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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】照度推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20240220BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240220BHJP
   B60Q 1/02 20060101ALI20240220BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01J1/42 J
B60R11/02 Z
B60Q1/02 C
G01J1/02 S
G01J1/02 U
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021089370
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022182057
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】大倉 孝允
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一誠
(72)【発明者】
【氏名】宮地 厚実
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】塩田 健太朗
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-167842(JP,A)
【文献】特開2010-18164(JP,A)
【文献】特開2014-217001(JP,A)
【文献】特開2012-160978(JP,A)
【文献】特開2010-173544(JP,A)
【文献】特開2010-188826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345847(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113291229(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00 - B60Q 1/56
B60R 9/00 - B60R 11/06
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車(111)に搭載されると共に、太陽(200)の光が直接的あるいは間接的に照らされる領域を撮影するカメラ(101~110)と、
少なくとも前記自車の現在の位置、前記自車の現在の向き、及び現在の日時を含む車両情報を取得する通信部(112、113)と、
前記カメラから画像を取得すると共に、前記通信部から前記車両情報を取得し、前記画像及び前記車両情報に基づいて、現在の太陽の位置及び前記自車の周囲の照度を推定する推定部(115)と、
を含む、照度推定装置。
【請求項2】
前記カメラは、ドライバを撮影するドライバ検知カメラ(101)と、乗員を撮影する乗員検知カメラ(102)と、を含み、
前記推定部は、前記ドライバ検知カメラで撮影されたドライバ画像及び前記乗員検知カメラで撮影された乗員画像を取得し、前記ドライバ画像に表される被写体の明るさまたは前記乗員画像に表される被写体の明るさに基づいて、前記自車を基準とした現在の太陽の方向を推定する、請求項1に記載の照度推定装置。
【請求項3】
前記カメラは、前記自車の進行方向を基準とした前記自車の前方を撮影するレインセンサ用のレインカメラ(103)、前記自車の進行方向を基準とした前記自車の前方を撮影する前方カメラ(104)、前記自車の前記進行方向を基準とした前記自車の前方、後方、左側、右側を撮影する複数の周辺カメラ(105~108)、及び前記自車の後方及び後側方を撮影する電子ミラー用カメラ(109、110)のうちの少なくとも1つを含み、
前記推定部は、前記レインカメラで撮影されたレイン画像、前記前方カメラで撮影された前方画像、前記複数の周辺カメラで撮影された複数の周辺画像、及び前記電子ミラー用カメラで撮影された電子ミラー用画像のうちの少なくとも1つを取得し、取得した画像に表される被写体の明るさに基づいて、前記自車の周囲の日射量を推定し、あるいは、前記自車を基準とした前記現在の太陽の位置を推定する、請求項1または2に記載の照度推定装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記自車に搭載されたナビゲーションシステム(112)、あるいは、前記自車に搭載されると共に前記自車の周囲の通信対象との間で通信可能な通信モジュール(113)を含み、
