(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電子部品内蔵基板及びこれを用いた回路モジュール
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240220BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240220BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240220BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H05K3/46 U
H05K3/46 Q
H05K1/02 F
H01L23/12 N
H01L23/12 J
H01L23/36 C
(21)【出願番号】P 2021526060
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022236
(87)【国際公開番号】W WO2020250815
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2019110898
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敏之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義弘
(72)【発明者】
【氏名】千葉 博典
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大川 博茂
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-201532(JP,A)
【文献】特開平11-054939(JP,A)
【文献】国際公開第2012/050122(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/063694(WO,A1)
【文献】特開平10-316469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
H01L 23/12
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1及び第2の配線層を含む複数の配線層と、前記第1及び第2の配線層間に位置する第1の絶縁層を少なくとも含む複数の絶縁層が交互に積層されてなる基板と、
前記第1の絶縁層に埋め込まれた第1の電子部品及び伝熱ブロックと、
前記第1の配線層に位置し、前記伝熱ブロックの一方の表面と向かい合う第1の配線パターンと、
前記第2の配線層に位置し、前記伝熱ブロックの他方の表面と向かい合う第2の配線パターンと、
前記第1の配線パターンと前記伝熱ブロックの前記一方の表面を接続する第1のビア導体と、
前記第2の配線パターンと前記伝熱ブロックの前記他方の表面を接続する第2のビア導体と、を備え、
前記第1の配線パターンは、前記第1の電子部品に接続され、且つ、第2の電子部品を搭載するための電子部品搭載領域に位置し、
前記伝熱ブロックは、前記一方の表面を構成する第1の面が平坦であり、前記第1の面の反対側に位置する第2の面が凹凸を有する第1の本体部と、前記他方の表面を構成する第3の面が平坦であり、前記第3の面の反対側に位置する第4の面が凹凸を有する第2の本体部とを含み、
前記伝熱ブロックは、前記第1の本体部の前記第2の面と前記第2の本体部の前記第4の面が絶縁膜を介して嵌合することにより、前記伝熱ブロックの前記一方の表面と前記他方の表面は互いに絶縁されており、これにより、前記第1の配線パターンと前記第2の配線パターンが互いに絶縁されていることを特徴とする電子部品内蔵基板。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子部品内蔵基板と、
前記電子部品搭載領域に搭載された前記第2の電子部品と、を備え、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品は、前記第1の配線パターンを介して互いに接続されていることを特徴とする回路モジュール。
【請求項3】
前記第2の電子部品がレーザーダイオード又は電源用インダクタであることを特徴とする請求項
2に記載の回路モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品内蔵基板及びこれを用いた回路モジュールに関し、特に、レーザーダイオードや電源用インダクタなど、発熱量の大きい電子部品を搭載するための電子部品内蔵基板及びこれを用いた回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
