(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シアン含有廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/58 20230101AFI20240220BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20240220BHJP
【FI】
C02F1/58 N
C02F1/76 B
(21)【出願番号】P 2019206379
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達彦
(72)【発明者】
【氏名】錦織 弘宜
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/190108(WO,A1)
【文献】特開2017-104802(JP,A)
【文献】特開2017-159276(JP,A)
【文献】特開2018-030104(JP,A)
【文献】特開2014-004581(JP,A)
【文献】特開2018-039004(JP,A)
【文献】特開2017-140577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52- 1/64
C02F 1/70- 1/78
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン含有廃水に、
該廃水中のシアン含有量に対してモル比で0.2倍以上の濃度の二酸化塩素、
該廃水中において次亜塩素酸として10~7000mg/Lの濃度の次亜塩素酸塩および
該廃水中において有効塩素濃度として10~3000mg/Lの濃度のN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、
該廃水中において5~4000mg/Lの濃度の第四級アンモニウム化合物とを同時または別々に添加して、該廃水からシアンを除去することを特徴とするシアン含有廃水の処理方法。
【請求項2】
前記1種以上の化合物と前記第四級アンモニウム化合物とを同一反応槽において前記シアン含有廃水に添加する、請求項1に記載のシアン含有廃水の処理方法。
【請求項3】
シアン含有廃水中に、該廃水中のシアン含有量に対してモル比で0.2倍以上の濃度の二酸化塩素、該廃水中において次亜塩素酸として10~7000mg/Lの濃度の次亜塩素酸塩および該廃水中において有効塩素濃度として10~3000mg/Lの濃度のN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、該廃水中において5~4000mg/Lの濃度の第四級アンモニウム化合物とを共存させて、該廃水からシアンを除去することを特徴とするシアン含有廃水の処理方法。
【請求項4】
前記1種以上の化合物が二酸化塩素を含んで選択される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のシアン含有廃水の処理方法。
【請求項5】
前記シアン含有廃水がアンモニウムイオンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のシアン含有廃水の処理方法。
【請求項6】
前記シアン含有廃水が、シアン濃度で2~200mg/Lのシアン錯体を含有する廃水である請求項
1~5のいずれか1項に記載のシアン含有廃水の処理方法。
【請求項7】
前記シアン含有廃水が、pH6~9である請求項1
~6のいずれか1項に記載のシアン含有廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも薬剤添加量を極力抑え、二酸化塩素ガスの発生およびそれによる設備への腐食などの作業環境の悪化を軽減し、従来よりも処理水におけるスラッジの発生量を低減し、簡便な操作で安全にかつ安価に廃水中のシアンを確実に除去し得るシアン含有廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シアンは生態系に強い悪影響を及ぼすため、シアン含有廃水(「シアン廃水」ともいう)を自然界にそのまま放出することはできない。水質汚濁防止法に基づきシアンの排水基準が定められ、この基準(1mg/L以下)を満たすようにシアン除去処理を行い、無害化した廃水でなければ下水などに排出できない。また、地域によっては、条例により、上記の排水基準値よりもさらに低い上乗せ排水基準が定められている。また、廃水中に含まれるシアンの一部はシアン化水素ガスとして周辺に拡散し、作業環境が著しく損なわれるという問題もあり、労働安全衛生法では、シアン化水素の作業環境濃度は3ppm以下であることが規定されている。
シアンは、廃水の由来にも因り、含有量の多少はあるが、難分解性シアン錯体およびそのイオン、易分解性シアン錯体およびそのイオン、シアン化物イオンの3種の形態で廃水中に存在している。
【0003】
