(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20240220BHJP
B65D 47/20 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61J1/05 350
B65D47/20 210
(21)【出願番号】P 2019208233
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000150028
【氏名又は名称】株式会社池田模範堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮川 惇紀
(72)【発明者】
【氏名】野間 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 善彦
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-028054(JP,U)
【文献】実開平07-043084(JP,U)
【文献】特開2003-212256(JP,A)
【文献】特開2001-335066(JP,A)
【文献】特開2002-240875(JP,A)
【文献】特開2017-100757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0100574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
B65D 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有するボトルと、前記ボトルの口部に取り付けられるキャップとを備え、
前記キャップは、塗布具挿入孔を有する天板と、前記塗布具挿入孔の奥部に設けられ、前記塗布具挿入孔に向けて開口する
開口端を有する有底筒状の計量カップと、前記塗布具挿入孔を密閉する蓋とを備え、
前記計量カップ
の前記開口端と前記天板との間には、前記蓋により前記塗布具挿入孔を密閉した状態で前記ボトルを天地反転させたときに、前記計量カップの外周面側で前記ボトルの前記口部の内周面との間に形成された流路を通って前記天板に向けて流れる内容液を前記計量カップの内周面側に流入させる流入開口が形成されており、
前記計量カップは、前記塗布具挿入孔から挿入された塗布具の先端部を、前記計量カップ内に溜まった内容液が前記塗布具に染み込むように受け入れ可能に構成されている、容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器において、
前記蓋は、前記塗布具挿入孔から挿入され且つ前記計量カップに向けて延びるガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記流入開口から前記計量カップの内周面側に流入した内容液の流れが前記計量カップの内底面側に向くように案内するガイド溝を有する、容器。
【請求項3】
請求項2に記載の容器において、
前記流入開口と同数の前記ガイド溝がそれぞれ、各流入開口に対向して配置されている、容器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の容器において、
前記計量カップの外周面には平滑面に比して液体流動抵抗を低下させる粗面加工が施されている、容器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の容器において、
前記流入開口の周端の一部を構成する前記計量カップの開口端縁の周方向中途部には、少なくとも一つの凸部又は凹部が設けられている、容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の容器において、
前記計量カップは、周方向に離間する複数の支持リブを介して天板に支持されており、隣り合う支持リブ間にそれぞれ流入開口が設けられている、容器。
【請求項7】
口部を有するボトルと、前記ボトルの口部に取り付けられるキャップとを備え、
前記キャップは、塗布具挿入孔を有する天板と、前記塗布具挿入孔の奥部に設けられ、前記塗布具挿入孔に向けて開口する有底筒状の計量カップと、前記塗布具挿入孔を密閉する蓋とを備え、
前記計量カップと前記天板との間には、前記蓋により前記塗布具挿入孔を密閉した状態で前記ボトルを天地反転させたときに、前記計量カップの外周面側の流路を通って前記天板に向けて流れる内容液を前記計量カップの内周面側に流入させる流入開口が形成されており、
前記計量カップは、前記塗布具挿入孔から挿入された塗布具の先端部を、前記計量カップ内に溜まった内容液が前記塗布具に染み込むように受け入れ可能に構成されており、
