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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】繊維用無機粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/10 20060101AFI20240220BHJP
   C01B 25/37 20060101ALI20240220BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20240220BHJP
   C01F 7/785 20220101ALI20240220BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
D01F1/10
C01B25/37 H
C01G25/00
C01F7/785
A61L9/01 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021516081
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016918
(87)【国際公開番号】W WO2020218206
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2019083181
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】大野 康晴
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/132301(WO,A1)
【文献】特開2018-178313(JP,A)
【文献】国際公開第2006/118159(WO,A1)
【文献】特開2008-163491(JP,A)
【文献】特開2007-303025(JP,A)
【文献】特開2012-188699(JP,A)
【文献】登録実用新案第3018388(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0064567(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第102644162(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00 - 6/96
D01F 9/00 - 9/04
D06M 10/00 - 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 - 23/18
B07B 7/08 - 7/10
C01G 25/00 - 25/06
C01F 7/785
C01B 25/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー式粒子像分析法により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子の含有量が、300個数ppm未満であり、
リン酸ジルコニウム粒子、リン酸チタン粒子、ハイドロタルサイト粒子、又は、水酸化ジルコニウム粒子である
繊維練り込み用無機粒子。
【請求項2】
前記繊維練り込み用無機粒子が、リン酸ジルコニウム粒子である請求項1に記載の繊維練り込み用無機粒子。
【請求項3】
メジアン径が0.2μm~1.0μmである請求項1又は請求項2に記載の繊維練り込み用無機粒子。
【請求項4】
繊維練り込み用消臭剤である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の繊維練り込み用無機粒子。
【請求項5】
乾式分級により、無機粒子における粗大粒子を除去する工程を含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の繊維練り込み用無機粒子の製造方法。
【請求項6】
前記乾式分級が、旋回式気流分級機により行われる請求項に記載の繊維練り込み用無機粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用無機粒子及びその製造方法に関するものであり、繊維用消臭剤として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
リン酸ジルコニウム粒子等の無機粒子は、消臭剤として用いられ、例えば、より快適な住環境が求められる中で、消臭シート、消臭カーテン、消臭フィルター、また、汗臭、加齢臭などに対する消臭機能を具備する、衣料、寝具などの「消臭性製品」が流通するようになってきた。
【0003】
従来の繊維用消臭剤として、特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1は、粒子径として、メジアン径が0.2~0.7μm、且つ最大粒子径が5.0μm以下で、D10径が0.1μm以上である、αリン酸ジルコニウム及び/又はαリン酸チタンを含む繊維用消臭剤が記載されている。
