(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】クレーン監視装置および該方法ならびに天井クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20240220BHJP
B66C 15/06 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C15/06
(21)【出願番号】P 2020169764
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】岡本 陽
(72)【発明者】
【氏名】吉本 達也
(72)【発明者】
【氏名】高井 槙子
(72)【発明者】
【氏名】松永 博之
(72)【発明者】
【氏名】切抜 裕太
(72)【発明者】
【氏名】乗松 武
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-093890(JP,A)
【文献】特開2013-159480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フックを昇降自在に懸吊する昇降台車を備える天井クレーンに関わる対象者を監視するクレーン監視装置であって、
前記フック側に撮像方向を向け、前記フックを挟んで前記昇降台車に配設された複数の撮像部と、
前記複数の撮像部で生成された複数の画像に基づいて吊り荷および前記対象者を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出した前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求める距離処理部と、
前記距離処理部で求めた最小距離が所定の閾値以下または未満である場合に、警告を外部に報知する警告処理部とを備え、
前記抽出部は、機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から前記吊り荷および前記対象者を抽出し、
前記抽出モデルは、前記吊り荷、前記対象者およびその他のうちのいずれかを抽出結果として画素に対応付けた抽出結果画像を出力し、
前記抽出部は、前記機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から複数の抽出結果画像を出力し、前記出力した複数の抽出結果画像それぞれの一部分を複数の部分抽出結果画像として取り出し、前記取り出した複数の部分抽出結果画像を合成抽出結果画像として合成し、
前記距離処理部は、前記合成抽出結果画像に基づいて前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求め、
前記部分抽出結果画像は、前記抽出結果画像のうち、前記抽出結果画像に対応する画像における前記フックが写り込んだ第1画素に対応する前記抽出結果画像の第2画素の位置より、前記抽出結果画像に対応する前記画像を生成した撮像部側の画像領域である、
クレーン監視装置。
【請求項2】
前記複数の撮像部は、ステレオカメラを含み、
前記抽出モデルは、距離画像を含む教師データを用いて機械学習した機械学習後の抽出モデルである、
請求項
1に記載のクレーン監視装置。
【請求項3】
前記距離処理部で求めた最小距離が所定の第2閾値以下または未満である場合に、前記天井クレーンの動作を停止する停止処理部をさらに備える、
請求項1
または請求項
2に記載のクレーン監視装置。
【請求項4】
フックを昇降自在に懸吊する昇降台車を備える天井クレーンに関わる対象者を監視するクレーン監視方法であって、
前記フック側に撮像方向を向け、前記フックを挟んで前記昇降台車に複数の撮像部を配設する配設工程と、
前記複数の撮像部で生成された複数の画像に基づいて吊り荷および前記対象者を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出した前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求める距離処理工程と、
前記距離処理工程で求めた最小距離が所定の閾値以下または未満である場合に、警告を外部に報知する警告処理工程とを備え、
前記抽出工程は、機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から前記吊り荷および前記対象者を抽出し、
前記抽出モデルは、前記吊り荷、前記対象者およびその他のうちのいずれかを抽出結果として画素に対応付けた抽出結果画像を出力し、
前記抽出工程は、前記機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から複数の抽出結果画像を出力し、前記出力した複数の抽出結果画像それぞれの一部分を複数の部分抽出結果画像として取り出し、前記取り出した複数の部分抽出結果画像を合成抽出結果画像として合成し、
前記距離処理工程は、前記合成抽出結果画像に基づいて前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求め、
前記部分抽出結果画像は、前記抽出結果画像のうち、前記抽出結果画像に対応する画像における前記フックが写り込んだ第1画素に対応する前記抽出結果画像の第2画素の位置より、前記抽出結果画像に対応する前記画像を生成した撮像部側の画像領域である、
クレーン監視方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載のクレーン監視装置を備えた天井クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井クレーンに関わる対象者を監視するクレーン監視装置および該方法ならびに前記クレーン監視装置を備えた天井クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場や倉庫等では、重量物を移動するために、天井クレーンが利用されることが多い。このような天井クレーンでは、吊り荷が上げ下げされる際に、吊り荷が揺れて作業者に危険が及ぶ虞がある。特に、いわゆる地切りの際に吊り荷が大きく揺れて危険が大きい。このため、このような危険を回避するシステムが提案されており、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示されたクレーンの吊り荷監視システムは、クレーンにおける吊り荷を撮影可能な位置に装備されたカメラと、該カメラの画像データに基づき吊り荷周囲の危険領域に人が存在しているか否かを画像解析により判定する演算装置とを備え、吊り荷周囲の危険領域に人が存在していると判定された場合に警報信号及び非常停止信号の少なくとも何れか一方を出力するように前記演算装置が構成されている。