前記推定部は、前記ナビゲーションシステムまたは前記通信モジュールから取得する前記車両情報に基づいて前記現在の太陽の位置を推定し、また、前記車両情報に現在の天気情報が含まれる場合、前記日時に対応した季節及び前記天気情報に基づいて前記推定した照度を補正する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記画像のうちの車体が撮影された画像に表される前記車体の色及び前記車体の明るさに基づいて、前記自車の周囲の照度を推定する、あるいは、推定した照度を補正する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【請求項6】
前記カメラは、前記画像として、露光時間を変更した複数の画像を撮影し、
前記推定部は、前記カメラから前記露光時間が変更された前記複数の画像を取得し、前記露光時間が変更された前記複数の画像及び前記車両情報に基づいて、前記照度を推定する、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記画像に表される被写体の中から、路面、空の領域、建物、トンネル、及び橋げたのうちのいずれかを判定し、前記被写体の中に前記路面、前記空の領域、前記建物、前記トンネル、及び前記橋げたのうちのいずれかが含まれる場合、含まれるものの明るさに基づいて、前記推定した照度を補正する、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【請求項8】
前記自車のウィンドシールド(116)の温度を測定する温度センサ(114)を含み、
前記推定部は、前記温度センサから温度の情報を取得し、前記画像に表される被写体の中から先行車を判定し、前記温度の情報に基づいて前記推定した照度を補正する、あるいは、前記先行車の色に基づいて前記推定した照度を補正する、あるいは、前記温度の情報及び前記先行車の色に基づいて前記推定した照度を補正する、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【請求項9】
前記推定部は、前記画像、前記車両情報、及び前記推定した照度に基づいて、前記自車のライトの点消灯の制御を決定する、あるいは、前記自車の空調装置の制御を決定する、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【請求項10】
前記推定部は、前記画像に表される被写体の中から路面または空の領域を判定し、前記路面または前記空の領域の画素値の合計値に基づいて、または、前記路面または前記空の領域の画素値の平均値に基づいて、前記照度を推定する、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【請求項11】
前記推定部は、前記画像から一部を切り出し、切り出した画像に基づいて、前記照度を推定する、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【請求項12】
前記カメラは、撮影した画像のデータを一定時間毎に前記推定部に出力し、
前記推定部は、前記カメラから前記一定時間毎に取得する画像に基づき、前記照度を推定する、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の照度推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照度推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車の前方を撮影した画像を用いて、自車の周囲の照度を推定する装置が、例えば特許文献1で提案されている。装置は、予め撮影された学習用画像と、学習用画像が撮影された時刻と、学習用画像が撮影された時刻における車両の周囲にて計測された照度と、を学習データとして有する。すなわち、装置は、撮影した画像と、画像が撮影された時刻と、に基づいて、撮影時刻における車両の周囲の照度を学習データに基づいて推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-175743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、車両の周囲の情報として前方を撮影した画像しか用いていないので、照度を推定するための情報が車両の前方の状況に偏ってしまう。このため、路面の状態、天候、太陽の位置、太陽の高さ等に基づく実際の照度と、推定される照度と、に差が生じてしまう。その結果、照度の推定の精度が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、照度の推定の精度を向上させることができる照度推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、照度推定装置は、カメラ(101~110)、通信部(112、113)、及び推定部(115)を含む。
