(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】熱収縮性ポリエステル系フィルムおよび包装体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240220BHJP
B29C 61/02 20060101ALI20240220BHJP
B29C 61/06 20060101ALI20240220BHJP
B29C 55/06 20060101ALI20240220BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20240220BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20240220BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20240220BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20240220BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20240220BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20240220BHJP
B29K 105/02 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C61/02
B29C61/06
B29C55/06
C08G63/672
B65D65/02 E
B65D77/20 S
B29C48/08
B29K67:00
B29L7:00
B29K105:02
(21)【出願番号】P 2022027823
(22)【出願日】2022-02-25
(62)【分割の表示】P 2017541984の分割
【原出願日】2017-07-31
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2016151010
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅文
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-309424(JP,A)
【文献】特開平04-278348(JP,A)
【文献】特開平07-053737(JP,A)
【文献】特開平07-138388(JP,A)
【文献】特開平03-068634(JP,A)
【文献】特開平03-045631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02、 5/12- 5/22
B29C 55/00-55/30、61/00-61/10
C08G 63/00-64/42
B65D 23/00-25/56、65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分とジオール成分とを有するポリエステル樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂の前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、テレフタル酸のジメチルエステル、又は、それらの組み合わせであり、前記ジオール成分はエチレングリコールとジエチレングリコールからなり、
以下の要件(1) ~ (5) を満足し、ラベル用途に用いられることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1) 98℃の温水中にフィルムを10秒間浸漬させた時の温湯収縮率がフィルム主収縮方向で40%以上
(2) 70℃の温水中にフィルムを10秒浸漬させた時の主収縮方向の温湯収縮率と、上記98℃の主収縮方向の温湯収縮率の差が0%以上20%以下
(3)エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、ジエチレングリコール(DEG)成分の量が、フィルムを構成する全ポリエステル樹脂中の多価アルコール成分100mol%のうち10mol%以上25mol%以下
(4) 温度40℃、相対湿度85%の雰囲気下でフィルムを28日間経時させた後に、70℃の温水中にフィルムを10秒浸漬させた時の主収縮方向の温湯収縮率と、経時前の該温湯収縮率の差が0%以上5%%以下
(5)
未延伸フィルムのガラス転移温度が50℃以上60℃以下
【請求項2】
90℃熱風における収縮応力測定において、フィルム主収縮方向の最大収縮応力が3MPa以上20MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
温度40℃、相対湿度85%の雰囲気下でフィルムを28日間経時させた後のフィルム主収縮方向の自然収縮率が0.05%以上1.0%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
ヘイズ値が4%以上13%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムに由来するラベルを、包装対象物の少なくとも外周の一部に有することを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルム、及び包装体に関するものであり、詳しくは、飲料ボトルのラベル用途に好適で、長手方向に高い収縮率を有し、高温と低温の収縮率の差が小さいためにラベルとして使用した際にシワなどが発生しにくく、経時による低温での収縮率の低下が小さい熱収縮性ポリエステル系フィルム、およびラベルを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶やPETボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルム(所謂、熱収縮性フィルム)が広範に使用されるようになってきている。そのような熱収縮性フィルムの内、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない上、高温で焼却する必要があり、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
