(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電波センサを設置する方法、電波センサ、及び調整装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G01S7/40 182
(21)【出願番号】P 2021563751
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033814
(87)【国際公開番号】W WO2021117304
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2019223080
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 宣男
(72)【発明者】
【氏名】小河 昇平
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162977(JP,A)
【文献】特開2008-203147(JP,A)
【文献】特開2019-132643(JP,A)
【文献】特開2005-17283(JP,A)
【文献】特開2007-139690(JP,A)
【文献】米国特許第6714156(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0366926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の検知のために設定された対象エリアを含む範囲に電波を放射するための電波センサの設置方法であって、
参照物体を設置する工程と、
前記参照物体を基準に、前記電波センサの電波放射方向を調整する工程と、
を含み、
前記参照物体は、前記対象エリア外の第1位置に設置さ
れ、
前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記電波放射方向に対して第1角度をなす調整用方向を、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向に合わせることを含み、
前記第1角度は、前記参照方向と、前記電波センサから前記対象エリア内の第2位置へ向かう目標方向と、がなす第2角度と同じである
電波センサを設置する方法。
【請求項2】
前記電波センサから前記第1位置までの第1距離は、前記電波センサから前記対象エリア内の第2位置までの第2距離と同距離である
請求項1に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項3】
前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記参照物体からの電波反射電力に基づいて、前記電波センサの仰角を調整することを含む
請求項2に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項4】
前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記参照物体からの電波反射位置と、前記調整用方向と、を画面上に表示することを更に含む
請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項5】
前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記調整用方向と前記参照物体からの電波反射位置の方向との差分を算出する装置が、ユーザインタフェースを介して、前記差分に関する情報を出力することを更に含む
請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項6】
前記調整用方向を前記参照方向に合わせることは、前記電波センサに設けられた照準器の照準を前記参照物体に合わせることを含み、
前記調整用方向は、前記照準器の照準方向と同じである
請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項7】
前記電波放射方向を調整する前記工程は、
前記電波放射方向を、前記参照方向に合わせ、
前記電波放射方向を前記参照方向に合わせた後に、前記電波放射方向を回転させることで、前記電波放射方向を前記電波センサから前記第2位置に向かう目標方向に合わせる、
ことを含み、
前記電波放射方向を回転させるときの回転角は、前記参照方向と前記目標方向とがなす角度に応じた大きさを持つ
請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項8】
前記対象エリアは、車両走行用の車線を含む範囲に設定され、
前記参照物体は、前記対象エリアが設定された前記車線外に設置される
請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項9】
前記対象エリアは、車両走行用の道路を含む範囲に設定され、
前記参照物体は、前記道路外に設置される
請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項10】
前記電波センサは、前記道路の左右両外側のうちの一方の外側に設置され、
前記参照物体は、前記一方の外側に設置される
請求項
9に記載の電波センサを設置する方法。
【請求項11】
物体の検知のために設定された対象エリア内外に電波を放射するための電波センサであって、
前記電波センサの電波放射方向の調整に用いられるとともに前記対象エリア外に設置される参照物体からの電波反射位置を示す第1イメージと、調整用方向を示す第2イメージと、を含む画面を表示するためのディスプレイと、
前記調整用方向を設定する動作を実行するよう構成されたコントローラと、
を備え、
前記調整用方向は、前記電波放射方向に対して第1角度をなす方向であり、
前記第1角度は、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向と、前記電波センサから前記対象エリアに向かう目標方向と、がなす第2角度と同じ角度である
電波センサ。
【請求項12】
