(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240220BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20240220BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240220BHJP
G08G 1/0962 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C21/34
B60W50/14
G08G1/0962
(21)【出願番号】P 2022185629
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2018200606の分割
【原出願日】2018-10-25
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】松本 基元
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-75840(JP,A)
【文献】特開2015-158467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の自動運転機能の作動状態に関する情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両が走行する予定の走行経路に関する情報を取得する経路情報取得部と、
前記走行経路の道路種別、車線数、幅員、右左折の数、分岐の数、合流の数、交差点の数、信号の数および一時停止標識の数の少なくとも一つに基づいて前記走行経路の運転負荷を
複数の段階に分けて判定し、前記運転負荷に応じて、前記走行経路に含まれる
、前記運転負荷が中負荷であると判定された区間を、手動運転推奨区間
として決定する推奨区間決定部と、
前記自動運転機能が作動中であり、前記走行経路に前記手動運転推奨区間が含まれる場合、前記手動運転推奨区間における前記自動運転機能の作動解除による手動運転への切り替えを前記車両のユーザに提案する運転切替提案部と、を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記運転切替提案部は、前記車線数、幅員、右左折の数、分岐の数、合流の数、交差点の数、信号の数および一時停止標識の数の少なくとも一つと、前記ユーザが設定した基準値と、の比較により、前記運転負荷を複数の程度段階に分けて判定し、前記運転負荷の程度段階が、前記複数の程度段階のうち中位に位置する所定の段階にあると判定された区間が、一定以上の走行距離または走行時間にわたって連続する場合に、前記手動運転推奨区間における前記自動運転機能の作動解除による手動運転への切り替えを前記車両のユーザに提案することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
コンピュータが、
車両の自動運転機能の作動状態に関する情報を含む車両情報を取得するステップと、
前記車両が走行する予定の走行経路に関する情報を取得するステップと、
前記走行経路の道路種別、車線数、幅員、右左折の数、分岐の数、合流の数、交差点の数、信号の数および一時停止標識の数の少なくとも一つに基づいて前記走行経路の運転負荷を
複数の段階に分けて判定し、前記走行経路に含まれる
、前記運転負荷が中負荷であると判定された区間を、手動運転推奨区間として決定するステップと、
前記自動運転機能が作動中であり、前記走行経路に前記手動運転推奨区間が含まれる場合、前記手動運転推奨区間における前記自動運転機能の作動解除による手動運転への切り替えを前記車両のユーザに提案するステップと、を実行することを特徴とする運転支援