【0003】
また、通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、幅方向に大きく収縮させるものが広く利用されている。しかし、飲料ボトルのラベルフィルムとして用いる場合、フィルムを環状にしてボトルに装着した後に周方向に熱収縮させなければならないため、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムをラベルフィルムとして装着する際には、フィルムの幅方向が周方向となるように環状体を形成した上で、その環状体を所定の長さ毎に切断してボトルや弁当容器に手かぶせ等で装着しなければならない。したがって、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムからなるラベルフィルムを高速でボトルや弁当容器に装着するのは困難である。それゆえ、最近では、フィルムロールから直接、ボトルの周囲に巻き付けて装着することが可能な長手方向に熱収縮するフィルムが求められている。フィルム管状体を形成してシールするセンターシール工程や、裁断、手かぶせ等の加工が不要になり、高速で装着することも可能である。
【0004】
一方、従来の幅方向に熱収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムも、その収縮特性においてはさらなる改良が求められていた。特に、収縮時に、収縮斑やシワが発生して、収縮前のフィルムに印刷した文字や図柄が、PETボトル、ポリエチレンボトル、ガラス瓶等の容器に被覆収縮する際に、収縮後に歪むことがあり、この歪みを可及的に小さくしたいというユーザーサイドの要望があった。
【0005】
フィルムの低温の収縮性を向上させて収縮後の外観性を改良する方策は、過去にいくつか報告されている。例えば特許文献1においては、非晶質成分となりうる多価アルコール成分のモノマーとしてネオペンチルグリコール及び、又は1,4-シクロヘキサンジメタノールを用いることで低温での収縮性をもたせている。しかしながら、上記モノマーを使用した場合、経時による低温収縮率の低下が著しいことがわかっている。製膜後にフィルムを長期保管した場合、低温収縮性が失われるため、収縮仕上げ時にシワが発生しやすくなると考えられる。経時による低温収縮率の低下を抑制するためには、低温状態での保管などが必要となりコストがかかる。
【0006】
また、特許文献2においては、多価アルコール成分として1,4-ブタンジオールを用いることによりフィルムのガラス転移温度を低下させ、低温収縮性を向上させているが、1,4―ブタンジオールを使用することにより高温の収縮率が低下することがわかっており、収縮仕上りの観点では収縮不足となることが考えられ好ましくない。また、1,4―ブタンジオールを用いた場合においても経時による低温収縮率の低下が大きいことがわかっており好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-56156号公報
【文献】特開2003―82128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルム、及び包装体に関するものであり、詳しくは、飲料ボトルのラベル用途に好適で、主収縮方向に高い収縮率を有し、高温と低温の収縮率の差が小さいためにラベルとして使用した際にシワなどが発生しにくく、経時による低温での収縮率の低下が小さい熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 以下の要件(1) ~ (4) を満足し、主収縮方向が長手方向であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1) 98℃の温水中にフィルムを10秒間浸漬させた時の温湯収縮率がフィルム主収縮方向で40%以上
(2) 70℃の温水中にフィルムを10秒浸漬させた時のフィルム主収縮方向の収縮率と、上記98℃の主収縮方向の温湯収縮率の差が0%以上20%以下
(3)エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、ジエチレングリコール(DEG)成分の量が、フィルムを構成する全ポリエステル樹脂中の多価アルコール成分100mol%のうち10mol%以上25mol%以下
(4)温度40℃、相対湿度85%の雰囲気下でフィルムを28日間経時させた後に、70℃の温水中にフィルムを10秒浸漬させた時のフィルム主収縮方向の温湯収縮率と、経時前の該温湯収縮率の差が0%以上5%以下
2. フィルムのガラス転移温度が50℃以上65℃以下であることを特徴とする上記第1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
3.90℃熱風における収縮応力測定において、フィルム主収縮方向の最大収縮応力が3MPa以上20MPa以下であることを特徴とする上記第1又は第2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
4.温度40℃相対湿度85%の雰囲気下でフィルムを28日間経時させた後のフィルム主収縮方向の自然収縮率が0.05以上1.0%以下であることを特徴とする上記第1~第3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
5.ヘイズ値が4%以上13%以下であることを特徴とする上記第1~第4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
