(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20240220BHJP
F02B 37/24 20060101ALI20240220BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F02B37/24
F01D25/24 E
F01D25/24 L
(21)【出願番号】P 2022565140
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2021039683
(87)【国際公開番号】W WO2022113619
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020195046
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】淺川 貴男
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0038742(US,A1)
【文献】特開2009-062840(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009007663(DE,A1)
【文献】特開2004-132367(JP,A)
【文献】国際公開第2020/001805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F02B 37/24
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車を収容するタービンハウジングと、
前記タービン翼車が固定された回転軸を回転可能に支持するベアリングハウジングと、
前記タービンハウジングに収容され、前記タービン翼車を囲むと共に前記タービン翼車に流体を導く可変容量機構と、
前記回転軸に沿う軸方向において、前記可変容量機構と前記ベアリングハウジングとに挟持されるばね部材と、を備え、
前記可変容量機構は、前記タービン翼車を囲むように形成されたクリアランスコントロールプレートと、前記軸方向において前記クリアランスコントロールプレートよりも前記ベアリングハウジング側に配置されたノズルリングと、を有し、
前記クリアランスコントロールプレートと前記ノズルリングの間には、前記タービン翼車に前記流体を導く接続流路が形成され、
前記
ノズルリングは、前記タービン翼車又は前記回転軸が配置される貫通穴を囲む内周部と、前記回転軸の軸線からの距離が前記内周部よりも大きい外周部と、を有し、
前記外周部は、前記ばね部材が接触する第1の端面と、前記第1の端面の背面側に配置され前記タービンハウジングが接触する第2の端面と、を含む、過給機。
【請求項2】
前記外周部は、前記第1の端面と前記第2の端面とを接続する外周面部をさらに含み、
前記タービンハウジングは、前記外周面部と対向する内周面部を有し、
前記内周面部の内径は、前記外周面部の外径より大きい、請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
前記回転軸に沿う軸方向において、前記可変容量機構と前記ベアリングハウジングとの間に配置された補助ばね部材を備える、請求項1又は請求項2に記載の過給機。
【請求項4】
前記ベアリングハウジングは、前記回転軸に沿う軸方向に向く第1突き当て面を有し、
前記タービンハウジングは、前記ベアリングハウジングの前記第1突き当て面に突き当てられる第2突き当て面を有し、
前記第1突き当て面に第2突き当て面が突き当たる位置は、前記回転軸と交差する径方向において、前記ばね部材よりも外側である、請求項1~3の何れか一項に記載の過給機。
【請求項5】
前記ばね部材は、前記第1の端面と前記第1突き当て面とに挟持される、請求項4に記載の過給機。
【請求項6】
前記可変容量機構は、前記回転軸に沿う軸方向において、前記ベアリングハウジングに面するノズルリングを有し、
前記ノズルリングは、前記内周部及び前記外周部を含む、
請求項1~5の何れか一項に記載の過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2及び3は、可変容量機構を備えた過給機を開示する。例えば、特許文献1に記載の過給機は、タービンハウジングと、取付部を有する可変容量機構と、可変容量機構の取付部を支持する支持部と、支持部を押圧する付勢部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-243374号公報
