(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】穀粉生地用プレミックス
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20240220BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D2/36
(21)【出願番号】P 2022201655
(22)【出願日】2022-12-16
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】難波 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】安川 瑠依
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-224057(JP,A)
【文献】特開2006-121990(JP,A)
【文献】特開2023-082679(JP,A)
【文献】特開2003-000136(JP,A)
【文献】特開2014-140365(JP,A)
【文献】特開2021-103990(JP,A)
【文献】公益社団法人 日本油化学会,2. 油脂の製造,改訂新版 油脂製品の知識,2018年,p.82
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液糖及び(B)米油由来ガム質を含有し、水分活性が0.80以下であ
り、
前記(A)液糖の含有量が20質量%以上、90質量%以下であり、前記(B)米油由来ガム質の含有量が10質量%以上、80質量%以下である、穀粉生地用プレミックス。
【請求項2】
(A)液糖及び(C)酵素を含有し、水分活性が0.80以下であ
り、
前記(A)液糖の含有量が90質量%以上である、穀粉生地用プレミックス。
【請求項3】
(A)液糖、(B)米油由来ガム質及び(C)酵素を含有し、水分活性が0.80以下であ
り、
前記(B)米油由来ガム質の含有量が10質量%以上、又は、前記(A)液糖の含有量が90質量%以上である、穀粉生地用プレミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粉生地への分散性、保存性が向上し、低濃度から高濃度まで任意に穀粉生地中へ米油由来ガム質又は酵素を配合できる穀粉生地用プレミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
穀粉生地を焼成してなる様々な食品を製造する際、原料を穀粉生地へ均一に分散させることは、出来上がる製品の品質安定性にもつながり重要である。
一般的に粉体原料であれば、穀粉と混合することで均一分散させることは可能であるが、酵素などの少量添加する粉体原料では、穀粉に均一に分散することができず、添加した効果を十分に発揮することができない。特許文献1では、流動穀粉生地にも分散しやすいように酵素を含む水中油型乳化油脂組成物を製造し、良好な分散性が得られる方法が提案されている。また、特許文献2では水に不溶の乳化剤をケーキ生地に分散させるため、油脂に乳化剤を溶解し水と乳化した分散性に優れた乳化油脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-201457号公報
【文献】特開2015-171324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では製品の保存性を高めるために加熱殺菌を行うと酵素が失活してしまうため、酵素を含有した水中油型油脂組成物では十分な加熱殺菌ができず、保存性が低下する。また、特許文献2の方法では、油脂と乳化剤の配合比率が固定化したものを穀粉生地に配合することになるため、低濃度から高濃度まで穀粉生地へ乳化剤を任意に配合することができず、油脂を配合できる範囲内でしか乳化剤を配合できない。したがって、穀粉生地へ均一分散が困難な酵素や、水に不溶の素材を穀粉生地へ均一に分散でき、低濃度から高濃度まで任意に有効成分を配合できる、保存性に優れた穀粉生地用プレミックスの提供が望まれている。
米油由来ガム質は、米糠から搾油された精製前の米原油に含まれるガム状の粘着物質であり、各種植物原油の中でも米原油はガム質が特に多く含まれていることが知られている。米油由来ガム質は米油の精製時に副産物として発生する未利用資源であり、これまで有効な活用方法が見出されておらず、家畜飼料用など付加価値の低い用途に使用されてきたにすぎず、穀粉生地に添加した際に得られる有用な効果については見出されていない。本発明者は、米油由来ガム質を穀粉生地に分散させることができれば、穀粉含有食品の食感や外観を向上させる効果があることを見出した。しかし、米油由来ガム質は粘度が高く、水へ不溶のため、穀粉生地への分散性に欠けるとともに、分散しやすい油中水型乳化物や水中油型乳化物のような乳化物とした場合、水相に米糠抽出物が懸濁し、米糠抽出物に含まれる窒素源等により微生物が繁殖し、乳化物の保存性が低下するという課題があった。また、油脂に米油由来ガム質を配合し、穀粉生地への分散性を向上させることはできるが、穀粉生地へ添加できる油脂量は限定的であり、米油由来ガム質の任意量を穀粉生地に添加できないといった課題があった。