6.上記第1~第5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムに由来するラベルを、包装対象物の少なくとも外周の一部に有することを特徴とする包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記問題点を解決し、主収縮方向である長手方向に十分な収縮性を有すると共に、低温での収縮率と高温での収縮率の差が小さく、経時による低温での収縮率の低下が抑制された熱収縮性ポリエステル系フィルムの提供を可能とした。低温と高温での収縮率の差が小さいために、飲料ボトルなどに被せて収縮させる際に、急激な収縮が起こりにくく、収縮斑やシワの発生がきわめて少ない良好な仕上りを得ることを可能とした。また、経時させた時の低温の収縮率低下が小さいために、製膜後長期に保管したフィルムにおいてもその収縮特性が損なわれることがない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、以下の要件(1) ~(4) を満足し、主収縮方向が長手方向であることを特徴とするものである。
(1) 98℃の温水中にフィルムを10秒間浸漬させた時の温湯収縮率がフィルム主収縮方向で40%以上85%以下
(2) 70℃の温水中にフィルムを10秒浸漬させた時の主収縮方向の温湯収縮率と、上記98℃の主収縮方向の温湯収縮率の差が0%以上20%以下
(3)エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、 ジエチレングリコール(DEG)成分の量が、全ポリエステル樹脂中の多価アルコール成分100mol%のうち10mol%以上25mol%以下
(4) 温度40℃、相対湿度85%の雰囲気下でフィルムを28日間経時させた後に、70℃の温水
中にフィルムを10秒浸漬させた時の主収縮方向の温湯収縮率と、経時前の該温湯収縮率の差が0%以上5%%以下
【0012】
熱収縮性フィルムは通常、ロール等を用いて搬送し、延伸することにより得られる。このとき、フィルムの搬送方向を長手方向(縦方向)と称し、前記長手方向と直交する方向を幅方向(横方向)と称する。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、長手方向を主収縮方向とするものである。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを連続的に製造するための好ましい延伸方法として、縦延伸機のみ用いる縦一軸延伸もしくは、横延伸した後に縦延伸を行う二軸延伸があるが、二軸延伸の場合大掛かりな設備が必要となるため、縦一軸延伸を採用した。具体的には速度差がある加熱されたロールを用いてTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で長手方向に2倍から7倍の倍率で延伸する。この時、高い収縮性を持たせるため、また低温収縮性を持たせるためにフィルムの多価アルコール成分としてジエチレングリコール(DEG)を用いることが好ましい。
【0013】
熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、高い収縮性を得るために例えばエチレンテレフタレートからなるホモポリマー(PET)に、他の多価カルボン酸成分や他の多価アルコール成分を共重合して使用することが広く行われている。該共重合する成分として使用する多価アルコール成分として、例えばネオペンチルグリコールや1,4-シクロヘキサンジタノールが考えられ広く使用されるが、これらの成分を共重合したフィルムの場合、常温~40℃程度の温度雰囲気下での経時により70℃以下の低温域での収縮性が著しく低下することがわかっている。一方で本発明者らは、ジエチレングリコールを共重合した場合においては、そのような経時による低温域の収縮率低下が抑制されることを見出した。また、ジエチレングリコールを共重合した原料レジンを得る場合、ジエチレングリコールは常温で液体であるためネオペンチルグリコールなどの粉体原料で必須の溶融工程が不要となる。さらに、ネオペンチルグリコール比べて、重合活性が高い上に、生産性の低下に繋がる重合時の発泡が少ないというメリットもある。
【0014】
本発明のフィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするものである。ここで主たる構成成分とは、フィルムを構成する全ポリマー構成成分のうち50モル%以上がエチレンテレフタレートであることを意味している。エチレンテレフタレートを70モル%以上含有することがより好ましい。エチレンテレフタレートを主たる構成成分として用いることにより、優れた機械的強度と透明性を有することができる。
【0015】
ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETということがある)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0016】
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.45(dl/g)から0.8(dl/g)の範囲が好ましい。固有粘度が0.45(dl/g)よりも低いと、延伸により結晶化して収縮性が低下し好ましくない。また、0.8(dl/g)より大きいと濾圧上昇が大きくなり高精度濾過が困難となり、あまり好ましくない。)
【0017】
本発明のフィルムで使用するポリエステルを構成するテレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらのテレフタル酸以外のジカルボン酸成分の含有率は、多価カルボン酸成分100モル%のうち15モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、特に好ましくは4モル%以下である。
【0018】
脂肪族ジカルボン酸(例えばアジピン酸、セバシン酸、デカジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、高速装着時のフィルム腰が不十分である。
【0019】
また、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは必要な収縮性を達成しにくくなる。
【0020】
