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特許7440010熱収縮チューブ、熱収縮シート、接続体及び熱収縮チューブの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】熱収縮チューブ、熱収縮シート、接続体及び熱収縮チューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20240220BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240220BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20240220BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20240220BHJP
   B29C 61/08 20060101ALI20240220BHJP
   B29C 48/09 20190101ALI20240220BHJP
   B29C 48/91 20190101ALI20240220BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G3/04 037
H02G3/04 062
F16L11/12 N
F16B19/00 Q
B29C61/08
B29C48/09
B29C48/91
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020534127
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2019026337
(87)【国際公開番号】W WO2020026682
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2018145630
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599109906
【氏名又は名称】住友電工ファインポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】江本 安隆
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-004366(JP,U)
【文献】特開昭61-085007(JP,A)
【文献】実開平07-036532(JP,U)
【文献】特開2017-085695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
H02G 3/04
F16L 11/12
F16B 19/00
B29C 61/08
B29C 48/09
B29C 48/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層と、
上記ベース層の内周面に形成され、このベース層の軸方向に延在する複数の凸条部と
を備え、
上記ベース層の熱収縮前における形状が円筒状で、かつ熱収縮後における形状が熱収縮前の形状よりも扁平な円筒状であり、
上記ベース層が軸方向に延在する一対の肉厚部を有し、
上記一対の肉厚部が、対向するように位置する熱収縮チューブ。
【請求項2】
上記ベース層の外周面側に積層される接着剤層をさらに備える請求項1に記載の熱収縮チューブ。
【請求項3】
上記ベース層の内周面側に積層される接着剤層をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の熱収縮チューブ。
【請求項4】
複数の電線の外周を被覆する矩形状のベース層と、
上記ベース層の両端縁に沿って延在する一対の凸条部と
を備え、
上記ベース層の熱収縮後の断面形状が扁平な部分円環状である熱収縮シート。
【請求項5】
導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、
上記複数の電線を被覆するチューブと
を備え、
上記チューブが、
上記複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層と、
上記ベース層の内周面に形成され、このベース層の軸方向に延在する複数の凸条部と
を有し、
上記チューブの外周面側に接続される取付基板をさらに備え、
上記取付基板が直線状のスリットを有し、
上記凸条部が上記スリットに係合している接続体。
【請求項6】
導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、
上記複数の電線を被覆するシートと、
直線状かつ平行な一対のスリットを有し、上記複数の電線を上記シートとの間に挟んだ状態で上記シートに接続される取付基板と
を備え、
上記シートが、
上記複数の電線の外周を被覆する矩形状のベース層と、
上記ベース層の両端縁に沿って延在する一対の凸条部と
を有し、
上記ベース層の主成分が、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニルまたはフッ素樹脂であり、
上記ベース層が可撓性を有し、上記一対の凸条部が上記ベース層と同じ樹脂組成物によって上記ベース層と一体的に形成されており、上記一対の凸条部が上記一対のスリットに係合している接続体。
【請求項7】
樹脂組成物を筒状に押出す工程と、
上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する工程と、
上記架橋する工程で架橋された筒状体を融点又は軟化点以上に加熱する工程と、
上記加熱する工程による加熱後の筒状体を拡径する工程と、
上記拡径する工程による拡径後の筒状体を冷却する工程と
を備え、
上記押出す工程で、上記筒状体の内周面に、軸方向に延在する複数の凸条部を形成し、
上記押出す工程で、上記筒状体に、上記軸方向に延在し、互いに対向するように位置する一対の肉厚部を形成し、
上記押出す工程で、上記樹脂組成物を扁平な円筒状に押し出し、
上記架橋する工程で、上記筒状体を扁平な円筒状に固定し、
上記拡径する工程で、上記筒状体を、上記架橋する工程で固定したよりも非扁平な円筒状に拡径する熱収縮チューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱収縮チューブ、熱収縮シート、接続体及び熱収縮チューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電線を結束するために熱収縮チューブが用いられている。この熱収縮チューブは、被覆対象である複数の電線の外周面に被着するよう径方向に収縮することで、複数の電線を結束するものである。
【0003】
複数の電線を結束するための熱収縮チューブとしては、例えばチューブの内周面側に複数の電線を挿入しやすいようチューブの軸方向の両端に亘ってスリットが形成されたものが発案されている(特開2012-131132号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-131132号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る熱収縮チューブは、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層と、上記ベース層の内周面に形成され、このベース層の軸方向に延在する複数の凸条部とを備える。
【0006】
本開示の他の一態様に係る熱収縮シートは、複数の電線の外周を被覆する矩形状のベース層と、上記ベース層の両端縁に沿って延在する一対の凸条部とを備える。
【0007】
本開示の他の一態様に係る接続体は、導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、上記複数の電線を被覆するチューブとを備え、上記チューブが、上記複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層と、上記ベース層の内周面に形成され、このベース層の軸方向に延在する複数の凸条部とを有する。
【0008】