従来からシアン含有廃水中のシアンの除去処理として様々な方法が提案され、実用化されているが、いずれも一長一短があり、廃水の状況に応じて使い分けられている。
例えば、(1)シアン含有廃水をアルカリ性に調整した後、塩素を注入してシアンを酸化分解するアルカリ塩素法、(2)強力なオゾンの酸化力でシアンを窒素ガスと炭酸水素塩に酸化分解するオゾン酸化法および(3)非溶解性の電極を用いてシアンを電気分解し、酸化反応を行なう電解酸化法(電解法)などの酸化分解法;(4)シアン含有廃水中に、鉄イオンの供給化合物として、例えば硫酸第一鉄を添加し、難溶性のフェリ/フェロシアン化物を生成させ、これを沈殿除去する紺青法、(5)塩化亜鉛と還元剤とを添加し、生成した不溶錯体を沈殿除去する亜鉛白法および(6)2価の銅塩と還元剤とを添加し、生成した不溶錯体を沈殿除去する還元銅塩法などの不溶錯体法;(7)シアンに対して馴養させた微生物(シアン分解菌)にシアンを分解させる生物処理法;(8)シアン含有廃水を高温に保持してシアン化合物をアンモニアと蟻酸に加水分解させ、共存する重金属類を単体または酸化物として析出させる熱加水分解法および(9)シアンの分解以外に有機汚濁物をも酸化分解させる湿式酸化法などの熱水反応などがある。
【0004】
具体的には、第四級アンモニウム化合物を用いるシアン含有廃水の処理方法が提案されている。
例えば、特開2005-081170号公報(特許文献1)には、シアン化合物を含有する被処理液にシアン化合物と反応して析出物を生成する金属イオンを添加する反応工程と、反応工程で生成した析出物を被処理液から分離する金属シアン化合物分離除去工程と、析出物を分離除去した被処理液を活性炭と接触させてシアン化合物を吸着除去するシアン化合物吸着除去工程とを有するシアン化合物を含有する排水の処理方法が開示され、被処理液を活性炭に接触させる前に、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)のようなカチオン系界面活性剤を添加することが開示されている。
【0005】
また、特開2014-004581号公報(特許文献2)には、シアン含有廃水に、炭素数が5以上でありかつ廃水中でカチオンを生じる、特定のテトラアルキルアンモニウム化合物およびピリジニウム化合物から選択される有機含窒素化合物を添加し、シアン成分と有機含窒素化合物とを共存させることで廃水中のシアン成分を不溶化した後、不溶化されたシアン成分を固液分離する工程を有するシアン含有廃水の処理方法が開示され、特定の有機含窒素化合物を添加したシアン含有廃水を、Zn2+またはCu+の少なくともいずれかのイオンを共存させた状態として、さらにはFe2+、Fe3+、Cu2+、Mn2+およびAl3+からなる群から選ばれる少なくともいずれかの金属イオンを共存させた状態で処理することが開示されている。
【0006】
さらに、特開2015-100767号公報(特許文献3)には、沈殿槽にシアン含有廃水を導入する前の段階で或いは導入すると同時に第一鉄塩を添加して、その後に特定のテトラアルキルアンモニウム化合物およびピリジニウム化合物から選択される有機含窒素化合物と第一銅塩とを添加して、処理対象とするシアン含有廃水中にさらにこれらの成分を共存させて廃水中のシアン成分を不溶化する工程を有するシアン含有廃水の処理方法が開示されている。
【0007】
また、特開2008-036608号公報(特許文献4)には、シアン化合物を含有する被処理水に、硫酸第2銅のような2価の銅塩および重亜硫酸ナトリウムのような還元剤を添加して難溶性塩を生成させて分離する分離工程と、分離工程の処理水にアルカリ性条件下にて次亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤を添加して該処理水中のシアン化合物を酸化する酸化工程とを有するシアン含有水の処理方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記の先行技術では、煩雑な工程や操作が必要であり、それに伴い複数の反応槽が必要となる場合もある。また、シアン除去の効果が十分であっても、金属化合物を用いる方法では、処理において多量のスラッジが生成するため、その産業廃棄物処理にコストが掛かるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-081170号公報
【文献】特開2014-004581号公報
【文献】特開2015-100767号公報