また、粉体の酵素においても、穀粉生地への分散性に欠けるため十分な効果が発揮されず、これまで油脂に分散させるなどの方法がとられてきた。しかし、穀粉生地へ添加できる油脂量は限定的であり酵素の任意量を穀粉生地に添加できないといった課題があった。
【0005】
本発明者は、米油由来ガム質、酵素を液糖で希釈した穀粉生地用プレミックスにおいて、水分活性を0.80以下とすることで保存性を向上するのみならず、穀粉生地への分散性を向上させることができ、低濃度から高濃度まで任意に穀粉生地中へ米油由来ガム質又は酵素を配合できることを見出した。すなわち本発明の目的は、穀粉生地への分散性に優れ、保存性が向上した、低濃度から高濃度まで任意に穀粉生地へ米油由来ガム質又は酵素を配合できる穀粉生地用プレミックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記[1]~[5]である
[1](A)液糖及び(B)米油由来ガム質を含有し、水分活性が0.80以下である穀粉生地用プレミックス。
[2]前記(A)液糖の含有量が20質量%以上、90質量%以下であり、前記(B)米油由来ガム質の含有量が10質量%以上、80質量%以下である、[1]に記載の穀粉生地用プレミックス。
[3](A)液糖及び(C)酵素を含有し、水分活性が0.80以下である穀粉生地用プレミックス。
[4]前記(A)液糖の含有量が90質量%以上である、[3]に記載の穀粉生地用プレミックス。
[5](A)液糖、(B)米油由来ガム質及び(C)酵素を含有し、水分活性が0.80以下である穀粉生地用プレミックス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、穀粉生地への分散性に優れ、保存性が向上した、低濃度から高濃度まで任意に穀粉生地へ米油由来ガム質又は酵素を配合できる穀粉生地用プレミックスを提供することができる。
またこれらの穀粉生地用プレミックスは穀粉生地への分散性が向上することにより、例えば製パンにおいてボリューム向上効果やソフトさ向上効果が十分に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の穀粉生地用プレミックスは、(A)液糖に、(B)米油由来ガム質および酵素から選ばれる1種類以上を含有し、水分活性が0.80以下であることを特徴とするものであり、穀粉生地に混合して使用するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
(A)液糖
本発明に用いられる(A)液糖とは、液体状態の糖類、または、粉糖を溶液状態にしたものである。具体的には、グルコース、マント―ス、シュークロース、ラクトース、トレハロース、マルトトリオース、テトラオース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類、澱粉加水分解物及びこれらを還元した糖アルコール、又は、それらの混合物の液状物、例えば、水飴、還元水飴、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖などが用いられる。
流通する商品としては、例えば、「RCS-50」(王子コーンスターチ(株)製、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖、水分活性0.73)、「アマミール」(三菱商事フードテック(株)製、還元水飴、水分活性0.82)などが挙げられる。
【0010】
本発明によれば、穀粉生地への分散性に優れ、保存性が向上した、低濃度から高濃度まで任意に穀粉生地へ米油由来ガム質および酵素を配合できる穀粉生地用プレミックスを提供することができる。
【0011】
(A)液糖の水分活性は0.85以下が好ましく、0.80以下がさらに好ましく、0.75以下が特に好ましい。また、下限値としては、特に制限されないが、0.60以上が好ましく、0.65以上が特に好ましい。
さらに、水分活性が0.85以下の(A)液糖と(B)米油由来ガム質を混合した場合、穀粉生地への分散性を向上するとともに保存期間の長期化に伴うカビ等の微生物の発生を抑制しつつ、(B)米油由来ガム質の分離の発生を抑制することができる。(A)液糖の自由水の量が増加すると、(B)米油由来ガム質の分散性の低下を引き起こすおそれがあり、(A)液糖の水分活性は小さいことが好ましい。