本開示の他の一態様に係る接続体は、導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、上記複数の電線を被覆するシートと、直線状かつ平行な一対のスリットを有し、上記複数の電線を上記シートとの間に挟んだ状態で上記シートに接続される取付基板とを備え、上記シートが、上記複数の電線の外周を被覆する矩形状のベース層と、上記ベース層の両端縁に沿って延在する一対の凸条部とを有し、上記一対の凸条部が上記一対のスリットに係合している。
【0009】
本開示の他の一態様に係る熱収縮チューブの製造方法は、樹脂組成物を筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する工程と、上記架橋する工程で架橋された筒状体を融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の筒状体を拡径する工程と、上記拡径する工程による拡径後の筒状体を冷却する工程とを備え、上記押出す工程で、上記筒状体の内周面に、軸方向に延在する複数の凸条部を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る熱収縮チューブを示す模式的斜視図である。
図2図2は、図1の熱収縮チューブのA-A線断面図である。
図3図3は、図1の熱収縮チューブの熱収縮状態を示す模式的断面図である。
図4図4は、図1の熱収縮チューブを用いた接続体を示す模式的断面図である。
図5図5は、図1の熱収縮チューブの製造方法を示すフロー図である。
図6図6は、図1の熱収縮チューブとは異なる実施形態に係る熱収縮チューブを示す模式的斜視図である。
図7図7は、図6の熱収縮チューブを用いた接続体を示す模式的断面図である。
図8図8は、図1及び図6の熱収縮チューブとは異なる実施形態に係る熱収縮チューブを示す模式的斜視図である。
図9図9は、図8の熱収縮チューブの熱収縮状態を示す模式的断面図である。
図10図10は、図8の熱収縮チューブを用いた接続体を示す模式的断面図である。
図11図11は、図1図6及び図8の熱収縮チューブとは異なる実施形態に係る熱収縮チューブを示す模式的斜視図である。
図12図12は、図11の熱収縮チューブを用いた接続体を示す模式的断面図である。
図13図13は、一実施形態に係る熱収縮シートを示す模式的斜視図である。
図14図14は、図13の熱収縮シートのB-B線断面図である。
図15図15は、図13の熱収縮シートを用いた接続体を示す模式的断面図である。
図16図16は、図13の熱収縮シートの製造方法を示すフロー図である。
図17図17は、図16の熱収縮シートの製造方法の分断する工程による筒状体の分断状態を示す模式的斜視図である。
図18図18は、図1図6図8及び図11の熱収縮チューブとは異なる実施形態に係る熱収縮チューブを用いた接続体を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示が解決しようとする課題]
上記公報に記載されているような従来の熱収縮チューブは、複数の電線を全体として円柱状にまとめて結束するものである。一方、近年においては、車、飛行機等の乗り物、電化製品などにおいては室内空間における容積の増大が図られていることに伴い、これらの室内で複数の電線を設置する場合に省スペース化が求められている。
【0012】
しかしながら、上記公報に記載されているような従来の熱収縮チューブを設置する場合、上記室内空間において高さ方向に多くのスペースが必要となるので、有効スペースを増やすことは困難である。
【0013】
本開示は、このような事情に基づいてなされたものであり、複数の電線を並列に結束して設置することができ、省スペース化を図ることが可能な熱収縮チューブの提供を課題とする。
【0014】
[本開示の効果]
本開示によれば、複数の電線を並列に結束して設置することができ、省スペース化を図ることが可能な熱収縮チューブを提供できる。
【0015】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0016】
本開示の一態様に係る熱収縮チューブは、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層と、上記ベース層の内周面に形成され、このベース層の軸方向に延在する複数の凸条部とを備える。
【0017】
当該熱収縮チューブは、複数の電線の外周を被覆するベース層の内周面に形成される上記複数の凸条部によってガイドされて、複数の電線が上記ベース層の内周側に並列に収容されやすくなる。従って、複数の電線の設置において、省スペース化を図ることができる。また、各凸条部の配置の間隔を広げて各凸条部を仕切りとして用いることにより、ベース層の内周面の空間を区分けすることができる。
【0018】
上記ベース層の熱収縮後の形状が扁平な円筒状であるとよい。このように、上記ベース層の熱収縮後の形状が扁平な円筒状であることによって、上記複数の電線を上記ベース層の扁平方向に容易に並列に結束することができる。なお、「扁平方向」とは、偏平な円の長径方向をいう。
【0019】
当該熱収縮チューブは、上記ベース層の外周面側に積層される接着剤層をさらに備えるとよい。このように、当該熱収縮チューブが上記ベース層の外周面側に積層される接着剤層をさらに備えることによって、熱収縮後のチューブにより並列に結束された複数の電線を車等の乗り物、電化製品などの設置面に容易に固定することができる。
【0020】
当該熱収縮チューブは、上記ベース層の内周面側に積層される接着剤層をさらに備えることが好ましい。当該熱収縮チューブが上記ベース層の内周面側に積層される接着剤層をさらに備えることで、複数の電線を上記ベース層の内周面側に容易に固定して配置することができる。
【0021】
上記ベース層が軸方向に延在する一対の肉厚部を有し、上記一対の肉厚部が、対向するように位置するとよい。このように、上記ベース層が軸方向に延在する一対の肉厚部を有し、上記一対の肉厚部が対向するように位置することによって、当該熱収縮チューブが収縮する際に上記一対の肉厚部によってガイドされて、複数の電線が上記ベース層の内周側に並列に収容されやすくなる。従って、複数の電線をより容易に並列に結束することができる。
【0022】
本開示の他の一態様に係る熱収縮シートは、複数の電線の外周を被覆する矩形状のベース層と、上記ベース層の両端縁に沿って延在する一対の凸条部とを備える。
【0023】
当該熱収縮シートは、熱収縮後に複数の電線が並列に結束されて、配線領域の省スペース化を図ることができるとともに、上記ベース層の両端縁に沿って延在する一対の凸条部により車等の乗り物、電化製品などの設置面に複数の電線を容易に固定することができる。
【0024】
本開示の他の一態様に係る接続体は、導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、上記複数の電線を被覆するチューブとを備え、上記チューブが、上記複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層と、上記ベース層の内周面に形成され、このベース層の軸方向に延在する複数の凸条部とを有する。
【0025】
当該接続体は、複数の電線を被覆するチューブが、上記複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層の内周面にこのベース層の軸方向に延在する複数の凸条部を有するので、複数の電線が並列に整列し、コンパクトに収容できる。従って、車等の乗り物、電化製品などの室内空間に設置される場合において、狭い領域にも配置可能であるとともに、省スペース化を図ることができる。
【0026】
当該接続体は、上記チューブの外周面側に接続される取付基板をさらに備え、上記取付基板が直線状のスリットを有し、上記凸条部が上記スリットに係合しているとよい。このように、上記チューブの外周面側に接続される取付基板をさらに備え、上記取付基板が直線状のスリットを有し、上記凸条部が上記スリットに係合していることによって、上記複数の電線を上記取付基板上に並列に配設することができる。
【0027】
本開示の他の一態様に係る接続体は、導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、上記複数の電線を被覆するシートと、直線状かつ平行な一対のスリットを有し、上記複数の電線を上記シートとの間に挟んだ状態で上記シートに接続される取付基板とを備え、上記シートが、上記複数の電線の外周を被覆する矩形状のベース層と、上記ベース層の両端縁に沿って延在する一対の凸条部とを有し、上記一対の凸条部が上記一対のスリットに係合している。
【0028】