前記カメラは、複数であって、前記複数のカメラは、例えば、ガーダの長手方向に距離を隔てた2カ所に、互いの各撮像方向が交差するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に開示された天井クレーンの吊り荷監視システムでは、前記複数のカメラは、ガーダの長手方向に配置されているので、それぞれ、フックに掛けられた吊り荷を、クレーンの使用ごとに略同じ状態で撮像することができない。例えば、クレーンの使用の際に、フックを昇降自在に懸吊する昇降台車がガーダを長手方向に移動すると、前記複数のカメラは、それぞれ、自機と吊り荷との距離が変化するので、前記吊り荷を、クレーンの使用ごとに略同じ状態で撮像することができない。このため、画像ごとに、吊り荷の写り方が異なったり、フック周りに例えばケーブル等が存在すると、吊り荷に対する前記ケーブルの写り方が異なったり等するため、画像から吊り荷を抽出する場合、吊り荷の抽出が難しくなってしまう。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、画像から吊り荷をより容易に抽出できるクレーン監視装置およびクレーン監視方法ならびに前記クレーン監視装置を備えた天井クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかるクレーン監視装置は、フックを昇降自在に懸吊する昇降台車を備える天井クレーンに関わる対象者を監視する装置であって、前記フック側に撮像方向を向け、前記フックを挟んで前記昇降台車に配設された複数の撮像部と、前記複数の撮像部で生成された複数の画像に基づいて吊り荷および前記対象者を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出した前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求める距離処理部と、前記距離処理部で求めた最小距離が所定の閾値以下または未満である場合に、警告を外部に報知する警告処理部とを備える。
【0008】
このようなクレーン監視装置は、複数の撮像部を、フックを昇降自在に懸吊する昇降台車に、前記フック側に撮像方向を向け、前記フックを挟んで配置したので、昇降台車の移動に伴い複数の撮像部も移動するから、前記フックに掛けられた吊り荷を、常時、略同じ状態で撮像することができる。このため、上記クレーン監視装置は、画像から吊り荷および対象者をより容易に抽出できる。
【0009】
そして、上述のクレーン監視装置において、前記抽出部は、機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から前記吊り荷および前記対象者を抽出する。
【0010】
このようなクレーン監視装置は、機械学習後の抽出モデルを用いるので、吊り荷および対象者を精度良く抽出できる。
【0011】
そして、上述のクレーン監視装置において、前記抽出モデルは、前記吊り荷、前記対象者およびその他のうちのいずれかを抽出結果として画素に対応付けた抽出結果画像を出力し、前記抽出部は、前記機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から複数の抽出結果画像を出力し、前記出力した複数の抽出結果画像それぞれの一部分を複数の部分抽出結果画像として取り出し、前記取り出した複数の部分抽出結果画像を合成抽出結果画像として合成し、前記距離処理部は、前記合成抽出結果画像に基づいて前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求め、前記部分抽出結果画像は、前記抽出結果画像のうち、前記抽出結果画像に対応する画像における前記フックが写り込んだ第1画素に対応する前記抽出結果画像の第2画素の位置より、前記抽出結果画像に対応する前記画像を生成した撮像部側の画像領域である。好ましくは、上述のクレーン監視装置において、前記部分抽出結果画像は、前記抽出結果画像のうち、前記抽出結果画像に対応する前記画像を生成した撮像部側の所定サイズの画像領域である。好ましくは、前記複数の撮像部は、前記フックから等距離に配設された2個の第1および第2撮像部であり、前記所定サイズは、前記抽出結果画像の半分である。
【0012】
撮像部で画像を生成する場合、撮像部に対しフックより奥側の被写体は、フックや吊り荷等により遮蔽され、画像に写り込み難い。上記クレーン監視装置は、複数の撮像部それぞれで生成された各画像に基づく各抽出結果画像それぞれについて、フックより手前の撮像部側の画像領域を部分抽出結果画像として取り出し、合成抽出結果画像を合成するので、前記合成抽出結果画像は、遮蔽された部分が低減された結果画像となる。このため、上記クレーン監視装置は、合成抽出結果画像から吊り荷および対象者をより精度良く認識でき、吊り荷と対象者との距離をより精度良く求めることができる。
【0013】
他の一態様では、これら上述のクレーン監視装置において、前記複数の撮像部は、ステレオカメラを含み、前記抽出モデルは、距離画像を含む教師データを用いて機械学習した機械学習後の抽出モデルである。
【0014】
このようなクレーン監視装置は、撮像部にステレオカメラを含むので、高さ情報を利用できるから、吊り荷および対象者をより容易に精度良く抽出できる。
【0015】
他の一態様では、これら上述のクレーン監視装置において、前記距離処理部で求めた最小距離が所定の第2閾値以下または未満である場合に、前記天井クレーンの動作を停止する停止処理部をさらに備える。
【0016】
このようなクレーン監視装置は、停止処理部をさらに備えるので、天井クレーンの動作に起因する不具合を回避できる。
【0017】