【0004】
特許文献1:特開2018-178313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、紡織後に、後加工により、リン酸ジルコニウムを塗布する方法が知られているが、洗濯などにより除去されてしまい消臭機能の持続性が保持できない等の問題がある。また、前記後加工を行うことにより、生産性が悪化する等の不具合がある。
一方、リン酸ジルコニウム粒子等の無機粒子を繊維の紡糸時に練り込むことにより、例えば、前記無機粒子により消臭機能等の各種機能を有する糸を使用して、織物を製造すれば、消臭機能等を有する繊維製品の生産性を低下させることなく製造できる利点がある。
また、消臭機能等の持続性については、無機粒子が繊維の中に入り込んでいることから、後加工によるリン酸ジルコニウム等を塗布する方法より、紡糸時に無機粒子を練り込んだほうが、持続性が長期間、維持できると考える。
【0006】
更に、紡糸工程の生産性向上を目的とした紡糸速度の高速化に伴い、粗大粒子の排除の要求レベルが高まった。そのため、粒子製造工程で粗大粒子の生成が抑制できない従来の繊維用無機粒子の場合には、無機粒子を練り込む紡糸工程での糸切れ原因となる粗大粒子の排除に用いられるポリマーフィルタでは不十分であり、紡糸時の糸切れ頻度が高くなり、紡糸工程での生産性が低下するという問題を本発明者らは見出した。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、紡糸時の糸切れ率低い、すなわち単位時間当たりの糸切れ回数が少ない繊維用無機粒子、及び、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 電気的検知帯法により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子の含有量が、1,500個数ppm以下である繊維用無機粒子。
<2> フロー式粒子像分析法により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子の含有量が、300個数ppm未満である繊維用無機粒子。
<3> 前記繊維用無機粒子が、リン酸ジルコニウム粒子、リン酸チタン粒子、ハイドロタルサイト粒子、又は、水酸化ジルコニウム粒子である<1>又は<2>に記載の繊維用無機粒子。
<4> 前記繊維用無機粒子が、リン酸ジルコニウム粒子である<1>~<3>のいずれか1つに記載の繊維用無機粒子。
<5> フロー式粒子像分析法により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子の含有量が、300個数ppm未満である<1>に記載の繊維用無機粒子。
<6> メジアン径が0.2μm~1.0μmである<1>~<5>のいずれか1つに記載の繊維用無機粒子。
<7> 電気的検知帯法により測定される粒径2.148μmを超える粗大粒子の含有量が、5個数ppm以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の繊維用無機粒子。
<8> 電気的検知帯法により測定される粒径2.148μmを超える粗大粒子を含まない<1>~<7>のいずれか1つに記載の繊維用無機粒子。
<9> 繊維用消臭剤である<1>~<8>のいずれか1つに記載の繊維用無機粒子。
<10> 乾式分級により、無機粒子における粗大粒子を除去する工程を含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の繊維用無機粒子の製造方法。
<11> 前記乾式分級が、旋回式気流分級機により行われる<10>に記載の繊維用無機粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紡糸時の糸切れ率が低い繊維用無機粒子、及び、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における画像解析により検出された大きいほうから順に粗大粒子を9個示した図である。
図2】比較例1における画像解析により検出された大きいほうから順に粗大粒子を9個示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0012】
(繊維用無機粒子)
本発明の繊維用無機粒子の第1の実施態様は、電気的検知帯法により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子の含有量が、1,500個数ppm以下であり、好ましくは300個数ppm以下である。
また、本発明の繊維用無機粒子の第2の実施態様は、フロー式粒子像分析法(「粒子の動的画像解析法」ともいう。)により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子の含有量が、300個数ppm未満である。
本明細書において、単に「本発明の繊維用無機粒子」と記載する場合、特に断りのない限り、前記第1の実施態様、及び、前記第2の実施態様の両方を指すものとする。