【文献】特開2017-67033号公報
【文献】特開2009-62840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような過給機の付勢部は、可変容量機構をタービンハウジングに対して押圧している。付勢部が可変容量機構に接する位置は、可変容量機構がタービンハウジングに接する位置に対してずれている。従って、曲げ応力が可変容量機構に発生する。過給機には、高温のガスが供給される。従って、過給機の構成部品は、稼働時に高温にさらされる。その結果、可変容量機構の構成部品にいわゆるクリープ現象による変形が発生する。可変容量機構の構成部品に発生するいわゆるクリープ現象による変形によって、過給機の信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、信頼性を向上できる過給機を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の過給機は、タービン翼車を収容するタービンハウジングと、タービン翼車が固定された回転軸を回転可能に支持するベアリングハウジングと、タービンハウジングに収容され、タービン翼車を囲むと共にタービン翼車に流体を導く可変容量機構と、回転軸に沿う軸方向において、可変容量機構とベアリングハウジングとに挟持されるばね部材と、を備える。可変容量機構は、タービン翼車又は回転軸が配置される貫通穴を囲む内周部と、回転軸の軸線からの距離が内周部よりも大きい外周部と、を有する。外周部は、ばね部材が接触する第1の端面と、第1の端面の背面側に配置されタービンハウジングが接触する第2の端面と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の過給機は、信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の過給機の断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の過給機の主要部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態の過給機の主要部を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、変形例の過給機の断面図の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の過給機は、タービン翼車を収容するタービンハウジングと、タービン翼車が固定された回転軸を回転可能に支持するベアリングハウジングと、タービンハウジングに収容され、タービン翼車を囲むと共にタービン翼車に流体を導く可変容量機構と、回転軸に沿う軸方向において、可変容量機構とベアリングハウジングとに挟持されるばね部材と、を備える。可変容量機構は、タービン翼車又は回転軸が配置される貫通穴を囲む内周部と、回転軸の軸線からの距離が内周部よりも大きい外周部と、を有する。外周部は、ばね部材が接触する第1の端面と、第1の端面の背面側に配置されタービンハウジングが接触する第2の端面と、を含む。
【0010】
ばね部材は、可変容量機構の外周部の第1の端面を押し付ける。可変容量機構は、第1の端面の背面に配置される第2の端面が、タービンハウジングに押し付けられる。つまり、第1の端面にばね部材の押し付ける力が加わるので、第1の端面の背面に配置される第2の端面に反力が加えられる。従って、この構成は、可変容量機構の曲げ応力の発生を抑制できる。従って、過給機の信頼性は、向上する。
【0011】
外周部は、第1の端面と第2の端面とを接続する外周面部をさらに含んでもよい。タービンハウジングは、外周面部と対向する内周面部を有してもよい。内周面部の内径は、外周面部の外径より大きくてもよい。可変容量機構に高温による線膨張が発生したとき、外周面部の外径と内周面部の内径との間の隙間は、可変容量機構の回転軸と交差する径方向に沿う線膨張の変形を許容する。従って、過給機の信頼性は、向上する。
【0012】
過給機は、回転軸に沿う軸方向において、可変容量機構とベアリングハウジングとの間に配置された補助ばね部材を備えてもよい。過給機は、可変容量機構に加えられる力を分散できる。従って、過給機の信頼性は向上する。
【0013】