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行を運転者の操作によらずに自動制御する自動運転技術が普及しつつある。その一方で、法規制や技術的制約などの理由により走行経路の全てを自動制御できない場合があり、経路の途中で自動運転から手動運転に切り替える必要が生じうる。自動運転から手動運転への適切な切り替えを実現するため、例えば、手動運転への引き継ぎが困難な区間を除いた地点で切り替えがなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転技術が普及したとしても、運転者の操作による手動運転を適度に楽しみたいというニーズも存在しうる。しかしながら、自動運転が不可または不適となる区間のみ手動運転への切り替えがなされる場合、運転者の負担の大きい場面でしか手動運転ができなくなる。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、自動運転による利便性と手動運転による楽しみとを両立させうる運転支援機能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の運転支援装置は、車両の自動運転機能の作動状態に関する情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、車両が走行する予定の走行経路に関する情報を取得する経路情報取得部と、走行経路の道路種別、車線数、幅員、右左折の数、分岐の数、合流の数、交差点の数、信号の数および一時停止標識の数の少なくとも一つに基づいて走行経路の運転負荷を判定し、運転負荷に応じて、走行経路に含まれる手動運転推奨区間を決定する推奨区間決定部と、自動運転機能が作動中であり、走行経路に手動運転推奨区間が含まれる場合、手動運転推奨区間における自動運転機能の作動解除による手動運転への切り替えを車両のユーザに提案する運転切替提案部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動運転による利便性と手動運転による楽しみとを両立させうる運転支援機能を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る運転支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】手動運転推奨区間の選択画面の表示例を示す図である。
【
図3】手動運転への切り替えを提案する画面の表示例を示す図である。
【
図4】手動運転への切り替えを確認する画面の表示例を示す図である。
【
図5】自動運転への切り替えを提案する画面の表示例を示す図である。
【
図6】実施の形態に係る運転支援方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
本実施の形態を詳細に説明する前に概要を述べる。本実施の形態は、自動運転機能を備える車両に設けられる運転支援装置である。この運転支援装置は、車両の自動運転機能が作動中であり、車両の走行経路に所定条件を満たす手動運転推奨区間が含まれる場合、手動運転推奨区間における自動運転機能の作動解除をユーザに提案する。ここで、「手動運転推奨区間」とは、運転者が適度な運転負荷を感じながら手動運転を楽しむことができる区間のことをいう。本実施の形態によれば、手動運転を楽しむことのできる区間において自動運転から手動運転への切り替えを提案することで、自動運転による利便性を享受しつつ、運転者が適度に手動運転を楽しむ機会を提供することができる。
【0012】
本明細書における「自動運転機能」とは、例えば、SAE(Society of Automotive Engineers)のJ3016に定めるレベル1以上の機能のことをいい、システム側にてアクセル、ステアリングおよびブレーキの少なくとも一つを制御する機能のことをいう。したがって、本明細書の「自動運転機能」には、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC;Adaptive Cruise Control)やレーン・キープ・アシスト(LKAS;Lane Keeping Assistance System)といった運転支援機能も含まれる。なお、本明細書の「自動運転機能」は、システム側でアクセル、ステアリングおよびブレーキの全てを制御するレベル3以上の機能とみなしてもよく、自動運転機能の作動中、車両制御の全てを少なくとも一時的にシステム側に任せることができてもよい。
【0013】
一方、本明細書における「手動運転」とは、運転者がアクセル、ステアリングおよびブレーキの全てを少なくとも部分的に制御する状態のことをいう。したがって、「手動運転」には、SAEJ3016のレベル0の状態のみならず、レベル1やレベル2に定められる「運転支援機能」を少なくとも部分的に利用した状態が含まれてもよい。言いかえれば、「運転支援機能」のうちの一部の機能を利用しない状態を本明細書における「手動運転」とする。例えば、手動運転時に、前方衝突警告や車線逸脱警報、歩行者検知、交通標識認識といった運転支援機能が作動してもよいし、ACCやLKASなどの運転支援機能の作動によってアクセル、ステアリングおよびブレーキの操作が部分的に支援されてもよい。その他、衝突回避のための自動ブレーキ機能の作動を継続したまま、アクセルおよびステアリングの操作を運転者が制御してもよい。
