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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート構造物の非破壊検査法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20240101AFI20240220BHJP
   G01V 3/08 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 29/07 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 27/72 20060101ALI20240220BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20240220BHJP
   G01B 17/00 20060101ALI20240220BHJP
   G01B 15/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01V1/00 A
G01V3/08 F
G01N29/07
G01N22/00 S
G01N27/72
G01B7/00 101E
G01B17/00 B
G01B15/00 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020021842
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021128029
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】511238929
【氏名又は名称】金川 典代
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】原 徹
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3005305(JP,U)
【文献】特開2003-315004(JP,A)
【文献】特開2009-186337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01B 7/00- 7/34
17/00-17/08
G01N 22/00-22/04
24/00-24/14
27/72-27/9093
29/00-29/52
G01R 33/28-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物中に埋設された鉄筋の検査法であって、
前記鉄筋の前記鉄筋コンクリート構造物の壁面に対する直上位置を計測する鉄筋位置計測工程と、
前記鉄筋の前記壁面に対する直上位置から前記鉄筋までの深さを計測する鉄筋深さ計測工程と、
前記鉄筋の深さから前記鉄筋の太さを計測する鉄筋太さ計測工程とを備え、
前記鉄筋深さ計測工程が、前記鉄筋の前記壁面に対する直上位置から超音波発信装置による超音波を鉄筋コンクリート構造物中に発信し、前記超音波発信装置の近傍に配置された超音波受信装置で前記コンクリート構造物内部の前記鉄筋からの反射波を検出し、前記鉄筋の深さを計測するものであり、
前記鉄筋位置計測工程が、電磁波レーダ装置を前記鉄筋コンクリート構造物の壁面表面上で移動させつつ壁面表面から内部に電磁波を放射し、反射波を計測して、前記鉄筋の壁面に対する直上位置を計測するものであり、
前記鉄筋太さ計測工程が、前記鉄筋の前記壁面に対する直上位置から、電磁誘導式探査装置の励磁コイル部に交流電流を流して発生された誘導磁界によって、前記コンクリート構造物に埋設された鉄筋との電磁誘導で発生された磁場強度と、前記鉄筋の深さとから前記鉄筋の太さを算出するものであることを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の非破壊検査法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば既存の鉄筋コンクリート構造物について、その内部構造を破壊することなく検査する非破壊検査法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存の鉄筋コンクリート構造物の内部構造を検証することは重要である。何故ならば、例えば、既存の鉄筋コンクリート構造物の内部には、設計通りの鉄筋が変更無く正確に配置されているかを検証すること、更には、既存の鉄筋コンクリート構造物において、経年劣化等により、内部の鉄筋の健全性が保たれているかを検証すること等が重要だからである。