多層基板の表面に発熱量の大きい電子部品を搭載する場合、熱を多層基板の裏面側に逃がすための放熱経路が設けられることがある。例えば、特許文献1には、発熱量の大きい電子部品と平面視で重なる位置に金属ブロックを埋め込み、金属ブロックの表面と電子部品を複数のビア導体で接続するとともに、金属ブロックの裏面と多層基板の裏面に設けられた放熱パターンを別の複数のビア導体で接続する構造が提案されている。多層基板の裏面に設けられた放熱パターンは、ハンダなどを介してマザーボード上の放熱経路に接続される。通常、マザーボード上の放熱経路はグランドパターンである。これにより、電子部品から生じる熱が金属ブロックを介してマザーボード側に放熱されるため、電子部品の発熱量が大きい場合であっても、高い放熱効率を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レーザーダイオードや電源用インダクタなど、発熱量が大きいだけでなく、グランドパターンへの接続が禁止されるタイプの電子部品を搭載する場合、特許文献1に記載された構造を採ることはできない。
【0005】
したがって、本発明は、発熱量が大きく、且つ、グランドパターンへの接続が禁止されるタイプの電子部品を搭載するための電子部品内蔵基板及びこれを用いた回路モジュールにおいて、放熱効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電子部品内蔵基板は、少なくとも第1及び第2の配線層を含む複数の配線層と、第1及び第2の配線層間に位置する第1の絶縁層を少なくとも含む複数の絶縁層が交互に積層されてなる基板と、第1の絶縁層に埋め込まれた第1の電子部品及び伝熱ブロックと、第1の配線層に位置し、伝熱ブロックの一方の表面と向かい合う第1の配線パターンと、第2の配線層に位置し、伝熱ブロックの他方の表面と向かい合う第2の配線パターンと、第1の配線パターンと伝熱ブロックの一方の表面を接続する第1のビア導体と、第2の配線パターンと伝熱ブロックの他方の表面を接続する第2のビア導体とを備え、第1の配線パターンは、第1の電子部品に接続され、且つ、第2の電子部品を搭載するための電子部品搭載領域に位置し、伝熱ブロックの一方の表面と他方の表面は互いに絶縁されており、これにより、第1の配線パターンと第2の配線パターンが互いに絶縁されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、伝熱ブロックの一方の表面と他方の表面が互いに絶縁されていることから、第2の電子部品として発熱量が大きく、且つ、グランドパターンへの接続が禁止されるタイプの電子部品を搭載する場合であっても、放熱パターンとして機能する第2の配線パターンをマザーボード上のグランドパターンに接続することが可能となる。これにより、高い放熱性を確保することが可能となる。
【0008】
本発明において、伝熱ブロックは、SOI(Silicon On Insulator)チップであっても構わないし、金属からなる本体部とその一方又は両方の表面に設けられた絶縁膜を含むものであっても構わないし、セラミック材料からなるものであっても構わない。つまり、一方の表面と他方の表面が互いに絶縁されており、且つ、高い熱伝導性を有している限り、伝熱ブロックの材料及び構造は特に限定されない。
【0009】
本発明による回路モジュールは、上記の電子部品内蔵基板と、電子部品搭載領域に搭載された第2の電子部品とを備え、第1の電子部品と第2の電子部品は、第1の配線パターンを介して互いに接続されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1の配線パターンと第2の配線パターンが絶縁されていることから、第1の配線パターンを介して、第1の電子部品と第2の電子部品の間で信号の送受信を行うことが可能となる。
【0011】
本発明において、第2の電子部品はレーザーダイオード又は電源用インダクタであっても構わない。レーザーダイオードや電源用インダクタは、発熱量が大きく、且つ、グランドパターンへの接続が禁止されるタイプの電子部品であるが、このような電子部品であっても、電子部品内蔵基板を介して効率よく放熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、発熱量が大きく、且つ、グランドパターンへの接続が禁止されるタイプの電子部品を搭載するための電子部品内蔵基板及びこれを用いた回路モジュールにおいて、放熱効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態による電子部品内蔵基板1の構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、第1の例による伝熱ブロック40Aの構造を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、第2の例による伝熱ブロック40Bの構造を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、第3の例による伝熱ブロック40Cの構造を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、第4の例による伝熱ブロック40Dの構造を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、第5の例による伝熱ブロック40Eの構造を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、第6の例による伝熱ブロック40Fの構造を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、第7の例による伝熱ブロック40Gの構造を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、第8の例による伝熱ブロック40Hの構造を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、電子部品内蔵基板1を用いた回路モジュール2の構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図13】