【文献】特開2008-036608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、従来よりも薬剤添加量を極力抑え、二酸化塩素ガスの発生およびそれによる設備への腐食などの作業環境の悪化を軽減し、従来よりも処理水におけるスラッジの発生量を低減し、簡便な操作で安全にかつ安価に廃水中のシアンを確実に除去し得るシアン含有廃水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シアン含有廃水の処理において、有効量の二酸化塩素、次亜塩素酸塩およびN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、有効量の第四級アンモニウム化合物とを併用することにより、意外にも、従来よりも薬剤添加量を極力抑え、二酸化塩素ガスの発生およびそれによる設備への腐食などの作業環境の悪化を軽減し、簡便な操作で安全にかつ安価に廃水中のシアンを確実に除去し、さらに従来よりも処理水におけるスラッジの発生量を低減し得る事実を見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
かくして、本発明によれば、シアン含有廃水に、二酸化塩素、次亜塩素酸塩およびN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、第四級アンモニウム化合物とを同時または別々に添加して、該廃水からシアンを除去することを特徴とするシアン含有廃水の処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも薬剤添加量を極力抑え、二酸化塩素ガスの発生およびそれによる設備への腐食などの作業環境の悪化を軽減し、従来よりも処理水におけるスラッジの発生量を低減し、簡便な操作で安全にかつ安価に廃水中のシアンを確実に除去し得るシアン含有廃水の処理方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、各種形態で廃水中に含有するシアンを、従来よりも薬剤添加量を極力抑え、簡便な操作で処理することができ、さらに処理におけるスラッジの生成を抑えて、その産業廃棄物処理コストを低減できる。
また、廃水中のシアン濃度が排水規制(1mg/L以下)を満たすことで、周辺へのシアン化水素ガスの拡散も抑えられ、作業環境の改善も期待できる。
よって、本発明の方法で処理した廃水をそのまま自然界に放出しても、環境に対する影響が非常に少なく、また処理後に発生する懸濁物質(廃棄物)の量も少なくできることから、本発明の方法は産業上極めて有用である。
【0014】
また、本発明のシアン含有廃水の処理方法は、次の条件のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(1)シアン含有廃水が、シアン濃度で2~200mg/Lのシアン錯体を含有する廃水である。
(2)シアン含有廃水が、pH6~9である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のシアン含有廃水の処理方法は、シアン含有廃水に、二酸化塩素、次亜塩素酸塩およびN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、第四級アンモニウム化合物とを同時または別々に添加して、該廃水からシアンを除去することを特徴とする。
【0016】
(二酸化塩素)
本発明において用いられる二酸化塩素は、極めて不安定な化学物質であるため、その貯蔵や輸送は非常に困難である。したがって、二酸化塩素または廃水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を廃水に直接添加してもよいが、その場で公知の方法により二酸化塩素を製造(生成)するか、または廃水中で二酸化塩素を発生し得る化合物を水に添加して二酸化塩素を発生させ、所望の添加濃度に調整して用いるのが好ましい。
例えば、次のような反応により二酸化塩素を製造することができ、市販の二酸化塩素発生器(装置)を用いることもできる。
(1)次亜塩素酸ナトリウムと塩酸と亜塩素酸ナトリウムとの反応
NaOCl+2HCl+2NaClO2 → 2ClO2+3NaCl+H2O
(2)亜塩素酸ナトリウムと塩酸との反応
5NaClO2+4HCl → 4ClO2+5NaCl+2H2O
(3)塩素酸ナトリウム、過酸化水素および硫酸との反応
2NaClO3+H2O2+H2SO4 → 2ClO2+Na2SO4+O2+2H2O
【0017】
(次亜塩素酸塩)
本発明において用いられる次亜塩素酸塩は、水中で次亜塩素酸を生成して、本発明の効果を奏する化合物であれば特に限定されない。例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウムなどの次亜塩素酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が挙げられる。特に、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムは工業的に入手し易く、本発明において好適に用いられる。また、食塩水や海水を電解槽で電解することによって得られる次亜塩素酸であってもよい。
次亜塩素酸塩を用いる場合には、薬剤添加量を極力抑える点で、過酸化水素を併用するのが好ましい。
【0018】
本発明では、上記の次亜塩素酸塩の代わりに次亜臭素酸塩を用いることもできる。
