(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】画像表示体
(51)【国際特許分類】
G09F 7/16 20060101AFI20240220BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240220BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240220BHJP
G09F 19/12 20060101ALI20240220BHJP
G09F 19/14 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G09F7/16 N
G09F7/16 F
B32B27/00 Z
B32B15/08 H
G09F19/12 Z
G09F19/14
(21)【出願番号】P 2020097544
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】506246209
【氏名又は名称】智昌加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】飛鷹 健城
(72)【発明者】
【氏名】鶴 雄二
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-158826(JP,A)
【文献】特開2018-036443(JP,A)
【文献】実開平02-039783(JP,U)
【文献】米国特許第6582801(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00- 7/22
19/00-27/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明のシート状基材と、前記シート状基材の裏面に形成される
絵柄を印刷した半透明の画像印刷層と、前記画像印刷層の裏面全体を覆うように形成される白印刷層とを備えた画像表示体において、
前記白印刷層は前記画像印刷層
のうちの前記絵柄の光沢付与の対象となる光沢部に重なる部分が透明なクリア印刷部とされており、前記白印刷層の裏面に、光沢性を有するフィルムが少なくとも前記クリア印刷部を覆うように重ねられ
、
前記フィルムは、樹脂製の基材フィルムの一面に金属を蒸着させた蒸着フィルムであ
り、
前記蒸着フィルムは、その一面に、断面形状が鋸刃状の溝を同心円状に配置し、その溝の鋸刃の傾斜角を同心円中心から径方向外側に向かって順次大きくしたパターンが少なくとも1つ形成されているレンズフィルムであ
り、
前記画像印刷層の前記光沢部は、前記絵柄に立体感を生じさせるように見る角度によって光って見える位置が変化して見えることを特徴とする画像表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明のシート状基材の裏面に画像を印刷した画像表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル板等の透明のシート状基材の裏面に画像を印刷した画像表示体は、各種の商品やコンテンツの広告・宣伝用のパネル、インテリアアートパネル等に広く用いられるようになってきている。このような画像表示体では、その画像自体の意匠性が高いことはもちろん、その表示形態についても表示体全体の意匠性を高めるものであることが求められ、例えば、画像印刷層の裏面に白印刷を行うことにより、画像印刷層の透明度を抑えて画像の色がより鮮やかに表現されるようにすることは一般によく行われている。また、画像の種類等によっては、画像表示体の画像の少なくとも一部に光沢を付与することにより意匠性の向上を図っている場合も多い。
【0003】
画像表示体の画像に光沢を付与する方法としては、例えば特許文献1で提案されているものがある。この特許文献1の光沢付与方法は、画像を印刷したパネル等の表面に紫外線硬化型の透明樹脂からなるクリヤーインキを全面的または部分的に印刷し、その表面に鏡面仕上げされた透明ポリエステルフィルムを密着させて、高圧水銀ランプで紫外線を照射することによりクリヤーインキを硬化させた後、ポリエステルフィルムを剥がすというものである。この方法によれば、クリヤーインキを印刷した部分に鏡面光沢を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1で提案されている光沢付与方法では、紫外線硬化型のクリヤーインキを準備する必要があるし、高圧水銀ランプ等でクリヤーインキに紫外線を照射する工程が含まれるため、パネル等の画像表示体の製作に手間がかかるという問題がある。また、硬化したクリヤーインキの層が画像表示体の表面に存在しているため、使用中に画像表示体の表面が他の物体と擦れた際に、擦れた部分の光沢性が消失して表示体全体の意匠性が低下するおそれもある。
【0006】
そこで、本発明は、製作時に簡単な工程で画像に光沢を付与することができ、使用時には安定して意匠性が保持される画像表示体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、透明のシート状基材と、前記シート状基材の裏面に形成される半透明の画像印刷層と、前記画像印刷層の裏面全体を覆うように形成される白印刷層とを備えた画像表示体において、前記白印刷層は前記画像印刷層の所定箇所に重なる部分が透明なクリア印刷部とされており、前記白印刷層の裏面に、光沢性を有するフィルムが少なくとも前記クリア印刷部を覆うように重ねられている構成を採用した。
【0008】