当該接続体は、上記シートが、複数の電線を取付基板との間に挟んだ状態で、ベース層の両端縁に沿って延在する一対の凸条部によって上記取付基板に接続されるので、上記複数の電線が安定した状態で並列に結束されている。
【0029】
本開示の他の一態様に係る熱収縮チューブの製造方法は、樹脂組成物を筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する工程と、上記架橋する工程で架橋された筒状体を融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の筒状体を拡径する工程と、上記拡径する工程による拡径後の筒状体を冷却する工程とを備え、上記押出す工程で、上記筒状体の内周面に、軸方向に延在する複数の凸条部を形成する。
【0030】
当該熱収縮チューブの製造方法は、上記押出す工程で、筒状体の内周面に軸方向に延在する複数の凸条部を形成する。従って、上記複数の凸条部のガイドにより、複数の電線が上記ベース層の内周側に並列に収容されやすく、複数の電線の設置において、省スペース化を図ることが可能な熱収縮チューブを製造することができる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の好適な実施形態について、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0032】
[第一実施形態]
<熱収縮チューブ>
図1及び図2の熱収縮チューブ1は、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層2と、ベース層2の内周面に形成され、ベース層2の軸方向に延在する複数の凸条部3とを備える。
【0033】
当該熱収縮チューブ1は、ベース層2及び複数の凸条部3から構成され、ベース層2及び複数の凸条部3以外の他の層を有しない。当該熱収縮チューブ1は、ベース層2及び複数の凸条部3を形成するための樹脂組成物を筒状に押出し、押出された筒状体を電子線等の活性エネルギー線の照射によって一旦固定した後、この筒状体を円筒状に拡径することで得られる。当該熱収縮チューブ1は、加熱されることで、活性エネルギー線によって固定された形状に戻るよう収縮する。
【0034】
当該熱収縮チューブ1は、複数の電線をまとめて結束するために好適に用いられる。当該熱収縮チューブ1の平均内径Dの下限としては、結束する電線のサイズや本数等によって設定可能であるが、例えば1.4mmが好ましく、2.3mmがより好ましい。一方、当該熱収縮チューブ1の平均内径Dの上限としては、50mmが好ましく、30mmがより好ましい。上記平均内径Dが上記下限に満たないと、複数の電線の挿入作業が容易でなくなるおそれがある。逆に、上記平均内径Dが上記上限を超えると、当該熱収縮チューブ1が不必要に大きくなるおそれがある。なお、「熱収縮チューブの平均内径」とは、複数の凸条部を除いたベース層の平均内径をいう。
【0035】
(ベース層)
ベース層2は合成樹脂を主成分とする樹脂組成物から構成される。ベース層2は、例えば円筒状であり、可撓性を有する。ベース層2の複数の凸条部3が形成されていない部分の内周面は当該熱収縮チューブ1の内周面を構成する。ベース層2は、複数の電線を外部から視認しやすいよう透明であってもよい。上記合成樹脂としては、例えばポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等が挙げられる。合成樹脂としては、これらの中でも使用温度の観点から、ポリエチレンが好ましい。これらの合成樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。ベース層2は、本開示の効果を損なわない範囲で必要に応じて上記合成樹脂以外の他の成分を含有していてもよく、例えば難燃剤、酸化防止剤、銅害防止剤、滑材、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
【0036】
上記難燃剤としては、例えば塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェニル、パークロルペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤、1,2-ビス(2,3,4,5,6-ペンタブロモフェニル)エタン、エチレンビスペンタブロモベンゼン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、テトラブロモエタン、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタール酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、臭化アンモニウム等の臭素系難燃剤が好ましい。臭素系難燃剤及び塩素系難燃剤は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記酸化防止剤としては、例えばフェノール系化合物、アミン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられ、特に架橋抑制効果に優れたヒンダードアミン系化合物が好適に使用される。これら酸化防止剤を用いることにより、耐銅害性をさらに向上できる。なお、酸化防止剤としては、上述した以外に硫黄系化合物及び亜リン酸エステル系化合物等を単独又は併用で用いることができる。
【0038】
上記銅害防止剤としては、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、2,3-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジド等を挙げることができる。
【0039】
ベース層2は均一な厚さを有する。ベース層2の平均厚さTの下限としては、0.1mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。一方、ベース層2の平均厚さTの上限としては、5.0mmが好ましく、3.0mmがより好ましい。上記平均厚さTが上記下限に満たないと、ベース層2の強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均厚さTが上記上限を超えると、当該熱収縮チューブ1の熱収縮時間が不必要に長くなり、複数の電線の結束効率が低下するおそれがある。なお、「均一な厚さ」とは、ベース層の厚さの変動が0.5mm以内であることをいう。「平均厚さ」とは、任意の10点の厚さの平均値をいう。
【0040】
図3に示すように、上記ベース層2の熱収縮後の形状が扁平な円筒状であることが好ましい。上記ベース層の熱収縮後の形状が扁平な円筒状であることによって、上記複数の電線を上記ベース層の扁平方向に容易に並列に結束することができる。上述のように、当該熱収縮チューブ1は、使用時、換言すれば複数の電線の収容時に加熱されることで、電子線等の活性エネルギー線の照射によって固定された形状に戻るよう収縮する。つまり、当該熱収縮チューブ1は、拡径前の筒状体を活性エネルギー線の照射によって扁平な円筒状に固定しておくことで、加熱すれば、この径方向に扁平な円筒状に戻るよう収縮することができる。なお、「径方向に扁平な円筒状」とは、円筒体を径方向に対向する両側から中心方向に押圧した形状をいい、典型的には楕円筒状及び長円筒状が挙げられ、図3では対向する一対の平板部2aを有する長円筒状を例示している。
【0041】
(凸条部)
複数の凸条部3は、ベース層2の軸方向と平行に配設されている。複数の凸条部3は、ベース層2の軸方向の両端に亘って形成されている。複数の凸条部3は、ベース層2と同一の樹脂組成物によってベース層2と一体的に形成されている。当該熱収縮チューブ1は、複数の凸条部3によってガイドされて、複数の電線が上記ベース層の内周側に並列に収容されやすくなる。従って、複数の電線の設置において、省スペース化を図ることができる。また、各凸条部の配置の間隔を広げて各凸条部を仕切りとして用いることにより、ベース層の内周面の空間を区分けすることができる。複数の凸条部3は、当該熱収縮チューブ1の製造過程で(具体的には後述の拡径する工程で)膨張しないため、熱収縮前後のサイズが略等しい。
【0042】
