(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】フック位置算出装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B66C13/46 B
B66C13/46 C
(21)【出願番号】P 2022042148
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 仁士
(72)【発明者】
【氏名】寺内 謙一
(72)【発明者】
【氏名】笹井 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 悦一
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-146385(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208435(WO,A1)
【文献】特開平07-215680(JP,A)
【文献】特開2011-063346(JP,A)
【文献】特開2020-200173(JP,A)
【文献】特開2018-020858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの本体部である機械本体と、
前記機械本体に起伏可能に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントから吊り下げられる巻上ロープと、
前記アタッチメントから前記巻上ロープを介して吊り下げられ、吊荷を取り付け可能に構成されるフックと、
前記巻上ロープの巻き取りおよび繰り出しを行う巻上ウインチと、
前記アタッチメントの起伏角度を検出するアタッチメント角度センサと、
前記巻上ロープに作用する吊荷重を検出する吊荷重センサと、
前記巻上ウインチによる前記巻上ロープの巻上量を検出する巻上量センサと、
前記アタッチメントの複数の起伏角度ごと、かつ、吊荷重の複数の大きさごとに、揚程誤差を記憶する記憶部と、
演算部と、
を備え、
前記揚程誤差は、前記アタッチメントの起伏角度、および前記巻上ロープの巻上量に基づいて算出される前記フックの揚程である揚程計算値と、実際の前記フックの揚程と、の差であり、
前記演算部は、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記吊荷重センサに検出された吊荷重と、に対応する前記揚程誤差を前記記憶部から読み込み、
前記演算部は、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記巻上量センサに検出された巻上量と、に基づいて算出した前記揚程計算値を、前記記憶部から読み込んだ前記揚程誤差に基づいて補正
し、
前記演算部は、前記記憶部から読み込んだ前記揚程誤差と、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記アタッチメントの長さと、に基づいて、前記アタッチメントの基端部から前記フックまでの水平距離を算出する、
フック位置算出装置。
【請求項2】
クレーンの本体部である機械本体と、
前記機械本体に起伏可能に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントから吊り下げられる巻上ロープと、
前記アタッチメントから前記巻上ロープを介して吊り下げられ、吊荷を取り付け可能に構成されるフックと、
前記巻上ロープの巻き取りおよび繰り出しを行う巻上ウインチと、
前記アタッチメントの起伏角度を検出するアタッチメント角度センサと、
前記巻上ロープに作用する吊荷重を検出する吊荷重センサと、
前記巻上ウインチによる前記巻上ロープの巻上量を検出する巻上量センサと、
前記アタッチメントの複数の起伏角度ごと、かつ、吊荷重の複数の大きさごとに、揚程誤差を記憶する記憶部と、
演算部と、
を備え、
前記揚程誤差は、前記アタッチメントの起伏角度、および前記巻上ロープの巻上量に基づいて算出される前記フックの揚程である揚程計算値と、実際の前記フックの揚程と、の差であ
って、前記アタッチメントのたわみによって生じる差を含み、
前記演算部は、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記吊荷重センサに検出された吊荷重と、に対応する前記揚程誤差を前記記憶部から読み込み、
前記演算部は、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記巻上量センサに検出された巻上量と、に基づいて算出した前記揚程計算値を、前記記憶部から読み込んだ前記揚程誤差に基づいて補正する、
フック位置算出装置。
【請求項3】
クレーンの本体部である機械本体と、
前記機械本体に起伏可能に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントから吊り下げられる巻上ロープと、
前記アタッチメントから前記巻上ロープを介して吊り下げられ、吊荷を取り付け可能に構成されるフックと、
前記巻上ロープの巻き取りおよび繰り出しを行う巻上ウインチと、
前記アタッチメントの起伏角度を検出するアタッチメント角度センサと、
前記巻上ロープに作用する吊荷重を検出する吊荷重センサと、
前記巻上ウインチによる前記巻上ロープの巻上量を検出する巻上量センサと、
前記アタッチメントの複数の起伏角度ごと、かつ、吊荷重の複数の大きさごと、
かつ、前記巻上ロープの複数の巻上量ごとに、揚程誤差を記憶する記憶部と、
演算部と、
を備え、
前記揚程誤差は、前記アタッチメントの起伏角度、および前記巻上ロープの巻上量に基づいて算出される前記フックの揚程である揚程計算値と、実際の前記フックの揚程と、の差であり、
前記演算部は、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記吊荷重センサに検出された吊荷重と、
前記巻上量センサに検出された巻上量と、に対応する前記揚程誤差を前記記憶部から読み込み、
前記演算部は、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記巻上量センサに検出された巻上量と、に基づいて算出した前記揚程計算値を、前記記憶部から読み込んだ前記揚程誤差に基づいて補正する、
フック位置算出装置。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項に記載のフック位置算出装置であって、
前記アタッチメントの構成を取得するアタッチメント構成取得部を備え、
前記記憶部は、前記アタッチメントの複数の構成ごとに前記揚程誤差を記憶し、