また、本発明の繊維用無機粒子は、繊維用消臭剤として好適に用いることができる。
【0013】
従来の無機粒子の製造方法において、例えば、反応工程の条件の最適化で、理想的に粗大粒子のない、無機粒子が製造できたとしても、反応工程より川下工程の乾燥工程、及び、粉砕工程で、新規に粗大粒子が発生する可能性があり、最終製品として、粗大粒子が除去された無機粒子が生産できない場合があった。
【0014】
最終的に粗大粒子を篩分により除去する方法も挙げられるが、篩の目による粗大粒子の除去に限界があった。
【0015】
粒度分布をシャープにすることで、間接的に粗大粒子は少なくなるが、例えば、ポリエステル繊維の紡糸時の糸切れの原因となる粗大粒子は、ppmオーダーで含まれる粗大粒子であることがわかった。
また、粗大粒子を少なくする目的で、メジアン径D50を小さくしても、例えば、ポリエステル樹脂への添加、又は、練り込みの段階で、小さい粒径の粒子が再凝集し易く粗大粒子となり、糸切れの原因となることや粗大粒子を除去するためのポリマーフィルタで差圧が上昇して生産性が悪くなることがわかってきた。
【0016】
一般に、レーザー回折式粒度分布計は、粒度分布が測定可能な測定レンジが広いものの、1.5μm~5μmの範囲の粒子径で、ppmオーダーの粗大粒子を個数単位で検知することができない測定器である。また、レーザー回折式粒度分布計は、同じサンプルであっても測定器メーカー毎に、測定結果が異なり、また、屈折率等の測定条件の設定により、測定結果が著しく変動する等の精緻な技術開発を行う上での不具合を抱えていた。
【0017】
従来、分級による粗大粒子の除去は、一般論として開示されているが、分級によって、どのように粗大粒子をどのレベルまで除去するのか、実際に粗大粒子が除去できているのかの正確な確認については、具体的には、全く開示されていない。
そのため、例えば、繊維の紡糸時の糸切れの不具合を解消する技術がないのが現状である。
【0018】
本発明者らが鋭意検討した結果、前記構成をとることにより、紡糸時の糸切れ率が低い繊維用無機粒子を提供できることを見出した。
これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
電気的検知帯法、又は、フロー式粒子像分析法により、粒径1.562μmを超える粗大粒子の確認方法として検出性に優れるため、これらの方法により測定された前記粗大粒子の含有量を、前者では1,500個数ppm以下、また、後者では300個数ppm未満とすることにより、紡糸時の糸切れ率が低い繊維用無機粒子が得られると推定される。
【0019】
以下、本発明の繊維用無機粒子について、詳細に説明する。
【0020】
本発明の繊維用無機粒子は、繊維に用いられる無機粒子であれば、特に制限はないが、リン酸ジルコニウム粒子、リン酸チタン粒子、ハイドロタルサイト粒子、水酸化ジルコニウム粒子、アルミナ粒子、ケイ酸アルミニウム粒子、ケイ酸銅粒子、ケイ酸亜鉛粒子、ケイ酸マンガン粒子、ケイ酸コバルト粒子、又は、ケイ酸ニッケル粒子であることが好ましく、リン酸ジルコニウム粒子、リン酸チタン粒子、ハイドロタルサイト粒子、又は、水酸化ジルコニウム粒子であることがより好ましく、消臭性の観点から、リン酸ジルコニウム粒子であることが特に好ましい。
また、本発明の繊維用無機粒子は、前述した以外の不純物を含んでいてもよく、繊維に使用する用途に用いる公知の添加剤を含んでいてもよい。
中でも、本発明の繊維用無機粒子は、前記無機成分を90質量%以上含む粒子であることが好ましく、95質量%以上含む粒子であることがより好ましく、99質量%以上含む粒子であることが特に好ましい。
【0021】
本発明における電気的検知帯法による無機粒子の粒径の測定方法は、以下の方法により行うものとする。
電気的検知帯法による測定装置(コールターカウンター)であるベックマン・コールター株式会社製マルチサイザー3で測定する。
アパチャーサイズは、30μmの設定で、およそ50,000個測定し、その中の分布を個数基準で測定し、粒径1.562μmを超える粗大粒子等の含有量を測定するものとする。
【0022】
また、本発明におけるフロー式粒子像分析法による無機粒子の粒径の測定方法は、以下の方法により行うものとする。
シメックス株式会社(現スペクトリス株式会社マルバーン・パナリティカル事業部)製フロー式粒子像分析装置FPIA-3000Sを使用する。
フィルターを通して異物を除去した純水に、分散濃度が0.05質量%になるように無機粒子を添加し、超音波分散装置で3分間分散させる。得られた分散液を前記フロー式粒子像分析装置に滴下し、およそ30,000個の無機粒子を測定及び解析し、粒径1.562μmを超える粗大粒子等の含有量を測定するものとする。
また、粒子径の測定上限は、100μmであることが好ましい。
【0023】
本発明の繊維用無機粒子の第1の実施態様は、電気的検知帯法により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子の含有量が、糸切れ抑制性の観点から、1,500個数ppm以下であり、300個数ppm以下であることが好ましく、200個数ppm以下であることがより好ましく、100個数ppm以下であることが更に好ましく、50個数ppm以下であることが特に好ましく、25個数ppm以下であることが最も好ましい。