【0007】
カメラは、自車(111)に搭載されると共に、太陽(200)の光が直接的あるいは間接的に照らされる領域を撮影する。通信部は、少なくとも自車の現在の位置、自車の現在の向き、及び現在の日時を含む車両情報を取得する。
【0008】
推定部は、カメラから画像を取得すると共に、通信部から車両情報を取得し、画像及び車両情報に基づいて、現在の太陽の位置及び自車の周囲の照度を推定する。
【0009】
これによると、複数の情報を含む車両情報と画像とを用いて照度が推定されるので、照度を推定するための情報が自車の前方の状況に偏らない。このため、実際の照度と推定される照度との差を小さくすることができる。したがって、照度の推定の精度を向上させることができる。
【0010】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る照度推定装置を含むブロック図である。
図2】自車における各カメラの設置場所を示した模式図である。
図3】照度推定装置の作動の一例を示した図である。
図4】自車に対する現在の太陽の方向の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0013】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る照度推定装置は、車両に搭載されるものである。照度推定装置は、自車の周囲の照度を推定し、推定した照度に基づいてライトの点消灯の制御やエアコンの制御を決定する装置である。
【0014】
図1及び図2に示されるように、照度推定装置100は、ドライバ検知カメラ101、乗員検知カメラ102、レインカメラ103、前方カメラ104、複数の周辺カメラ105~108、及び電子ミラー用カメラ109、110を含む。各カメラ101~110は、自車111に搭載されると共に、太陽の光が直接的あるいは間接的に照らされる領域を撮影するための撮影装置である。
【0015】
また、照度推定装置100は、ナビゲーションシステム112、通信モジュール113、温度センサ114、及び電子制御ユニット115を含む。
【0016】
ドライバ検知カメラ101は、自車111のドライバを撮影する。ドライバ検知カメラ101は、例えば、ドライバの顔を撮影することでドライバの居眠り、わき見、運転姿勢を監視するためのDSM(Driver Status Monitor)の一部である。DSMは、例えば、近赤外光源、ドライバ検知カメラ101、これらを制御する制御ユニット等を含む。
【0017】
ドライバ検知カメラ101は、運転席のヘッドレスト部を撮影するように、例えばステアリングコラム部の上面やインストルメントパネルの上面等に設置される。ドライバ検知カメラ101は、近赤外光源の近赤外光が照射されたドライバの頭部を撮影する。
【0018】
DSMの制御ユニットは、ドライバ検知カメラ101で撮影されたドライバ画像を解析する。制御ユニットは、例えば、ドライバの右眼の位置、左眼の位置等の情報をドライバ画像から抽出し、抽出した眼球位置の情報に基づき、ドライバに音声メッセージを出す。また、DSMの制御ユニットは、電子制御ユニット115の要求に応じてドライバ画像のデータを電子制御ユニット115に出力する。
【0019】
乗員検知カメラ102は、自車111の室内の乗員を撮影する。乗員検知カメラ102は、例えば、自車111の室内の乗員の状態を検知する乗員検知システムの一部である。乗員検知カメラ102は、例えばルームミラーの裏側や天井等に設置される。
【0020】
乗員には、ドライバが含まれる場合と、ドライバが含まれない場合と、の両方を含む。乗員検知カメラ102が後部座席を撮影する場合、ドライバは乗員検知カメラ102によって撮影された乗員画像に含まれない。乗員検知カメラ102が運転席や助手席が含まれるように撮影する場合、ドライバは乗員画像に含まれる。乗員検知カメラ102は、電子制御ユニット115の要求に応じて乗員画像のデータを電子制御ユニット115に出力する。
【0021】
レインカメラ103は、自車111のウィンドシールド116に付着する雨滴を撮影するレインセンサ用のカメラである。レインカメラ103は、例えばルームミラーの裏側やウィンドシールド116に設置される。レインカメラ103は、ウィンドシールド116に付着した雨滴の量に応じて自車111のワイパ装置を制御する雨滴検出装置の一部である。レインカメラ103は、電子制御ユニット115の要求に応じてレイン画像のデータを電子制御ユニット115に出力する。
【0022】