当該熱収縮チューブ1は、ベース層2の中心軸を含む仮想平面を基準とした対称位置に複数対の凸条部3が形成されていることが好ましい。特に、当該熱収縮チューブ1は、図3に示すように、ベース層2が径方向に扁平な円筒状に収縮した際に、各対の凸条部3が扁平方向と垂直な方向に対向するよう形成されることが好ましい。つまり、本実施形態では、各対の凸条部3は、一対の平板部2aの対向位置に形成されることが好ましい。これにより、当該熱収縮チューブ1は、扁平方向に隣接する凸条部3の間に電線をガイドしつつ、複数の電線を並列に結束しやすい。
【0043】
上記仮想平面に対して同一方向に存在する複数の凸条部3のピッチ(本実施形態では、各平板部2aにおける複数の凸条部3のピッチ)は、複数の電線を凸条部3間にガイドしやすいよう均一であることが好ましい。上記仮想平面に対して同一方向に存在する複数の凸条部3の平均ピッチとしては、特に限定されず、目的に応じて設定することができる。複数の凸条部3の平均ピッチとしては、凸条部3をガイドとして用いる場合、例えば当該熱収縮チューブ1によって結束される複数の電線の径の1.5倍以上3.0倍以下程度とすることができる。具体的には、凸条部3をガイドとして用いる場合、上記平均ピッチとしては、例えば1.3mm以上6.0mm以下とすることができる。また、凸条部3を仕切りとして用いる場合、上記平均ピッチとしては、例えば1.3mm以上6mm以下とすることができる。なお、「平均ピッチ」とは、任意に抽出した隣接する5対の凸条部(隣接する凸条部が5対以下の場合は隣接する全対の凸条部)のピッチの平均値をいう。また、上記仮想平面を跨いで配設される凸条部3同士のピッチは、上記仮想平面に対して同一方向に存在する複数の凸条部3のピッチより大きくすることができる。なお、「ピッチが均一」とは、凸条部のピッチの変動が0.5mm以内であることをいう。
【0044】
複数の凸条部3の軸方向と垂直な方向の断面形状としては、特に限定されないが、例えば半円状、多角形状等が挙げられる。
【0045】
複数の凸条部3の高さHは均一であることが好ましい。特に限定されず、目的に応じて設定することができる。複数の凸条部3の平均高さHとしては、凸条部3をガイドとして用いる場合、例えば複数の凸条部3の平均高さHの下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記平均高さHの上限としては、2.0mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。また、凸条部3を仕切りとして用いる場合、例えば複数の凸条部3の平均高さHの下限としては、0.6mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。一方、上記平均高さHの上限としては、4mmが好ましく、2mmがより好ましい。なお、「高さが均一」とは、凸条部の高さの変動が0.5mm以内であることをいう。「平均高さ」とは、軸方向と垂直な任意の断面における全ての凸条部の高さの平均値をいう。
【0046】
<接続体>
次に、図4を参照して、当該熱収縮チューブ1を用いた接続体10について説明する。当該接続体10は、導体6a及び導体6aの外周面側に積層される絶縁層6bを有する複数の電線6と、複数の電線6を被覆するチューブ7とを備える。チューブ7は、当該熱収縮チューブ1が熱収縮したものである。チューブ7は、複数の電線6の外周を被覆する筒状のベース層2と、ベース層2の内周面に形成され、ベース層2の軸方向に延在する複数の凸条部3とを有する。
【0047】
当該接続体10は、チューブ7によって複数の電線6を並列に結束している。当該接続体10は、当該熱収縮チューブ1が複数の電線6の挿入状態で収縮することによって、複数の電線6が隣接する凸条部3間にガイドされつつ並列に整列することで得られる。当該熱収縮チューブ1は、例えば対向する一対の平板部2aを有する長円筒状に収縮するので、一対の平板部2a間に挟持するよう複数の電線6を1列に配設することができる。当該接続体10では、複数の凸条部3の個数は特に限定されないが、隣接する電線6間を一対の凸条部3で区画することが好ましいので、例えば電線6の本数をnとした場合、(2n-2)個、又は((2n-2)+2α)個(但し、αは0以上の整数)とすることができる。
【0048】
当該接続体10は、複数の電線6を被覆するチューブ7が、複数の電線6の外周を被覆する筒状のベース層2の内周面に、このベース層2の軸方向に延在する複数の凸条部3を有するので、複数の電線6を並列に結束することができる。
【0049】
当該接続体10では、例えばチューブ7によって並列に結束された複数の電線6を、平板状の取付基板8上に容易に配設することができる。
【0050】
複数の電線6の導体6aの材質としては、導電性を有する限り特に限定されるものではなく、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。複数の電線6の絶縁層6bの主成分としては、例えばポリビニルホルマール、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン等の合成樹脂が挙げられる。
【0051】
なお、個々の電線6のサイズや、電線6の本数等は特に限定されるものではない。但し、当該熱収縮チューブ1の熱収縮によって複数の凸条部3間に容易かつ確実にガイドできるよう、複数の電線6の径は均一であることが好ましい。また、電線6の軸方向と垂直な方向の断面形状は円形であることが好ましい。また、電線6の本数としては、特に限定されないが、一般的には例えば2本以上50本以下とすることができる。
【0052】
<熱収縮チューブの製造方法>
図5を参照して、図1の熱収縮チューブ1の製造方法について説明する。当該熱収縮チューブの製造方法は、樹脂組成物を筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する工程と、上記架橋する工程で架橋された筒状体を融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の筒状体を拡径する工程と、上記拡径する工程による拡径後の筒状体を冷却する工程とを備える。当該熱収縮チューブの製造方法は、上記押出す工程で、上記筒状体の内周面に、軸方向に延在する複数の凸条部を形成する。なお、「融点」とは、JIS-K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して示差走査熱量計(DSC)により測定される融点ピーク温度をいう。「軟化点」とは、JIS-K7206:2016「プラスチック-熱可塑性プラスチック-ビカット軟化温度の求め方」に準拠して測定されるビカット軟化温度をいう。対象となる樹脂組成物の主成分が結晶性樹脂である場合には融点を基準とし、この主成分が非晶性樹脂である場合には軟化点を基準として加熱温度を決定する。また、対象となる樹脂組成物が結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合物である場合には、加熱温度は、非晶性樹脂の軟化点を基準とする。上記融点又は軟化点は、例えば主成分となる合成樹脂の融点と他の構成成分の融点の加重平均で求めてもよい。
【0053】
当該熱収縮チューブの製造方法は、上記押出す工程で、筒状体の内周面に軸方向に延在する複数の凸条部を形成するので、上記複数の凸条部によってガイドされて、複数の電線が上記ベース層の内周側に並列に収容されやすくなる。従って、複数の電線の設置において、省スペース化を図ることが可能な熱収縮チューブを製造することができる。
【0054】
(押出す工程)
上記押出す工程では、ベース層2及び複数の凸条部3を形成するための樹脂組成物を公知の溶融押出成形機を用いて筒状に押し出す。上記樹脂組成物は、ベース層2及び複数の凸条部3の主成分となる合成樹脂、並びに必要に応じて含まれる添加剤を例えば溶融混合機により混合することで調製される。上記押出す工程では、ベース層2に対応する層を押し出す筒状の第1空間と、この第1空間の内周面上に形成され、複数の凸条部3に対応する形状の複数の棒状の第2空間とを有する押出ダイスを用いて上記樹脂組成物を押出成形する。これにより、ベース層2に対応する層の内周面に複数の凸条部3に対応する凸条部が形成された筒状体(押出体)が得られる。
【0055】
上記第1空間は、扁平な円筒状であることが好ましい。換言すると、上記押出す工程では、ベース層2に対応する層を扁平な円筒状に押し出すことが好ましい。また、この扁平な円筒状としては、対向する一対の平板部を有する長円筒状が好ましい。