前記演算部が前記記憶部から読み込む前記揚程誤差は、前記アタッチメント構成取得部に取得された前記アタッチメントの構成と、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記吊荷重センサに検出された吊荷重と、に対応する前記揚程誤差である、
フック位置算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンのフックの位置を算出するフック位置算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、フックの位置に関する情報(同文献では吊荷の揚程)を求める技術が記載されている。同文献に記載の技術では、巻上ロープの移動量およびアタッチメントの起伏角度から、フックの位置に関する情報が算出される(同文献の要約、明細書の[0022]および[0029]などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アタッチメントの起伏角度、および巻上ロープに作用する吊荷重などによって、アタッチメントのたわみ量が変化し、フックの位置が変化する。また、巻上ロープに作用する吊荷重などによって、巻上ロープのたるみ(伸び)量が変化し、フックの位置が変化する。同文献に記載の技術では、アタッチメントのたわみ、および巻上ロープのたるみによる、フックの位置の変化は考慮されていない。そのため、フックの位置に関する情報を精度良く算出することができない。
【0005】
そこで、本発明は、フックの位置に関する情報を精度良く算出することができるフック位置算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フック位置算出装置は、機械本体と、アタッチメントと、巻上ロープと、フックと、巻上ウインチと、アタッチメント角度センサと、吊荷重センサと、巻上量センサと、記憶部と、演算部と、を備える。前記機械本体は、クレーンの本体部である。前記アタッチメントは、前記機械本体に起伏可能に取り付けられる。前記巻上ロープは、前記アタッチメントから吊り下げられる。前記フックは、前記アタッチメントから前記巻上ロープを介して吊り下げられ、吊荷を取り付け可能に構成される。前記巻上ウインチは、前記巻上ロープの巻き取りおよび繰り出しを行う。前記アタッチメント角度センサは、前記アタッチメントの起伏角度を検出する。前記吊荷重センサは、前記巻上ロープに作用する吊荷重を検出する。前記巻上量センサは、前記巻上ウインチによる前記巻上ロープの巻上量を検出する。前記記憶部は、前記アタッチメントの複数の起伏角度ごと、かつ、吊荷重の複数の大きさごとに、揚程誤差を記憶する。前記揚程誤差は、前記アタッチメントの起伏角度、および前記巻上ロープの巻上量に基づいて算出される前記フックの揚程である揚程計算値と、実際の前記フックの揚程と、の差である。前記演算部は、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記吊荷重センサに検出された吊荷重と、に対応する前記揚程誤差を前記記憶部から読み込む。前記演算部は、前記アタッチメント角度センサに検出された起伏角度と、前記巻上量センサに検出された巻上量と、に基づいて算出した前記揚程計算値を、前記記憶部から読み込んだ前記揚程誤差に基づいて補正する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、フックの位置に関する情報を精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】クレーン1(フック位置算出装置)を横から見た図である。
【
図2】
図1に示すフック位置算出装置のブロック図である。
【
図3】
図1に示す揚程誤差ΔLの取得の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示す記憶部51に記憶される情報を示す図である。
【
図5】
図1に示す起伏角度θと揚程誤差ΔLとの関係を示すグラフである。
【
図6】
図1に示す揚程誤差ΔLの読み込みおよび揚程計算値Lcの補正の処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示すクレーン1での作業半径Rなどの計算の説明図である。
【
図8】
図1に示すクレーン1がジブ115を備える場合の
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図8を参照して、クレーン1(フック位置算出装置)について説明する。
【0010】
クレーン1は、
図1に示すように、アタッチメント14を用いて作業を行う機械である。クレーン1は、例えば建設作業を行う建設機械である。クレーン1は、機械本体11と、アタッチメント14と、ブーム起伏装置17と、フック巻上装置19と、を備える。クレーン1は、
図2に示すように、アタッチメント構成取得部31(
図2ではATT構成取得部)と、吊荷重センサ33と、アタッチメント角度センサ35(
図2ではATT角度センサ)と、巻上量センサ37と、を備える。クレーン1は、記憶部51と、演算部53と、表示部55と、を備える。
【0011】
機械本体11は、
図1に示すように、クレーン1の本体部分である。機械本体11は、下部走行体11aと、上部旋回体11bと、を備える。下部走行体11aは、クレーン1を走行させる。下部走行体11aは、クローラを備えてもよく、ホイールを備えてもよい。クレーン1は、クローラクレーンでもよく、ホイールクレーンでもよい。上部旋回体11bは、下部走行体11aに旋回可能に搭載される。
【0012】
アタッチメント14は、上部旋回体11bに取り付けられる。アタッチメント14は、巻上ロープ19aおよびフック19bを介して吊荷21を吊り上げる部材である。アタッチメント14は、ブーム15を備える。ブーム15は、上部旋回体11bに起伏可能に取り付けられる部材(起伏部材)である。例えば、ブーム15は、ラチス構造を有するラチスブームでもよく、伸縮可能な伸縮ブーム(図示なし)でもよい。アタッチメント14は、ジブ115(
図8参照)を備えてもよい(後述)。
【0013】
ブーム起伏装置17は、上部旋回体11bに対してブーム15を起伏させる装置である。ブーム起伏装置17は、ガントリ17aと、ブームガイライン17bと、ブーム起伏ロープ17cと、ブーム起伏ウインチ17dと、を備える。ガントリ17aは、コンプレッションメンバ17a1と、テンションメンバ17a2と、を備える。コンプレッションメンバ17a1は、上部旋回体11bに取り付けられる。テンションメンバ17a2は、コンプレッションメンバ17a1の先端部(上部旋回体11bに取り付けられる側とは反対側の端部)と上部旋回体11bの後端部とに接続される。ブームガイライン17bおよびブーム起伏ロープ17cは、コンプレッションメンバ17a1の先端部とブーム15の先端部(上部旋回体11bに取り付けられる側とは反対側の端部)とに接続される。ブーム起伏ウインチ17dは、例えば上部旋回体11bに搭載される。ブーム起伏ウインチ17dがブーム起伏ロープ17cを巻き取りおよび繰り出しすると、上部旋回体11bに対してブーム15が起伏する。なお、ガントリ17aに代えて、上部旋回体11bに起伏可能に取り付けられるマストが設けられてもよい。マストが設けられる場合、マストが上部旋回体11bに対して起伏する結果、ブーム15が上部旋回体11bに対して起伏する。