本発明の他の一態様にかかるクレーン監視方法は、フックを昇降自在に懸吊する昇降台車を備える天井クレーンに関わる対象者を監視する方法であって、前記フック側に撮像方向を向け、前記フックを挟んで前記昇降台車に複数の撮像部を配設する配設工程と、前記複数の撮像部で生成された複数の画像に基づいて吊り荷および前記対象者を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出した前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求める距離処理工程と、前記距離処理工程で求めた最小距離が所定の閾値以下または未満である場合に、警告を外部に報知する警告処理工程とを備え、前記抽出工程は、機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から前記吊り荷および前記対象者を抽出し、前記抽出モデルは、前記吊り荷、前記対象者およびその他のうちのいずれかを抽出結果として画素に対応付けた抽出結果画像を出力し、前記抽出工程は、前記機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から複数の抽出結果画像を出力し、前記出力した複数の抽出結果画像それぞれの一部分を複数の部分抽出結果画像として取り出し、前記取り出した複数の部分抽出結果画像を合成抽出結果画像として合成し、前記距離処理工程は、前記合成抽出結果画像に基づいて前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求め、前記部分抽出結果画像は、前記抽出結果画像のうち、前記抽出結果画像に対応する画像における前記フックが写り込んだ第1画素に対応する前記抽出結果画像の第2画素の位置より、前記抽出結果画像に対応する前記画像を生成した撮像部側の画像領域である。
【0018】
このようなクレーン監視方法は、複数の撮像部を、フックを昇降自在に懸吊する昇降台車に、前記フック側に撮像方向を向け、前記フックを挟んで配置したので、昇降台車の移動に伴い複数の撮像部も移動するから、前記フックに掛けられた吊り荷を、常時、略同じ状態で撮像することができる。このため、上記クレーン監視方法は、画像から吊り荷および対象者をより容易に抽出できる。
【0019】
本発明の他の一態様にかかる天井クレーンは、これら上述のいずれかのクレーン監視装置を備える。
【0020】
これによれば、これら上述のいずれかのクレーン監視装置を備えた天井クレーンが提供できる。このような天井クレーンは、これら上述のいずれかのクレーン監視装置を備えるので、画像から吊り荷および対象者をより容易に抽出できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるクレーン監視装置およびクレーン監視方法は、画像から吊り荷および対象者をより容易に抽出できる。本発明によれば、このようなクレーン監視装置を備えた天井クレーンが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態におけるクレーン監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】前記クレーン監視装置によって監視される天井クレーンの構成を示す模式図である。
【
図3】前記クレーン監視装置の第1撮像部を説明するための図である。
【
図4】前記クレーン監視装置の第2撮像部を説明するための図である。
【
図5】前記クレーン監視装置における抽出結果画像、部分抽出結果画像、および、合成抽出結果画像を説明するための図である。
【
図6】前記クレーン監視装置における吊り荷と対象者との最小距離の演算を説明するための図である。
【
図7】前記クレーン監視装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0024】
実施形態におけるクレーン監視装置は、フックを昇降自在に懸吊する昇降台車を備える天井クレーンに関わる対象者を監視する装置である。このクレーン監視装置は、前記フック側に撮像方向を向け、前記フックを挟んで前記昇降台車に配設された複数の撮像部と、前記複数の撮像部で生成された複数の画像に基づいて吊り荷および前記対象者を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出した前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求める距離処理部と、前記距離処理部で求めた最小距離が所定の閾値以下または未満である場合に、警告を外部に報知する警告処理部とを備える。以下、このクレーン監視装置を備えた天井クレーンを例に、より具体的に説明する。
【0025】
図1は、実施形態におけるクレーン監視装置の構成を示すブロック図である。
図2は、前記クレーン監視装置によって監視される天井クレーンの構成を示す模式図である。
図2Aは、上面図であり、
図2Bは、側面図である。
図3は、前記クレーン監視装置の第1撮像部を説明するための図である。
図3Aは、上面図であり、
図3Bは、側面図であり、
図3Cは、第1撮像部で生成された画像の模式図である。説明の都合上、
図3Bには、第1撮像部1-1のみが図示され、第2撮像部1-2の図示が省略されている。
図4は、前記クレーン監視装置の第2撮像部を説明するための図である。
図4Aは、上面図であり、
図4Bは、側面図であり、
図4Cは、第2撮像部で生成された画像の模式図である。説明の都合上、
図4Bには、第2撮像部1-2のみが図示され、第1撮像部1-1の図示が省略されている。
図5は、前記クレーン監視装置における抽出結果画像、部分抽出結果画像、および、合成抽出結果画像を説明するための図である。
図5Aは、第1撮像部で生成された画像に基づく抽出結果画像および部分抽出結果画像の各模式図であり、
図5Bは、第2撮像部で生成された画像に基づく抽出結果画像および部分抽出結果画像の各模式図であり、
図5Cは、合成抽出結果画像の模式図である。
図6は、前記クレーン監視装置における吊り荷と対象者との最小距離の演算を説明するための図である。
【0026】
実施形態におけるクレーン監視装置は、フックを昇降自在に懸吊する昇降台車を備える天井クレーンに関わる対象者を監視する装置である。前記対象者には、例えば、前記天井クレーンに吊られる吊り荷を扱う作業者や、前記天井クレーンを操作する作業者等が含まれる。前記天井クレーンCRは、例えば、
図2に示すように、1対の第1および第2走行レールRL-1、RL-2と、ガータGTと、昇降台車LTと備える。
【0027】
第1および第2走行レールRL-1、RL-2は、例えば工場や倉庫等の建屋の両側壁それぞれに一方向(第1方向、Y方向)に延びるように配設され、ガータGTにおける後述の第1および第2車輪を案内する棒状の部材である。
【0028】