本発明のフィルムで使用するポリエステルを構成する多価アルコール成分100モル%のうちジエチレングリコールが、10モル%以上25モル%以下であることが必要である。ジエチレングリコールを共重合することによる効果の詳細については後述する。
【0021】
本発明で使用するポリエステルを構成するエチレングリコール及びジエチレングリコール以外の多価アルコール成分としては、1-3プロパンジオール、1-4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等が挙げられる。これらのエチレングリコール及びジエチレングリコール以外の多価アルコール成分の含有率は、多価アルコール成分100モル%のうち9モル%以下であることが好ましく、より好ましくは7モル%以下、さらに好ましくは4モル%以下、特に好ましくは0モル%である。
【0022】
炭素数8個以上のジオール(例えばオクタンジオール等)、又は3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメリトールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)は含有させないことが好ましい。これらのジオール、又は多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮を達成しにくくなる。
【0023】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、98℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの主収縮方向の熱収縮率(すなわち、98℃の温湯熱収縮率)が、40%以上であることが好ましい。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)・・式1
【0024】
98℃における主収縮方向の温湯熱収縮率が40%未満であると、飲料ラベル用途のフィルムとして使用する場合に、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルシワやタルミが生じてしまうので好ましくない。98℃の温湯収縮率は42%以上であるとより好ましく、45%以上であると特に好ましい。
【0025】
前記と同様の方法で測定した、70℃の主収縮方向の温湯収縮率と、上記98℃の主収縮方向の温湯収縮率の差が20%以下であることが好ましい。上記収縮率の差が20%以下であることにより、低温収縮性が得られ、飲料ボトルラベルなどに使用する際の収縮仕上げ時に急激な収縮を抑制でき、シワや収縮斑の発生を抑制できる。一方で、上記収縮率の差が20%以上であると、収縮仕上げ後にシワや収縮斑が発生しやすくなる。70℃の収縮率と98℃の収縮率の差は17%以下であるとより好ましく、15%以下が特に好ましい。
【0026】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは温度40℃、相対湿度85%の雰囲気下でフィルムを28日間経時させた後に、70℃の温水にフィルムを10秒浸漬させた時のフィルム主収縮方向の収縮率と、経時前の収縮率の差が0%以上5%以下であることが好ましい。上記収縮率の差が5%を上回ると、製膜したフィルムを長期間保管すると低温での収縮率が低下することとなり、ラベルなどとして収縮させる際にシワや収縮斑が発生しやすくなるため好ましくない。より好ましくは収縮率の差が4%以下であり、特に好ましくは3%以下である。収縮率差の下限は低ければ低いほど好ましいが、経時後に収縮率が増加することは考えにくいため、0%が下限と考えられる。
【0027】
本発明のフィルムは前述のようにエチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、多価アルコール成分100モル%のうちジエチレングリコールが、10モル%以上、25モル%以下である。通常、ポリエステル系熱収縮フィルムのガラス転移温度は75℃程度であるが、そのようなフィルムでは低温収縮性が得にくく、収縮時にシワや収縮斑が生じやすくなる。そこで本発明者は、ジエチレングリコールを共重合することにより、ガラス転移温度が低下することを見出した。ガラス転移温度が低下する理由は明らかではないが、ポリエチレンテレフタレート中にジエチレングリコールが共重合されることによりポリマー分子の規則性が崩れ、より低温でポリマー分子鎖が動きやすくなったのではないかと推測している。また、1,4-ブタンジオールなどを使用した場合と異なり、高温での高い収縮性を得ることができることもわかっている。さらに、経時性も良好であり、経時後の低温(70℃)収縮率の低下が小さいことも見出した。この要因についても明確ではないが、分子構造から推測するに、フィルムの収縮に関わる非晶成分において、ネオペンチルグリコールやシクロヘキサンジメタノールなどよりも、ジエチレングリコールは剛直性の高い非晶分子鎖を形成するのではないかと考えられる。そのため、延伸により配向した非晶分子鎖が経時により緩和されることが少なく、収縮率低下を招かないのではないかと推測している。
ジエチレングリコールが10モル%を下回ると、上記の低温収縮性が達成できないため好ましくない。また、25モル%を上回ると、樹脂の耐熱性が低下し溶融押出の際に異物の発生トラブルとなるため好ましくない。より好ましくは11モル%以上25モル%以下、さらに好ましくは12モル%以上23モル%以下であり、特に好ましくは15モル%以上20モル%以下である。
【0028】
本発明のフィルムのDSC測定で求められるガラス転移温度は50℃以上65℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が65℃以上であると、上記低温収縮性が得られず、収縮時にシワや収縮斑が生じやすくなる。一方、ガラス転移温度が50℃以下であると、例えば自動販売機などで加熱販売する際の加温器内でのラベル同士のブロッキングが発生しやすくなるため好ましくない。フィルムのガラス転移温度は53℃以上62℃以下がより好ましく、55℃以上60℃以下が特に好ましい。
【0029】