前方カメラ104は、自車111の進行方向を基準とした自車111の前方を撮影する。前方カメラ104は、例えば、電子制御ユニット115と共に、先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance System:ADAS)を構成する。前方カメラ104は、電子制御ユニット115の要求に応じて前方画像のデータを電子制御ユニット115に出力する。
【0023】
複数の周辺カメラ105~108は、自車111の進行方向を基準として自車111の位置を俯瞰的に把握するために、自車111の周囲を撮影する。周辺カメラ105は、自車111の前方を撮影する。周辺カメラ105は、自車111のフロント部に設置される。周辺カメラ106は、自車111の後方を撮影する。周辺カメラ106は、自車111のリア部に設置される。周辺カメラ107は、自車111の左側を撮影する。周辺カメラ107は、電子ミラー用カメラ109や助手席側ドア等の自車111の左側に設置される。周辺カメラ108は、自車111の右側を撮影する。周辺カメラ108は、電子ミラー用カメラ110や運転席側ドア等の自車111の右側に設置される。
【0024】
周辺カメラ105~108は、例えば、自車111を駐停車させる際や発進させる際にドライバの視界を補助するための周辺監視システムの一部である。周辺監視システムは、各周辺カメラ105~108から各周辺画像の各データを取得し、各周辺画像を合成する等の画像処理を行う。そして、周辺監視システムは、周囲の風景を含めた俯瞰的な画像をナビゲーションシステム112のディスプレイやメータのディスプレイに表示する。また、周辺カメラ105~108は、電子制御ユニット115の要求に応じて各周辺画像の各データを電子制御ユニット115に出力する。
【0025】
電子ミラー用カメラ109、110は、自車111の後方及び後側方を撮影する。電子ミラー用カメラ109、110は、例えば、自車111の後方及び後側方の映像を室内のドアミラー用のディスプレイに表示させる電子ミラーシステムの一部である。電子ミラー用カメラ109は、自車111のうちの左のドアミラーに対応する位置に設置される。電子ミラー用カメラ110は、自車111のうちの右のドアミラーに対応する位置に設置される。電子ミラー用カメラ109、110は、電子制御ユニット115の要求に応じて各電子ミラー用画像の各データを電子制御ユニット115に出力する。
【0026】
ナビゲーションシステム112は、目的地へのナビゲーションを実行するための装置である。ナビゲーションシステム112は、GPS(Global Positioning System)や制御ユニット等を備える。ナビゲーションシステム112は、電子制御ユニット115の要求に応じて、少なくとも自車111の現在の位置、自車111の現在の向き、及び現在の日時を含む車両情報を電子制御ユニット115に出力する。
【0027】
通信モジュール113は、自車111に搭載されると共に自車111の周囲の通信対象との間で通信可能な装置である。通信モジュール113は、例えば、DCM(Data Communication Module)である。通信モジュール113は、LTE(Long Term Evolution)及び5G(5th Generation)等の通信規格に沿った無線通信により、自車111と周囲の通信対象との間で電波を送受信する。通信対象は、例えば、他の車両、路側装置、携帯端末、店舗が備える通信装置等である。携帯端末は、例えば、ドライバや他の乗員が携帯するスマートフォン等である。
【0028】
自車111は、通信モジュール113により、インターネットに接続されたコネクテッドカーとなる。通信モジュール113は、クラウドに設けられたサーバから、自車111が走行する道路の最新の高精度地図データ等を取得する。通信モジュール113は、電子制御ユニット115の要求に応じて、少なくとも自車111の現在の位置、自車111の現在の向き、及び現在の日時を含む車両情報を電子制御ユニット115に出力する。
【0029】
温度センサ114は、自車111のウィンドシールド116の温度を測定する。温度センサ114は、例えばルームミラーの裏側等に設置される。温度センサ114は、電子制御ユニット115の要求に応じて、ウィンドシールド116の温度のデータを電子制御ユニット115に出力する。なお、温度センサ114は、例えば雨滴検出装置に内蔵されていても良い。
【0030】
電子制御ユニット115は、照度推定機能、ライトセンサ機能、及び日射センサ機能を有する装置である。電子制御ユニット115は、ECU(Electronic Control Unit)である。電子制御ユニット115は、各カメラ101~110から各画像を取得すると共に、ナビゲーションシステム112または通信モジュール113から車両情報を取得する。
【0031】