本発明において用いられる次亜臭素酸塩は、水中で次亜臭素酸を生成して、本発明の効果を奏する化合物であれば特に限定されない。例えば、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸カルシウム、次亜臭素酸マグネシウムなどの次亜臭素酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が挙げられる。特に、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸カリウムは工業的に入手し易く、本発明において好適に用いられる。また、食塩水や海水を電解槽で電解することによって得られる次亜臭素酸であってもよい。
次亜臭素酸塩を用いる場合には薬剤添加量を極力抑える点で、過酸化水素を併用するのが好ましい。
【0019】
(N-クロロスルファマート)
本発明において用いられるN-クロロスルファマートは、公知の方法、例えば、特表2003-503323号公報、特開2006-022097号公報、特表平11-506139号、特表2001-501869号公報、特表2003-507326号公報及び特開2014-101251号公報などに記載の方法により調製することができる。例えば、スルファミン酸と、次亜塩素酸との反応生成物を好適に用いることができる。
N-クロロスルファマートを用いる場合には、薬剤添加量を極力抑える点で、過酸化水素を併用するのが好ましい。
【0020】
本発明では、上記のN-クロロスルファマートの代わりにN-ブロモスルファマートを用いることもできる。
本発明において用いられるN-ブロモスルファマートは、上記のN-クロロスルファマートと同様の公知の方法により調製することができる。例えば、スルファミン酸と、次亜臭素酸との反応生成物を好適に用いることができる。
N-ブロモスルファマートを用いる場合には、薬剤添加量を極力抑える点で、過酸化水素を併用するのが好ましい。
【0021】
(第四級アンモニウム化合物)
本発明において用いられる第四級アンモニウム化合物は、例えば、一般式(I):
【化1】
【0022】
(式中、Rはβ位にヒドロキシ基を有してもよい炭素数8~28の飽和もしくは不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基、R1は低級アルキル基、またはβ位にヒドロキシ基を有してもよい炭素数8~28の飽和もしくは不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基、R2およびR3は同一または異なって低級アルキル基、Xは酸残基又は水酸基である)、または一般式(II):
【0023】
【化2】
(式中、RおよびXは一般式(I)と同義、R
4は水素原子またはメチル基である)
で表される。
【0024】
一般式(I)において、「炭素数8~28の飽和もしくは不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基」としては、
オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシルなどの直鎖状飽和炭化水素基;
オクテニル、ノネニル、デケニル、ウンデケニル、ドデケニル、トリデケニル、テトラデケニル、ペンタデケニル、ヘキサデケニル、ヘプタデケニル、オクタデケニル(オレイル=9-cis-オクタデケニル)、ノナデケニル、イコセニル、ヘニコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニル、ヘキサコセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、オクタデカジエニル(リノレイル= 9,12-オクタデカジエニル)など;
オクタジニル、ノナジニル、デカジニル、ウンデカジニル、ドデカジニル、トリデカジニル、テトラデカジニル、ペンタデカジニル、ヘキサデカジニル、ヘプタデカジニル、オクタデカジニル、ノナデカジニル、イコサジニル、ヘニコサジニル、ドコサジニル、トリコサジニル、テトラコサジニル、ペンタコサジニル、ヘキサコサジニル、ヘプタコサジニル、オクタコサジニルなどの直鎖状不飽和炭化水素基;
ヤシアルキル、牛脂アルキル、硬化牛脂アルキル、大豆アルキルなどが挙げられる。
【0025】
ここで、ヤシアルキル、牛脂アルキル、硬化牛脂アルキル、大豆アルキルとは、ヤシ油もしくはヤシ脂肪、牛脂又は大豆油から公知の手段により製造された高級脂肪族モノもしくはポリアミンを構成するアルキル基である。なお、これらのアルキル基は、炭素数8~28の間の任意の値を有する直鎖状の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を複数種含んでいてもよい。
【0026】
