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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240220BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F16K31/06 320Z
F16K37/00 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020164563
(22)【出願日】2020-09-30
(62)【分割の表示】P 2020040356の分割
【原出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021139494
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592115504
【氏名又は名称】金子産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(72)【発明者】
【氏名】青山 文明
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/167964(WO,A1)
【文献】特開2019-211180(JP,A)
【文献】特表2017-521310(JP,A)
【文献】特表2017-538626(JP,A)
【文献】特開2003-240145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 31/06-31/165
F16K 31/36-31/42
G01M 13/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁であって、
駆動流体が流れる流路を切り替えるスプール部と、
通電状態に応じて前記スプール部を変位させるソレノイド部と、
前記電磁弁の各部の状態を取得する複数のセンサと、
前記複数のセンサのうち少なくとも1つが載置されるとともに、前記電磁弁を制御する制御部を有する基板と、
前記スプール部、前記ソレノイド部、前記複数のセンサ及び前記基板を収容する収容部とを備え
前記電磁弁は、
主弁に連結された弁軸を前記駆動流体の流体圧に応じて駆動させることで前記主弁の開閉操作を行う駆動装置に対して、前記駆動流体の給排を制御する機能を有し、
前記複数のセンサのうち前記基板に載置されるセンサは、少なくとも、
前記主弁の弁開度情報を取得する主弁開度センサと、
前記駆動流体の供給源に接続される前記スプール部の入力側流路を流れる前記駆動流体の前記流体圧を計測する第1の圧力センサと、
前記駆動装置に接続される前記スプール部の出力側流路を流れる前記駆動流体の前記流体圧を計測する第2の圧力センサとを含む、
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記収容部には、
前記入力側流路と前記第1の圧力センサとの間を連通する第1の流路と、
前記出力側流路と前記第2の圧力センサとの間を連通する第2の流路とが形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁及び流体圧駆動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁弁により駆動流体を制御して主弁を開閉する流体圧駆動弁が知られている。例えば、特許文献1には、プラント設備の配管に使用される流体圧駆動弁として、設備に異常が発生したような緊急時に、電磁弁により駆動流体を制御してボールバルブ(主弁)を閉じることにより、配管を流れる流体を遮断する緊急遮断弁装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-97539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された緊急遮断弁装置は、プラント設備の制御室に設置されて、電磁弁の通電操作を行うロジックコントローラと、弁軸の回動動作、すなわち、ボールバルブの開閉動作を検知して、ロジックコントローラにフィードバックし、ボールバルブの作動確認テストを行うリミットスイッチとを備える。