また、水分活性が0.85以下の(A)液糖と(C)酵素を混合した場合、保存期間の経過による(C)酵素の活性低下を抑制して、穀粉生地用プレミックスとして優れた機能を得られるとともに保存期間の長期化に伴うカビ等の微生物の発生を抑制する。
【0012】
本発明の穀粉生地用プレミックスにおける(A)液糖の含有量は、(B)米油由来ガム質や(C)酵素の含有量によって適宜調整されるが、例えば、下限値としては、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上である。また、(B)米油由来ガム質を含有する穀粉生地用プレミックスの場合には、上限値としては、例えば、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下である。
【0013】
(B)米油由来ガム質
本発明に用いる(B)米油由来ガム質は、米糠から搾油された精製前の米原油に含まれるガム状の粘着物質であり、米油精製時の副生成物である。各種植物原油の中でも、米原油に特異的に多くガム質が含まれている。
その製造方法は特に限定されないが、米糠を110~120℃のクッカー処理し、水分を低減させたのち、ヘキサンを用いて搾油後、ヘキサンを留去し、得られた米原油に60~90℃の温水を対油1~3質量%添加し、穏やかに攪拌することにより米油由来ガム質を米原油から析出させ、その後、沈殿、遠心分離など任意の方法により米原油から分離し、乾燥、蒸留等などにより水分を除去して米油由来ガム質を得ることができる。これは米油の一般的な精製工程で得られた副生成物である。
なお、米原油から得られるアセトン不溶物量は、米糠に含まれるホスホリパーゼの活性や米糠の保存状態、水和条件により変動する。また、米油由来ガム質に含まれるアセトン不溶物の含有量は、遠心分離などの米原油から米油由来ガム質を分離する手段により調整することができる。
【0014】
本発明の(B)米油由来ガム質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等からなるリン脂質混合物、トリグリセライド、遊離脂肪酸、ロウ、その他多種の成分が含まれる混合物であり、その成分のすべてを特定することはできないが、上記の工程を経て米原油から得られたものであり、アセトン不溶物20質量%以上75質量%以下、酸価50以下、水分含量5質量%以下であるものが好ましく、水分含量1質量%以下であるものがより好ましい。アセトン不溶物の下限値としてより好ましくは35質量%以上である。なお、アセトン不溶物は基準油脂分析試験法の「4.3.1-2013 アセトン不溶物」に準じて、酸価は基準油脂分析試験法の「2.3.1-2013 酸価」に準じて測定した。
【0015】
(B)米油由来ガム質は粘度が高く、水へ不溶のためそのまま穀粉生地へ添加しても分散せず効果を発揮することができない。しかし(A)液糖と(B)米油由来ガム質を混合し、穀粉生地へ添加した場合、液糖の水への親和性により(B)米油由来ガム質は容易に穀粉生地へ均一分散することができる。穀粉生地へ均一分散した(B)米油由来ガム質は、グルテンの繋がりを強め、例えばパンにおいてはボリューム向上効果やソフトさ向上効果等が得られる。
【0016】
本発明の穀粉生地用プレミックスにおける(B)米油由来ガム質の含有量は特に制限されないが、例えば10質量%以上、80質量%以下である。10質量%以上の場合には(B)米油由来ガム質の効果を十分に発揮することができる。また80質量%以下であれば本発明の穀粉生地用プレミックスを穀粉生地に混合する際の分散性に優れ、本発明の効果を十分に発揮することができる。(B)米油由来ガム質の含有量の下限値は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。(B)米油由来ガム質の含有量の上限値は、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。
【0017】
(B)米油由来ガム質は上記方法にて製造してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、「Ricelec BK」(Irgovel社製)等が商業的に入手できる。
【0018】
(C)酵素
本発明に用いる(C)酵素の種類は特に制限されないが、例えば、α-アミラーゼ、マルトース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、6-α-グルカノトランスフェラーゼ等の粉末酵素が好ましく用いられる。
【0019】
本発明の穀粉生地用プレミックスにおける(C)酵素の含有量は特に制限されないが、例えば0.1~5質量%である。0.1質量%以上の場合には(C)酵素の効果を十分に発揮することができる。また5質量%以下であれば本発明の穀粉生地用プレミックスを穀粉生地に混合する際の分散性に優れ、本発明の効果を十分に発揮することができる。(C)酵素の含有量の下限値は、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.4質量%以上である。(C)酵素の含有量の上限値は、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