また、本発明のフィルムは90℃熱風における収縮応力測定において、長手方向の最大収縮応力が3MPa以上20MPa以下である。最大収縮が3MPa未満であると、フィルムをボトルなどに装着させ収縮させる際にボトルの形状に追従しにくくなり、シワなどの原因となる。最大収縮応力が20MPaを上回ると収縮する力が強すぎることによる被包装体の変形などを招く。好ましくは、3MPa以上10MPa以下であり、より好ましくは4MPa以上9MPa以下であり、特に好ましくは5MPa以上8MPa以下である。
【0030】
さらに、本発明のフィルムは温度40℃、相対湿度85%の雰囲気下でフィルムを28日間経時させた後のフィルム主収縮方向の自然収縮率が0.05%以上1.0%以下であることが好ましい。なお、自然収縮率は、下式2を用いて算出することができる。
自然収縮率={{エージング前の長さ-エージング後の長さ}/エージング前の長さ}×100(%) ・・式2
【0031】
自然収縮率が1.0%を超えると、ロール状に巻き取られたフィルムを保管した際に、巻き締まりが起こり、フィルムロールにシワが入りやすいので好ましくない。なお自然収縮率は小さいほど好ましいが、測定精度の面から0.05%程度が下限であると考えている。また、自然収縮率は0.9%以下であると好ましく、0.8%以下であると特に好ましい。
【0032】
加えて、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ヘイズ値が、4%以上13%以下であることが好ましい。ヘイズ値が13%を超えると、透明性が不良となり、ラベル作成の際に見栄えが悪くなるので好ましくない。ヘイズ値は小さいほど好ましいが、実用上必要なスベリ性を付与するためにフィルムに所定量の滑剤を添加せざるを得ないこと等を考慮すると4%程度が下限になる。なおヘイズ値は、11%以下であるとより好ましく、9%以下であると特に好ましい。
【0033】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0034】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、フィルムの作業性(滑り性)を良好にする滑剤としての微粒子を添加することが好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができるが、例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等、有機系微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05~3.0μmの範囲内(コールターカウンタで測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0035】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0036】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施すことも可能である
【0037】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、飲料ボトルなどのラベル用途としての熱収縮性フィルムとして5~100μmが好ましく、10~95μmがより好ましい。
【0038】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、その製造方法について何ら制限される物ではないが、例えば、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す方法により、長手方向に一軸延伸することによって得ることができる。
【0039】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200~300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0040】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
【0041】
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で長手方向に延伸し、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい延伸について説明する。
【0042】
通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮させたい方向に未延伸フィルムを延伸することによって製造される。本発明では主収縮方向である長手方向に一軸延伸する。未延伸フィルムを複数のロール群が連続的に配置した縦延伸機に導き、予熱ロール上(低速ロール)でフィルムをTg+5℃以上+40℃以下の温度まで加熱した後、予熱ロールの下流に予熱ロールよりも速度の速い低温ロール(高速ロール)を設けて、低速ロールと高速ロールの速度差によってフィルムを長手方向に延伸する。この時の延伸倍率は特に限定は無いが、2倍以上7倍以下が好ましい。延伸倍率が2倍未満であると、物質収支的に高い収縮率が得られにくい、また延伸倍率が7倍を上回ると製膜時に破断しやすくなり好ましくない。大掛かりな設備が必要となるため幅方向の延伸はしない方がよい。また、高い低温収縮性を有させるため延伸後の熱処理はしない方がよい。
【0043】
またフィルムを延伸前および延伸中に加熱する方法は特に限定されないが、上述のロール上で加熱する方法以外にも、低速ロールと高速ロールの間で赤外ヒーターや集光赤外ヒーターを用いて加熱してもよい。
【0044】
また長手方向の延伸温度がTg+5℃未満であると、延伸時に破断が生じやすくなり、好ましくない。またTg+40℃より高いと、フィルムの熱結晶化が進んで収縮率が低下するので好ましくない。より好ましくはTg+8℃以上Tg+37℃以下であり、更に好ましくはTg+11℃以上Tg+34℃以下である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。実施例および比較例で使用した原料の組成、実施例および比較例におけるフィルムの製造条件、実施例および比較例におけるフィルムの評価結果を、それぞれ表1、表2に示す。