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、開閉動作を伴う作動確認テストにおいて、リミットスイッチを用いて緊急遮断弁装置の状態を監視することしか開示されておらず、作動確認テストにおいて、電磁弁の各部の状態を監視することができないという問題点があった。また、特許文献1では、開閉動作を伴う作動確認テストを行う以外に、電磁弁及び緊急遮断弁装置の異常を診断する手法が開示されておらず、電磁弁及び緊急遮断弁装置の異常の兆候を事前に把握することを目的として予兆保全を行うために必要なデータを取得することができないという問題点があった。さらに、電磁弁の各部に対して各種のセンサを外付けで配置することは可能であるが、その場合、装置構成が複雑かつ煩雑になってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電磁弁単体で電磁弁の各部の状態を監視するとともに、装置構成の簡略化を図ることができる電磁弁及び流体圧駆動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る電磁弁は、
駆動流体が流れる流路を切り替えるスプール部と、
通電状態に応じて前記スプール部を変位させるソレノイド部と、
前記電磁弁の各部の状態を取得する複数のセンサと、
前記複数のセンサのうち少なくとも1つが載置されるとともに、前記電磁弁を制御する制御部を有する基板と、
前記スプール部、前記ソレノイド部、前記複数のセンサ及び前記基板を収容する収容部とを備える、
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る流体圧駆動弁は、
上記電磁弁と、
主弁と、
前記主弁に連結された弁軸を前記駆動流体の流体圧に応じて駆動させることで前記主弁の開閉操作を行う駆動装置とを備え、
前記電磁弁は、
前記駆動装置に対して前記駆動流体の給排を制御する機能を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る電磁弁及び流体圧駆動弁によれば、収容部が、スプール部、ソレノイド部、電磁弁の各部の状態を取得する複数のセンサ、及び、複数のセンサのうち少なくとも1つが載置されるとともに電磁弁を制御する制御部を有する基板を収容する。
【0010】
そのため、収容部には、スプール部及びソレノイド部が収容されるとともに、その収容部内にて、複数のセンサが電磁弁の各部の状態を取得するとともに、それらのうちの少なくとも1つが、制御部を有する基板に載置される。これにより、収容部内に、電磁弁の基本機能だけでなく各部の状態を監視する監視機能についても集約されるので、電磁弁単体で電磁弁の各部の状態を監視するとともに、装置構成の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧駆動弁10の一例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電磁弁1の一例を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る電磁弁1の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る基板5に対する複数のセンサ4の載置例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る流体圧駆動弁10の一例を示す断面図である。
【0014】
流体圧駆動弁10は、配管100の途中に配置される主弁11と、主弁11に連結された弁軸13を駆動流体の流体圧に応じて駆動させることで主弁11の開閉操作を行う駆動装置12と、駆動装置12に対して駆動流体の給排を制御する機能を有する電磁弁1とを備える。
【0015】
流体圧駆動弁10は、例えば、プラント設備において各種のガスや石油等が流れる配管100に設置され、プラント設備に異常が発生したような緊急停止時に、配管100の流れを遮断するための緊急遮断弁として用いられる。なお、流体圧駆動弁10の設置場所や用途は、上記の例に限られない。
【0016】
流体圧駆動弁10には、駆動流体の一例として、空気供給源14から空気(エアー)Aが供給されるものであり、空気供給源14からの空気Aは、第1の空気配管140を介して電磁弁1に供給され、さらに、第2の空気配管141を介して駆動装置12に供給される。また、流体圧駆動弁10には、外部装置15及び電磁弁1の間で各種のデータを送受信するための通信ケーブル150と、外部電源16から電磁弁1に電力を供給するための電力ケーブル160とが接続される。なお、駆動流体は、上記の空気Aに限られず、他の気体でもよいし、液体(例えば、油)でもよい。