ガータGTは、昇降台車LTを案内し、支持する部材であり、例えば、前記一方向(第1方向)に直交する方向(第2方向、X方向)に延びるように前記一方向に間隔を開けて配置された棒状の部材である1対の第1および第2主けた、前記第1および第2主けたの各両端それぞれでこれらを連結する第1および第2連結部材、前記第1および第2連結部材それぞれに回転自在に取り付けられ、第1および第2走行レールRL-1、RL-2に案内される第1および第2車輪、前記第1および第2車輪を同期して駆動する例えばモータ等の第1駆動部、ならびに、前記第1および第2主けた上に前記第2方向に延びるように配設され、昇降台車LTにおける後述の第3および第4車輪を案内する棒状の第3および第4走行レールを備える。
【0029】
昇降台車LTは、フックHKを前記一方向(第1方向)および前記第2方向に直交する方向(第3方向、Z方向)に沿って昇降自在に懸吊し、ガータGTの前記第3および第4走行レールに案内される装置である。昇降台車LTには、回転自在に取り付けられ、前記第3および第4走行レールに案内される第3および第4車輪、前記第3および第4車輪を同期して駆動する例えばモータ等の第2駆動部、フックHKに取り付けられるワイヤロープ、前記ワイヤロープを巻き取るワイヤ巻取機、ならびに、前記ワイヤ巻取機を駆動する例えばモータ等の第3駆動部を備える。
【0030】
天井クレーンCRには、天井クレーンCRを操作するための操作ペンダントHPが、ケーブルCVを介して、昇降台車LTに取り付けられている。操作ペンダントHPは、ガータGT(フックHK)を前記第1方向の一方(北方向)に移動させる北方ボタン、ガータGT(フックHK)を前記第1方向の他方(南方向)に移動させる南方ボタン、昇降台車LT(フックHK)を前記第2方向の一方(東方向)に移動させる東方ボタン、昇降台車LT(フックHK)を前記第2方向の他方(西方向)に移動させる西方ボタン、フックHKを前記第3方向の一方(上方向)に移動させる上昇ボタン、および、フックHKを前記第3方向の他方(下方向)に移動させる降下ボタンを備える。オペレータ(ユーザ)が北方ボタンを操作することで(例えば押すことで)、前記第1駆動部によって前記第1および第2車輪が正転し、これによってガータGTが北方向に移動し、これに伴いフックHKが北方向に移動する。オペレータ(ユーザ)が北方ボタンの操作を停止することで(例えば前記押すことを止めることで)、この北方向の移動が停止される。オペレータ(ユーザ)が南方ボタンを操作することで(例えば押すことで)、前記第1駆動部によって前記第1および第2車輪が逆転し、これによってガータGTが南方向に移動し、これに伴いフックHKが南方向に移動する。オペレータ(ユーザ)が南方ボタンの操作を停止することで(例えば前記押すことを止めることで)、この南方向の移動が停止される。オペレータ(ユーザ)が東方ボタンを操作することで(例えば押すことで)、前記第2駆動部によって前記第3および第4車輪が正転し、これによって昇降台車LTが東方向に移動し、これに伴いフックHKが東方向に移動する。オペレータ(ユーザ)が東方ボタンの操作を停止することで(例えば前記押すことを止めることで)、この東方向の移動が停止される。オペレータ(ユーザ)が西方ボタンを操作することで(例えば押すことで)、前記第2駆動部によって前記第3および第4車輪が逆転し、これによって昇降台車LTが西方向に移動し、これに伴いフックHKが西方向に移動する。オペレータ(ユーザ)が西方ボタンの操作を停止することで(例えば前記押すことを止めることで)、この西方向の移動が停止される。オペレータ(ユーザ)が上昇ボタンを操作することで(例えば押すことで)、前記第3駆動部によって前記ワイヤ巻取機が正転し、これによってフックHKが上昇する。オペレータ(ユーザ)が上昇ボタンの操作を停止することで(例えば前記押すことを止めることで)、この上昇が停止される。オペレータ(ユーザ)が降下ボタンを操作することで(例えば押すことで)、前記第3駆動部によって前記ワイヤ巻取機が逆転し、これによってフックHKが降下する。オペレータ(ユーザ)が降下ボタンの操作を停止することで(例えば前記押すことを止めることで)、この降下が停止される。
【0031】
クレーン監視装置Dは、例えば、
図1に示すように、第1および第2撮像部1-1、1-2と、制御処理部2と、入力部3と、出力部4と、インターフェース部(IF部)5と、記憶部6とを備える。
【0032】
第1および第2撮像部1-1、1-2は、それぞれ、制御処理部2に無線または有線によって接続され、制御処理部2の制御に従って、被写体を撮像して前記被写体の画像を生成する装置である。第1および第2撮像部1-1、1-2は、それぞれ、例えば、被写体の光学像を所定の結像面上に結像する結像光学系、前記結像面に受光面を一致させて配置され、前記被写体の光学像を電気的な信号に変換するイメージセンサ、および、イメージセンサの出力を画像処理することで前記被写体の画像を表すデータである画像データを生成する画像処理部等を備えるデジタルカメラである。このような第1および第2撮像部1-1、1-2は、フックHKに掛けられる吊り荷PKおよびその周囲の対象者Obを撮像できるように、
図2Bに示すように、フックHK側に撮像方向を向け、フックHKを挟んで前記第2方向に沿って並んで昇降台車LTの下部に配設される。本実施形態では、第1および第2撮像部1-1、1-2は、フックHKから等距離となるように、そして、各撮像方向が平行に前記第3方向に沿うように、昇降台車LTの下部に配設される。各撮像範囲は、少なくとも床から所定の高さ(例えば吊り荷の高さ等を考慮した2mや3m等)までの範囲で重複している。なお、各撮像方向は、互いに交差してもよい。
【0033】
入力部3は、制御処理部2に接続され、例えば、監視開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、警告の要否を判別する所定の閾値(第1閾値)等のクレーン監視装置Dを動作させる上で必要な各種データをクレーン監視装置Dに入力する機器であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ等である。出力部4は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、入力部3から入力されたコマンドやデータおよび警告等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイ等の表示を行う表示装置や、例えばスピーカやブザー等の音を出力する音出力装置等である。
【0034】
IF部5は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部5は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であってもよい。