【0014】
図1は、運転支援装置10の機能構成を模式的に示すブロック図である。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0015】
運転支援装置10は、車載ネットワーク48を介して車両に搭載される各種機器と接続される。車載ネットワーク48には、入力装置22、表示装置24、スピーカ26、記録装置28、ナビゲーション装置30、車載カメラ32、車載センサ34、無線通信装置36、自動運転ECU38、車両制御ECU40などが接続される。運転支援装置10の機能構成を詳述する前に周辺機器について説明する。
【0016】
入力装置22は、運転者などのユーザからの操作入力を受け付ける装置である。入力装置22は、例えば、車両のセンターコンソールやダッシュボード、ステアリングホイールの位置に取り付けられる。入力装置22は、ユーザの手で操作するボタンやスイッチで構成されてもよいし、タッチパネルなどで構成されてもよい。入力装置22は、ユーザの音声入力を受け付けるように構成されてもよく、例えばマイクを含んでもよい。
【0017】
表示装置24は、液晶ディスプレイやヘッドアップディスプレイなどの表示デバイスであり、車両のセンターコンソールやダッシュボードの位置に取り付けられる。スピーカ26は、ユーザ向けの案内や警告、注意喚起のための音声を出力する。記録装置28は、車載機器の各種設定情報や、車載カメラ32が撮像する画像などを記録する。記録装置28は、例えば、ハードディスクなどの磁気ディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリなどを備える。記録装置28は、Wi-Fi(登録商標)などの無線通信により接続されるスマートフォンやタブレット、サーバなどの外部機器に設けられてもよい。
【0018】
ナビゲーション装置30は、地図情報を有し、車両の走行経路を管理する。ナビゲーション装置30は、現在地から目的地までの走行経路を提案し、ユーザが選択した走行経路にしたがって経路案内をする。ナビゲーション装置30は、車両の現在地周辺を示す地図画面や、現在地から目的地までの予定経路を示す地図画面を表示装置24に表示させる。
【0019】
車載カメラ32は、車両の周辺を撮像するよう構成され、例えば、車両の前方を撮像するように構成される。車載カメラ32は、車両の室外のみを撮像するように構成されてもよいし、車両の室外および室内の双方を撮像するように構成されてもよい。車両に複数のカメラが搭載されてもよく、例えば複数のカメラのそれぞれが車両の前方、後方、側方を撮像してもよい。
【0020】
車載センサ34は、車両に関する情報や車両の周辺状況に関する情報を取得するための機器である。車載センサ34の具体例として、車速センサ、舵角センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、レーダセンサ、ライダ(LiDAR;Light Detection and Ranging)、位置情報センサ(GPSセンサ)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
無線通信装置36は、FM多重放送、電波信号または光信号で配信される道路交通情報を受信する装置であり、例えば、道路交通情報通信システム(VICS(登録商標))における電波ビーコン信号や光ビーコン信号を受信するよう構成される。無線通信装置36は、路車間通信や車車間通信によって車両周辺の道路や他車両の情報を取得するよう構成されてもよいし、インターネットを含むネットワークと無線接続して情報を取得するよう構成されてもよい。
【0022】
自動運転ECU38は、車両の自動運転機能を提供する制御装置である。自動運転ECU38は、車載ネットワーク48に接続される各種機器から取得する情報に基づいて、車両の走行を自動制御するための処理を実行する。自動運転ECU38は、ナビゲーション装置30から取得する情報に基づいて車両の進行経路を特定し、車載カメラ32、車載センサ34および無線通信装置36から取得する情報に基づいて車両の状況および車両の周辺状況を把握し、車両制御ECU40を介してアクセル、ブレーキ、ステアリングなどの操作量を制御する。