前記蓋は、前記塗布具挿入孔から挿入され且つ前記計量カップに向けて延びるガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記流入開口から前記計量カップの内周面側に流入した内容液の流れが前記計量カップの内底面側に向くように案内するガイド溝を有する、容器。
【請求項8】
請求項7に記載の容器において、
前記流入開口と同数の前記ガイド溝がそれぞれ、各流入開口に対向して配置されている、容器。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の容器において、
前記計量カップの外周面には平滑面に比して液体流動抵抗を低下させる粗面加工が施されている、容器。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の容器において、
前記流入開口の周端の一部を構成する前記計量カップの開口端縁の周方向中途部には、少なくとも一つの凸部又は凹部が設けられている、容器。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項に記載の容器において、
前記計量カップは、周方向に離間する複数の支持リブを介して天板に支持されており、隣り合う支持リブ間にそれぞれ流入開口が設けられている、容器。
【請求項12】
口部を有するボトルと、前記ボトルの口部に取り付けられるキャップとを備え、
前記キャップは、塗布具挿入孔を有する天板と、前記塗布具挿入孔の奥部に設けられ、前記塗布具挿入孔に向けて開口する有底筒状の計量カップと、前記塗布具挿入孔を密閉する蓋とを備え、
前記計量カップと前記天板との間には、前記蓋により前記塗布具挿入孔を密閉した状態で前記ボトルを天地反転させたときに、前記計量カップの外周面側の流路を通って前記天板に向けて流れる内容液を前記計量カップの内周面側に流入させる流入開口が形成されており、
前記計量カップは、前記塗布具挿入孔から挿入された塗布具の先端部を、前記計量カップ内に溜まった内容液が前記塗布具に染み込むように受け入れ可能に構成されており、
前記流入開口の周端の一部を構成する前記計量カップの開口端縁の周方向中途部には、少なくとも一つの凸部又は凹部が設けられている、容器。
【請求項13】
請求項12に記載の容器において、
前記計量カップの外周面には平滑面に比して液体流動抵抗を低下させる粗面加工が施されている、容器。
【請求項14】
口部を有するボトルと、前記ボトルの口部に取り付けられるキャップとを備え、
前記キャップは、塗布具挿入孔を有する天板と、前記塗布具挿入孔の奥部に設けられ、前記塗布具挿入孔に向けて開口する有底筒状の計量カップと、前記塗布具挿入孔を密閉する蓋とを備え、
前記計量カップと前記天板との間には、前記蓋により前記塗布具挿入孔を密閉した状態で前記ボトルを天地反転させたときに、前記計量カップの外周面側の流路を通って前記天板に向けて流れる内容液を前記計量カップの内周面側に流入させる流入開口が形成されており、
前記計量カップは、前記塗布具挿入孔から挿入された塗布具の先端部を、前記計量カップ内に溜まった内容液が前記塗布具に染み込むように受け入れ可能に構成されており、
前記計量カップは、周方向に離間する複数の支持リブを介して天板に支持されており、隣り合う支持リブ間にそれぞれ流入開口が設けられている、容器。
【請求項15】
請求項14に記載の容器において、
前記計量カップの外周面には平滑面に比して液体流動抵抗を低下させる粗面加工が施されている、容器。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の容器において、
前記流入開口の周端の一部を構成する前記計量カップの開口端縁の周方向中途部には、少なくとも一つの凸部又は凹部が設けられている、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤などの内容液を塗布具に供給するための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に収容された薬液を綿棒などの塗布具に染み込ませ、薬液が染み込んだ綿棒を患部に当てることにより、患部に塗布するタイプの薬液がある。
【0003】