【0020】
水溶性の(A)液糖に(C)酵素を分散させることで、穀粉生地中の澱粉やグルテン等になじみやすく、生地への分散性を向上することができるため、酵素の機能を最大限に発揮することができる。
【0021】
[水分活性]
水分活性とは食品中の自由水の割合を表す数値であり、食品の保存性の指標とされるものである。本発明では、穀粉生地用プレミックスの水分活性を0.80以下とすることにより、穀粉生地用プレミックスの保存性を高めることができ、さらに穀粉生地への分散性が優れるといった想定外の効果を見出した。穀粉生地用プレミックスの保存性の観点から、0.75以下が好ましい。また、(B)米油由来ガム質又は(C)酵素の穀粉生地への分散性が向上するという観点から、0.50以上が好ましく、0.60以上がより好ましく、0.65以上が特に好ましい。
なお、本発明の水分活性は、水分活性測定装置(商品名:HygroLab、Rotronic社製)を用いて測定した。
【0022】
本発明における穀粉生地とは、穀粉に水、卵などの液状成分を混ぜ合わせた生地を指す。穀粉生地は加熱工程を経て、パン、ケーキ等さまざまな食品となる。特に限定されないが、穀粉としては、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、さつまいも澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱粉、くず澱粉等を挙げることができる。穀粉の他に、イースト、イーストフード、乳化剤、油脂、加工澱粉、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー、レーズン等の乾燥果実等が挙げられる。
穀粉生地は、その目的(パン、スポンジケーキ等)により水分量が異なるが、穀粉生地の水分活性は一般的に0.75以上0.98以下である。この範囲の水分活性である穀粉生地を本発明では好ましく用いることができる。
【0023】
[穀粉生地用プレミックスの製造方法]
本発明における穀粉生地用プレミックスは(A)液糖に対して、(B)米油由来ガム質および(C)酵素から選ばれる1種以上を添加、混合できればよい。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
[米油由来ガム質の製造]
米糠を120℃で加熱後、ヘキサンにて油溶成分を抽出し、110℃にて加熱することで溶媒を除去した米原油を用いた。
米原油を70℃に加温し、遠心分離を行い、夾雑物である沈殿部を除去した。その後、70℃の温水を米原油に対して3質量%添加し、攪拌後、遠心分離を行い、沈殿した水和物を得た。この水和物を、凍結乾燥機にて乾燥させ、水分量が5質量%以下となった米油由来ガム質を得た。得られた米油由来ガム質を以下のアセトン不溶物量は30質量%であった。
得られた米油由来ガム質を用いて、以下に示す実施例の穀粉生地用プレミックスを製造した。
【0025】
[穀粉生地用プレミックスの製造]
(実施例1-1~1-5、比較例1-1~1-2)
表1に示す配合組成の穀粉生地用プレミックスをベースに以下の方法により製造した。実施例1-1では、液糖(RCS-50)5kgをビーカー内でプロペラ攪拌にて攪拌しながら45℃まで加温する。そこに、45℃に加温した米油由来ガム質 5kgを少しずつ加え、投入後20分間攪拌を行い、穀粉生地用プレミックスを得た。
同様に、実施例1-2~1-5ついても表1に示す配合組成をベースに穀粉生地用プレミックスを上記方法で製造した。比較例1-1については米油ガム質と液糖(RCS-50)を混合せず、穀粉生地へ別々に添加した。比較例1-2については45℃まで加温した水5kgをビーカー内でプロペラ攪拌にて攪拌しながら、45℃に加温した米油由来ガム質 5kgを少しずつ加え、投入後20分間攪拌を行い、穀粉生地用プレミックスを得たが、攪拌停止直後に分離した。そして分離したものを穀粉生地へ添加した。
【0026】
(実施例2-1、比較例2-1~2-2)
表2に示す配合組成の穀粉生地用プレミックスをベースに以下の方法により製造した。実施例2-1では、液糖(RCS-50)9.95kgをビーカー内でプロペラ攪拌にて攪拌しながら45℃まで加温する。そこに、粉末酵素(スミチームL)50gを少しずつ加え、投入後20分間攪拌を行い、穀粉生地用プレミックスを得た。
比較例2-1については、液糖(RCS-50)と粉末酵素(スミチームL)を混合せず、穀粉生地へ別々に添加した。比較例2-2については45℃まで加温した水9.95kgをビーカー内でプロペラ攪拌にて攪拌しながら、粉末酵素(スミチームL)50gを少しずつ加え、投入後20分間攪拌を行い、穀粉生地用プレミックスを得た。