照度推定機能は、電子制御ユニット115が、各画像及び車両情報に基づいて、現在の太陽の位置及び自車111の周囲の照度を推定する機能である。電子制御ユニット115は、画像の画素値と照度との相関関係のデータを有する。画素値は、各画素の色の濃淡や明るさを表す。電子制御ユニット115は、画像処理によって画素値を取得すると共に、自車111に関する車両情報を用いて画素値を調整する。
【0032】
すなわち、電子制御ユニット115は、現在の日時、自車111の位置や向き、現在の太陽の位置に応じて太陽の光がどのように自車111に照らされているのか、という情報を、画素値に反映させる。そして、電子制御ユニット115は、取得した画像値に対応する照度を取得することで、照度を推定する。さらに、電子制御ユニット115は、ウィンドシールド116の温度等の情報を用いて、推定した照度を補正する。
【0033】
ライトセンサ機能は、電子制御ユニット115が、複数の画像、車両情報、及び推定した照度に基づいて、自車111のライトの点消灯の制御を決定する機能である。つまり、電子制御ユニット115は、ライトの点灯または消灯を判定する。電子制御ユニット115は、ライトの制御内容を含んだライト信号を生成する。電子制御ユニット115は、ライト信号をボデーECU117に出力する。ボデーECU117は、電子制御ユニット115から入力するライト信号の制御内容に従って自車111のライトの点消灯を制御する。
【0034】
日射センサ機能は、電子制御ユニット115が、複数の画像、車両情報、及び推定した照度に基づいて、自車111の空調装置の制御を決定する機能である。電子制御ユニット115は、取得した画像に表される被写体の明るさに基づいて、自車111の周囲の日射量や、自車111を基準とした現在の太陽の位置を推定する。また、電子制御ユニット115は、日射量や現在の太陽の位置に基づいて、吹き出し風量や室内温度等の車室内空調の制御を決定する。
【0035】
電子制御ユニット115は、エアコンの制御内容を含んだ日射信号を生成する。あるいは、電子制御ユニット115は、エアコンの制御内容を含まない日射信号を生成する。電子制御ユニット115は、日射信号をエアコンECU118に出力する。
【0036】
エアコンECU118は、電子制御ユニット115から入力する日射信号の制御内容に従って自車111のエアコンを制御する。あるいは、エアコンECU118は、日射信号を利用して自車111のエアコンを制御する。
【0037】
また、電子制御ユニット115は、ドライバの運転を支援する制御を行う先進運転支援システムの一部である。このため、電子制御ユニット115は、前方カメラ104の前方画像の画像処理を行うことにより、自車111の周囲の状況を検出する。電子制御ユニット115は、車速センサ、ステアリングセンサ、アクセルセンサ等の各センサの情報を入力する。電子制御ユニット115は、各センサの情報をボデーECU117から取得しても良いし、各センサから直接取得しても良い。電子制御ユニット115は、ナビゲーションシステム112や通信モジュール113から取得した車両情報を自車111の制御に利用する。
【0038】
電子制御ユニット115は、前方画像の画像処理の結果及び各センサの情報に基づいて、自車111の運転状況を把握すると共に、自車111が周囲の物体と接触することを防止、軽減する制御を実行する。例えば、電子制御ユニット115は、車両前方の物体との接触を回避あるいは軽減するためにブレーキを動作させたり、ステアリングを動作させたりすることが必要であると判定すると、急ハンドル予告信号や急ブレーキ予告信号をボデーECU117に出力する。ボデーECU117は、電子制御ユニット115の各信号に基づいてドライバに自車111の周囲の状況を伝えたり、自車111の動作を制御したりする。以上が、照度推定装置100の全体構成である。
【0039】
次に、照度推定装置100の作動について説明する。照度推定装置100は、予め設定されたプログラムに従って、照度を推定する。一つの例として、電子制御ユニット115は、各カメラ101~110から各画像を取得すると共に、各画像のうちの前方画像を用いて晴天時の照度を推定する場合について説明する。
【0040】
図3に示されるように、電子制御ユニット115は、前方カメラ104から前方画像を取得すると共に、ナビゲーションシステム112から車両情報を取得する。電子制御ユニット115は、通信モジュール113から車両情報を取得しても良い。
【0041】
そして、電子制御ユニット115は、前方画像及び車両情報に基づいて、現在の太陽の位置を取得する。現在の太陽の位置は、自車111を基準とした太陽の方位角及び仰角である。仰角から太陽の高さを推定できる。
【0042】
例えば、前方画像に太陽が写っている場合、電子制御ユニット115は、前方画像の中の太陽の位置から、自車111を基準とした現在の太陽の位置を容易に推定することができる。一方、前方画像に太陽が写っていない場合、電子制御ユニット115は、前方画像のうちの空領域に対応する空検知範囲の水平方向の輝度値のピークから方向角を推定する。また、電子制御ユニット115は、車両情報に含まれる緯度、経度、日時、自車111の向きの情報から仰角を推定する。