このようなタイプの薬液用の容器として、実登2598511号公報(特許文献1)は、容器本体と、押下げヘッドを装着させたポンプ装置と、綿棒挿入凹部とを備えた薬液収納容器を開示している。この薬液収納容器は、ポンプ装置の押下げヘッドを押下げると、容器本体に収納された薬液が綿棒挿入凹部に吐出される。その際、綿棒挿入凹部に綿棒の先端部を差し込んでおくと、綿棒の先端部に薬液を染み込ませることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の薬液収納容器は、ポンプ装置により薬液を吐出しながら綿棒に染み込ませるため、綿棒に供給される薬液の量が安定しない。すなわち、従来の薬液収納容器は、押下げヘッドを押下げる力加減によって吐出される薬液の量が変わってしまう。そのため、従来の薬液収納容器は、薬液を塗布するごとに、患部などに塗布する薬液の量に差が生じてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、ほぼ一定量の薬液などの内容液を綿棒などの塗布具に供給することができる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は次の技術的手段を講じた。すなわち、本発明に係る容器は、口部を有するボトルと、ボトルの口部に取り付けられるキャップとを備えてよい。キャップは、塗布具挿入孔を有する天板と、塗布具挿入孔の奥部に設けられ、塗布具挿入孔に向けて開口する有底筒状の計量カップと、塗布具挿入孔を密閉する蓋とを備えてよい。計量カップと天板との間には、蓋により塗布具挿入孔を密閉した状態でボトルを天地反転させたときに、計量カップの外周面側の流路を通って天板に向けて流れる内容液を計量カップの内周面側に流入させる流入開口が形成されてよい。計量カップは、塗布具挿入孔から挿入された塗布具の先端部を、計量カップ内に溜まった内容液が前記塗布具に染み込むように受け入れ可能に構成されてよい。
【0008】
かかる構成により、容器は、ほぼ一定量の内容液を塗布具に染み込ませることができる。すなわち、蓋により塗布具挿入孔を密閉した状態でボトルを天地反転させると、ボトル内に収容された内容液が計量カップの外周面側の流路から流入開口を経由して計量カップ内に流入する。天地反転させたボトルの天地を元に戻すと、計量カップ内には、ほぼ一定量の内容液が溜まる。塗布具挿入孔を密閉していた蓋が開放され、塗布具挿入孔から計量カップ内に塗布具の先端部が挿入されることにより、ほぼ一定量の内容液を塗布具に染み込ませることができる。
【0009】
好ましくは、蓋は、塗布具挿入孔から挿入され且つ計量カップに向けて延びるガイド部を備えてよい。ガイド部は、流入開口から計量カップの内周面側に流入した内容液の流れが計量カップの内底面側に向くように案内するガイド溝を有してよい。これにより、内容液がガイド部のガイド溝に沿って計量カップの内底面側へと流れるように誘導することができる。したがって、内容液をよりスムーズに計量カップの内底面側へと流すことができ、計量カップ内の空気を内容液の流れの勢いにより積極的に押しのけるようになるので、安定的にほぼ一定量の内容液を計量カップに溜めることができる。
【0010】
好ましくは、流入開口と同数の前記ガイド溝がそれぞれ、各流入開口に対向して配置されていてよい。これにより、容器を天地反転させる方向にかかわらず、各流入開口からよりスムーズに内容液を計量カップの内底面側に誘導することができる。
【0011】
好ましくは、計量カップの外周面には、平滑面に比して液体流動抵抗を低下させる粗面加工が施されていてよい。これにより、計量カップの外周面で内容液の流速が低下しにくくなり、計量カップの外周面側の流路を天板に向けてスムーズに流れるようになる。したがって、内容液をよりスムーズに計量カップの内周面側へと流すことができ、より安定的にほぼ一定量の内容液を計量カップの溜めることができる。なお、液体流動抵抗を低下させる粗面加工は、例えばキャップを成形する際に金型表面に施した微細凹凸模様を計量カップ表面に転写するシボ加工であってよい。
【0012】
好ましくは、流入開口の周端の一部を構成する計量カップの開口端縁の周方向中途部には、少なくとも一つの凸部又は凹部が設けられていてよい。これにより、流入開口において計量カップの開口縁端に留まろうとして作用する内容液の表面張力を凸部又は凹部が破壊し、計量カップの内周面側へ内容液を流入させやすくすることができる。したがって、内容液をよりスムーズに計量カップの内周面側へと流すことができ、より安定的にほぼ一定量の内容液を計量カップに溜めることができる。
【0013】