【0017】
外部装置15は、例えば、プラント管理用のコンピュータ(ローカルサーバ及びクラウドサーバを含む。)、保守点検者が使用する診断用コンピュータ、又は、USBメモリや外付けHDD等の外部記憶部で構成されている。なお、外部装置15及び電磁弁1の間の
通信は無線通信でもよい。
【0018】
本実施形態では、流体圧駆動弁10は、エアーレスクローズ方式を採用したものである。したがって、定常運転時は、空気供給源14から電磁弁1を介して駆動装置12に空気A(給気)を供給することで、主弁11が全開操作され、緊急停止時や試験運転時は、駆動装置12から電磁弁1を介して空気A(排気)を排出することで、主弁11が全閉操作される。なお、流体圧駆動弁10は、エアーレスオープン方式を採用したものでもよく、その場合には、駆動装置12に空気Aを供給することで全開操作され、駆動装置12から空気Aを排出することで主弁11を全閉操作されてもよい。
【0019】
主弁11は、例えば、ボールバルブと呼ばれる弁で構成されている。主弁11は、その構成例として、配管100の途中に配置される弁箱110と、弁箱110内に回転可能に設けられたボール状の弁体111とを備え、弁体111の上部には、弁軸13の第1の端部130Aが連結されている。弁軸13が0度から90度に回転駆動されることに応じて弁箱110内で弁体111が回転し、主弁11の全開状態(図1に示す状態)と全閉状態が切り替えられる。なお、主弁11として用いられる弁は、ボールバルブに限られず、例えば、バタフライバルブ等の他の形式でもよい。
【0020】
駆動装置12は、例えば、主弁11と電磁弁1との間に配置されるとともに、単作動式のエアシリンダ機構として構成されている。駆動装置12は、その構成例として、円筒状のシリンダ120と、シリンダ内に往復直線移動可能に設けられ、ピストンロッド121を介して連結された一対のピストン122A、122Bと、第1のピストン122A側に設けられたコイルばね123と、第2のピストン122B側に形成された空気給排口124と、シリンダ120を径方向に沿って貫通するように配置された弁軸13とピストンロッド121とが直交する部分に設けられた伝達機構125とを備える。なお、駆動装置12は、単作動式に限られず、例えば、複作動式等の他の形式で構成されていてもよい。
【0021】
第1のピストン122Aは、コイルばね123により主弁11を閉じる方向に付勢される。第2のピストン122Bは、空気給排口124から供給された空気A(給気)によりコイルばね123の付勢力に抗して主弁11を開く方向に押圧される。伝達機構125は、例えば、ラックアンドピニオン機構、リンク機構、カム機構等で構成されており、ピストンロッド121の往復直線運動を回転運動に変換して弁軸13に伝達する。
【0022】
弁軸13は、シャフト状に形成されており、回動可能な状態で駆動装置12を貫通するようにして配置される。弁軸13の第1の端部130Aは、主弁11に連結されるとともに、弁軸13の第2の端部130Bは、電磁弁1により軸支される。なお、弁軸13は、複数のシャフトが、例えば、カップリング等により連結されたものでもよい。
【0023】
電磁弁1は、駆動装置12に対して空気Aの給排を制御する機能を有し、例えば、2ポジションでノーマルクローズタイプ(通電時「開」、非通電時「閉」)の三方電磁弁として構成されている。電磁弁1は、屋内型又は防爆型の電磁弁1のハウジングとして機能する収容部6の内部に、空気Aが流れる流路を切り替えるスプール部2と、通電状態(通電時又は非通電時)に応じてスプール部2を変位させるソレノイド部3とを備える。なお、電磁弁1は、2ポジションでノーマルクローズタイプの三方電磁弁に限られず、3ポジションでもよく、ノーマルオープンタイプでもよく、四方電磁弁等でもよく、任意の組み合わせに基づく各種の形成で構成されていてもよい。また、本実施形態では、電磁弁1は、流体圧駆動弁10におけるパイロットバルブとして用いられるものであるが、電磁弁1の用途はこれに限られない。
【0024】
スプール部2は、空気供給源14に第1の空気配管140を介して接続される入力ポー