【0024】
本発明の繊維用無機粒子の第2の実施態様は、フロー式粒子像分析法により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子の含有量が、糸切れ抑制性の観点から、300個数ppm未満であり、100個数ppm以下であることが好ましく、10個数ppm以下であることがより好ましく、1個数ppm以下であることが更に好ましく、フロー式粒子像分析法により測定される粒径1.562μmを超える粗大粒子を含まないことが特に好ましい。
【0025】
本発明の繊維用無機粒子は、電気的検知帯法により測定される粒径2.148μmを超える粗大粒子の含有量が、糸切れ抑制性の観点から、5個数ppm以下であることが好ましく、1個数ppm以下であることがより好ましく、電気的検知帯法により測定される粒径2.148μmを超える粗大粒子を含まないことが特に好ましい。
また、本発明の繊維用無機粒子は、フロー式粒子像分析法により測定される粒径2.148μmを超える粗大粒子の含有量が、糸切れ抑制性の観点から、5個数ppm以下であることが好ましく、1個数ppm以下であることがより好ましく、フロー式粒子像分析法により測定される粒径2.148μmを超える粗大粒子を含まないことが特に好ましい。
【0026】
更に、本発明の繊維用無機粒子は、糸切れ抑制性の観点から、電気的検知帯法により測定される粒径3μmを超える粗大粒子を含まないことが好ましい。
また、本発明の繊維用無機粒子は、糸切れ抑制性の観点から、フロー式粒子像分析法により測定される粒径3μmを超える粗大粒子を含まないことが好ましい。
【0027】
本発明の繊維用無機粒子は、レーザー回折法により測定されるメジアン径D50が、糸切れ抑制性、及び、消臭効果等の機能効果をより発揮する観点から、0.1μm~1.2μmであることが好ましく、0.2μm~1.0μmであることがより好ましく、0.5μm~0.9μmであることが特に好ましい。
【0028】
また、本発明の繊維用無機粒子は、電気的検知帯法により測定される累積99.9個数%粒径D99.9が、糸切れ抑制性、及び、消臭効果等の機能効果をより発揮する観点から、1.562μm以下であることが好ましく、0.5μm~1.55μmであることがより好ましく、1.0μm~1.50μmであることが特に好ましい。
【0029】
(繊維用無機粒子の製造方法)
本発明の繊維用無機粒子の製造方法としては、本発明の繊維用無機粒子を製造可能であれは、特に制限はないが、前記粗大粒子の除去性の観点から、乾式分級により、無機粒子における粗大粒子を除去する工程(「乾式分級工程」ともいう。)を含む方法であることが好ましい。
【0030】
無機粒子の粗大粒子を除去するための分級方法は、乾式分級、あるいは湿式分級のどちらでもよい。湿式分級では、最終製品の販売形態が粉体である場合、分級後に乾燥工程が必要となり、乾燥前に粗大粒子を排除しても、乾燥工程で再度、固結、及び、凝集により粗大粒子が発生する場合もある。そのため、分級後に乾燥工程が不要で、固結、及び、凝集の可能性が低く、製造工程が簡略化できる乾式分級が好ましい。
【0031】
乾式分級機は、機械式、旋回気流式等が挙げられるが、粗大粒子を分級できればよく、分級機は限定されるものではない。機械式分級機では、機械的に分級ローターが高速回転するため、振動防止のため、機械的精度が必要なことから、分級点に限界がある。具体的には、粗大粒子として排除したい粒径が1.5μm~5μmの粒子の領域である場合は、機械的分級機では限界があり、高い精度で粗大粒子を排除できない可能性がある。
また、分級ローターの機械的回転による分級では、金属部分の摺動による摩耗に起因する金属のコンタミネーション(混入)が生じる場合がある。上記の観点より、構造的に機械的回転部分のない旋回流を用いた気流分級機(旋回気流式分級機)により乾式分級を行うことが好ましい。例えば、国際公開第2011/132301号に記載の旋回気流式分級機が好ましく挙げられる。
【0032】
乾式分級時に無機粒子に吹き付ける高圧気体としては、その圧力及び量に特に制限はないが、圧力0.1MPa~1.0MPaが好ましい。
また、乾式分級時の風量は、特に制限はないが、1m/分~10m/分であることが好ましい。
【0033】
本発明の繊維用無機粒子の製造方法は、例えば、無機粒子又は無機粒子の凝集粒子を粉砕する粉砕工程、及び、無機粒子を篩分けする篩分工程等の工程を含んでいてもよい。
前記乾式分級工程を行うタイミングは、特に制限はなく、例えば、粉砕工程、及び、篩分工程の前後のいずれであってもよいし、前後の両方で行ってもよい。粉砕工程、及び、篩分工程にて、一旦、粒度調整をした後、更に、粗大粒子を排除するため、乾式分級を実施することができる。
また、乾式分級を実施した後に、粉砕工程、及び、篩分工程を実施することができる。
粉砕工程、及び、篩分工程で新規に粗大粒子が発生する可能性があることを考えると、乾式分級工程は、粉砕工程、及び、篩分工程の後に行うことが好ましい。