前記コントローラは、前記調整用方向と前記電波反射位置の方向との差分を算出し、ユーザインタフェースを介して、前記差分に関する情報を出力するよう構成されている
請求項
11に記載の電波センサ。
【請求項13】
物体の検知のために設定された対象エリア内外に電波を放射するための電波センサの電波放射方向の調整装置であって、
前記電波放射方向の調整に用いられるとともに前記対象エリア外に設置される参照物体からの電波反射位置を示す第1イメージと、調整用方向を示す第2イメージと、を含む画面を表示するディスプレイと、
前記調整用方向を設定する動作を実行するよう構成されたコントローラと、
を備え、
前記調整用方向は、前記電波放射方向に対して第1角度をなす方向であり、
前記第1角度は、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向と、前記電波センサから前記対象エリア内の位置に向かう目標方向と、がなす第2角度と同じ角度である
調整装置。
【請求項14】
前記コントローラは、前記調整用方向と前記電波反射位置の方向との差分を算出し、ユーザインタフェースを介して、前記差分に関する情報を出力するよう構成されている
請求項
13に記載の調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波センサを設置する方法、電波センサ、及び調整装置に関する。本出願は、2019年12月10日出願の日本出願第2019-223080号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、横断歩道を含むよう設定された対象エリアに電波を放射し、物体を検知する電波センサを開示している。特許文献2は、横断歩道を含むよう設定された対象エリア内に設置された参照物体の方向を測定することで、電波センサの向きのずれを認識することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-90138号公報
【文献】特開2018-162977号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のある側面は、電波センサの設置方法である。開示の方法は、物体の検知のために設定された対象エリアを含む範囲に電波を放射するための電波センサの設置方法であって、参照物体を設置する工程と、前記参照物体を基準に、前記電波センサの電波放射方向を調整する工程と、を含み、前記参照物体は、前記対象エリア外の第1位置に設置される。
【0005】
本開示の他の側面は、電波センサである。開示の電波センサは、物体の検知のために設定された対象エリアを含む範囲に電波を放射するための電波センサであって、前記電波センサの電波放射方向に対して角度をなす照準方向を持つ照準器を備え、前記照準方向は、前記電波放射方向が前記対象エリアへ向けられた時に、前記電波センサから前記対象エリアの外の位置へ向かう方向である。
【0006】
開示の電波センサは、物体の検知のために設定された対象エリア内外に電波を放射するための電波センサであって、前記電波センサの電波放射方向の調整に用いられるとともに前記対象エリア外に設置される参照物体からの電波反射位置を示す第1イメージと、調整用方向を示す第2イメージと、を含む画面を表示するためのディスプレイと、前記調整用方向を設定する動作を実行するよう構成されたコントローラと、を備え、前記調整用方向は、前記電波放射方向に対して第1角度をなす方向であり、前記第1角度は、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向と、前記電波センサから前記対象エリアに向かう目標方向と、がなす第2角度と同じ角度である。
【0007】
本開示の他の側面は、調整装置である。開示の調整装置は、物体の検知のために設定された対象エリア内外に電波を放射するための電波センサの電波放射方向の調整装置であって、前記電波センサの電波放射方向の調整に用いられるとともに前記対象エリア外に設置される参照物体からの電波反射位置を示す第1イメージと、調整用方向を示す第2イメージと、を含む画面を表示するディスプレイと、前記調整用方向を設定する動作を実行するよう構成されたコントローラと、を備え、前記調整用方向は、前記電波放射方向に対して第1角度をなす方向であり、前記第1角度は、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向と、前記電波センサから前記対象エリアに向かう目標方向と、がなす第2角度と同じ角度である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、電波センサのハードウェア構成図である。
【
図3】
図3は、センサ設置手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、対象エリア、参照物体設置位置、対象エリア内基準位置、及び電波センサ設置位置を示す説明図である。
【
図5】
図5は、電波センサ設置位置に向き調整前の電波センサが取り付けられた状態を示す図である。
【
図6】
図6は、電波センサの向き調整手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、調整装置のディスプレイに表示される画面を示す図である。
【
図8】
図8は、向きが調整された電波センサを示す図である。
【
図9】
図9は、電波センサの向き調整手順の他の例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、電波センサ設置位置に向き調整前の電波センサが取り付けられた状態を示す図である。
【
図12】
図12は、電波センサ正面方向が参照方向に向けられた状態を示す図である。
【
図13】
図13は、向きが調整された電波センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
【0010】
電波センサの電波放射方向が不正確であると、電波センサの本来の能力発揮を阻害する。例えば、電波センサの電波放射方向が不正確であると、電波の反射強度の低下を招く。また、電波センサの電波放射方向が不正確であると、対象エリアの一部が電波センサの検知可能範囲外になることもある。