【0027】
(実施例3-1、比較例3-1)
表3に示す配合組成の穀粉生地用プレミックスをベースに以下の方法により製造した。液糖(RCS―50)4.95kgをビーカー内でプロペラ攪拌にて攪拌しながら45℃まで加温する。そこに、45℃に加温した米油由来ガム質 5kgを少しずつ加え、投入後10分間攪拌を行い、さらに粉末酵素(スミチームL)50gを少しづつ加え、投入後10分間攪拌を行い、穀粉生地用プレミックスを得た。比較例3-1については、液糖(RCS-50)、米油由来ガム質及び粉末酵素(スミチームL)を混合せず、穀粉生地へ別々に添加した。
【0028】
[評価方法]
それぞれの評価項目について、評価方法を下記に記す。
【0029】
(穀粉生地用プレミックスの水分活性)
製造した穀粉生地用プレミックスの水分活性は水分活性測定装置(商品名:HygroLab、Rotronic社製)を用いて測定した。具体的には、実施例又は比較例の穀粉生地用プレミックス各10gを水分活性測定装置の専用シャーレに配置し、25℃で水分活性を測定した。
【0030】
(穀粉生地用プレミックスの状態)
製造した穀粉生地用プレミックスを30℃、30日間保管し、状態について目視にて確認した。分離(沈殿)がないものを「良好」とし、分離(沈殿)があるものを「分離」とした。「良好」のみ合格とした。実施例1-1~1-5、比較例1-2について、米油由来ガム質と液糖が分離していないか確認を行った。実施例2-1、比較例2-2について、酵素が底部へ沈殿していないか確認を行った。実施例3-1について、米油由来ガム質と、液糖及び酵素が分離・沈殿していないか確認を行った。
【0031】
(穀粉生地用プレミックスの保存性)
製造した穀粉生地用プレミックスを30℃、30日間保管し、カビの発生について目視にて確認した。カビの発生がわずかにでも確認できたものは「有」、発生が確認できなかったものは「無」とした。「無」のみ合格とした。
【0032】
(穀粉生地への分散性評価:目視試験)
小麦粉1kg、イースト20g、イーストフード1g、上白糖50g、塩17g、脱脂粉乳20g、水690gを関東混合機工業(株)製ミキサーボウルに投入し、ドゥフックにて低速2分間、中低速5分間攪拌後、ショートニング50gを投入し、低速3分間、中低速3分間混合後、穀粉生地用プレミックス10g投入し、低速にて攪拌し、目視にて穀粉生地用プレミックスの分散状況を確認した。
穀粉生地用プレミックスが穀粉生地へ添加後攪拌にて1分以下で分散した場合を「5」、1分を超えて2分以下で分散した場合を「4」、2分を超えて3分以下で分散した場合を「3」、3分を超えて5分以下で分散した場合を「2」、5分を超えても分散しない場合を「1」とし評価した。「5」、「4」のみ合格とした。
なお、表2実施例2-1、比較例2-1~2-2、実施例3-1、比較例3-1の酵素の分散性については目視にて確認できないため、製パン試験においてのボリューム、ソフトさ評価結果を分散性評価の指標とした。
【0033】
(穀粉生地への分散性評価:製パン試験)
ボリューム、ソフトさの評価については以下に示す配合にてワンローフ食パンを製造し評価を行った。なお、米油由来ガム質および酵素は穀粉生地へ均一に分散しなければ十分な効果を発揮できないことから、ボリューム、ソフトさ評価は穀粉生地への分散性評価の指標となる。
小麦粉1kg、イースト20g、イーストフード1g、上白糖50g、食塩17g、脱脂粉乳20g、水690gを関東混合機工業(株)製ミキサーボウルに投入し、ドゥフックにて低速2分間、中低速5分間攪拌後、ショートニング50gを投入し、低速3分間、中低速3分間混合後、穀粉生地用プレミックス10g投入し、低速2分間攪拌し穀粉生地(パン生地)を得た。80分間発酵したのち、430gに分割し、20分間のベンチタイムをとり、(株)オシキリ製モルダーにてコッペパン型に成型し、食パン型に詰め、温度38℃、湿度85%にて60分間ホイロをとり、上火180℃、下火210℃のオーブンにて28分間焼成しワンローフ食パンを製造した。製造後、室温まで自然放冷し、ビニール袋に密閉し室温で保管した。保管1日後に、ボリューム、ソフトさの評価を行った。
【0034】
(ボリュームの評価方法)
焼成後1日目のワンローフ食パンの比容積を測定し、ボリューム評価の指標とした。比容積は、アステックス(株)製3Dレーザー体積計を用いて測定した。各表において、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1のワンローフ食パンの比容積を100とし、比容積が105以上の場合を「5」、105未満、102以上の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ合格とした。
【0035】
(ソフトさの評価方法)