ト20と、駆動装置12に第2の空気配管141を介して接続される出力ポート21と、駆動装置12からの排気を排出する排気ポート22とを備える。
【0025】
ソレノイド部3は、通電時に、入力ポート20と出力ポート21との間を連通するように、スプール部2を変位させ、非通電時に、出力ポート21と排気ポート22との間を連通するように、スプール部2を変位させる。
【0026】
したがって、電磁弁1が通電状態である場合には、空気供給源14からの空気A(給気)が、第1の空気配管140、入力ポート20、出力ポート21及び第2の空気配管141の順に流れて、空気給排口124に供給されることで、第2のピストン122Bが押圧されてコイルばね123が圧縮する。そして、コイルばね123の圧縮に応じてピストンロッド121が移動した分だけピストンロッド121及び伝達機構125を介して弁軸13が回転駆動されると、弁箱110内で弁体111が回転し、主弁11が全開状態に操作される。
【0027】
一方、電磁弁1が非通電状態である場合には、シリンダ120内の空気A(排気)が、空気給排口124から第2の空気配管141、出力ポート21及び排気ポート22の順に流れて、外気に排出されることで、第2のピストン122Bの押圧力が低下し、コイルばね123が圧縮状態から復元する。そして、コイルばね123の復元に応じてピストンロッド121が移動した分だけ伝達機構125を介して弁軸13が回転駆動されると、弁箱110内で弁体111が回転し、主弁11が全閉状態に操作される。
【0028】
(電磁弁の構成について)
図2は、本発明の実施形態に係る電磁弁1の一例を示す断面図である。
【0029】
電磁弁1は、上記のスプール部2及びソレノイド部3の他に、電磁弁1の各部の状態を取得する複数のセンサ4と、複数のセンサ4のうち少なくとも1つが載置された基板5と、これらスプール部2、ソレノイド部3、複数のセンサ4及び基板5を収容する収容部6とを備える。
【0030】
収容部6は、スプール部2を収容する第1の収容部60と、第1の収容部60に隣接されるとともに、ソレノイド部3、複数のセンサ4及び基板5を収容する第2の収容部61と、通信ケーブル150及び電力ケーブル160が接続されるターミナルボックス62とを備える。なお、第1の収容部60及び第2の収容部61は、例えば、アルミニウム等の金属材料で製作されている。
【0031】
第1の収容部60は、入力ポート20、出力ポート21及び排気ポート22として、それぞれ機能する開口部(不図示)を有する。
【0032】
第2の収容部61は、両端(第1のハウジング端部610a及び第2のハウジング端部610b)が開放された円筒状のハウジング610と、ハウジング610の内部に配置されるボディー611と、第1のハウジング端部610aに固定されたソレノイド部3を外気から覆うソレノイドカバー612と、第2のハウジング端部610bに固定されたターミナルボックス62を外気から覆うターミナルボックスカバー613とを備える。
【0033】
ハウジング610は、その下部に形成されて弁軸13の第2の端部130Bが挿入される軸挿入口610cと、その上部に形成されてボディー611が挿入されるボディー挿入口610dと、第2のハウジング端部610b側に形成されて通信ケーブル150及び電力ケーブル160が挿入されるケーブル挿入口610eとを有する。
【0034】
第1の収容部60及び第2の収容部61には、ボディー611を貫通するようにして、入力側流路26から分岐して入力側流路26と第1の圧力センサ40との間を連通する第1の流路63と、出力側流路27から分岐して出力側流路27と第2の圧力センサ41との間を連通する第2の流路64と、スプール部2とソレノイド部3とを連動させるための空気Aが流れるスプール流路65が形成されている。
【0035】
スプール部2は、スプールケースとして機能する第2の収容部61内に形成されたスプールホール23と、スプールホール23内に移動可能に配置されたスプールバルブ24と、スプールバルブ24を付勢するスプールスプリング25と、入力ポート20とスプールホール23との間を連通する入力側流路26と、出力ポート21とスプールホール23との連通する出力側流路27と、排気ポート22とスプールホール23との間を連通する排気流路28とを備える。
【0036】
ソレノイド部3は、ソレノイドケース30と、ソレノイドケース30内に収容されたソレノイドコイル31と、ソレノイドコイル31内に移動可能に配置された可動鉄芯32と、ソレノイドコイル31内に固定状態で配置された固定鉄芯33と、可動鉄芯32を付勢するソレノイドスプリング34とを備える。