また、「β位にヒドロキシ基を有する炭素数8~28の飽和もしくは不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基」としては、前記「炭素数8~28の飽和もしくは不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基」のβ位にヒドロキシ基を有する基が挙げられ、中でもβ-ヒドロキシドデシル、β-ヒドロキシヘキサデシルが好ましい。
【0027】
一般式(I)の「低級アルキル基」としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルが挙げられる。
また、一般式(I)および(II)のXとしては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、オレイン酸、ナフテン酸、アジピン酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、サッカリンなどの酸残基、および水酸基挙げられ、これらの中でも塩酸および臭化水素酸の残基が特に好ましい。
【0028】
本発明に用いることのできる一般式(I)で表される第四級アンモニウム化合物としては、
ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリエチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリエチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリエチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリエチルアンモニウム塩、ヤシアルキルトリメチルアンモニウム塩、ヤシアルキルトリエチルアンモニウム塩、牛脂アルキルトリメチルアンモニウム塩、牛脂アルキルトリエチルアンモニウム塩;
ジオクチルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、デシルテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩、ジオクタデシルジメチルアンモニウム塩、ジ牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩;β-ヒドロキシドデシルトリメチルアンモニウム塩、β-ヒドロキシヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、β-ヒドロキシドデシルトリエチルアンモニウム塩、β-ヒドロキシヘキサデシルトリエチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0029】
また、本発明に用いることのできる一般式(II)で表される第四級アンモニウム化合物としては、ドデシルピリジニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、オクタデシルピリジニウム塩、ヤシアルキルピリジニウム塩、牛脂アルキルピリジニウム塩などが挙げられる。これらの第四級アンモニウム化合物は2種以上を混合してもよい。
【0030】
本発明において用いられる一般式(I)および(II)以外の第四級アンモニウム化合物としては、塩化ベンザルコニウム(アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド:BDDAC)、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
上記の第四級アンモニウム化合物の中でも、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)のようなジデシルジメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウムが特に好ましい。
【0031】
(二酸化塩素の有効濃度)
二酸化塩素は、シアン含有廃水に含まれるシアンの種類およびその濃度のほかに、シアン含有廃水に含まれる金属化合物(イオン)の種類およびその濃度などの影響を受けるので、これらの条件に応じて適宜決定すればよいが、通常、シアン含有廃水中のシアン含有量に対してモル比で少なくとも0.2倍の濃度であるのが好ましい。より好ましくは、廃水中のシアン含有量に対してモル比で少なくとも1倍の濃度である。
【0032】
二酸化塩素がモル比で0.2倍未満では、廃水の種類によっては二酸化塩素が消費(分解)されるため、シアン除去の効果が不十分になることがある。
具体的な好ましい二酸化塩素のモル比の下限値は、例えば、0.2倍、0.4倍、0.5倍、1.0倍、2.0倍、5.0倍、10倍である。
【0033】
(次亜塩素酸塩の有効濃度)
次亜塩素酸塩は、シアン含有廃水に含まれるシアンの種類およびその濃度のほかに、シアン含有廃水に含まれる金属化合物(イオン)の種類およびその濃度などの影響を受けるので、これらの条件に応じて適宜決定すればよいが、通常、シアン含有廃水中において次亜塩素酸として10~7000mg/Lの濃度であるのが好ましく、10~3500mg/Lの濃度であるのがより好ましい。