【0014】
フック巻上装置19は、フック19bを巻上および巻下する装置である。フック巻上装置19は、巻上ロープ19aと、フック19bと、巻上ウインチ19cと、を備える。巻上ロープ19aは、アタッチメント14(例えばブーム15の先端部)から吊り下げられる。フック19bは、アタッチメント14(例えばブーム15の先端部)から巻上ロープ19aを介して吊り下げられる。フック19bは、吊荷21を取り付け可能に構成される。巻上ウインチ19cは、上部旋回体11bまたはブーム15に搭載されるウインチである。巻上ウインチ19cが、巻上ロープ19aを巻き取りや繰り出しすると、フック19bが巻き上げや巻き下げされる。
【0015】
アタッチメント構成取得部31(
図2参照)は、アタッチメント14の構成(さらに詳しくはアタッチメント14の構成に関する情報)を取得する。例えば、アタッチメント構成取得部31が取得する情報は、ブーム15の長さ、および後述するジブ115(
図8参照)の長さおよび有無を含む。アタッチメント構成取得部31は、作業者が手動で入力したアタッチメント14の構成に関する情報を取得してもよい。アタッチメント構成取得部31は、アタッチメント14の構成に関する情報をセンサなどにより自動的に取得してもよい。
【0016】
吊荷重センサ33(
図2参照)は、巻上ロープ19aに作用する吊荷重Fを検出する。例えば、吊荷重センサ33は、巻上ロープ19aが掛けられるシーブ(図示なし)に作用する荷重を検出することで、吊荷重Fを検出してもよい。吊荷重センサ33は、巻上ウインチ19cに作用する荷重を検出することで、吊荷重Fを検出してもよい。吊荷重センサ33は、例えばロードセルなどを含んでもよい。
【0017】
アタッチメント角度センサ35(
図2参照)は、アタッチメント14の起伏角度θを検出する。例えばアタッチメント角度センサ35は、ブーム15の起伏角度θを検出するブーム角度センサを含む。アタッチメント14がジブ115(
図8参照)を有する場合は、アタッチメント角度センサ35は、ジブ115の起伏角度φを検出するジブ角度センサを含んでもよい。ここでは、アタッチメント角度センサ35がブーム角度センサである場合について説明する。
【0018】
このアタッチメント角度センサ35に検出される起伏角度θは、概ね、水平方向と、ブーム15の中心軸が延びる方向と、がなす角度である。ブーム15のたわみにより、ブーム15の中心軸は、曲線状となる。そのため、アタッチメント角度センサ35の位置などによって、アタッチメント角度センサ35に検出される起伏角度θが変わる。例えば、アタッチメント角度センサ35は、上部旋回体11bに対するブーム15の回転角度を検出することで、起伏角度θを検出してもよい。アタッチメント角度センサ35は、水平面に対するブーム15の傾斜角度を検出することで、起伏角度θを検出してもよい。アタッチメント角度センサ35は、1つのみ設けられてもよい。例えば、アタッチメント角度センサ35は、ブーム15の基端部(上部旋回体11bに取り付けられる側の端部)に設けられてもよい。アタッチメント角度センサ35は、複数設けられてもよい。例えば、アタッチメント角度センサ35は、ブーム15の基端部および先端部に設けられてもよい。この場合、例えば、アタッチメント角度センサ35は、複数の検出値の平均値に基づいて、ブーム15の起伏角度θを算出してもよい。
【0019】
巻上量センサ37(
図2参照)は、巻上ウインチ19cによる巻上ロープ19aの巻上量(巻き取り、繰り出しの量)を検出する。例えば、巻上量センサ37は、巻上ウインチ19cの回転数を検出することで、巻上量を検出してもよい。例えば、巻上量センサ37は、巻上ロープ19aに接触させたローラの回転を検出することで、巻上ロープ19aの移動量を検出し、巻上量を検出してもよい。例えば、巻上量センサ37は、巻上ロープ19aの画像に基づいて巻上量を検出(例えば推定)してもよい。この場合、例えば、巻上量センサ37は、カメラと、画像認識部と、を備えてもよい。例えば、カメラは、巻上ウインチ19cの胴部に巻かれている巻上ロープ19aの状態を撮影する。例えば、カメラは、巻上ロープ19aの繰り出し位置や、胴部に巻かれている巻上ロープ19aの大きさを画像認識部が認識できるような画像を撮影する。例えば、画像認識部は、AI(Artificial Intelligence)により、カメラに撮影された画像から巻上量を推定する。具体的には例えば、画像認識部は、カメラに撮影された画像から、巻上ウインチ19cの胴部の何層目の何列目に、巻上ロープ19aの繰り出し位置があるかを認識してもよい(この認識ができるように画像認識部が予め学習する)。また、画像認識部は、巻上ロープ19aの繰り出し位置に基づいて、巻上ウインチ19cからの巻上ロープ19aの繰り出し量、または、巻上ウインチ19cへの巻上ロープ19aの巻き取り量を認識してもよい(この認識ができるように画像認識部が予め学習する)。そして、巻上量センサ37は、画像認識部が認識した巻上ロープ19aの状態に基づいて、巻上ロープ19aの巻上量を推定してもよい(巻上量の推定は、巻上量の検出に含まれる)。
【0020】
記憶部51(
図2参照)は、揚程誤差ΔLを記憶する(後述)。
【0021】
演算部53は、
図2に示すように、信号の入出力、および演算(処理)などを行う。例えば、演算部53には、アタッチメント構成取得部31、および各センサ(アタッチメント角度センサ35など)から情報が入力される。演算部53には、記憶部51から揚程誤差ΔL(
図1参照)に関する情報が入力されてもよい。演算部53は、記憶部51に情報を記憶させてもよい。演算部53は、表示部55に表示を行わせてもよい。演算部53は、
図1に示す揚程L(後述)の算出、および作業半径R(後述)の算出を行う。演算部53(
図2参照)は、クレーン1を作動させるための信号をアクチュエータ(例えばブーム起伏ウインチ17dなど)に出力してもよい。演算部53は、クレーン1の自動運転制御を行ってもよい。演算部53は、フック19bを移動可能な領域を決定(例えば制限)する制御などを行ってもよい。
【0022】
表示部55(
図2参照)は、情報の表示を行う。表示部55は、揚程Lを表示してもよい。表示部55は、作業半径Rを表示してもよい。