【0011】
特許文献2のように、参照物体を利用することで、電波放射方向を対象エリアへ正確に向けることができる。したがって、参照物体の利用は、電波放射方向の調整に有利である。しかし、参照物体を対象エリア内に設置するのが困難な場合がある。例えば、対象エリアが車両走行用の道路に設定される場合、その道路上に参照物体を設置する作業が必要となる。参照物体の設置をする作業者が、車両が走行する道路に参照物体を設置するには、その道路を通行止めにする必要があり、参照物体の設置作業を困難にする。
【0012】
したがって、作業者が進入するのが容易ではない場所に、電波センサの対象エリアが設定される場合であっても、電波センサの電波放射方向を容易に調整できることが望まれる。
【0013】
(1)実施形態に係る方法は、物体の検知のために設定された対象エリアを含む範囲に電波を放射するための電波センサの設置方法である。電波センサの設置方法は、参照物体を設置する工程と、前記参照物体を基準に、前記電波センサの電波放射方向を調整する工程と、を含む。ここで、電波放射方向とは、指向性をもって放射された電波が進行する方向をいう。電波放射方向は、例えば、電波センサにおいて電波が放射される面を、電波センサの正面とした場合、電波センサの正面方向に相当する。前記参照物体は、前記対象エリア外の第1位置に設置される。参照物体が、対象エリア外に設置されることで、作業者は、参照物体の設置のために対象エリア内に進入する必要がない。したがって、作業者が進入するのが容易ではない場所に対象エリアが設定される場合であっても、参照物体の設置が容易である。この結果、電波センサの電波放射方向の調整が容易になる。
【0014】
(2)前記電波センサから前記第1位置までの第1距離は、前記電波センサから前記対象エリア内の第2位置までの第2距離と同距離であるのが好ましい。この場合、電波センサから参照物体までの距離が、電波センサから対象エリアまでの距離と同程度になり、参照物体の位置が適正化される。第2位置は、対象エリア内の任意の位置でよいが、電波センサの電波放射方向を決めるための所定の位置(例えば、後述の基準位置)が対象エリア内に存在する場合には、その所定の位置であるのが好ましい。
【0015】
(3)前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記参照物体からの電波反射電力に基づいて、前記電波センサの仰角を調整することを含むのが好ましい。この場合、電波センサの仰角が適正化される。また、前記第1距離と前記第2距離とを同じにした場合、対象エリア外の参照物体からの電波反射電力に基づいて、電波センサの仰角を調整することで、対象エリア内の物体からの電波反射電力が大きくなる。
【0016】
(4)前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記電波放射方向に対して第1角度をなす調整用方向を、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向に合わせることを含むことができる。なお、電波放射方向は、電波センサの指向性にもよるが、一般的に、電波センサの正面方向になる。前記第1角度は、前記参照方向と、前記電波センサから前記対象エリア内の第2位置へ向かう目標方向と、がなす第2角度と同じであるのが好ましい。この場合、調整用方向を参照方向に合わせることで、電波放射方向を目標方向に合わせることが可能である。なお、前記第1位置は、前記調整用方向を前記参照方向に合わせたときに、前記参照物体からの電波反射位置を前記電波センサが検出できる位置であるのが好ましい。
【0017】
(5)前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記参照物体からの電波反射位置と、前記調整用方向と、を画面上に表示することを更に含むのが好ましい。この場合、画面を参照することで、電波反射位置と調整用方向との一致・不一致の確認が可能である。
【0018】
(6)前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記調整用方向と前記参照物体からの電波反射位置の方向との差分を算出する装置が、ユーザインタフェースを介して、前記差分に関する情報を出力することを更に含むのが好ましい。この場合、差分の把握が容易である。差分に関する情報の出力は、画面上での表示でもよいし、ランプの表示又は音の出力であってもよい。
【0019】
(7)前記調整用方向を前記参照方向に合わせることは、前記電波センサに設けられた照準器の照準を前記参照物体に合わせることを含むことができる。前記調整用方向は、前記照準器の照準方向と同じであるのが好ましい。この場合、照準方向を参照物体に向けることで、調整用方向を参照方向に合わせることができる。
【0020】
(8)前記電波放射方向を調整する前記工程は、前記電波放射方向を、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向に合わせ、前記電波放射方向を前記参照方向に合わせた後に、前記電波放射方向を回転させることで、前記電波放射方向を前記電波センサから前記第2位置へ向かう目標方向に合わせる、ことを含むことができる。前記電波放射方向を回転させるときの回転角は、前記参照方向と前記目標方向とがなす角度に応じた大きさを持つのが好ましい。この場合も、電波放射方向を目標方向に合わせることができる。
【0021】
(9)前記対象エリアは、車両走行用の車線を含む範囲に設定されるのが好ましい。前記参照物体は、前記対象エリアが設定された前記車線外に設置されるのが好ましい。この場合、参照物体の設置のために、作業者が、対象エリアが設定された車線内に進入する必要がない。なお、車線外とは、道路外であってもよいし、道路内であるが対象エリアが設定される車線以外の車線の範囲内であってもよい。
【0022】
(10)前記対象エリアは、車両走行用の道路を含む範囲に設定されるのが好ましい。前記参照物体は、前記道路外に設置されるのが好ましい。この場合、参照物体の設置のために、作業者が、車両が走行する道路内に進入する必要がない。