【0003】
既存の鉄筋コンクリート構造物は、さまざまな原因で劣化する。例えば、コンクリートの劣化の原因としては、代表的なものとして、塩害、中性化、凍害に伴う鉄筋鋼材の腐食、アルカリシリカ反応、化学的腐食、疲労等々に分類され、個々の劣化のメカニズムはそれぞれ異なる。
【0004】
多くの場合には、コンクリートの健全性が保たれていれば埋設された鉄筋については、腐食することは殆どないと思われる。このため、既存の構造物に対して、設計通りの鉄筋が変更無く正確に配置されているかが重要となる。特に、内部の鉄筋の位置が正確に判れば、鉄筋を破断しない位置に穿設孔を施すことも可能となる。
【0005】
既存の鉄筋コンクリート構造物内の鉄筋位置とかぶり厚さの測定を行う方法は既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。この鉄筋のかぶり厚さ測定方法は、電磁波を発生させて鉄筋コンクリート壁内に送信し、その反射波を受信して鉄筋のコンクリート壁面における埋設位置を検出する電磁探査法を実施する第1の過程と、コンクリート壁面の前記検出された埋設位置から鉄筋に対し、コイルによって磁界を発生させて送信し、該鉄筋から電磁誘導により発生される磁界強度を観測する磁気探査法を実施する第2の過程からなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-315004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、鉄筋で電磁誘導された信号については、探査プローブの直下に鉄筋がある場合には、電磁誘導が検出される距離以内では確実に鉄筋の存在が判るが、深さについては、太い鉄筋が深い位置にある場合と、細い鉄筋が浅い位置にある場合とで同様の反応となる場合があった。
【0008】
本発明は、既存の鉄筋コンクリート構造物内の鉄筋の位置と深さと太さとを正確に求めることができる非破壊検査法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された鉄筋コンクリート構造物の非破壊検査法は、鉄筋コンクリート構造物中に埋設された鉄筋の検査法であって、
前記鉄筋の前記鉄筋コンクリート構造物の壁面に対する直上位置を計測する鉄筋位置計測工程と、
前記鉄筋の前記壁面に対する直上位置から前記鉄筋までの深さを計測する鉄筋深さ計測工程と、
前記鉄筋の深さから前記鉄筋の太さを計測する鉄筋太さ計測工程とを備え、
前記鉄筋深さ計測工程が、前記鉄筋の前記壁面に対する直上位置から超音波発信装置による超音波を鉄筋コンクリート構造物中に発信し、前記超音波発信装置の近傍に配置された超音波受信装置で前記コンクリート構造物内部の前記鉄筋からの反射波を検出し、前記鉄筋の深さを計測するものであり、
前記鉄筋位置計測工程が、電磁波レーダ装置を前記鉄筋コンクリート構造物の壁面表面上で移動させつつ壁面表面から内部に電磁波を放射し、反射波を計測して、前記鉄筋の壁面に対する直上位置を計測するものであり、
前記鉄筋太さ計測工程が、前記鉄筋の前記壁面に対する直上位置から、電磁誘導式探査装置の励磁コイル部に交流電流を流して発生された誘導磁界によって、前記コンクリート構造物に埋設された鉄筋との電磁誘導で発生された磁場強度と、前記鉄筋の深さとから前記鉄筋の太さを算出するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、既存の鉄筋コンクリート構造物内の鉄筋の位置と深さと太さとを3つの工程で正確に求めることができる非破壊検査法を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の非破壊検査法の一実施例の工程と各工程の説明図である。
図2】調査した鉄筋コンクリート建築物の1階部分の概略図である。
図3図2の地下1階部分の概略図である。
図4図2の柱(a) の計測結果を示す説明図である。