【0043】
なお、電子制御ユニット115は、車両情報に含まれる緯度、経度、日時、自車111の向きの各情報に基づいて、現在の太陽の位置を推定しても良い。また、電子制御ユニット115は、現在の太陽の位置を推定する際に、エアコン制御のために、前方画像の画素値に基づいて、日射量を推定しても良い。さらに、複数の周辺画像や電子ミラー用画像に表される被写体の明るさに基づいて、自車111の周囲の日射量や、自車111を基準とした現在の太陽の位置を推定しても良い。
【0044】
この後、電子制御ユニット115は、前方画像の画素値に各情報を反映させ、画素値と照度との相関関係のデータを用いて、晴天時の照度を推定する。なお、レイン画像、各周辺画像、電子ミラー用画像を用いて晴天時の照度を推定しても良い。
【0045】
さらに、電子制御ユニット115は、推定した照度を補正する。照度の補正は必須ではないが、照度を補正することにより、推定した照度の精度を向上させることができる。例えば、照度補正パラメータとして、前方画像に表される被写体の輝度値を用いることができる。
【0046】
具体的には、電子制御ユニット115は、前方画像に表される被写体の中から路面または空の領域を判定する。領域判定は、例えばセマンティックセグメンテーションを用いた手法によって行われる。セマンティックセグメンテーションは、前方画像内の全画素にラベルやカテゴリを関連付けるディープラーニングのアルゴリズムである。電子制御ユニット115は、路面、空の領域、歩行者、建物、トンネル、橋げた等の被写体について学習済みのDNN(Deep Neural Network)を有する。したがって、電子制御ユニット115は、学習済みのDNNを辞書として、電子制御ユニット115は、前方画像に表される被写体の中から、路面、空の領域、歩行者、建物、トンネル、及び橋げた等の領域判定を行う。
【0047】
電子制御ユニット115は、被写体の中に路面、空の領域、歩行者、建物、トンネル、橋げた等が含まれる場合、これらの輝度値の合計値を取得する。または、電子制御ユニット115は、これらの輝度値の平均値を取得する。輝度値は、被写体の明るさに対応する。例えば、電子制御ユニット115は、路面の輝度値の合計値または平均値を取得する。あるいは、電子制御ユニット115は、被写体の中の2つ以上の対象の輝度値の合計値または平均値を取得しても良い。電子制御ユニット115は、取得した輝度値の合計値または平均値に基づいて、推定した照度を補正する。
【0048】
なお、電子制御ユニット115は、輝度値の合計値または平均値と閾値との比較に基づいて、自車111のライトの点消灯の制御を決定しても良い。
【0049】
別の照度補正パラメータとして、現在の太陽の方向を用いることができる。現在の太陽の方向は、現在の太陽の位置とは異なり、自車111に対してどの方向から太陽の光が照らされるのか、という日差しの方向に対応する。
【0050】
例えば、図4に示されるように、太陽200の光が自車111の右斜め前から車室内に照らされる場合がある。この場合、太陽200の光がドライバ、その他の乗員、座席の被写体に照らされる部分は明るくなり、太陽200の光が照らされない部分は暗くなる。このような明るさの分布を判定することで、自車111を基準とした現在の太陽200の方向を推定することができる。
【0051】
電子制御ユニット115は現在の太陽200の方向を推定するために、まず、ドライバ検知カメラ101のドライバ画像及び乗員検知カメラ102の乗員画像を取得する。続いて、電子制御ユニット115は、ドライバ画像及び乗員画像の中からドライバや他の乗員の顔を検出する。
【0052】
この後、電子制御ユニット115は、顔の輝度分布を取得する。これにより、顔のどの部分が明るいのか、また、どの部分が暗いのかがわかる。そして、電子制御ユニット115は、取得した顔の輝度分布に基づいて、現在の太陽200の方向を推定する。すなわち、自車111に対する太陽200の日差しの方向を取得する。さらに、電子制御ユニット115は、取得した現在の太陽200の方向に基づいて、推定した照度を補正する。
【0053】
なお、電子制御ユニット115は、ドライバを含む乗員以外の場所の輝度分布を取得することで現在の太陽200の方向を推定しても良い。また、電子制御ユニット115は、ドライバ画像及び乗員画像の両方ではなく、いずれか一方を用いて現在の太陽200の方向を推定しても良い。
【0054】
別の照度補正パラメータとして、自車111のウィンドシールド116の温度の情報を用いることができる。電子制御ユニット115は、画像の中の被写体の明るさを取得することはできるが、熱量を取得することは難しい。そこで、電子制御ユニット115は、温度センサ114から温度の情報を取得する。これにより、太陽200からどれだけ照らされているのか、という熱の情報を得ることができる。よって、電子制御ユニット115は、ウィンドシールド116の温度の値に応じて、推定した照度を補正する。