好ましくは、計量カップは、周方向に離間する複数の支持リブを介して天板に支持されており、隣り合う支持リブ間にそれぞれ流入開口が設けられていてよい。これにより、計量カップは、支持リブを介して天板に支持することができ、かつ、容器を天地反転させる方向にかかわらず、流入開口から計量カップの内周面側へ内容液を流入させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る容器によれば、ほぼ一定量の内容液を塗布具に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る容器の構造を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す容器の構造を示す断面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すキャップの構造を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すキャップの構造を示す底面側斜視図である。
【
図5】
図5は、容器の使用方法を示す断面斜視図である。
【
図6】
図6は、容器の使用方法を示す断面斜視図である。
【
図7】
図7は、容器の使用方法を示す断面斜視図である。
【
図8】
図8は、容器の使用方法を示す断面図である。
【
図9】
図9は、蓋を開いたキャップを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
以下、本実施形態に係る容器を
図1~10に基づいて具体的に説明する。
図1及び
図2に示すように、容器1は、ボトル2と、キャップ3とを備える。
【0017】
ボトル2は、有底筒状に形成されており、
図2に示すように、図中上方に開口する口部21を有している。ボトル2は、例えばPETやPE等の樹脂材料により成形されている。ボトル2には、内容液Lが収容されている。内容液Lは、例えばかゆみ止め等の薬効を有する薬液などであり、綿棒などの塗布具に染み込ませて患部などに塗布される。内容液Lとしては、粘性の比較的高いものを使用することもでき、また、水と同程度に粘性の比較的低いものを使用することもできる。内容液Lの一例として、25℃における動粘度が2.0~5.0mm
2/sの薬液を用いることができる。内容液Lを塗布具に染み込ませる手順については、後述する。
【0018】
キャップ3は、ボトル2側(図示の下側)の口部21に取り付けられる。キャップ3は、例えばPP等の樹脂材料により形成されている。キャップ3は、キャップ本体3Aと蓋3Bとを備える。キャップ本体3Aは、円筒状の筒部31と、筒部31の内容液Lの吐出側(図示の上側)の開口を覆う天板32と、筒部31の内部に配置される計量カップ33と、天板32に計量カップ33を支持するための複数の支持リブ34とを備えている。蓋3Bは、蓋本体35と、ガイド部36とを備えている。蓋3Bは、ヒンジ37を介して天板32に対して開閉可能に連結されており、閉じた状態で天板32を覆い、塗布具挿入孔32aを密閉する。なお、蓋3Bは、天板32との間にヒンジ37などの連結具を介さずに独立させ、天板32に対して着脱可能に構成してもよい。
【0019】
天板32は、塗布具の先端部を奥部に挿入するための塗布具挿入孔32aを有している。天板32は、塗布具挿入孔32aの周端から環状に突出する天板側シール部32bを有している。
【0020】
計量カップ33は、有底筒状に形成され、塗布具挿入孔32aに向けて開口している。計量カップ33は、塗布具挿入孔32aから挿入された塗布具の先端部を、計量カップ33内に溜まった内容液Lが塗布具に染み込むように受け入れ可能に構成されている。計量カップ33は、周方向に離間する複数の支持リブ34を介して天板32に支持されている。天板32と計量カップ33との間において、隣り合う支持リブ34間にそれぞれ流入開口38が設けられている。流入開口38は、蓋3Bにより塗布具挿入孔32aを密閉した状態でボトル2を天地反転させたときに、計量カップ33の外周面側の流路を通って天板32に向けて流れる内容液Lを計量カップ33の内周面側に流入させる。なお、本実施形態において、支持リブ34は、周方向において等間隔に5つの支持リブ34が設けられている。複数の支持リブ34及び流入開口38の詳細は、後述する。
【0021】
図3に示すように、計量カップ33は、流入開口38の周端の一部を構成する計量カップ33の開口端縁の周方向中途部に、それぞれ凸部33aを有している。凸部33aは、内容液Lが流入開口38を通過しようとする際に、計量カップ33の開口周端に留まろうとする内容液Lの表面張力を破壊する。これにより、計量カップ33の内周面側に流入開口38を介して内容液Lをよりスムーズに流入させることができる。凸部33aは、内容液Lの表面張力を破壊するという観点からすれば、特に図示はしないが、計量カップ33の開口縁端の周方向中途部を陥没させた凹部としてもよい。また、
図4に示すように、凸部33aは、計量カップ33の外周底面部から放射状に延びるように線状に隆起させてもよい。本実施形態において、凸部33aは、計量カップ33の開口縁端の外周面側に形成されているが、計量カップ33の開口縁端の上面側に形成してもよい。また、各流入開口38のうち少なくとも1つの凸部33aを設けるようにしてもよい。