焼成後1日目のワンローフ食パンのソフトさを測定し、ソフトさ評価の指標とした。ワンローフ食パンを幅3cmでスライスし、中心部を4cm×4cmの正方形にカットしたものをサンプルとした。上面から1.5cm圧縮するのに必要な応力[N]を(株)山電製レオメーターで測定し、ソフトさの指標とした。各表において、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1のワンローフ食パンのソフトさを100とし、ソフトさが90未満の場合を「5」、90以上、95未満の場合を「4」、95以上、105未満の場合を「3」、105以上、110未満の場合を「2」、110以上の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ合格とした。
【0036】
(酵素の残存活性)
1分間に1μmolのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1uとして定義し、1%の可溶性デンプン溶液を基質とし、40℃、pH7で10分間反応させ、生じた還元糖を定量することで酵素活性を求めた。
30℃、30日間保管した穀粉生地用プレミックス中の酵素活性を測定し、スミチームLの酵素活性から残存活性を評価した。
スミチームLの酵素活性を100とした際に、酵素の残存活性が95以上の場合を「5」、95未満90以上の場合を「4」、90未満85以上の場合を「3」、85未満80以上の場合を「2」、80未満の場合を「1」として評価した。「5」のみ合格とした。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
(評価結果)
表1より、(A)液糖に(B)米油由来ガム質を混合することで分離なく良好な状態の穀粉生地用プレミックスが得られることが分かる。またカビ等の発生もなく、穀粉生地への分散性も優れていることが分かる。さらに、米油由来ガム質が穀粉生地へ均一分散することで、パンのボリューム、ソフトさが向上することが分かる(実施例1-1~1-5)。一方、穀粉生地用プレミックスの原料である米油由来ガム質と液糖を、混合することなく別々に穀粉生地へ投入した場合、米油由来ガム質は穀粉生地中へ均一分散せず、その結果してパンのボリューム、ソフトさ向上効果は得られない(比較例1-1)。また、プレミックスの原料として液糖ではなく水を用いた場合、米油由来ガム質と水は分離し、さらにカビの発生がみられた(比較例1-2)。
表2より、(A)液糖に(C)酵素を混合することで酵素は液糖内に均一分散され良好な状態の穀粉生地用プレミックスが得られることが分かる。またカビ等の発生もなく保存期間中の酵素の残存活性も高く維持された。さらに酵素が液糖内に均一分散することで、穀粉生地へ酵素が均一分散することができ、パンのボリューム、ソフトさが向上することが分かる(実施例2-1)。一方、穀粉生地用プレミックスの原料である酵素と液糖を、混合することなく別々に穀粉生地へ投入した場合、酵素は穀粉生地中へ均一分散せず、その結果してパンのボリューム、ソフトさ向上効果は得られない(比較例2-1)。プレミックスの原料として液糖ではなく水を用いた場合、酵素は溶解せず沈殿し、穀粉生地中へ均一分散せず、その結果としてパンのボリューム、ソフトさ向上効果は得られないことが分かる(比較例2-2)。
表3においても、表1、表2の結果と同様に本発明の穀粉生地用プレミックスを用いると良好な結果が得られた(実施例3-1)。一方、穀粉生地用プレミックスの原料である液糖、米油由来ガム質、酵素を、混合することなく別々に穀粉生地へ投入した場合、パンのボリューム、ソフトさ向上効果は得られなかった(比較例3-1)。
【0042】
(使用原料)
(1)(商品名)「Ricelec BK」、Irgovel製、アセトン不溶物量60質量%
(2)(商品名)「RCS-50」、王子コーンスターチ(株)製、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖、水分活性0.73
(3)(商品名)「アマミール」、三菱商事フードテック(株)製、還元水飴、水分活性0.82
(4)(商品名)「スミチームL」、新日本化学工業(株)製、12000u/g、至適温度50℃
【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、穀粉生地への分散性に優れ、保存性が向上した、低濃度から高濃度まで任意に穀粉生地へ米油由来ガム質および酵素を配合できる穀粉生地用プレミックスを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、(A)液糖及び(B)米油由来ガム質又は(C)酵素を含有し、水分活性が0.80以下である穀粉生地用プレミックスを提供する。本発明によれば、穀粉生地への分散性に優れ、保存性が向上した、低濃度から高濃度まで任意に穀粉生地へ米油由来ガム質および酵素を配合できる穀粉生地用プレミックスを提供することができる。
【選択図】なし