【0037】
電磁弁1が非通電状態から通電状態に切り替えられた場合には、ソレノイド部3において、コイル電流がソレノイドコイル31に流れることによりソレノイドコイル31が電磁力を発生し、当該電磁力により可動鉄芯32がソレノイドスプリング34の付勢力に抗して固定鉄芯33に吸引されることで、スプール流路65を流れる空気Aの流通状態が切り替えられる。そして、スプール部2において、スプール流路65を流れる空気Aの流通状態が切り替えられたことにより、スプールバルブ24がスプールスプリング25の付勢力に抗して移動されることで、入力ポート20と排気ポート22との間を連通する状態から、入力ポート20と出力ポート21との間を連通する状態に切り替えられる。
【0038】
基板5は、基板面500A、500Bが軸挿入口610cから挿入された弁軸13に沿うように配置された第1の基板50と、ターミナルボックス62に近接して配置された第2の基板51と、ソレノイド部3に近接して配置された第3の基板52とを備える。
【0039】
第1の基板50の基板面500A、500Bのうち、第1の基板面500A側には、ボディー611、ソレノイド部3及び第3の基板52が配置される。第1の基板面500A側と反対側の第2の基板面500B側には、第2の基板51及びターミナルボックス62が配置される。
【0040】
第1の基板50に載置されるセンサ4は、例えば、入力側流路26及び第1の流路63を流れる空気Aの流体圧を計測する第1の圧力センサ40と、出力側流路27及び第2の流路64を流れる空気Aの流体圧を計測する第2の圧力センサ41と、弁軸13が回転駆動するときの回転角度を計測し、当該回転角度に応じて主弁11の弁開度情報を取得する主弁開度センサ42とを含む。これにより、1つの基板(第1の基板50)に、第1の圧力センサ40、第2の圧力センサ41及び主弁開度センサ42が集約されるので、電磁弁1及び流体圧駆動弁10が正常に動作したか否かを適切に診断するために必要となる監視機能を簡易な構成で実現することができる。
【0041】
主弁開度センサ42は、例えば、磁気センサにより構成されており、弁軸13の第2の端部130Bに取り付けられた永久磁石131が発生する磁気の強さを計測し、当該磁気の強さに応じて主弁11の弁開度情報を取得する。
【0042】
主弁開度センサ42は、軸挿入口610cから挿入された弁軸13に沿うように配置さ
れた第1の基板5の第1の基板面500Aのうち弁軸13の軸周りの外周に対向する位置に載置される。これにより、収容部6内において、配置スペースを無駄にすることなく、第1の基板50に載置された主弁開度センサ42と、弁軸13の第2の端部130Bとを近接して配置することが可能となり、弁開度情報を正確に取得することができる。
【0043】
主弁開度センサ42は、第1の基板50において、第1の圧力センサ40及び第2の圧力センサ41よりも軸挿入口610c寄りに載置される。これにより、第1の圧力センサ40に連通する第1の流路63と、第2の圧力センサ40に連通する第2の流路64とが、主弁開度センサ42及び弁軸13の第2の端部130Bから離間した位置に配置されるので、第1の流路63及び第2の流路64の形状や配置を簡素化することができる。
【0044】
図3は、本発明の実施形態に係る電磁弁1の一例を示すブロック図である。図4は、本発明の実施形態に係る基板5に対する複数のセンサ4の載置例を示す模式図である。なお、図4は、各センサ4が基板5に載置された位置を厳密に示すものではなく、各センサ4が、第1乃至第3の基板50~52のいずれの基板に載置されているかの載置状態を示すものである。
【0045】
電磁弁1は、電気的な構成例として、上記の第1乃至第3の基板50~52及び複数のセンサ4の他に、電磁弁1を制御する制御部7と、外部装置15と通信する機能を有する通信部(外部送信部)8と、外部電源16に接続される電源回路部9とを備える。
【0046】
複数のセンサ4は、各部の物理量を計測するセンサ群として、上記の第1の圧力センサ40、第2の圧力センサ41及び主弁開度センサ42の他に、ソレノイド部3に対する供給電圧を計測する電圧センサ43と、ソレノイド部3における通電時の電流値及び非通電時の抵抗値を計測する電流・抵抗センサ44と、収容部6の内部温度を計測する温度センサ45と、ソレノイド部3が発生する磁気の強さを計測する磁気センサ46とを備える。