【0034】
前記乾式分級工程における分級点は、所望に応じて適宜設定すればよいが、例えば、繊維の単糸が10μm程度であることから、無機粒子を繊維を形成する樹脂に添加又は練り込む場合、紡糸時の糸切れ抑制性の観点から、粒径3μmを超える粗大粒子を排除することが好ましく、粒径2.148μmを超える粗大粒子を排除することがより好ましく、粒径1.562μmを超える粗大粒子を排除することが特に好ましい。
【0035】
本発明の繊維用無機粒子の製造方法は、無機粒子を作製する工程を含んでいてもよい。
本発明の繊維用無機粒子の製造方法に用いられる無機粒子は、市販品等の準備した無機粒子であっても、作製した無機粒子であってもよい。
無機粒子の作製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
以下に一例として、リン酸ジルコニウム粒子の作製方法を説明する。
【0036】
本発明における、リン酸ジルコニウムは、オキシ塩化ジルコニウム、シュウ酸、リン酸を出発物質として公知の方法で製造される。例えば、特開昭60-103008号公報、又は、特開2018-178313号公報に記載の方法により製造することができる。ただし、リン酸ジルコニウムの製造方法は、これに限定されるものではない。
【0037】
得られたリン酸ジルコニウムは、固液分離後に乾燥させても、固液分離なしで乾燥させても、どちらでもよい。固液分離の具体的方法としては、フィルタープレス、又は、加圧ろ過機等があり、固液分離後の含水ケーキ(泥状物)を乾燥させる。含水ケーキを乾燥させる方法としては、パドルドライヤー、コニカル乾燥機、振動乾燥機、又は、逆円錐型撹拌乾燥機等が好適に挙げられる。固液分離しないで乾燥する方法としては、スプレードライヤー、ボール入り流動層乾燥機、ジェットターボドライヤー等が挙げられる。
リン酸ジルコニウムは、固液分離すると、粘土状となり、付着性が強く、取り扱いが困難であるので、固液分離なしで乾燥し、リン酸ジルコニウム粒子を得ることが好ましい。
【0038】
リン酸ジルコニウム粒子の乾燥物は、解砕、粉砕、又は、篩分処理をしてもよいし、しなくともよい。均一な粒子径として調整するため、解砕、又は、粉砕し、更に、篩を通すことが好ましい。
【0039】
本発明の繊維用無機粒子における水分は、無機粒子を紡糸前に、ポリエステル樹脂等の合成繊維用の原料用樹脂と押出機等で練り込む場合、繊維用無機粒子に水分が残留していると押出機で加熱混練中に水分が蒸発し、当該原料用樹脂が発泡することがある。発泡を防止するため、本発明の繊維用無機粒子の水分量は、1質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
(繊維)
本発明の繊維は、本発明の繊維用無機粒子を含む繊維であり、本発明の繊維用無機粒子を含む消臭性繊維であることが好ましい。
本発明の繊維用無機粒子を含む繊維を製造する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
例えば、本発明の繊維用無機粒子を繊維に練り込み紡糸する方法等が挙げられる。
【0041】
本発明の繊維は、樹脂繊維であることが好ましく、化学繊維であることがより好ましい。
使用できる繊維用樹脂としては、公知の化学繊維はいずれも使用することができる。
化学繊維の材質の好ましい具体例としては、例えばポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、レーヨン、アクリル樹脂、ビニロン及びポリプロピレン等が挙げられる。中でも、ポリエステル、ナイロン、又は、アクリル樹脂であることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。
また、ポリエステルの好ましい具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
これらの樹脂は、単独重合体であっても共重合体であってもよい。共重合体の場合、各共重合成分の重合割合に特に制限はない。
また、樹脂への本発明の繊維用無機粒子の添加方法は、特に制限はなく、例えば、樹脂の重合工程での添加であっても、重合後の樹脂を用い、押出機で練り込んでもよい。
【0042】
本発明の本発明の繊維用無機粒子は、繊維練り込み用消臭剤として好ましく使用することができる。
この場合における消臭性繊維の具体的な製造方法としては、溶融した液状繊維用樹脂又は溶解した繊維用樹脂溶液に本発明の繊維用無機粒子を練り込み、これを紡糸する方法等が挙げられる。
【0043】
本発明の繊維における本発明の繊維用無機粒子の含有量は、特に限定はされない。
一般に含有量を増やせば消臭性を強力に発揮させ、長期間持続させることができるが、ある程度以上に含有させても消臭効果に大きな差が生じないこと、及び、樹脂の強度の観点から、本発明の繊維における本発明の繊維用無機粒子の含有量は、樹脂100重量部に対し、0.1重量部~3.0重量部であることが好ましく、0.5重量部~2.0重量部であることがより好ましい。
【0044】