【0023】
(11)前記電波センサは、前記道路の左右両外側のうちの一方の外側に設置されるのが好ましい。この場合、電波センサの設置のために、作業者が道路内に進入する必要がない。前記参照物体は、前記一方の外側に設置されるのが好ましい。この場合、参照物体と電波センサとが、道路の左右両外側のうちの同じ側に設置されるため、作業者が、道路を横断する必要がない。
【0024】
(12)実施形態に係る電波センサは、物体の検知のために設定された対象エリアを含む範囲に電波を放射するために用いられる。電波センサは、前記電波センサの電波放射方向に対して角度をなす照準方向を持つ照準器を備えるのが好ましい。前記照準方向は、前記電波放射方向が前記対象エリアへ向けられた時に、前記電波センサから前記対象エリアの外の位置へ向かう方向であるのが好ましい。この場合、対象エリアの外に設置された参照物体に照準器の照準を合わせることができる。なお、照準器は、1又は複数の照準方向を持つことができる。照準器が複数の照準方向を持つ場合、少なくとも一つの照準方向が、対象エリアの外へ向かう方向であれば足りる。
【0025】
(13)実施形態に係る電波センサは、物体の検知のために設定された対象エリア内外に電波を放射するために用いられる。電波センサは、前記電波センサの電波放射方向の調整に用いられるとともに前記対象エリア外に設置される参照物体からの電波反射位置を示す第1イメージと、調整用方向を示す第2イメージと、を含む画面を表示するためのディスプレイと、前記調整用方向を設定する動作を実行するよう構成されたコントローラと、を備えることができる。前記調整用方向は、前記電波放射方向に対して第1角度をなす方向であるのが好ましい。前記第1角度は、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向と、前記電波センサから前記対象エリアに向かう目標方向と、がなす第2角度と同じ角度であるのが好ましい。
【0026】
(14)前記コントローラは、前記調整用方向と前記電波反射位置の方向との差分を算出し、前記差分を出力するよう構成されているのが好ましい。
【0027】
(15)実施形態に係る調整装置は、物体の検知のために設定された対象エリア内外に電波を放射するための電波センサの電波放射方向の調整に用いられる。調整装置は、前記電波放射方向の調整に用いられるとともに前記対象エリア外に設置される参照物体からの電波反射位置を示す第1イメージと、調整用方向を示す第2イメージと、を含む画面を表示するディスプレイと、前記調整用方向を設定する動作を実行するよう構成されたコントローラと、を備えることができる。前記調整用方向は、前記電波放射方向に対して第1角度をなす方向であるのが好ましい。前記第1角度は、前記電波センサから前記参照物体へ向かう参照方向と、前記電波センサから前記対象エリア内の位置に向かう目標方向と、がなす第2角度と同じ角度であるのが好ましい。
【0028】
(16)前記コントローラは、前記調整用方向と前記電波反射位置の方向との差分を算出し、前記差分を出力するよう構成されているのが好ましい。
【0029】
実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを前記コントローラとして動作させるための命令を含む。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な、非一時的な記憶媒体に格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータが有するプロセッサによって読み取られ、実行される。
【0030】
本開示によれば、電波センサの電波放射方向の調整が容易になる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
【0032】
図1及び
図2は、実施形態に係る電波センサ10を示している。電波センサ10は、電波を放射し、物体からの反射波を受信することで、物体を検知する。実施形態の電波センサ10は、ミリ波レーダである。実施形態の電波センサ10は、道路を走行する車両を検知するために用いられる。車両の検知結果は、例えば、交通流計測又は車両走行支援に用いられる。
【0033】
電波センサ10は、筐体26によって覆われた電波センサ本体20を備える。筐体26内には、送信アンテナ21、受信アンテナ22、送受信回路23、信号処理回路24、及びインタフェース25が設けられている。
【0034】
筐体26は、電波600の送受信がなされる正面27を有する。なお、
図1において、正面27は、筐体26の奥側に存在する。送信アンテナ21は、筐体26の正面27に直交する方向(電波センサ10にとっての前方)D12へ電波600を放射するように、筐体26内部に配置されている。したがって、実施形態においては、筐体26の正面方向D12が、電波放射方向である。受信アンテナ22は、正面27において、反射波を受信するように、筐体26内部に配置されている。
【0035】
送信アンテナ21は、複数のアンテナ素子21A,21Bを有する。
図2において、送信アンテナ21を構成するアンテナ素子21A,21Bの数は、例えば、2である。複数のアンテナ素子21A,21Bは、水平方向に並んでいる。
【0036】
送信アンテナ21から放射された電波は、物体において反射される。受信アンテナ22は、物体からの反射波を受信する。受信アンテナ22は、複数のアンテナ素子22A,22B,22C,22Dを有する。
図2において、受信アンテナ22を構成するアンテナ素子22A,22B、22C,22Dの数は、例えば、4である。複数のアンテナ素子22A,22B,22C,22Dは、水平方向に並んでいる。
【0037】
送信アンテナ21及び受信アンテナ22は、送受信回路23に接続されている。送受信回路23は、電波として放射される信号を、送信アンテナ21へ出力する。電波として放射される信号は、例えば、周波数変調された連続波(Frequency Modulated Continuous Wave:FMCW)である。送受信回路23は、受信アンテナ22によって受信した反射波の信号を、信号処理回路24へ出力する。