上記の構成によれば、画像表示体の製作時には、シート状基材に画像印刷および白印刷を行い、白印刷層の裏面に光沢性を有するフィルムを重ねて適宜の手段により固定するだけで、画像表示体の画像に光沢を付与することができるし、その表面はシート状基材で覆われているので、使用中に表面が他の物体と擦れても光沢性への影響はほとんどなく、安定して意匠性を保持することができる。
【0009】
ここで、前記フィルムには、樹脂製の基材フィルムの一面に金属を蒸着させた蒸着フィルムを用いるとよい。このような蒸着フィルムを用いれば、安定した金属光沢が得られるし、適切な種類の蒸着フィルムを選定することによって、その蒸着フィルムの特性を利用した意匠性を付与することもできる。
【0010】
そして、特に、前記蒸着フィルムとして、その一面に、断面形状が鋸刃状の溝を同心円状に配置し、その溝の鋸刃の傾斜角を同心円中心から径方向外側に向かって順次大きくしたパターンが少なくとも1つ形成されているレンズフィルム(
図8(a)、(b)参照)を用いれば、そのレンズフィルムの作用によって光沢を付与された部分が立体的に見えるようになり、意匠性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像表示体は、上述したように、透明のシート状基材の裏面に半透明の画像印刷層を形成し、その画像印刷層の裏面全体を覆い、かつ所定部分に透明なクリア印刷部を有する白印刷層を形成し、そのクリア印刷部を覆うように光沢性を有するフィルムを重ねたものであるから、製作時には特殊な材料や装置を用いることなく簡単な工程で画像に光沢を付与することができ、また使用時には表面が他の物体と擦れるようなことがあっても安定して意匠性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1の画像表示体の積層構造を説明する一部切欠き正面図
【
図8】(a)はレンズフィルムの構造を説明する断面図、(b)は(a)の一部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この画像表示体は、
図1に示すようなアニメキャラクターの画像を表示する広告・宣伝用のパネルであり、
図2乃至
図4に示すような積層構造となっている。その積層構造は、完成品となったパネルの画像が見える面を表面として、表面側から順に、透明のシート状基材1、半透明の画像印刷層2、第1の白印刷層3、透明の粘着テープ4(
図2では図示省略)、レンズフィルム5および第2の白印刷層6を積層したものである。
【0014】
前記積層構造の各層は、シート状基材1以外の各層がほぼ全体で重なり、シート状基材1のみが他の各層の周縁から若干はみだすように形成されている。また、各層の厚みは、画像印刷層2、第1の白印刷層3および第2の白印刷層6が10μm程度、粘着テープ4が10~160μm程度、レンズフィルム5が25~30μm程度であり、シート状基材1については50μm~50mm程度の範囲で任意に設定することができる。
【0015】
前記シート状基材1は、ある程度の厚みのある板状のものとする場合は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン等の樹脂からなるものを用いることができる。そのうちでも、アクリル板は特に透明性が高く、強度、耐擦傷性、印刷適性にも優れているので好ましい。
【0016】
前記画像印刷層2はシート状基材1の裏面に前記アニメキャラクターを含む絵柄を印刷することによって形成したものであり、第1の白印刷層3は画像印刷層2の裏面に白印刷を行うことによって形成したものである。画像印刷層2および第1の白印刷層3の印刷方法としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷方式を採用することができる。また、印刷インキとしては、アクリル系インキ、ウレタン系インキ、ビニル系インキ、ポリアミド系インキ、ニトロセルロース系インキ、UVインキ、新聞インキ等が用いられる。
【0017】
そして、第1の白印刷層3は、
図2、
図4乃至
図6に示すように、その大部分が白色インキで形成されるが、一部が透明な(図中では、説明上、ドットで表示される)クリア印刷部3aとされている。そのクリア印刷部3aは、画像印刷層2のうちの光沢付与の対象となる光沢部2a、具体的には、アニメキャラクターの瞳と髪の毛の一部および右下隅部のマークに重なる位置に配されている(
図1および
図5参照)。なお、光沢部2aの位置や形状は任意に変更することができる。
【0018】
ここで、第1の白印刷層3においては、クリア印刷部3aを印刷しないようにしても(インキのないスペースとしても)、後述するレンズフィルム5の光反射により画像印刷層2の光沢部2aに光沢を付与できるとも考えられる。しかし、実際には、白色インキのないスペースに入ったエアの作用により高い光沢度が得られなくなるため、実施形態のように透明なクリア印刷部3aを設けることが望ましい。
【0019】
前記粘着テープ4は、第1の白印刷層3の裏面にレンズフィルム5を貼り付けるためのものであり、透明度の高いアクリル系粘着剤を使用したOCA(Optical Clear Adhesive)テープを採用している。なお、このようなOCAテープの代わりに、アクリル系粘着剤、ウレタン系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤等の接着剤を単体で用いて第1の白印刷層3とレンズフィルム5の貼り合わせを行ってもよい。
【0020】
前記レンズフィルム5は、
図7および