本発明の繊維用無機粒子を使用した消臭性繊維は、消臭性を必要とする各種の分野で利用可能であり、例えば肌着、ストッキング、靴下、布団、布団カバー、座布団、毛布、じゅうたん、カーテン、ソファー、カーシート、エアーフィルター及び介護用衣類等、多くの繊維製品に使用できる。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「重量%」、「重量部」を意味する。
【0046】
粗大粒子の大きさ、粗大粒子の個数、有効N数に対する粗大粒子の含有量、画像解析による粗大粒子の測定、及び、リン酸ジルコニウム粒子をポリエステル樹脂に添加、又は、練り込んだ後に、紡糸した場合の糸切れの頻度を示す糸切れ率は、次の方法により測定した。
【0047】
(1)粗大粒子の大きさ、粗大粒子の個数
リン酸ジルコニウムの粒子径の測定は、電気的検知帯法、いわゆるコールターカウンターであるベックマン・コールター株式会社製マルチサイザー3で測定した。
アパチャーサイズは、30μmの設定で、50,000個測定し、その中の分布を個数基準で測定した。
【0048】
(2)有効N数に対する粗大粒子の濃度
ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザー3での個数基準で測定した結果、1.562μm以上2.148μm未満の積算の粒子数を粗大粒子と定義した。
実際に測定した有効N数に対する粗大粒子の濃度は、次式で算出した。
1.562μm以上2.148μm未満の積算の粒子数÷実際に測定した有効N数×100,0000=有効N数に対する1.562μm以上2.148μm未満の積算の粗大粒子の濃度ppm
【0049】
(3)フロー式粒子像分析(粒子の動的画像解析)による粗大粒子の測定
フロー式粒子像分析装置であるシメックス株式会社(現スペクトリス株式会社マルバーン・パナリティカル事業部)製FPIA-3000Sで測定した。
フィルターを通して異物を除去した純水に、分散濃度が0.05%になるように粉体を添加し、超音波分散装置で3分間、分散させた。分散液をフロー式粒子像分析装置に滴下し、およそ30,000パーティクルを測定し、解析した。
フロー式粒子像分析装置が、検知したパーティクルを大きい順に並べ替え、大きい粒子の粒子径と粒子の写真を測定した。
【0050】
(4)糸切れ回数
製造したリン酸ジルコニウム粒子をポリエステル樹脂(ユニチカ(株)製MA2101M、ポリエチレンテレフタレート樹脂)100%に対して20%配合したマスターバッチを作製した。そして、このマスターバッチを、リン酸ジルコニウムを含まないレギュラーポリエステル樹脂ペレットと混合し、2重量%となるように調整した。これをマルチフィラメント紡糸機を用いて、紡糸温度275℃、紡糸速度500m/分で2時間紡糸し、伸度が280%~320%になるように120℃で延伸して、リン酸ジルコニウム粒子含有ポリエステル繊維を得た。
この際、油剤には通常のポリエステル繊維紡糸用の水溶性油剤(竹本油脂(株)製デリオン6033を水で10倍希釈したもの)を使用した。
2時間連続紡糸を行い、紡糸性を次の判定方法に従い、評価した。
A:糸切れ回数が0回/2時間
B:糸切れ回数が1回/2時間以上3回/2時間未満
C:糸切れ回数が3回/2時間以上6回/2時間未満
D:糸切れ回数が6回/2時間以上10回/2時間未満
E:糸切れ回数が10回/2時間以上
F:評価不可
【0051】
参考例として、リン酸ジルコニウム粒子の製造方法を示す。
【0052】
(参考例:リン酸ジルコニウム粒子の製造)
6m反応器に脱イオン水3,611kg及び35%塩酸363kgを入れ、ハフニウム0.18%含有オキシ塩化ジルコニウム8水和物20%水溶液603kgを追加後、シュウ酸2水和物250kgを溶解させた。この溶液をよく攪拌しながら、75%リン酸275kgを加えた。これを2時間で98℃に昇温し、12時間撹拌還流した。冷却後、得られた沈殿物をよく水洗浄した後、105℃で乾燥することにより、リン酸ジルコニウム粒子を得た。これを粉砕機で解砕した。その後、篩分処理をした。この得られたリン酸ジルコニウム粒子についてX線回折装置で測定した結果、αリン酸ジルコニウム粒子であることを確認した。
このαリン酸ジルコニウム粒子をフッ酸及び硝酸で加熱して溶解し、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析装置で元素分析を実施し、更に熱重量示差熱分析を行った結果、組成式は、
Zr0.99Hf0.012.03(PO2.01・0.05H
であった。
【0053】
(実施例1)
参考例に従って製造した、リン酸ジルコニウム粒子を分級機(エアロファインクラシファイアAC-20型:日清エンジニアリング株式会社製)を用い分級した。吸引ブロアで吸引する風量を2.5m/分とした。ここで、吸引ブロアにより吸入する風量はガイドベーン間から吸入される常圧気体の風量に該当する。また、ガイドベーンの角度を80°(接線方向)とした。
上部エアノズルから噴出する高圧気体の条件を、圧力0.7MPa、下部エアノズルから噴出する高圧気体の条件を、圧力0.6MPaとした。
分級前の粉体は定量フィーダーで2kg/hで13分間で478gを連続的に供給した。