【0038】
信号処理回路24は、反射波信号から、物体までの距離、方向、速度などを検知する。物体までの距離、方向、速度などを含む検知結果は、インタフェース25を介して、電波センサ本体20外部へ出力可能である。インタフェース25は、後述の調整装置30などの外部機器との接続に用いられる。
【0039】
実施形態に係る電波センサ10は、さらに、調整装置30を備える。調整装置30は、電波センサ本体20を設置する際に、電波センサ本体20のインタフェース25に接続して用いられる。調整装置30は、電波センサ本体20の向きを調整することで電波放射方向を調整するために用いられる。調整装置30は、電波センサ本体20の向きの調整のため、物体の検知結果を、電波センサ本体20から受信する。なお、調整装置30は、電波センサ本体20の設置後は、電波センサ本体20との接続が切断される。電波センサ本体20と調整装置30との接続は、ケーブル40を用いた有線接続でもよいし、無線接続でもよい。
【0040】
調整装置30は、プロセッサ31と、プロセッサ31に接続されたメモリ32と、を備えるコンピュータによって構成される。プロセッサ31は、電波センサ本体20の向き調整に関するコントローラとして動作する。メモリ32には、電波センサ本体20の向き調整のための動作をプロセッサ31に実行させるための命令を含むコンピュータプログラムが格納されている。プロセッサ31は、メモリ32からコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、電波センサ本体20の向き調整に関するコントローラとして動作する。コントローラの動作は、調整用方向D11(後述)を設定する動作を含む。
【0041】
調整装置30は、ディスプレイ33を備える。ディスプレイ33は、電波センサ本体20の向きの調整に用いられる画面を表示する。ディスプレイ33の表示内容は、コントローラとして機能するプロセッサ31によって制御される。
【0042】
電波センサ本体20は、電波センサ本体20の向きの調整に用いられる照準器45を備える。照準器45は、電波センサ本体20の向きを目視で所定の照準方向D31,D32,D33に合わせるために用いられる。
図1に示す照準器45は、単一のリアサイト46と、フロントサイト47,48,49と、を備える。
図1に示す照準器45は、複数の照準方向D31,D32,D33を得るため、複数のフロントサイト47,48,49を備える。複数のフロントサイト47,48,49は、第1フロントサイト47と、第2フロントサイト48と、第3フロントサイト49と、を含む。
【0043】
リアサイト46と第1フロントサイト47とを用いることで、目視により第1照準方向D31に照準を定めることができる。リアサイト46と第2フロントサイト48とを用いることで、第2照準方向D32に照準を定めることができる。リアサイト46と第3フロントサイト49とを用いることで、第3照準方向D33に照準を定めることができる。
【0044】
複数の照準方向D31,D32,D33は、例えば、水平面において、それぞれ異なる方向であり、電波センサ本体20の正面方向(電波放射方向)D12に対して角度をなしている。ここで、水平面とは、
図1のXY平面である。なお、
図1のZ方向は垂直方向である。
図1において、第1照準方向D31が、正面方向(電波放射方向)D12に対してなす角度(第1角度θ1)は、10°である。第2照準方向D32が、正面方向(電波放射方向)D12に対してなす角度(第1角度θ1)は、20°である。第3照準方向D33が、正面方向(電波放射方向)D12に対してなす角度(第1角度θ1)は、30°である。ここで、第1角度θ1は、水平面内における角度である。複数の照準方向D31,D32,D33の全て又は少なくとも一つは、電波センサ10の正面方向(電波放射方向)D12が、物体検知のための対象エリア100に向けられたときに、対象エリア100の外に設置される後述の参照物体200へ向かう方向になっている。より具体的には、複数の照準方向D31,D32,D33の全て又は少なくとも一つは、電波センサ10の正面方向(電波放射方向)D12が後述の位置P2に向けられたときに、対象エリア100の外に設置される参照物体200へ向かう方向になっている。なお、照準方向D31,D32,D33の具体的な方向は特に限定されるわけではない。
【0045】
なお、複数の照準方向を得るため、複数のリアサイトと、単一のフロントサイトとが用いられてもよい。また、複数の照準方向を得るため、単一のリアサイトと単一のフロントサイトが形成する照準方向を変更する機構が用いられてもよい。照準方向を変更する機構としては、例えば、リアサイト及びフロントサイトの組を筐体26に対して回転させる機能が採用される。
【0046】
図3は、電波センサ10(電波センサ本体20)の設置手順を示している。まず、ステップS11において、対象エリア100が設定される。対象エリア100は、例えば、検知対象物体である車両が走行する道路300上に設定される(
図4参照)。対象エリア100を設定すべき場所及び範囲は、例えば、電波センサ10の設置に関する仕様書に記載される。
【0047】
対象エリア100の設定の際には、調整装置30は、ディスプレイ33上に、対象エリア100が設定される道路300を含む領域の地図を表示させる。調整装置30のオペレータは、その地図上で対象エリア100を特定する操作を調整装置30に対して行う。調整装置30は、対象エリア100を特定する操作を受け付け、対象エリア100に関するデータをメモリ32に保存する。
【0048】
実施形態において、対象エリア100は、車両走行用の道路300を含む範囲に設定される。道路300は、例えば、高速道路である。道路300は、車両走行用の1又は複数の車線301,302を備える。対象エリア100は、複数の車線301,302すべてを含む範囲に設定されてもよいし、複数の車線301,302のうちの一部の車線301を含む範囲にだけ設定されてもよい。なお、
図4においては、対象エリア100は、2つの車線301,302のうちの一つの車線301だけを含む範囲に設定される。
【0049】
