第1基準密度Hrefが高く設定されると、実際に当該エリアEに待機搬送車3Sの目的地が設定された場合に、高密度エリアであると判定されにくくなる。その結果、稼働搬送車3Wとなる物品搬送車3の需要が高いエリアEに待機搬送車3Sを割り当てることができ、搬送効率を向上させることができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のエリアEのそれぞれにおける待機搬送車3Sの密度ρを比較的均等にすることができる。従って、待機搬送車3Sの密度ρが高いエリアEが生じることを回避できる。待機搬送車3Sの密度が高いエリアEの出現が抑制されることにより、密度ρの高さに起因した渋滞が生じ難くなり、第1状態の物品搬送車3(稼働搬送車3W)を円滑に走行させ易くすることができる。換言すれば、待機搬送車3Sは、搬送目的地に向かう第1状態の物品搬送車3(稼働搬送車3W)の走行を妨げないように走行することができる。このように、本実施形態によれば、物品Wを受け取る又は物品Wを引き渡すという目的が設定されていない物品搬送車3が、当該目的が設定されている物品搬送車3の走行を妨げる可能性を低減できる技術を提供することができる。
【0068】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0069】
(1)上述したように、本実施形態では、ワイヤレス給電技術を用いて、物品搬送車3に駆動用電力が供給される。物品搬送設備100の全域に亘って1つの系統で電力を供給すると、電力の損失が大きくなったり、給電線20や給電線20に電力を供給する給電装置(不図示)に障害が発生した場合に全域に亘って電圧降下や停電が生じたりすることがある。このため、物品搬送設備100における走行可能経路1が、複数の給電エリアに区分され、それぞれの給電エリアにおいて物品搬送車3に電力が供給されるように構成されている場合がある。そして、例えば、制御装置Hは、それぞれの給電エリアにおける物品搬送車3の台数が、それぞれの給電エリアに設定されたエリア内上限台数以下となるように、物品搬送車3の走行を制御するように構成されている場合がある。この給電エリアと、上述した待機搬送車3Sの台数を管理するためのエリアEとが兼用されていてもよい。
【0070】
(2)上記においては、物品搬送車3の位置情報Sが、被検出体Tから読み取った位置情報Sである構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。物品搬送車3の位置情報Sが、被検出体T読み取った位置の情報に加えて、当該位置からの物品搬送車3の走行距離の情報も含む構成であっても良い。この構成では、制御装置Hは、物品搬送車3の詳細な位置を取得することができる。また、物品搬送車3が、例えばGPS(グローバル・ポジショニング・システム)等の他の位置検出装置を備えている場合には、当該位置検出装置により取得した位置情報Sを制御装置Hに送信する構成とされていてもよい。
【0071】
(3)上記においては、天井から吊り下げ支持された走行レール2上を物品搬送車3が走行する構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、床面上等の天井からの吊り下げ支持以外の状態で設置された走行レール2上を物品搬送車3が走行する構成としてもよい。また、走行レール2上ではなく、床面上を直接走行する等の無軌道の状態で物品搬送車3が走行する構成としてもよい。
【0072】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について説明する。
【0073】
1つの態様として、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備は、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地である搬送目的地へ向かって走行する第1状態と、前記搬送目的地が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記制御装置は、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定し、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する偏り減少制御を実行する。
【0074】
待機搬送車は、搬送目的地に向かう第1状態の物品搬送車の走行を妨げないように走行することが望ましいが、待機搬送車の密度が高いエリアでは、密度の高さに起因した渋滞が生じやすくなり、第1状態の物品搬送車が円滑に走行できなくなる可能性がある。しかし、本構成によれば、複数のエリアのそれぞれにおける待機搬送車の密度を比較的均等にすることができる。従って、待機搬送車の密度が高いエリアが生じることを回避でき、第1状態の物品搬送車を円滑に走行させ易くすることができる。即ち、本構成によれば、物品を受け取る又は物品を引き渡すという目的が設定されていない物品搬送車が、当該目的が設定されている物品搬送車の走行を妨げる可能性を低減できる技術を提供することができる。
【0075】
この物品搬送設備の種々の技術的特徴は、物品搬送設備における搬送車配置方法や搬送車配置プログラムにも適用可能である。以下にその代表的な態様を例示する。例えば、物品搬送設備における搬送車配置方法は、上述した物品搬送設備の特徴を備えた各種のステップを有することができる。また、搬送車配置プログラムは、上述した物品搬送設備の特徴を備えた各種の機能をコンピュータとしての制御装置に実現させることが可能である。当然ながらこれらの搬送車配置方法及び搬送車配置プログラムも、上述した物品搬送設備の作用効果を奏することができる。さらに、物品搬送設備の好適な態様として、下記の実施形態の説明において例示する種々の付加的特徴も、これら搬送車配置方法や搬送車配置プログラムに組み込むことが可能であり、当該方法及び当該プログラムはそれぞれの付加的特徴に対応する作用効果も奏することができる。