【0023】
(作動)
図1に示すクレーン1は、次のように作動するように構成される。クレーン1でクレーン作業が行われる前に(事前に)、揚程誤差ΔLの取得(事前取得)が行われる。そして、クレーン1でクレーン作業が行われる時に、事前取得された揚程誤差ΔLに基づいて、揚程計算値Lcが補正される(下記の「(揚程誤差ΔLの読み込みおよび揚程計算値Lcの補正)」の項目を参照)。
【0024】
(揚程誤差ΔLの取得)
クレーン1では、記憶部51(
図2参照)に揚程誤差ΔLが記憶される。揚程誤差ΔLは、揚程Lの計算値である揚程計算値Lc(
図3のステップS22参照、以下の揚程計算値Lcについて同様)と、実際の揚程Lと、の差である。揚程Lは、フック19bの高さを表す値である。例えば、揚程Lは、基準となる面から、フック19bの特定部位(例えば上端部、下端部など)までの高さでもよい。上記「基準となる面」は、下部走行体11aの底面でもよく、下部走行体11aの底面よりも上の面でも下の面でもよく、地面でもよい。
【0025】
揚程計算値Lcは、アタッチメント14(例えばブーム15)の起伏角度θと、巻上ロープ19aの巻上量と、に基づいて算出される揚程Lである。例えば、揚程Lをリセットするボタン(図示なし)などが押されたときのクレーン1の状態が「基準状態」とされる。このときの揚程Lが、揚程基準値Ls(
図3のステップS14参照、以下の揚程基準値Lsについて同様)とされる。揚程基準値Lsは、例えばゼロなどに設定されてもよい。基準状態から、ブーム15の起伏角度θが変化させられると、演算部53は、起伏角度θの変化量に基づいて、起伏角度θが変化した後の揚程Lを算出する。また、基準状態から、巻上ロープ19aの巻上量が変化させられると、演算部53は、巻上量の変化量に基づいて、巻上量の変化後の揚程Lを算出する。これらのように、ブーム15の起伏角度θの基準状態からの変化量、および巻上ロープ19aの巻上量の基準状態からの変化量に基づいて算出される揚程Lが、揚程計算値Lcである。
【0026】
揚程計算値Lcには、実際の揚程Lに対する誤差が生じる。この誤差の詳細は、例えば次の通りである。[例A1]アタッチメント14(ここではブーム15)のたわみによって、揚程計算値Lcと実際の揚程Lとに誤差が生じる。ブーム15のたわみ量は、吊荷重Fおよびブーム15の起伏角度θによって変わる。そのため、吊荷重Fおよび起伏角度θに応じて、この誤差が変わる。
【0027】
[例A2]巻上ロープ19aのたるみによって、揚程計算値Lcと実際の揚程Lとに誤差が生じる。[例A2-1]巻上ロープ19aのたるみ量は、吊荷重Fによって変わる。そのため、吊荷重Fに応じて、この誤差が変わる。[例A2-2]巻上ロープ19aのたるみ量は、巻上ロープ19aの巻上量によって変わる。具体的には、巻上ウインチ19cからの巻上ロープ19aの繰り出し量が少なければ巻上ロープ19aの伸びの影響(たるみ量)は小さく、巻上ロープ19aの繰り出し量が多ければ、その分、巻上ロープ19aの伸びの影響が大きくなる。そのため、巻上ロープ19aの巻上量に応じて、揚程計算値Lcと実際の揚程Lとの誤差が変わる。
【0028】
巻上ロープ19aのたるみ量は、上記以外の条件(吊荷重Fおよび巻上ロープ19aの巻上量以外の条件)によっても変わる。例えば、巻上ロープ19aのたるみ量は、巻上ロープ19aが掛けられるシーブの影響によって変わる。具体的には例えば、巻上ロープ19aのたるみ量は、巻上ロープ19aが掛けられるシーブのシーブ効率による巻上ウインチ19cの引張力(引張力=吊荷重F/シーブ効率)の大きさによって変わる。また、例えば、巻上ロープ19aのたるみ量は、巻上ロープ19aが掛けられるシーブの量(個数)によって変わる。さらに詳しくは、巻上ロープ19aが掛けられるシーブが多いと、巻上ロープ19aがたるみ、巻上ウインチ19cが繰り出した巻上ロープ19aの量に対して、フック19bの巻き下げ量が小さくなる(巻上ウインチ19cが繰り出した量がそのまま伝わらない)。また、例えば、巻上ロープ19aのたるみ量は、ロープの種類(材質、太さなど)によって変わる。また、例えば、巻上ロープ19aのたるみ量は、巻上ロープ19aの経年変化による局所伸びの影響によって変わる。これらの影響(シーブの影響、ロープの種類、経年変化)を受けて巻上ロープ19aがたるんだ状態で(これらの影響を考慮した状態で)、揚程誤差ΔLが取得される。
【0029】
揚程誤差ΔLは、ブーム15のたわみによって生じる誤差(上記[例A1])と、巻上ロープ19aのたるみによって生じる誤差(上記[例A2])と、の和である。なお、上記[例A1]および[例A2-1]に比べ、上記[例A2-2]による誤差は小さいので、上記[例A2-2]による誤差は考慮されなくてもよい。
【0030】
揚程誤差ΔLは、記憶部51(
図2参照)に、例えば次のように記憶される。[例B1]ブーム15の複数の(様々な)起伏角度θごと、かつ、吊荷重Fの複数の(様々な)大きさごとに、揚程誤差ΔLが記憶部51に記憶される。具体的には例えば、
図4に示すように、吊荷重FがF1のときの様々な起伏角度θ(θ1、θ2・・・θn)ごとに、揚程誤差ΔLが記憶部51(
図2参照)に記憶される。また、吊荷重FがF1とは異なるF2のときの様々な起伏角度θ(θ1、θ2・・・θn)ごとに、揚程誤差ΔLが記憶部51に記憶される。同様に、様々な吊荷重Fのそれぞれについて、様々な起伏角度θでの揚程誤差ΔLが記憶部51に記憶される。
【0031】
[例B2]
図1に示すアタッチメント14の複数の(様々な)構成ごとに、揚程誤差ΔLが記憶部51(
図2参照)に記憶されることが好ましい。さらに詳しくは、様々なブーム15の長さ、様々なジブ115(
図8参照)の長さや有無ごとに、揚程誤差ΔLが記憶部51に記憶されることが好ましい。具体的には例えば、
図4に示すように、アタッチメント14(
図1参照)の構成が第1の構成のときの、様々な吊荷重Fのそれぞれについて、様々な起伏角度θでの揚程誤差ΔLが、記憶部51(
図2参照)に記憶される。また、アタッチメント14の構成が、上記の第1の構成とは異なる第2の構成のときの、様々な吊荷重Fのそれぞれについて、様々な起伏角度θでの揚程誤差ΔLが、記憶部51に記憶される。同様に、様々なアタッチメント14の構成のそれぞれについて、様々な吊荷重Fのそれぞれについて、様々な起伏角度θでの揚程誤差ΔLが、記憶部51に記憶される。
【0032】
[例B3]なお、
図1に示す巻上ロープ19aの様々な巻上量ごとに、様々な起伏角度θでの揚程誤差ΔLが、記憶部51(
図2参照)に記憶されてもよい(上記[例A2-2]参照)。
【0033】