【0022】
図4に示す計量カップ33の外周面は、微細凹凸構造を形成する粗面加工が施されている。これにより、計量カップ33の外周面の液体流動抵抗を平滑面に比して低下させることができる。粗面加工は、例えばシボ加工であり、射出成形によってキャップ3の成形と同時に施される。粗面加工が施された計量カップ33の外周面の表面粗さは、JISB0632:2001に準拠して測定された(において定義された)表面粗さ(Rz)が、0.01~0.2μmである。Rzは、下限が0.01μmであり、好ましくは0.03μmであり、より好ましくは0.028μmであり、上限が0.2μmであり、好ましくは0.18μmであり、より好ましくは0.177μmである。なお、計量カップ33の外周面に凹凸構造を形成できれば、粗面加工は、例えば、プラズマ処理、エッチング処理、サンドブラスト又は研磨処理などによって施されてもよい。
【0023】
このように、計量カップ33の外周面の液体流動抵抗を低下させたことにより、計量カップ33の外周面側における内容液Lの流動性をよくすることができる。その結果、計量カップ33の外周面側の流路において内容液Lの流速が低下するのを抑制し、内容液Lを天板32に向かってスムーズに流すことができ、より安定的にほぼ一定量の内容液Lを計量カップ33に溜めることができる。
【0024】
液体流動抵抗を低下させる粗面加工は、例えば、撥水加工または親水加工である。撥水加工または親水加工のいずれによって液体流動抵抗が低下するかは、計量カップ33の外周面の材質、凹凸構造の形状及び内容液Lの種類等に応じて決まると考えられる(Review of Polarography、Vol54、No.2、(2008)「固体表面の濡れ性に対する表面粗さの効果」を参照。」)。したがって、撥水加工又は親水加工のいずれを選択するかは、計量カップ33の外周面の材質等に応じて、適宜決定すればよい。なお、流入開口38の周縁に粗面加工を施した場合には、内容液Lが流入開口38を通過しようとする際に、流入開口38の手前側に溜まろうとする内容液Lの表面張力を破壊し、計量カップ33の内周面側に流入開口38を介して内容液Lをよりスムーズに流入させることができるという効果も期待できる。
【0025】
また、計量カップ33の開口端の上面は、液体流動抵抗を低下させる粗面加工を施さず、平滑面としてもよい。例えば、親水加工によって液体流動抵抗が低下する場合には、計量カップ33の外周面に親水加工を施して開口縁端の上面には親水加工を施さないことにより、計量カップ33の開口端の上面に余剰の内容液Lが付着していても、余剰の内容液Lを計量カップ33の外周面側に誘導することができ、計量精度が向上する。一方、撥水加工によって液体流動抵抗が低下する場合には、計量カップ33の外周面に撥水加工を施して開口端の上面には撥水加工を施さないことにより、流入開口38から計量カップ33の内周面側へ内容液Lが流入し易くなる。
【0026】
蓋3Bは、天板32を覆う円盤状の蓋本体35と、蓋本体35を閉じた状態で塗布具挿入孔32aから挿入され、且つ、計量カップ33に向けて延びるガイド部36とを備えている。ガイド部36は、ガイド溝36aを有している。ガイド溝36aは、流入開口38から計量カップ33の内周面側に流入した内容液Lの流れが計量カップ33の内底面側に向くように案内する(
図6の矢印Xを参照。)。
図3に示すように、各ガイド溝36a間に形成されている仕切りは、蓋35を閉じた状態で、複数の支持リブ34にそれぞれ対向するように形成されている。そのため、ガイド溝36aは、流入開口38と同数形成されており、それぞれ各流入開口38に対向するように配置されている。
【0027】
このように、ガイド溝36aを有するガイド部36を設けたことにより、各流入開口38から内容液Lが各ガイド溝36aによって計量カップ33の内底面側に誘導され、計量カップ33内の空気を内容液Lの流れの勢いにより積極的に押しのけるようになるので、よりスムーズに内容液Lを計量カップ33に溜めることができる。その結果、より安定的にほぼ一定量の内容液Lを計量カップ33に溜めることができる。
【0028】
また、蓋3Bは、ガイド部36の周囲において、環状に突出する蓋側シール部39を有している。蓋側シール部39の外面は、
図5に示すように、蓋3Bを閉じた状態で、天板側シール部32bの内面に当接し、内容液Lが漏液しないようにシールしている。
【0029】
以上のように、本発明に係る容器によれば、ボトル2内に収容された内容液Lを計量カップ33の内周面側にスムーズに流すことができ、計量カップ33内にほぼ一定量の内容液Lを安定的に溜めることができる。これにより、塗布具挿入孔32aから計量カップ33内へ挿入された塗布具にほぼ一定量の内容液Lを供給することができる。