ベアリングハウジングは、回転軸に沿う軸方向に向く第1突き当て面を有してもよい。タービンハウジングは、ベアリングハウジングの第1突き当て面に突き当てられる第2突き当て面を有してもよい。第1突き当て面に第2突き当て面が突き当たる位置は、回転軸と交差する径方向において、ばね部材よりも外側でもよい。ばね部材の潰し代は、回転軸に沿う軸方向に沿う第1突き当て面の位置と、第2突き当て面の位置と、に基づいて定まる。従って、ばね部材は、可変容量機構を適正な荷重で押し付けることができる。従って、過給機の可変容量機構の変形を抑制できる。
【0014】
ばね部材は、第1の端面と第1突き当て面とに挟持されてもよい。回転軸に沿う軸方向において、第1突き当て面の位置及びばね部材を挟持する面の位置が面一に定められる。従って、過給機のばね部材の潰し代は、適正に管理される。従って、過給機の可変容量機構の変形を抑制できる。
【0015】
可変容量機構は、回転軸に沿う軸方向において、ベアリングハウジングに面するノズルリングを有してもよい。ノズルリングは、内周部及び外周部を含んでもよい。
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本開示の過給機を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
<過給機>
図1に示す過給機1は、第1実施形態の可変容量型の過給機である。過給機1は、例えば、船舶又は車両の内燃機関に適用される。過給機1は、タービン10と、コンプレッサ20と、を有する。タービン10は、タービンハウジング11と、タービン翼車12と、可変容量機構30と、を有する。タービンハウジング11は、スクロール流路13を有する。スクロール流路13は、タービン翼車12の周囲に配置されている。スクロール流路13は、回転軸線AXを中心とした周方向に延びる。以下の説明では、回転軸線AXを中心とした周方向を単に「周方向」と呼ぶ。コンプレッサ20は、コンプレッサハウジング21と、コンプレッサ翼車22と、を有する。コンプレッサ翼車22は、コンプレッサハウジング21に収納される。コンプレッサハウジング21は、スクロール流路23を有する。スクロール流路23は、コンプレッサ翼車22の周囲に配置されている。スクロール流路23は、周方向に延びる。
【0018】
タービン翼車12は、回転軸2の第1端に固定されている。タービンハウジング11は、タービン翼車12を収容する。コンプレッサ翼車22は、回転軸2の第2端に固定されている。タービンハウジング11とコンプレッサハウジング21との間には、ベアリングハウジング3が設けられている。回転軸2は、ベアリング4を介してベアリングハウジング3に回転可能に支持される。回転軸2、タービン翼車12及びコンプレッサ翼車22は、一体の回転体を構成する。回転体は、回転軸2の回転軸線AXを回転中心にして回転する。
【0019】
タービンハウジング11は、流入口と、流出口14と、を有する。内燃機関から排出された排気ガスは、流入口を通過した後にタービンハウジング11に流入する。流入した排気ガスは、スクロール流路13を通過した後にタービン翼車12に流入する。タービン翼車12に流入した排気ガスは、タービン翼車12を回転させる。タービン翼車12を回転させた後、排気ガスは、流出口14を通過した後にタービンハウジング11の外部に流出する。
【0020】
コンプレッサハウジング21は、吸入口24と、吐出口と、を有する。タービン翼車12の回転に伴って、回転軸2を介してコンプレッサ翼車22が回転する。回転するコンプレッサ翼車22は、吸入口24を通過した外部の空気を吸入する。吸入された空気は、コンプレッサ翼車22及びスクロール流路23を通過する間に圧縮される。圧縮された空気は、吐出口から吐出される。圧縮空気は、内燃機関に供給される。
【0021】
<可変容量機構>
タービン10は、接続流路Sを有する。接続流路Sは、スクロール流路13からタービン翼車12へ排気ガスを導く。タービン10は、可変容量機構30を有する。可変容量機構30は、接続流路Sの断面積を調整する。可変容量機構30は、接続流路Sの断面積を調整する。スクロール流路13からタービン翼車12に供給される排気ガスの流速は、接続流路Sの断面積の調整によって制御される。従って、可変容量機構30は、タービン翼車12の回転数を所望の値に制御できる。
【0022】
可変容量機構30は、タービンハウジング11に収容される。可変容量機構30は、タービン翼車12を囲む。可変容量機構30は、タービン翼車12に排気ガス(流体)を導く。可変容量機構30の形状は、回転軸線AXを中心としたリング状である。可変容量機構30は、貫通穴30hを有する。可変容量機構30は、貫通穴30hに配置されたタービン翼車12を周方向に囲む。可変容量機構30は、スクロール流路13と流出口14との間に配置される。