以下、実施例1は参考例1に、実施例2は参考例2に、実施例3は参考例3に、それぞれ読み替える。
【0046】
【0047】
【0048】
また、フィルムの評価方法は下記の通りである。
[Tg(ガラス転移点)]
示差走査熱量分析装置(セイコー電子工業株式会社製、DSC220)を用いて、未延伸フィルム5mgをサンプルパンに入れ、パンのふたをし、窒素ガス雰囲気下で-40℃から120℃に10℃/分の昇温速度で昇温して測定した。Tg(℃)はJIS-K7121-1987に基づいて求めた。
【0049】
[固有粘度 (IV)]
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/gである。
【0050】
[熱収縮率(温湯熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦(長手方向)および横(幅方向)方向の寸法を測定し、前記式1にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。本発明における実施例および比較例のフィルムは、いずれも縦方向を主収縮方向とするフィルムであり、表2にはフィルムの縦方向の熱収縮率を示した。また、98℃の縦方向の収縮率と、70℃の縦方向の収縮率の差を「収縮率の差」とした。
【0051】
[経時収縮率変化]
得られたフィルムを40℃×85%RHの雰囲気下で28日間放置(経時)した後、70℃の温水中において、上記温湯収縮率を測定し、長手方向の70℃温湯収縮率を求め、経時前の長手方向の70℃温湯収縮率との差を求め、「経時前後の収縮率差」とした。
【0052】
[収縮応力]
熱収縮性フィルムから主収縮方向の長さが200mm、幅20mmのサンプルを切り出し、東洋ボールドウィン社製(現社名オリエンテック)の加熱炉付き強伸度測定機(テシロン(オリエンテック社の登録商標))を用いて測定した。加熱炉は予め90℃に加熱しておき、チャック間距離は100mmとした。加熱炉の送風を一旦止めて加熱炉の扉を開け、サンプルをチャックに取付け、その後速やかに加熱炉の扉を閉めて、送風を再開した。収縮応力を30秒以上測定し、測定中の最大値を最大収縮応力(MPa)とした。
【0053】
[自然収縮率]
得られたフィルムを、主収縮方向×直交方向=200mm×30mmのサイズに切り取り、40℃×85%RHの雰囲気下で28日間放置(経時)した後、フィルムの長手方向(主収縮方向)における収縮量を測定し、下式2によって自然収縮率を算出した。
自然収縮率={{エージング前の長さ-エージング後の長さ}/エージング前の長さ}×100(%) ・・式2
[ヘイズ]
JIS-K-7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0054】
[ラベルの収縮仕上げ評価(経時前と後)]
熱収縮性フィルムに、予め東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷を施した。印刷したフィルムの両端部をホットメルト接着剤で貼り合わせることにより、円筒状のラベル(熱収縮性フィルムの主収縮方向を周方向としており、外周長が装着するボトルの外周長の1.05倍である円筒状のラベル)を作成した。しかる後、その円筒状のラベルを、500mlのPETボトル(胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)に被せて、Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式;SH-1500-L)を用い、通過時間2.0秒、ゾーン温度80℃で熱収縮させることにより、ラベルを装着した。なお、装着の際には、ネック部においては、直径50mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。収縮後の仕上がり性の評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
◎:仕上がり性 最良 シワ 0個
○:仕上がり性 良 シワ 1~2個
×:仕上がり性 不良 シワ3個以上 もしくは 収縮不足
この収縮仕上げ評価を、経時前のフィルムと、上記経時収縮率変化評価と同条件(40℃×85%RHの雰囲気下で28日間)で経時させた後のフィルムで行った。
【0055】
また、実施例および比較例に用いたポリエステルは以下の通りである。
【0056】
合成例A
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件のもとで重縮合反応を行い、固有粘度0.62dl/gのポリエステルAを得た。組成を表1に示す。
合成例B~D
合成例Aと同様の方法により、表1に示すポリエステルB~Dを得た。ポリエステルBおよびDの製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266;平均粒径1.5μm)をポリエステルに対して7200ppmの割合で添加した。なお、表中、DEGはジエチレングリコール、NPGはネオペンチルグリコール、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノール、BDは1,4-ブタンジオールである。各ポリエステルの固有粘度は、それぞれ、B:0.62dl/g,C:0.65dl/g,D:0.65dl/g、E:0.74dl/g、F:0.64dl/g、G:1.24dl/gであった。なお、各ポリエステルは、適宜チップ状にした。
【0057】
〔実施例1〕