次亜塩素酸濃度が10mg/L未満では、シアン除去の効果が不十分になることがある。一方、次亜塩素酸濃度が7000mg/Lを超えると、廃水中の塩化物イオン濃度が高くなり、設備への腐食などの作業環境の悪化をまねくことがある。
【0034】
(N-クロロスルファマートの有効濃度)
N-クロロスルファマートは、シアン含有廃水に含まれるシアンの種類およびその濃度のほかに、シアン含有廃水に含まれる金属化合物(イオン)の種類およびその濃度などの影響を受けるので、これらの条件に応じて適宜決定すればよいが、通常、シアン含有廃水中において有効塩素濃度として10~3000mg/Lの濃度であるのが好ましく、10~1500mg/Lの濃度であるのがより好ましい。
N-クロロスルファマート濃度が10mg/L未満では、シアン除去の効果が不十分になることがある。一方、N-クロロスルファマート濃度が3000mg/Lを超えると、廃水中の窒素濃度が高くなり、窒素処理が必要になることがある。
【0035】
(第四級アンモニウム化合物の有効濃度)
第四級アンモニウム化合物は、シアン含有廃水に含まれるシアンの種類およびその濃度のほかに、シアン含有廃水に含まれる金属化合物(イオン)の種類およびその濃度などの影響を受けるので、これらの条件に応じて適宜決定すればよいが、通常、シアン含有廃水中において第四級アンモニウム化合物として5~4000mg/Lの濃度であるのが好ましく、5~2000mg/Lの濃度であるのがより好ましい。
第四級アンモニウム化合物が5mg/L未満では、シアン除去の効果が不十分になることがある。一方、第四級アンモニウム化合物濃度が4000mg/Lを超えると、廃水中の窒素濃度が高くなり、窒素処理が必要になることがある。
【0036】
(化合物の添加方法)
本発明においては、シアン含有廃水中のシアン含有量を予め測定し、測定したシアン含有量に応じた有効成分の化合物を、同時または別々に該廃水に添加するのが好ましい。
具体的には、処理前(処理直前から約3時間前まで)のシアン含有廃水中のシアン濃度、必要に応じて金属化合物の濃度などを予め測定しておき、得られた測定値に基づいて、各添加剤の添加量を決定すればよい。
二酸化塩素、次亜塩素酸塩およびN-クロロスルファマートから選択される2種以上を第四級アンモニウム化合物と組み合わせて用いることもできるが、経済的な観点からこれらの化合物群から選択される1種を第四級アンモニウム化合物と組み合わせて用いるのが好ましい。
何れの組み合せであっても本発明の優れた効果を得ることができるが、これらの中でも、薬剤どうしの反応が起こり難く、かつ窒素濃度の過度な上昇を避ける観点から二酸化塩素と第四級アンモニウム化合物との組み合わせが特に好ましい。
【0037】
本発明において用いられる有効成分の化合物はそれぞれ水溶液の形態で添加するのが好ましく、各水溶液の濃度は、それらをシアン含有廃水に添加する際の作業性、シアンと添加した化合物との反応性などを考慮して決定すればよい。
具体的には、二酸化塩素は二酸化塩素濃度として1~2500mg/L程度、次亜塩素酸塩は次亜塩素酸濃度として10~7000mg/L程度、N-クロロスルファマートは有効塩素濃度として10~3000mg/L程度、第四級アンモニウム化合物は5~4000mg/L程度である。
また、シアン含有廃水への二酸化塩素、次亜塩素酸塩およびN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、第四級アンモニウム化合物との添加順序は特に限定されず、両化合物を同時に添加してもよく、また上記の記載順もしくは逆順で別々に添加してもよい。
【0038】
(シアン含有廃水)
本発明において処理対象となるシアン含有廃水としては、製鉄工場、化学工場、メッキ工場、コークス製造工場、金属表面処理工場などから排出される金属のシアン化合物、シアンイオン、シアン錯体、シアノ錯イオンなどを含むシアン含有廃水、放射能汚染水の処理工程において排出されるシアン含有廃水、土壌の処理装置から排出されるシアン含有廃水が挙げられる。特に、本発明のシアン含有廃水の処理方法は、コークス炉廃水のような、緩衝作用の強いシアン含有廃水、すなわちチオシアン酸イオンおよびその塩ならびにアンモニウムイオンなどの共存物質を含有するシアン含有廃水の処理に好適である。
また。本発明のシアン含有廃水の処理方法は、シアン含有廃水がシアン化物イオン、易分解性シアン錯体および難分解性シアン錯体のうちの少なくとも1種を含有する廃水である場合の処理に好適であり、特にシアン含有廃水が、シアン濃度で2~200mg/Lのシアン錯体を含有する廃水である場合の処理に好適である。
さらに、本発明のシアン含有廃水の処理方法は、シアン含有廃水がチオシアン酸イオンおよびその塩ならびにアンモニウムイオンから選択される1種以上の共存物質を含有する廃水である場合の処理にも好適である。
【0039】