【0035】
記憶部6は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、クレーン監視装置Dの各部1-1、1-2、3~6を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、複数の撮像部1、本実施形態では2個の第1および第2撮像部1-1、1-2で生成された複数、本実施形態では2個の第1および第2の画像に基づいて吊り荷および対象者を抽出する抽出プログラムや、前記抽出プログラムで抽出した前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求める距離処理プログラムや、前記距離処理プログラムで求めた最小距離が所定の閾値以下または未満である場合に、警告を外部に報知する警告処理プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、例えば前記閾値や1画素に写り込む実長等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部6は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部6は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部2のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0036】
制御処理部2は、クレーン監視装置Dの各部1-1、1-2、3~6を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、天井クレーンCRに関わる対象者を監視するための回路である。制御処理部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部2には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部21、抽出部22、距離処理部23および警告処理部24が機能的に構成される。
【0037】
制御部21は、クレーン監視装置Dの各部1-1、1-2、3~6を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、クレーン監視装置D全体の制御を司るものである。
【0038】
抽出部22は、複数の撮像部1、本実施形態では2個の第1および第2撮像部1-1、1-2で生成された複数、本実施形態では2個の第1および第2の画像に基づいて吊り荷および対象者を抽出するものである。
【0039】
より具体的には、抽出部22は、機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から前記吊り荷および前記対象者を抽出する。前記抽出モデルは、前記吊り荷、前記対象者およびその他のうちのいずれかを抽出結果として画素に対応付けた抽出結果画像を出力する。このような抽出モデルには、例えば、Semantic Segmentationと呼ばれる深層学習モデルが用いられる。Semantic Segmentationは、画像内の全画素にラベル(カテゴリ、クラス)を関連付ける深層学習のアルゴリズムであり、例えば、SegNetやFCNやU-Net等の種々の手法がある。本実施形態では、CNN(Convolution Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)を用いたSegNetを機械学習することで、前記抽出モデルが生成された。この機械学習では、対象者としての作業者と吊り荷とを含む様々な吊り荷玉掛作業を撮像することによって生成された複数の画像が用意され、これら複数の画像それぞれについて、全画素に、前記吊り荷、前記対象者(作業者)およびその他のうちのいずれかのラベルが付与され、教師データが作成された。教師データの画像は、R画素(赤画素)から成るR画像、G画素(緑画素)から成るG画像およびB画素(青画素)から成るB画像の3チャンネルの画像で構成される。そして、この教師データを用いてSegNetが機械学習された。本実施形態では、床からの高さを推定するために、作業者のラベルは、さらに、頭部、手、足およびその他人体の各ラベルに細分化された。
【0040】
ここで、吊り荷は、フックHKに掛けられるので、フックHKとの関連で荷物PKが吊り荷か否かの別を機械学習することで、前記機械学習後の抽出モデルは、例えば、
図3および
図4に示す例において、荷物PKαを吊り荷と判定し、荷物PKβを吊り荷ではないと判定可能となる。なお、前記抽出モデルが、前記荷物、前記対象者、フックおよびその他のうちのいずれかを抽出結果として画素に対応付けた抽出結果画像を出力するように構成され、抽出部22が、フックHKと判定された画素を取り囲むように、また、フックHKと判定された画素に隣接するように、荷物と判定された画素から成る領域を吊り荷と判定するように、構成されてもよい。
【0041】
そして、抽出部22は、前記機械学習後の抽出モデルを用いることによって、前記複数の画像から複数の抽出結果画像を出力し、この出力した複数の抽出結果画像それぞれの一部分を複数の部分抽出結果画像として取り出し、この取り出した複数の部分抽出結果画像を合成抽出結果画像として合成する。前記部分抽出結果画像は、前記抽出結果画像のうち、前記抽出結果画像に対応する画像における前記フックが写り込んだ第1画素に対応する前記抽出結果画像の第2画素の位置より、前記抽出結果画像に対応する前記画像を生成した撮像部側の画像領域である。例えば、
図3および
図4に示すように、天井クレーンCRのフックHKに掛けられた荷物(吊り荷)PKα、床に置かれた荷物PKβ、第1作業者Obaおよび第2作業者Obbを含む被写体を、
図3Bに示すように第1撮像部1-1で撮像すると、
図3Cに示す第1画像PC-1が生成され、前記被写体を、
図4Bに示すように第2撮像部1-2で撮像すると、
図4Cに示す第2画像PC-2が生成される。この第1画像PC-1におけるR画像、G画像およびB画像が前記機械学習後の抽出モデルに入力されると、
図5Aに示す第1抽出結果画像RS-1が出力され、前記第2画像PC-2におけるR画像、G画像およびB画像が前記機械学習後の抽出モデルに入力されると、