図13は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図14】
図14は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図15】
図15は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図16】
図16は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図17】
図17は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図18】
図18は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図19】
図19は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図20】
図20は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図21】
図21は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図22】
図22は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図23】
図23は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図24】
図24は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図25】
図25は、電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図26】
図26は、電子部品30と伝熱ブロック40が互いに異なる層に位置する第1の例を説明するための模式図である。
【
図27】
図27は、電子部品30と伝熱ブロック40が互いに異なる層に位置する第2の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の好ましい実施形態による電子部品内蔵基板1の構造を説明するための模式的な断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態による電子部品内蔵基板1は、基板10と、基板10に埋め込まれた電子部品30及び伝熱ブロック40を備える。基板10の上面10a側には電子部品搭載領域Aが設けられており、電子部品30は、電子部品搭載領域Aに搭載される電子部品を制御する。電子部品30は、一対の信号端子31,32と電源端子33などを備えている。
【0017】
基板10は、4層の絶縁層11~14が積層された構造を有しており、各絶縁層11~14の表面に配線層L1~L4が設けられている。特に限定されるものではないが、最上層に位置する絶縁層11及び最下層に位置する絶縁層14は、ガラス繊維などの芯材にガラスエポキシなどの樹脂材料を含浸させたコア層であっても構わない。これに対し、絶縁層12,13は、ガラスクロスなどの芯材を含まない樹脂材料からなるものであっても構わない。特に、絶縁層11,14の熱膨張係数は、絶縁層12,13の熱膨張係数よりも小さいことが好ましい。
【0018】
配線層L1には配線パターンP11~P13が形成され、配線層L2には配線パターンP21~P24が形成され、配線層L3には配線パターンP34が形成され、配線層L4には配線パターンP41,P44が形成されている。配線層L1は基板10の上面10a側に位置し、その一部はソルダーレジスト21によって覆われている。但し、配線パターンP11の全面及び配線パターンP12の一部はソルダーレジスト21によって覆われておらず、ENEPIG皮膜19で覆われている。ソルダーレジスト21から露出した配線パターンP11は、電子部品搭載領域Aに位置する。また、ソルダーレジスト21から露出した配線パターンP12は、ボンディングパッドBを構成する。一方、配線層L4は基板10の裏面10b側に位置し、その一部はソルダーレジスト22によって覆われている。但し、配線パターンP41,P44の一部はソルダーレジスト22によって覆われておらず、ENEPIG皮膜19で覆われている。
【0019】