【0023】
図2に示すように、可変容量機構30は、CCプレート31(Clearance Control Plate)と、ノズルリング32と、複数のノズルベーン33と、駆動機構34と、を有する。CCプレート31及びノズルリング32の形状は、可変容量機構30と同様に回転軸線AXを中心としたリング状である。CCプレート31及びノズルリング32は、可変容量機構30の外形の一部を構成する。回転軸線AXに沿った軸方向において、CCプレート31は、ノズルリング32に対して平行に配置される。以下の説明では、回転軸線AXに沿った軸方向を、単に「軸方向」という。CCプレート31とノズルリング32との間隔は、CCピンによって維持される。CCプレート31は、ノズルリング32に対面する。軸方向において、ノズルリング32は、CCプレート31よりもベアリングハウジング3側に配置される。CCプレート31とノズルリング32との間には、接続流路Sが形成される。
【0024】
ノズルリング32は、内周部35と、外周部36と、を有する。内周部35は、ノズルリング32において、貫通穴32hを囲んでいる。貫通穴32hには、タービン翼車12及び回転軸2が配置される。内周部35は、ノズルリング32の内周側の部分である。例えば、ノズルベーン33の軸は、貫通穴に配置されている。例えば、内周部35は、貫通穴が配置される基準円の内側と規定されてもよい。外周部36は、回転軸線AXからの距離が内周部35よりも大きい。外周部36は、ノズルリング32の外周側の部分である。例えば、ノズルベーン33の軸は、貫通穴に配置されている。外周部36は、例えば、貫通穴が配置される基準円の外側と規定してもよい。ノズルリング32の外径は、外周部36の外径によって規定される。
【0025】
複数のノズルベーン33は、CCプレート31とノズルリング32との間に配置される。複数のノズルベーン33は、回転軸線AXを中心とした基準円上に等間隔に配置される。互いに隣接するノズルベーン33は、ノズルを構成する。ノズルベーン33は、回転軸線AXに平行な軸線の周りに回転する。複数のノズルベーン33の回転は、同期する。複数のノズルベーン33が回転することで、互いに隣接するノズルベーン33の間隔が変化する。互いに隣接するノズルベーン33の間隔は、接続流路Sの断面積に対応する。つまり、互いに隣接するノズルベーン33の間隔の変化によって、接続流路Sの断面積は調整される。
【0026】
駆動機構34は、ノズルリング32とベアリングハウジング3との間に配置される。駆動機構34は、駆動リング34aと、ノズルリンク板34bと、を有する。駆動リング34aの形状は、回転軸線AXを中心としたリング状である。軸方向において、ノズルリンク板34bは、駆動リング34aよりもベアリングハウジング3側に配置される。駆動リング34aは、ノズルリング32の一部を周方向に囲む。駆動リング34aは、回転軸線AXを中心として、ノズルリング32に対して回転可能である。ノズルリンク板34bの形状は、バー状である。ノズルリンク板34bの第1端は、ノズルベーン33の軸端部に接続される。ノズルリンク板34bの第2端は、駆動リング34aに接続される。ノズルリンク板34bの第2端は、駆動リング34aの回転に伴って周方向に沿って移動する。ノズルリンク板34bの第2端の移動によって、ノズルリンク板34bの第1端に接続された複数のノズルベーン33が回転する。
【0027】
<ばね部材>
過給機1は、ばね部材5を更に備える。ばね部材5は、可変容量機構30とベアリングハウジング3とに挟持されている。ばね部材5は、軸方向に沿って、圧縮変形している。ノズルリング32の外周部36は、ばね部材5と接触する第1の端面36aを含む。第1の端面36aとベアリングハウジング3の端面3aとの間の軸方向の距離は、ばね部材5の自然長より短い。従って、ばね部材5は、軸方向に沿って圧縮変形する。ばね部材5の変形は、弾性変形である。従って、圧縮されたばね部材5は、弾性力を発揮する。
【0028】