【0047】
また、複数のセンサ4は、各部の動作履歴に関する情報を取得するセンサ群として、ソレノイド部3の稼働時間としてソレノイド部に対する通電時間の合計及び現在の通電連働時間の少なくとも一方を計測する稼働時間計47と、電磁弁1、駆動装置12及び主弁11それぞれの作動回数を計数する作動カウンタ48とを備える。
【0048】
制御部7は、複数のセンサ4により取得された電磁弁1の各部の状態を示す情報を処理するとともに、電磁弁1の各部を制御するマイクロコントローラ70と、ソレノイド部3の通電状態を制御し、試験運転時における主弁11の開閉操作を行うバルブテストスイッチ71とを備える。
【0049】
マイクロコントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(
不図示)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される内部記憶部701とを備える。
【0050】
内部記憶部701には、電磁弁1が動作するときの設定値、電磁弁1が動作したときの一時記憶データ、及び、電磁弁1の動作を制御する電磁弁制御プログラム等が記憶されている。
【0051】
マイクロコントローラ70のプロセッサは、内部記憶部701に記憶された電磁弁制御プログラムを実行することにより、複数のセンサ4により電磁弁1の各部の状態を監視する監視処理を実行する監視処理部700として機能する。
【0052】
監視処理部700は、定常運転中に、主弁11の開閉操作の有無に関わることなく、複
数のセンサ4のうち少なくとも1つのセンサ4(以下、「第1の監視対象センサ4A」という。)を用いて電磁弁1の状態を監視する「第1の監視処理」を実行する。また、監視処理部700は、主弁11の開閉操作が行われる非定常運転中に、複数のセンサ4のうち少なくとも1つのセンサ(以下、「第2の監視対象センサ4B」という。)を用いて電磁弁1の状態を監視する「第2の監視処理」を実行する。なお、第1の監視対象センサ4Aは、例えば、複数のセンサ4の全て(第1の圧力センサ40、第2の圧力センサ41、主弁開度センサ42、電圧センサ43、電流・抵抗センサ44、温度センサ45、磁気センサ46、稼働時間計47、及び、作動カウンタ48)であるが、これらの例に限られない。また、第2の監視対象センサ4Bは、例えば、第2の圧力センサ41及び主弁開度センサ42であるが、これらの例に限られない。
【0053】
第1の監視処理では、監視処理部700は、第1のサンプリング周期(例えば、10秒間隔)で第1の監視対象センサ4Aにより取得された電磁弁1の状態を第1の取得データとして取得し、当該第1の取得データについて、取得する毎に通信部8を介して外部装置15に順次送信する。
【0054】
第2の監視処理では、監視処理部700は、電磁弁1の操作が行われる操作期間において、第1のサンプリング周期よりも短い第2のサンプリング周期(例えば、10msec間隔)で第2の監視対象センサ4Bにより取得された電磁弁1の状態を第2の取得データとしてそれぞれ取得する。そして、監視処理部700は、操作期間内にそれぞれ取得した第2の取得データと当該第2の取得データのそれぞれを取得した取得時刻とを紐付けて構成する取得データ群を一時記憶データとして内部記憶部701に記憶する。そして、内部記憶部701に記憶された取得データ群は、所定のタイミングで外部装置15に送信される。
【0055】
バルブテストスイッチ71は、所定の試験運転条件が満たされた場合にマイクロコントローラ70からの指令を受けて、試験運転として、電磁弁1のフルストロークテスト(以下、「FST」という。)又はパーシャルストロークテスト(以下、「PST」という。)を実行する。
【0056】
FSTは、主弁11を全開状態から全閉状態に操作して全開状態に戻すことで、流体圧駆動弁10の異常を診断するものである。PSTは、主弁11を全開状態から所定の開度まで部分的に閉じて全開状態に戻すことで、主弁11を全閉状態に操作することなく(すなわち、プラント設備を停止することなく)、流体圧駆動弁10の異常を診断するものである。
【0057】