本発明において処理対象となるシアン含有廃水におけるシアンの含有量は、特に限定されないが、上記のシアン含有廃水は、一般に全シアン濃度で2~500mg/L程度である。このようなシアン含有廃水を処理する場合には、シアン含有廃水に対して、二酸化塩素、次亜塩素酸塩およびN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、第四級アンモニウム化合物とを上記の添加量になるように添加すればよい。
例えば、二酸化塩素と第四級アンモニウム化合物とを併用する場合、それぞれ1~2500mg/Lおよび5~4000mg/Lになるようにシアン含有廃水に添加すればよい。
【0040】
(シアン含有廃水のpH)
シアン含有廃水は、pH6~9であるのが好ましい。
シアン含有廃水がpH6未満またはpH9を超えると、シアンと添加する化合物との反応が不完全になり、効率的にシアンを除去できないことがある。
処理対象のシアン含有廃水は、通常、pH6~9程度であることからpH調整の必要はないが、必要に応じて、本発明の処理における反応を妨げない酸またはアルカリ、例えば硫酸または水酸化ナトリウムを処理廃水に添加して、pH調整をすればよい。
【0041】
(撹拌)
二酸化塩素、次亜塩素酸塩およびN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、第四級アンモニウム化合物との添加時、およびこれらの化合物とシアンとの反応時には、シアンの除去効果の点で、混合溶液を撹拌するのが好ましい。この撹拌は、各化合物の添加毎に実施するのが好ましい。
また、撹拌時の反応を促進する意味で、混合溶液は、添加した化合物が分解されない、ある程度加温された状態であるのが好ましく、その液温は20~50℃程度である。
さらに、撹拌時の反応に要する時間は、シアン含有廃水の量、シアンの種類およびその濃度、処理装置の形態およびその規模などにより異なるが、シアンと添加した化合物とが十分に接触するように適宜決定すればよい。通常、撹拌時間は10分以上であればよい。
【0042】
(処理および沈殿分離)
化合物の添加、撹拌混合、沈降分離、水不溶化物の除去などの一連の操作には、添加剤槽、反応処理槽、シックナーおよび除濁沈殿池などの公知の装置を用いることができ、既設の装置を転用してもよい。
本発明のシアン含有廃水の処理方法では、本発明の効果を阻害しない範囲で、防錆剤、腐食防止剤、スケール分散剤、スライムコントロール剤、消泡剤などの公知の薬剤を併用してもよい。
また、沈降分離においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、界面活性剤や凝集剤を添加してもよい。
ここで、本発明において「水不溶化物」とは、温度20℃における水100gに対して1g以下の溶解度を有し、沈降分離や濾別により液相と分離可能である化合物を意味する。
【0043】
以上の処理により、従来よりも薬剤添加量を極力抑え、設備への腐食などの作業環境の悪化を軽減し、簡便な操作で安全にかつ安価に廃水中のシアンを除去し、処理前のシアン濃度(全シアン含有量(mg/L))を排水基準値以下に顕著に低減させることができ、処理後の廃水を中和処理なしに、沈降分離や濾別処理なしもしくは簡易な処理に付して、下水などに排出または再利用することができる。
本発明の方法において、処理排水をそのまま放流する場合には、全シアン濃度を排水基準値以下に低下させるのに必要な量の化合物を添加すればよいが、処理排水を他の排水で希釈して放流する場合には、希釈後の排水が上記の排水基準値以下になるように化合物を添加すればよい。
【実施例】
【0044】
本発明を試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例により限定されるものではない。
【0045】
(試験例1)
試験例1では、表1に示す水質を有する実機模擬水(全シアン30mg/L、シアン化物イオン25mg/L、錯シアン5mg/L含有、pH8.2)を用いた。
具体的には、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、シアン化カリウム水溶液、塩化カルシウム2水和物、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウムおよび炭酸水素ナトリウムを用いて実機模擬水を調製した。
【0046】
【0047】
第1反応槽としての容量200mLのビーカーに、それぞれ実機模擬水を100mL分注し、表2に示す濃度になるように、二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウムまたはN-クロロスルファマートを、第四級アンモニウム化合物としてジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)または塩化ベンザルコニウム(BDDAC)を添加し、pH調整剤として硫酸水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を添加して、試験水のpHが表2に示す値になるように調整して試験水を得た(実施例1~5)。