【0023】
自動運転ECU38は、レベル3以上の自動運転機能を提供するように動作してもよいし、レベル2以下の運転支援機能を提供するように動作してもよい。自動運転ECU38は、車両制御ECU40を介して車両の挙動を制御するのみならず、表示装置24やスピーカ26を通じて運転手に警告や注意喚起をしてもよい。自動運転ECU38は、自動運転機能の作動中に自動運転が継続できない事象が発生した場合、車両を停止させたり、手動運転への切り替えを運転者に通知したりして自動運転機能の作動を解除する。
【0024】
車両制御ECU40は、車両の挙動を制御するための制御装置であり、車両の駆動、制動および操舵のそれぞれを制御するエンジンECU42、ブレーキECU44およびステアリングECU46などの動作を管理する。車両制御ECU40は、自動運転機能の作動時および自動運転機能の非作動時(つまり手動運転時)の双方において車両の挙動を制御する。
【0025】
つづいて、運転支援装置10の機能構成を詳述する。運転支援装置10は、車両情報取得部12、経路情報取得部14、推奨区間決定部16、運転切替提案部18および画像記録部20を備える。
【0026】
車両情報取得部12は、車載カメラ32、車載センサ34、無線通信装置36、自動運転ECU38および車両制御ECU40などから車両に関する情報および車両周辺に関する情報を取得する。車両情報取得部12は、車両に関する情報として、例えば、自車両の速度、加速度、アクセル操作量、ブレーキ操作量、操舵量、車両姿勢、自動運転機能の作動状態などの情報を取得する。車両情報取得部12は、車両周辺に関する情報として、天候、路面状態、他車両の台数や相対速度などの情報を取得する。車両情報取得部12は、運転手を撮像する車載カメラ32の画像等に基づいて、運転手の状態に関する情報を取得してもよい。
【0027】
経路情報取得部14は、ナビゲーション装置30から車両の走行経路に関する情報を取得する。経路情報取得部14は、車両が現在走行している道路に関する情報や、ナビゲーション装置30に設定された目的地までの予定経路に含まれる道路に関する情報を取得する。例えば、道路の種別、エリア、車線数、幅員、カーブの曲率、勾配などの情報や、予定経路に含まれる右左折や分岐の数、信号や一時停止標識の数などの情報を取得する。経路情報取得部14は、無線通信装置36を通じて走行経路の規制情報や渋滞情報などを取得してもよい。
【0028】
推奨区間決定部16は、車両の走行経路に含まれる「手動運転推奨区間」の候補を抽出し、運転手に手動運転を提案する区間を決定する。推奨区間決定部16は、運転者が適度な運転負荷を感じながら手動運転を楽しむことができるとみなせる区間を「手動運転推奨区間」の候補として抽出する。逆の言い方をすれば、推奨区間決定部16は、運転負荷が低いために運転が単調と考えられる区間や、運転負荷が高いために運転に疲れてしまうと考えられる区間を手動運転推奨区間の候補から除外し、運転負荷が中程度と考えられる区間を手動運転推奨区間の候補とする。
【0029】
推奨区間決定部16は、走行経路を複数の区間に分割し、各区間の運転負荷の高さを複数の段階で評価する。推奨区間決定部16は、例えば、各区間の運転負荷の高さを3段階以上で判定し、例えば、低負荷(第1段階)、中負荷(第2段階)、高負荷(第3段階)の3段階に分類する。運転負荷を判定するための区間の決め方は特に限られないが、例えば、一定の距離(例えば500m~1km程度)や走行時間(5分~10分程度)ごとに区間を設定することができる。ナビゲーション装置30の地図情報に設定されるノードの間を運転負荷を判定するための区間としてもよい。
【0030】
推奨区間決定部16は、各区間の道路の種別、車線数、幅員に応じて運転負荷の高さを判定してもよい。例えば、片道2車線以上で幅員の広い高速道路や主要国道については低負荷と判定し、片道1車線の国道や県道については運転負荷が中負荷と判定し、幅員の狭い市街路や未舗装道については高負荷と判定してもよい。推奨区間決定部16は、各区間のエリアに応じて運転負荷を判定してもよく、例えば、市街地や都市部といった車両や人の交通量が多いエリアは高負荷と判定し、郊外や山間部、地方部といった車両や人の交通量が多いエリアは中負荷または低負荷と判定してもよい。
【0031】