揚程誤差ΔLを取得する手順の具体例は、次の通りである。[例C1]例えば、ブーム15がある起伏角度θとされ、巻上ロープ19aがある巻上量とされる。この状態で揚程計算値Lcが算出される。この状態から起伏角度θおよび巻上量が変えられずに、吊荷重Fが変えられながら(例えば、フック19bに取り付けられるおもり(吊荷21に相当)が様々な質量のものに取り替えられながら)、揚程Lが実測される。実測された揚程Lと揚程計算値Lcとの差が、揚程誤差ΔLとして算出および記憶されてもよい。
【0034】
[例C2]例えば、吊荷重Fが変えられずに、起伏角度θおよび巻上ロープ19aの巻上量の少なくともいずれかが変えられる。このとき、揚程Lが実測される。そして、実測された揚程Lと揚程計算値Lcとの差が、揚程誤差ΔLとして算出および記憶されてもよい。
【0035】
[例C2-1]例えば、吊荷重Fが変えられずに、起伏角度θが変えられる。このとき、揚程計算値Lcが一定になるように巻上ロープ19aが巻上または巻下されながら、揚程Lが実測される。そして、実測された揚程Lと揚程計算値Lcとの差が、揚程誤差ΔLとして算出および記憶されてもよい。
【0036】
[例C2-2]例えば、吊荷重Fが変えられずに、起伏角度θが変えられる。このとき、揚程Lの実測値が一定になるように(すなわちフック19bが水平移動するように)、巻上ロープ19aが巻上または巻下される(後述)。そして、起伏角度θおよび巻上ロープ19aの巻上量に基づいて算出された揚程計算値Lcと、揚程Lの実測値との差が、揚程誤差ΔLとして算出および記憶される。以下、この[例C2-2]の具体例について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。フローチャートの各ステップ(S11~S14、S21~S23)については、
図3を参照して説明する。
【0037】
(揚程誤差ΔLの取得の具体例)
ステップS11では、
図1に示すアタッチメント14の構成が、演算部53(
図2参照)に入力される。例えば、演算部53に入力されるアタッチメント14の構成は、アタッチメント構成取得部31(
図2参照)に取得された情報でもよく、アタッチメント構成取得部31に取得された情報でなくてもよい。なお、
図3では、アタッチメント14を、「ATT」と記載した(
図6も同様)。
【0038】
ステップS12では、吊荷重Fが、演算部53(
図2参照)に入力される。例えば、演算部53に入力される吊荷重Fは、自動的に取得された値(例えば吊荷重センサ33(
図2参照)で検出された値など)でもよく、作業者により手動で入力された値でもよい。
【0039】
このように、「揚程誤差ΔLの取得」において、各種センサが用いられてもよい。この「揚程誤差ΔLの取得」に用いることができるセンサは、後述する「揚程誤差ΔLの読み込みおよび揚程計算値Lcの補正」に用いられるセンサと、共通のセンサであることが好ましいが、共通のセンサでなくてもよい。具体的には、吊荷重センサ33(
図2参照)、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)、および巻上量センサ37(
図2参照)は、少なくとも「揚程誤差ΔLの読み込みおよび揚程計算値Lcの補正」に用いられるセンサであるところ、これらのセンサは「揚程誤差ΔLの取得」に用いられてもよく、用いられなくてもよい。
【0040】
ステップS13では、
図1に示すアタッチメント14(ここではブーム15)の起伏角度θ、および巻上ロープ19aの巻上量が、演算部53(
図2参照)に入力される。例えば、演算部53に入力される起伏角度θは、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)で検出された値でもよく、アタッチメント角度センサ35で検出された値でなくてもよい。例えば、演算部53に入力される巻上量は、巻上量センサ37(
図2参照)で検出された値でもよく、巻上量センサ37で検出された値でなくてもよい。
【0041】
ステップS14では、現在の揚程計算値Lcが、揚程基準値Lsとして記憶部51(
図2参照)に記憶される。さらに詳しくは、演算部53(
図2参照)は、現在のアタッチメント14の起伏角度θ、および巻上ロープ19aの巻上量に基づいて、現在の揚程計算値Lcを算出する。演算部53は、算出した揚程計算値Lcを、揚程基準値Lsとして記憶部51に記憶させる。
【0042】
ステップS21では、フック19bが水平に移動するように(すなわち実際の揚程Lが一定に維持されるように)、アタッチメント14および巻上ウインチ19cが作動させられる。具体的にはブーム15の起伏および巻上ロープ19aの巻上または巻下が行われる。例えば、フック19bが上部旋回体11bに近づけられる場合(水平引きが行われる場合)は、ブーム15が起こされながら、巻上ロープ19aが巻き下げられる。フック19bが上部旋回体11bから遠ざけられる場合は、ブーム15が伏せられながら、巻上ロープ19aが巻き上げられる。なお、アタッチメント14がジブ115(
図8参照)を有する場合は、ジブ115の起伏および巻上ロープ19aの巻上または巻下が行われる。アタッチメント14および巻上ウインチ19cを作動させる操作は、手動でも自動でもよい。さらに詳しくは、フック19bが水平移動するように、アタッチメント14および巻上ウインチ19cをオペレータが手動で操作してもよい。また、例えばクレーン1の外部に設置されたセンサが揚程Lを検出し、検出された実際の揚程Lが一定になるように、アタッチメント14および巻上ウインチ19cが自動操作されてもよい。揚程Lを検出するための「クレーン1の外部に設置されたセンサ」は、例えばカメラでもよく、例えば光(具体的にはレーザ光など)や電波などを用いた非接触センサでもよい。
【0043】
ステップS22では、揚程誤差ΔLが、演算部53(
図2参照)に算出される。さらに詳しくは、演算部53は、アタッチメント14の起伏角度θ、および巻上ロープ19aの巻上量に基づいて、フック19bを水平移動させているときの各状態での揚程計算値Lcを算出する。そして、演算部53は、フック19bを水平移動させているときの各状態での揚程計算値Lcと、揚程基準値Lsと、の差(すなわち揚程誤差ΔL)を算出する。
【0044】
この例では、アタッチメント14のたわみ、および巻上ロープ19aのたるみを考慮した揚程誤差ΔLを取得することができる。さらに詳しくは、揚程基準値Lsが取得されたとき(ステップS14のとき)、アタッチメント14にはたわみがあり、巻上ロープ19aにはたるみがある。この状態から、アタッチメント14の起伏角度θおよび巻上ロープ19aの巻上量が変化させられる。ここで、上記の例では、起伏角度θおよび巻上量が変化させられる際、フック19bは水平移動している。そのため、仮に、アタッチメント14にたわみ量の変化がなく、巻上ロープ19aにたるみ量の変化が無ければ、フック19bが水平移動したときの揚程計算値Lcは、揚程基準値Lsから変化しないはずである。一方、実際には、アタッチメント14にたわみ量の変化があり、巻上ロープ19aにたるみ量の変化があるので、フック19bが水平移動したときに揚程計算値Lcが変化し、揚程基準値Lsからずれる。揚程計算値Lcから揚程基準値Lsを引くことで、アタッチメント14のたわみ、および巻上ロープ19aのたるみを考慮した、揚程誤差ΔLが算出される。