伝熱ブロック40は、熱を上面10a側から裏面10b側に逃がすための放熱経路を構成するチップ部品であり、上面10a側を向く表面41と、裏面10b側を向く表面42を有している。伝熱ブロック40の表面41と表面42は互いに絶縁されている。伝熱ブロック40の材料及び構成は、熱伝導率が絶縁層12,13よりも十分に高く、且つ、表面41と表面42が互いに絶縁されている限り、特に限定されない。
【0020】
例えば、
図2に示す第1の例のように、SOI(Silicon On Insulator)チップからなる伝熱ブロック40Aを用いても構わない。SOIチップは、表面41を構成するシリコン基板43と、表面42を構成するシリコン基板44の間に、酸化シリコンなどからなる絶縁膜45が介在する構造を有している。この場合、絶縁膜45の膜厚を十分に薄くすれば、シリコンの熱伝導率が高いことから全体として高い熱伝導性を得ることができるとともに、表面41と表面42を絶縁することができる。
【0021】
或いは、
図3に示す第2の例のように、銅(Cu)などの金属からなる本体部46の上面に絶縁膜47が形成された構造を有する伝熱ブロック40Bを用いても構わないし、
図4に示す第3の例のように、銅(Cu)などの金属からなる本体部46の下面に絶縁膜48が形成された構造を有する伝熱ブロック40Cを用いても構わないし、
図5に示す第4の例のように、銅(Cu)などの金属からなる本体部46の上面及び下面にそれぞれ絶縁膜47,48が形成された構造を有する伝熱ブロック40Dを用いても構わない。これらの場合、絶縁膜47,48の膜厚を十分に薄くすれば、本体部46の熱伝導率が高いことから全体として高い熱伝導性を得ることができるとともに、表面41と表面42を絶縁することができる。絶縁膜47,48の材料としては窒化シリコン(SiN)を用いることができ、スパッタリング法などの方法で成膜することができる。
【0022】
また、
図6に示す第5の例のように、
図5の伝熱ブロック40Dに付加部46a,46bを追加した構造を有する伝熱ブロック40Eを用いても構わない。付加部46a,46bはそれぞれ絶縁膜47,48の表面に設けられており、本体部46と同様、銅(Cu)などの金属からなる。このような付加部46a,46bを設ければ、
図5に示す伝熱ブロック40Dよりも高い熱伝導性を得ることが可能となる。さらに、
図7に示す第6の例のように、凹凸を有する本体部46の表面が絶縁膜47,48で覆われ、且つ、凹部に付加部46a,46bが埋め込まれた構造を有する伝熱ブロック40Fを用いても構わない。
図7に示す伝熱ブロック40Fは表面41,42がほぼ平坦であることから、絶縁層12,13に埋め込む際にボイドが発生しにくい。尚、
図6及び
図7に示す例では、付加部46a,46bがそれぞれ表面41,42の一部を構成する。そして、
図1に示すビア導体V20,V30を形成する際には、ビア導体V20,V30が付加部46a,46bと接するよう設計することが好ましい。
【0023】
さらに、
図8(a)に示す第7の例のように、一方の面が平坦であり、他方の面が凹凸を有する2つの本体部46c,46dが絶縁膜45aを介して嵌合した構造を有する伝熱ブロック40Gを用いても構わない。このような構造を有する伝熱ブロック40Gは、
図8(b)に示す本体部46c,46dを用意し、本体部46c,46dの一方又は両方の凹凸面に絶縁膜45aを形成した後、凹凸面が互いに嵌合するよう本体部46c,46dを接着することによって作製することができる。
【0024】
さらには、
図9に示す第8の例のように、セラミック49からなる伝熱ブロック40Hを用いても構わない。セラミック49の種類としては、窒化アルミニウム(AlN)や窒化シリコン(SiN)のように、絶縁性を有し、熱伝導率の高い材料を選択することができる。これによれば、絶縁膜などを形成することなく、表面41と表面42を絶縁することができる。
【0025】
図1に戻って、配線層L1と配線層L2は、絶縁層11を貫通して設けられた複数のビア導体を介して接続されている。例えば、配線パターンP11と配線パターンP21はビア導体V11を介して接続され、配線パターンP12と配線パターンP22はビア導体V12を介して接続され、配線パターンP13と配線パターンP23はビア導体V13を介して接続され、配線パターンP13と配線パターンP24はビア導体V14を介して接続されている。
【0026】
配線層L2と、配線層L3、電子部品30及び伝熱ブロック40は、複数のビア導体を介して接続されている。例えば、配線パターンP21と伝熱ブロック40の表面41はビア導体V20を介して接続され、配線パターンP21と電子部品30の信号端子31はビア導体V21を介して接続され、配線パターンP22と電子部品30の信号端子32はビア導体V22を介して接続され、配線パターンP23と電子部品30の電源端子33はビア導体V23を介して接続され、配線パターンP24と配線パターンP34は、絶縁層12,13を貫通して設けられたビア導体V24を介して接続されている。
【0027】
配線層L4と、配線層L3及び伝熱ブロック40は、複数のビア導体を介して接続されている。例えば、配線パターンP41と伝熱ブロック40の表面42はビア導体V30を介して接続され、配線パターンP44と配線パターンP34は、絶縁層14を貫通して設けられたビア導体V34を介して接続されている。
【0028】