一例として、ばね部材5は、皿ばねである。皿ばねの形状は、中心に貫通穴を有する円板であり、かつ、円錐状に湾曲している。皿ばねは、厚さ方向に沿って圧縮変形するように用いられる。ベアリングハウジング3の端面3aは、ばね部材5の底面と接触する。ベアリングハウジング3の端面3aは、皿ばねの外径部分と接触する。ノズルリング32の第1の端面36aは、ばね部材5の上面と接触する。ノズルリング32の第1の端面36aは、皿ばねの内径部分と接触する。ノズルリング32の第1の端面36aは、回転軸線AXと交差する径方向に延在する平面である。以下の説明では、回転軸線AXと交差する径方向を、単に「径方向」という。ベアリングハウジング3の端面3aも、径方向に延在する平面である。ノズルリング32の第1の端面36aの形状は、周方向に延在するリング状の面である。ベアリングハウジング3の端面3aの形状も、周方向に延在するリング状の面である。
【0029】
ばね部材5は、ウェーブワッシャであってもよい。
【0030】
ノズルリング32は、第2の端面36bを含む。第2の端面36bは、第1の端面36aの背面側に配置される。第2の端面36bは、タービンハウジング11の端面11aと接触する。第2の端面36bは、第1の端面36aに対して平行である。第2の端面36bの形状は、周方向に延在するリング状である。
【0031】
タービンハウジング11は、ノズルリング32の第2の端面36bと接触する。具体的には、タービンハウジング11の端面11aがノズルリング32の第2の端面36bに接触した領域は、周方向に延在するリング状である。軸方向からみたとき、ノズルリング32の第1の端面36aがばね部材5と接触する径方向の位置は、ノズルリング32の第2の端面36bがタービンハウジング11の端面11aと接触する面の径方向の位置と、重なる。この構成によれば、ばね部材5が発揮する弾性力は、ノズルリング32の第1の端面36aがばね部材5と接触する位置に作用する。軸方向からみたとき、弾性力が作用する位置は、ノズルリング32の第2の端面36bとタービンハウジング11の端面11aとが接触する面と重複する。
【0032】
ノズルリング32の外周部36は、第1の外周面部36cと、第2の外周面部36dと、を含む。円周面である第1の外周面部36cは、第1の端面36aを第2の端面36bに接続する。円周面である第2の外周面部36dは、第2の端面36bからタービンハウジング11側に向かって延在する。第1の外周面部36c及び第2の外周面部36dは、回転軸線AXを中心とした円筒の外面である。第1の外周面部36cは、可変容量機構30の径方向における外径を規定する。第2の外周面部36dの外径は、第1の外周面部36cの外径より小さい。例えば、第2の外周面部36dの外径は、CCプレート31の外径と等しくてもよい。
【0033】
タービンハウジング11は、第1の内周面部11bと、第2の内周面部11cと、を有する。第1の内周面部11bは、回転軸線AXを中心とした円筒の内面である。第2の内周面部11cも、回転軸線AXを中心とした円筒の内面である。内周面である第1の内周面部11bは、タービンハウジング11の端面11aから、ベアリングハウジング3側に向かって延在する。内周面である第2の内周面部11cは、タービンハウジング11の端面11aから、第1の内周面部11bの反対側に向かって延在する。タービンハウジングの端面11aは、第1の内周面部11bを第2の内周面部11cに接続する。第1の内周面部11bは、回転軸線AX側に向かって、ノズルリング32の第1の外周面部36cと径方向に沿って互いに向き合う。第2の内周面部11cは、回転軸線AX側に向かって、ノズルリング32の第2の外周面部36dと径方向に沿って対向する。
【0034】
タービンハウジング11の第1の内周面部11bの内径は、ノズルリング32の第1の外周面部36cの外径よりも大きい。径方向において、第1の内周面部11bと第1の外周面部36cとの間には、隙間が存在する。タービンハウジング11の第2の内周面部11cの内径は、ノズルリング32の第2の外周面部36dの外径より大きい。径方向において、第2の内周面部11cと第2の外周面部36dとの間にも、隙間が存在する。
【0035】
過給機1は、シール部材37を有する。シール部材37は、内周部35に配置されている。シール部材37の形状は、回転軸線AXを中心としたリング状の板状部材である。シール部材37の形状は、例えば、円錐状に湾曲する形状であってもよい。シール部材37は、ノズルリング32と、ベアリングハウジング3との間に配置されている。シール部材37は、ノズルリング32とベアリングハウジング3とに挟持される。シール部材37は、タービンハウジング11側の排気ガスがベアリングハウジング3側へ流入することを防止する。
【0036】