FST及びPSTは、監視処理部700による第2の監視処理と並行して実行される。そのため、主弁11が操作されたときに各センサ4により取得された電磁弁1の状態に基づいて、当該操作が所定の設定時間内に完了したか否かを判定することにより、流体圧駆動弁10の異常を診断することが可能である。また、主弁11が操作されたときに各センサ4により取得された電磁弁1の状態の時系列変化を解析する(例えば、正常時の時系列変化と比較する)ことにより、流体圧駆動弁10の異常を診断することが可能である。
【0058】
なお、試験運転条件としては、例えば、内部記憶部701の設定値として指定された実行頻度(例えば、1年に1回)による実行時期や特定の指定日時が到来したり、外部装置15(例えば、プラント管理用のコンピュータ)からの実行命令を受け付けたり、電磁弁1に設けられた試験実行ボタン(不図示)が管理者により操作されたりした場合に、試験運転条件を満たすものとして、試験運転が実行されるようにすればよい。
【0059】
通信部8は、HART(Highway Addressable Remote Transducer)通信規格に従って
外部装置15との間でデータの送受信を行う通信モデム80と、制御電流(4~20mAのアナログ信号)を入出力するループ電流制御器81とを備える。通信モデム80が、送信対象のデータを周波数信号に変換すると、ループ電流制御器81は、当該周波数信号を制御電流に重畳した重畳信号を外部装置15に送信する。ループ電流制御器81が、外部装置15から重畳信号を受信し、当該重畳信号から周波数信号を分離すると、通信モデム80は、当該周波数信号を受信対象のデータに変換する。
【0060】
電源回路部9は、電力ケーブル160がターミナルボックス62に逆接続された場合に発生する逆電圧から制御部7を保護する逆電圧保護回路90と、外部電源16から電力ケーブル160を介して供給された電力を所定の電圧及び電流に変換し、電磁弁1の各部(ソレノイド部3、センサ4、基板5、制御部7及び通信部8等)に供給する内部電源回路91とを備える。
【0061】
図4に示すように、第1の基板50は、第1の圧力センサ40、第2の圧力センサ41、主弁開度センサ42、電圧センサ43、電流・抵抗センサ44、温度センサ45、稼働時間計47、作動カウンタ48、制御部7、通信モデム80及び逆電圧保護回路90が載置される。第2の基板51は、ループ電流制御器81及び内部電源回路91が載置される。第3の基板52は、磁気センサ46が載置される。
【0062】
なお、複数のセンサ4としては、上記のセンサ40~48に限られず、他の物理量や動作履歴に関する情報を取得するセンサをさらに備えていてもよいし、これらのセンサ40~48の一部が省略されていてもよい。また、複数のセンサ4が各基板50~52に載置される際の各センサ40~48の載置状態は、図4に示す例に限られず、適宜変更してもよい。さらに、収容部6に収容される基板5の枚数や、収容部6に対する各基板50~52の配置についても適宜変更してもよい。
【0063】
また、上記のセンサ40~48は、図3図4に示すように、それぞれのセンサが個別に設けられたものに限られず、特定のセンサが他のセンサの機能を兼ねることで、当該他のセンサが個別に設けられていなくてもよい。例えば、磁気センサ46が、ソレノイド部3が発生する磁気の強さを計測するとともに、当該磁気の強さに基づいてソレノイド部3における通電時の電流値を求めることで、電流・抵抗センサ44が個別に設けられていなくてもよい。また、マイクロコントローラ70が、センサの機能を内蔵したり、センサの機能の一部を実現したりしてもよく、例えば、マイクロコントローラ70が、稼働時間計47及び作動カウンタ48を内蔵することで、稼働時間計47及び作動カウンタ48が個別に設けられていなくてもよい。
【0064】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、駆動装置12は、弁軸13を回転駆動させるものとして説明したが、弁軸13を往復直線駆動させるようにしてもよい。この場合、弁軸13を往復直線駆動させることに応じて開閉操作が行われる主弁11として、例えば、ゲートバルブやグローブバルブ等の形式を用いるようにしてもよい。
【0066】
さらに、この場合の電磁弁1の構成としては、収容部6が、駆動装置12により往復直線駆動される弁軸の端部が挿入される軸挿入口を有するとともに、当該弁軸が往復直線駆動されることに連動して回転軸を回転駆動させる駆動力伝達機構(例えば、ラックアンドピニオン機構、リンク機構、カム機構等)を収容する。そして、第1の基板50の基板面が当該回転軸に沿うように配置されており、主弁開度センサ42が、第1の基板50の基