図10は、電子部品内蔵基板1を用いた回路モジュール2の構造を説明するための模式的な断面図である。
【0029】
図10に示すように、回路モジュール2は、
図1に示した電子部品内蔵基板1と、電子部品内蔵基板1の電子部品搭載領域Aに搭載された電子部品50によって構成されている。特に限定されるものではないが、電子部品50は例えばレーザーダイオードである。レーザーダイオードは発熱量が大きいとともに、特性上、グランドパターンへの接続が禁止されることから、一般的な電子部品のようにグランドパターンに接続することによって放熱することができない。同様の電子部品としては、電源用インダクタが挙げられる。
【0030】
図10に示す電子部品50は、信号端子51,52からなる2端子構成である。このうち、信号端子51は電子部品50の裏面に形成されており、ハンダ60を介して電子部品搭載領域Aに位置する配線パターンP11に接続されている。信号端子51は、電子部品50の裏面の全面に形成されているため、電子部品50の動作によって生じる熱は、効率よく配線パターンP11に伝えられる。一方、信号端子52は電子部品50の上面に形成されており、ボンディングワイヤ61を介して配線パターンP12からなるボンディングパッドBに接続されている。そして、電子部品50がレーザーダイオードである場合には、信号端子51,52に印加する信号によって、レーザー光が生成される。信号端子51は、ハンダ60、配線パターンP11、ビア導体V11、配線パターンP21及びビア導体V21を介して、電子部品30の信号端子31に接続される。また、信号端子52は、ボンディングワイヤ61,配線パターンP12、ビア導体V12、配線パターンP22及びビア導体V22を介して、電子部品30の信号端子32に接続される。
【0031】
電子部品50から配線パターンP11に伝えられた熱は、複数のビア導体V11、配線パターンP21及び複数のビア導体V20を介して伝熱ブロック40に伝えられる。そして、伝熱ブロック40に伝えられた熱は、複数のビア導体V30を介して、放熱パターンとして機能する配線パターンP41に伝えられる。実使用時においては、配線パターンP41はハンダ62を介してマザーボード3のグランドパターンGに接続される。これにより、電子部品50の動作によって生じる熱は、伝熱ブロック40を介してマザーボード3へと効率よく放熱される。
【0032】
そして、本実施形態においては、伝熱ブロック40の表面41と表面42が絶縁されていることから、ビア導体V20とビア導体V30がいずれも伝熱ブロック40と接しているにもかかわらず、両者の絶縁を確保することが可能となる。これにより、配線パターンP11を信号ラインとし、配線パターンP41をグランドパターンとすることが可能となる。しかも、本実施形態においては、伝熱ブロック40が電子部品30と同じ層に埋め込まれていることから、伝熱ブロック40を埋め込むために層数が増えることもない。
【0033】
次に、本実施形態による電子部品内蔵基板1の製造方法について説明する。
【0034】
図11~
図25は、本実施形態による電子部品内蔵基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【0035】
まず、
図11に示すように、ガラス繊維などの芯材を含む絶縁層14の一方の表面に金属膜L3aが形成され、他方の表面に金属膜L4a,L4bの積層膜が形成された基材(ワークボード)を用意し、剥離層71を介してステンレスなどからなる支持体70に貼り合わせる。
【0036】
次に、
図12に示すように、フォトリソグラフィー法などを用いて金属膜L3aをパターニングすることによって、配線層L3を形成する。次に、
図13に示すように、配線層L3を埋め込むよう、絶縁層14の表面に例えば未硬化(Bステージ状態)の樹脂シート等を真空圧着等によって積層することにより、絶縁層13を形成する。
【0037】
次に、
図14に示すように絶縁層13の表面に伝熱ブロック40を載置した後、
図15に示すように絶縁層13の表面に電子部品30を載置する。電子部品30は、例えば、ベアチップ状態の半導体ICであり、端子形成面が上側を向くよう、フェースアップ方式で搭載される。伝熱ブロック40及び電子部品30の載置順序は逆であっても構わないが、伝熱ブロック40を先に載置することにより、電子部品30の端子形成面と伝熱ブロック40の接触を防止することが可能となる。
【0038】
次に、
図16に示すように、電子部品30及び伝熱ブロック40を覆うように絶縁層12及び金属膜L2aを形成する。絶縁層12の形成は、例えば、未硬化又は半硬化状態の熱硬化性樹脂を塗布した後、未硬化樹脂の場合それを加熱して半硬化させ、さらに、プレス手段を用いて金属膜L2aとともに硬化成形することが好ましい。絶縁層12としては、電子部品30及び伝熱ブロック40の埋め込みを妨げる繊維が含まれない樹脂シートが望ましい。
【0039】
次に、
図17に示すように、例えばフォトリソグラフィー法など公知の手法を用いて金属膜L2aの一部をエッチングにより除去した後に、金属膜L2aが除去された所定の箇所に対して公知のブラスト加工やレーザー加工を行うことにより、ビアホール80~82を形成する。このうち、ビアホール80は絶縁層12,13を貫通して設けられ、ビアホール80の底部には配線層L3が露出する。また、ビアホール81は伝熱ブロック40の表面41を露出させ、ビアホール82は電子部品30の信号端子31,32及び電源端子33を露出させる。