【0055】
なお、熱量の情報として、先行車の色の情報を用いても良い。先行車の色と先行車の明るさとの関係から、太陽200からどれだけ照らされているのかという情報が得られる。電子制御ユニット115は、前方画像、レイン画像、自車111の前方が撮影された周辺画像のいずれかを取得し、画像に表される被写体の中から先行車を判定する。そして、電子制御ユニット115は、先行車の色に基づいて、推定した照度を補正する。あるいは、電子制御ユニット115は、ウィンドシールド116の温度の情報及び先行車の色の両方に基づいて、推定した照度を補正しても良い。先行車が画像に写っていない場合、電子制御ユニット115は、先行車の色に基づく照度の補正を行わない。
【0056】
さらに、別の照度補正パラメータとして、現在の天気や季節等の気象情報を用いることができる。電子制御ユニット115は、車両情報に雨や曇り等の現在の天気情報が含まれる場合、日時に対応した季節及び天気情報に基づいて、推定した照度を補正する。
【0057】
さらに、別の照度補正パラメータとして、自車111の傾きや路面の凹凸の情報を用いることができる。自車111の周囲に対する太陽200の光の照らされ方は、自車111の傾きや路面の凹凸によって変化するためである。自車111の傾きや路面の凹凸は、傾斜センサ、ハイトセンサ、加速度センサ等によって検出される。電子制御ユニット115は、自車111の傾きや路面の凹凸の情報を各センサから取得し、これらの情報に基づいて推定した照度を補正する。
【0058】
そして、電子制御ユニット115は、推定した照度あるいは補正した照度と閾値との比較に基づいて、自車111のライトの点消灯の制御を決定する。電子制御ユニット115は、ライトの制御内容を含んだライト信号をボデーECU117に出力する。これにより、ボデーECU117は、自車111のライトの点消灯を制御する。また、電子制御ユニット115は、吹き出し風量や室内温度等のエアコン制御を決定する。電子制御ユニット115は、エアコンの制御内容を含んだ日射信号をエアコンECU118に出力する。これにより、エアコンECU118は、自車111のエアコンを制御する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、複数の情報を含む車両情報と画像とを用いて自車111の周囲の照度が推定される。このため、照度を推定するための情報が自車111における一方向の状況に偏らないようにすることができる。このため、自車111の周囲の実際の照度と、推定される照度と、の差が小さくなるので、照度の推定の精度を向上させることができる。また、推定した照度を補正しているので、照度の推定の精度をさらに向上させることができる。
【0060】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、ナビゲーションシステム112及び通信モジュール113が特許請求の範囲の「通信部」に対応する。また、電子制御ユニット115が特許請求の範囲の「推定部」に対応する。
【0061】
(第2実施形態)
本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、電子制御ユニット115は、自車111の車体の色及び車体の明るさに基づいて、自車111の周囲の照度を推定する。あるいは、電子制御ユニット115は、自車111の車体の色及び車体の明るさに基づいて、推定した照度を補正する。電子制御ユニット115は、照度を補正する場合、車体の色及び車体の明るさ以外の情報に基づいて推定した照度を補正する。
【0062】
電子制御ユニット115は、車体の色及び車体の画素値と照度との相関関係のデータを有する。電子制御ユニット115は、少なくとも自車111の車体の一部が撮影された画像を用いる。例えば、前方画像、レイン画像、各周辺画像、電子ミラー用画像のいずれかを用いる。これにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0063】
(第3実施形態)
本実施形態では、主に第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、各カメラ101~110は、各画像として、露光時間を変更した複数の画像を撮影する。また、電子制御ユニット115は、各カメラ101~110から露光時間が変更された複数の画像を取得し、露光時間が変更された複数の画像及び車両情報に基づいて、照度を推定する。
【0064】