ステップS12において、電波センサ10の設置位置P3が決定される(
図4参照)。設置位置P3は、電波センサ10によって対象エリア100内の物体が検知できるように、対象エリア100の近傍に設定される。
【0050】
調整装置30のオペレータは、対象エリア100が設定された前述の地図を参照し、電波センサ10の設置位置P3を特定する操作を調整装置30に対して行う。調整装置30は、設置位置P3を特定する操作を受け付け、設置位置P3に関するデータをメモリ32に保存する。
【0051】
実施形態において、設置位置P3は、道路300の外側311,312に設定される。より具体的には、電波センサ10は、道路300の左右両外側311,312のうちの一方の外側311に設置される。電波センサ10の設置位置P3を、道路300の外側311,312にすることで、電波センサ10の設置作業のために、作業者が道路300内に進入する必要がない。また、電波センサ10の設置作業のために、道路300を通行止めにする必要がない。
【0052】
ステップS13において、対象エリア100内の基準位置P2が決定される(
図4参照)。基準位置P2は、対象エリア100内の適切な位置として決定される。基準位置P2は、電波センサ10の電波放射方向(正面方向)D12が向けられるべき位置である。基準位置P2は、例えば、対象エリア100全体が、電波センサ10の検知可能範囲内に収まるように設定される。また、基準位置P2は、例えば、電波センサ10の指向性と設置位置P3とに基づき、対象エリア100からの反射電力が、対象エリア100全体として高くなる位置として決定される。基準位置P2は、電波センサ10の指向性と設置位置P3とに基づき、調整装置30が計算してもよいし、オペレータが決定して調整装置30に入力してもよい。調整装置30は、基準位置P2に関するデータをメモリ32に保存する。
【0053】
基準位置P2が決まると、設置位置P3から基準位置P2に向かう方向が、目標方向(基準方向)D22として自ずと決まる。調整装置30は、目標方向D22に関するデータをメモリ32に保存する。目標方向D22は、電波センサ10の電波放射方向(正面方向)D12が向けられるべき方向である。
【0054】
ステップS14において、参照物体200の設置位置P1が決定される(
図4参照)。参照物体200は、電波センサ10の向きを定めるための基準となる物体である。参照物体200は、電波センサ10の向き調整の際に、電波センサ10から放射された電波を反射するリフレクタとして機能する。また、参照物体200は、電波センサ10の向き調整の際に、照準器45によって照準が定められる対象として機能する。
【0055】
実施形態において、参照物体200の設置位置P1は、対象エリア100外に設定される。
図4において、参照物体200の設置位置P1は、対象エリア100外であって、道路300外に設定される。参照物体200の設置位置P1が、車両走行用の道路300外に設定されることで、参照物体200の設置作業者は、道路300内に進入する必要がない。また、参照物体200の設置作業のために道路300を通行止めにする必要がない。
【0056】
図4において、参照物体200の設置位置P1は、道路300の左右両外側311,312のうちの、電波センサ10の設置位置P3と同じ側311に設定される。参照物体200の設置位置P1及び電波センサ10の設置位置P3が、道路300の左右両外側311,312のうちの同じ側311に設定されることで、作業者は、道路300の片側311だけで参照物体200及び電波センサ10の設置作業を行える。このため、作業者は、道路300の横断をする必要がない。
【0057】
なお、電波センサ10を道路300の一方の外側311に設置し、参照物体200を道路300の他方の外側312に設置することも可能ではある。しかし、この場合、作業者は、参照物体200及び電波センサ10を設置するために、道路300を横断する必要がある。
【0058】
また、参照物体200の設置位置P1は、対象エリア100の外であれば、道路300内であってもよい。例えば、参照物体200の設置位置P1は、対象エリア100が設置された車線301外である車線302上に設定されてもよい。この場合、対象エリア100が設定される車線301を通行止めにすることなく、車線302だけを通行止めにすれば、参照物体200を設置できる。
【0059】
参照物体200の設置位置(第1位置)P1は、電波センサ10の設置位置P3からみて、対象エリア100内の基準位置(第2位置)P2までと同距離に設置されるのが好ましい。すなわち、位置P3から位置P1までの距離L1は、位置P3から位置P2までの距離L2と同距離であるのが好ましい。距離L1と距離L2とが同距離であることで、電波センサ10の仰角を適切に調整することができる。この点は後述される。
【0060】
調整装置30のオペレータは、対象エリア100、対象エリア内基準位置P2、電波センサ設置位置P3が設定された前述の地図を参照し、参照物体200の設置位置P1を特定する操作を調整装置30に対して行う。調整装置30は、設置位置P1を特定する操作を受け付け、設置位置P1に関するデータをメモリ32に保存する。設置位置P1に関するデータは、距離L1を示すデータを含む。
【0061】
調整装置30は、参照物体200の設置位置P1についての1又は複数の候補を、ディスプレイ33に表示する。設置位置P1の候補は、例えば、前述の地図上に表示される。設置位置P1の候補は、点で示されても良いし、線で示されてもよい。設置位置P1の候補となる点は、例えば、位置P3を中心とする半径L2の円弧350上において、P3からP2に向かう方向D22に対して所定の角度(例えば、10°、20°、又は30°)をなす1又は複数の点として表される。設置位置P1の候補となる線は、例えば、位置P3を中心とする半径L2の円弧350又は円として表される。
【0062】
調整装置30のオペレータは、地図上に表示された、設置位置P1についての1又は複数の候補を参照し、地勢などを考慮して、参照物体200の設置位置P1を決定することができる。
【0063】