【0056】
また、上記複数の第2空間は、上記第1空間の中心軸を含む仮想平面を基準として対称位置に形成されることが好ましい。換言すると、複数対の第2空間が、上記仮想平面に対して対称に形成されることが好ましい。特に、上記第1空間が扁平な円筒状である場合、上記複数の第2空間は、上記第1空間の中心軸を含み、かつこの第1空間の扁平方向に延びる仮想平面を基準として対称位置に形成されることが好ましく、本実施形態では各対の第2空間が上記一対の平板部の対向位置に形成されることが好ましい。
【0057】
(架橋する工程)
上記架橋する工程では、上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する。架橋方法としては、例えば電子線等の電離性放射線の照射、化学架橋、熱架橋等の方法が挙げられる。中でも架橋時間が短く製造効率の高い電子線照射架橋が好ましい。電離性放射線の照射線量は上記樹脂組成物を十分に架橋できる限り特に限定されないが、上記照射線量の下限としては、例えば30kGyが好ましく、100kGyがより好ましい。一方、上記照射線量の上限としては、例えば500kGyが好ましく、400kGyがより好ましい。これにより、上記架橋する工程では、上記樹脂組成物の構成材料を架橋させ、上記筒状体を押出時の形状で固定する。その結果、当該熱収縮チューブの製造方法によって製造された熱収縮チューブは、加熱された場合にこの押出し後の筒状体の形状に戻るよう収縮する。
【0058】
(加熱する工程)
上記加熱する工程では、上記架橋する工程で架橋された筒状体を次の拡径する工程で拡径しやすいよう融点又は軟化点以上に加熱する。上記加熱する工程では、上記筒状体を軸方向に搬送しつつ、融点又は軟化点以上に加熱する。上記加熱する工程による加熱温度としては、上記筒状体の融点又は軟化点に対応して設定可能であるが、上記加熱温度の下限としては、例えば70℃が好ましく、80℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、例えば230℃が好ましく、180℃がより好ましい。
【0059】
(拡径する工程)
上記拡径する工程では、上記加熱する工程で加熱され、軸方向に搬送される上記筒状体を拡径する。上記拡径する工程は、例えば公知のサイジング管を用い行うことができる。上記拡径する工程では、例えば上記筒状体の端部開口からこの筒状体内に気体を供給しつつ、上記サイジング管の内部空間を減圧する。これにより、上記拡径する工程では、上記筒状体の内圧と、上記サイジング管の内部空間の圧力との差圧に基づいて上記筒状体を拡径する。
【0060】
上記拡径する工程では、上記筒状体を例えば円筒状に拡径する。換言すると、上記拡径する工程では、上記筒状体を図1の熱収縮チューブ1の形状に拡径する。
【0061】
(冷却する工程)
上記冷却する工程では、上記拡径する工程で拡径された筒状体を冷却することで、この筒状体を拡径後のサイズで固定する。
【0062】
なお、当該熱収縮チューブの製造方法は、上記冷却する工程後の筒状体を巻き取る工程をさらに備えていてもよい。また、当該熱収縮チューブの製造方法は、上記冷却する工程後、又は巻き取る工程後の筒状体を所望の長さに切断する工程をさらに備えていてもよい。
【0063】
当該熱収縮チューブの製造方法は、上記押出す工程で、筒状体の内周面に軸方向に延在する複数の凸条部を形成する。従って、上記複数の凸条部のガイドにより、複数の電線が上記ベース層の内周側に並列に収容されやすく、複数の電線の設置において、省スペース化を図ることが可能な熱収縮チューブを製造することができる。
【0064】
[第二実施形態]
<熱収縮チューブ>
図6の熱収縮チューブ11は、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層2と、ベース層2の内周面に形成され、ベース層2の軸方向に延在する複数の凸条部3とを備える。さらに、当該熱収縮チューブ11は、ベース層2の外周面側に積層される接着剤層4を備える。当該熱収縮チューブ11がベース層2の外周面側に積層される接着剤層4をさらに備えることによって、熱収縮後のチューブにより並列に結束された複数の電線を車等の乗り物、電化製品などの設置面に容易に固定することができる。
【0065】
当該熱収縮チューブ11は、ベース層2の外周面側に積層される接着剤層4を備えるので、ベース層2が熱収縮により複数の電線を結束する際に、接着剤層4がベース層2の外周面側でベース層2に合わせて収縮しつつ設置面となる取付基板(不図示)に接着される。これにより、当該熱収縮チューブ11は、上記複数の電線を並列に結束した状態で取付基板に容易に取り付けることができる。
【0066】
当該熱収縮チューブ11は、ベース層2、複数の凸条部3及び接着剤層4から構成され、ベース層2、複数の凸条部3及び接着剤層4以外の他の層を有しない。当該熱収縮チューブ11のベース層2及び複数の凸条部3の具体的構成は、図1の熱収縮チューブ1と同様とすることができる。そのため、以下では接着剤層4についてのみ説明する。
【0067】
(接着剤層)
接着剤層4はベース層2の外周面に直接積層される。接着剤層4は当該熱収縮チューブ11の最外周側の層を構成する。接着剤層4は、ベース層2の取付基板に取り付けられる側の外周面に積層されている。具体的には、接着剤層4は、ベース層2の熱収縮時の扁平な面上に積層されており、本実施形態では一方の平板部2aの外面に積層されている。
【0068】
接着剤層4は、ベース層2の軸方向に延びる帯状に形成されている。接着剤層4は、ベース層2の軸方向の両端に亘って形成されている。接着剤層4は、ベース層2の熱収縮時の扁平面上のみに積層されている。つまり、本実施形態では、接着剤層4は一方の平板部2aの外面以外には積層されていない。
【0069】
接着剤層4は熱可塑性樹脂又はエラストマーを主成分とする。上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。また、上記エラストマーとしては、例えばブチルゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0070】
<接続体>
次に、図7を参照して、当該熱収縮チューブ11を用いた接続体20について説明する。当該接続体20は、導体6a及び導体6aの外周面側に積層される絶縁層6bを有する複数の電線6と、複数の電線6を被覆するチューブ17と、チューブ17の外周面側に接続される取付基板8とを備える。チューブ17は、当該熱収縮チューブ11が熱収縮したものである。チューブ17は、複数の電線6の外周を被覆する筒状のベース層2と、ベース層2の内周面に形成され、ベース層2の軸方向に延在する複数の凸条部3と、ベース層2の外周面側に積層される接着剤層4とを有する。チューブ17は、接着剤層4によって取付基板8に接着されている。複数の電線6は、チューブ17の内周面側に1列に配設されている。複数の電線6としては、図4の接続体10の複数の電線6と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
当該接続体20は、複数の電線6の挿入状態でベース層2が熱収縮によりこれらの電線6を結束する際に、接着剤層4がベース層2の外周面側でベース層2に合わせて収縮しつつ取付基板8に接着することで得られる。当該接続体20は、複数の電線6が取付基板8上に安定した状態で並列に結束されている。
【0072】
<熱収縮チューブの製造方法>
図6の熱収縮チューブ11の製造方法について説明する。当該熱収縮チューブの製造方法は、樹脂組成物を筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する工程と、上記架橋する工程で架橋された筒状体を融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の筒状体を拡径する工程と、上記拡径する工程による拡径後の筒状体を冷却する工程とを備える。当該熱収縮チューブの製造方法は、上記押出す工程で、ベース層2に対応する層の内周面に複数の凸条部3に対応する凸条部を形成すると同時に、ベース層2に対応する層の外周面に接着剤層4に対応する層を形成する以外、図5の熱収縮チューブの製造方法と同様の手順で行うことができる。
【0073】