図5図2の梁(b) の計測結果を示す説明図である。
図6図2の梁(c) の計測結果を示す説明図であり、a図は端部の計測結果、b図は中間部の計測結果を示す。
図7図2の中間梁(d) の計測結果を示す説明図である。
図8図2の梁(e) の計測結果を示す説明図である。
図9図3の柱(f) の計測結果を示す説明図である。
図10図3の梁(g) の計測結果を示す説明図である。
図11図2の梁(h) の計測結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
電磁誘導による埋設された鉄筋を検出する方法として、励磁コイル部で発生させた誘導磁界によって埋設された鉄筋で発生される磁場を検出するものである。この方法では、コンクリート構造物中に埋設された鉄筋が太くて遠い場合と、鉄筋が細くて近い場合とが同じ強度になる場合があり、鉄筋の埋設位置に正確性に問題があった。
【0015】
これに対して、超音波によって鉄筋を探査する方法としては、超音波発信装置から発信された超音波(可聴域から超音波までの広帯域の音波)によって埋設された鉄筋の反射波を超音波受信装置で検出して表面から鉄筋までの深さを正確に検出することができる。この場合、電磁波レーダーの計測については、既存のコンクリート構造物中の水分量が不明なために、鉄筋までの深さの計測は不正確となる。また、鉄筋が2層以上に配置されている場合には、1層目の鉄筋で電磁波が散乱するため、2層目以降の鉄筋を感知することが非常に困難である。
【0016】
このため、本発明においては、鉄筋コンクリート構造物中に埋設された鉄筋の検査法であって、鉄筋のコンクリート構造物の壁面に対する直上位置を計測する鉄筋位置計測工程と、鉄筋の壁面に対する直上位置から鉄筋までの深さを計測する鉄筋深さ計測工程と、鉄筋の深さから鉄筋の太さを計測する鉄筋太さ計測工程とを備える。
【0017】
本発明の鉄筋深さ計測工程としては、鉄筋の壁面に対する直上位置から超音波発信装置による超音波をコンクリート構造物中に発信し、超音波発信装置の近傍に配置された超音波受信装置でコンクリート構造物内部の鉄筋からの反射波を検出し、鉄筋の深さを計測することにより、鉄筋までの正確な深さを計測することができる。正確な深さが求められることにより、鉄筋太さ計測工程で鉄筋の正確な太さを求めることができる。
【0018】
本発明の超音波発信装置で発信する超音波としては、可聴域から超音波までの広帯域の音波が好ましい。好ましい帯域の超音波としては、周波数が0.1~2.5MHzの可聴域の音波から超音波に亘る広帯域の音波であるものが挙げられ、より好ましくは、周波数が0.2~2.0MHzの可聴域の音波から超音波に亘る広帯域の音波であるものが挙げられる。
【0019】
特に、マイナス電圧を印加した場合には、振動子が上下に膨らんで厚さが増して口径が小さくなり、プラス電圧を印加した場合には、振動子が上下に縮んで厚さが減って口径が大きくなるセラミック振動子を用いた超音波発信装置では、マイナスに急激に印加した後、ゆっくりとゼロに復帰する波形で発生する超音波としては、周波数が0.1~2.5MHz、より好ましくは0.2~2.0MHzの可聴域の音波から超音波に亘る広帯域の超音波を得ることができる。
【0020】
より具体的には、ハンマーで物体表面を叩いたようなイメージであり、ゼロから最大のマイナス電圧までは5μsの時間であり、その後の緩やかな復帰では、50%復帰で200μs、100%で743μsの時間を掛けるものであればよい。このような超音波発信装置からの広帯域の超音波を被検体の内部へ照射させ、内部からの反射波を計測する。1回の超音波エネルギーの反射波は小さいため、1つの被検体の固定部での計測を10回~1000回繰り返して合算させて平均を取ればよい。
【0021】
より具体的に付言するならば、例えばコンクリート構造物が、均一なコンクリート材からなる場合であって可聴域から超音波域に亘る周波数を含む広帯域の超音波がコンクリート材内部に進入した場合には、コンクリート材を構成するセメント成分、砂、砂利が均一に分布するものであるため、各々の構造中の成分によって固有の波長の反射波が発生し、超音波の深さ方向でも同様の反射波が反射波受信器で受信される。
【0022】