ベアリングハウジング3は、軸方向に向く第1突き当て面3bを有する。すなわち、第1突き当て面3bは、軸方向に垂直である。第1突き当て面3bの形状は、周方向に延在するリング状である。第1突き当て面3bの位置は、タービンハウジング11の端面3aよりも径方向の外側である。第1突き当て面3bは、軸方向において、ベアリングハウジング3の端面3aからタービンハウジング11側に突出している。タービンハウジング11は、第2突き当て面11dを有する。第2突き当て面11dは、第1突き当て面3bに突き当てられる。第2突き当て面11dは、第1突き当て面3bに対して平行である。第2突き当て面11dの形状は、周方向に延在するリング状である。第2突き当て面11dは、第1の内周面部11bから径方向の外側に向かって垂直に延在する端面である。第1突き当て面3bに第2突き当て面11dが突き当たる位置は、ばね部材5よりも径方向の外側である。
【0037】
第1実施形態の過給機1によれば、ばね部材5は、可変容量機構30をタービンハウジング11に向かって押し付ける。可変容量機構30は、ノズルリング32を有する。ばね部材5は、ノズルリング32の外周部36に含まれる第1の端面36aを押し付ける。ばね部材5に発生する力は、第1の端面36aに作用する。ノズルリング32の第2の端面36bは、タービンハウジング11に押し付けられる。第2の端面36bは、第1の端面36aの背面に配置される。この力に対する反力は、第1の端面36aの背面に配置される第2の端面36bに作用する。ばね部材5の力と反力とは、偶力の関係である。力の大きさは同じであるが、力の向きが逆である。従って、ばね部材5の力と反力との距離が大きくなるほど、部材を曲げる力が大きくなる。しかし、第1実施形態の過給機1では、ばね部材5が押し付けられる位置から、押し付けられた力の反力が作用する位置までの距離が短い。従って、可変容量機構30は、発生する曲げ応力の大きさを低減できる。可変容量機構30に発生する曲げ応力の大きさが低減されることによって、可変容量機構30の軸方向に沿う変形量が減少する。高温時に可変容量機構30に発生する、いわゆるクリープ現象に起因する変形も抑制される。可変容量機構30に供給される高温のガスによって、可変容量機構30を構成する部品の温度が上昇する。温度の上昇によって、可変容量機構30を構成する部品のヤング率は、低下する。従って、可変容量機構30を構成する部品は、変形しやすい。しかし、可変容量機構30に発生する曲げ応力が小さくなることで、可変容量機構30を構成する部品の変形が抑制される。
【0038】
内周部35に発生するタービンハウジング11側に湾曲する変形は、抑制される。従って、CCプレート31とノズルリング32の間隔を所定の状態に維持できる。その結果、ノズルベーン33が正常に回転可能な状態を、維持することができる。具体的には、ノズルベーン33とCCプレート31との接触が抑制される。また、ノズルベーン33とノズルリング32との接触が抑制される。従って、ノズルベーン33の正常な回転動作が維持される。ノズルベーン33の回転動作は、可変容量機構30の動作に影響を与える。ノズルベーン33の回転動作を維持することによって、可変容量機構30は、確実に動作する。従って、過給機1の信頼性が向上する。
【0039】
過給機1では、軸方向における、第1突き当て面3bの位置に基づいて、ベアリングハウジング3の端面3aとノズルリング32の第1の端面36aとの間の距離が定まる。ばね部材5の潰し代は、軸方向における第1突き当て面3b及び第2突き当て面11dの位置に基づいて決まる。その結果、ばね部材5は、可変容量機構30を適正な荷重で押し付ける。従って、過給機1の可変容量機構30に生じる変形が抑制される。
【0040】
過給機1が高温になった場合、可変容量機構30は、第1の外周面部36cの外径と第1の内周面部11bの内径との間の隙間を許容範囲として、径方向に線膨張できる。この膨張による変形は、可変容量機構30の動作に影響を与えない。可変容量機構30が径方向に線膨張できないことを原因とする、可変容量機構30の動作を妨げるような変形の発生を抑制できる。よって、過給機1は、信頼性をより向上することができる。
【0041】
可変容量機構30は、ばね部材5によってタービンハウジング11に押し付けられている。ばね部材5が発生する軸方向の押し付ける力は、ボルト等の締結による軸力よりも小さい。従って、可変容量機構30は、径方向に容易に線膨張できる。
【0042】
<第2実施形態>
図3に示す過給機1Aは、第2実施形態の可変容量型の過給機である。第2実施形態に係る過給機1Aは、第1実施形態の過給機1と比べて、補助ばね部材6及び遮熱板38を備える点で相違する。
【0043】