【0076】
1つの好適な態様として、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備において、前記制御装置により前記物品搬送車を配置する搬送車配置方法は、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記制御装置により実行される偏り減少制御が、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定するステップと、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置するステップと、を備える。
【0077】
また、1つの好適な態様として、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する複数の物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備において、前記物品搬送車を配置するために前記制御装置に実現させる搬送車配置プログラムは、前記物品搬送車の運行状態には、前記物品を受け取り又は前記物品を引き渡すために設定された目的地へ向かって走行する第1状態と、前記物品を受け取り及び前記物品を引き渡すという目的が設定されていない第2状態と、が含まれ、前記第2状態の前記物品搬送車を待機搬送車として、前記走行可能経路の全体を分割して複数のエリアを設定する機能と、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の密度の偏りが予め定めた範囲内となるように、前記待機搬送車を配置する機能と、を備える偏り減少制御機能を前記制御装置に実現させる。
【0078】
ここで、複数の前記エリアのそれぞれにおける前記待機搬送車の密度の平均値を平均密度とし、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも大きい値に設定された第1基準密度以上である前記エリアを高密度エリアとして、前記制御装置は、前記偏り減少制御として、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を他の前記エリアへ移動させる密度調整処理を行うと好適である。
【0079】
本構成によれば、高密度エリアがある場合には、当該高密度エリアから他のエリアに待機搬送車を移動させる密度調整制御が行われる。仮に移動先のエリアが高密度エリアであった場合であっても、当該移動先の高密度エリアでも同様に密度調整制御が行われる。従って、最終的には密度が高密度エリアから密度が比較的低いエリアに待機搬送車が移動することとなり、各エリアの密度の平準化を図ることができる。
【0080】
また、制御装置が上記のように密度調整制御を行う場合において、前記待機搬送車の密度が前記平均密度よりも小さい値に設定された第2基準密度以下である前記エリアを低密度エリアとして、前記制御装置は、前記密度調整処理において、前記低密度エリアがある場合には、前記高密度エリア内の前記待機搬送車を前記低密度エリアへ移動させると好適である。
【0081】
本構成によれば、高密度エリアから低密度エリアに待機搬送車を移動させるため、各エリアの密度を早期に平準化することができる。
【0082】
また、複数の前記エリアのそれぞれにおける前記第1基準密度が、前記待機搬送車によるそれぞれの前記エリア内での前記物品の受け取りの数が多くなるに従って、高くなるように設定されていると好適である。
【0083】
この構成によれば、エリア内に搬送目的地が設定された場合に、当該エリア内に存在する待機搬送車や、当該エリアに向かう待機搬送車の目的地を搬送目的地に設定することで、迅速に搬送目的地に物品搬送車を派遣することができる。このため、物品搬送車に対して物品を受け渡す側における待ち時間が短縮され、物品搬送設備の全体的な搬送効率を向上させることができる。
【0084】
また、前記エリア内の前記待機搬送車の数は、当該エリア内に存在する前記待機搬送車であって当該エリア内に前記目的地が設定されていない前記待機搬送車の数と、当該エリア内に存在するか否かに拘わらず当該エリア内に前記目的地が設定されている前記待機搬送車の数と、を含むと好適である。
【0085】
この構成によれば、現時点でエリア内に存在する待機搬送車の数と、将来エリア内に存在することになる待機搬送車の数とを合わせて待機搬送車の数を計数することができる。その結果、将来における待機搬送車の密度の上昇も含めて抑制することができ、より迅速に各エリアにおける密度の平準化が図れると共に、平準化された密度の維持も行い易い。
【0086】
また、複数の前記エリアが、それぞれの前記エリアに含まれる前記走行可能経路の経路長が均等になるように設定され、前記制御装置が、複数の前記エリアのそれぞれに存在する前記待機搬送車の台数を、前記密度とみなして、前記偏り減少制御を実行すると好適である。
【0087】
この構成によれば、複数のエリアの経路長が均等になるように設定されているので、複数の前記エリアのそれぞれに存在する待機搬送車の台数の偏りが密度の偏りを表すことになる。従って、制御装置が、密度を演算する処理が軽減され、演算負荷を低減させることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 :走行可能経路
3 :物品搬送車
3S :待機搬送車
100 :物品搬送設備
E :エリア
H :制御装置
Href :第1基準密度
Lref :第2基準密度
W :物品
σ :密度の偏り
ρ :密度
ρave :平均密度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15