上記したポリエステルA、ポリエステルCおよびポリエステルDを重量比82:12:6で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが80μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは64℃であった。しかる後、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上で82℃(Tg+18℃)になるまで予備加熱した後に、ロールの速度差を用いて2倍に延伸した。しかる後、縦延伸されたフィルムを表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。そして、冷却後のフィルムの両縁部を裁断除去することによって、約40μmの一軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製膜して熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールを得た。そして、得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。評価結果を表2に示す。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
【0058】
〔実施例2〕
長手方向の延伸倍率を3倍とした以外は実施例1と同様とした。延伸後のフィルムの厚さは27μmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
【0059】
〔実施例3〕
長手方向の延伸倍率を4倍とした以外は実施例1と同様とした。延伸後のフィルムの厚さは20μmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
【0060】
〔実施例4〕
上記ポリエステルの重量比をポリエステルA:ポリエステルC:ポリエステルD=73:21:6にし、予熱ロール上で78℃になるまで予備加熱した以外は実施例1と同様にした。この時、未延伸フィルムのTgは60℃であった。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
〔実施例5〕
長手方向の延伸倍率を3倍とした以外は実施例4と同様とした。延伸後のフィルムの厚さは27μmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
【0061】
〔実施例6〕
長手方向の延伸倍率を4倍とした以外は実施例4と同様とした。延伸後のフィルムの厚さは20μmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
【0062】
〔実施例7〕
上記ポリエステルの重量比をポリエステルA、ポリエステルCおよびポリエステルD=60:34:6にし、予熱ロール上で73℃になるまで予備加熱した以外は実施例1と同様にした。この時、未延伸フィルムのTgは55℃であった。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
〔実施例8〕
長手方向の延伸倍率を3倍とした以外は実施例7と同様とした。延伸後のフィルムの厚さは27μmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
【0063】
〔実施例9〕
長手方向の延伸倍率を4倍とした以外は実施例7と同様とした。延伸後のフィルムの厚さは20μmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、低温収縮性が良好なため、収縮仕上がりも良好であり、経時による70℃収縮率の低下が小さいフィルムであった。
【0064】
〔比較例1〕
上記ポリエステルの重量比をポリエステルA:ポリエステルC:ポリエステルD=90:4:6にし、予熱ロール上で87℃になるまで予備加熱した以外は実施例2と同様にした。この時、未延伸フィルムのTgは69℃であった。評価の結果、高温部では十分な収縮性は有しているものの、低温の収縮性が低いために、経時前と後ともに収縮時にシワが発生し、良好な仕上がり性が得られなかった。
【0065】
〔比較例2〕
上記ポリエステルの重量比をポリエステルA:ポリエステルB:ポリエステルE=61:6:33にし、予熱ロール上で93℃になるまで予備加熱した以外は実施例2と同様にした。この時、未延伸フィルムのTgは75℃であった。評価の結果、十分な収縮性を有しており収縮仕上がり性も良好なものの、経時後は低温収縮性が低下してしまうために、収縮時にシワが発生し、良好な仕上がり性が得られなかった。さらに経時による自然収縮率も大きかった。
【0066】
〔比較例3〕
上記ポリエステルの重量比をポリエステルA、ポリエステルBおよびポリエステルF=54:6:40にし、予熱ロール上で93℃になるまで予備加熱した以外は実施例2と同様にした。この時、未延伸フィルムのTgは75℃であった。評価の結果、十分な収縮性を有しており収縮仕上がり性も良好なものの、経時後は低温収縮性が低下してしまうために、収縮時にシワが発生し、良好な仕上がり性が得られなかった。さらに経時による自然収縮率も大きかった。
【0067】
〔比較例4〕
上記ポリエステルの重量比をポリエステルA:ポリエステルB:ポリエステルG=74:6:22にし、予熱ロール上で86℃になるまで予備加熱した以外は実施例2と同様にした。この時、未延伸フィルムのTgは68℃であった。評価の結果、十分な収縮性が得られず、収縮不足となり、経時前と後ともに良好な仕上がり性が得られなかった。さらに、経時による自然収縮率も大きいフィルムであった。
【0068】
〔比較例5〕
上記ポリエステルの重量比をポリエステルA:ポリエステルB:ポリエステルG=64:6:30にし、予熱ロール上で82℃になるまで予備加熱した以外は実施例2と同様にした。この時、未延伸フィルムのTgは64℃であった。評価の結果、十分な収縮性が得られず、収縮不足となり、経時前と後ともに良好な仕上がり性が得られなかった。さらに、経時による自然収縮率も大きいフィルムであった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記の如く優れた特性を有しているので、ボトルのラベル用途などにおいて好適に用いることができ、同フィルムが用いられた包装体は美麗な外観を有するものである。また経時による収縮率変化が小さく、フィルムロールを長期に保管したとしても、その優れた特性が失われることがない。