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  • 特許-レーザ加工機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】レーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/142 20140101AFI20240220BHJP
【FI】
B23K26/142
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020059336
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154368
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示による公開 開催日 令和2年2月18日~21日(2020.2.18~21) 開催名 International Awards & Personalization Expo(開催場所:Paris Las Vegas Hotel)
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 順也
(72)【発明者】
【氏名】高林 駿
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-371384(JP,A)
【文献】特開2000-052075(JP,A)
【文献】特許第6190705(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシストガスノズルを搭載した加工ヘッドを、レーザ加工終了後に加工領域を移動させながらワークに対してアシストガスを噴射し、ワーク表面に残留する削りカスを除去する自動清掃システムを搭載したことを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記加工ヘッドを、レーザ加工終了後に加工経路を逆戻りさせながらワークに対してアシストガスを噴射するように構成した請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記自動清掃システムは、加工ヘッドが加工データ上の所定領域に達した際、予め設定したガス噴出量及びヘッド移動速度に変化させるプログラムを含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の自動清掃システムを搭載した印面加工用のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光線により印材に所要の印面を彫刻する場合などに用いられるレーザ加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印面加工用のレーザ加工機は、特許文献1に示されるように従来から知られている。ワークとしては多孔質あるいは非多孔質の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどが用いられ、その表面がレーザ光線により加工される。加工はレーザヘッドを加工データに従って移動させながら行われる。
【0003】
加工の際には削りカスが不可避的に発生するが、削りカスが印底に蓄積されると捺印した際に印底の削りカスに付着した朱肉が印影に反映され、鮮明な印影が得られなくなる。このため特許文献1のレーザ加工機は、加工ヘッドに吸引ホースを取り付けて発生した削りカスを吸引除去している。しかし吸引ホースの吸引力には限界があり、削りカスを完全に除去することはできない。このためレーザ加工終了後に人手による削りカスをエアーダスター等により除去する作業が必要であった。
【0004】
また印面加工用ではないが、特許文献2に示されるように、加工ヘッドにアシストガスノズルを搭載し、アシストガスにより削りカスを吹き飛ばしながらレーザ加工を行う技術も知られている。さらに特許文献2には、レーザ加工終了後にアシストガスを噴射することも記載されている。しかしここに記載されているのはレーザ光線を利用して金属板に穴明け加工する技術であり、輪郭線に沿ったレーザ加工の終了後に加工ヘッドを穴の中心などの初期位置に移動させる際にアシストガスを噴出することによって、くりぬかれた切断片を確実に落下させる方法である。
【0005】
レーザ加工機による印面加工は、多種類の印影を集めて整列させた加工データを作成し、加工ヘッドを加工データに従って細かく移動させながら行われる。この加工は画数の多い漢字等を加工する加工領域と、画数の少ない漢字や図形を加工する加工領域とを同一の加工ヘッドを用いて加工するため、削りカスの発生状況も加工領域によってさまざまである。このため金属加工用の削りカス除去技術を、ワークの材質及び加工精度の異なる印面加工用レーザ加工機に適用しても、満足する結果は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-52075号公報
【文献】特許第6190705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、レーザ加工時に発生した削りカスを人手に頼ることなく確実に除去することができるレーザ加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明のレーザ加工機は、アシストガスノズルを搭載した加工ヘッドを、レーザ加工終了後に加工領域を移動させながらワークに対してアシストガスを噴射し、ワーク表面に残留する削りカスを除去する自動清掃システムを搭載したことを特徴とするものである。なお前記加工ヘッドを、レーザ加工終了後に加工経路を逆戻りさせながらワークに対してアシストガスを噴射するように構成することが好ましい。
【0009】
また、前記自動清掃システムは、加工ヘッドが加工データ上の所定領域に達した際、予め設定したガス噴出量及びヘッド移動速度に変化させるプログラムを含むものであることが好ましい。このような自動清掃システムを搭載したレーザ加工機は、印面加工用のレーザ加工機として好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレーザ加工機は、アシストガスノズルを搭載した加工ヘッドを加工データに従って移動させてワークに印面加工を行った後、加工領域を移動させながらワークに対してアシストガスを噴射する自動清掃システムを搭載している。これによりレーザ加工された領域に残存している削りカスを、もれなく確実に除去することができる。また、移動中の加工ヘッドが画数の多い漢字等を加工する加工領域にきた時には、アシストガスの噴出量を増やしたり加工ヘッドの速度を遅くしたりするプログラムを搭載しておけば、細かい削りカスが発生し易い部分を念入りに清掃することができる。このため従来のように、人手による削りカスの除去を行う必要がない。特に加工ヘッドを、レーザ加工終了後に加工経路を逆戻りさせるようにすれば、より確実に削りカスを清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のレーザ加工機の斜視図である。