過給機1Aは、補助ばね部材6を備える。補助ばね部材6は、軸方向において、遮熱板38を介して可変容量機構30Aとベアリングハウジング3との間に配置されている。
【0044】
過給機1Aは、シール部材37に代えて、遮熱板38を含む。遮熱板38は、内周部35の内側に配置されている。遮熱板38の形状は、回転軸線AXを中心としたリング状である。遮熱板38は、タービンハウジング11からベアリングハウジング3への熱の移動を阻害する。その結果、ベアリングハウジング3側に配置されている部品の温度の上昇が抑制される。補助ばね部材6は、遮熱板38とベアリングハウジング3との間に挟まれることによって、軸方向に圧縮変形する。補助ばね部材6は、圧縮変形に対抗する弾性力を発揮する。補助ばね部材6は、遮熱板38をノズルリング32に押し付ける。
【0045】
第2実施形態の過給機1Aによれば、可変容量機構30Aに加えられる力を、ばね部材5及び補助ばね部材6に分散できる。可変容量機構30Aに加えられる力を分散することで、第2実施形態の過給機1Aは、可変容量機構30Aに発生する変形を抑制できる。第2実施形態の過給機1Aの遮熱板38は、適切な力でノズルリングを押し付けることができる。
【0046】
<第3実施形態>
図4に示す過給機1Bは、第3実施形態の可変容量型の過給機である。第3実施形態の過給機1Bは、第1実施形態の過給機1と比べて、ベアリングハウジング3B及びタービンハウジング11Bの形状等が相違する。
【0047】
ベアリングハウジング3Bの第1突き当て面3bは、ベアリングハウジング3Bの端面3aから突出していない。ベアリングハウジング3Bの端面3aは、第1突き当て面3bと同一面である。第1実施形態よりもばね部材5の潰し代が小さくなるように、タービンハウジング11Bの第2突き当て面11dの位置は、軸方向に沿って調整される。
【0048】
第3実施形態の過給機1Bによれば、軸方向における第1突き当て面3bの位置と、ばね部材5を挟持する端面3aの位置とが同一面に定められる。従って、過給機1Bのばね部材5の潰し代を適正に管理できる。第3実施形態の過給機1Bも、第1実施形態の過給機1と同様に信頼性を向上できる。
【0049】
<変形例>
図5に示す過給機1Cは、第1実施形態の可変容量型の過給機1の変形例である。変形例の過給機1Cは、第1実施形態の過給機1と比べて、ベアリングハウジング3C及び可変容量機構30Cの形状等が相違する。
【0050】
ベアリングハウジング3Cは、径方向に向く第3の内周面3cを有する。第3の内周面3cは、回転軸線AXを中心とした円筒の内面である。ベアリングハウジング3Cにおいて、第3の内周面3cは、ばね部材5を挟持するベアリングハウジング3Cの端面3aから、タービンハウジング11C側に向かって垂直に延在する。第3の内周面3cは、径方向の内側に向かって、ばね部材5と接触する。
【0051】
ノズルリング32Cは、径方向の外側を向く第3の外周面36eを有する。第3の外周面36eは、回転軸線AXを中心とした円筒の外面である。ノズルリング32Cにおいて、第3の外周面36eは、ばね部材5を挟持する第1の端面36aから、ベアリングハウジング3C側に向かって垂直に延在する。第3の外周面36eの外径は、第1の外周面部36cの外径より小さい。第3の外周面36eは、径方向の外側に向かって、ばね部材5と接触する。
【0052】
変形例の過給機1Cのばね部材5は、軸方向において、ノズルリング32Cの第1の端面36aとベアリングハウジング3Cの端面3aとの間に配置される。そして、ばね部材5は、ノズルリング32Cとベアリングハウジング3Cとに挟持される。ばね部材5は、さらに、径方向において、ノズルリング32Cの第3の外周面36eと、ベアリングハウジング3Cの第3の内周面3cとの間に配置される。ばね部材5は、ノズルリング32Cとベアリングハウジング3Cとに挟持される。この構成によっても、第1実施形態の過給機1と同様に、信頼性を向上し得る。
【0053】
なお、変形例の構成は、第1実施形態の過給機1A、第2実施形態の過給機1B及び第3実施形態の過給機1Cに適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 過給機
2 回転軸
3 ベアリングハウジング
3b 第1突き当て面
5 ばね部材
6 補助ばね部材
11 タービンハウジング
11b 第1の内周面部
11d 第2突き当て面
12 タービン翼車
30 可変容量機構
32 ノズルリング
35 内周部
36 外周部
36a 第1の端面
36b 第2の端面
36c 第1の外周面部