推奨区間決定部16は、各区間に含まれる右左折、分岐および合流の数や、交差点、信号または一時停止標識の数に応じて走行経路の運転負荷を判定してもよい。例えば、基準となる走行距離(例えば5km)や走行時間(例えば10分)に含まれる右左折、分岐および合流の数や、交差点、信号または一時停止標識の数が所定の基準値(例えば2個~5個程度)以下となる場合に中負荷または低負荷と判定し、所定の基準値を超える場合に高負荷と判定してもよい。
【0032】
推奨区間決定部16は、各区間に含まれるカーブの曲率や勾配に応じて運転負荷を判定してもよい。例えば、カーブの曲率および勾配の少なくとも一方が区間全体にわたって所定の下限値未満となる場合には低負荷と判定し、区間の少なくとも一部においてカーブの曲率および勾配の少なくとも一方が所定の上限値を超える場合には高負荷と判定し、それ以外について中負荷と判定してもよい。つまり、カーブの曲率および勾配の少なくとも一方が区間全体にわたって所定の上限値以下であり、カーブの曲率および勾配の少なくとも一方が所定の下限値以上となる部分がある場合に中負荷と判定してもよい。一例を挙げれば、カーブの曲率の下限値は曲率半径500mであり、カーブの曲率の上限値は曲率半径300mである。また、勾配の下限値は5%であり、勾配の上限値は10%である。
【0033】
推奨区間決定部16は、一定以上の走行距離または走行時間にわたって運転負荷が中程度となる区間が連続する場合に手動運転推奨区間の候補としてもよい。例えば、10km以上や20km以上の区間または30分や1時間の走行時間に対応する一以上の区間において運転負荷が連続して低負荷または中負荷となる場合に手動運転推奨区間の候補としてもよい。これにより、手動運転推奨区間を数分程度で通過してしまう結果、運転を十分に楽しむことができない状態となることを防ぐことができる。
【0034】
推奨区間決定部16は、上記の複数の判定条件に基づいて運転負荷の高さを判定する場合、複数の判定条件の全てが低負荷の場合に該当区間を低負荷とし、複数の判定条件のいずれかが高負荷の場合に該当区間を高負荷とし、それ以外の区間を中負荷としてもよい。その他、複数の判定条件のうち高負荷となる項目が所定数(例えば2個)以上ある場合に該当区間を高負荷としてもよい。
【0035】
なお、走行経路の運転負荷を判定するための基準値は、ユーザの設定により変更可能であってもよい。例えば、コンフォートモード、ドライブモード、スポーツモードといった複数種類のモードを用意するとともに、各モードにおいて運転負荷を判定するための基準値を異ならせてもよい。その他、運転負荷を判定するための複数の判定条件のいずれを有効にし、いずれを無効にするかをユーザが選択できるようにしてもよい。
【0036】
推奨区間決定部16は、地図情報にドライブに適したコースとして登録されている道路が車両の走行経路に含まれていれば、そのコースを手動運転推奨区間の候補としてもよい。その他、地図情報に景勝地として登録されている地点の近くを通過する走行経路があれば、その地点の近傍の区間を手動運転推奨区間の候補としてもよい。
【0037】
推奨区間決定部16は、手動運転推奨区間の候補が複数ある場合、複数の候補区間の一部のみを手動運転推奨区間として抽出してもよい。その他、複数の候補をユーザに提示し、そのいずれかをユーザが選択できるようにしてもよい。
【0038】
図2は、手動運転推奨区間の選択画面の表示例を示し、ナビゲーション装置30により現在地52から目的地54までの予定走行経路56が地図画面上に表示されている。予定走行経路56の途中には複数の手動運転推奨区間58a,58b,58cが地図画面に重畳して表示され、各区間を選択するための記号「A」「B」「C」が付されている。また、画面左下には各区間の特徴が示されており、例えば、「(A)分岐や右左折の少ない安心ルート」「(B)眺めのよい景勝地ルート」「(C)カーブや勾配の多い山道ルート」の説明文が表示されている。その他、各区間の距離や予定走行時間といった情報が表示されてもよい。このようなルート選択画面を表示することにより、いずれか一つまたは複数の手動運転推奨区間をユーザが選択できるようにしてもよい。
【0039】
運転切替提案部18は、自動運転機能の作動中に車両が手動運転推奨区間に入った場合、ユーザに自動運転機能の作動解除による手動運転への切り替えを提案する。例えば、
図2の「区間A」の手動運転推奨区間58aがユーザにより選択されている場合、手動運転推奨区間58aの走行中に手動運転への切り替えの可否をユーザに確認する。
【0040】