分級後の細かい側の粉体が415g回収できた。分級機へ投入量に対する収率は86.8%であった。なお、得られた分級後の細かい側の粉体をコールターカウンターで測定した。
アパチャーサイズは、30μmの設定で、50,000個測定し、その中の分布を個数基準で測定した。
メジアン径D50は0.731μm、D99.9は、1.442μmであった。
粒径1.562μmを超え2.148μm以下の粗大粒子数は、15個であった。
また、粒径2.148μmを超える粗大粒子は、検出されなかった。
実際に測定した有効N数である51,008個に対する濃度(含有量)は、
15÷51,008×1,000,000=294個数ppm
であった。粗大粒子の部分の詳しい結果は表1に示した。
【0054】
また、フロー式粒子像分析法により粒径を測定した。具体的には、シメックス株式会社(現スペクトリス株式会社マルバーン・パナリティカル事業部)製フロー式粒子像分析装置FPIA-3000Sを使用して粒径測定をした。測定パーティクル数は30,000個とした。その結果、粒径1.562μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
測定パーティクル数に対する濃度は0個数ppmであった。
結果は表1及び表2に示し、表2には観察された粒子の大きい方から9つの粒径をまとめ、図1には画像解析により検出された大きいほうから順に粗大粒子を示した。また、図1に記載の各数値はそれぞれ、各粗大粒子の大きさ(単位:μm)を表す。
なお、糸切れ回数の評価をしたところ、糸切れ回数が0回/2時間で、極めて安定して紡糸できた。
糸切れ回数の評価結果は、Aだった。
【0055】
(実施例2)
参考例に従って製造した、リン酸ジルコニウムを分級機(エアロファインクラシファイアAC-20型、日清エンジニアリング株式会社製)を用い分級した。吸引ブロアで吸引する風量を2.3m/分とした。ここで、吸引ブロアにより吸入する風量はガイドベーン間から吸入される常圧気体の風量に該当する。また、ガイドベーンの角度を90°(接線方向)とした。
上部エアノズルから噴出する高圧気体の条件を、圧力0.6MPa、下部エアノズルから噴出する高圧気体の条件を、圧力0.6MPaとした。
分級前の粉体は定量フィーダーで2kg/hで15分間で505gを連続的に供給した。
分級後の細かい側の粉体が387g回収できた。分級機へ投入量に対する収率は76.6%であった。
なお、得られた分級後の細かい側の粉体をコールターカウンターで測定した。
アパチャーサイズは、30μmの設定で、50,000個測定し、その中の分布を個数基準で測定した。
メジアン径D50は0.719μm、D99.9は、1.366μmであった。
粒径1.562μmを超え2.148μm以下の粗大粒子数は、1個であった。
また、粒径2.148μmを超える粗大粒子は、検出されなかった。
実際に測定した有効N数である50,969個に対する濃度(含有量)は、
1÷50,969×1,000,000=20個数ppm
であった。粗大粒子の部分の詳しい結果は表1に示した。
なお、糸切れ回数の評価をしたところ、糸切れ回数が0回/2時間で、極めて安定して紡糸できた。
糸切れ回数の評価結果は、Aだった。
【0056】
(実施例3)
実施例2において、分級前の粉体は定量フィーダーで2kg/hで120分間、連続的に3,924gを供給した以外は、同じ条件で分級を行った。分級後の細かい側の粉体が2911g回収できた。分級機へ投入量に対する収率は74.2%であった。
なお、得られた分級後の細かい側の粉体をコールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザー3)で粗大粒子を測定した。
アパチャーサイズは、30μmの設定で、50,000個測定し、その中の分布を個数基準で測定した。
メジアン径D50は0.722μm、D99.9は、1.406μmであった。
粒径1.562μmを超え2.148μm以下の粗大粒子数は、9個であった。
また、粒径2.148μmを超える粗大粒子は、検出されなかった。
実際に測定した有効N数である51,121個に対する濃度(含有量)は、
9÷51,121×1,000,000=176個数ppm
であった。粗大粒子の部分の詳しい結果は表1に示した。
なお、糸切れ回数の評価をしたところ、糸切れ回数が0回/2時間で、極めて安定して紡糸できた。
糸切れ回数の評価結果は、Aだった。
【0057】
(比較例1)
参考例に従って製造した、リン酸ジルコニウムを乾式分級することなく、そのまま、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザー3)で粗大粒子を測定した。
アパチャーサイズは、30μmの設定で、50,000個測定し、その中の分布を個数基準で測定した。
メジアン径D50は0.760μm、D99.9は、1.606μmであった。
粒径1.562μmを超え2.148μm以下の粗大粒子数は、77個であった。
また、粒径2.148μmを超える粗大粒子は、検出されなかった。
実際に測定した有効N数である51,097個に対する濃度(含有量)は、