【0030】
(変形例)
上述の実施形態では、5つの支持リブ34を設けて5つの流入開口38を構成したが、2~7つの支持リブ34を設けてそれぞれ2~7つの流入開口38を構成してもよい。その場合、蓋35のガイド溝36aも流入開口38の数と同数としてもよい。
【0031】
上述の実施形態では、計量カップ33の外周面側の流路において、内容液Lの流れを良くするために、計量カップ33の外周面に液体流動抵抗を低下させる粗面加工を施したが、計量カップ33の外周面に径方向で対向する口部21の内周面に液体流動抵抗を低下させる粗面加工を施してもよく、また、凸部33aや支持リブ34の外面に液体流動抵抗を低下させる粗面加工を施してもよい。
【0032】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0033】
[使用方法]
次に、容器1の使用方法について、
図5~8を用いて具体的に説明する。
【0034】
まず、
図5に示すように、使用者は、内容液Lがボトル2に収容され、蓋3Bを閉じた状態の容器1を用意する。
【0035】
次に、
図6に示すように、使用者は、ボトル2を天地反転させる。そうすると、図中の矢印Xで示すように、ボトル2に収容された内容液Lは、天板32に向かって流れ出し、計量カップ33の外周面側の流路を通って流入開口38から計量カップ33の内周面側に流入する。この際、上述の通り、計量カップ33の外周面には、液体流動抵抗を低下させる粗面加工が施され、また、計量カップ33の開口縁端に凸部33aが設けられており、さらに、内容液Lを計量カップ33の内周面側にガイドするガイド溝36aが設けられているため、内容液Lは、計量カップ33の内周面側にスムーズに流入する。
【0036】
次に、
図7に示すように、ボトル2の天地を元に戻すと、計量カップ33の内周面側に内容液Lが溜まる。また、計量カップ33から溢れた内容液Lは、ボトル2の底面側に流れて、ボトル2内に収容される。このように、内容液Lは、計量カップ34内全体に溜められる。これにより、容器1は、計量カップ33にほぼ一定量の内容液Lを計量ごとに安定的に溜めることができる。
【0037】
最後に、
図8に示すように、蓋3Bを開けて塗布具挿入孔32aを開放し、塗布具挿入孔32aから塗布具Cの先端部を挿入する。計量カップ33は、塗布具Cの先端部を受け入れ可能に、例えば、計量カップ33の内底面側の形状が、塗布具Cの先端部の外面の形状に対応した形状に形成されている。計量カップ33に溜まった内容液Lは、塗布具Cに染み込む。このようにして、ほぼ一定量の内容液Lを塗布具Cに染み込ませることができる。
【0038】
使用者は、内容液Lが染み込んだ塗布具Cを患部などに当てて内容液Lを塗布する。これにより、使用者は、患部などにほぼ一定量の内容液Lを塗布することができる。
【0039】
[実施例]
次に、内容液Lの計量カップ33への流入しやすさの良不良について、実施例1~4に係る容器1を用意し、以下の通り試験を行った。実施例1~3に係る容器1は、基本的な構成を上述の実施形態の容器1と同じくする。そのため、実施例1~3の各容器1と上述の実施形態の容器1との構成上の違いについてのみ以下に説明する。実施例4の容器1は、上述の実施形態に係る容器1と同様である。
【0040】
(試験1)
[実施例1]
実施例1の容器1は、
図9(a)に示すように、計量カップ33を支持する支持リブ34が3つ構成されている。3つの支持リブ34は、周方向に等間隔に離間して構成されている。3つの支持リブ34の間には、3つの流入開口37が設けられている。また、上述の実施形態では、各流入開口38において計量カップ33の開口縁端の周方向中途部に凸部33aを設けたが、実施例1の容器1には、凸部33aは設けられていない。
【0041】
[実施例2]
実施例2の容器1は、
図9(b)に示すように、計量カップ33を支持する支持リブ34が4つ構成されている。4つの支持リブ34は、周方向に等間隔に離間して構成されている。4つの支持リブ34の間には、4つの流入開口38が設けられている。また、実施例2の容器1においても、凸部33aは設けられていない。
【0042】
[実施例3]
実施例3の容器1は、
図9(c)に示すように、上述の実施形態と同様に、5つの支持リブ34が構成されている。5つの支持リブの間には、5つの流入開口38が設けられている。また、実施例2の容器1においても、凸部33aは設けられていない。
【0043】
[実施例4]
実施例4の容器1は、