図3は、手動運転への切り替えを提案する画面の表示例を示し、車両の現在地52が推奨区間Aの入口付近である場合に表示される画面例を示す。運転切替提案部18は、表示装置24に「推奨区間Aに入りました。手動運転にしますか?」の文言を表示し、ユーザに手動運転への切り替えを提案する。運転切替提案部18は、スピーカ26から手動運転への切り替えを確認するメッセージを出力させてもよい。その後、運転切替提案部18は、ユーザから自動運転機能の作動解除の指示がなされた場合、自動運転ECU38に自動運転機能の作動を解除させ、ユーザから自動運転機能の作動解除の指示がなされない場合、自動運転ECU38に自動運転機能の作動を継続させる。
【0041】
運転切替提案部18は、走行中の手動運転推奨区間が所定条件を満たす場合にのみ手動運転への切り替えを提案してもよい。例えば、手動運転推奨区間の最新の規制情報や渋滞情報、天候といった道路環境に基づいて自動運転機能の解除の提案をするかしないかを決定してもよい。最新の道路環境に関する情報は、無線通信装置36を通じて取得してもよいし、車載カメラ32や車載センサ34からの情報を解析して取得してもよい。
【0042】
運転切替提案部18は、走行中の手動運転推奨区間において、手動運転を推奨できない「特定事象」が発生している場合に自動運転機能の解除の提案を中止してもよい。手動運転を推奨できない「特定事象」として、例えば、渋滞の発生、強風や大雨、霧などの悪天候、夜間のための視界不良、工事や事故による車線規制などが挙げられる。このような特定事象が発生している場合には運転負荷が高くなるため、特定事象を伴う手動運転推奨区間については手動運転への切り替えを提案しないようにしてもよい。その他、手動運転への切り替えの提案時にこれらの特定事象がある旨をユーザに通知して、手動運転への切り替えの要否を確認してもよい。
【0043】
運転切替提案部18は、走行中の手動運転推奨区間にて生じていた特定事象が解消された場合、その後に手動運転への切り替えを提案してもよい。例えば、車両前方の渋滞が解消され、車両前方の他車両の走行速度や自車両の走行速度が上がってきたタイミングで手動運転への切り替えを提案してもよい。この場合、自動運転機能の解除の提案時に特定事象が解消された旨をユーザに通知して、手動運転への切り替えの要否を確認してもよい。例えば、「渋滞が解消されました。手動運転にしますか?」といったメッセージが出力されてもよい。
【0044】
運転切替提案部18は、手動運転推奨区間とは異なる区間にてユーザから自動運転機能の解除を指示された場合、現在走行中の区間が手動運転推奨区間ではない旨をユーザに通知し、自動運転機能の解除要否を再確認してもよい。また、車両の予定走行経路に手動運転推奨区間が含まれている場合、次の手動運転推奨区間までの走行距離および走行時間の少なくとも一方をユーザに通知し、自動運転機能の解除要否を再確認してもよい。
【0045】
図4は、手動運転への切り替えを確認する画面の表示例であり、車両の現在地52が推奨区間Aの手前である場合に表示される画面例を示す。図示されるように、現在地52が推奨区間Aの手前であり、次の推奨区間Aまでの残り距離が7kmである旨の表示とともに、手動運転への切り替えの要否が確認される。このようにして、次の推奨区間が近いかどうかを通知することで、今すぐに手動運転に切り替えるか、少し待ってから手動運転に切り替えるかのユーザの判断を支援できる。
【0046】
図5は、自動運転への切り替えを提案する画面の表示例であり、車両の現在地52が推奨区間Aの出口付近である場合に表示される画面例を示す。運転切替提案部18は、自動運転機能の作動を解除した状態で車両が手動運転推奨区間を通過した場合、自動運転への切り替えをユーザに提案する。運転切替提案部18は、表示装置24に「推奨区間Aを通過しました。自動運転にしますか?」の文言を表示し、自動運転機能の作動を提案する。その後、運転切替提案部18は、ユーザから自動運転機能の作動の指示がなされた場合、自動運転ECU38に自動運転機能の作動を開始させ、ユーザから自動運転機能の作動の指示がなされない場合、自動運転ECU38に自動運転機能の解除状態を継続させる。
【0047】
運転切替提案部18は、自動運転機能の作動を解除した状態で手動運転推奨区間を所定距離または所定時間走行した場合に、自動運転機能の作動をユーザに提案してもよい。例えば、運転負荷の蓄積が懸念される距離(例えば20km~30km程度)や時間(例えば1時間~2時間程度)にわたって手動運転推奨区間を連続走行した場合に手動運転から自動運転への切り替えを提案してもよい。このときの所定距離や所定時間は、ユーザ操作により任意の値に設定できてもよい。その後、運転切替提案部18は、ユーザから自動運転機能の作動再開の指示がなされた場合、自動運転機能の作動を再開し、ユーザから自動運転機能の作動再開の指示がなされない場合、自動運転機能の解除状態を継続させる。