その一方で、コンクリート構造物が、コンクリート材自体にクラックや空隙が超音波の伝搬方向を遮るように配置された構造の場合には、音波が広帯域のものであるため、クラックや空隙の境界面までの反射波は発生するが、クラックや空隙の境界面を超えて伝搬することが無く、境界面を越えて反射波も発生しない。逆にコンクリート材中に埋め込まれた鉄筋については、その鉄筋に固有の周波数の高い強度の反射波が発生する。得られた鉄筋からの反射波について、深さはコンクリート材中の音速から計算することにより、正確な深さを計測することができる。
【0023】
尚、均一に分布したコンクリート材と構造の相違する別の構造体に超音波が伝搬する場合には、2つの構造体の境界面で、各構造体の超音波の伝搬しやすさの違いにより、反射する超音波と違う構造体に伝播していく超音波に2分されるが、反射する超音波は反射エコーとして観測されるので、鉄筋以外の空隙や樹脂製パイプ材等の埋設深さも計測することができる。
【0024】
本発明の鉄筋位置計測工程としては、鉄筋のコンクリート構造物の壁面に対する直上位置を計測するものであればよく、幾つかの方法がある。例えば、電磁波レーダ法、電磁誘導法等が挙げられる。電磁波レーダ法は、鉄筋コンクリート構造物の壁面を移動させつつ壁面表面から内部に電磁波を放射し、反射波を計測して、埋設鉄筋の壁面に対する直上位置を計測する。
【0025】
また、電磁誘導法は、励磁コイル部に交流電流を流して発生させた誘導磁界をコンクリート構造物壁面に対して移動させ、コンクリート構造物に埋設された鉄筋を電磁誘導して発生される磁場を検出して鉄筋のコンクリート構造物壁面に対する磁場強度を計測し、最大の磁場強度の位置を直上位置とする。
【0026】
本発明の鉄筋太さ計測工程としては、鉄筋の深さから鉄筋の太さを計測するものであればよい。より好ましくは、電磁誘導による磁場強度を用いればよい。即ち、前述の通り、励磁コイル部で発生させた誘導磁界によって埋設された鉄筋で発生される磁場を検出するものであるが、コンクリート構造物中に埋設された鉄筋が太くて遠い場合と、鉄筋が細くて近い場合とが同じ磁場強度になることがあったが、鉄筋の埋設深さが正確に分かっているため、正確な鉄筋の太さが算出される。
【0027】
即ち、鉄筋太さ計測工程として、鉄筋の壁面に対する直上位置から、励磁コイル部に交流電流を流して誘導磁界を発生させ、コンクリート構造物に埋設された鉄筋を電磁誘導して発生される鉄筋のコンクリート構造物壁面に対する最大の磁場強度と、鉄筋の深さとから鉄筋の太さを算出する。
【0028】
また、鉄筋位置計測工程に励磁コイル部に交流電流を流して発生させた誘導磁界をコンクリート構造物壁面に対して移動させ、コンクリート構造物に埋設された鉄筋からの電磁誘導によって発生される磁場を検出して鉄筋のコンクリート構造物壁面に対する直上位置と磁場強度とを計測した場合には、鉄筋太さ計測工程としては得られた鉄筋の深さと最大の磁場強度とから鉄筋の太さを算出する。
【実施例
【0029】
図1は本発明の非破壊検査法の一実施例の工程と各工程の説明図である。図2は調査した鉄筋コンクリート建築物の1階部分の概略図である。図3図2の地下1階部分の概略図である。図4図2の柱(a) の計測結果を示す説明図である。図5図2の梁(b) の計測結果を示す説明図である。図6図2の梁(c) の計測結果を示す説明図であり、a図は端部の計測結果、b図は中間部の計測結果を示す。
【0030】
図7図2の中間梁(d) の計測結果を示す説明図である。図8図2の梁(e) の計測結果を示す説明図である。図9図3の柱(f) の計測結果を示す説明図である。図10図3の梁(g) の計測結果を示す説明図である。図11図2の梁(h) の計測結果を示す説明図である。
【0031】
図1に示す通り、本実施例の非破壊検査法は、鉄筋位置計測工程と、鉄筋深さ検出工程と、鉄筋太さ計測工程とを順番に行うものである。最初の鉄筋位置計測工程では、電磁波レーダ装置12を鉄筋コンクリート構造物の壁面10を移動させつつ壁面10表面から内部に電磁波を放射し、埋設された鉄筋11からの反射波を計測して、埋設鉄筋の壁面に対する直上位置を計測し、直上位置の印を付しておく。
【0032】