また、比較として、表2に示す濃度になるように、二酸化塩素のみを添加するか、第四級アンモニウム化合物としてDDACのみを添加し、硫酸水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を添加して、試験水のpHが表2に示す値になるように調整して試験水を得た(比較例1~2)。
試験水の調製では、室温下(温度25±5℃)、撹拌装置(アズワン株式会社製、マグネチックスターラーREXIM、品番:RS-4AR)を用いて回転数200rpmで1時間撹拌した。
第1反応槽での処理後に、ガラス濾紙(ADVANTECグループ、東洋濾紙株式会社製、品名:GS-25)を用いて、不溶化物を吸引濾過し、残渣をガラス濾紙と共に温度105℃で2時間加熱乾燥し、デシケータ内で放冷後に秤量し、予め測定しておいたガラス濾紙の質量を差し引き、残渣の乾燥質量を算出し、これをスラッジ量(g)とした。
【0048】
特許文献4の追試として、表2に示す濃度になるように、硫酸第2銅および重亜硫酸ナトリウムを添加し、pH調整剤を添加して、試験水のpHが表2に示す値になるように調整して試験水を得た(比較例3)。試験水の調製では、室温下、撹拌装置を用いて回転数200rpmで30分間撹拌した。
次いで、第1反応槽での処理後に、ガラス濾紙を用いて、不溶化物を吸引濾過し、残渣をガラス濾紙と共に加熱乾燥し、デシケータ内で放冷後に秤量し、予め測定しておいたガラス濾紙の質量を差し引き、残渣の乾燥質量を算出した。
濾過により得られた濾液を第2反応槽としての容量200mLのビーカーに移し、12%次亜塩素酸ナトリウムを添加し、pH調整剤を添加して、試験水のpHが表2に示す値になるように調整し、室温下、撹拌装置を用いて回転数200rpmで撹拌した(アルカリ塩素法処理)。
次いで、第2反応槽での処理後に、ガラス濾紙を用いて、不溶化物を吸引濾過し、残渣をガラス濾紙と共に加熱乾燥し、デシケータ内で放冷後に秤量し、予め測定しておいたガラス濾紙の質量を差し引き、残渣の乾燥質量を算出し、これに第1反応槽での残渣の乾燥重量を加算して、これをスラッジ量(g)とした。
濾過により得られた濾液を第3反応槽としての容量200mLのビーカーに移し、12%次亜塩素酸ナトリウムを添加し、pH調整剤を添加して、試験水のpHが表2に示す値になるように調整し、室温下、撹拌装置を用いて回転数200rpmで撹拌した(アルカリ塩素法処理)。
第2および第3反応槽での12%次亜塩素酸ナトリウムの添加合計量を表2に示す量(約1/2量を使用)とし、また第2および第3反応槽での合計処理(撹拌)時間を40分間(各20分間)とした。
【0049】
特許文献2の追試として、表2に示す濃度になるように、塩化第1銅、塩化第2銅およびDDADを添加し、pH調整剤を添加して、試験水のpHが表2に示す値になるように調整して試験水を得た(比較例4)。試験水の調製では、室温下、撹拌装置を用いて回転数200rpmで1時間撹拌した。
第1反応槽での処理後に、ガラス濾紙を用いて、不溶化物を吸引濾過し、残渣をガラス濾紙と共に加熱乾燥し、デシケータ内で放冷後に秤量し、予め測定しておいたガラス濾紙の質量を差し引き、残渣の乾燥質量を算出し、これをスラッジ量(g)とした。
【0050】
最終的に得られた濾液の全シアン濃度(T-CN)をJIS K0102に準拠して測定し、各試験水におけるシアン化合物の除去効果を評価した。
この試験においては、薬剤を添加しないブランク試験(比較例5)を同時に行った。
得られた結果を、添加化合物、その添加量および添加方法と共に表2に示す。
【0051】
【0052】
表2の試験結果から次のことがわかる。
(1)二酸化塩素、次亜塩素酸塩およびN-クロロスルファマートから選択される1種以上の化合物と、第四級アンモニウム化合物との併用処理(実施例1~5)では、十分なシアン除去効果が得られ、かつ生成スラッジ量が少なく、しかも1つの反応槽で処理が完了すること
(2)pHがそれぞれ7.5および9.0の試験水に同種同量の化合物を添加しても、同等の十分なシアン除去効果と生成スラッジの減量効果が得られること(実施例1および2)
(3)これに対して、金属化合物および還元剤を用いる不溶錯体法と、アルカリ塩素法とを併用する処理(比較例3:特許文献4の追試)では、十分なシアン除去効果が得られるものの、3つの反応槽が必要になり、工程が多く煩雑になり、生成スラッジ量が多いこと
(4)また、2種の金属化合物およびDDACを併用する不溶錯体法(比較例4:特許文献2の追試)では、1つの反応槽で処理が完了し、十分なシアン除去効果が得られるものの、生成スラッジ量が多いこと
(5)二酸化塩素およびDDACの何れか一方を用いる処理(比較例2および3)では、金属化合物を用いていないので生成スラッジ量が少ないが、十分なシアン除去効果が得られないこと