【0045】
ステップS23では、算出された揚程誤差ΔLが、記憶部51(
図2参照)に記憶される。例えばアタッチメント14の可動範囲の全体または略全体で、アタッチメント14が起伏されながら、揚程誤差ΔLが算出および記憶される。次に、フローはステップS11に戻る。そして、吊荷重Fが変えられて、上記と同様に揚程誤差ΔLが記憶部51に記憶される。また、アタッチメント14の構成が変えられて、上記と同様に揚程誤差ΔLが記憶部51に記憶される。
【0046】
(揚程誤差ΔLの記憶の具体例)
記憶部51(
図2参照)は、例えば次のように揚程誤差ΔLを記憶する。[例D1]起伏角度θが連続的に変化させられながら、揚程誤差ΔLが連続的に取得された場合、記憶部51は、連続的な起伏角度θと連続的な揚程誤差ΔLとの関係を記憶してもよい(例えば
図5に示すグラフを参照)。[例D2]
図1に示す起伏角度θが変化させられながら、揚程誤差ΔLが非連続的に(間欠的に)取得された場合、記憶部51は、非連続的な起伏角度θと非連続的な揚程誤差ΔLとの関係を記憶してもよい。[例D3]記憶部51は、起伏角度θと揚程誤差ΔLとの関係に基づいて導出された計算式(後述)を記憶してもよい。[例D4]記憶部51は、非連続的な揚程誤差ΔLのデータに基づいて導出された計算式から算出された揚程誤差ΔLの値を記憶してもよい。
【0047】
上記[例D3]および[例D4]の計算式は、例えば、起伏角度θを変数とする2次関数などである(
図5に示すグラフを参照)。具体的には例えば、揚程誤差ΔLは、次の式1で表される。
ΔL=aθ
2+bθ+c (式1)
ここで、a、b、およびcは定数である。この式1は、様々な吊荷重Fごとに求められる。
図5に示す例では、3種類の吊荷重F(W1(小)、W2(中)、W3(大))のそれぞれについて、グラフを示した。
【0048】
(揚程誤差ΔLの読み込みおよび揚程計算値Lcの補正)
上記の揚程誤差ΔLの取得は、クレーン1でクレーン作業が行われる前に(事前に)行われる。クレーン1での作業時に、揚程誤差ΔLに基づいて、揚程計算値Lcが補正される。さらに詳しくは、クレーン1でクレーン作業が行われる際に、現在のクレーン1の状態(現在の稼働状態)が、演算部53(
図2参照)に入力される。具体的には、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)に検出された起伏角度θ(現在の起伏角度θ)と、吊荷重センサ33(
図2参照)に検出された吊荷重F(現在の吊荷重F)と、が演算部53に入力される。
【0049】
演算部53(
図2参照)は、現在の起伏角度θと、現在の吊荷重Fと、に対応する揚程誤差ΔLを記憶部51(
図2参照)から読み込む。[例E1]例えば、演算部53は、揚程誤差ΔLのデータの中から、現在の起伏角度θと現在の吊荷重Fとに一致(または最も近い)状態に対応付けられた揚程誤差ΔLを読み込んでもよい。[例E2]演算部53は、揚程誤差ΔLのデータに基づく計算式(例えば上記の式1)を読み込み、この計算式から、現在の起伏角度θと現在の吊荷重Fとに対応する揚程誤差ΔLを算出してもよい。[例E3]演算部53は、上記の計算式から予め算出された計算結果であって、現在の起伏角度θと現在の吊荷重Fとに対応する揚程誤差ΔLの計算結果を読み込んでもよい。なお、上記[例E2]および[例E3]の場合も、「演算部53が、揚程誤差ΔLを記憶部51から読み込む」ことに含まれる。
【0050】
アタッチメント14の複数の(様々な)構成ごとに揚程誤差ΔLが記憶部51(
図2参照)に記憶されている場合(
図4参照)は、アタッチメント構成取得部31(
図2参照)に取得された現在のアタッチメント14の構成が、演算部53(
図2参照)に入力される。演算部53は、現在のアタッチメント14の構成と、現在の起伏角度θと、現在の吊荷重Fと、に対応する揚程誤差ΔLを記憶部51から読み込む。
【0051】
なお、上記のように、巻上ロープ19aの複数の(様々な)巻上量ごとに揚程誤差ΔLが記憶部51(
図2参照)に記憶されてもよい。この場合、演算部53(
図2参照)は、巻上量センサ37(
図2参照)に検出された巻上量(現在の巻上量)と、現在の起伏角度θと、現在の吊荷重Fと、に対応する揚程誤差ΔLを記憶部51(
図2参照)から読み込む。また、演算部53は、現在のアタッチメント14の構成と、現在の巻上量と、現在の起伏角度θと、現在の吊荷重Fと、に対応する揚程誤差ΔLを記憶部51から読み込んでもよい。
【0052】
演算部53(
図2参照)は、現在の起伏角度θと、現在の巻上量と、に基づいて算出した揚程計算値Lcを、記憶部51から読み込んだ揚程誤差ΔLに基づいて補正する。例えば、演算部53は、揚程計算値Lcと揚程誤差ΔLとの和を、補正後の揚程Lとする。
【0053】
(揚程誤差ΔLの読み込みおよび揚程計算値Lcの補正の具体例)
揚程誤差ΔLの読み込みおよび揚程計算値Lcの補正の具体例を、
図6に示すフローチャートを参照して説明する。以下では、各ステップ(S31~S33、S41~S44、S51、S52)については
図6を参照して説明する。
【0054】
ステップS31~S33では、
図1に示すクレーン1の現在の稼働状態が、演算部53(
図2参照)に入力される。さらに詳しくは、ステップS31では、アタッチメント構成取得部31(
図2参照)に取得された、現在のアタッチメント14の構成の情報が、演算部53(
図2参照)に入力される。ステップS32では、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)に取得された、現在のアタッチメント14の起伏角度θが、演算部53に入力される。ステップS33では、吊荷重センサ33(
図2参照)に取得された、現在の吊荷重Fが、演算部53に入力される。
【0055】
ステップS41では、演算部53(
図2参照)は、現在の稼働状態に対応する揚程誤差ΔLを記憶部51(
図2参照)から読み込む(呼び出す)。さらに詳しくは、演算部53は、現在のアタッチメント14の構成と、現在のアタッチメント14の起伏角度θと、現在の吊荷重Fと、に対応する揚程誤差ΔLを、記憶部51から読み込む(例えば上記の計算式から算出する)。
【0056】
ステップS43では、演算部53(