図8(a)、(b)に示すように、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材フィルム5aの一面(表面側)に、アルミニウムを蒸着させて蒸着層5bを形成した蒸着フィルムである。その一面には、断面形状が鋸刃状の溝を同心円状にかつ傾斜面が径方向外側を向くように配置し、その溝の鋸刃の傾斜角を同心円中心から径方向外側に向かって順次大きくしたパターン7が、縦横に3列ずつ形成されている。そして、その一つひとつの溝の傾斜面が屈折面として光を反射することにより、各パターン7が表面側からは凸球面に見え、裏面側からは凹球面に見えるようになっている。すなわち、このレンズフィルム5は、縦横に並んだ複数のパターン7がそれぞれ一般的なフレネルレンズと同じ作用を有している。
【0021】
したがって、このレンズフィルム5の表面を透明の粘着テープ4で第1の白印刷層3の裏面に貼り付けると、画像表示体を表面側から見たときに、画像印刷層2の光沢部2aは光って見える位置が見る角度によって変化し、全体として凸状に浮き上がって立体的に見えるようになる。
【0022】
具体的には、見る角度によって、髪の毛の光沢部2aの光って見える位置が変化することで、アニメキャラクターの頭部全体に凸状の立体感が生まれたり、見る角度によって、アニメキャラクターの瞳の光沢部2aの光って見える位置が変化することで、アニメキャラクターの瞳に凸状の立体感が生まれたりするといった視覚的効果を得ることができる。
【0023】
この実施形態では、アニメキャラクターの画像を表示する画像表示体を例に挙げて説明したが、例えば、鱗で覆われた魚の画像を表示する画像表示体にこの発明を適用し、魚の鱗や目などを表示する部分を光沢部2aとしてもよく、これにより、魚の表面に、凸状の立体感を生じさせるといった視覚的効果を得ることが可能となる。
【0024】
第2の白印刷層6は、第1の白印刷層3と同様の印刷方法および印刷インキを用いてレンズフィルム5の裏面に白印刷を行うことによって形成され、レンズフィルム5の裏面(凹球面に見えるパターン)を隠す役割を果たすだけものである。したがって、この第2の白印刷層6の印刷の代わりに、白フィルム等をレンズフィルム5の裏面に貼り付けるようにしてもよい。また、画像表示体を裏面側が隠れる状態で設置するような場合には、第2の白印刷層6や白フィルム等を省略してもよい。
【0025】
この画像表示体は、上記の構成であり、製作の際には、シート状基材1の裏面に画像印刷層2および第1の白印刷層3を印刷する工程と、レンズフィルム5の裏面に第2の白印刷層6を印刷する工程と、その第1の白印刷層3とレンズフィルム5とを粘着テープ4で貼り合わせる工程だけで、特殊な材料や装置を用いることなく、簡単に画像の一部に光沢を付与することができる。また、その表面はシート状基材1で覆われているので、使用中に表面が他の物体と擦れても光沢性への影響はほとんどなく、安定して意匠性を保持することができる。
【0026】
さらに、画像に光沢を付与するためのフィルムとしてレンズフィルム5を用いているので、その作用によって光沢を付与された部分が立体的に見え、優れた意匠性を有するものとなっている。
【0027】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
例えば、実施形態では、レンズフィルム5の表面(凸球面に見えるパターン7)を用いて、画像表示体の画像の一部に光沢を付与するとともに、その部分が凸状に見えるようにしたが、画像の種類によっては、レンズフィルムの凹球面に見えるパターンを用いて、光沢を付与された部分が凹状に見えるようにしてもよい。また、レンズフィルムに代えてホログラムフィルムやレンチキュラーフィルム等の蒸着フィルムを用いて、その蒸着フィルムの特性を利用した意匠性を付与することもできる。
【0029】
そして、その蒸着フィルムの基材フィルムとしては、実施形態のようなポリエチレンテレフタレートフィルムのほか、ポリプロピレンフィルムやポリ塩化ビニルフィルム等の樹脂製フィルムを用いることができるし、基材フィルムに蒸着させる金属としては、実施形態のようなアルミニウムのほか、クロム等の金属単体や黄銅等の合金を用いることもできる。
【0030】
さらに、画像表示体の画像に光沢を付与するためのフィルムは、安定した金属光沢が得られる蒸着フィルムを用いることが好ましいが、金属めっきしたフィルム等を用いることもできる。
【0031】
また、実施形態ではシート状基材1の裏面のほぼ全面に画像印刷層2を形成したが、画像印刷層は絵柄のみを印刷して背景部分は印刷せず、画像の背景は第1の白印刷層の白インキ部分とすることができる。あるいは、画像印刷層を絵柄のみの印刷としたうえ、第1の白印刷層の背景部分をクリア印刷部として、光沢性を有するフィルムが画像の背景となるようにすることもできる。
【0032】
また、シート状基材は、透明で画像を鮮明に見せることができ、画像の表面を保護する役割を果たせるものであればよい。したがって、用途によっては、実施形態のような樹脂製の板材のほか、ガラスや、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂で形成されたフィルムを採用することもできる。
【0033】
そして、本発明は、実施形態のような広告・宣伝用のパネルに限らず、種々のパネル、ポスター、ラベル等の画像表示体に広く適用することができる。また、その画像は、実施形態のような絵柄のほか、文字、図形、パターン、写真等を意匠として表示するものであればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 シート状基材
2 画像印刷層
2a 光沢部
3 第1の白印刷層
3a クリア印刷部
4 粘着テープ
5 レンズフィルム(蒸着フィルム)
5a 基材フィルム
5b 蒸着層
6 第2の白印刷層
7 パターン