図5Bに示す第2抽出結果画像RS-2が出力される。第1抽出結果画像RS-1は、第1作業者Obaと判定された画素から成る第1作業者判定領域ROaと、吊り荷PKと判定された吊り荷判定領域RPと、その他と判定された第1その他判定領域OT-1とで構成されている。第2出結果画像RS-2は、第1作業者Obaと判定された画素から成る第1作業者判定領域ROaと、第2作業者Obbと判定された画素から成る第2作業者判定領域RObと、吊り荷PKと判定された吊り荷判定領域RPと、その他と判定された第2その他判定領域OT-2とで構成されている。前記機械学習後の抽出モデルは、
図3Cに示すように、第2作業者ObbがフックHKやワイヤロープによって第1撮像部1-1から遮蔽され、第1撮像部1-1で生成された第1画像には第2作業者Obbの一部しか写り込んでいないために、第2作業者Obbを抽出できず、その結果、第1抽出結果画像RS-1は、第2作業者Obbの判定領域を含んでいない。このため、本実施形態では、第1抽出結果画像RS-1のうち、前記第1抽出結果画像RS-1に対応する第1画像PC-1におけるフックHKが写り込んだ第1画素PPH-1に対応する前記第1抽出結果画像RS-1の第2画素PRH-1の位置より、前記第1抽出結果画像PR-1に対応する前記第1画像PC-1を生成した第1撮像部1-1側の画像領域RA-1が部分抽出結果画像(第1部分抽出結果画像)として取り出される。第2抽出結果画像RS-2のうち、前記第2抽出結果画像RS-2に対応する第2画像PC-2におけるフックHKが写り込んだ第1画素PPH-2に対応する前記第2抽出結果画像RS-2の第2画素PRH-2の位置より、前記第2抽出結果画像PR-2に対応する前記第2画像PC-2を生成した第2撮像部1-2側の画像領域RA-2が部分抽出結果画像(第2部分抽出結果画像)として取り出される。そして、
図5Cに示すように、これら第1部分抽出結果画像RA-1と第2部分抽出結果画像RA-2とが、フックHKが写り込んだ第1画素PPH-1、PPH-2に対応する前記第2抽出結果画像RS-1、RS-2の第2画素PRH-1、PPH-2の位置で連結されることで、合成抽出結果画像CRSとして合成される。これによって、第1および第2撮像部1-1、1-2の死角がカバーされ(互いに補完され)、合成抽出結果画像CRSは、第1作業者Obaと判定された画素から成る第1作業者判定領域ROaと、第2作業者Obbと判定された画素から成る第2作業者判定領域RObと、吊り荷PKと判定された吊り荷判定領域RPと、その他と判定された第3その他判定領域OT-3とで構成される。
【0042】
ここで、フックHKが写り込んだ第1画素に対応する抽出結果画像の第2画素を抽出するために、前記抽出モデルは、前記吊り荷、前記対象者、フックおよびその他のうちのいずれかを抽出結果として画素に対応付けた抽出結果画像を出力するように構成される。
【0043】
なお、前記部分抽出結果画像は、前記抽出結果画像のうち、前記抽出結果画像に対応する前記画像を生成した撮像部側の所定サイズの画像領域であってもよい。前記所定サイズは、2個の第1および第2撮像部1-1、1-2で生成された2個の第1および第2画像に基づいて2個の第1および第2抽出結果画像から、合成抽出結果画像が生成される場合では、前記抽出結果画像の半分である。
【0044】
距離処理部23は、抽出部22で抽出した前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求めるものである。より具体的には、距離処理部23は、合成抽出結果画像において、抽出部22で抽出した対象者に対し、吊り荷との間にある画素を計数し、計数結果に、1画素に写り込む実長を乗算することによって、吊り荷と対象者との間の距離を求め、この求めた距離のうちの最も小さい(短い)距離を最小距離として求める。例えば、
図6に示すように、抽出部22で2人の第1および第2対象者ROa、RObが抽出された場合、距離処理部23は、合成抽出結果画像CRSにおいて、抽出部22で抽出した第1対象者ROaの輪郭に対し、吊り荷CRPの輪郭との間にある画素を計数し、計数結果に、1画素に写り込む実長を乗算することによって吊り荷CRPと第1対象者ROaとの間の距離(第1距離)Daを求め、合成抽出結果画像CRSにおいて、抽出部22で抽出した第2対象者RObの輪郭に対し、吊り荷CRPの輪郭との間にある画素を計数し、計数結果に、1画素に写り込む実長を乗算することによって吊り荷CRPと第2対象者RObとの間の距離(第2距離)Dbを求め、第1および第2距離Da、Dbのうちの最も小さい距離、
図6に示す例では第1距離Daを、最小距離として求める(Da<Db)。なお、抽出部22で1人の対象者ROしか抽出されなかった場合、この1人の対象者ROと吊り荷CRPとの間の距離が最小距離となる。
【0045】
ここで、本実施形態では、高さによって1画素に写り込む実長が異なるので、複数の高さそれぞれに対応付けられた複数の、1画素に写り込む実長が記憶部6に記憶され、吊り荷CRPに最近接する対象者ROの部位の高さに応じた、1画素に写り込む実長で吊り荷CRPと対象者ROとの間の距離が求められる。より具体的には、前記部位は、足、手および頭部であり、足の高さに対応する、1画素に写り込む実長(足用実長)と、手の高さに対応する、1画素に写り込む実長(手用実長)と、頭部の高さに対応する、1画素に写り込む実長(頭部用実長)とが記憶部6に記憶される。距離処理部23は、合成抽出結果画像CRSにおいて、抽出部22で抽出した対象者ROに対し、吊り荷CRPに最近接する対象者ROの部位(足、手または頭部)と前記吊り荷CRPとの間にある画素を計数し、計数結果に、前記部位に対応する1画素に写り込む実長を乗算することによって、吊り荷CRPと対象者ROとの間の距離を求め、この求めた距離のうちの最も小さい(短い)距離を最小距離として求める。なお、各部位の高さは、個々人によって異なるが、例えば、標準身長から前記各部位の高さが決定される。
【0046】
警告処理部24は、距離処理部23で求めた最小距離が所定の閾値(第1閾値)以下または未満である場合に、出力部4によって警告を外部に報知するものである。前記閾値は、例えば1mや2m等で安全性等を考慮して適宜に設定される。例えば、出力部4は、音出力装置であって、警告処理部24は、サイレン音やブザー音等の警告音を前記音出力装置から出力することで、警告を外部に報知する。あるいは、例えば、出力部4は、表示装置であって、警告処理部24は、「危険です。吊り荷から離れて下さい」等の警告する旨の警告メッセージを前記表示装置に表示することで、警告を外部に報知する。なお、出力部4が、例えばパトライト回転灯等の発光装置であって、警告処理部24は、前記発光装置を発光させることで、警告を外部に報知してもよい。また、これらが組み合わされてもよい。
【0047】