図2参照)は、揚程計算値Lcを揚程誤差ΔLで補正する。さらに詳しくは、演算部53は、現在の起伏角度θと現在の巻上量とに基づいて、揚程計算値Lcを算出する。演算部53は、揚程計算値Lcに対して、ステップS41で読み込んだ揚程誤差ΔLを、例えば加算または減算することで、補正後の揚程Lを算出する。
【0057】
ステップS44では、演算部53(
図2参照)は、補正後の揚程Lを表示部55(
図2参照)に表示させる。演算部53は、補正後の揚程Lを利用して、クレーン1の自動運転を行ってもよい。
【0058】
(作業半径Rの算出)
演算部53(
図2参照)は、揚程誤差ΔLを利用して、作業半径Rを算出してもよい。作業半径Rは、下部走行体11aに対する上部旋回体11bの旋回中心11oから、フック19bまでの水平距離(水平方向における距離)である。
図1に示す例では、作業半径Rは、ブーム15の基端部からフック19bまでの水平距離(第1距離Ra)と、旋回中心11oからブーム15の基端部までの水平距離(第2距離Rb)と、の和である。例えばブーム15が伸縮ブーム(図示なし)の場合などには、ブーム15の基端部が旋回中心11oよりも上部旋回体11bにおける後側に配置される場合は、作業半径Rは、第1距離Raから第2距離Rbを引いた値である。第2距離Rbは、定数であり、作業半径Rの算出が行われる前に(予め)演算部53に設定される。演算部53は、第1距離Raを算出する。さらに詳しくは、演算部53は、記憶部51(
図2参照)から揚程誤差ΔLを読み込む。そして、演算部53は、揚程誤差ΔLと、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)に検出された起伏角度θ(現在の起伏角度θ)と、アタッチメント14の(例えばブーム15の)長さM(
図7参照)と、に基づいて、第1距離Raを算出する。演算部53は、算出した第1距離Raと、第2距離Rb(定数)と、に基づいて、作業半径Rを算出する(ステップS51)。演算部53は、算出した作業半径Rを表示部55に表示させる(ステップS52)。演算部53は、第1距離Raを表示部55に表示させてもよい。演算部53は、算出した作業半径R(または第1距離Ra)を利用して、クレーン1の自動運転を行ってもよい。
【0059】
(作業半径Rの算出の具体例)
具体的には例えば、演算部53(
図2参照)は、次のように作業半径Rを算出する。アタッチメント角度センサ35(
図2参照)に検出された起伏角度θ(現在の起伏角度θ)を、
図7に示すように起伏角度θaとする。ここで、ブーム15が、起伏角度θaであり、かつ、たわみがない(またはできるだけ少ない)状態を基準状態とする(
図7に示すブーム15aを参照)。そして、現在のアタッチメント14の構成、現在の起伏角度θa、および現在の吊荷重F(
図1参照)に基づき、現在の稼働状態での揚程誤差ΔLが決定される。
【0060】
ブーム15の長さ(さらに詳しくはブーム15の長手方向におけるブーム15の長さ)を、長さMとする。長さMは、ブーム15がたわんでいない状態のときのブーム15の基端部から先端部までの直線距離でもよい。長さMは、たわみを考慮したブーム15の長さでもよい。例えば、長さMは、ブーム15の起伏角度θが所定角度であり、吊荷重Fが所定の大きさのときの、実際のブーム15の基端部から先端部までの直線距離でもよい。
【0061】
現在の稼働状態での、ブーム15の基端部から先端部までの高さHは、次の式2で表される。
H=Msinθa+ΔL (式2)
なお、基準状態のブーム15aは実際にはたわんでいるので、高さHは、「Msinθa+ΔL」と厳密には一致はしないが、略一致する。
【0062】
また、たわみのない仮想的なブーム15bを考える。この仮想的なブーム15bの先端部の位置と、たわみのある実際のブーム15の先端部の位置と、が同じであるとする。この仮想的なブーム15bの起伏角度θを、起伏角度θbとする。このとき、ブーム15bの高さHは、次の式3で表される。
H=Msinθb (式3)
【0063】
式2および式3により、次の式4が成り立つ。
Msinθb=Msinθa+ΔL (式4)
よって、次の式5が成り立つ。
θb=sin-1((Msinθa+ΔL)/M) (式5)
第1距離Raは、このθbを用いて、Mcosθbで表される。よって、作業半径Rは、Mcosθb+Rbで表される。
【0064】
(第1の発明の効果)
図1に示すクレーン1(フック位置算出装置)による効果は、次の通りである。クレーン1は、機械本体11と、アタッチメント14と、巻上ロープ19aと、フック19bと、巻上ウインチ19cと、
図2に示すアタッチメント角度センサ35と、吊荷重センサ33と、巻上量センサ37と、記憶部51と、演算部53と、を備える。
図1に示すように、アタッチメント14は、機械本体11に起伏可能に取り付けられる。巻上ロープ19aは、アタッチメント14から吊り下げられる。フック19bは、アタッチメント14から巻上ロープ19aを介して吊り下げられ、吊荷21を取り付け可能に構成される。巻上ウインチ19cは、巻上ロープ19aの巻き取りおよび繰り出しを行う。アタッチメント角度センサ35(
図2参照)は、アタッチメント14の起伏角度θを検出する。吊荷重センサ33(
図2参照)は、巻上ロープ19aに作用する吊荷重Fを検出する。巻上量センサ37(
図2参照)は、巻上ウインチ19cによる巻上ロープ19aの巻上量を検出する。
【0065】
[構成1]記憶部51(
図2参照)は、アタッチメント14の複数の起伏角度θごと、かつ、吊荷重Fの複数の大きさごとに、揚程誤差ΔLを記憶する(
図3参照)。揚程誤差ΔLは、揚程計算値Lc(
図3参照)と、実際のフック19bの揚程Lと、の差である。揚程計算値Lcは、アタッチメント14の起伏角度θ、および巻上ロープ19aの巻上量に基づいて算出されるフック19bの揚程Lである。演算部53(
図2参照)は、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)に検出された起伏角度θと、吊荷重センサ33(
図2参照)に検出された吊荷重Fと、に対応する揚程誤差ΔLを記憶部51(
図2参照)から読み込む(
図6のステップS41参照)。演算部53は、アタッチメント角度センサ35に検出された起伏角度θと、巻上量センサ37に検出された巻上量と、に基づいて算出した揚程計算値Lcを、記憶部51から読み込んだ揚程誤差ΔLに基づいて補正する(
図6のステップS32~S43参照)。
【0066】
上記[構成1]により、次の効果が得られる。アタッチメント14の起伏角度θ、および吊荷重Fの少なくともいずれかが変化すると、アタッチメント14のたわみ量、および巻上ロープ19aのたるみ量の少なくともいずれかが変化する。そのため、アタッチメント14の起伏角度θ、および巻上ロープ19aの巻上量に基づいて算出される揚程計算値Lc(