図9(d)に示すように、上述の実施形態と同様に、5つの支持リブ34と5つの流入開口38が設けられており、また、各流入開口38において計量カップ33の開口縁端にそれぞれ凸部33aが設けられている。
【0044】
実施例1~4の容器1において、各図中の矢印Y1、Y2、Y3のそれぞれの方向に容器1を傾けて容器1を天地逆転させ、計量カップ33の内周面側へ流れる内容液Lの流れやすさを「良」「可」「不良」の3段階で評価した。
【0045】
図10に示すように、実施例1の容器1において、Y1の方向に容器1を傾けて天地反転させた場合、内容液Lが計量カップ33の内周面側へ良く流れた(「良」)。しかし、Y2及びY3の方向に容器1を傾けて容器1を天地反転させた場合、内容液Lが計量カップ33の内周面側へ良く流れず、計量カップ33に溜まった内容液Lが少なかった(「不良」)。
【0046】
実施例2の容器1では、Y2の方向に容器1を傾けて天地反転させた場合は、「良」であった。しかし、Y1及びY3の方向に容器1を傾けて容器1を天地反転させた場合は、「不良」であった。
【0047】
このように、実施例1及び2の容器1は、所定の方向に容器1を傾けて天地反転させることにより、ほぼ一定量の内容液Lを計量カップ33に溜めることができた。
【0048】
実施例3の容器1では、Y1、Y2、Y3の方向に容器1を傾けて天地反転させた場合、いずれの方向でも「可」であった。
【0049】
このように、実施例3の容器1では、内容液Lの流れを「良」とまでは言えず、また、計量カップ33内に溜めることができる内容液Lの量が少ないものの、いずれの方向においてもほぼ一定量の内容液Lを計量カップ33に溜めることができた。
【0050】
実施例4の容器1では、Y1、Y2、Y3の方向に容器1を傾けて天地反転させた場合、いずれの方向でも「良」であった。
【0051】
このように、実施例4の容器1では、いずれの方向に容器1を傾けて天地反転させた場合であっても、容器1を天地反転させる方向にかかわらず、内容液Lの流れを良くし、且つ、ほぼ一定量の内容液Lを計量カップ33に安定的に溜めることができた。したがって、容器1は、支持リブ34の数を5つとし、凸部33aを設けることにより、内容液Lの流れを最適化できるものと考えられる。
【0052】
なお、特に図示しないが、実施例4と同じ条件で、計量カップ33のサイズを大きくして、内容液Lの流れを評価した。結果、実施例4と同様に、いずれの方向においても「良」であった。そのため、計量カップのサイズが変わっても、内容液Lの流れを良くし、且つ、ほぼ一定量の内容液Lを計量カップ33に溜めるという観点からすれば、支持リブ34を5つにし、各流入開口38に凸部33aを設けるのが好ましいものと考えられる。
【0053】
(試験2)
次に、PET樹脂からなる試験片1とPP樹脂からなる試験片2とを用いて、濡れ性試験を行った。試験片1のPET樹脂は、ボトル2の成形材料であり、試験片2のPP樹脂は、キャップ3の成形材料である。試験片1及び試験片2は各々、長方形状の平滑面を有する。長方形状の平滑面は、40mmの幅と55mmの長さと有する。濡れ性試験は、ポータブル接触角計PCA-11協和界面科学株式会社製)を用い、試験片1の平滑面及び試験片2の平滑面の各々に、標準液として2μlの70重量%プロピレン水溶液(内容液L)を滴下し、3秒後の接触角を求めることにより行った。
【0054】
標準液の表面張力は、ポータブル接触角計PCA-11協和界面科学株式会社製)を用いて20℃にて測定され、33.9mN/mであった。なお、標準液の表面張力を測定するために必要な標準液の密度は、密度比重計DA-650(京都電子工業株式会社製)を用いて20℃にて測定した。標準液の粘度は、回転式粘度計TVE-35H(東機産業株式会社製)を用いて20℃にて測定され、22.7mPa・sであった。
【0055】
接触角は、0~180度で示され、濡れ性は、接触角が小さいほど良くなり、接触角が大きいほど悪くなる。試験の結果、試験片1の接触角は、39.6度であり、試験片2の接触角は、54.9度であった。このように、試験片1及び試験片2は各々、比較的接触角が小さく、平滑面であっても濡れ性が良いことが分かった。すなわち、親水加工によって液体流動抵抗を低下させる場合、試験片1の平滑面及び試験片2の平滑面の各々にシボ加工等の親水加工を施すことにより、さらに濡れ性の向上を図ることができ、より液体流動抵抗を低下させることができるものと考えられる。
【符号の説明】
【0056】
1 容器
2 ボトル
3 キャップ
3A キャップ本体
31 筒部
32 天板
32a 塗布具挿入孔
32b 天板側シール部
33 計量カップ
33a 凸部
34 支持リブ
3B 蓋
35 蓋本体
36 ガイド部
36a ガイド溝
37 ヒンジ
38 流入開口
39 蓋側シール部
L 内容液
C 塗布具