図2】加工ヘッドの移動パターンを示す模式図である。
図3】加工ヘッドの斜視図である。
図4】加工中の加工ヘッドと削りカスを示す説明図である。
図5】加工工程と自動清掃工程における加工ヘッドの移動パターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を示す。
図1は本発明のレーザ加工機の斜視図であり、この実施形態では印面加工用のレーザ加工機である。10はレーザ発振器、制御装置などが内蔵されたレーザ加工機の本体、11はワークWが固定される水平なテーブルである。テーブル11の上方の前後位置には2本のX軸レール12が平行に設置されており、これらのX軸レール12の上方にはX軸方向に移動可能なY軸レール13が設置されている。このY軸レール13上に加工ヘッド14が搭載されている。加工ヘッド14は制御装置に入力された加工データに従ってワークWの上面をX、Y両軸方向に移動しながら、ワークWをレーザ加工する。
【0013】
ワークWは熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどの平板である。数百に及ぶ多数、多種類の印影を集めて整列させた加工データを作成し、加工ヘッド14を加工データに従って細かく移動させながら印面加工が行われる。その移動パターンを図2に模式的に示した。
【0014】
図3に加工ヘッド14の斜視図を示す。加工ヘッド14は図示しないレーザ光源から水平に照射されたレーザ光線を上部側面のウインドウレンズ15で受光し、内蔵されたミラーで下向きに反射し、集光レンズ(図示なし)で集光させた後、照射孔16からワークWに向けて照射して、印面加工を行うものである。
【0015】
この加工ヘッド14の側方位置には、アシストガスノズル17が取り付けられている。アシストガスとしては安価な圧縮空気を用いるほか、炭酸ガスや窒素ガスなどのその他のガスを用いることができる。好ましいアシストガスの元圧力は、0.1~0.5MPa程度であり、図示を略した耐圧ホースを介してアシストガスノズル17に供給される。
【0016】
図4に示されるように、加工中はレーザ光線が照射される照射孔16の直下の加工ポイントに向けてアシストガスノズル17の噴射孔18からアシストガスが噴射され、ワークWを冷却するとともに、レーザ加工に伴って発生した削りカスSを吹き飛ばす。噴射孔18は横長の形状とすると清掃効果を高めることができる。削りカスSはテーブル11の側方に形成された図示しない吸引口に向けて吹き飛ばされるが、一部は図4に示すようにワークWの表面に残留する。
【0017】
前記したように、分散した削りカスSは従来は人手によってワークWの表面から取り除かれていたが、本発明のレーザ加工機は制御装置に自動清掃システムを搭載しており、レーザ加工終了後に加工領域を移動しながらワークWに対してアシストガスノズル17からアシストガスを噴射し、ワーク表面に残留する削りカスSを除去する。アシストガスの噴射方向は加工時と同様、吸引口に向かう方向である。なお、加工ヘッドを、レーザ加工終了後に加工経路を逆戻りさせながらワークに対してアシストガスを噴射することが好ましい。
【0018】
図5はその様子を示す下方からの斜視図である。ワークWは不透明であるが、この図では透明体として図示した。上段の図はスタート点Aから加工ヘッド14がほぼジグザグ状に移動しながら印面加工を行い、終点Bに達する様子を示す図である。このときワークWの表面には一部の削りカスSが分散し残留している。
【0019】
本発明のレーザ加工機に搭載された自動清掃システムは、加工ヘッド14が終点Bに達したのち、加工データの加工経路を任意のスキャンピッチ(図5中の矢印線の間隔)で加工ヘッド14をスタート点Aまで逆戻りさせる。この間もアシストガスノズル17からアシストガスを噴射する。尚、自動清掃時のスキャンピッチは加工工程時と同一でもよいし、異なる値に設定してもよい。加工ヘッド14は加工経路を逆戻りする為、加工された部位には漏れなく必ずアシストガスが噴射される。尚、加工終了後の加工ヘッド14の動きは、図5に示す様に加工経路を逆戻りするルートに限定されるものではなく、任意のルート(例えば、図5のルートに対して垂直方向、斜め方向等)を設定する事ができる。このため、アシストガスの噴射量を一定とした場合にも、加工された部位に残留した削りカスを確実に吹き飛ばして清掃することができる。
【0020】
しかし、プログラムにガス噴出量及びヘッド移動速度を予め設定しておき、逆戻り移動中の加工ヘッド14が画数の多い漢字等を加工する加工領域にきた時には、アシストガスの噴出量を増やしたり加工ヘッド14の移動速度を遅くしたりすれば、細かい削りカスが発生し易い部分をより念入りに清掃することができる。これにより清掃効率をより向上させることができる。加工時にも画数の多い漢字等を加工する加工領域では加工ヘッド14の移動速度を落とさざるを得ないので、加工ヘッド14の移動速度を逆移動時にも同様に落とすことは容易に行うことができる。
【0021】
本発明によっても印判の素材であるワークWの表面から削りカスを完全に除去できるわけではない。しかし実験した結果によれば、自動清掃システムを備えない従来の印面加工用レーザ加工機に比較して、自動清掃システムを備える本発明の印面加工用レーザ加工機によれば、削りカスの残存量を1/30以下とすることができ、従来のような、人手による削りカスの除去作業を行う必要をなくせることが確認できた。
【0022】
以上に説明したように、本発明によれば、ワークWのレーザ加工された領域に残存している削りカスを、もれなく確実に除去することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 本体
11 テーブル
12 X軸レール
13 Y軸レール
14 加工ヘッド
15 ウインドウレンズ
16 照射孔
17 アシストガスノズル
18 噴射孔
S 削りカス
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5