【0040】
次に、
図18に示すように、無電解メッキ及び電解メッキを施すことによって、絶縁層12の表面に金属膜L2bを形成するとともに、ビアホール80~82の内部にビア導体V20~V24を形成する。これにより、ビア導体V20は伝熱ブロック40の表面41と接し、ビア導体V21,V22は電子部品30の信号端子31,32と接し、ビア導体V23は電子部品30の電源端子33と接し、ビア導体V24は配線層L3と接する。その後、
図19に示すように、フォトリソグラフィー法などを用いて金属膜L2bをパターニングすることによって、配線層L2を形成する。
【0041】
次に、
図20に示すように、配線層L2を埋め込むよう、絶縁層11と金属膜L1a,L1bが積層されたシートを真空熱プレスする。絶縁層11に用いる材料及び厚みは、絶縁層14と同じであっても構わない。次に、
図21に示すように、金属膜L1a,L1bの界面を剥離するとともに、金属膜L4a,L4bの界面を剥離することによって、基板を支持体70から分離する。
【0042】
次に、
図22に示すように、例えばフォトリソグラフィー法など公知の手法を用いて金属膜L1a,L4aの一部をエッチングにより除去した後に、金属膜L1a,L4aが除去された所定の箇所に対して公知のブラスト加工やレーザー加工を行うことにより、絶縁層11にビアホール91~94を形成し、絶縁層14にビアホール95,96を形成する。このうち、ビアホール91~94は絶縁層11を貫通して設けられ、ビアホール91~94の底部には配線パターンP21~P24がそれぞれ露出する。また、ビアホール95は絶縁層14,13を貫通して設けられ、ビアホール95の底部には伝熱ブロック40の表面42が露出する。さらに、ビアホール96は絶縁層14を貫通して設けられ、ビアホール96の底部には配線パターンP34が露出する。
【0043】
次に、
図23に示すように、無電解メッキ及び電解メッキを施すことによって、絶縁層11,14の表面にそれぞれ金属膜L1c,L4cを形成するとともに、ビアホール91~96の内部にそれぞれビア導体V11~V14,V30,V34を形成する。これにより、ビア導体V11~V14はそれぞれ配線パターンP11~P14と接し、ビア導体V30は伝熱ブロック40の表面42と接し、ビア導体V34は配線パターンP34と接する。その後、
図24に示すように、フォトリソグラフィー法などを用いて金属膜L1c,L4cをパターニングすることによって、配線層L1,L4を形成する。
【0044】
そして、
図25に示すように、絶縁層11,14の表面にそれぞれソルダーレジスト21,22を形成した後、ソルダーレジスト21,22から露出する配線パターンP11,P12,P41,P44に対して部品実装用の表面処理を行うことによりENEPIG皮膜19を形成すれば、
図1に示す電子部品内蔵基板1が完成する。
【0045】
尚、上記実施形態においては、電子部品30と伝熱ブロック40が同じ層に埋め込まれているが、本発明においてこの点は必須でなく、両者が互いに異なる層に埋め込まれていても構わない。この場合、
図26に示すように、電子部品30の一部と伝熱ブロック40の一部が平面視で重なりを有していても構わないし、
図27に示すように、電子部品30の全部と伝熱ブロック40の一部が平面視で重なりを有していても構わない。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、電子部品内蔵基板1に搭載される電子部品50の一方の信号端子51が裏面側に位置し、他方の信号端子52が上面側に位置しているが、電子部品内蔵基板1に搭載される電子部品がこのような構成を有している必要はなく、両方の信号端子が上面側又は裏面側に位置していても構わない。
【0048】
また、基板10に内蔵する伝熱ブロックの数についても1個に限定されるものではなく、複数の伝熱ブロックを基板10に埋め込んでも構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 電子部品内蔵基板
2 回路モジュール
3 マザーボード
10 基板
10a 基板の上面
10b 基板の裏面
11~14 絶縁層
19 ENEPIG皮膜
21,22 ソルダーレジスト
30 電子部品
31,32 信号端子
33 電源端子
40,40A~40H 伝熱ブロック
41,42 伝熱ブロックの表面
43,44 シリコン基板
45,45a 絶縁膜
46,46c,46d 本体部
46a,46b 付加部
47,48 絶縁膜
49 セラミック
50 電子部品
51,52 信号端子
60,62 ハンダ
61 ボンディングワイヤ
70 支持体
71 剥離層
80~82,91~96 ビアホール
A 電子部品搭載領域
B ボンディングパッド
G グランドパターン
L1~L4 配線層
L1a~L1c,L2a,L2b,L3a,L4a~L4c 金属膜
P11~P14,P21~P24,P34,P41,P44 配線パターン
V11~V14,V20~V24,V30,V34 ビア導体