具体的には、上記押出す工程では、ベース層2に対応する層を押し出す筒状の第1空間と、この第1空間の内周面上に形成され、複数の凸条部3に対応する形状の複数の棒状の第2空間と、上記第1空間の外周面上に形成され、接着剤層4に対応する層を押し出す帯状の第3空間とを有する押出ダイスを用い、ベース層2及び複数の凸条部3を形成するための樹脂組成物と、接着剤層4を形成するための樹脂組成物とを同時に押出成形する。これにより、ベース層2に対応する層の内周面に複数の凸条部3に対応する凸条部が形成され、かつベース層2に対応する層の外周面に接着剤層4に対応する層が積層された筒状体(押出体)が得られる。
【0074】
当該熱収縮チューブの製造方法は、複数の凸条部により複数の電線が並列に結束されて、配線領域の省スペース化を図ることができるとともに、接着剤層をさらに形成することで、複数の電線が収容された熱収縮後のチューブを設置面に容易に固定することができる熱収縮チューブを確実に製造することができる。
【0075】
[第三実施形態]
<熱収縮チューブ>
図8の熱収縮チューブ21は、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層22と、ベース層22の内周面に形成され、ベース層22の軸方向に延在する複数の凸条部23とを備える。当該熱収縮チューブ21は、ベース層22が軸方向に延在する一対の肉厚部22aを有する。具体的には、ベース層22は、一対の肉厚部22aと、一対の肉厚部22a間に形成され、一対の肉厚部22aよりも厚さの小さい一対の肉薄部22bとを有する。また、ベース層22の熱収縮後の形状が扁平な円筒状である。本実施形態では、図9に示すように、ベース層22は、図1の熱収縮チューブ1と同様、対向する一対の平板部22cを有する長円筒状に収縮する。一対の肉厚部22aは、対向するように位置する。
【0076】
当該熱収縮チューブ21は、ベース層22が一対の肉厚部22a及び一対の肉薄部22bを有しており、ベース層22の熱収縮時には一対の肉薄部22bの方が一対の肉厚部22aよりも先に収縮する。当該熱収縮チューブ21は、一対の肉厚部22aが対向するように位置するので、当該熱収縮チューブが収縮する際に上記一対の肉厚部22aによってガイドされて、複数の電線6が上記ベース層2の内周側に並列に収容されやすくなる。従って、複数の電線6をより容易に並列に結束することができる。
【0077】
(ベース層)
ベース層22は、合成樹脂を主成分とする樹脂組成物から構成される。ベース層22は、例えば円筒状であり、可撓性を有する。ベース層22の複数の凸条部23が形成されていない部分の内周面は当該熱収縮チューブ21の内周面を構成する。ベース層22は、複数の電線を外部から視認しやすいよう透明であってもよい。上記合成樹脂としては、図1の熱収縮チューブ1のベース層2の主成分として含まれる合成樹脂と同様とすることができる。また、ベース層22は、図1の熱収縮チューブ1と同様、本開示の効果を損なわない範囲で難燃剤、酸化防止剤、銅害防止剤、滑材、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の他の成分を含有していてもよい。
【0078】
ベース層22は、上述のように、一対の肉厚部22aと一対の肉薄部22bとを有しており、一対の肉薄部22bが一対の肉厚部22a同士を接続している。一対の肉厚部22a及び一対の肉薄部22bは、各々ベース層22の軸方向の両端に亘って形成されている。本実施形態では、一対の肉薄部22bが一対の平板部22cを構成しており、一対の肉厚部22aが一対の平板部22c同士を接続している。
【0079】
一対の肉薄部22bは均一な厚さを有する。一対の肉薄部22bの平均厚さとしては、図2に示す熱収縮チューブ1のベース層2の平均厚さTと同様とすることができる。
【0080】
一対の肉厚部22aは、例えば一対の肉薄部22bに接続される側の側縁から中央側にかけて隆起した断面山状である。本実施形態においては、一対の肉厚部22aの頂部は、ベース層22の熱収縮時に一対の平板部22c間の中央に位置するが、一対の肉厚部22aの位置は特に限定されるものではない。このように、一対の肉厚部22aが断面山状であることによって、ベース層22の熱収縮時に一対の肉厚部22aが一対の肉薄部22b側から収縮するため、上記複数の電線をベース層22の扁平方向に整列させやすい。
【0081】
一対の肉薄部22bの平均厚さに対する一対の肉厚部22aの頂部の平均厚さの比の下限としては、1.5が好ましく、2.0がより好ましく、2.5がさらに好ましい。一方、上記比の上限としては、5.0が好ましく、4.0がより好ましい。上記比が上記下限に満たないと、一対の肉厚部22aと一対の肉薄部22bとの厚さの比が不十分となり、上記複数の電線をベース層22の扁平方向に容易かつ確実に整列させ難くなるおそれがある。逆に、上記比が上記上限を超えると、一対の肉厚部22aが一対の肉薄部22bに連動して適切に収縮し難くなるおそれがある。
【0082】
(凸条部)
複数の凸条部23は、ベース層22の軸方向と平行に配設されている。複数の凸条部23は、ベース層22の軸方向の両端に亘って形成されている。複数の凸条部23は、ベース層22と同一の樹脂組成物によってベース層22と一体的に形成されている。複数の凸条部23は、当該熱収縮チューブ21の熱収縮前後のサイズが略等しい。
【0083】
複数の凸条部23は、一対の肉厚部22a間に形成されている。これにより、当該熱収縮チューブ21は、上記複数の電線を複数の凸条部23でガイドしつつこれらの電線を容易かつ確実に扁平方向に整列させることができる。
【0084】
当該熱収縮チューブ21は、ベース層22の中心軸を含む仮想平面に対して対称位置に複数対の凸条部23が形成されていることが好ましい。また、図9に示すように、当該熱収縮チューブ21は、ベース層22が径方向に扁平な円筒状に収縮した際に、各対の凸条部23が扁平方向と垂直な方向に対向するよう形成されることが好ましい。つまり、本実施形態では、各対の凸条部23は、一対の平板部22cの対向位置に形成されることが好ましい。
【0085】
上記仮想平面に対して同一方向に存在する複数の凸条部23のピッチは均一であることが好ましい。複数の凸条部23の平均ピッチとしては、図1の熱収縮チューブ1の複数の凸条部3の平均ピッチと同様とすることができる。複数の凸条部23の軸方向と垂直な方向の断面形状としては、図1の熱収縮チューブの複数の凸条部3と同様とすることができる。複数の凸条部23の高さは均一であることが好ましい。複数の凸条部23の平均高さとしては、図1の熱収縮チューブ1の複数の凸条部3の平均高さHと同様とすることができる。複数の凸条部23の個数としては、図1の熱収縮チューブ1の複数の凸条部3の個数と同様とすることができる。
【0086】
<接続体>
次に、図10を参照して、当該熱収縮チューブ21を用いた接続体30について説明する。当該接続体30は、導体6a及び導体6aの外周面側に積層される絶縁層6bを有する複数の電線6と、複数の電線6を被覆するチューブ27とを備える。チューブ27は、当該熱収縮チューブ21が熱収縮したものである。チューブ27は、複数の電線6の外周を被覆する筒状のベース層22と、ベース層22の内周面に形成され、ベース層22の軸方向に延在する複数の凸条部23とを有する。複数の電線6は、チューブ27の内周面側に1列に配設されている。複数の電線6としては、図4の接続体10の複数の電線6と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
当該接続体30は、ベース層22が一対の肉厚部22a及び一対の肉薄部22bを有しており、一対の肉厚部22aが対向するように位置している。そのため、当該接続体30は、一対の肉厚部22aのガイド機能により複数の電線が上記ベース層の内周側に並列に収容されやすくなる。従って、複数の電線をより容易に並列に結束することができる。
【0088】
当該接続体30では、例えばチューブ27によって並列に結束された複数の電線6を、平板状の取付基板8上に容易に配設することができる。
【0089】
<熱収縮チューブの製造方法>