図3参照)は、実際の揚程Lに対してずれる。そこで、クレーン1は、上記[構成1]を備える。よって、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)に検出された起伏角度θ(現在の起伏角度θ)と、吊荷重センサ33(
図2参照)に検出された吊荷重F(現在の吊荷重F)と、に対応する揚程誤差ΔLにより、揚程計算値Lcが補正される。したがって、フック19bの位置に関する情報(具体的には揚程L)を精度良く算出することができる。その結果、フック19bの位置に関する情報(揚程L)を利用した制御(例えばクレーン1の自動運転など)が行われる場合は、この制御の精度を向上させることができる。
【0067】
(第2の発明の効果)
[構成2]クレーン1は、アタッチメント14の構成を取得するアタッチメント構成取得部31(
図2参照)を備える。記憶部51(
図2参照)は、アタッチメント14の複数の構成ごとに揚程誤差ΔLを記憶する(
図4参照)。演算部53(
図2参照)が記憶部51から読み込む揚程誤差ΔLは、次の通りである。この揚程誤差ΔLは、アタッチメント構成取得部31に取得されたアタッチメント14の構成と、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)に検出された起伏角度θと、吊荷重センサ33(
図2参照)に検出された吊荷重Fと、に対応する揚程誤差ΔLである。
【0068】
上記[構成2]により、次の効果が得られる。クレーン1では、アタッチメント14の構成(例えばブーム15の長さ、ジブ115(
図8参照)の有無や長さなど)が変えられる場合がある。そこで、上記[構成2]では、アタッチメント14の複数の構成ごとに揚程誤差ΔLが記憶され(
図4参照)、アタッチメント14の構成に対応した揚程誤差ΔLが演算部53(
図2参照)に読み込まれる(
図6のステップS31およびS41参照)。よって、アタッチメント14の構成に対応した揚程誤差ΔLにより、揚程計算値Lcを補正することができる。
【0069】
(第3の発明の効果)
[構成3]演算部53(
図2参照)は、記憶部51(
図2参照)から読み込んだ揚程誤差ΔLと、アタッチメント角度センサ35(
図2参照)に検出された起伏角度θと、アタッチメント14の長さM(
図7参照)と、に基づいて、第1距離Raを算出する。第1距離Raは、アタッチメント14の基端部からフック19bまでの水平距離である。
【0070】
上記[構成3]では、第1距離Raの算出に、揚程誤差ΔLが用いられる。よって、揚程誤差ΔLが用いられない場合、例えば揚程計算値Lcのみに基づいて第1距離Raが算出される場合などに比べ、フック19bの位置に関する情報(具体的には第1距離Ra)を精度良く算出することができる。その結果、フック19bの位置に関する情報を利用した制御(例えばクレーン1の自動運転など)が行われる場合は、この制御の精度を向上させることができる。
【0071】
(変形例)
図8に示すように、アタッチメント14は、ジブ115を備えてもよい。クレーン1は、ジブ起伏装置127を備えてもよい。ジブ115は、ブーム15に起伏可能に取り付けられる部材(起伏部材)である。ジブ115は、巻上ロープ19aおよびフック19bを介して吊荷21を吊り上げる。
【0072】
ジブ起伏装置127は、ブーム15に対してジブ115を起伏させる装置である。ジブ起伏装置127は、ストラット127aと、ジブガイライン127bと、ストラットガイライン127cと、ジブ起伏ロープ127dと、を備える。ストラット127a(リアストラット127a1、フロントストラット127a2)は、ブーム15の先端部またはジブ115の基端部に回転可能に取り付けられる。ジブガイライン127bは、フロントストラット127a2の先端部とジブ115の先端部とに接続される。ストラットガイライン127cは、リアストラット127a1の先端部と、例えばブーム15とに接続される。ジブ起伏ロープ127dは、リアストラット127a1のシーブとフロントストラット127a2のシーブとに掛けられてもよい。ジブ起伏ロープ127dは、ストラットガイライン127cの下端に接続されるスプレッダ(図示なし)と、例えばブーム15に設けられるスプレッダ(図示なし)と、に掛けられてもよい。上部旋回体11bまたはブーム15に搭載されるジブ起伏ウインチ(図示なし)が、ジブ起伏ロープ127dを巻き取りおよび繰り出しする。すると、リアストラット127a1の先端部とフロントストラット127a2の先端部との間隔が変わる、または、ブーム15に対してストラット127aが起伏する。その結果、ジブ115がブーム15に対して起伏する。なお、ストラット127aは1本のみ設けられてもよい。
【0073】
アタッチメント角度センサ35(
図2参照)は、ジブ115の起伏角度φを検出するジブ角度センサを含む。
【0074】
揚程誤差ΔLは、例えば次のように取得される。ブーム15の起伏角度θが固定された状態で、様々な吊荷重Fで、様々なジブ115の起伏角度φで、揚程誤差ΔLが、記憶部51(
図2参照)に記憶される。そして、ブーム15の起伏角度θが様々に変えられて、様々な吊荷重Fで、様々なジブ115の起伏角度φで、揚程誤差ΔLが、記憶部51(
図2参照)に記憶される。
【0075】
クレーン1の作業時には、演算部53(
図2参照)は、アタッチメント14の構成、ブーム15の起伏角度θ、ジブ115の起伏角度φ、および吊荷重Fに対応する揚程誤差ΔLを読み込む。また、演算部53は、ブーム15の起伏角度θ、ジブ115の起伏角度φ、および巻上ロープ19aの巻上量に基づいて、揚程計算値Lc(
図3参照)を算出する。そして、演算部53は、算出した揚程計算値Lcを、読み込んだ揚程誤差ΔLで補正する。
【0076】
(他の変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、
図2に示す構成要素どうしの接続は変更されてもよい。例えば、
図3および
図6に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【0077】
例えば、上記実施形態においてクレーン1の構成要素であったもの、例えば記憶部51、演算部53、表示部55などは、クレーン1の外部に設けられてもよい。例えば、ブーム15は伸縮ブームでもよい。この場合、ブーム15のたわみの向きは、
図1に示すブーム15のたわみとは逆となる。具体的には、
図1ではブーム15は下に凸にたわむが、伸縮ブームでは上に凸にたわむ。
【符号の説明】
【0078】
1 クレーン
11 機械本体
14 アタッチメント
19a 巻上ロープ
19b フック
19c 巻上ウインチ
31 アタッチメント構成取得部
33 吊荷重センサ
34 アタッチメント角度センサ
37 巻上量センサ
51 記憶部
53 演算部
L 揚程
Lc 揚程計算値
ΔL 揚程誤差
θ 起伏角度
φ 起伏角度