次の鉄筋深さ計測工程では、鉄筋位置計測工程で決定した直上位置に広帯域の超音波探査装置13を固定し、鉄筋の壁面に対する直上位置から超音波発信装置14からコンクリート構造物の壁面10中に超音波を発信し、超音波発信装置14の近傍に配置された超音波受信装置15でコンクリート構造物の壁面10の内部から鉄筋11の反射波を検出し、鉄筋11の深さを計測する。鉄筋までの深さはコンクリート材中を伝搬した超音波が鉄筋で反射した反射波が返ってくる時間と、コンクリート材中の音速とから求められる。
【0033】
鉄筋太さ計測工程では、鉄筋の壁面に対する直上位置から、電磁誘導式探査装置16において励磁コイル部に交流電流を流して誘導磁界を発生させ、コンクリート構造物に埋設された鉄筋との電磁誘導によって発生される鉄筋のコンクリート構造物壁面に対する磁場強度と、鉄筋の深さとから鉄筋の太さを算出する。
【0034】
尚、電磁誘導式探査装置16は、鉄筋位置計測工程を行うこともできる。即ち、電磁誘導式探査装置16の励磁コイル部に交流電流を流して発生させた誘導磁界をコンクリート構造物の壁面10に沿って移動させ、コンクリート構造物に埋設された鉄筋11からの電磁誘導によって発生される磁場を計測し、最大の磁場強度の位置をコンクリート構造物の壁面に対する直上位置とすることができる。
【0035】
直上位置を計測し、直上位置の印を付しておき、後続の鉄筋深さ計測工程及び鉄筋太さ計測工程を行う。この場合、鉄筋太さ計測工程としては、得られた鉄筋11の深さと最大の磁場強度とから鉄筋の太さを算出する。
【0036】
以上の非破壊検査法を用いて既存の鉄筋コンクリート構造物の鉄筋の位置と深さと太さとを計測した。図2及び図3は既存の鉄筋コンクリート構造物の概略図であり、図2は1階部分21、図3は地下1階部分22である。この既存の鉄筋コンクリート構造物の柱部、梁部の矢印方向の埋設鉄筋の位置と深さと太さを検証した。
【0037】
図4図2の柱(a) の計測結果を示す。図4に示す通り、矢印方向の柱の面について幅700mmの柱(a) 内部には、3本の太さが25mmの鉄筋が中央部に、その両側に各々1本づつの太さが20mmの鉄筋が配置されていることが判った。また、鉄筋の深さについては、51mmの深さに配置されていることが判った。
【0038】
各々の鉄筋の間隙については、一方の側面から80mmで太さが20mmの鉄筋が配置され、それから120mm隔てて太さが25mmの鉄筋、140mm隔てて25mmの鉄筋、160mm隔てて25mmの鉄筋、130mm隔てて20mmの鉄筋、更に、70mm隔てて他方の側面に至ることが判った。
【0039】
図5図2の梁(b) の計測結果を示す。図5に示す通り、矢印方向の梁の面について高さが630mmの梁(b) 内部には、3本の太さが20mmの鉄筋が配置されていることが判った。また、鉄筋の深さについては、70mmの深さに配置されていることが判った。各々の鉄筋の間隙については、天井高さ位置から65mm隔てて太さが20mmの鉄筋、250mm隔てて太さが20mmの中央の鉄筋、同じく250mm隔てて太さが20mmの鉄筋、更に、65mm隔てて梁の底面に至ることが判った。
【0040】
図6図2の梁(c) の計測結果を示す。図6に示す通り、矢印方向の梁の面について梁(c) の中央部と端部とで鉄筋の配置が相違することが判った。即ち、端部では上部から2番目、3番目、4番目の鉄筋の高さ位置が低いのであるが、中央部へ向かうにつれて若干高くなっていることが判った。この梁(c) では、排気ダクト及び配線が稜を厚さ方向に通過するための貫通孔(大)と貫通孔(小)とが形成された梁であるためであると思われた。
【0041】
具体的には、端部では高さが630mmの梁(c) 内部には、4本の太さが各々20mmの鉄筋が配置されていることが判った。また、鉄筋の深さについては、62mmの深さに配置されていることが判った。各々の鉄筋の間隙については、図6のb図に示す通り、天井高さ位置から30mm隔てて第1番目の鉄筋、それから100m隔てて第2番目の鉄筋、同じく290mm隔てて第3番目の鉄筋、同じく90mm隔てて第4番目の鉄筋、更に、120mm隔てて梁の底面に至ることが判った。
【0042】
同じ高さの630mmの梁(c) 中央部では、図6のa図に示す通り、天井高さ位置から30mm隔てて第1番目の鉄筋は同じ高さ位置であるが、第2番目の鉄筋については90mm隔てて配され、第3番目の鉄筋については290mm隔てて配され、第4番目の鉄筋については120mm手立て手配され、更に、100mm隔てて稜の底面に至ることが判った。
【0043】