板面のうち当該回転軸の軸周りの外周に対向する位置に載置されて、主弁11の弁開度を求めるべく、当該回転軸の回転角度を計測するようにすればよい。
【0067】
また、上記の駆動力伝達機構は、収容部6の外部に配置されていてもよく、この場合には、駆動力伝達機構により回転駆動される回転軸の端部が軸挿入口から挿入されるとともに、第1の基板50の基板面が軸挿入口から挿入された回転軸に沿うように配置されており、主弁開度センサ42が、主弁11の弁開度を求めるべく、弁軸13の回転角度に代えて、当該回転軸の回転角度を計測するようにすればよい。
【0068】
以上のように、上記実施形態に係る電磁弁1によれば、収容部6が、スプール部2、ソレノイド部3、複数のセンサ4、及び、複数のセンサ4のうち少なくとも1つが載置されるとともに制御部7を有する基板5を収容する。
【0069】
そのため、収容部6には、スプール部2及びソレノイド部3が収容されるとともに、その収容部6内にて、複数のセンサ4が電磁弁1の各部の状態を取得するとともに、それらのうちの少なくとも1つが、制御部7を有する基板5に載置される。これにより、収容部6内に、電磁弁1の基本機能だけでなく各部の状態を監視する監視機能についても集約されるので、電磁弁1単体で電磁弁1の各部の状態を監視するとともに、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0070】
また、第1の収容部60及び第2の収容部61には、主に駆動流体系回路を構成するスプール部2と、主に電気系回路を構成するソレノイド部3、複数のセンサ4及び基板5とが別々に収容されるので、空気系回路及び電気系回路を効率的に配置することができる。
【0071】
また、収容部6内において、第1の基板50を境界にして、第1の基板面500A側には、電気系回路のうち電磁弁1を構成するソレノイド部3が配置され、第2の基板面500B側には、電気系回路のうち通信部8及び電源回路部9を構成する第2の基板51及びターミナルボックス62が配置されるので、電気系回路をさらに効率的に配置することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…電磁弁、2…スプール部、3…ソレノイド部、
4…センサ、4A…第1の監視対象センサ、4B…第2の監視対象センサ、
5…基板、6…収容部、7…制御部、8…通信部、9…電源回路部、
10…流体圧駆動弁、11…主弁、12…駆動装置、13…弁軸、
14…空気供給源、15…外部装置、16…外部電源、
20…入力ポート、21…出力ポート、22…排気ポート、
23…スプールホール、24…スプールバルブ、25…スプールスプリング、
26…入力側流路、27…出力側流路、28…排気流路、
30…ソレノイドケース、31…ソレノイドコイル、
32…可動鉄芯、33…固定鉄芯、34…ソレノイドスプリング、
40…第1の圧力センサ、41…第2の圧力センサ、
42…主弁開度センサ、43…電圧センサ、44…電流・抵抗センサ、
45…温度センサ、46…磁気センサ、47…稼働時間計、48…作動カウンタ、
50…第1の基板、51…第2の基板、52…第3の基板、
60…第1の収容部、61…第2の収容部、62…ターミナルボックス、
63…第1の流路、64…第2の流路、65…スプール流路、
70…マイクロコントローラ、71…バルブテストスイッチ、
80…通信モデム、81…ループ電流制御器、
90…逆電圧保護回路、91…内部電源回路、
100…配管、110…弁箱、111…弁体、
120…シリンダ、121…ピストンロッド、
122A…第1のピストン、122B…第2のピストン、
123…コイルばね、124…空気給排口、125…伝達機構、
130A…第1の端部、130B…第2の端部、
140…第1の空気配管、141…第2の空気配管、
150…通信ケーブル、160…電力ケーブル、
500A…第1の基板面、500B…第2の基板面、
610…ハウジング、610a…第1のハウジング端部、
610b…第2のハウジング端部、610c…軸挿入口、610d…ボディー挿入口、
610e…ケーブル挿入口、611…ボディー、
612…ソレノイドカバー、613…ターミナルボックスカバー、
700…監視処理部、701…内部記憶部、A…空気
図1
図2
図3
図4