当該熱収縮チューブの製造方法は、図5の熱収縮チューブの製造方法と同様、樹脂組成物を筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する工程と、上記架橋する工程で架橋された筒状体を融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の筒状体を拡径する工程と、上記拡径する工程による拡径後の筒状体を冷却する工程とを備える。当該熱収縮チューブの製造方法は、上記押出す工程で押し出される上記筒状体が、一対の肉厚部22aに対応する一対の肉厚部及び一対の肉薄部22bに対応する一対の肉薄部を有する以外、図5の熱収縮チューブの製造方法と同様の手順で行うことができる。当該熱収縮チューブの製造方法は、ベース層22に対応する層を押し出す筒状の第1空間を、一対の肉厚部22a及び一対の肉薄部22bに対応する形状とすることで、一対の肉厚部22a及び一対の肉薄部22bに対応する形状を有する筒状体を押し出すことができる。
【0090】
当該熱収縮チューブの製造方法は、複数の凸条部により複数の電線が並列に結束されて、配線領域の省スペース化を図ることができるとともに、一対の肉厚部をさらに形成することで、複数の電線をより容易に並列に結束することができる熱収縮チューブを確実に製造することができる。
【0091】
[第四実施形態]
<熱収縮チューブ>
図11の熱収縮チューブ31は、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層22と、ベース層22の内周面に形成され、ベース層22の軸方向に延在する複数の凸条部33とを備える。複数の凸条部33は、上記複数の電線をガイドする複数の第1凸条部33aと、当該熱収縮チューブ31を取付基板(不図示)に取り付けるための第2凸条部33bとを含む。当該熱収縮チューブ31は、複数の凸条部33が複数の第1凸条部33aと第2凸条部33bとを含む以外、図8の熱収縮チューブ21と同様に構成することができる。そのため、ベース層22については、図8の熱収縮チューブ21のベース層22と同様符号を付して説明を省略する。
【0092】
当該熱収縮チューブ31は、複数の凸条部33が、上記複数の電線をガイドする複数の第1凸条部33aと、当該熱収縮チューブ31を取付基板に取り付けるための第2凸条部33bとを含むので、複数の第1凸条部33aによって上記複数の電線を並列に整列させると共に、第2凸条部33bによってこれらの電線を整列状態で上記取付基板に容易に固定することができる。
【0093】
(凸条部)
当該熱収縮チューブ31は、複数の第1凸条部33aと1つの第2凸条部33bとを有する。複数の第1凸条部33a及び1つの第2凸条部33bは、ベース層22の軸方向と平行に配設されている。複数の第1凸条部33a及び1つの第2凸条部33bは、ベース層22の軸方向の両端に亘って形成されている。複数の第1凸条部33a及び1つの第2凸条部33bは、ベース層22と同一の樹脂組成物によってベース層22と一体的に形成されている。複数の第1凸条部33a及び1つの第2凸条部33bは、当該熱収縮チューブ21の熱収縮前後のサイズが略等しい。
【0094】
複数の第1凸条部33aの配置、形状、平均高さ及び個数としては、図8の複数の凸条部23と同様とすることができる。また、複数の第1凸条部33aは、図8の複数の凸条部23と同様のピッチで配設されてもよく、第2凸条部33bを挟んで隣接する一対の第1凸条部33a同士のピッチを他の第1凸条部33a同士のピッチよりも大きくしてもよい。
【0095】
第2凸条部33bは、ベース層22の熱収縮時における扁平方向の中央部に形成されていることが好ましい。第2凸条部33bの軸方向と垂直な方向の断面形状としては、特に限定されるものではなく、例えば半円状、多角形状等が挙げられる。第2凸条部33bのサイズ(例えば平均高さ)としては、複数の第1凸条部33aと同様であってもよく、上記取付基板への係合性が高められるよう複数の第1凸条部33aよりも大きくてもよい。
【0096】
なお、当該熱収縮チューブ31は、外周側から第2凸条部33bの位置が分かるよう、第2凸条部33bと重なり合うベース層22の外周面にマーキングを施していてもよい。
【0097】
<接続体>
次に、図12を参照して、当該熱収縮チューブ31を用いた接続体40について説明する。当該接続体40は、導体6a及び導体6aの外周面側に積層される絶縁層6bを有する複数の電線6と、複数の電線6を被覆するチューブ37と、チューブ37の外周面側に接続される取付基板8とを備える。チューブ37は、当該熱収縮チューブ31が熱収縮したものである。チューブ37は、複数の電線6の外周を被覆する筒状のベース層22と、ベース層22の内周面に形成され、ベース層22の軸方向に延在する複数の凸条部33とを有する。複数の凸条部33は、複数の電線6をガイドする複数の第1凸条部33aと、チューブ37を取付基板8に取り付けるための第2凸条部33bとを含む。取付基板8は、直線状のスリット8aを有する。第2凸条部33bはスリット8aに係合している。複数の電線6は、チューブ37の内周面側に1列に配設されている。複数の電線6としては、図4の接続体10の複数の電線6と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
当該接続体40は、第2凸条部33bが、スリット8aを介して取付基板8の複数の電線6の配設側と反対側に係止されている。当該接続体40は、第2凸条部33bの係止状態で、ベース層22の内周面側に複数の電線6を挿入し、ベース層22を収縮することで得られる。
【0099】
当該接続体40は、第2凸条部33bがスリット8aに係合していることによって、複数の電線6を設置面となる取付基板8上に並列に配設することができる。
【0100】
<熱収縮チューブの製造方法>
当該熱収縮チューブの製造方法は、図8の熱収縮チューブ21の製造方法と同様、樹脂組成物を筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する工程と、上記架橋する工程で架橋された筒状体を融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の筒状体を拡径する工程と、上記拡径する工程による拡径後の筒状体を冷却する工程とを備える。当該熱収縮チューブの製造方法は、上記押出す工程で、ベース層22に対応する層の内周面に、複数の第1凸条部33a及び第2凸条部33bに対応する複数の凸条部を形成する以外、図8の熱収縮チューブ21の製造方法と同様の手順で行うことができる。当該熱収縮チューブの製造方法は、複数の棒状の第2空間を、複数の第1凸条部33a及び第2凸条部33bに対応する構成とすることで、複数の第1凸条部33a及び第2凸条部33bに対応する構成を有する筒状体を押し出すことができる。
【0101】
当該熱収縮チューブの製造方法は、複数の凸条部により複数の電線が並列に結束されて、配線領域の省スペース化を図ることができるとともに、取付基板が有するスリットに係合可能な凸条部を形成することで、取付基板に容易に固定することができる熱収縮チューブを確実に製造することができる。
【0102】
[第五実施形態]
<熱収縮シート>
図13及び図14の熱収縮シート41は、複数の電線の外周を被覆する矩形状のベース層42と、上記ベース層42の両端縁に沿って延在する一対の凸条部43とを備える。つまり、当該熱収縮シート41は、上記筒状のベース層の分断によって形成された矩形状(より詳しくは、平幕状への展開状態で矩形状)のベース層42と、このベース層42の対向する両端縁に沿って延在する一対の凸条部43とを備える。
【0103】
当該熱収縮シート41は、熱収縮後に複数の電線が並列に結束されて、配線領域の省スペース化を図ることができるとともに、上記ベース層42の両端縁に沿って延在する一対の凸条部43により車等の乗り物、電化製品などの設置面に複数の電線を容易に固定することができる。
【0104】
(ベース層)
ベース層42は、例えば図1の熱収縮チューブ1のベース層2が軸方向に沿って分断された一方を用いたものである。そのため、ベース層42の主成分及び平均厚さとしては、図1の熱収縮チューブのベース層2と同様とすることができる。
【0105】
本実施形態において、ベース層42は、筒状のベース層が中心軸を含む平面で分断された一方を用いたものである。そのため、ベース層42の断面形状は、円環を1/2に分断した部分円環状である。ベース層42は、加熱された場合に、分断線と垂直方向の収縮率が大きい扁平状に収縮するよう構成されてもよい。
【0106】
(凸条部)
一対の凸条部43は、当該熱収縮シート41を取付基板(不図示)に取り付けるためのものである。一対の凸条部43は、ベース層42の湾曲方向の両端縁に設けられていることが好ましい。換言すると、一対の凸条部43は、分断前の円筒状のベース層の中心軸を挟んだ対向位置に設けられることが好ましい。一対の凸条部43の軸方向と垂直な方向の断面形状としては、特に限定されるものではなく、例えば扇型状、多角形状等が挙げられる。一対の凸条部43のサイズ(例えば平均高さ)としては、図11の熱収縮チューブ31の第2凸条部33bと同様とすることができる。