これにより、電子制御ユニット115が取得する画像のダイナミックレンジを確保することができる。このため、画像の白飛びや黒つぶれを抑制することができる。また、例えば、0[lx]~5万[lx]の範囲の照度を推定することができる。これにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
なお、各カメラ101~110の全てがダイナミックレンジに対応していなくても良い。照度推定のために用いる画像を撮影するカメラを、ダイナミックレンジに対応させれば良い。例えば、前方画像を照度推定のために用いる場合、前方カメラ104をダイナミックレンジに対応させる。
【0066】
(第4実施形態)
本実施形態では、主に第1~第3実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、電子制御ユニット115は、取得した画像に表される被写体の中から路面または空の領域を判定する。このため、電子制御ユニット115は、少なくとも路面または空の領域が撮影された画像を用いる。例えば、前方画像、レイン画像、自車111の前方が撮影された周辺画像のいずれかを用いる。
【0067】
電子制御ユニット115は、第1実施形態と同様に、セマンティックセグメンテーションを用いた手法によって、前方画像に含まれる路面、空の領域、歩行者、建物、トンネル、橋げた等を認識する。
【0068】
電子制御ユニット115は、路面または空の領域の画素値の合計値と照度との相関関係のデータ、あるいは、路面または空の領域の画素値の平均値と照度との相関関係のデータを有する。そして、電子制御ユニット115は、路面または空の領域の画素値の合計値に基づいて、照度を推定する。または、電子制御ユニット115は、路面または空の領域の画素値の平均値に基づいて、照度を推定する。これにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
(第5実施形態)
本実施形態では、主に第1~第4実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、電子制御ユニット115は、照度を推定するために用いる画像から一部を切り出し、切り出した画像に基づいて、照度を推定する。
【0070】
撮影画角が予め分かっているので、画像のどの領域に空が位置するのかを予め把握することができる。したがって、電子制御ユニット115は、前方画像やレイン画像の中から空の領域が含まれる部分を切り出す。言い換えると、電子制御ユニット115は画像の画角を絞る。切り取った画像は元の画像よりも範囲が狭いので、画像処理の演算量を低減させることができる。
【0071】
なお、照度推定のために用いる画像を撮影するカメラが、画像から一部を切り出し、切り出した画像を電子制御ユニット115に出力しても良い。これにより、画像処理の負荷だけでなく、通信量及び通信負荷を低減させることもできる。
【0072】
(第6実施形態)
本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。照度は短時間で変化しないので、毎フレーム毎の判定が不要である。そこで、本実施形態では、各カメラ101~110は、撮影した画像のデータを一定時間毎に電子制御ユニット115に出力する。例えば、各カメラ101~110は、0.1秒~2秒の間隔で画像のデータを出力する。
【0073】
なお、各カメラ101~110の全てが、画像のデータを一定時間毎に出力しなくても良い。例えば、前方画像を照度推定のために用いる場合、前方カメラ104の前方画像のデータを一定時間毎に出力すれば良い。
【0074】
そして、電子制御ユニット115は、一定時間毎に取得する画像に基づき、照度を推定する。これにより、各カメラ101~110の通信量を低減させることができる。また、電子制御ユニット115の通信量、通信負荷、及び画像処理の演算量を低減させることができる。
【0075】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された照度推定装置100の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、電子ミラー用カメラ109、110には、ルームミラー用のカメラが含まれていても良い。
【0076】
また、照度推定装置100は、先進運転支援システムの一部として説明したが、各カメラ101~110や電子制御ユニット115は照度推定装置100の専用品であっても構わない。また、各カメラ101~110の全てを備える必要はなく、照度推定のために必要なカメラを備えていれば良い。
【符号の説明】
【0077】
100 照度推定装置
101~110 カメラ
111 自車
112 ナビゲーションシステム(通信部)
113 通信モジュール(通信部)
114 温度センサ
115 電子制御ユニット(推定部)
116 ウィンドシールド
200 太陽
図1
図2
図3
図4