77÷51,097×1,000,000=1,507個数ppm
であった。
【0058】
また、シメックス株式会社(現スペクトリス株式会社マルバーン・パナリティカル事業部)製フロー式粒子像分析装置FPIA-3000Sを使用して画像の解析により、粒径測定をした。測定パーティクル数は30,000個とした。その結果、粒径1.562μmを超える粗大粒子が9個観察された。
測定パーティクル数に対する濃度は9÷30,000×1,000,000=300個数ppmであった。
結果は表1及び表2に示し、図2には画像解析により検出された9つの粗大粒子を大きいほうから順に示した。また、図2に記載の各数値はそれぞれ、各粗大粒子の大きさ(単位:μm)を表す。
なお、糸切れ回数の評価をしたところ、糸切れ回数が1回/2時間以上3回/2時間未満で、数回の糸切れが発生した。糸切れ回数の評価結果は、Bであった。
【0059】
(比較例2)
実施例1で実施した乾式分級後の粗大側の粉体を回収し、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製マルチサイザー3)で粗大粒子を測定した。
アパチャーサイズは、30μmの設定で、50,000個測定し、その中の分布を個数基準で測定した。
メジアン径D50は0.770μm、D99.9は、1.661μmであった。
粒径1.562μmを超え2.148μm以下の粗大粒子数は、127個であった。
また、粒径2.148μmを超える粗大粒子は、検出されなかった。
実際に測定した有効N数である50,953個に対する濃度(含有量)は、
127÷50,953×1,000,000=2,492個数ppm
であった。
なお、糸切れ回数の評価をしたところ、糸切れが、頻発した。糸切れ回数の評価結果は、Fであった。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1及び2は、分級後の細かい側の粉体の測定結果から、粒径1.562μm以上2.148μm未満の積算の粗大粒子の数がそれぞれ、15個、及び、1個であり、分級前の77個と比較して粗大粒子が少なく、粗大粒子が除去できている。
実施例3は、実施例2の分級処理量を多くした場合においても、粒径1.562μm以上2.148μm未満の積算の粗大粒子の数が9個と少なく、粗大粒子が排除できていることを示している。
【0063】
比較例1は、分級処理をしていない、リン酸ジルコニウム粒子をコールターカウンターで測定した場合であり、粒径1.562μm以上2.148μm未満の積算の粗大粒子の数が、77個と多いことを示している。分級処理なしでは、粗大粒子が多く含まれていることがわかる。
比較例2は、実施例1の分級処理後の粗大粒子側を回収したものである。
粗大粒子側であることから、分級処理後の細かい側と比較して、粒径1.562μm以上2.148μm未満の積算の粗大粒子の数が、127個であり、実施例1の場合である分級後の細かい側の15個と比較して多い。さらに、比較例1の分級処理をしていない場合の粗大粒子の数である77個よりも多い。これは、実施例1では、分級により、粗大粒子を除去した結果であり、分級で除去できた粗大粒子は、比較例2の分級後の粗大粒子として分離回収できたことを示している。
【0064】
なお、いずれの測定においても、粗大粒子の有効カウント数を50,000個程度にそろえているため、定量的に粗大粒子の数の比較が可能である。
粗大粒子の定量的な比較は、有効N数に対する粒径1.562μm以上2.148μm未満の積算の粗大粒子の濃度としてppmの単位で可能である。
【0065】
また、表2によれば、実施例1では、フロー式粒子像分析装置による粗大粒子の測定において、検知した最大の粗大粒子の粒径は、1.494μmであり、粒径1.562μm以下であることを示しており、乾式分級により、粒径1.562μmを超える粗大粒子が除去できていることが分かる。
それに対し、比較例1では、フロー式粒子像分析装置による粗大粒子の測定において、検知した最大の粗大粒子の粒径は、9.443μmであり、粒径が1.562μmを超える粗大粒子であることを示しており、乾式分級を実施していないため、粒径1.562μmを超える粗大粒子が除去できずに、含有していることが分かる。
【0066】
前記で示したように、本発明の繊維用無機粒子である実施例1~3の繊維用無機粒子は、比較例1及び2の無機粒子と比べ、紡糸時の糸切れ回数が低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の繊維用無機粒子の製造方法によれば、レーザー回折式粒度分布計で感知できないppmオーダーで含有された微量の粗大粒子を容易に除去できる。
また、本発明の繊維用無機粒子は、ポリエステル繊維等の繊維に練り込む用途において、紡糸時の糸切れの頻度を低減することができ、紡糸工程での生産性を向上することができ、産業上有益である。
【0068】
2019年4月24日に出願された日本国特許出願第2019-083181号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2