図7図2の中間梁(d) の計測結果を示す。この高さが430mmの中間梁(d) については、2本の鉄筋の存在が確認されたが、更に上部に1本あると思われたが、天井との距離が取れなかったため、明確な探査ができなかった。また、鉄筋の深さについては、62mmの深さに配置されていることが判った。
【0044】
具体的には、矢印方向の梁の面について中間梁(d) の底面から80mm上位に太さ20mmの鉄筋が配置されており、更に、その上部150mm隔てて太さ20mmの鉄筋が配置されていることが判った。更に上部に1本あると思われたが、超音波の発信・受信装置を設置するスペースがなく、明確な探査ができなかった。
【0045】
図8図2の梁(e) の計測結果を示す。この梁(e) については、端部と中央部とで鉄筋の高さ位置の変化がなく、天井面に対して平行に3本の太さ20mmの鉄筋が配されていることが判った。具体的には、高さ430mmの梁(e) は、天井高さ位置から70mm隔てて鉄筋が配され、さらに180mm隔てて鉄筋が配され、140mm隔てて鉄筋が配され、更に、40mm隔てて稜の底面に至ることが判った。尚、下から2盤面と3番目との間の高さ位置に幾つかの貫通孔(小)が形成されていた。
【0046】
図9図3の柱(f) の計測結果を示す。矢印方向の柱(f) の面については、幅700mmの柱(a) 内部には、太さが25~30mmの鉄筋が6本配置されていることが判った。尚、厳密に付言すると、幾つかの鉄筋の太さの計測数値としては27mmであるとの結果であったが、27mmの鉄筋は規格上存在しない。そのため、30mmの鉄筋が腐食している可能性もある。また、鉄筋の深さについては、45mmの深さに配置されていることが判った。
【0047】
各々の鉄筋の間隙については、一方の側面から45mmで隔てて1本目の鉄筋が配置され、それから120mm隔てて2本目の鉄筋、100mm隔てて3本目の鉄筋、110mm隔てて4本目の鉄筋、115mm隔てて5本目の鉄筋、120mm隔てて6本目の鉄筋、更に、90mm隔てて他方の側面に至ることが判った。
【0048】
図10図3の梁(g) の計測結果を示す。矢印方向の梁(g) の面についても、図7と同様に更に上部に1本あると思われたが、天井との距離が取れなかったため、明確な探査ができなかった。尚、鉄筋の深さについては、34mmの深さに配置されていることが判った。
【0049】
具体的には、高さが630mmの梁(g) について、底面から80mm上位に太さ20mmの鉄筋が配置されており、その上部130mm隔てて太さ20mmの鉄筋が配置されており、更に、その上部160mm隔てて太さ20mmの鉄筋が配されていることが判った。更に上部に1本あると思われたが、超音波の発信・受信装置を設置するスペースがなく、明確な探査ができなかった。
【0050】
図11図3の梁(h) の計測結果を示す。この梁(h) は1階に配置された図6の梁(c) の直下の地下1階部に配置されものである。矢印方向の梁(h) の面については、高さが770mmであり、3本の鉄筋が確認された。天井高さ位置から230mm隔てて太さ20mmの鉄筋が配され、さらに190mm隔てて同じ太さの鉄筋が配され、260mm隔てて同じ太さの鉄筋が配され、更に、90mm隔てて稜の底面に至ることが判った。
【0051】
個々の鉄筋の深さについて、計測面から同じ深さ位置ではないことが確認された。具体的には、最も上位の鉄筋の深さが62mm、中間位置の鉄筋の深さが50mm、最下位の鉄筋の深さが45mmとの結果が出た。通常は、柱の鉄筋は4面について同等の配置とし、梁の鉄筋は天井面に対して垂直な長手方向に伸びた2面について、同等の配置となっているが、図3の梁(h) の鉄筋の配置は問題があることが判った。
【符号の説明】
【0052】
10…鉄筋コンクリート構造物の壁面、
11…埋設鉄筋、
12…電磁波レーダ装置、
13…超音波探査装置、
14…超音波発信装置、
15…超音波受信装置、
16…電磁誘導式探査装置、
21…既存の鉄筋コンクリート構造物1階部分、
22…既存の鉄筋コンクリート構造物地下1階部分、
(a) …柱、
(b) …梁、
(c) …梁、
(d) …中間梁、
(e) …梁、
(f) …柱、
(g) …梁、
(h) …梁、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11