本実施形態では、前記閾値は、オペレータ(ユーザ)によって入力部3から入力可能に構成されるが、設計者によって予め設定され、記憶部6に記憶されてもよい。
【0048】
これら制御処理部2、入力部3、出力部4、IF部5および記憶部6は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。また、制御処理部2、入力部3、出力部4、IF部5および記憶部6は、例えば、ボード型やワンチップ型等のコンピュータによって構成され、昇降台車LTに搭載されてもよい。
【0049】
なお、第1および第2撮像部1-1、1-2は、前記フック側に撮像方向を向け、前記フックを挟んで前記昇降台車に配設された複数の撮像部の一例に相当する。上述では、複数の撮像部は、2個であるが、複数であれば、任意であってよい。
【0050】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図7は、前記クレーン監視装置の動作を示すフローチャートである。
【0051】
このような構成のクレーン監視装置Dは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部2には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部21、抽出部22、距離処理部23および警告処理部24が機能的に構成される。そして、所定のサンプリング間隔で次の各処理が繰り返し実行される。なお、天井クレーンCRの稼働中のみ、次の各処理が繰り返し実行されてもよい。ここで、前記閾値は、オペレータ(ユーザ)によって入力部3から入力され、記憶部6に記憶されているものとする。
【0052】
図7において、まず、クレーン監視装置Dは、制御処理部2の制御部21によって、第1および第2撮像部1-1、1-2で第1および第2画像を取得する(S1)。
【0053】
次に、クレーン監視装置Dは、制御処理部2の抽出部22によって、第1および第2撮像部1-1、1-2で生成された第1および第2画像に基づいて吊り荷PKおよび対象者Obを抽出する(S2)。本実施形態では、抽出部22は、機械学習後の抽出モデルによって第1および第2画像から第1および第2抽出結果画像を生成し、これら第1および第2抽出結果画像から第1および第2部分抽出結果画像を取り出し、これら第1および第2部分抽出結果画像から合成抽出結果画像を合成する。
【0054】
次に、クレーン監視装置Dは、制御処理部2の距離処理部23によって、抽出部22で抽出した前記吊り荷と前記対象者との最小距離を求める(S3)。本実施形態では、距離処理部23は、合成抽出結果画像において、抽出部22で抽出した対象者に対し、吊り荷との間にある画素を計数し、計数結果に、1画素に写り込む実長を乗算することによって、吊り荷と対象者との間の距離を求め、この求めた距離のうちの最も小さい(短い)距離を最小距離として求める。
【0055】
次に、クレーン監視装置Dは、制御処理部2の警告処理部24によって、警告の要否を判定する(S4)。本実施形態では、警告処理部24は、距離処理部23で求めた最小距離が所定の閾値以下または未満であるか否かを判定することで、警告の要否を判定する。この判定の結果、前期最小距離が所定の閾値以下または未満である場合には、警告処理部24は、警告必要と判定し(Yes)、出力部4によって警告を外部に報知し(S5)、今回の処理を終了する。一方、前記判定の結果、前期最小距離が所定の閾値以下または未満ではない場合には、警告処理部24は、警告不要と判定し(No)、今回の処理を終了する。
【0056】
以上説明したように、実施形態におけるクレーン監視装置Dおよびこれに実装されたクレーン監視方法ならびに天井クレーンCRは、複数2個の第1および第2撮像部1-1、1-2を、フックHKを昇降自在に懸吊する昇降台車LTに、前記フック側に撮像方向を向け、前記フックHKを挟んで配置したので、昇降台車LTの移動に伴い複第1および第2撮像部1-1、1-2も移動するから、前記フックHKに掛けられた吊り荷を、常時、略同じ状態で撮像することができる。このため、上記クレーン監視装置およびクレーン監視方法ならびに天井クレーンCRは、画像から吊り荷および対象者をより容易に抽出できる。
【0057】
上記クレーン監視装置およびクレーン監視方法ならびに天井クレーンCRは、機械学習後の抽出モデルを用いるので、吊り荷および対象者を精度良く抽出できる。
【0058】
撮像部1で画像を生成する場合、撮像部1に対しフックHKより奥側の被写体は、フックHKやワイヤロープや吊り荷等により遮蔽され、画像に写り込み難い。上記クレーン監視装置およびクレーン監視方法ならびに天井クレーンCRは、複数2個の第1および第2撮像部1-1、1-2それぞれで生成された各画像に基づく各抽出結果画像それぞれについて、フックHKより手前の撮像部1側の画像領域を部分抽出結果画像として取り出し、合成抽出結果画像を合成するので、前記合成抽出結果画像は、遮蔽された部分が低減された結果画像となる。このため、上記クレーン監視装置およびクレーン監視方法ならびに天井クレーンCRは、合成抽出結果画像から吊り荷および対象者をより精度良く認識でき、吊り荷と対象者との距離をより精度良く求めることができる。
【0059】
なお、上述の実施形態では、クレーン監視装置Dは、前記第2方向(X方向)に沿って並んで配設された第1および第2撮像部1-1、1-2を備えたが、これに代え、あるいは、これに追加して、フックHK側に撮像方向を向け、フックHKを挟んで前記第1方向(Y方向)に沿って並んで昇降台車LTの下部に配設された第3および第4撮像部1-3、1-4(不図示)を備えてもよい。第3および第4撮像部1-3、1-4は、配設方向の点を除き、第1および第2撮像部1-1、1-2と同様に構成されるため、その説明を省略する。
【0060】
図8は、第1変形態様を説明するための図である。
図8Aは、第3撮像部で生成された第3画像の模式図であり、
図8Bは、第4撮像部で生成された第4画像の模式図である。
図9は、第2変形態様を説明するための図である。
図10は、第3変形態様を説明するための図である。
図9Aおよび
図10Aは、第3撮像部で生成された第3画像の模式図であり、
図9Bおよび
図10Bは、第1撮像部で生成された第1画像の模式図であり、
図9Cおよび
図10Cは、第2撮像部で生成された第2画像の模式図であり、
図9Dおよび
図10Dは、第4撮像部で生成された第4画像の模式図である。
【0061】