設置位置P1が決まると、設置位置P3から設置位置P1に向かう方向が、参照方向(準基準方向)D21として決定される。参照方向D21は、目標方向D22に対して所定角度(第2角度)θ2をなす方向である。ここで、第2角度θ2は、水平面内における角度である。調整装置30は、オペレータの設置位置P1特定操作に基づき、参照方向D21及び第2角度θ2を求め、参照方向D21及び第2角度θ2に関するデータをメモリ32に保存する。
【0064】
ステップS15において、作業者は、電波センサ10を、設置位置P3に設けられた支柱50等に取り付ける(
図5参照)。なお、この時点で、電波センサ10の正面方向D12は、対象エリア100を向いている必要はない。
図5に示すように、電波センサ10は、検知可能範囲500を有する。検知可能範囲500は、電波センサ10によって物体が検知可能な範囲である。また、ステップS16において、作業者は、参照物体200を設置位置P1に設置する(
図5参照)。なお、調整装置30のオペレータと、電波センサ10及び参照物体200の設置作業者とは、別の人物であってもよいし、同一人物であってもよい。
【0065】
続くステップS17において、参照物体200を基準に、電波センサ10の向きを調整する作業が行われる。
図6は、ステップS17の詳細を示している。なお、
図6に示す調整作業では、照準器45は用いられない。照準器45を用いた調整作業は、
図9において説明される。
【0066】
図6に示す調整作業では、電波センサ本体20に接続された調整装置30を用いて、電波センサ10の向きが調整される。
図6のステップS181において、調整装置30は、調整用方向D11(
図5参照)の設定を行う。調整用方向D11は、電波センサ10の電波放射方向D12に対して角度(第1角度)θ1をなす方向である。第1角度θ1は、第2角度θ2と同じ角度に設定される。調整装置30は、予め調整装置30に設定された電波放射方向D12と、先に求めた第2角度θ2と、から、調整用方向D11を決定し、調整用方向D11に関するデータをメモリ32に保存する。
【0067】
また、設置位置P3に設置された電波センサ本体20は、電波を送受信して、物体を検知可能な状態にされる。検知結果は、電波センサ本体20に接続された調整装置30によって、取得され(ステップS182)、ディスプレイ33に表示される(ステップS183)。
図7に示すように、調整装置30は、参照物体200からの電波反射位置を示すマーク(第1イメージ)35と、電波放射方向に対して第1角度θ1をなす調整用方向D11を示すマーク(第2イメージ)37と、電波放射方向(正面方向)D12を示すマーク(第3イメージ)38Aと、電波センサ設置位置P3を示す(第4イメージ)マーク38Bを、ディスプレイ33上に出力する。参照物体200からの反射電力は大きいため、調整装置30は、閾値よりも大きい反射電力が得られる位置を、参照物体200からの電波反射位置として検出できる。また、調整装置30は、電波センサ10からの距離がL1である範囲において、反射電力が得られる位置を、参照物体200からの電波反射位置として検出してもよい。参照物体200は静止しているため、調整装置30は、電波センサ10からの距離がL1である範囲において、反射電力が得られる位置であって、静止している物が存在する位置を、電波反射位置として検出してもよい。
【0068】
また、ディスプレイ33上には、調整用方向D11と参照物体200からの電波反射位置の方向との差分(角度差)を示す表示39Aも出力される。さらに、ディスプレイ33上には、参照物体200からの反射電力を示す表示39Bも出力される。差分に関する情報を出力するためのユーザインタフェースは、画面を表示するディスプレイ33のようなグラフィカルユーザインタフェースに限られず、音を出力するオーディオインタフェースであってもよい。音は、差分を示すテキストの音声であってもよいし、周期的に発生する音であってもよい。周期的に発生する音の間隔の違いが、差分を示すことができる。また、音を出力するユーザインタフェースは、反射電力強度に応じた大きさの音を出力してもよい。ユーザインタフェースは、ランプの点滅周期の違いによって差分を示すよう構成されていてもよい。ランプは、反射電力強度を光の強さで表すよう構成されていてもよい。このように、ユーザインタフェースは、差分に関する情報を出力することで、ユーザが差分を把握するのを容易にする。
【0069】
ユーザインタフェースは、差分がゼロ又はゼロ近傍の所定範囲内になった場合だけ、音及び光の少なくともいずれか一方を出力してもよい。音又は光は、ディスプレイ33による出力と組み合わせて出力されてもよい。例えば、音又は光による差分の出力では、十分でない場合に、ディスプレイ33による出力が併用されてもよい。
【0070】
なお、
図7において、調整用方向D11を示すマーク37は、調整用方向D11に沿った線として描かれているが、調整用方向D11上に存在する点として表されてもよい。調整用方向D11を示すマーク37は、調整用方向を示す線又は点を中心として、広がりをもつ領域として示されてもよい。
【0071】
図6のステップS171において、電波センサ10の調整作業者は、電波センサ10の向きをおおまかに対象エリア100に向ける。これにより、検知可能範囲500が回転し、参照物体200が検知可能範囲500内に入る。その結果、参照物体200からの電波反射位置を示すマーク35がディスプレイ33に表示される(
図7参照)。
図7では、電波反射位置を示すマーク35の方向と調整用方向D11を示すマーク37とが、ずれており、両者に差があることがわかる(ステップS172においてNO)。この差は、角度差を示す表示39Aにおいて、数値表示される。
【0072】
調整作業者は、参照物体200の電波反射位置を示すマーク35が、調整用方向D11を示すマーク37の位置に一致するように、電波センサ10を左右に回転させて、水平方向の向きを調整する(ステップS173)。ディスプレイ33に表示される調整用方向D11は、電波放射方向D12に対して、第2角度θ2と同じ角度である第1角度θ1ほど傾いている。このため、参照物体200の電波反射位置(参照方向D21)を、調整用方向D11に合わせることで、電波放射方向D12を目標方向D22に合わせることができる。
【0073】