【0048】
運転切替提案部18は、自動運転機能の作動を解除した状態で手動運転推奨区間を走行している間に車両が運転負荷が高いと考えられる状態となった場合に、自動運転機能の作動をユーザに提案してもよい。例えば、アクセル操作量、ブレーキ操作量および操舵量などが所定の基準値を超えた場合に運転負荷が過度に高いと判断して手動運転の中止を提案してもよい。その他、車両の速度、加速度、車両姿勢などが所定の基準範囲を超えた場合に車両が要注意状態になったと判断して手動運転の中止を提案してもよい。
【0049】
画像記録部20は、自動運転機能の作動解除中に車両が手動運転推奨区間を走行する場合、走行中に車載カメラ32が撮像する画像を記録装置28に記録させる。画像記録部20は、推奨区間を手動運転しているときの車外の風景や車内の運転の様子などが画像または動画の記録として残るようにする。画像記録部20は、推奨区間を手動運転している際に撮像される画像や動画を外部サーバ等に無線通信装置36を介してアップロードしてもよい。ある実施の形態において、運転支援装置10に画像記録部20が設けられず、走行中の画像が記録されないように構成されてもよい。
【0050】
図6は、実施の形態に係る運転支援方法の流れを示すフローチャートである。推奨区間決定部16は、車両情報取得部12や経路情報取得部14が取得する情報に基づいて、走行経路に含まれる所定条件を満たす手動運転推奨区間を決定する(S10)。運転切替提案部18は、車両が自動運転機能の作動中であり(S12のY)、車両が手動運転推奨区間を走行していれば(S14のY)、ユーザに自動運転機能の作動解除を提案する(S16)。ユーザから自動運転機能の作動解除の指示があれば(S18のY)、運転切替提案部18は、自動運転機能の作動を解除する(S20)。自動運転機能が作動していない場合(S12のN)や手動運転区間を走行していない場合(S14のN)、S16~S20の処理をスキップする。また、ユーザが自動運転機能の作動解除を指示しない場合(S18のN)、S20の処理をスキップする。
【0051】
本実施の形態によれば、車両の自動運転機能が作動している場合であっても、運転者が適度な運転負荷を感じながら手動運転を楽しむ機会を提供することができる。運転者が手動運転を楽しむことができると考えられる「手動運転推奨区間」にて手動運転への切り替えを提案することで、切替後の手動運転が単調となったり、過度な運転負担がかかったりして運転を十分に楽しめない状況となることを防ぐことができる。また、手動運転推奨区間の終了を契機に自動運転への切り替えを提案することで、運転手に過度な運転負荷が蓄積することを防ぐことができる。これにより、自動運転による利便性と手動運転による楽しみとを両立させうる運転支援機能を提供できる。
【0052】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0053】
上述の実施の形態では、運転支援装置10がナビゲーション装置30や自動運転ECU38とは別の制御装置である場合について示した。変形例においては、運転支援装置10による実現される機能がナビゲーション装置30や自動運転ECU38などの別の装置により実現されてもよい。
【0054】
上述の実施の形態では、運転支援装置10が車両に搭載される場合について示した。変形例においては、運転支援装置10により実現される機能の一部が車両の外部に設けられる車外装置により実現されてもよい。例えば、推奨区間決定部が車外装置により実現されてもよい。この場合、車両の走行経路に関する情報が無線通信装置36を通じて車外装置に送信され、車外装置において手動運転推奨区間が決定されてもよい。その後、決定された手動運転推奨区間に関する情報を無線通信装置36を通じて車外装置から取得し、取得した手動運転推奨区間に関する情報に基づいて運転切替提案部18が手動運転への切り替えを提案してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…運転支援装置、12…車両情報取得部、14…経路情報取得部、16…推奨区間決定部、18…運転切替提案部。