【0107】
<接続体>
次に、図15を参照して、当該熱収縮シート41を用いた接続体50について説明する。当該接続体50は、導体6a及びこの導体6aの外周面側に積層される絶縁層6bを有する複数の電線6と、複数の電線6を被覆するシート47と、直線状かつ平行な一対のスリット48aを有し、複数の電線6をシート47との間に挟んだ状態でシート47に接続される取付基板48とを備える。シート47は、当該熱収縮シート41が熱収縮したものである。シート47は、複数の電線6の外周を被覆する矩形状(平幕状への展開状態で矩形状)のベース層42と、ベース層42の両端縁に沿って延在する一対の凸条部43とを有する。一対の凸条部43は一対のスリット48aに係合している。取付基板48は、平板状である。複数の電線6は、シート47及び取付基板48の間で1列に配設されている。複数の電線6としては、図4の接続体10の複数の電線6と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0108】
当該接続体50は、一対の凸条部43が、一対のスリット48aを介して取付基板48の複数の電線6の配設側と反対側に係止されている。当該接続体50は、一対の凸条部43の係止状態で、ベース層42と取付基板48との間に複数の電線6を挿入し、ベース層42を収縮することで得られる。
【0109】
当該接続体50は、シート47が、複数の電線6を取付基板48との間に挟んだ状態で、ベース層42の両端縁に沿って延在する一対の凸条部43によって取付基板48に接続されるので、複数の電線6を並列に結束することができる。
【0110】
<熱収縮シートの製造方法>
図16を参照して、当該熱収縮シート41の製造方法について説明する。当該熱収縮シートの製造方法は、樹脂組成物を筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された筒状体を架橋する工程と、上記架橋する工程で架橋された筒状体を融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の筒状体を拡径する工程と、上記拡径する工程による拡径後の筒状体を冷却する工程と、上記冷却する工程による冷却後の筒状体を軸方向に(軸方向と平行な分断面が形成されるよう)分断する工程とを備える。上記押出す工程は、分断前のベース層42に対応する層の内周面に、一対の凸条部43に対応する一対の凸条部を形成する以外、図5の熱収縮チューブの押出す工程と同様の手順で行うことができる。当該熱収縮シートの製造方法は、複数の棒状の第2空間を一対の凸条部43に対応する構成とすることで、分断前のベース層42に対応する層の内周面に、軸方向に延在する一対の凸条部を形成することができる。また、上記加熱する工程、拡径する工程及び上記冷却する工程としては、図5の熱収縮チューブの製造方法と同様の手順で行うことができる。
【0111】
(分断する工程)
上記分断する工程は、上記冷却する工程後の筒状体の搬送経路に、上記筒状体を分断するための刃を配置することで行うことができる。図17に示すように、上記分断する工程では、一対の凸条部43が両端に位置するよう上記筒状体を1/2に分断することが好ましい。
【0112】
なお、当該熱収縮シートの製造方法は、上記分断する工程の前に、上記冷却する工程による冷却後の筒状体を巻き取る工程をさらに備えていてもよい。また、当該熱収縮シートの製造方法は、上記分断する工程によって得られたシート体を所望の長さに切断する工程をさらに備えていてもよい。
【0113】
当該熱収縮シートの製造方法は、複数の電線が並列に結束されて、配線領域の省スペース化を図ることができるとともに、上記ベース層の両端縁に沿って延在する分断部分の両側に一対の凸条部を形成するので、車等の乗り物、電化製品などの設置面に容易に固定できる当該熱収縮シートを確実に製造することができる。
【0114】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0115】
上述の第一実施形態から第五実施形態に記載の構成は、適宜組み合わせて用いることができる。例えば当該熱収縮チューブは、ベース層が一対の肉厚部を有する図8の構成において、このベース層の外周面側に接着剤層が積層されていてもよい。この場合、上記接着剤層は、ベース層の熱収縮時の扁平面上に積層されることが好ましい。図18に、複数の電線6の外周を被覆する筒状のベース層22と、ベース層22の内周面に形成され、ベース層22の軸方向に延在する複数の凸条部23と、ベース層22の外周面側に積層される接着剤層64とを備える熱収縮チューブを用いた接続体70を示す。当該接続体70は、導体6a及び導体6aの外周面側に積層される絶縁層6bを有する複数の電線6と、複数の電線6を被覆するチューブ67と、チューブ67の外周面側に接続される取付基板8とを備える。チューブ67は、図8のベース層22の外周面側に接着剤層64が積層された熱収縮チューブが熱収縮したものである。チューブ67は、接着剤層64によって取付基板8に接着している。当該接続体70は、複数の電線6を取付基板8上で並列に結束することができる。
【0116】
上記実施形態においては、接着剤層がベース層の外周面側と取付基板との間に積層され、当該熱収縮チューブと取付基板とが接着剤層を介して取り付けられていたが、この形態に限定されない。例えば複数の接続体が接着剤層を介して積み上げられた構成にしてもよい。
【0117】
上記実施形態においては、複数の凸条部が一対の肉厚部間に形成されていたが、複数の凸条部はベース層の内周面上の任意の位置に形成することができる。例えば、複数の凸条部は、上記一対の肉厚部上に形成されていてもよい。複数の凸条部が上記一対の肉厚部上に形成されることで、凸条部のガイド機能をより向上させることもできる。
【0118】
当該熱収縮チューブは、本開示の効果を損なわない範囲で、ベース層、複数の凸条部及び接着剤層以外の層を有していてもよい。例えば当該熱収縮チューブは、ベース層と接着剤層との間に他の樹脂層を有していてもよい。また、当該熱収縮シートは、本開示の効果を損なわない範囲で、ベース層及び複数の凸条部以外の層を有していてもよい。例えば当該熱収縮シートは、ベース層の外周面側に接着剤層又はその他の樹脂層を有していてもよい。
【0119】
当該熱収縮チューブは、必ずしも上記ベース層が加熱された場合に、径方向に扁平な円筒状に収縮しなくてもよい。当該熱収縮チューブは、例えば上記ベース層が加熱された場合に、長方形状の開口を有する四角筒状に収縮してもよく、その他の形状に収縮してもよい。
【0120】
当該熱収縮チューブは、上記ベース層の内周面に当該熱収縮チューブを取付基板に取り付けるための2以上の第2凸条部を有していてもよい。
【0121】
当該熱収縮チューブは、上記ベース層の内周面側に積層される接着剤層をさらに備えることが好ましい。当該熱収縮チューブが上記ベース層の内周面側に積層される接着剤層をさらに備えることで、複数の電線を上記ベース層の内周面側に容易に固定して配置することができる。
【0122】
当該熱収縮シートにおいて、上記ベース層に設けられる一対の凸条部は、必ずしも上記ベース層の両端縁に沿って配設される必要はなく、これらの両端縁から間隔を空けて配設されてもよい。
【0123】
当該熱収縮チューブの製造方法は、上述の押出す工程とは別個の工程として、接着剤層を積層する工程を備えていてもよい。このように、接着剤層を積層する工程を別途設ける場合、接着剤層の形状は、必ずしもベース層の軸方向の両端に亘る帯状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1,11,21,31 熱収縮チューブ
2,22,42 ベース層
2a,22c 平板部
3,23,33,43 凸条部
4,64 接着剤層
6 電線
6a 導体
6b 絶縁層
7,17,27,37,67 チューブ
8,48 取付基板
8a,48a スリット
10,20,30,40,50,70 接続体
22a 肉厚部
22b 肉薄部
33a 第1凸条部
33b 第2凸条部
41 熱収縮シート
47 シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18