クレーン監視装置Dが、第1および第2撮像部1-1、1-2に代え、第1方向に沿って並んで配設される第3および第4撮像部1-3、1-4を備える場合では、第3撮像部1-3は、例えば、
図3および
図4に示す被写体を撮像すると、
図8Aに示すような第3画像PC-3を生成し、第4撮像部1-4は、例えば、
図8Bに示すような第4画像PC-4を生成する。この
図8Aに示す第3画像PC-3を抽出モデルを入力して出力される第3抽出結果画像のうち、前記第3抽出結果画像に対応する第3画像PC-3におけるフックHKが写り込んだ第1画素に対応する前記第3抽出結果画像の第2画素の位置より、前記第3抽出結果画像に対応する前記第3画像PC-3を生成した第3撮像部1-3側の画像領域(第3画像PC-3のうちの
図8Aにおける紙面上側の破線で示す領域PA-3の画像、に対応する抽出結果画像)が部分抽出結果画像(第3部分抽出結果画像)として取り出され、この
図8Bに示す第4画像PC-4を抽出モデルを入力して出力される第4抽出結果画像のうち、前記第4抽出結果画像に対応する第4画像PC-4におけるフックHKが写り込んだ第1画素に対応する前記第4抽出結果画像の第2画素の位置より、前記第4抽出結果画像に対応する前記第4画像PC-4を生成した第4撮像部1-4側の画像領域(第4画像PC-4のうちの
図8Bにおける紙面下側の破線で示す領域PA-4の画像、に対応する抽出結果画像)が部分抽出結果画像(第4部分抽出結果画像)として取り出され、これらが合成されることで、前記合成抽出結果画像が生成される。
【0062】
一方、クレーン監視装置Dが、第1および第2撮像部1-1、1-2に追加して、第1方向に沿って並んで配設される第3および第4撮像部1-3、1-4を備える場合では、例えば、
図9に示すように、
図5Aに示す前記第1部分抽出結果画像(第1画像PC-1のうちの
図9Bにおける紙面左側の破線で示す領域PA-1の画像、に対応する抽出結果画像)、
図5Bに示す前記第2部分抽出結果画像(第2画像PC-2のうちの
図9Cにおける紙面右側の破線で示す領域PA-2の画像、に対応する抽出結果画像)、前記第3部分抽出結果画像(第3画像PC-3のうちの
図8Aおよび
図9Aにおける紙面上側の破線で示す領域PA-3の画像、に対応する抽出結果画像)、および、前記第4部分抽出結果画像(第4画像PC-4のうちの
図8Bおよび
図9Dにおける紙面上側の破線で示す領域PA-4の画像、に対応する抽出結果画像)が合成されることで、前記合成抽出結果画像が生成される。なお、第1ないし第4部分抽出結果画像において、重複する画素では、例えば、各画素の各ラベルがand演算されることによって当該画素のラベルが決定される。
【0063】
あるいは、クレーン監視装置Dが、第1および第2撮像部1-1、1-2に追加して、第1方向に沿って並んで配設される第3および第4撮像部1-3、1-4を備える場合において、前記重複を低減するために、例えば、第1ないし第4抽出結果画像それぞれについて、当該抽出結果画像のうち、当該抽出結果画像に対応する画像におけるフックHKが写り込んだ第1画素に対応する当該抽出結果画像の第2画素を頂点とし、当該抽出結果画像に対応する画像を生成した撮像部側の当該抽出結果画像の辺を底辺とする三角形形状の領域(前記画像のうちの
図10における破線で示す三角形形状の各領域PAa-1~PAa-4に対応する抽出結果画像)が合成されることで、前記合成抽出結果画像が生成される。
【0064】
また、上述の実施形態において、前記複数の撮像部1は、ステレオカメラを含み、前記抽出モデルは、距離画像を含む教師データを用いて機械学習した機械学習後の抽出モデルであってもよい。ステレオカメラでは、大略、互いに光軸が平行となるように基線長だけ離間して配置された左右1対の各カメラで撮像した左右1対の各画像に基づいて視差が求められ、この求められた視差に基づいていわゆる三角測量の原理に基づき物体表面までの距離が求められる。そして、距離に応じた画素値(例えば輝度値)を持つ画素で構成された距離画像が生成される。このようなクレーン監視装置Dは、撮像部1にステレオカメラを含むので、高さ情報を利用でき、情報量が増えるから、吊り荷PKおよび対象者Obをより容易に精度良く抽出できる。
【0065】
図11は、第4変形態様を説明するための図である。
図11Aは、ステレオカメラとしての第1撮像部で生成された第1画像の模式図であり、
図11Bは、ステレオカメラとしての第2撮像部で生成された第2画像の模式図であり、
図11Cは、第1および第2画像から生成された距離画像の模式図であり、
図11Dは、R画像、G画像およびB画像の3チャンネルから成る第1画像の模式図であり、
図11Eは、CNNのSegNetを模式的に示し、
図11Fは、抽出結果画像の模式図である。
【0066】
例えば、第1および第2撮像部1-1、1-2は、ステレオカメラであって、例えば、
図11Aないし
図11Dに示すように、第1および第2撮像部1-1、1-2で生成された第1および第2画像PC-1、PC-2に基づいて、距離画像DPが生成され、第1撮像部1-1で生成された第1画像PC-1に基づいてR画像PC-1R、G画像PC-1GおよびB画像PC-1Bが生成され、これら4チャンネルの各画像から成る教師データが作成され、SegNetを機械学習することで、
図11Eに示すような前記抽出モデルが生成される。そして、抽出部22は、
図11Fに示すように、前記機械学習後の抽出モデルを用いることによって、4チャンネルの画像が入力されることで、抽出結果画像RS-5を出力する。前記距離画像DPでは、例えば、画素は、撮像部1に近い程、暗い輝度値を持ち、撮像部1から遠い程、明るい輝度値を持つ。
【0067】
また、上述の実施形態において、クレーン監視装置Dは、距離処理部23で求めた最小距離が所定の第2閾値以下または未満である場合に、天井クレーンCRの動作を停止する停止処理部をさらに備えてもよい。このような停止処理部25は、例えば、
図1に破線で示すように、制御処理部2に機能的に構成される。前記第2閾値は、例えば1mや2m等で安全性等を考慮して適宜に予め設定される。前記第2閾値は、前記閾値と同値であってよく、異値であってよい。このようなクレーン監視装置Dは、停止処理部25をさらに備えるので、天井クレーンの動作に起因する不具合を回避できる。
【0068】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0069】
D クレーン監視装置
CR 天井クレーン
1-1 第1撮像部
1-2 第2撮像部
2 制御処理部
4 出力部
6 記憶部
21 制御部
22 抽出部
23 距離処理部
24 警告処理部
25 停止処理部