図8に示すように、参照物体200の電波反射位置を示すマーク35が、調整用方向D11を示すマーク37の位置(参照方向D21)に一致すると(ステップS172においてYES)、水平方向の向きの調整は完了である。
【0074】
続いて、電波センサ10の仰角が調整される(ステップS174,S175)。電波センサ10の仰角調整は、調整作業者が、反射電力を示す表示39Bを参照しつつ、参照物体200からの反射電力が最も高くなる仰角に調整することで行われる。電波センサ10の垂直面指向性は、電波放射方向D12と調整用方向D11とでは異なる。しかし、反射電力が最大となる仰角は、電波放射方向D12と調整用方向D11とで共通する。このため、調整用方向D11にある参照物体200からの反射電力を最大にする仰角に調整すれば、電波放射方向D12上(基準位置P2)の物体からの反射電力が最大になる。
【0075】
図3から
図8に示す電波センサ10の設置方法によれば、道路300の一方の外側311だけで、参照物体200の設置を含む電波センサの設置作業を行うことができる。このため、道路300への進入及び道路300の通行止めをする必要がない。
【0076】
図9は、電波センサ本体20に設けられた照準器45及び調整装置30を用いた調整作業の手順を示している。
図9のステップS181では、照準器45を用いて、作業者の目視により電波センサ10の向きが調整される。
図1に示す照準器45は、3つの照準方向D31,D32,D33を持つ。電波センサ10の向き調整には、第2角度θ2に対応した照準方向D31,D32,D33が選択される。例えば、第2角度θ2が10°である場合、電波放射方向D12に対して10°の角度(第1角度θ1)を持つ第1照準方向D31が選択される。この場合、第1照準方向D31が、調整用方向D11になる。
【0077】
そして、作業者は、調整用方向D11である第1照準方向D31が、設置位置P1に設置された参照物体200の方向(参照方向)D21に合うように、電波センサ本体20の向きを調整する。これにより、電波放射方向D12を目標方向D22に合わせることができる。
【0078】
以上により、電波センサ10の向きの調整を完了してもよいが、向きの微調整のため、続いてステップS182が行われてもよい。ステップS182では、調整装置30を用いて、
図6に示すステップS171からステップS175の作業が実行される。照準器45を用いた調整の後に、調整装置30を用いた調整を行うことで、容易に向きの精度を高めることができる。つまり、照準器45を用いることで、概ね正確な向き調整が容易に行えるとともに、残った向きの誤差を、調整装置30を用いて解消することができる。
【0079】
図10から
図13は、電波センサ10の向きの調整手順の他の例を示している。
図10から
図13に示す調整手順では、電波放射方向(正面方向)D12が参照物体200に、一旦、向けられた後、第2角度θ2の回転角で電波センサ10が回転させられる。これにより、電波放射方向D12が目標方向D22に合う。なお、
図10から
図13に示す手順の場合、
図10に示すように、照準器45の照準方向は、電波放射方向(正面方向)D12と同じである。
【0080】
図10から
図13に示す手順においても、
図3のステップS11からステップS16が行われ、電波センサ10の取り付け(ステップS15)及び参照物体200の設置(ステップS16)がなされる。
図11は、ステップS15及びステップS16が完了した状態を示している。
【0081】
続く、電波センサ10の向きの調整(ステップS17)では、作業者は、電波放射方向D12を、参照物体200の方向(参照方向D21)に合わせる。この作業は、
図10に示す照準器45を用いて行ってもよいし、調整装置30のディスプレイ33を参照しながら行ってもよい。
【0082】
ここで、参照方向D21は、目標方向D22に対して、第2角度θ2(θ2は、例えば、位置P3を中心とした時計回りで+10°)をなす方向である。参照方向D1が目標方向D22に対して第2角度θ2をなす方向であることは既知である。したがって、第2角度θ2の回転角で、電波センサ10を反時計回りに回転させれば、電波放射方向D12を目標方向D22に合わせることができる(
図13参照)。つまり、
図12の状態から
図13の状態にするために電波センサ10の電波放射方向を回転させるときの回転角(調整角度)は、第2角度θ2に応じた大きさの角度である。
【0083】
図10から
図13に示す手順でも、対象エリア100外に設置された参照物体200を基準として、電波センサ10の向きが調整される。
【0084】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
10 :電波センサ
20 :電波センサ本体
21 :送信アンテナ
21A :アンテナ素子
21B :アンテナ素子
22 :受信アンテナ
22A :アンテナ素子
22B :アンテナ素子
22C :アンテナ素子
22D :アンテナ素子
23 :送受信回路
24 :信号処理回路
25 :インタフェース
26 :筐体
27 :正面
30 :調整装置
31 :プロセッサ
32 :メモリ
33 :ディスプレイ
35 :参照物体からの電波反射位置のマーク
37 :調整用方向のマーク
38A :電波放射方向のマーク
38B :電波センサ設置位置のマーク
39A :調整用方向と電波反射位置の方向との差分表示
39B :反射電力表示
40 :ケーブル
45 :照準器
46 :リアサイト
47 :第1フロントサイト
48 :第2フロントサイト
49 :第3フロントサイト
50 :支柱
100 :対象エリア
200 :参照物体
300 :道路
301 :車線
302 :車線
311 :道路外側
312 :道路外側
350 :円弧
500 :検知可能範囲
600 :電波
D :目標方向
D11 :調整用方向
D12 :電波放射方向
D21 :参照方向
D22 :目標方向
D31 :第1照準方向
D32 :第2照準方向
D33 :第3照準方向
L1 :第1距離
L2 :第2距離
P1 :参照物体設置位置
P2 :対象エリア内基準位置
P3 :電波センサ設置位置
θ1 :第1角度
θ2 :第2角度